JP3646414B2 - 難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は耐ドリップ性及び外観に優れた樹脂成形品を得ることのできる難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ABS、HIPS等に代表されるスチレン系樹脂は優れた成形加工性、機械的特性、外観等の特徴から、電機製品、OA機器、事務機器等の用途に広く用いられている。これらの用途では、内部部品の発熱などの問題から樹脂の難燃化が必要な場合が多く、有機ハロゲン化合物や有機リン化合物を難燃剤として添加し、樹脂を難燃化する技術が広く用いられている。
【0003】
一方、樹脂の難燃性の指標として一般に用いられている、米国アンダーライターラボラトリーズ(UL)の難燃性規格(UL94)には燃焼時の火種の垂れ落ち(ドリップ)に関する規定があり、当該用途で通常要求される難燃性レベルであるV−0クラス、5Vクラスでは燃焼時にドリップしないことが要求される。この要求を満たすために、近年樹脂に上記難燃剤に加え、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのパーフルオロポリマー(PFP)の粉末をドリップ防止剤として添加する技術が提案されている。例えば、特開昭50−44241号公報、特開昭59−98158号公報、特開昭61−89241号公報、及び特開昭63−135442号公報には、ABSに難燃剤及びPFPパウダーを配合する技術が開示されている。しかしながら、従来熱可塑性樹脂用のドリップ防止剤として用いられてきたPFPパウダーは粒子形が不均一であるため粉末流動性に劣るという欠点があった。またPFPは高温、高せん断条件下においては分子が繊維化し、クモの巣状になるという性質を有する。
【0004】
樹脂組成物の製造工程においては、押出機などを用いた混練工程に先立ち、ヘシェルミキサーやタンブラーなどを用いて樹脂や添加剤を混合するプレミックス工程がある。従来のPFPパウダーをドリップ防止剤として用いた場合、前述の欠点により、混練槽内でせん断がかかりやすく、PFP粒子が容易にクモの巣状に変化し、他の樹脂や添加剤と絡み合い分散困難な添加剤塊を形成してしまうという問題点があった。その結果、押出機の原料送りフィーダーが閉塞したり、押出機での混練時に添加剤塊が分散せず、製造される樹脂組成物中に未混練の添加剤塊が混入して、得られる樹脂成形品の外観が不良になる等の問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は耐ドリップ性及び外観に優れた樹脂成形品を得ることができる難燃性熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する事を目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、プレミックス工程に先立って、予め25℃以下の温度でPFPパウダーと特定の分散剤を混合しておき、この混合物をドリップ防止剤として用いることによって、未処理のPFPパウダーを用いた場合と異なりプレミックス時に添加剤塊が発生せず、製造される樹脂組成物中でのPFPの分散不良、及び得られる樹脂成形品の外観不良を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、(A)下記の(A1)及び/又は(A2)からなるか、(A1)及び/又は(A2)と、(A3)からなる熱可塑性樹脂混合物100重量部に、(B)有機ハロゲン化合物及び/又は有機リン化合物からなる難燃剤1〜35重量部と(C)パーフルオロポリマーパウダーからなるドリップ防止剤を配合する際に、パーフルオロポリマーパウダー(以下、PFPと略称する)を予め、25℃以下の温度で、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸アミドから選ばれる少なくとも一種の分散剤と混合処理した混合物をドリップ防止剤として用いることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法に存する。
(A1)芳香族ビニル単量体60〜100重量%及び芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体0〜40重量%の混合物を、ゴム質重合体の存在下でグラフト共重合させたグラフト共重合体
(A2)芳香族ビニル単量体60〜100重量%及び芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体0〜40重量%を共重合させた共重合体
(A3)ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、飽和ポリエステルよりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合体
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる(A)樹脂混合物とは、(A1)グラフト共重合体及び/又は(A2)共重合体、又はさらに(A3)重合体とからなる熱可塑性樹脂の混合物である。
本発明で用いられる(A1)グラフト共重合体とは、芳香族ビニル単量体60〜100重量%及び芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体0〜40重量%のの混合物を、ゴム質重合体の存在下でグラフト共重合させて得られるグラフト共重合体をいう。
【0009】
本発明によって製造される樹脂組成物が優れた物性、難燃性、加工性を有するためには、(A1)グラフト共重合体の含有するゴム質重合体の重量平均粒子径は0.1〜5μm、より好ましくは0.2〜3μmであり、ゴム含有量は1〜80重量%、より好ましくは5〜70重量%である方がよい。これらの値が上記範囲に満たないと最終的に得られる樹脂成形品の耐衝撃性が低下し、上記範囲を越えると最終的に得られる樹脂成形品の難燃性が低下する傾向となる。
(A1)グラフト共重合体で用いられるゴム質重合体とは、ガラス転移温度が0℃以下、好ましくは−20℃以下のものであり、例えばポリブタジエンや、ブタジエンと他の共重合性単量体との共重合体から成るゴム質重合体等が挙げられる。
【0010】
(A1)グラフト共重合体の構成成分である芳香族ビニル単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のα−アルキルスチレン、p−メチルスチレン等の核置換アルキルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物であってもよい。
芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらのアルキルエステル等のアクリル系単量体、無水マレイン酸、及びそのイミド化物等の不飽和無水酸誘導体系の単量体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物であってもよい。
【0011】
(A1)グラフト共重合体に使用する単量体混合物中の芳香族ビニル単量体成分の比率は、60〜100重量%の範囲とする。60重量%に満たないと、製造される樹脂組成物から得られる樹脂成形品の耐熱性や耐衝撃性、色調などが悪化する。
(A1)グラフト共重合体は、上記の単量体ないしはその混合物から公知の方法、例えば乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等の方法を用いて、回分方式又は連続方式で製造する事ができる。
【0012】
(A1)グラフト共重合体の具体例としては、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)、アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン共重合体(ACS樹脂)等の樹脂、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0013】
本発明に用いられる(A2)共重合体とは、芳香族ビニル単量体60〜100重量%と芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体0〜40重量%とを共重合させて得られる共重合体をいう。
(A2)共重合体の構成成分である、芳香族ビニル単量体の具体例としては、(A1)グラフト共重合体におけると同様の単量体を挙げることができる。
(A2)共重合体の構成成分である、芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体の具体例としても、(A1)グラフト共重合体におけると同様の単量体を挙げることができる。
【0014】
(A2)共重合体に使用する芳香族ビニル単量体成分の比率は、60〜100重量%の範囲とする。60重量%に満たないと、製造される樹脂組成物から得られる樹脂成形品の耐熱性や耐衝撃性、色調などが低下する。
この(A2)共重合体は、例えば公知のアクリロニトリル−スチレン共重合体の製造技術に準じて、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等の方法を用いて、回分方式又は連続方式で製造する事ができる。また(A2)共重合体は、(A1)グラフト共重合体の重合操作において同時に同一の重合系内で製造することもできるし、別途重合方法および重合条件を設定して製造することもできる。
【0015】
本発明に用いられる(A3)重合体とは、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、飽和ポリエステルよりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合体であって、必要に応じて(A1)グラフト共重合体及び/又は(A2)共重合体に加えて任意に配合される。
ここでいうポリカーボネートとは、芳香族ジヒドロキシ化合物をベースとしたホモポリカーボネート及びコポリカーボネートであり、特にビスフェノールAとホスゲンから合成された、重量平均分子量1700〜30000のビスフェノールA型ポリカーボネートが好ましく使用される。
【0016】
ポリフェニレンエーテルとは、フェノール類の酸化重合によって得られる重合体であり、本発明においては特に2,6−キシレノールの重合体である、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましく使用される。
飽和ポリエステルとはジカルボン酸とジヒドロキシ化合物との縮合重合によって得られる重合体であり、本発明においては特にポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましく使用される。
本発明に係わる(A)樹脂混合物においては(A1)グラフト共重合体、(A2)共重合体、(A3)重合体を任意の割合で配合することができるが、(A)樹脂混合物には必須成分として(A1)グラフト共重合体及び/又は(A2)共重合体が含まれていなくてはならず、その量は(A)樹脂混合物の全体量に対して10重量%以上が好ましい。(A)樹脂混合物が(A1)グラフト共重合体及び(A2)共重合体のいずれも含まない場合は、本発明によって製造される樹脂組成物の成形性等が低下する。
【0017】
(A)樹脂混合物が(A1)グラフト共重合体と(A2)共重合体のみからなる場合は、(A1)グラフト共重合体の配合量が10重量%未満では得られる樹脂成形品の耐衝撃性が低下するが、そのような場合であっても後述する(C)ドリップ防止剤のドリップ防止効果及び分散効果は有効である。
本発明では必要に応じて、更に任意の他の樹脂を添加する事ができる。添加する事のできる他樹脂の例としてはポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0018】
本発明で使用される(B)難燃剤は有機ハロゲン化合物及び/又は有機リン化合物であり、樹脂に添加した際に十分な難燃性を付与することができる慣用のものを使用することができるが、有機ハロゲン化合物としては、臭素及び/又は塩素を含有する化合物が、また有機リン化合物としてはホスフェート化合物及び/又はホスファゼン化合物が、樹脂に添加した際の難燃化能が高いため好ましい。
(B)難燃剤として有機ハロゲン化合物を用いる場合には、ハロゲン化ビスフェノール化合物、ハロゲン化エポキシ化合物、及びハロゲン化トリアジン化合物から成る群より選ばれた少なくとも1種の化合物を用いた場合が(B)難燃剤の難燃化能が高く、本発明の効果が最大限に発揮されるため最も好ましい。
【0019】
本発明で用いられるハロゲン化ビスフェノール化合物とは、ビスフェノールのハロゲン化物であって、例えば、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、ジクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、ジブロモビスフェノールF、テトラクロロビスフェノールF、ジクロロビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールS、ジブロモビスフェノールS、テトラクロロビスフェノールS、ジクロロビスフェノールS等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物であっても良い。
本発明で用いられるハロゲン化エポキシ化合物とは、ハロゲン化ビスフェノール化合物と、エピハロヒドリン又はハロゲン化ビスフェノールジグリシジルエーテルとの反応生成物であり、下記一般式で表される。
【0020】
【化1】
【0021】
(式中、nは0又は1以上の整数、Xは臭素原子又は塩素原子、a,b,c,dは1〜4の整数、R1 はイソプロピリデン基、メチレン基又はスルホン基、R2 、R3 はそれぞれ2,3−エポキシプロピル基又は−CH2 CH(OH)CH2 OR4 基[R4 は臭素原子又は塩素原子で置換されていても良いアルキル基又はアリル基]を示す。)
ハロゲン化エポキシ化合物の原料として用いられるハロゲン化ビスフェノール化合物の具体例としては前段に例示したものが同様に挙げられる。
ハロゲン化エポキシ化合物の重合度nは0又は1以上の整数、より好ましくは0〜15の整数であり、また、重合度nの異なるもの2種類以上を併用しても良い。
【0022】
ハロゲン化エポキシ化合物の末端はエポキシ基であっても、アリル基やアルキル基などでエポキシ基が封止されていてもよく、末端を封止するアリル基やアルキル基は必要に応じて塩素、臭素などのハロゲン原子で置換されていてもよい。末端封止基の具体例としてはフェニル基、ナフチル基等の無置換アリル基、トリブロモフェニル基、ペンタブロモフェニル基、トリクロロフェニル基、ペンタクロロフェニル基等のハロゲン化アリル基、ステアリル基等のアルキル基等が挙げられる。
【0023】
本発明で用いられるハロゲン化エポキシ化合物の末端は上記の範囲内であれば制限はなく、一方の末端と他方の末端の構造は同一であっても異なっていても良い。
本発明で用いられるハロゲン化トリアジン化合物とは、トリアジン骨格を有する有機ハロゲン化合物であって、下記一般式で表される。
【0024】
【化2】
【0025】
(式中、Yは−O−基または−NH−基、R4 は臭素化又は塩素化されたアリル基及び/又はアルキル基を示す。)
このような化合物は一般にシアヌル酸やメラミン等のトリアジン骨格含有化合物に臭素化又は塩素化されたフェノール類、アルコール類などの水酸基含有化合物やアミン化合物を反応させることにより得られる。
(B)難燃剤として有機リン化合物を用いる場合には、ホスフェート化合物を用いた場合が(B)難燃剤の難燃化能が高く、本発明の効果が最大限に発揮されるため最も好ましい。本発明で用いられるホスフェート化合物とは、リン酸とフェノール類とのエステルであって下記一般式で表される。
【0026】
【化3】
【0027】
(式中nは0〜10の数、R5 はハロゲン原子で置換されていてもよいアリル基及び/又はアルキル基を示す。)
(B)難燃剤は必ずしも1種のみ用いる必要はなく、2種以上の異なった化合物を使用してもよいし、有機ハロゲン化合物と有機リン化合物を併用してもよい。
(B)難燃剤の配合量は(A)樹脂混合物100重量部に対して1〜35重量部、好ましくは5〜30重量部である。配合量が35重量部を越えると得られる樹脂成形品の物性、耐光性が低下し、配合量が1重量部に満たないと得られる樹脂成形品に十分な難燃性を付与する事ができない。
本発明における(C)ドリップ防止剤とは、プレミックス工程に先立って、予め25℃以下の温度で混合した、PFPパウダーと特定の分散剤との混合物をいう。
【0028】
(C)ドリップ防止剤に用いるPFPパウダーは、通常、一次粒子径0.05〜0.5μm、二次粒子径300〜700μm、数平均分子量1×106 〜1×107 程度のテトラフルオロエチレンの単独重合体、及びテトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルコキシエチレン等の二元または三元共重合体等である。このようなPFPパウダーとしては、樹脂添加剤として市販されているものを使用することができ、例えば三井デュポンフロロケミカル製、商品名「テフロン6CJ」、「テフロン6J」や旭アイシーアイフロロポリマーズ製、商品名「フルオンCD076」、「フルオンCD1」、及びダイキン工業製、商品名「ポリフロンTFEファインパウダーF−201」、「同F−104」、「ポリフロンMPA FA−500」等が例示できる。
【0029】
本発明においては、上記PFPパウダーを特定分散剤で予め処理しておくことが重要であるが、ここで使用される分散剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸アミドから選ばれる少なくとも一種の化合物である。この予備処理によりPFPパウターの分散性が向上し最終的に良好な製品を得ることができるのである。
高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、ベヘン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、カプリン酸、オレイン酸、ヤシ油系脂肪酸、パーム油系脂肪酸、牛脂系脂肪酸等の炭素数が4〜30の高級脂肪酸が挙げられる。
【0030】
高級脂肪酸金属塩としては、上記の高級脂肪酸と金属水酸化物の塩であり、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等が好ましく用いられる。
高級脂肪酸アミドとしては、上記の高級脂肪酸のモノアミド、ビスアミド等であり、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等が好ましく用いられる。
【0031】
PFPパウダーと分散剤の混合比率には特に制限はなく、PFPパウダーを実質的に分散し得る量の分散剤を配合すればよいが、PFPパウダー30〜90重量%に対し、分散剤70〜10重量%の比率が最も好ましい。PFPパウダーの比率が90重量%を超えると得られる(C)ドリップ防止剤に十分な分散性を付与することができず、30重量%に満たないと十分なドリップ防止効果を得るための(C)ドリップ防止剤の添加量が多くなるため、製造される樹脂組成物の熱安定性が低下する。
本発明におけるPFPと上記分散剤との混合は25℃以下、より好ましくは20℃以下の温度であることが必要である。25℃を超えると(C)ドリップ防止剤の製造時にPFPが繊維化するためにPFPと分散剤が均一に混合されず、(C)ドリップ防止剤の分散性も著しく悪化するため好ましくない。
【0032】
(C)ドリップ防止剤の製造においては、ヘンシェルミキサーやタンブラー等の慣用の混合機を使用できるが、通常この種の混合機を用いた場合は、せん断発熱のために混合槽内は40℃を超える高温となる。本発明に係わる(C)ドリップ防止剤の製造においては、製造時の槽内温度が25℃以下であることが重要であり、混合機には送風冷却器、冷媒冷却器等の混合槽冷却装置が装備されている必要がある。また、PFPパウダー及び分散剤は、混合に先立って10℃以下に冷却されていることが望ましい。但し製造される(C)ドリップ防止剤が少量の場合等であって、せん断発熱によっても槽内温度が25℃を超えない場合は、これらの措置は必ずしも必要ではない。
【0033】
(C)ドリップ防止剤の添加量は(A)熱可塑性樹脂混合物100重量部に対して0.01〜1.0重量部、好ましくは0.05〜0.8重量部である。添加量が0.01重量部に満たないと、製造される樹脂組成物に十分なドリップ防止性を付与する事ができず、添加量が1.0重量部を越えると経済的に不利益となるばかりでなく、製造される樹脂組成物の成形性等が悪化する。
【0034】
本発明に係わる樹脂組成物の製造は、(A)樹脂混合物、(B)難燃剤、(C)ドリップ防止剤を上記の範囲で秤量し、公知の方法で混合、混練することによりなされる。例えば、粉末、ビーズ、フレーク又はペレット状の各構成物の混合物を、単軸押出機、二軸押出機等の押出機、又はバンバリーミキサー、加圧ニーダー、二本ロール等の混練機等を用いて溶融混練する事により樹脂組成物を製造することができる。液体を配合する必要のある場合には公知の液体注入装置を用いて上記の方法で混練すればよい。また、その際必要に応じて製造せんとする樹脂組成物の性質を阻害しない種類および量の潤滑剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、他の難燃剤、三酸化アンチモンなどの難燃助剤、他のドリップ防止剤、紫外線吸収剤、耐熱性安定剤等の各種樹脂添加剤や、タルク等の充填材、ガラス繊維、炭素繊維、ウィスカー等の補強材等を適宜組合せて添加することができる。
【0035】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1〜4及び比較例1〜5
(1)(A1)グラフト共重合体
(A1−1)
乳化重合法により、ブタジエンゴム含量50重量%、ゴムの重量平均粒径0.3μm、グラフト率40%、アクリロニトリル含量25重量%、マトリックスの重量平均分子量80000の白色粉末状のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を重合し、これを(A1−1)として用いた。
(A1−2)
懸濁重合法により、ブタジエンゴム含量15重量%、ゴムの重量平均粒径1.4μm、グラフト率60%、アクリロニトリル含量24重量%、マトリックスの重量平均分子量130000の白色ビード状のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体を重合し、これを(A1−2)として用いた。
【0036】
(2)(A2)共重合体
塊状重合法によりアクリロニトリル含量26重量%、重量平均分子量160000のアクリロニトリル−スチレン共重合体を重合し、(A2)共重合体として用いた。
(3)(A3)ポリカーボネート
市販のポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製、商品名ノバレックス7022A、同7030A)を使用した。
【0037】
(4)(B)難燃剤
(B−1)ハロゲン化ビスフェノール化合物
市販のテトラブロモビスフェノールA(アルベマールコーポレーション製、商品名RB100PC)を使用した。構造を以下に示す。
【0038】
【化4】
【0039】
(B−2)ハロゲン化エポキシ化合物
市販の末端半封止型テトラブロモビスフェノールA型エポキシオリゴマー(東都化成(株)製、商品名 エポトートTB62)を使用した。構造を以下に示す。
【0040】
【化5】
【0041】
(但し、n=0、1の混合物。)
(B−3)ハロゲン化トリアジン化合物
市販のトリス(トリブロモフェノキシ)シアヌル酸エステル(第一工業製薬(株)製、商品名 ピロガードSR245)を使用した。構造を以下に示す。
【0042】
【化6】
【0043】
(B−4)ホスフェート化合物
ホスフェート化合物として下記の構造を有する市販のリン酸エステルダイマー(大八化学工業(株)製、商品名PX−200)を使用した。
【0044】
【化7】
【0045】
(5)(C)ドリップ防止剤
(C−1)
市販のPFPパウダー(三井デュポンフロロケミカル(株)製、商品名 テフロン6CJ)500kgとステアリン酸マグネシウム500kgを、送風冷却器を装備した回転翼付角型タンブラーを用いて20℃に保ちながら、翼の回転数20rpmで5分間混合し、(C−1)として使用した。
(C−2)
比較例として市販のPFPパウダー(三井デュポンフロロケミカル(株)製、商品名 テフロン6CJ)を何らの前処理もせずに(C−2)として使用した。
(C−3)
比較例として、槽内の冷却を行わない以外は(C−1)と同様にして製造を行い、(C−3)として使用した。混合時の槽内温度は約50℃であった。
【0046】
(6)(D)三酸化アンチモン
難燃助剤として、市販の三酸化アンチモン(ローレルインダストリー(株)製、商品名 ファイアシールドH)を使用した。
(7)(E)ステアリン酸マグネシウム
分散剤として市販のステアリン酸マグネシウムを使用した。
【0047】
(8)樹脂組成物の調製と評価
上記の(A1)グラフト共重合体、(A2)共重合体、(A3)重合体、(B)難燃剤、(C)ドリップ防止剤、(D)三酸化アンチモン、及び(E)ステアリン酸マグネシウムを、第1表に記載した配合割合(重量部)で秤量、タンブラーで混合し、得られた混合物をスクリューフィーダー付二軸押出機で混練して、樹脂組成物のペレットを製造した。この樹脂組成物のペレットからメルトフローレートを測定し、さらに射出成形法により試験片を作製した。各々の試験片について、以下に示す方法でアイゾット衝撃強さを測定し、UL燃焼試験を実施した。添加剤の分散状態については90×50×3mmの試験片を10枚成形し、成形品表面に未混練の添加剤塊が確認された試験片の数で判定した。これらの測定結果を表1に示す。
【0048】
・メルトフローレート
JIS−K7210に準拠した方法で220℃で10kgの荷重をかけて測定し、流動性の指標とした。
・アイゾッド衝撃強さ
JIS−K7110に準拠した方法で23℃で測定し、耐衝撃性の指標とした(試験片厚み1/8インチ、Vノッチ入り)。
・UL燃焼試験
米国アンダーライターラボラトリーズ発行のUL94に準拠した方法で垂直燃焼試験を行い、難燃性の指標とした。V−0クラスの試験片厚み1/12インチ、5Vクラスの試験片厚み1/10インチ
【0049】
【表1】
【0050】
表1より、本発明に係わる樹脂組成物の製造方法において、PFPパウダーと分散剤を25℃以下の温度で混合した(C)ドリップ防止剤を使用することにより、組成物の優れた流動性、及び成形品の優れた耐衝撃性、難燃性を維持したまま、ドリップ防止剤の分散性が向上し、押出機の原料送りフィダーの閉塞や、得られる樹脂組成物中への未混練添加剤塊の混入等の問題が解消することがわかる(実施例1〜4)。ドリップ防止剤として市販のPFPパウダーをそのまま使用した場合(比較例1、3、4、5)や、25℃を超える温度で作製した(C)ドリップ防止剤を使用した場合(比較例2)は、原料送りフィーダーが閉塞するのに加えて、添加剤の分散が不良となり得られた樹脂組成物中に未混練の添加剤塊が多量に含まれることがわかる。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、ドリップ防止剤として低温で製造したPFPパウダーと分散剤との混合物を用いることにより、優れた物性及び難燃性を保持したまま、外観及びドリップ防止効果の優れた難燃性熱可塑性樹脂組成物を容易に製造する方法を提供することができ、その産業上の利用価値は極めて高い。
Claims (1)
- (A)下記の(A1)及び/又は(A2)からなるか、(A1)及び/又は(A2)と、(A3)からなる熱可塑性樹脂混合物100重量部に、
(B)有機ハロゲン化合物及び/又は有機リン化合物からなる難燃剤1〜35重量部と(C)パーフルオロポリマーパウダーからなるドリップ防止剤を配合する際に、
パーフルオロポリマーパウダーを予め、25℃以下の温度で、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸アミドから選ばれる少なくとも一種の分散剤と混合処理した混合物をドリップ防止剤として用いることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
(A1)芳香族ビニル単量体60〜100重量%及び芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体0〜40重量%の混合物を、ゴム質重合体の存在下でグラフト共重合させたグラフト共重合体
(A2)芳香族ビニル単量体60〜100重量%及び芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体0〜40重量%を共重合させた共重合体
(A3)ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、飽和ポリエステルよりなる群から選ばれた少なくとも1種の重合体
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-
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