JP4310134B2 - 表面処理コロイド状炭酸カルシウム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面処理コロイド状炭酸カルシウム及びそれを用いたポリ塩化ビニルゾルなどのペースト状樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリ塩化ビニルゾル、アクリルゾル、シリコーンシーラント、ポリサルファイドシーラント、エポキシ系接着剤等においては、その粘度が、塗工、塗装、施工及び混合などに大きく影響する。これらのペースト状樹脂組成物においては、粘度を高めるため、一般に無機質充填剤などからなる揺変性付与材が添加されている(特許文献1及び2など)。
【0003】
しかしながら、硬化物の物性などから、充填剤を多量に配合することができない場合には、少量で高い粘度を付与することができるヒュームドシリカなどの充填剤が配合されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−199155号公報
【特許文献2】
特開2000−336341号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ヒュームドシリカは一般に価格が高いため、これに代わるものとして低価格で高い粘度を付与することができる充填剤が従来から要望されている。炭酸カルシウムは、シーラント、ゾル等の充填剤として従来から使用されており、この炭酸カルシウムの添加により、高い粘度及び良好なチキソトロピック性を付与することができれば、ヒュームドシリカに代わる、比較的な安価な充填剤として用いることができる。
【0006】
本発明の目的は、高い粘度及び良好なチキソトロピック性を付与することができる表面処理コロイド状炭酸カルシウム及びそれを含有したポリ塩化ビニルゾルなどのペースト状樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムは、炭酸カルシウムに対して亜鉛成分を亜鉛金属換算で0.5〜10重量%含有し、かつ脂肪酸、そのアルカリ金属石鹸、またはそのエステル化合物で表面処理され、かつ水銀圧入法による空隙径分布曲線における最多確率空隙径のピークが0.02μm未満で、最多確率空隙容量が0.05〜0.5cm2/gであることを特徴としている。
【0008】
本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムは、炭酸カルシウムに対して亜鉛成分を亜鉛金属換算で0.5〜10重量%含有している。すなわち、炭酸カルシウム100重量部に対し亜鉛金属換算で亜鉛成分を0.5〜10重量部含有している。亜鉛成分をこのような範囲で含有することにより、微細な炭酸カルシウムとすることができる。このため、水銀圧入法による空隙径分布曲線における最多確率空隙径のピーク及び最多確率空隙容量が上記本発明の範囲内であるものを容易に得ることができる。亜鉛成分のさらに好ましい含有量は亜鉛金属換算で0.8〜7重量%であり、さらに好ましくは1〜5重量%である。本発明において、亜鉛成分の含有量は、原子吸光法により測定することができる。
【0009】
亜鉛成分を含有したコロイド状炭酸カルシウムは、例えば以下のようにして製造することができる。すなわち、水酸化カルシウムスラリーに亜鉛化合物を添加した後、該スラリーに炭酸ガスを反応させて、亜鉛成分を含有するコロイド状炭酸カルシウムを製造することができる。水酸化カルシウムスラリーに添加する亜鉛化合物としては、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛などが挙げられる。亜鉛化合物を添加した水酸化カルシウムスラリーに炭酸ガスを反応させて炭酸カルシウムを製造することにより、微粒子の炭酸カルシウムを製造することができる。
【0010】
従って、本発明の限定された局面に従う表面処理コロイド状炭酸カルシウムは、水酸化カルシウムスラリーに亜鉛化合物を添加した後、該スラリーに炭酸ガスを反応させて得られる亜鉛成分を含有するコロイド状炭酸カルシウムに、脂肪酸、そのアルカリ金属石鹸、またはそのエステル化合物を用いて表面処理することにより得られることを特徴としている。
【0011】
本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムは、水銀圧入法による空隙径分布曲線における最多確率空隙径のピークが0.02μm未満で、最多確率空隙容量が0.05〜0.5cm2/gであることを特徴としている。微細な炭酸カルシウム粒子は非常に凝集しやすく、表面処理の方法によって、凝集体の大きさや数が大きく異なる。上記の最多確率空隙径のピーク及び最多確率空隙容量は、このような凝集体の大きさや数によって変化する。最多確率空隙径のピーク及び最多確率空隙容量が本発明の範囲内となるように表面処理することにより、高い粘度及び良好なチキソトロピック性を付与することができる表面処理コロイド状炭酸カルシウムとすることができる。最多確率空隙径のピークの下限値は特に限定されるものではないが、一般には0.002μm未満の最多確率空隙径のピークを有するものを製造することは困難であるので、最多確率空隙径のピークのより好ましい範囲は、0.002μm以上0.02μm未満である。さらに好ましい最多確率空隙径のピークは、0.05〜0.018μmである。また、最多確率空隙容量のより好ましい範囲は、0.1〜0.3cm3/gである。
【0012】
上記の最多確率空隙径のピーク及び最多確率空隙容量は、例えば、水銀圧入式空隙径測定装置(POROSIMETER2000、CARLO ERBA INSTRUMENTS製)を用いて測定することができる。例えば、圧入最高圧力を160MPa・s、限界最小空隙径を0.002μmとして測定することができる。空隙容量は、炭酸カルシウム粒子間の空隙に水銀が注入されたときの容量から求めることができ、空隙径は炭酸カルシウム粒子間の空隙に水銀を注入したときの圧力及び水銀の表面張力から求めることができる。空隙径分布曲線で最も確率の高い空隙径ピークの中心空隙を最多確率空隙径とし、このピークに含まれる空隙容量を最多確率空隙容量として測定することができる。
【0013】
本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムにおいて、表面処理剤の量は、表面処理炭酸カルシウム中1〜50重量%であることが好ましい。表面処理剤の量は、例えば、示差熱分析によって測定することができる。表面処理剤の量が上記範囲より少ないと、高い粘度及び良好なチキソトロピック性を付与することができるという本発明の効果が十分に得られない場合がある。また、表面処理剤の量が上記範囲よりも多くなると、表面処理の効果が処理量に比例して得られなくなり、経済的に不利なものとなる。
【0014】
本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムは、脂肪酸、そのアルカリ金属石鹸、またはそのエステル化合物で表面処理されている。
例えば、上述のように、水酸化カルシウムスラリーに亜鉛化合物を添加して炭酸ガスと反応させることによって製造した亜鉛成分を含有した炭酸カルシウム粒子のスラリーに、表面処理剤を添加して撹拌した後、脱水することによって本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムを製造することができる。炭酸カルシウムのスラリー液中の炭酸カルシウムの固形分含有量は、炭酸カルシウム粒子の分散性や、脱水の容易さ等を考慮して適宜調節することができる。また、炭酸カルシウム粒子の粒子径等によって適宜調節することができる。一般的には、スラリーの固形分含有量を2〜30重量%、好ましくは5〜20重量%程度となるように調整することにより、適度な粘度のスラリー液とすることができる。
【0015】
表面処理剤として脂肪酸を用いる場合には、酸の形態でスラリー液中に容易に分散させることが困難な場合が多いので、一般には鹸化して、ナトリウム塩やカリウム塩などの形態で炭酸カルシウムスラリー液に添加することが好ましい。
【0016】
また、表面処理コロイド状炭酸カルシウムの他の製造方法として、乾燥したコロイド状炭酸カルシウムの粒子をヘンシェルミキサーなどの撹拌混合機で撹拌しておき、表面処理剤を添加する方法が挙げられる。この方法は、比較的粒子径の大きな炭酸カルシウムに適している。
【0017】
本発明においては、脂肪酸として、不飽和脂肪酸(A)と飽和脂肪酸(B)とを併用することが好ましい。従って、アルカリ金属石鹸として用いる場合には、不飽和脂肪酸(A)及び飽和脂肪酸(B)のそれぞれのアルカリ金属石鹸として併用して用いることが好ましい。また、エステル化合物として用いる場合には、不飽和脂肪酸(A)及び飽和脂肪酸(B)のそれぞれのエステルを併用して用いることが好ましい。
【0018】
不飽和脂肪酸(A)及び飽和脂肪酸(B)は、上述のように、酸の形態で用いてもよいし、金属塩(アルカリ金属石鹸)またはエステルの形態で用いてもよい。不飽和脂肪酸(A)と飽和脂肪酸(B)との混合割合(A)/(B)は、0.5〜5であることが好ましく、さらに好ましくは0.7〜4であり、さらに好ましくは1〜2である。混合割合がこの範囲を外れると、高い粘度及び良好なチキソトロピック性を付与することができるという本発明の効果を十分に得ることができない場合がある。
【0019】
本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムのBET比表面積は、30〜200m2/gであることが好ましい。BET比表面積が30m2/g未満であると、水銀圧入法による空隙径分布曲線における最多確率空隙径のピーク及び最多確率空隙容量が、本発明の範囲内である表面処理炭酸カルシウムを得ることが困難な場合がある。また、BET比表面積が200m2/gより大きな炭酸カルシウムを製造することは一般に困難である場合が多い。BET比表面積のさらに好ましい値は30〜150m2/gであり、さらに好ましくは35〜100m2/gである。
【0020】
本発明において、BET比表面積は、汎用のBET比表面積測定装置によって測定することができる。
表面処理コロイド状炭酸カルシウムにおける表面処理剤の量を(C)重量%とし、BET比表面積を(D)m2/gとした場合に、(C)/(D)の比は、0.1〜0.5の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは0.15〜0.45であり、さらに好ましくは0.2〜0.4である。このような範囲内とすることにより、高い粘度及び良好なチキソトロピック性を付与するとこができるという本発明の効果をより効果的に得ることができる。
【0021】
本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムの水分量は、0.05〜1.0%の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.9%であり、さらに好ましくは0.2〜0.8%である。水分量をこのような範囲にすることにより、ペースト状樹脂組成物に配合した時の貯蔵安定性を良好にすることができる。表面処理炭酸カルシウムの水分量は、カールフィッシャー水分測定機で測定することができる。
【0022】
本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムは、ポリ塩化ビニルゾル、アクリルゾル、印刷インキ、塗料、ポリサルファイドシーラント、ポリシリコーンシーラント、及びエポキシ系接着剤などのペースト状樹脂組成物に添加して、高い粘度及び良好なチキソトロピック性を付与することができるものである。
【0023】
本発明のポリ塩化ビニルゾルは、本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、塩化ビニル樹脂と、可塑剤とを含むことを特徴としている。ポリ塩化ビニルゾルは、例えば、自動車のタイヤ周りや車両底の防音材、ドアやトランクなどの開閉部分のクッション材などとして用いられている。
【0024】
本発明のアクリルゾルは、本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、アクリル樹脂と、可塑剤とを含むことを特徴としている。アクリルゾルもまた、自動車のタイヤ周りや車両底の防音材、ドアやトランクなどの開閉部分のクッション材などとして用いられている。
【0025】
本発明の印刷インキは、本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、色料と、ビヒクルとを含むことを特徴としている。
本発明の塗料は、本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、顔料と、ビヒクルとを含むことを特徴としている。
【0026】
本発明のポリサルファイドシーラントは、本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、ポリサルファイド樹脂と、可塑剤とを含むことを特徴としている。
本発明のシリコーンシーラントは、本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、シリコーン樹脂と、可塑剤とを含むことを特徴としている。
【0027】
ポリサルファイドシーラント、シリコーンシーラント等のシーラントは、主にビルや住宅などの建築物の目地部分、ジョイント部分、ひび割れ部分、二重ガラスの接着部分などに使用され、気密性または水密性を保持するために用いられている。これらのシリコーンシーラントは、その硬化機構によって、1液型と2液型に分類される。
【0028】
本発明のエポキシ系接着剤は、本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、エポキシ系接着剤とを含むことを特徴としている。エポキシ系接着剤は、ビルや住宅などの建築物、自動車、飛行機等に用いられている。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
(不飽和脂肪酸)
本発明においては、上述のように、不飽和脂肪酸(A)と、飽和脂肪酸(B)で亜鉛成分を含有したコロイド状炭酸カルシウムが表面処理されていることが好ましい。不飽和脂肪酸は、分子中に二重結合を持っている脂肪酸であり、例えば、飽和脂肪酸の脱水反応によって生体内で合成される。不飽和脂肪酸としては、炭素数6〜31の不飽和脂肪酸が好ましく、さらに好ましくは炭素数8〜26であり、さらに好ましくは9〜21である。不飽和脂肪酸の具体例としては、オブッシル酸、カルロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、ツズ酸、フィゼテリン酸、モリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、アスクレビン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、セラコレイン酸、キシメン酸、ルメクエン酸、ソルビン酸、リノール酸などが挙げられる。これらの中でも、オレイン酸、エルカ酸及びリノール酸が特に好ましく用いられる。
【0030】
不飽和脂肪酸は、そのまま酸の形態で表面処理に用いてもよいが、金属塩及び/またはエステルの形態で用いてもよい。不飽和脂肪酸の金属塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの中でも、水溶性の金属塩が好ましく用いられる。不飽和脂肪酸の金属塩として、具体的には、上記不飽和脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等が挙げられ、オレイン酸ナトリウム、エルカ酸ナトリウム及びリノール酸ナトリウムが特に好ましく用いられる。
【0031】
不飽和脂肪酸のエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、sec−ブチルエステル、tert−ブチルエステル等の低級脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。
不飽和脂肪酸、その金属塩、及びそのエステルは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
(飽和脂肪酸)
飽和脂肪酸(B)は、分子中に二重結合を持っていない脂肪酸であり、天然脂肪酸はそのほとんどが直鎖状の一塩基性酸である。飽和脂肪酸としては、炭素数6〜31の飽和脂肪酸が好ましく、さらに好ましくは炭素数8〜26であり、さらに好ましくは9〜21である。飽和脂肪酸の具体例としては、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アライン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などが挙げられる。これらの中でも、パルミチン酸、ステアリン酸及びラウリン酸が好ましく用いられる。
【0033】
飽和脂肪酸は、そのまま酸の形態で表面処理に用いてもよいが、金属塩及び/またはエステルの形態で用いてもよい。飽和脂肪酸の金属塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの中でも、水溶性の金属塩が好ましく用いられる。飽和脂肪酸の金属塩として、具体的には、上記飽和脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等が挙げられ、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム及びラウリン酸ナトリウムが特に好ましく用いられる。
【0034】
飽和脂肪酸のエステルとしては、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、sec−ブチルエステル、tert−ブチルエステル等の低級脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。
飽和脂肪酸、その金属塩、及びそのエステルは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
(表面処理コロイド状炭酸カルシウム)
本発明におけるコロイド状炭酸カルシウムの形状は、立方体または球状の形状であることが好ましい。
【0036】
表面処理コロイド状炭酸カルシウムの処理剤の組成は、例えば、ガスクロマトグラフィーによって測定することができる。また、表面処理剤の含有量は、例えば、示差熱分析によって測定することができる。
【0037】
(ポリ塩化ビニルゾル)
本発明の塩化ビニルゾルは、本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、塩化ビニル樹脂と、可塑剤とを含むことを特徴としている。本発明の塩化ビニルゾルには、さらに他の充填剤及び添加剤が含まれていてもよい。
【0038】
可塑剤としては、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジ−n−ブチル(DBP)、フタル酸ジヘプチル(DHP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソノデシル(DIDP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)、テトラヒドロフタル酸エステル、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、アジピン酸ジ−n−アルキル、ジブチルジグリコールアジペート(BXA)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)(DOZ)、セバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、マレイン酸ジブチル(DBM)、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOM)、フマル酸ジブチル(DBF)、リン酸トリクレシル(TCP)、トリエチルホスフェート(TEP)トリブチルホスフェート(TBP)、トリス・(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP)、トリ(クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、トリスジクロロプロピルホスフェート(CRP)、トリブトキシエチルホスフェート(TBXP)、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(TMCPP)、トリフェニルホスフェート(TPP)、オクチルジフェニルホスフェート(CDP)、クエン酸アセチルトリエチル、アセチルクエン酸トリブチルなどがあり、その他にはトリメリット酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、塩素化パラフィン、ステアリン酸系可塑剤など、さらにジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0039】
その他の充填剤としては、無機系のものと有機系のものが挙げられる。無機系のものとしては、炭酸カルシウム(天然品、合成品)、カルシウム・マグネシウム炭酸塩(天然品、合成品)、塩基性炭酸マグネシウム、石英粉、珪石粉、微粉珪酸(乾式品、湿式品、ゲル法品)、微粉末珪酸カルシウム、微粉珪酸アルミニウム、カオリンクレー、パイオフィライトクレー、タルク、セリサイト、雲母、ベントナイト、ネフェリンサイナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック(ファーネス、サーマル、アセチレン)、グラファイト、針状・繊維状では、セピオライト、ワラストナイト、ゾノトライト、チタン酸カリウム、カーボン繊維、ミネラル繊維、ガラス繊維、バルン・ビーズ状では、シラスバルン、フライアッシュバルン、ガラスバルン、シリカビーズ、アルミナビーズ、ガラスビーズなどが挙げられる。有機系のものとしては、木粉、クルミ粉、コルク粉、小麦粉、澱粉、エボナイト粉末、ゴム粉末、リグニン、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコン樹脂、尿素樹脂、繊維状ではセルロース粉末、パルプ粉末、合成繊維粉末などが挙げられる。
【0040】
添加剤としては、アマイドワックス、カストル油ワックスなどのワックスが挙げられる。
表面処理コロイド状炭酸カルシウムの配合割合は、塩化ビニル樹脂、可塑剤、及び液状の添加剤の合計100重量部に対し、5〜400重量部であることが好ましく、さらに好ましくは10〜300重量部である。可塑剤の配合割合は、樹脂100重量部に対し、10〜100重量部であることが好ましい。
【0041】
(アクリルゾル)
本発明のアクリルゾルは、本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、アクリル樹脂と、可塑剤とを含むことを特徴としている。本発明のアクリルゾルには、架橋剤、その他の充填剤及び添加剤が含まれていてもよい。
【0042】
アクリル樹脂を構成するモノマーとしては、メタクリルモノマーで大別すると、非官能性モノマー、一官能性モノマー及び多官能性モノマーに分類できる。非官能性モノマーとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tertブチル、メタクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル−トルリデシル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸セチル−ステアリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどが挙げられ、一官能性モノマーとしては、メタクリル酸、メタクリル酸2ヒドロキシエチル、メタクリル酸2ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸tertブチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリルなどが挙げられ、多官能性モノマーとしては、ジメタクリル酸エチレン、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸デカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタデカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタコンタヘクタエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、メタクリル酸アリル、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、テトラメタクリル酸ペンタエリスリトール、ジメタクリル酸フタル酸ジエチレングリコールなどが挙げられる。アクリル樹脂は、上記の非官能性モノマーと、一官能性モノマー及び/または多官能性モノマーを共重合して製造することができる。
【0043】
架橋剤としては、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂などが挙げられる。可塑剤及び充填剤としては、ポリ塩化ビニルゾルにおいて説明したものと同様のものを用いることができる。
【0044】
表面処理コロイド状炭酸カルシウムの配合割合は、アクリル樹脂、可塑剤、及び液状の添加剤の合計100重量部に対して、5〜400重量部であることが好ましく、さらに好ましくは10〜300重量部である。可塑剤の配合割合は、樹脂100重量部に対し、10〜100重量部であることが好ましい。
【0045】
(印刷インキ)
本発明のインキは、本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、色料と、ビヒクルとを含むことを含むことを特徴としている。本発明の印刷インキには、さらに添加剤が含まれていてもよい。
【0046】
色料には、無機顔料及び有機顔料の顔料と、染料がある。無機顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、ブロンズ粉、ジスアゾイエロー、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、フタロシアニンブルー、メチルバイオレットレーキ、昼光蛍光顔料などがある。有機系顔料としては、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、フタロシアニン顔料、染付けレーキ顔料などがある。染料としては、エオシン、ビクトリアブルー、ニグロシン、C.I.ディスパースレッド60などがある。さらに体質顔料が知られており、通常炭酸カルシウムなどは体質顔料として多く使用されている。体質顔料は、印刷インキの流動性、着色力、隠ぺい力、光沢などの調整用として用いられる。ビヒクルは主に油、樹脂、溶剤、及び添加剤からなる。
【0047】
油は植物油、加工油、鉱油などの種類があり、植物油は主にアマニ油とシナキリ油、加工油は植物油を熱変成したものやマレイン化油、ウレタン油、ビニル化油、鉱油はマシン油、スピンドル油等が使用されている。
【0048】
樹脂としては、天然樹脂のガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、それらの誘導体、合成樹脂のロジン変成フェノール樹脂、尿素樹脂及びメラニン樹脂、ケトン樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール(ブチラール樹脂)、スチレン・マレイン酸樹脂、塩素化ポリプロピレン、アクリル樹脂、クマロン・インデン樹脂、石油樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ニトロセルロース(硝化綿)、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、環化ゴム、塩化ゴム等が挙げられる。
【0049】
溶剤としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、ゴム揮発油(工業ガソリン2号)、ミネラルスピリット、高沸点石油溶剤(インキオイル)、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、テトラリン、ジペンテン、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、n−ブチルアルコール、第二ブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−メチルシクロヘキシルアルコール、トリデシルアルコール(トリデカノール)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン(アノン)、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(DAA)、イソホロン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ブチルセロソルブアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(ブチルカルビトールアセテート)等が挙げられる。
【0050】
添加剤としては、ワックス、ドライヤ、分散剤及び潤滑剤があり、ワックスは植物ろうのカルナウバろう、木ろう、動物ろうのみつろう、無水ラノリン(羊毛ろう)、鉱ろうのパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンろう、オゾケライト(地ろう)、ペトロラタム及びワセリン、合成ろうのポリエチレンワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、塩化パラフィン、脂肪酸アミド等が使用されている。ドライヤは金属石鹸を油脂に溶かした液状ドライヤ、ホウ酸マンガン、ホウ酸鉛、酢酸鉛などを乾性油ワニスに分散したペーストドライヤ等がある。分散剤及び潤滑剤は油性分散剤と水性分散剤があり、油性分散剤はレシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリアクリル酸の部分脂肪酸エステル、アルキルアミン脂肪酸塩、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、ナフテン酸金属石鹸、また商品名ではICI社のソルスパース、ビックマリンクロット社のアンチテラ、楠本化学のディスパロン、水性分散剤はナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルアリールスルホン酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテルなどの非イオン界面活性剤、スチレンマレイン酸樹脂、ポリアクリル酸誘導体などのアルカリ可溶の樹脂などが使用されている。
【0051】
表面処理コロイド状炭酸カルシウムの配合割合は、色料、ビヒクル及び添加剤の合計100重量部に対し、0.01〜50重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜20重量部である。
【0052】
(塗料)
本発明の塗料は、本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、顔料と、ビヒクルとを含んでいる。本発明の塗料には、さらに添加剤が含まれていてもよい。
【0053】
顔料には無機顔料と有機顔料があり、無機顔料は亜鉛華、二酸化チタン、ベンがら、鉄黒、酸化クロム、コバルトブルー、チタンイエロー、シリカ、鉛丹、黄色酸化鉄、アルミナホワイト、黄鉛、ジンククロメート、モリブデンレッド、紺青、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、群青、マンガンバイオレット、カーボンブラック、アルミニウム粉、ブロンズ粉、亜鉛末、有機系顔料はナフトールレッド、ベンズイミダゾロンボルドー、ファーストイエローG、ジスアゾイエローHR、縮合アゾイエロー、縮合アゾレッド、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、ニッケルアゾイエロー、キナクリドンレッド、キナクリドンスカーレット、ペリレンレッド、ペリレンマルーン、ペリノンオレンジ、チオインジゴボルドー、フラバンスロンイエロー、ジアンスラキノリルレッド、インダスレンブルー、ジオキサジンバイオレット、キノフタロンイエロー、ピロールレッド、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、イソインドリノンイエロー、イソインドリンイエローなどが使用されている。さらに体質顔料が使用されており、通常炭酸カルシウムなどは無機顔料の中の体質顔料として多く使用されている。体質顔料は塗料の流動性、着色力、隠ぺい力、光沢などの調整用として用いられる。
【0054】
ビヒクルは主に樹脂、硬化剤、及び溶剤からなる。樹脂はアクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、セルロース系樹脂、天然樹脂、硬化剤はメラニン樹脂、ポリイソシアネート、ポリアミン樹脂、溶剤は炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、水などが使用されている。
【0055】
添加剤は主にレベリング剤、レオロジー調整剤、可塑剤、乳化剤、顔料分散剤、光安定剤などが使用されている。
表面処理コロイド状炭酸カルシウムの配合割合は、顔料、ビヒクル及び添加剤の合計100重量部に対し、0.1〜100重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.3〜50重量部である。
【0056】
(シリコーンシーラント)
本発明のシリコーンシーラントは、本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、シリコーン樹脂と、可塑剤とを含んでいる。本発明のシリコーンシーラントには、さらに架橋剤、その他の充填剤及び添加剤が含まれていてもよい。
【0057】
シリコーン樹脂は、一般に、その主鎖の骨格が珪素(Si)と酸素(O)からなるオルガノポリシロキサンである。
シリコーン樹脂としては、例えば以下のようにして製造されたものが用いられる。二酸化珪素を電気炉で還元して得られた金属珪素(Si)の粉砕品と塩化メチル(CH3Cl)を銅触媒の存在下、高温で反応させて粗クロロシラン〔(CH3)nSiCl4-n〕を合成し、これを精留して、ジメチルジクロロシラン(CH3)2SiCl2を取り出す。ジメチルジクロロシランは加水分解すると同時に縮合し、環状体と水酸基を持つ直鎖状体となる。環状体、直鎖状体ともにH2O存在下でアルカリ触媒または酸触媒を用いて重合することによって、両末端に水酸基を有するシリコーン樹脂とすることができる。
【0058】
架橋剤は、加水分解性の官能基が2個以上あるシランまたはシロキサン系化合物が用いられ、その種類としては、脱オキシム形、脱酢酸形、脱アルコール形、脱アミド形、脱ヒドロキシルアミン形、粉砕したオルガノポリシロキサンなどが挙げられる。
【0059】
可塑剤、充填剤及び添加剤としては、ポリ塩化ビニルゾルにおいて説明したものと同様のものを用いることができる。
表面処理コロイド状炭酸カルシウムの配合割合は、シリコーン樹脂、架橋剤、可塑剤、及び液状の添加剤の合計100重量部に対して、5〜400重量部であることが好ましく、さらに好ましくは10〜300重量部である。可塑剤の配合割合は、樹脂100重量部に対し、10〜100重量部であることが好ましい。
【0060】
(ポリサルファイドシーラント)
本発明のポリサルファイドシーラントは、本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、ポリサルファイド樹脂と、可塑剤とを含んでいる。本発明のポリサルファイドシーラントは、さらにその他の充填剤及び添加剤が含まれていてもよい。
【0061】
ポリサルファイド樹脂としては、例えば以下のようにして製造されたものが用いられる。エチレンオキサイドと塩酸の反応によって得られるエチレンクロルヒドリンに、パラホルムアルデヒドを反応させて得られたジクロロエチルホルマールを出発原料とし、多硫化ナトリウムと少量の活性剤及び水酸化マグネシウムのコロイド状懸濁液中に、ジクロロホルマールを攪拌、加熱しながら添加し、ポリサルファイド樹脂を製造することができる。
【0062】
近年は、分子量末端にSH基(メルカプト基)を有し、主鎖中にウレタン結合を有する変性ポリサルファイド樹脂を用いる場合が多い。
可塑剤、充填剤、及びその他の添加剤としては、ポリ塩化ビニルゾルにおいて説明したものと同様のものを用いることができる。
【0063】
表面処理コロイド状炭酸カルシウムの配合割合は、ポリサルファイド樹脂(変性ポリサルファイド樹脂)、可塑剤、及び液状の添加剤の合計100重量部に対して、5〜400重量部とすることが好ましく、10〜300重量部とすることがさらに好ましい。可塑剤の配合割合は、樹脂100重量部に対し、10〜100重量部であることが好ましい。
【0064】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
【0065】
<表面処理コロイド状炭酸カルシウムの製造>
(実施例1)
15℃、5%の水酸化カルシウムスラリー30kgを60リットルの容器に入れ、分散機で攪拌しながら、硫酸亜鉛7水和物を200g添加し、炭酸ガスを100リットル/分でバブリングした。得られた粒子のスラリーを分散機で攪拌しながら、水酸化ナトリウムで鹸化したステアリン酸100g、パルミチン酸100gとオレイン酸200gをスラリーに添加し、5分間攪拌した後、プレス脱水した。得られた脱水ケーキを乾燥した後、粉体を得た。
【0066】
(実施例2)
鹸化したステアリン酸250gとオレイン酸150gとを用いる以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0067】
(実施例3)
鹸化したステアリン酸50gとパルミチン酸50gとオレイン酸220gを用いる以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0068】
(実施例4)
硫酸亜鉛7水和物100gを添加する以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0069】
(実施例5)
硫酸亜鉛7水和物400gを添加する以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0070】
(実施例6)
硫酸亜鉛7水和物500gを添加する以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0071】
(比較例1)
硫酸亜鉛を添加しない以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0072】
(比較例2)
硫酸亜鉛を15g添加する以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0073】
(比較例3)
硫酸亜鉛を1000g添加する以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0074】
(比較例4)
表面処理剤を添加しない以外は、上記実施例1と同様に行った。
【0075】
(比較例5)
15℃、5%の水酸化カルシウムスラリー30kgを60リットルの容器に入れ、分散機で攪拌しながら、炭酸ガスを100リットル/分でバブリングした。得られた粒子のスラリーを90℃まで昇温させ、分散機で4時間攪拌する。得られた粒子のスラリーに鹸化したステアリン酸15g、パルミチン酸15gとオレイン酸30gを添加し、5分間攪拌した後、プレス脱水した。得られた脱水ケーキを乾燥した後、粉体を得た。
【0076】
(比較例6)
15℃、5%の水酸化カルシウムスラリー30kgを60リットルの容器に入れ、分散機で攪拌しながら、炭酸ガスを100リットル/分で炭酸化率90%となるまでバブリングし、硫酸亜鉛7水和物を200g添加し、続けて、炭酸ガスを100リットル/分でバブリングした。得られた粒子のスラリーを分散機で攪拌しながら、水酸化ナトリウムで鹸化したステアリン酸100g、パルミチン酸100gとオレイン酸200gをスラリーに添加し、5分間攪拌した後、プレス脱水した。得られた脱水ケーキを乾燥した後、粉体を得た。
【0077】
<粉体試験>
実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた表面処理コロイド状炭酸カルシウムについて、亜鉛成分は原子吸光分光分析装置Solaar S4(日本ジャーレルアッシュ株式会社製)を用いて測定し、水銀圧入式空隙径測定装置を用いて、最多確率空隙径及び最多確率空隙容量を測定した。測定条件は、圧入最高圧力を160MPa・sとし、限界最小空隙径を0.002μmとした。
【0078】
また、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の合計の処理量を示差熱分析によって測定した。また、表面処理コロイド状炭酸カルシウムにおける不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸の割合をガスクロマトグラフィーにより測定した。これらの結果を表1に示す。
【0079】
また、不飽和脂肪酸及び飽和脂肪酸の表面処理の合計量を(C)重量%とし、BET比表面積を(D)m2/gとしたときの(C)/(D)の値を表1に示す。
【0080】
また、カールフィッシャー水分測定機で測定した表面処理コロイド状炭酸カルシウムの水分量を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
<ポリ塩化ビニルゾルの粘度試験>
実施例1〜6及び比較例1〜6の表面処理コロイド状炭酸カルシウムについて、ポリ塩化ビニルゾルを調製し、その粘度を測定した。ポリ塩化ビニルゾルは、表面処理コロイド状炭酸カルシウム200g、ポリ塩化ビニル樹脂(商品名「ZEST P21」新第一塩ビ社製)300g、DINP300g、重質炭酸カルシウム(商品名「ホワイトンP−30」白石工業株式会社製)150g、接着付与剤(商品名「バーサミド140」ヘンケルジャパン製)10g、及び希釈剤(商品名「ミネラルターペン」山桂産業株式会社製)40gを十分に混練して調製した。得られたポリ塩化ビニルゾルについて初期粘度及び7日後の粘度を測定した。粘度は、BH型粘度計(TOKIMEC製)を用い、20℃にて2rpmと20rpmで測定した。なお、粘度上昇率は、混練直後の粘度に対する7日後の粘度の上昇率を示している。測定結果を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
表2から明らかなように、本発明に従う実施例1〜6の表面処理コロイド状炭酸カルシウムを用いたポリ塩化ビニルゾルは、高い粘度及び良好なチキソトロピック性を有することがわかる。また、貯蔵安定性も良好であることがわかる。
【0085】
<アクリルゾルの粘度試験>
実施例1〜6及び比較例1〜6の表面処理コロイド状炭酸カルシウムについて、アクリルゾルを調製し、その粘度を測定した。アクリルゾルの配合は、表面処理コロイド状炭酸カルシウム150g、アクリル樹脂300g、DINP300g、重質炭酸カルシウム(商品名「ホワイトンP−30」白石工業株式会社製)100g、希釈剤(商品名「ミネラルターペン」山桂産業株式会社製)50g、接着付与剤(商品名「バーサミド140」ヘンケルジャパン製)100g、及びイソシアネート樹脂2.5gを十分に混練して調製した。得られたアクリルゾルについて初期粘度及び7日後の粘度を、上記と同様にして測定した。測定結果を表3に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
表3から明らかなように、本発明に従う実施例1〜6の表面処理コロイド状炭酸カルシウムを用いたアクリルゾルは、高い粘度及び良好なチキソトロピック性を有することがわかる。また、貯蔵安定性も良好であることがわかる。
【0088】
<印刷インキ及び塗料の粘度試験>
実施例1〜6及び比較例1〜6の表面処理コロイド状炭酸カルシウムについて、印刷インキ及び塗料のそれぞれに共通する長油アルキドゾルを製造し、その粘度を測定した。長油アルキドゾルは、表面処理コロイド状炭酸カルシウム7.5gと長油アルキド樹脂160g、酸化チタン63.0g、重質炭酸カルシウム(商品名「ホワイトンP−30」白石工業株式会社製)25.5g、合成炭酸カルシウム(商品名「ホモカルD」白石工業株式会社製)25.5g、ドライヤ(メチルエチルケトオキシム)1.7g、スキンナー(ナフテン酸ジルコン−ナフテン酸コバルト混合品)0.6gとを十分に混練して調製した。得られた長油アルキドゾルの混練1日後の粘度を、上記と同様にして測定した。測定結果を表4に示す。
【0089】
【表4】
【0090】
表4から明らかなように、本発明に従う実施例1〜6の表面処理コロイド状炭酸カルシウムを用いた長油アルキドゾルは、比較例1〜6の表面処理コロイド状炭酸カルシウムを用いた長油アルキドゾルに比べ、高い粘度及び良好なチキソトロピック性を示すことがわかる。
【0091】
<2液型ポリサルファイドシーラント>
実施例1〜6及び比較例1〜6の表面処理コロイド状炭酸カルシウムについて、2液型ポリサルファイドシーラントを調製し、その粘度を測定した。2液型ポリサルファイドシーラントは、表面処理コロイド状炭酸カルシウム60g、ポリサルファイドポリマー(商品名「チオコールLP55」東レチオコール株式会社製)100g、増粘剤(商品名「アエロジル200」日本アエロジル株式会社製)0.5g、硫黄0.1g、重質炭酸カルシウム(商品名「ホワイトンP−30」白石工業株式会社製)40g、希釈剤(商品名「トヨハラックス150」東ソー株式会社製)22g、可塑剤(商品名「ダイヤタイザーD−160」)35g、触媒(商品名「チオリードB−2」)7.5g及びステアリン酸0.75gを十分に混練して調製した。2液型ポリサルファイドシーラントについて混練1日後の粘度を、上記と同様にして測定した。測定結果を表5に示す。
【0092】
【表5】
【0093】
表5から明らかなように、本発明に従う実施例1〜6の表面処理コロイド状炭酸カルシウムを用いた2液型ポリサルファイドシーラントは、高い粘度及び良好なチキソトロピック性を有することがわかる。
【0094】
<シリコーンゾルの粘度試験>
実施例1〜6及び比較例1〜6の表面処理コロイド状炭酸カルシウムについて、シリコーンゾルを製造し、その粘度を測定した。シリコーンゾルは、表面処理コロイド状炭酸カルシウム200gとシリコーンオイル(商品名「TSF451−1M」GM東芝シリコーン社製)200gとを十分に混練して調製した。測定結果を表6に示す。
【0095】
【表6】
【0096】
表6から明らかなように、本発明に従う実施例1〜6の表面処理コロイド状炭酸カルシウムを用いたシリコーンゾルは、比較例1〜6の表面処理コロイド状炭酸カルシウムを用いたシリコーンゾルに比べ、高い粘度及び良好なチキソトロピック性を示すことがわかる。
【0097】
一般的にシリコーンシーラントはシリコーンゾルの粘度と良好な相関性を示す。よって、本発明に従う実施例1〜6の表面処理コロイド状炭酸カルシウムを用いたシリコーンシーラントも高い粘度及び良好なチキソトロピック性を示すと言える。
【0098】
<エポキシゾルの粘度試験>
実施例1〜6及び比較例1〜6の表面処理コロイド状炭酸カルシウムについて、エポキシゾルの粘度を測定した。エポキシゾルの配合は、表面処理コロイド状炭酸カルシウム40gとエポキシ樹脂(商品名「エピクロン830」大日本インキ化学工業株式会社製)100gとを30分間、減圧下で混練し、得られたエポキシゾルの混練1日後の粘度を20℃で測定した。粘度は、B8U型粘度計(TOKIMEC製)によって、2rpmと20rpmで測定した。測定結果を表7に示す。
【0099】
【表7】
【0100】
表7に示す結果から明らかなように、本発明の実施例1〜6の表面処理コロイド状炭酸カルシウムは、エポキシゾルに高い粘度及び良好ナチキソトロピック性を付与していることがわかる。
【0101】
一般的にエポキシ系接着剤の粘度はエポキシゾルの粘度と良好な相関性を示す。よって、本発明に従う実施例1〜6の表面処理コロイド状炭酸カルシウムを用いたエポキシ系接着剤も高い粘度及び良好なチキソトロピック性を示すと言える。
【0102】
【発明の効果】
本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムは、ポリ塩化ビニルゾル、アクリルゾル、印刷インキ、塗料、ポリサルファイドシーラント、及びシリコーンシーラント、及びエポキシ系接着剤等のペースト状樹脂組成物に配合して、高い粘度及び良好なチキソトロピック性を付与することができる。また、粘度の経時変化が少なく、貯蔵安定性に優れている。本発明の表面処理コロイド状炭酸カルシウムは、主に炭酸カルシウムからなるものであるので、比較的安価に製造することができ、経済的に有利な増粘剤として用いることができる。
Claims (13)
- 炭酸カルシウムに対して亜鉛成分を亜鉛金属換算で0.5〜10重量%含有し、かつ脂肪酸、そのアルカリ金属石鹸、またはそのエステル化合物で表面処理され、かつ水銀圧入法による空隙径分布曲線における最多確率空隙径のピークが0.02μm未満で、最多確率空隙容量が0.05〜0.5cm2/gであることを特徴とする表面処理コロイド状炭酸カルシウム。
- 水酸化カルシウムスラリーに、硫酸亜鉛、塩化亜鉛及び硝酸亜鉛から選ばれる少なくとも1種の亜鉛化合物を添加した後、該スラリーに炭酸ガスを反応させて得られる亜鉛成分を含有するコロイド状炭酸カルシウムに、脂肪酸、そのアルカリ金属石鹸、またはそのエステル化合物を用いて表面処理することにより得られることを特徴とする請求項1に記載の表面処理コロイド状炭酸カルシウム。
- 前記表面処理剤の量が、表面処理炭酸カルシウム中1〜50重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面処理コロイド状炭酸カルシウム。
- 前記脂肪酸として、不飽和脂肪酸(A)と飽和脂肪酸(B)とが併用されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面処理コロイド状炭酸カルシウム。
- 不飽和脂肪酸(A)と飽和脂肪酸(B)との割合(A)/(B)が、0.5〜5であることを特徴とする請求項4に記載の表面処理コロイド状炭酸カルシウム。
- BET比表面積が30〜200m2/gであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理コロイド状炭酸カルシウム。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、塩化ビニル樹脂と、可塑剤とを含むことを特徴とするポリ塩化ビニルゾル。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、アクリル樹脂と、可塑剤とを含むことを特徴とするアクリルゾル。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、色料と、ビヒクルとを含むことを特徴とする印刷インキ。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、顔料と、ビヒクルとを含むことを特徴とする塗料。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、ポリサルファイド樹脂と、可塑剤とを含むことを特徴とするポリサルファイドシーラント。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、シリコーン樹脂と、可塑剤とを含むことを特徴とするシリコーンシーラント。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理コロイド状炭酸カルシウムと、エポキシ系樹脂とを含むことを特徴とするエポキシ系接着剤。
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