JP3893586B2 - 表面被覆炭酸カルシウム粒子、その製造方法及び接着剤 - Google Patents

表面被覆炭酸カルシウム粒子、その製造方法及び接着剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面被覆炭酸カルシウム粒子、その製造方法及び該炭酸カルシウム粒子を含有する接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭酸カルシウムを接着剤用の充填材として使用する場合、炭酸カルシウムは、(a)接着剤を構成する樹脂成分、その他の配合成分への分散性が優れていること、(b)接着剤と被着体との接着性を改善すること、(c)充填容器で保管中の接着剤の粘度特性を安定させるなどの性能を備えていることが要望されている。
【0003】
接着剤用の充填材として使用される炭酸カルシウムに上記(a)〜(c)の性能が要望されている理由は、以下の通りである。
【0004】
炭酸カルシウム粒子を均一に分散させるために、樹脂成分、その他の配合成分などと炭酸カルシウムとの混合に、高せん断力及び長時間を要する。炭酸カルシウムの分散性が優れていることは、エネルギーと時間を低減し、コストダウンにつながる。
【0005】
接着剤と被着体との接着性が悪いと、接着剤が硬化するまでに接着剤と被着体の間でスライディング(スリップ)が生じる。そのため、接着剤と被着体の間でスライディングが生じたままで硬化すれば、目的とする接着精度やシーリング機能が得られない。
【0006】
接着剤を充填容器で保管中に粘度特性の変化やチキソ性の変化が生じると、接着剤施工時における作業性の低下、接着不良、シーリング不良などが起こる。
【0007】
しかしながら、今日まで知られている炭酸カルシウムは、上記(a)〜(c)の性能を十分に備えていない。
【0008】
例えば、特開平11−349846号公報は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸及び樹脂酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物で表面処理された炭酸カルシウムを開示している。更に、上記公報は、この炭酸カルシウムが樹脂の充填剤として好適であること、及び該炭酸カルシウムを硬化型樹脂組成物に使用した場合には、乾燥時の耐熱性に優れ、優れたチキソ性、耐スランプ性及び良好な貯蔵安定性を付与できることを開示している。
【0009】
しかしながら、この炭酸カルシウムが有しているチキソ性は不十分であり、その結果上記(c)の性能を十分に備えていない。更に、この炭酸カルシウムは、上記(a)及び(b)の性能も不十分である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記(a)〜(c)の性能に優れた炭酸カルシウム粒子を提供することである。
【0011】
本発明の課題は、接着剤を構成する樹脂成分、その他の配合成分に容易に分散し、配合後の接着剤組成物に優れた接着性及び粘度安定性を付与できる表面被覆炭酸カルシウム粒子を提供することである。
【0012】
本発明の課題は、上記表面被覆炭酸カルシウム粒子の製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の課題は、上記表面被覆炭酸カルシウム粒子を含有する接着剤を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の研究を重ねてきた。その結果、炭酸カルシウム粒子の表面を、まず(1A)飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種と(1B)不飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種とが特定の割合で混合された脂肪酸混合物(1)を一定の割合で被覆して第一コーティング層を形成し、更に特定の有機化合物(2)を一定の割合で被覆して第二コーティング層を形成することにより、上記(a)〜(c)の性能に優れた炭酸カルシウム粒子が得られることを見い出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
1.本発明は、炭酸カルシウム粒子表面が、脂肪酸混合物で被覆され、更に有機化合物で被覆された炭酸カルシウム粒子であって、
脂肪酸混合物が、(1A)飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種と(1B)不飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種との混合割合(重量比)が(1A):(1B)=30〜70:70〜30である脂肪酸混合物であり、
脂肪酸混合物の被覆量が表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり約1〜約3mgであり、
有機化合物が、フタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、トリメリット酸エステル及び金属アルコキシドからなる群から選ばれた少なくとも1種であり、
有機化合物の被覆量が表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり約0.1〜約1mgである
表面被覆炭酸カルシウム粒子である。
2.本発明は、表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積が約10〜約40m2/gであり、水銀圧入法による細孔径分布曲線で一次細孔径のピークが約0.03〜約0.08μmであり且つ一次細孔容積が約0.1〜約0.5cm3/gである上記1に記載の表面被覆炭酸カルシウム粒子である。
3.本発明は、炭酸カルシウム粒子表面を、
(1A)飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種と(1B)不飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種との混合割合(重量比)が(1A):(1B)=30〜70:70〜30である脂肪酸混合物を用いて、その被覆量が表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり約1〜約3mgになるように被覆し、
次にフタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、トリメリット酸エステル及び金属アルコキシドからなる群から選ばれた少なくとも1種の有機化合物を用いて、その被覆量が表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり約0.1〜約1mgになるように被覆して得ることができる表面被覆炭酸カルシウム粒子である。
4.本発明は、飽和脂肪酸及びその塩が、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム及びラウリン酸ナトリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種である上記1に記載の表面被覆炭酸カルシウム粒子である。
5.本発明は、不飽和脂肪酸及びその塩がオレイン酸、エルカ酸、オレイン酸ナトリウム及びエルカ酸ナトリウムからなる群より選ばれた少なくとも1種である上記1に記載の表面被覆炭酸カルシウム粒子である。
6.本発明は、(1A)飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種と(1B)不飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種との混合割合(重量比)が(1A):(1B)=35〜65:65〜40である脂肪酸混合物を用いて被覆された上記1に記載の表面被覆炭酸カルシウム粒子である。
7.本発明は、脂肪酸混合物の被覆量が、表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり約1.5〜約2.5mgである上記1に記載の表面被覆炭酸カルシウム粒子である。
8.本発明は、有機化合物が、フタル酸エステル、リン酸エステル及びアジピン酸エステルからなる群より選ばれた少なくとも1種である上記1に記載の表面被覆炭酸カルシウム粒子である。
9.本発明は、有機化合物が、フタル酸ジイソノニル、リン酸トリクレジル及びポリアジピン酸プロピルからなる群より選ばれた少なくとも1種である上記8に記載の表面被覆炭酸カルシウム粒子である。
10.本発明は、有機化合物の被覆量が、表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり約0.15〜約0.5mgである上記1に記載の表面被覆炭酸カルシウム粒子である。
11.本発明は、炭酸カルシウム粒子表面を、
(1A)飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種と(1B)不飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種との混合割合(重量比)が(1A):(1B)=30〜70:70〜30である脂肪酸混合物を用いて、その被覆量が表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり約1〜約3mgになるように被覆し、
次にフタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、トリメリット酸エステル及び金属アルコキシドからなる群から選ばれた少なくとも1種の有機化合物を用いて、その被覆量が表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり約0.1〜約1mgになるように被覆する
ことを含む表面被覆炭酸カルシウム粒子の製造方法である。
12.本発明は、接着剤に配合される上記1〜10に記載の表面被覆炭酸カルシウム粒子である。
13.本発明は、上記1〜10に記載の表面被覆炭酸カルシウム粒子を含有する接着剤である。
14.本発明は、上記1〜10に記載の表面被覆炭酸カルシウム粒子を接着剤に配合して、接着剤に優れた接着性及び粘度安定性を付与する方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
表面被覆炭酸カルシウム粒子
本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子は、粒子表面が、(i)(1A)飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種と(1B)不飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種との混合割合(重量比)が前者:後者=30〜70:70〜30である脂肪酸混合物(1)で被覆され、更に(ii)フタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、トリメリット酸エステル及び金属アルコキシドからなる群から選ばれた少なくとも1種の有機化合物(2)で被覆されている。
【0016】
原料である炭酸カルシウム粒子としては、公知の方法によって製造されるものをいずれも使用することができる。従って、本発明では、天然炭酸カルシウム粒子(重質炭酸カルシウム粒子)及び合成炭酸カルシウム粒子(軽質炭酸カルシウム粒子又は膠質炭酸カルシウム粒子)をいずれも使用することができる。原料の炭酸カルシウム粒子のBET比表面積は、好ましくは約12〜約50m2/g、より好ましくは約18〜約30m2/gである。
【0017】
原料の炭酸カルシウム粒子は、水銀圧入法による細孔径分布曲線で一次細孔径のピークが約0.01〜約0.3μmであり且つ一次細孔容積が約0.05〜約3cm3/gであるのが好ましい。
【0018】
前者の天然炭酸カルシウム粒子は、例えば、石灰質原石を機械的に粉砕分級し、所望の粒度とすることによって製造される。
【0019】
後者の合成炭酸カルシウム粒子は、例えば、石灰石原石をコークス、石油系燃料(重油、軽油など)、天然ガス、液化石油ガス(LPG)などと混焼し、いったん酸化カルシウム(生石灰)を製造し、次いでこれを水と反応させて水酸化カルシウム(消石灰)スラリーとし、石灰石原石の焼成時に発生した炭酸ガスと水酸化カルシウムスラリーとを反応させて、所望の粒径・粒子形状とすることによって製造される。
【0020】
後者の合成炭酸カルシウム粒子の製造方法につき、更に詳述すると、以下の通りである。即ち、初期濃度0.1〜10%、初期温度5〜20℃の消石灰の水スラリーと炭酸ガスとを反応させ、BET比表面積30m2/g以上の初期炭酸カルシウムからなるスラリーを得、次に、得られた炭酸カルシウムスラリーを50℃以上で静置又は攪拌して結晶成長させる。BET比表面積や細孔径の調製は、主に初期炭酸カルシウム生成条件及び結晶成長条件を適宜選択すればよい。
【0021】
本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子は、例えば、炭酸カルシウム粒子表面を、まず脂肪酸混合物で被覆し、次に特定の有機化合物で被覆することにより製造される。
【0022】
本発明の炭酸カルシウム粒子表面に被覆される脂肪酸混合物は、(1A)飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種と(1B)不飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種との混合割合(重量比)が(1A):(1B)=30〜70:70〜30である脂肪酸混合物である。
【0023】
飽和脂肪酸としては、例えば炭素数6〜31の飽和脂肪酸などを挙げることができる。飽和脂肪酸としては、具体的には、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などを例示できる。これらの中でも、パルミチン酸、ステアリン酸及びラウリン酸が好ましい。
【0024】
飽和脂肪酸の塩としては、例えば上記飽和脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩などが挙げられる。飽和脂肪酸の塩としては、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム及びラウリン酸ナトリウムが好ましい。
【0025】
これら飽和脂肪酸及びその塩は、1種単独で又は2種以上混合して使用できる。
【0026】
不飽和脂肪酸としては、例えば炭素数6〜31の不飽和脂肪酸などを挙げることができる。不飽和脂肪酸としては、具体的には、オレイン酸、パルミトレイン酸、エルカ酸、カプロレイン酸、リンデル酸、エイコセン酸などの二重結合を1個有する不飽和脂肪酸、リノール酸などの二重結合を2個有する不飽和脂肪酸、ヒラゴン酸、リノレン酸などの二重結合を3個有する不飽和脂肪酸、アラキドン酸などの二重結合を4個有する不飽和脂肪酸、タリリン酸などの三重結合を有する不飽和脂肪酸などを例示できる。これらの中でも、二重結合を1個有する不飽和脂肪酸が好ましく、オレイン酸及びエルカ酸が特に好ましい。
【0027】
不飽和脂肪酸の塩としては、例えば上記不飽和脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩などが挙げられる。不飽和脂肪酸の塩としては、オレイン酸ナトリウム及びエルカ酸ナトリウムが好ましい。
【0028】
これら不飽和脂肪酸及びその塩は、1種単独で又は2種以上混合して使用できる。
【0029】
本発明では、(1A)飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種と(1B)不飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種との重量比が、脂肪酸混合物100重量部当たり、30〜70:70〜30の範囲、好ましくは35〜65:65〜35の範囲である脂肪酸混合物を使用する。この範囲を逸脱すると、表面被覆炭酸カルシウム粒子を配合した組成物は、チキソ性に劣り、該組成物を被着体に塗布し、硬化させる際にダレを生じると共に、被着体との接着性が乏しくなるという不都合が生ずる。
【0030】
本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子表面には、上記脂肪酸混合物が表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり約1〜約3mg被覆されている。上記脂肪酸混合物の被覆量がこの範囲を外れると、本発明の目的を達成できない。
【0031】
本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子表面には、上記脂肪酸混合物が表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり約1.5〜約2.5mg被覆されているのが好ましい。
【0032】
本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子は、上記脂肪酸混合物で被覆された炭酸カルシウム粒子の上に、更に特定の有機化合物で被覆されている。
【0033】
有機化合物は、フタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、トリメリット酸エステル及び金属アルコキシドからなる群から選ばれた少なくとも1種である。上記有機化合物としては、15℃、1気圧で液状形態をしているものが好ましい。
【0034】
フタル酸エステルとしては、例えば、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジヘプチル(DHP)、フタル酸ジ−n−オクチル(DOP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ジイソデシル(DIDP)などが挙げられる。
【0035】
リン酸エステルとしては、例えば、リン酸トリブチル(TBP)、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリオクチル(TOP)、リン酸トリクレジル(TCP)などが挙げられる。
【0036】
アジピン酸エステルとしては、例えば、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、ポリアジピン酸プロピル(ポリプロピレンアジペート)などが挙げられる。
【0037】
セバシン酸エステルとしては、例えば、セバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0038】
アゼライン酸エステルとしては、例えば、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOZ)などが挙げられる。
【0039】
トリメリット酸エステルとしては、例えば、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(TOTM)などが挙げられる。
【0040】
金属アルコキシドとしては、例えば、一般式(1)
4-n−M(OR)n (1)
[式中、Rはアルキル基を示す。Xは置換もしくは未置換のアルキル基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基又は塩素原子を示す。MはTi、Si又はAlを示す。nは1〜4の整数を示す。]
で表される金属アルコキシドなどを挙げることができる。
【0041】
MがTiを示す金属アルコキシドとしては、具体的にはイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル−アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネートなどが挙げられる。
【0042】
MがSiを示す金属アルコキシドとしては、具体的にはビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0043】
MがAlを示す金属アルコキシドとしては、具体的にはアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどが挙げられる。
【0044】
上記に示した各種の有機化合物のうちで、フタル酸エステル、リン酸エステル及びアジピン酸エステルが好ましい。
【0045】
これらの有機化合物のうちで、フタル酸ジイソノニル、リン酸トリクレジル、ポリアジピン酸プロピル及びアジピン酸ジ−2−エチルヘキシルがより好ましく、フタル酸ジイソノニル、リン酸トリクレジル及びポリアジピン酸プロピルが特に好ましい。
【0046】
本発明では、上記有機化合物を1種単独で又は2種以上混合して使用できる。
【0047】
上記特定の有機化合物以外の有機化合物を表面被覆した炭酸カルシウム粒子を配合した接着剤は、チキソ性に劣り、該接着剤を被着体に塗布し、硬化させる際にダレを生じると共に、被着体との接着性が乏しくなるという不都合が生ずる。
【0048】
また、炭酸カルシウム粒子を脂肪酸混合物のみで表面被覆した場合及び炭酸カルシウム粒子を上記特定の有機化合物のみで表面被覆した場合も、同様の不都合が生ずる。即ち、脂肪酸混合物及び特定有機化合物のいずれか一つで表面被覆した炭酸カルシウム粒子を配合した接着剤は、チキソ性に劣り、該接着剤を被着体に塗布し、硬化させる際にダレを生じると共に、被着体との接着性が乏しくなる。更に、脂肪酸混合物及び特定有機化合物のいずれか一つで表面被覆した炭酸カルシウム粒子は、樹脂成分などへの分散性に劣る。
【0049】
本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子表面には、上記有機化合物が表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり約0.1〜約1mg被覆されている。上記有機化合物の被覆量がこの範囲を外れると、本発明の目的を達成できない。
【0050】
本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子表面には、上記有機化合物が表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり約0.15〜約0.5mg被覆されているのが好ましい。
【0051】
分散性及び粘度特性に著しく優れた表面被覆炭酸カルシウム粒子を得るためには、表面被覆炭酸カルシウム粒子は、BET比表面積が約10〜約40m2/gであるのが好ましく、BET比表面積が約15〜約25m2/gであるのがより好ましい。
【0052】
分散性及び粘度特性に著しく優れた表面被覆炭酸カルシウム粒子であるためには、表面被覆炭酸カルシウム粒子は、水銀圧入法による細孔径分布曲線で一次細孔径のピークが約0.03〜約0.08μmであり且つ一次細孔容積が約0.1〜約0.5cm3/gであるのが好ましく、一次細孔径のピークが約0.035〜約0.07μmであり且つ一次細孔容積が約0.15〜約0.45cm3/gであるのがより好ましい。
【0053】
表面被覆炭酸カルシウム粒子及び原料炭酸カルシウム粒子の細孔径及び細孔容積は、水銀圧入式細孔径測定装置を用いて測定した。尚、この装置で圧入最高圧力は190MPas、限界最小細孔径は0.008μmである。細孔容積は炭酸カルシウム粒子の細孔に水銀が注入されたときの容積から直接求め、細孔径は炭酸カルシウムの粒子の細孔に水銀を注入したときの圧力及び水銀の表面張力から求めた。細孔分布曲線で限界最小孔径に最も近いピークの中心孔径を一次細孔径とし、このピークに含まれる最高容積を一次細孔容積とした。
【0054】
本発明において、飽和脂肪酸の被覆量、不飽和脂肪酸の被覆量及び上記特定の有機化合物の被覆量は、エーテル抽出法及びガスクロマトグラフィーにより求めた。即ち、本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子をジエチルエーテルに浸すと、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸及び上記特定有機化合物が抽出されるので、炭酸カルシウム粒子を被覆する飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸及び上記有機化合物の総量が求められる。次にこのジエチルエーテル抽出液をガスクロマトグラフに通して、抽出液中に含まれる上記各成分の比率を求める。上記で測定された炭酸カルシウム粒子を被覆する飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸及び上記有機化合物の総量と各成分の比率とから、飽和脂肪酸の被覆量、不飽和脂肪酸の被覆量及び上記有機化合物の被覆量が求められる。脂肪酸混合物の被覆量は、飽和脂肪酸の被覆量及び不飽和脂肪酸の被覆量の総量である。
【0055】
また、表面被覆炭酸カルシウム粒子及び原料炭酸カルシウム粒子のBET比表面積は、比表面積測定装置を用いて測定した。
【0056】
表面被覆炭酸カルシウム粒子の製造方法
本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子の製造方法につき、以下に説明する。
【0057】
本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子は、例えば、炭酸カルシウム粒子表面を、まず脂肪酸混合物で被覆し、次に特定の有機化合物で被覆することにより製造される。
【0058】
脂肪酸混合物は、(1A)飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種と(1B)不飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種との混合割合(重量比)が(1A):(1B)=30〜70:70〜30である脂肪酸混合物であり、脂肪酸混合物の被覆量が表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり約1〜約3mgになるように被覆する。
【0059】
有機化合物は、フタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、トリメリット酸エステル及び金属アルコキシドからなる群から選ばれた少なくとも1種の有機化合物であり、有機化合物の被覆量が表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり約0.1〜約1mgになるように被覆する。
【0060】
被覆処理される炭酸カルシウム粒子は、乾燥した炭酸カルシウム粒子であってもよいし、水又はトルエン、キシレン、ヘキサン、メタノール、エタノールなどの有機溶媒に分散させたスラリー状態の炭酸カルシウム粒子であってもよい。
【0061】
被覆処理される炭酸カルシウム粒子が乾燥した炭酸カルシウム粒子である場合には、脂肪酸混合物を乾燥炭酸カルシウム粒子に加え、加熱しながら強力に撹拌混合することにより、所望の粒度や細孔容積に微調整された脂肪酸混合物が被覆された炭酸カルシウム粒子を得ることができる。
【0062】
被覆処理される炭酸カルシウム粒子がスラリー状態である場合には、炭酸カルシウムスラリーに脂肪酸混合物を添加し、攪拌して炭酸カルシウム表面に脂肪酸混合物の吸着層(被覆層)を形成させる。その後、該スラリーを遠心脱水機、フィルタープレスなどの適当な脱水機を用いて脱水し、得られた脱水物を熱風にさらして乾燥させることにより、脂肪酸混合物が被覆された炭酸カルシウム粒子が得られる。乾燥機としては熱風箱型乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライヤーなどが使用される。乾燥した脂肪酸混合物被覆炭酸カルシウム粒子は、場合によっては解砕することによって所望の粒度や細孔容積になるように微調整される。
【0063】
本発明では、脂肪酸混合物が被覆された炭酸カルシウム粒子を、更に上記特定の有機化合物を用いて被覆する。
【0064】
上記有機化合物の表面被覆は、例えば、有機化合物を加熱して、有機化合物のを気化し、その気化したガスを脂肪酸混合物被覆炭酸カルシウム粒子に接触させることにより行われる。
【0065】
また、加熱された液状の有機化合物に空気、窒素などの気体を吹き込み、有機化合物を気体と共に脂肪酸混合物被覆炭酸カルシウム粒子に接触させる方法、液状の有機化合物を脂肪酸混合物被覆炭酸カルシウム粒子に添加し、攪拌しながら液状の有機化合物と脂肪酸混合物被覆炭酸カルシウム粒子との混合物を加熱して両者を均一に接触させる方法などによっても、有機化合物を脂肪酸混合物被覆炭酸カルシウム粒子の表面に被覆することができる。
【0066】
本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子は、例えば接着剤に配合して使用される。本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子は、接着剤用の充填剤として好適に使用される。
【0067】
接着剤
本発明において、接着剤とは二つの接着すべき材料(被着材)の間に挟まれて接着作用を示すことを要求される材料を意味する。従って、本発明でいう接着剤は、一般的に用いられる粘度の低い接着剤(例えば、紙用接着剤、木材用接着剤など)、二つの接着すべき材料の隙間(空間)を埋める充填作用と硬化後に弾性、伸びなどの機能を備えた接着作用を同時に発揮できる高粘度の接着剤(例えば、建築用接着剤、建築用シーリング材、自動車用シーリング材など)などを包含する。
【0068】
本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子を含有する接着剤について、以下に説明する。
【0069】
本発明の接着剤は、熱可塑性樹脂系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、ゴム系接着剤、シーリング材などの各種接着剤を含む。
【0070】
本発明の接着剤には、本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子が充填剤として配合されている。本発明の接着剤は、充填剤が本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子である場合を除いて、他の配合成分は公知の接着剤と同じである。
【0071】
即ち、本発明の接着剤は、樹脂成分、可塑剤、充填剤として用いられる本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子などの他、接着剤の種類に応じて必要な成分、例えば硬化剤、硬化促進剤、着色剤、溶剤などから構成される。
【0072】
樹脂成分としては、上記各種の接着剤に配合される通常の樹脂成分をいずれも使用できる。
【0073】
熱可塑性樹脂系接着剤に配合される樹脂成分としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどのビニル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などのポリオレフィン系樹脂、ポリアミドなどが挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で又は2種以上混合して使用できる。
【0074】
熱硬化性樹脂系接着剤に配合される樹脂成分としては、例えば、ウレタン樹脂、メラニン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で又は2種以上混合して使用できる。
【0075】
ゴム系接着剤に配合される樹脂成分としては、例えば、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリルゴムなどが挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で又は2種以上混合して使用できる。
【0076】
シーリング材に配合される樹脂成分としては、例えば、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、サルファイド樹脂、ウレタン樹脂、クロロプレンゴム、ブチルゴムなどが挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で又は2種以上混合して使用できる。
【0077】
本発明の接着剤に配合される可塑剤としては、この分野で通常使用されている公知の可塑剤を広く使用でき、限定されない。
【0078】
このような可塑剤としては、例えば、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジ−n−オクチル(n−DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)などのフタル酸エステル類、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペートなどの非芳香族2塩基酸エステル類、トリオクチルフォスフェート、トリス(クロロエチル)フォスフェート、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェートなどのリン酸エステル類の他、各種のポリエステル系可塑剤、スルホン酸エステル系可塑剤などを挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。上記可塑剤の中で、フタル酸エステル類が好ましく、DOPが特に好ましい。
【0079】
可塑剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対して、約10〜約200重量部が好ましく、約50〜約150重量部がより好ましい。可塑剤の配合量が、上記範囲である場合に、接着剤の粘度を作業性に適した粘度にすることができる。
【0080】
本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子は、充填剤として接着剤に配合される。本発明炭酸カルシウム粒子の配合量は、樹脂成分100重量部に対して約10〜約200重量部が好ましく、約30〜約200重量部がより好ましい。本発明炭酸カルシウム粒子の配合量が、上記範囲である場合に、接着剤に優れたチキソ性、接着性及び粘度安定性を付与することができる。
【0081】
本発明においては、本発明炭酸カルシウム粒子と共に、本発明の目的を損なわない範囲内で他の公知の充填剤を配合することができる。このような充填剤としては、例えば、重質炭酸カルシウム、カーボンブラック、クレー、タルク、酸化チタン、生石灰、カオリン、ゼオライト、ケイソウ土、塩化ビニルペーストレジン、ガラスバルーン、塩化ビニリデン樹脂バルーンなどが挙げられる。これらの充填剤は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0082】
硬化剤、硬化促進剤、着色剤、溶剤などの各種配合成分は、この分野で通常使用されているものを広く使用でき、限定されない。例えば、着色剤としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、弁柄、リトボン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩などの無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料などの有機顔料などを挙げることができる。溶剤としては、例えば、キシレン、トルエンなどの芳香族系炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、ガソリンから灯油留分に至る石油系溶剤類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのエーテルエステルなどを挙げることができる。
【0083】
これら各種成分の配合量も、公知の接着剤に配合される各種成分の配合量と同じである。
【0084】
本発明の接着剤は、水分散液、有機溶剤分散液などの分散タイプの接着剤であってもよいし、エマルジョンタイプの接着剤であってもよい。
【0085】
好ましい接着剤は、ポリ塩化ビニル、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂又はウレタン樹脂を樹脂成分とし、充填剤として本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子が配合された接着剤である。
【0086】
【発明の効果】
本発明によれば、上記(a)〜(c)の性能に優れた炭酸カルシウム粒子が提供される。
【0087】
本発明によれば、接着剤を構成する樹脂成分、その他の配合成分に容易に分散し、配合後の接着剤組成物に優れた接着性及び粘度安定性を付与できる表面被覆炭酸カルシウム粒子が提供される。
【0088】
本発明によれば、優れた接着性及び粘度安定性を備えた接着剤が提供される。
【0089】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0090】
実施例1
固形分10重量%の合成炭酸カルシウム粒子(BET比表面積19m2/g)のスラリーを65℃に調整した。該スラリーを分散機により攪拌させながら、オレイン酸ナトリウム含有量が60重量%、ステアリン酸ナトリウム含有量が20重量%及びパルミチン酸ナトリウム含有量が20重量%である脂肪酸混合物を添加し、攪拌した後プレス脱水した。得られた濾過ケーキを箱型乾燥機で乾燥させた後、解砕することにより、脂肪酸混合物で表面被覆された表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0091】
得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子を乾式分散機により分散させながら、フタル酸ジイソノニルを加熱して気化し、加熱した乾燥空気と混合後、その混合ガスを脂肪酸混合物で表面被覆された炭酸カルシウム粒子に接触させることにより、脂肪酸混合物で表面被覆され、更に、フタル酸ジイソノニルで表面被覆された表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子の物性を表1に示す。
【0092】
実施例2
脂肪酸混合物の被覆量を多くする以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びフタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子の物性を表1に示す。
【0093】
実施例3
脂肪酸混合物の被覆量を少なくする以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びフタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子の物性を表1に示す。
【0094】
実施例4
フタル酸ジイソノニルに代えてポリアジピン酸プロピルを使用した以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びポリアジピン酸プロピルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子の物性を表1に示す。
【0095】
実施例5
フタル酸ジイソノニルに代えてリン酸トリクレジルを使用した以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びリン酸トリクレジルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子の物性を表1に示す。
【0096】
実施例6
BET比表面積25m2/gの合成炭酸カルシウム粒子を使用した以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びフタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子の物性を表1に示す。
【0097】
比較例1
脂肪酸混合物を被覆しなかった以外は、実施例1と同様にして、フタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子の物性を表1に示す。
【0098】
比較例2
脂肪酸混合物がオレイン酸ナトリウム含有量が20重量%、ステアリン酸ナトリウム含有量が50重量%及びパルミチン酸ナトリウム含有量が30重量%である脂肪酸混合物である以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びフタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子の物性を表1に示す。
【0099】
比較例3
脂肪酸混合物がオレイン酸ナトリウム含有量が85重量%、ステアリン酸ナトリウム含有量が10重量%及びパルミチン酸ナトリウム含有量が5重量%である脂肪酸混合物である以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びフタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子の物性を表1に示す。
【0100】
比較例4
フタル酸ジイソノニルを被覆しなかった以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物で表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子の物性を表1に示す。
【0101】
比較例5
脂肪酸混合物を被覆しなかった以外は、実施例6と同様にして、フタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子の物性を表1に示す。
【0102】
【表1】
Figure 0003893586
【0103】
表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積は、比表面積測定装置(商品名:フローソーブII2300、島津製作所製)を用い、窒素ガス吸着法により測定した。
【0104】
脂肪酸混合物の被覆量、不飽和脂肪酸の被覆量及び上記特定の有機化合物の被覆量は、エーテル抽出法及びガスクロマトグラフィーにより求めた。ガスクロマトグラフとして、GC−17型(商品名、島津製作所製)を用いた。
【0105】
表面被覆炭酸カルシウム粒子の細孔径及び細孔容積は、水銀圧入式細孔径測定装置(商品名:POROSIMETER2000、CARLO ERBA INSTRUMENTS製)を用いて測定した。
【0106】
試験例1
【0107】
【表2】
Figure 0003893586
【0108】
上記実施例及び比較例で得られた各表面被覆炭酸カルシウム粒子について表2に示す配合のポリ塩化ビニル(PVC)ゾル接着剤を製造し、PVCゾルに対する分散性及びPVCゾル接着剤と黄銅製の被着体との接着性を調べた。更にPVCゾルの粘度安定性を調べた。
【0109】
PVCゾルへの分散性は、得られたPVCゾルの中に含まれる分散しきれていない表面被覆炭酸カルシウム粒子の粒の数を目視により調べた。即ち、黒色紙に500μmのアプリケーターにより表面被覆炭酸カルシウム粒子配合後のPVCゾルを塗布し、塗布面5cm四方に含まれる0.1mm以上の粒の個数を調べた。その結果を表3に示す。
【0110】
PVCゾル接着剤と被着体との接着性は、JIS A 1439の4.1に指定された方法により測定した。その結果を表3に示す。
【0111】
PVCゾルの粘度安定性は、該PVCゾルの初期粘度及び45℃で7日間保存した後の粘度をそれぞれ測定し、その変化を調べた。粘度測定は、20℃の温度下でBH粘度計(TOKIMEC製)によって2rpm及び20rpmの条件で測定した。その結果を表3に示す。
【0112】
上昇率の値は、保存前のPVCゾルの粘度(PVCゾルの初期粘度)を100%とし、相対値(%)で表したものである。
【0113】
【表3】
Figure 0003893586
【0114】
表3の結果より、本発明の表面被覆炭酸カルシウム粒子をPVCゾルに配合した場合、PVCゾルに容易に分散し、その組成物と被着体との接着性が良好で、粘度変化の少ないPVCゾル組成物が得られることがわかる。
【0115】
実施例7
オレイン酸ナトリウム含有量が60重量%及びステアリン酸ナトリウム含有量が40重量%である脂肪酸混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びフタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0116】
実施例8
オレイン酸ナトリウム含有量が60重量%及びパルミチン酸ナトリウム含有量が40重量%である脂肪酸混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びフタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0117】
実施例9
オレイン酸含有量が60重量%、ステアリン酸含有量が20重量%及びパルミチン酸含有量が20重量%である脂肪酸混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びフタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0118】
実施例10
エルカ酸ナトリウム含有量が60重量%、ステアリン酸ナトリウム含有量が20重量%及びパルミチン酸ナトリウム含有量が20重量%である脂肪酸混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びフタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0119】
実施例11
オレイン酸ナトリウム含有量が60重量%及びラウリン酸ナトリウム含有量が40重量%である脂肪酸混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びフタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0120】
実施例12
オレイン酸ナトリウム含有量が40重量%、ステアリン酸ナトリウム含有量が30重量%及びパルミチン酸ナトリウム含有量が30重量%である脂肪酸混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びフタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0121】
実施例13
オレイン酸ナトリウム含有量が40重量%及びステアリン酸ナトリウム含有量が60重量%である脂肪酸混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びフタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0122】
実施例14
オレイン酸ナトリウム含有量が40重量%及びパルミチン酸ナトリウム含有量が60重量%である脂肪酸混合物を使用する以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びフタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0123】
実施例15
フタル酸ジイソノニルに代えてセバシン酸ブチルを使用した以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びセバシン酸ブチルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0124】
実施例16
フタル酸ジイソノニルに代えてアゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルを使用した以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びアゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0125】
実施例17
フタル酸ジイソノニルに代えてトリメリット酸トリ−2−エチルヘキシルを使用した以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びトリメリット酸トリ−2−エチルヘキシルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0126】
実施例18
フタル酸ジイソノニルに代えてイソプロピルトリイソステアロイルチタネートを使用した以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びイソプロピルトリイソステアロイルチタネートで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0127】
実施例19
フタル酸ジイソノニルに代えてビニルトリエトキシシランを使用した以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びビニルトリエトキシシランで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0128】
実施例20
フタル酸ジイソノニルの被覆量を、合成炭酸カルシウム粒子(BET比表面積19m2/g)のBET比表面積1m2/g当たり0.9mgとする以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びフタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0129】
実施例21
BET比表面積10m2/gの合成炭酸カルシウム粒子を使用した以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びフタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0130】
実施例22
BET比表面積35m2/gの合成炭酸カルシウム粒子を使用した以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びフタル酸ジイソノニルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0131】
実施例23
フタル酸ジイソノニルに代えてアジピン酸ジ−2−エチルヘキシルを使用した以外は、実施例1と同様にして、脂肪酸混合物及びアジピン酸ジ−2−エチルヘキシルで表面被覆した表面被覆炭酸カルシウム粒子を得た。
【0132】
試験例2
上記実施例7〜23で得られた各表面被覆炭酸カルシウム粒子について、上記表2に示す配合のポリ塩化ビニル(PVC)ゾル接着剤を製造し、上記試験例1と同様に、PVCゾルに対する分散性及びPVCゾル接着剤と黄銅製の被着体との接着性を調べ、更にPVCゾルの粘度安定性を調べた。
【0133】
その結果、いずれのポリ塩化ビニル(PVC)ゾル接着剤も、良好な分散性、接着性及び粘度安定性を示した。
【0134】
試験例3
【0135】
【表4】
Figure 0003893586
【0136】
上記実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた各表面被覆炭酸カルシウム粒子について、表4に示す配合の1成分型変性シリコーンシーラントを製造した。
【0137】
次に、試験例1と同様にして、1成分型変性シリコーンシーラントに対する表面被覆炭酸カルシウム粒子の分散性及び1成分型変性シリコーンシーラントと黄銅製の被着体との接着性を調べ、更に1成分型変性シリコーンシーラントの粘度安定性を調べた。結果を表5に示す。
【0138】
【表5】
Figure 0003893586
【0139】
表5から、実施例1〜6で得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子の1成分型変性シリコーンシーラントに対する分散性が良好であること及び実施例1〜6で得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子が配合された1成分型変性シリコーンシーラントは、いずれも良好な接着性及び粘度安定性を備えていることがわかる。
【0140】
試験例4
【0141】
【表6】
Figure 0003893586
【0142】
上記実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた各表面被覆炭酸カルシウム粒子について、表6に示す配合の2成分型変性シリコーンシーラントを製造した。
【0143】
次に、試験例1と同様にして、2成分型変性シリコーンシーラントに対する表面被覆炭酸カルシウム粒子の分散性及び2成分型変性シリコーンシーラントと黄銅製の被着体との接着性を調べ、更に2成分型変性シリコーンシーラント基材の粘度安定性を調べた。結果を表7に示す。
【0144】
【表7】
Figure 0003893586
【0145】
表7から、実施例1〜6で得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子が配合されたの2成分型変性シリコーンシーラントに対する分散性が良好であること及び実施例1〜6で得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子が配合された2成分型変性シリコーンシーラントは、いずれも良好な接着性及び粘度安定性を備えていることがわかる。
【0146】
試験例5
【0147】
【表8】
Figure 0003893586
【0148】
上記実施例1〜6及び比較例1〜5で得られた各表面被覆炭酸カルシウム粒子について、表8に示す配合の2成分型ポリウレタンシーラントを製造した。
【0149】
次に、試験例1と同様にして2成分型ポリウレタンシーラントに対する表面被覆炭酸カルシウム粒子の分散性及び2成分型ポリウレタンシーラントと黄銅製の被着体との接着性を調べ、更に2成分型ポリウレタンシーラント硬化剤の粘度安定性を調べた。結果を表9に示す。
【0150】
【表9】
Figure 0003893586
【0151】
表9から、実施例1〜6で得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子の2成分型ポリウレタンシーラントに対する分散性が良好であること及び実施例1〜6で得られた表面被覆炭酸カルシウム粒子が配合された2成分型ポリウレタンシーラントは、いずれも良好な接着性及び粘度安定性を備えていることがわかる。

Claims (6)

  1. 炭酸カルシウム粒子表面が、脂肪酸混合物で被覆され、更に有機化合物で被覆された炭酸カルシウム粒子であって、
    脂肪酸混合物が、(1A)飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種と(1B)不飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種との混合割合(重量比)が(1A):(1B)=30〜70:70〜30である脂肪酸混合物であり、脂肪酸混合物の被覆量が表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり1〜3mgであり、
    有機化合物が、フタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、トリメリット酸エステル及び金属アルコキシドからなる群から選ばれた少なくとも1種であり、有機化合物の被覆量が表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり0.1〜1mgであることを特徴とする表面被覆炭酸カルシウム粒子。
  2. 表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積が10〜402/gであり、水銀圧入法による細孔径分布曲線で一次細孔径のピークが0.03〜0.08μmであり且つ一次細孔容積が0.1〜0.5cm3/gである請求項1に記載の表面被覆炭酸カルシウム粒子。
  3. 炭酸カルシウム粒子表面を、
    (1A)飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種と(1B)不飽和脂肪酸及びその塩からなる群から選ばれた少なくとも1種との混合割合(重量比)が(1A):(1B)=30〜70:70〜30である脂肪酸混合物を用いて、その被覆量が表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり1〜3mgになるように被覆し、
    次にフタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、トリメリット酸エステル及び金属アルコキシドからなる群から選ばれた少なくとも1種の有機化合物を用いて、その被覆量が表面被覆炭酸カルシウム粒子のBET比表面積1m2当たり0.1〜1mgになるように被覆する
    ことを含む表面被覆炭酸カルシウム粒子の製造方法。
  4. 請求項3に記載の方法で得ることができる表面被覆炭酸カルシウム粒子。
  5. 接着剤に用いられる請求項1、請求項2又は請求項4に記載の表面被覆炭酸カルシウム粒子。
  6. 請求項1、請求項2又は請求項4に記載の表面被覆炭酸カルシウム粒子を含有する接着剤。
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