JP4298236B2 - セラミックス電子部品焼成用セッターの製造方法 - Google Patents

セラミックス電子部品焼成用セッターの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼成によりセラミックス電子部品を製造する際に用いられるセッターの製造方法に関する。より詳しくは、アルミナ、及びムライトを主成分とするセラミックス質の基体を備えるセラミックス電子部品焼成用セッターの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミックス電子部品焼成用セッター(以下、単に「セッター」と省略することがある。)は、焼成によりセラミックス質の電子部品を製造する際に、被焼成体(焼成後に電子部品となるものである。以下、同様である。)を載置する部材であり、その使用目的又は使用環境から、被焼成体と反応して製品の品質劣化を招かないことは勿論、昇温、冷却の繰り返しに対する耐性、即ち、耐スポーリング性が大きいことが要求される。
【0003】
従来、このようなセラミックス電子部品焼成用セッターにあっては、アルミナ粒子からなる骨材と、耐スポーリング性の大きなムライトを骨材及びマトリックス材として構成した基体と、この基体を被覆して被焼成体と基体との反応を防止するコート層とを備えるものが広く用いられている。
【0004】
また、この従来のセッターでは、マトリックス材を構成するムライトを、アンダルサイト(2(Al23・SiO2))若しくは粘土とアルミナ(Al23)とから合成していたことから、化学理論モル比(Al23/SiO2モル比=1.5)のものが用いられていた。
【0005】
ところで、このようなセッターは、通常、棚枠又は匣鉢に多数階層的に積載して用いられるが、セラミックス電子部品の製造工程においては、焼成工程が生産効率上の律速段階である。このため、最近では、積載するセッターの間隔を密にして、多量の被焼成体をセッターに載置することが行われている。また、同様の点から、焼成時間を短縮化する試みも検討されている。従って、このようなセッターにあっては、耐スポーリング性等の特性に優れることは勿論であるが、棚枠等に積載される位置に関わらず、被焼成体が均一な温度で焼成されることへの要求が強くなっている。
【0006】
しかし、前述した従来のセッターは、このような要請については全く考慮されていなかったため、耐スポーリング性は大きなものの、焼成時において、焼成後の電子部品について均一の特性が得られないという問題があった。
【0007】
即ち、従来のセッターでは、基体を構成する主成分の1つであるムライトが、化学理論モル比の組成を有するものであったため熱伝導率が低く(気孔率0%の場合の熱伝導率が6.0W/m・Kである。)、実際に棚枠等に複数積載して用いると、積載位置が階層方向の中間付近に位置するセッターの中央部分に載置された被焼成体では、焼成が不充分なことに起因して、所望の特性が得られない場合があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、セッターとして充分な耐スポーリング性を有し、しかもセッターの積載間隔の緻密化や焼成時間の短縮化、更にはセッターの大型化等がなされた場合であっても、被焼成体を、その載置位置に関わらず均一な温度で焼成することができ、均一な特性の製品が得られるセラミックス電子部品焼成用セッターの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述の課題を解決するべく鋭意研究した結果、基体を構成する主成分の1つであるムライトとして、アルミナリッチの特定組成のものとすることにより、セッターとして求められる大きな耐スポーリング性を有しながらも、高い熱伝導性を有するセッターが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、アルミナ、及びムライトを主成分とするセラミックス材料からなる基体と、該基体上に設けられる被焼成体との反応を防止するコート層とを備えるセラミックス電子部品焼成用セッターの製造方法であって、アルミナと、ムライトとの質量比(ムライト/アルミナ)が5/95〜50/50であり、且つAl23/SiO2モル比1.6〜2.4の原料組成を有するムライトを用いて焼成することにより、前記基体を作製し、
該基体及び該コート層全体の20℃における熱伝導率が、2.7〜15.0W/m・Kであるとともに、前記基体及び前記コート層全体の1200℃における熱伝導率が、5.0〜20.0W/m・Kであり、且つ前記基体及び前記コート層全体の20℃における熱拡散率が、1.25×10-6〜6.1×10-62/sであることを特徴とするセラミックス電子部品焼成用セッターの製造方法を提供するものである。
【0013】
本発明のセッターにおいては、Al23/SiO2モル比1.8〜2.1の原料組成を有するムライトを用いて焼成したものであることがより好ましい。また、骨材の主成分たるアルミナと、マトリックス材の主成分たるムライトとの質量比(ムライト/アルミナ)が15/85〜50/50であるものが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0015】
本発明のセッターは、アルミナ、及びムライトを主成分とするセラミックス材料からなる基体と、基体上に設けられるコート層とを備えるものであり、基体及びコート層全体の20℃における熱伝導率が、2.70〜15.00W/m・Kであることを特徴とするものである。
【0016】
これにより、複数の大型セッターを棚枠等に密に積載した場合でも、特に焼成時間を長くすることなく、セッターに載置された総ての被焼成体を、その載置位置に関わらず均一の温度で焼成することができ、得られる電子部品の特性ばらつきを低減することができる。
【0017】
このため、本発明のセッターは、当該20℃における熱伝導率が、2.76W/m・K以上のものがより好ましく、2.80W/m・K以上のものが特に好ましい。
【0018】
また、本発明においては、得られる電子部品の特性ばらつきをより低減できる点で、更に、基体及びコート層全体の20℃における熱拡散率が、1.25×10-6〜6.1×10-62/sであることが好ましく、1.40×10-6〜4.20×10-62/sであることがより好ましく1.40×10-6〜2.0×10-62/sであることが特に好ましい。
【0019】
更に、本発明においては、被焼成体の焼結時に、焼結温度を均一にして製品特性のばらつきを低減することができる点で、基体及びコート層全体の1200℃における熱伝導率が、5.0〜20.0W/m・Kであることが好ましい。
【0020】
以下、このような特性を有するセッターについて具体的に説明する。
【0021】
本発明において、基材の主成分の1つであるアルミナとしては、コランダム型の最も安定した結晶構造を有し、耐熱性、耐熱衝撃性等に優れる点で、α−アルミナが好ましい。また、当該α−アルミナを主結晶とするものとして、例えば、電融アルミナ、焼結アルミナ等を挙げることができる。
【0022】
また、本発明においては、アルミナが、基体を構成するセラミックス材料中、骨材を構成するものが好ましい。このため、アルミナとしては、粒径2.0〜0.2mmのものが好ましく、粒径1.0〜0.5mmのものがより好ましい。
【0023】
次に、本発明のセッターにおいて、基体を構成するセラミックス材料の他の主成分である所定のAl 2 3 /SiO 2 モル比の組成を有するムライトを用いて焼成するが、Al23/SiO2モル比が1.6〜2.4の組成のものが好ましく、1.7〜2.1の組成のものがより好ましく、1.8〜2.1の組成のものが更に好ましく、1.8〜2.0の組成のものが特に好ましい。
【0024】
これにより、Al23/SiO2モル比を化学理論モル比としたムライトを基体の主成分の1つとして含有するセッターと略同等の耐スポーリング性を有しながらも、熱伝導性が高く特性ばらつきの小さな製品が得られるセッターとすることができる。
【0025】
もっとも、本発明におけるムライトは、化学理論モル比のムライト等を含有するものであってもよい。但し、化学理論モル比のムライトを多量に含有すると熱伝導性を低下させることから好ましくなく、具体的には、全ムライト中5%以下の含有率であることが好ましい。
【0026】
更に、本発明においては、当該ムライトが、ガラス相を含有するものでもよい。但し、このガラス相を高率で含有すると、耐熱性、熱伝導性を低下させることから、微量成分とすることが好ましく、具体的には、全ムライト中1%以下の含有率であることが好ましい。
【0027】
また、本発明においてムライトは、基体を構成するセラミックス材料中、骨材及びマトリックス材を構成するものが好ましい。また、当該ムライトの粒径は、粒径2mm以下のものが好ましく、粒径1mm以下のものがより好ましい。
【0028】
本発明における基体は、前述したマトリックス材及び骨材の主成分たるムライトと、骨材の主成分たるアルミナの質量比(ムライト/アルミナ)が5/5以下のものが好ましく、4/6以下のものがより好ましく、3/7以下のものが更に好ましく、2/8以下のものが特に好ましい。
【0029】
基体のムライトとアルミナの質量比(ムライト/アルミナ)がこの範囲であれば、所望の耐スポーリング性を有しながら、高い熱伝導性を有するセッターとすることができ、セッターに載置された総ての被焼成体を、その載置位置に関わらず均一の温度で焼成することができる。
【0030】
但し、アルミナの質量比が極端に大きくなると、セッターの耐スポーリング性が低下してしまうため、骨材及びマトリックス材の主成分たるムライトと、骨材の主成分たるアルミナの質量比(ムライト/アルミナ)が、1/9以下であるものが好ましい。
【0031】
また、当該基体は、主成分たるアルミナ及びムライトの他、例えば、Na2O、TiO2等を含有するものであってもよい。但し、これら不純物を多く含むと、セッターの熱伝導性、耐熱性等の低下が大きくなるため、基体を構成する材料中0.5%以内であることが好ましい。
【0032】
また、当該基体は、熱伝導性が大きくなることから、30%以下の気孔率であることが好ましく、10%以下の気孔率であることがより好ましい。
【0033】
次に、本発明におけるコート層としては、1層単独からなる単層構造のもの、又は中間層を設け2層以上の層からなる複層構造のものいずれでもよい。
【0034】
また、本発明におけるコート層としては、被焼成体との反応を防止できるものであればよく、例えば、ジルコニア、マグネシア、アルミナ、アルミナ−ジルコニア、及びスピネルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の材質からなるものが好ましい。
【0035】
但し、本発明においては、セッターの熱伝導性を向上させるために、1層単独からなるコート層、又は2層以上の複層構造からなるコート層の中間層若しくは表層の少なくとも1層を、アルミナ、又はアルミナ−ジルコニアで構成することが好ましい。
【0036】
一方、コート層の材質は、適宜、被焼成体を構成する材質に応じて非反応性の高いものを選択することが好ましく、例えば、フェライト材を作製する場合には、ジルコニア、アルミナ、又はアルミナ−ジルコニアの少なくとも1種の材質からなるものが好ましく、チタン酸バリウムからなるコンデンサーを作製する場合には、ジルコニアからなるものが好ましい。
【0037】
なお、複層構造からなるコート層において、表層を非反応性を高めるためジルコニアで構成する場合には、中間層を熱伝導性の高いアルミナ、又はアルミナ−ジルコニアで構成することが好ましい。
【0038】
本発明においては、コート層の厚さについても特に制限はないが、コート層の材質の熱伝導性を考慮して、その厚さを調整することが好ましい。
【0039】
具体的には、熱伝導性の高い層では、比較的厚い層を形成してもよく、例えば、アルミナ、又はアルミナ−ジルコニアからなる層では、100〜500μmの厚さで設けることができる。一方、熱伝導性の低い層では、比較的薄い層とすることが好ましく、例えば、ジルコニアからなる層では、50〜200μmの厚さで設けることが好ましい。
【0040】
なお、ジルコニアとしては、例えば、CaO、MgO、CeO、若しくはY23等の安定化剤を添加した安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア、未安定化ジルコニア、又はジルコン酸カルシウム等を挙げることができる。同様に、スピネルとしては、マグネシア−アルミナスピネル等を挙げることができ、アルミナ−ジルコニアとしては、アルミナとジルコニアとの混合したもの、又はアルミナとジルコニアとを固溶化したものを挙げることができる。
【0041】
また、単層構造のコート層及び複層構造のコート層のいずれについても、例えば、スプレーコーティング、溶射等の通常行われる方法で形成することができ、形成するコート層の厚さに応じて適切な方法を選択すればよい。
【0042】
以上、本発明のセッターの各構成要素について説明したが、本発明のセッターでは、多数の被焼成体を同時に焼成するため、棚板上、台板上又は匣鉢内に、厚さ5mm以下、より好ましくは厚さ3mm以下のスペーサーを介してセッターを密に複数段積載又は固定して焼成用治具を構成させた場合でも、各被焼成体を同じ温度で焼成することができ、均一な特性の電子部品を得ることができる。加えて、熱を迅速に被焼成体に伝導できるため、100mm×100mm以上の寸法の大型セッターとした場合でも、各被焼成体を同じ温度で焼成することができ、更には焼成時間の短縮化も可能となり、均一な特性の電子部品を迅速かつ大量に得ることが可能となる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって、何ら限定されるものではない。
【0044】
(評価方法)
▲1▼ 耐スポーリング性
各実施例及び比較例のセッターを、棚枠に載せ、各セッターに、ZrO2からなる板材(105mm×105mm×3mm)を積載した状態で炉内に入れ、500℃に昇温した後、炉外の室温で急激に冷却し、クラックの発生の有無及びクラックの長さを肉眼にて確認した。
【0045】
評価は、クラックの発生が全く見られないものを◎、長さ50mm以下のクラックが認められたものを○、長さ50mmを超えるクラックが認められたものを×とした。
【0046】
▲2▼ 熱伝導率・熱拡散率
JIS R1611に記載の方法に準拠してレーザーフラッシュ法にて測定した。この際、測定試料としては、各実施例及び各比較例のセッターを、直径10mmで円柱状に切り出したものをそれぞれ5個準備し、この5個の試料の平均値で評価した。
【0047】
▲3▼ 製品特性のばらつき
図1に示すように、セッターと同一材質からなるスペーサ2を介在させて、各実施例及び各比較例のセッター1を、5mmの間隔で10段積載し、5段目のセッター1aの中央部及び同外周部にそれぞれ10個の被焼成体(焼成後セラミックスコンデンサーとなるものである。)を載置し、1300℃、2時間で焼成を行った。
【0048】
焼成後、取り出した各セラミックスコンデンサーについて静電容量を測定し、5段目のセッターの中央部と同外周部に載置した各セラミックスコンデンサー10個についてそれぞれ平均値を求め、その差が1%以内のものを◎、2%以内のものを○、2%より大きいものを×として評価した。
【0049】
▲4▼ Al23/SiO2モル比
粉末X線回折法により、ICDD(International Center for Diffraction Data)を用い、210面の回折角度で同定した。
【0050】
(実施例1)
まず、電融アルミナ(平均粒径0.3mm、最大粒径1.0mm)35質量%、仮焼アルミナ15質量%(平均粒径2μm)、Al23/SiO2モル比が1.7の焼結ムライト(平均粒径100.0μm、最大粒径0.5mm)45質量%、粘土(平均粒径5.0mm)5質量%を混合してセラミックス原料を調製した。次いで、このセラミックス原料100質量部に対してバインダーとして、メチルセルロースを0.5質量部、水40質量部を添加、20分混練して坏土を作製した。次いで、この坏土を、油圧プレス成形機に投入して、成形圧力1t/cm2で、150mm×150mm×4mmの板状成形体を得た。最後に、この成形体を、80℃で、8時間乾燥した後、1500℃で2時間焼成して、板状の基体を作製した。
【0051】
次に、平均粒径0.5μmの易焼結アルミナ60質量%と、平均粒径10μmの電融アルミナ40質量%とを混合し、この混合原料100質量部に対して、水30質量部添加し、12時間攪拌して中間層用のスラリーを調製した。次いで、このスラリーを、基体の表面に、スプレーガンを用いて、空気圧5kg/cm2でスプレーコーティングした後、1400℃2時間で焼付け処理を行い、厚さ100μmの中間層を形成した。
【0052】
次に、平均粒径100〜200μmの8質量%Y23含有安定化ジルコニア粒子(安定化度100%)を、水安定化プラズマ溶射装置により、基体表面に溶射して、厚さ200μmの表面層を形成して、複層構造のコート層を有する150mm×150mm×4.6mmのセッターを製造した。
【0053】
(実施例2〜5及び比較例1〜3)
電融アルミナ、仮焼アルミナ、焼結ムライト、及び粘土を、それぞれ表1に示す配合割合で混合してセラミックス原料を調製したこと、並びに中間層及び表層を表1に示すものとしたこと以外は、実施例1と同様にして、セッターを製造した。各実施例及び各比較例についての材料組成を表1にまとめて示す。
【0054】
【表1】
Figure 0004298236
【0055】
(評価)
表2に示すように、基体中のアルミナとムライトの質量比(ムライト/アルミナ)が、37/63〜21/79以下の実施例2〜4のセッターでは、いずれも20℃熱伝導率が2.86W/m・K以上、1200℃熱伝導率が5.2以上、熱拡散率が1.40×10-62/s以上と大きかった。また、いずれも製品の特性ばらつきが1%以下と非常に小さかった。
【0056】
また、基体中のアルミナとムライトの質量比(ムライト/アルミナ)を、47/53とし、基体上にアルミナ質の中間層を設けた実施例1のセッターでは、20℃熱伝導率が2.76W/m・K、熱拡散率が1.26×10-62/sといずれの特性も比較的大きかった。また、製品の特性ばらつきは2%以下と比較的小さかった。また、基体中のアルミナとムライトの質量比(ムライト/アルミナ)を、5/95とした実施例5のセッターでは、20℃熱伝導率が15.00W/m・K、1200℃熱伝導率が20.1W/m・K、熱拡散率が6.68×10-62/sといずれの特性も比較的大きかった。また、製品の特性ばらつきは2%以下と比較的小さかった。
【0057】
これに対して、アルミナ質の中間層を設けなかったこと以外は実施例1と同様の比較例1のセッターでは、20℃熱伝導率が2.62W/m・K、熱拡散率が1.23×10-62/sと低くなり、製品の特性ばらつきも2%より大きくなった。
【0058】
また、アルミナとムライトの質量比(ムライト/アルミナ)を、52/48の基体としたこと以外は実施例1と同様の比較例2のセッターでも、20℃熱伝導率が2.36W/m・K、熱拡散率が1.08×10-62/sと低くなり、製品の特性ばらつきも2%より大きくなった。
【0059】
更に、アルミナのみで基体を構成した比較例3のセッターでは、20℃熱伝導率が17.30W/m・K、熱拡散率が6.82×10-62/sといずれも非常に高いものの、製品の特性ばらつきが2%より大きくなった。なお、特に表中に示さなかったが、比較例3のセッターでは、耐スポーリング性試験で、長さ50mmを超えるクラックが認められ、耐スポーリング性が極めて小さかった。各実施例及び各比較例のセッターの特性を表2にまとめて示す。
【0060】
【表2】
Figure 0004298236
【0061】
(実施例6〜10及び比較例4、5)
それぞれ表1に示すAl23/SiO2モル比のムライトを用い、表1に示す配合割合で電融アルミナ、仮焼アルミナ、焼結ムライト、及び粘土を混合してセラミックス原料を調製したこと、中間層を設けなかったこと、並びに表層の厚さを150μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、セッターを製造した。各実施例及び各比較例についての材料組成を表3にまとめて示す。
【0062】
【表3】
Figure 0004298236
【0063】
(評価)
表4に示すように、Al23/SiO2モル比が、1.6〜2.4のムライトを用いた実施例6〜10のセッターでは、いずれも製品の特性ばらつきが2%以下と小さく、かつ耐熱衝撃限界温度が500℃以上と耐スポーリング性も大きかった。特に、Al23/SiO2モル比が、1.8〜2.1のムライトを用いた実施例7〜9のセッターでは、製品の特性ばらつきが1%以下と非常に小さかった。
【0064】
これに対して、Al23/SiO2モル比が、1.5のムライトを用いた比較例4のセッターでは、製品の特性ばらつきが2%より大きかった。
【0065】
また、Al23/SiO2モル比が、2.5のムライトを用いた比較例5のセッターでは、製品の特性ばらつきは2%以下と小さいものの、耐熱衝撃限界温度が500℃以下と耐スポーリング性が小さかった。各実施例及び各比較例のセッターの特性を表4にまとめて示す。
【0066】
【表4】
Figure 0004298236
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、セッターの大型化及び積載間隔の緻密化、並びに焼成時間の短縮化に対応しながら、セッターに載置された総ての被焼成体を、その載置位置に関わらず均一の温度で焼成することができ、均一特性の電子部品が得られるセラミックス電子部品焼成用セッターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のセッターを、スペーサを介在させて10個積載した例を示す側面図である。
【符号の説明】
1…セラミックス電子部品焼成用セッター、1a…セラミックス電子部品焼成用セッター(5段目)、2…スペーサ。

Claims (2)

  1. アルミナ、及びムライトを主成分とするセラミックス材料からなる基体と、該基体上に設けられる被焼成体との反応を防止するコート層とを備えるセラミックス電子部品焼成用セッターの製造方法であって、
    アルミナと、ムライトとの質量比(ムライト/アルミナ)が5/95〜50/50であり、且つAl23/SiO2モル比1.6〜2.4の原料組成を有するムライトを用いて焼成することにより、前記基体を作製し、
    該基体及び該コート層全体の20℃における熱伝導率が、2.7〜15.0W/m・Kであるとともに、前記基体及び前記コート層全体の1200℃における熱伝導率が、5.0〜20.0W/m・Kであり、且つ前記基体及び前記コート層全体の20℃における熱拡散率が、1.25×10-6〜6.1×10-62/sであることを特徴とするセラミックス電子部品焼成用セッターの製造方法
  2. Al23/SiO2モル比1.8〜2.1の原料組成を有するムライトを用いて焼成した請求項1に記載のセラミックス電子部品焼成用セッターの製造方法
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