JP3949951B2 - 耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具及びその製造方法(高温焼成) - Google Patents

耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具及びその製造方法(高温焼成) Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱衝撃性を必要とするアルミナ・ジルコニア焼成用治具に関するものであり、セッター、棚板、匣鉢等の焼成用治具に関する。
本発明は誘電体、積層コンデンサ、セラミックスコンデンサ、バリスタ、チップインダクター等の電子部品やファインセラミックス等を焼成する際に使用する焼成用治具に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
誘電体、積層コンデンサ、サーミスタ、バリスタ、チップインダクター等の電子部品を焼成する際に用いる電子部品焼成用治具として、セッター、棚板、シート材料等がある。従来、アルミナ質、アルミナ・ムライト質等の焼成用治具が使用されてきた。しかしアルミナ質は耐熱衝撃性が悪く、焼成炉で昇温、降温を繰り返す熱衝撃が加わる環境下ではクラックが入りやすく、治具が破損する問題があった。近年、耐熱衝撃性を改善する目的でアルミナにムライトを添加したアルミナ・ムライト質焼成用治具が多く使用されている。最近の電子部品の小型化、高性能化はめざましく、このような小型で高性能の電子部品をアルミナ・ムライト基材で焼成する際にはムライト質から分解したSiO2が焼成する電子部品を汚染し、特性を劣化させたり、歩留を低下させる問題があった。
【0003】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、耐熱衝撃性に優れたアルミナ・ジルコニア質焼成用治具により、繰り返し熱サイクルに耐久性があり、特に電子部品の焼成においてシリカ成分のない焼成用治具を提供することができる。また本発明の耐熱衝撃性に優れたアルミナ・ジルコニア質焼成用治具表面にジルコニア層を形成することにより、アルミナとの反応を防止でき、かつシリカフリー基材から成る、MLCC(積層セラミックコンデンサ)等の焼成に最適な電子部品焼成用治具を提供することができる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、粗粒及び微粒から成るアルミナ・ジルコニア質焼成用治具であって、アルミナ・ジルコニア部分溶融相から冷却により共晶を介して、粗粒アルミナを結合するアルミナ質中にジルコニア粒子を微細分散させ、耐熱衝撃性を著しく高めたことを特徴とする電子部品焼成用材料を提供できる。
【0005】
以下本発明を詳細に説明する。
原料構成は平均粒径30〜500μmの粗粒アルミナが20〜70wt%、平均粒径0.1〜20μmの微粒アルミナが20〜70wt%及び平均粒径0.1〜100μmのジルコニア粒子が5〜30wt%から成る。このような成形体を1710℃以上の温度で焼成することにより部分溶融相を形成し、冷却過程で共晶組織を形成、主としてジルコニア粒子を粗粒同士を結合するアルミナ質中へ微細分散したことにより、耐熱衝撃性を著しく向上させた電子部品焼成用治具を提供できる。粗粒及び微粒の粒度は1種類、又は1種類以上を組み合わせても良い。例えば、粗粒アルミナの平均粒径が70μm及び250μmのものを20〜70wt%の範囲で組み合わせることができる。微粒アルミナについても同様である。その結果、急熱、急冷によるクラックの発生を抑制でき、また実際の電子部品焼成時に加えられる加熱、冷却の繰り返しに対して寿命の長い電子部品焼成用治具を提供できる。
【0006】
本発明では、粗粒と微粒を組み合わせることにより、適度な気孔を含有し熱応力が緩和され、耐熱衝撃性が向上する。さらに粗粒アルミナ同士を結合するアルミナ質中にジルコニア粒子が分散されることにより、ジルコニアの加熱、冷却に伴う熱膨張差による応力歪みのために耐熱衝撃性や靱性が向上する。
本発明の原料構成は好ましくは粗粒アルミナが20〜70wt%、微粒アルミナが20〜70wt%であり、ジルコニアは5〜30wt%である。ジルコニア粒子の平均粒径は0.1〜100μm、より好ましくは0.1〜30μmである。一般に粗粒を増やせば耐熱衝撃性は向上するが強度が低下し、実用的でない。ここで微粒アルミナを加えることにより燒結、緻密化が促進され、強度が向上する。さらにジルコニアを添加することにより、耐熱衝撃性が向上すると考えられる。
【0007】
本発明では粗粒アルミナと微粒アルミナの比率を適度に制御することにより、又ジルコニアの添加量を制御することにより耐熱衝撃性と強度を兼ね備えた特性を得ることができる。
【0008】
通常のアルミナ・ジルコニア質材料では焼成温度は1500〜1700℃であるが、本発明は鋭意検討の結果、1710℃以上の温度で焼成することにより、著しい耐熱衝撃性の向上を達成するに至った。アルミナ−ジルコニア系の平衡状態図によれば、1710℃以上では部分溶融相が出現し、これ以上の温度から冷却することにより共晶組成を示すことが分かる。本発明では1710℃以上の温度で焼成することにより、粗粒及び微粒のアルミナの焼結が促進され、またアルミナ、特に微粒アルミナとジルコニア粒子が反応して部分溶融相を形成し、冷却過程でジルコニアが微細に分散した組織が得られる。ジルコニア粒子が微細分散することにより、応力歪みが分散されクラックの進展が抑制される。
【0009】
このように本発明によれば、粗粒と微粒アルミナの組み合わせにより、適度に導入された気孔が応力を緩和する。さらに焼結が進行した領域ではジルコニアが微細に分散し応力が緩和され、強度及び耐熱衝撃性の両特性を兼ね備えた電子部品焼成用材料が提供できる。このような組織の例として模式図を図1に示す。
【0010】
ジルコニア粒子としては、未安定化、CaO、MgO及びY2O3等で部分安定化及び安定化されたジルコニアを用いることができる。またアルミナ・ジルコニア質に0.1〜5wt%のCaO、BaO、SrO、MgO、CeO2又はY2O3を1種類以上添加することができる。このような添加剤は焼結を促進し、かつジルコニアの安定化剤としても作用する。
【0011】
このような本発明は、プレス品、押し出し成型シート品、鋳込み品等の各種製造法を用いて作製でき、強度及び耐熱衝撃性に優れ、耐久性のある電子部品焼成用治具を提供できる。
【0012】
また本発明のアルミナ・ジルコニア質焼成体上にジルコニアのコーティング層を設けてシリカフリー基材から構成される電子部品焼成用治具とすることができる。ジルコニアのコーティング方法は、スプレーコート、溶射、ディップコート、流し込み等各種の方法を適宜採用できる。
【0013】
即ち、[請求項1]の発明は、原料構成が、平均粒径30〜500μmの粗粒アルミナ及び平均粒径0.1〜20μmの微粒アルミナから成るアルミナ粒子と、ジルコニア粒子とから成るアルミナ・ジルコニア質焼成用治具であって、アルミナ・ジルコニア部分溶融相からの冷却により、粗粒アルミナを結合するアルミナ質中にジルコニア粒子を微細分散させたことを特徴とする耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具である。
【0014】
また、請求項2の発明は、平均粒径30〜500μmの粗粒アルミナ及び平均粒径0.1〜20μmの微粒アルミナから成るアルミナ粒子と、ジルコニア粒子とを混合して成形体を形成し、該成形体を1710℃以上の温度で焼成することによりアルミナ・ジルコニア部分溶融相を形成し、続いてこれを冷却することにより、粗粒アルミナを結合するアルミナ質中にジルコニア粒子を微細分散させることを特徴とする耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具の製造方法である。
【0015】
また、【請求項3】の発明は、原料構成が平均粒径30〜500μmの粗粒アルミナが20〜70wt%、0.1〜20μmの微粒アルミナが20〜70wt%及び0.1〜100μmのジルコニア粒子が5〜30wt%から成ることを特徴とする請求項1記載の耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具である。
【0016】
また、【請求項4】の発明は、原料構成が平均粒径30〜500μmの粗粒アルミナが20〜70wt%、0.1〜20μmの微粒アルミナが20〜70wt%及び0.1〜100μmのジルコニア粒子が5〜30wt%から成ることを特徴とする請求項2記載の耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具の製造方法である。
【0017】
即ち、[請求項5]の発明は、ジルコニアとして、未安定化、CaO、MgO及びY2O3等で部分安定化及び安定化されたジルコニアを用いることを特徴とする請求項1記載の耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具である。
【0018】
また、【請求項6】の発明は、ジルコニアとして、未安定化、CaO、MgO及びY2O3等で部分安定化及び安定化されたジルコニアを用いることを特徴とする請求項2記載の耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具の製造方法である。
【0019】
また、【請求項7】の発明は、アルミナ・ジルコニア質に0.5〜5wt%のCaO,BaO、SrO、MgO又はY2O3の1種類以上を添加することを特徴とする請求項1記載の耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具である。
【0020】
また、【請求項8】の発明は、アルミナ・ジルコニア質に0.5〜5wt%のCaO,BaO、SrO、MgO又はY2O3の1種類以上を添加することを特徴とする請求項2記載の耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具の製造方法である。
【0021】
また、【請求項9】の発明は、アルミナ・ジルコニア質焼成用治具表面にジルコニア質のコーティング層を形成することを特徴とする請求項1記載の耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具である。
【0022】
また、【請求項10】の発明は、アルミナ・ジルコニア質焼成用治具表面にジルコニア質のコーティング層を形成することを特徴とする請求項2記載の耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具の製造方法である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の電子部品焼成用治具の製造に関する実施例を記載するが、該実施例は本発明を限定するものではない。
【0025】
実施例1
アルミナ原料として、#220(平均粒径約70μm)の粗粒アルミナ50wt%及び平均粒径約10μmの微粒アルミナ粉末45wt%を用い、ジルコニアとして#350(平均粒径約30μm)のCaO安定化ジルコニア粉末5wt%を用いた。高速ミキサーを用いてこれらの原料をメトローズ、デキストリン等の粉末バインダー数wt%と撹拌混合し、さらにメチルセルロース、グリセリン等のバインダー数wt%と水を加えて撹拌混合した。次いで3本ロールを用いて原料粉末を均一に分散・混合した。これらの配合物を押し出し成形機を用いて厚さ2〜3mmのシート状に成形、乾燥した。これらのシートを10〜20cm角に切断し、1740℃で10時間焼成した。
【0026】
このようにして作製したアルミナ・ジルコニア質シートから曲げ試験片を切り出し、室温強度として3点曲げ試験、及び耐熱衝撃性評価として急冷後の3点曲げ試験を行った。耐熱衝撃性の評価は、所定温度に設定した電気炉中で試験片を20分間保持し、水中に急冷する方法を採用し、急冷後の3点曲げ試験により強度の急激に低下する点を温度差ΔT(保持温度―水の温度)として評価した。ΔTの測定例を図2に示す。
これらの結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0003949951
【0028】
実施例2〜8
実施例1と同様にして、粗粒アルミナ、微粒アルミナの平均粒径と配合wt%、ジルコニア原料の種類、平均粒径、配合wt%を表1に示すように選択し、11710℃以上で焼成し、強度と耐熱衝撃性を評価した。その結果を表1に示す。
【0029】
比較例1〜5
実施例1と同様にして、粗粒アルミナ、微粒アルミナの平均粒径と配合wt%、ジルコニア原料の種類、平均粒径、配合wt%を表1に示すように選択し、各種温度で焼成し強度と耐熱衝撃性を評価した。その結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
Figure 0003949951
【0031】
【発明の効果】
以上の説明より、耐熱衝撃性に優れたアルミナ・ジルコニア質焼成用治具により、繰り返し熱サイクルに耐久性があり、特に電子部品の焼成においてシリカ成分のない焼成用治具を提供することができる。また本発明の耐熱衝撃性に優れたアルミナ・ジルコニア質焼成用治具表面にジルコニア層を形成することにより、アルミナとの反応を防止でき、かつシリカフリー基材から成る、MLCC(積層セラミックコンデンサ)等の焼成に最適な電子部品焼成用治具を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に関する微細構造の模式図。
【図2】本発明に関する耐熱衝撃性評価の例。

Claims (10)

  1. 原料構成が、平均粒径30〜500μmの粗粒アルミナ及び平均粒径0.1〜20μmの微粒アルミナから成るアルミナ粒子と、ジルコニア粒子とから成るアルミナ・ジルコニア質焼成用治具であって、アルミナ・ジルコニア部分溶融相からの冷却により、粗粒アルミナを結合するアルミナ質中にジルコニア粒子を微細分散させたことを特徴とする耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具。
  2. 平均粒径30〜500μmの粗粒アルミナ及び平均粒径0.1〜20μmの微粒アルミナから成るアルミナ粒子と、ジルコニア粒子とを混合して成形体を形成し、該成形体を1710℃以上の温度で焼成することによりアルミナ・ジルコニア部分溶融相を形成し、続いてこれを冷却することにより、粗粒アルミナを結合するアルミナ質中にジルコニア粒子を微細分散させることを特徴とする耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具の製造方法。
  3. 原料構成が平均粒径30〜500μmの粗粒アルミナが20〜70wt%、0.1〜20μmの微粒アルミナが20〜70wt%及び0.1〜100μmのジルコニア粒子が5〜30wt%から成ることを特徴とする請求項1記載の耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具。
  4. 原料構成が平均粒径30〜500μmの粗粒アルミナが20〜70wt%、0.1〜20μmの微粒アルミナが20〜70wt%及び0.1〜100μmのジルコニア粒子が5〜30wt%から成ることを特徴とする請求項2記載の耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具の製造方法。
  5. ジルコニアとして、未安定化、CaO、MgO及びY2O3等で部分安定化及び安定化されたジルコニアを用いることを特徴とする請求項1記載の耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具。
  6. ジルコニアとして、未安定化、CaO、MgO及びY2O3等で部分安定化及び安定化されたジルコニアを用いることを特徴とする請求項2記載の耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具の製造方法。
  7. アルミナ・ジルコニア質に0.5〜5wt%のCaO,BaO、SrO、MgO又はY2O3の1種類以上を添加することを特徴とする請求項1記載の耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具。
  8. アルミナ・ジルコニア質に0.5〜5wt%のCaO,BaO、SrO、MgO又はY2O3の1種類以上を添加することを特徴とする請求項2記載の耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具の製造方法。
  9. アルミナ・ジルコニア質焼成用治具表面にジルコニア質のコーティング層を形成することを特徴とする請求項1記載の耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具。
  10. アルミナ・ジルコニア質焼成用治具表面にジルコニア質のコーティング層を形成することを特徴とする請求項2記載の耐熱衝撃性アルミナ・ジルコニア質焼成用治具の製造方法。
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