JP4292876B2 - 蓄電素子用電解質および蓄電素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、常温溶融塩を含有する蓄電素子用電解質およびそのような電解質を用いて構成された蓄電素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電池やキャパシタのような蓄電素子は、一対の電極の間に電解質を介在させた構成を有する。この電解質として、常温溶融塩を主体とする媒体と、蓄電素子の充放電反応に関与する支持塩(媒質)とを含有する電解質(常温溶融塩電解質)を用いることが提案されている。この種の技術に関する従来技術文献として特許文献1および特許文献2が挙げられる。特許文献1には、常温溶融塩電解質を用いた二次電池において、その常温溶融塩電解質に環状および/または鎖状のカーボネート(エチレンカーボネート等)を含有させて電池のサイクル寿命を向上させることが記載されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−260400号公報
【特許文献2】
特表2001−512903号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、蓄電素子の電極と電解質とは良好に接触していることが好ましい。例えば電極と電解質との界面部分に気泡等が多く存在していると、この気泡により電極と電解質との直接接触が妨げられ、蓄電素子の充放電性能(放電容量等)が低下することがある。粒子状の活物質を主体とする活物質層を備える電極を用いて蓄電素子を構成する場合には、活物質層内の空孔が上述のような気泡となって電解質と電極との接触を妨げやすいことから、電解質を活物質層によく含浸させて空孔を電解質で充填することが好ましい。換言すれば、電解質と電極との良好な接触を実現するには、活物質層に含浸しやすい電解質を用いることが好ましい。
そこで本発明は、電極との良好な接触を実現し得る蓄電素子用電解質を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、そのような電解質を用いて構成された蓄電素子を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段と作用と効果】
上記課題を解決するために、本発明により提供される一つの蓄電素子用電解質は、常温溶融塩と、該溶融塩よりも粘度の低いフッ素系溶媒とを含むことを特徴とする。なお、本明細書中において「蓄電素子」とは、電池(リチウムイオン電池等)およびキャパシタ(電気二重層キャパシタ等)の双方を包含する概念である。また、「フッ素系溶媒」とは、一分子当たり一つ以上のフッ素原子(イオンを含む)を有する化合物を主体とする溶媒をいう。例えば、炭素原子(C)、水素原子(H)、酸素原子(O)およびフッ素原子(F)から構成される有機溶媒は、ここで言うフッ素系溶媒の一典型例である。
一般に常温溶融塩は、通常のリチウムイオン電池に用いられる電解質(例えば、プロピレンカーボネートにLiPF6を溶解させたもの等)を構成する媒体(上記の例ではプロピレンカーボネート)に比べて高粘度(典型的には、室温において30mPa・s以上)である。このため、通常のリチウムイオン電池に用いられる電解質に比べて、媒体として常温溶融塩を用いた電解質(常温溶融塩電解質)は高粘度のものとなりがちである。本発明によると、常温溶融塩よりも粘度の低いフッ素系溶媒を混合することによって常温溶融塩電解質を低粘度化することができる。このことによって電解質が電極を濡らしやすくなり、電極との接触性が向上する。例えば、粒子状の電極活物質を含む活物質層を備える電極であって該活物質層に微細な隙間(空孔)が形成されているような構成の電極に対しても、その活物質層に電解質がよりよく含浸(浸透)し得る。
【0006】
このような電解質は、典型的にはその電解質の用途(蓄電素子の種類)に応じた支持塩を含有する。この支持塩は、蓄電素子の充放電反応に関与する化合物であって、例えばリチウムイオン電池用の電解質であれば支持塩として各種のリチウム塩を採用することができる。電解質に含有させるフッ素系溶媒としては、その電解質に用いられる支持塩を溶解可能であるもの(典型的には、そのフッ素系溶媒中で支持塩がほぼ完全に解離し得るもの)を用いることが好ましい。好適例としては、分子中に少なくとも一つのフッ素原子および少なくとも一つの酸素原子を有する有機化合物を主体とするフッ素系有機溶媒が挙げられる。このようなフッ素系溶媒は支持塩の溶解性のよいものとなりやすい。使用する常温溶融塩よりも支持塩の溶解性の高いフッ素系溶媒を選択することが好ましい。
電解質に含有させるフッ素系溶媒の他の好適例としては、0〜4.5V(Li/Li+)の範囲を包含する電位窓を有するものが挙げられる。このようなフッ素系溶媒を含有させた電解質は、リチウムイオン電池用の電解質として特に好適である。電解質に含有させるフッ素系溶媒のさらに他の好適例としては、質量比で10mass%以上のフッ素原子を含有する有機溶媒が挙げられる。
【0007】
本発明により提供される他の一つの蓄電素子用電解質は、常温溶融塩と、下記化学式(a)で表されるカチオンにより構成されるアンモニウム塩および/または下記化学式(b)で表されるカチオンにより構成されるイミダゾール塩とを含有する。
【0008】
【化3】
(ただし、式中のR11〜R14のうちいずれか一つは炭素数12〜18の直鎖状アルキル基であり、他の一つは炭素数1〜4のアルキル基であり、残りの二つはそれぞれ炭素数1〜18の直鎖状アルキル基である。)
【0009】
【化4】
(ただし、式中のR21およびR22のいずれか一方は炭素数12〜18の直鎖状アルキル基であり、他方は炭素数1〜18の直鎖状アルキル基である。)
【0010】
上記アンモニウム塩および/またはイミダゾール塩は、上記化学式(a)または(b)に示すように、少なくとも一つの長鎖アルキル基を有するカチオンにより構成されていることで特徴づけられる。このようなアンモニウム塩および/またはイミダゾール塩(以下、「長鎖アルキル基含有アンモニウム塩等」ともいう。)は、常温溶融塩に対する混合適性(相溶性)が良好である。かかる長鎖アルキル基含有アンモニウム塩等は、常温溶融塩に混合されて、これらを含む組成物(電解質)の濡れ性を向上させる「濡れ向上剤」として機能し得る。このような長鎖アルキル基含有アンモニウム塩等と常温溶融塩とを含有する本発明の電解質は、その濡れ性が改善されていることにより電極との接触性が良好である。例えば、粒子状の電極活物質を含む活物質層を備える電極であって該活物質層に微細な隙間(空孔)が形成されているような構成の電極に対しても、その隙間によりよく含浸(浸透)することができる。
【0011】
上記長鎖アルキル基含有アンモニウム塩等の好適例としては、前記化学式(a)において、前記炭素数1〜4のアルキル基はメチル基であり、前記炭素数1〜18のアルキル基のいずれか一方はメチル基であり他方は炭素数12〜18のアルキル基であるカチオン(例えば、R11およびR13がそれぞれ炭素数12〜18のアルキル基であり、R12およびR14がメチル基であるカチオン)により構成されるものが挙げられる。このように分子中に二つの長鎖アルキル基を含有するアンモニウムカチオンにより構成されるアンモニウム塩は、常温溶融塩との混合適性が良好であるととともに、電解質の濡れ性を向上させる効果に優れる。
【0012】
また本発明によると、常温溶融塩を含む電解質を用いて構成された蓄電素子が提供される。この蓄電素子は一対の電極を備える。それらの電極の間に本発明のいずれかの電解質が配置されている。本発明に係る蓄電素子は、上述のように電極に対する接触性が良好な電解質を用いて構成されているので、優れた性能(例えば放電容量等の充放電性能)を示すものとなり得る。
【0013】
このような蓄電素子は、上記一対の電極の少なくとも一方が上記電解質に接して設けられた活物質層を有する構成とすることができる。上記電解質は、活物質層(典型的には粒子状の電極活物質を主体に構成されている)に含浸しやすいので、活物質層を有する電極に対しても良好に接触することができる。この活物質層としてはフッ素系結着剤(ポリフッ化ビニリデンを主体とするもの等)を含有するものを用いることができる。フッ素系有機溶媒を含有する常温溶融塩電解質と、フッ素系結着剤を含有する活物質層を有する電極との組み合わせにより、特に良好な効果(電解質と電極との良好な接触)が得られる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している内容以外の技術的事項であって本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている技術内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0015】
本発明は、各種の常温溶融塩を主体とする電解質(以下、「常温溶融塩電解質」ともいう。)および常温溶融塩電解質を備える各種の蓄電素子に適用され得る。以下の説明では、主として、本発明をリチウムイオン電池用電解質およびリチウムイオン電池に適用する場合につき述べる。ただし、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。
【0016】
本発明に使用する常温溶融塩としては、一般的なイミダゾリウム系、アンモニウム系、ピリジニウム系その他の常温溶融塩等から適当なものを選択することができる。
【0017】
イミダゾリウム系の常温溶融塩を構成するカチオンとしては、下記一般式(1)で表されるもの等を使用することができる。式中のR1およびR2は、それぞれ炭素数1〜4(より好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基である。
【0018】
【化5】
【0019】
このようなイミダゾリウムカチオンとともに常温溶融塩を構成し得るアニオンとしては、BF4 -,PF6 -,CF3SO3 -,(CF3SO2)2N-,(C2F5SO2)2N-等が例示される。イミダゾリウム系常温溶融塩の具体例としては、エチルメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMI−BF4)、エチルメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニルイミド(EMI−TFSI)、プロピルメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0020】
また、アンモニウム系の常温溶融塩を構成するカチオンとしては、下記一般式(2)で表されるもの等を使用することができる。式中のR1〜R4は、それぞれ炭素数1〜4(より好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基である。
【0021】
【化6】
【0022】
このようなアンモニウムカチオンも、上述のアニオンとともに常温溶融塩を構成し得る。アンモニウム系常温溶融塩の具体例としては、ジエチルメチルプロピルアンモニウムトリフルオロメタンスルホニルイミド等が挙げられる。
【0023】
また、ピリジニウム系の常温溶融塩を構成するカチオンとしては、下記一般式(3)で表されるもの等を使用することができる。式中のR1は、炭素数1〜4(より好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基である。
【0024】
【化7】
【0025】
このようなピリジニウムカチオンも、上述のアニオンとともに常温溶融塩を構成し得る。ピリジニウム系常温溶融塩の具体例としては、エチルピリジニウムテトラフルオロボレートが挙げられる。
【0026】
本発明をリチウムイオン電池に適用する場合、その電解質に含有させる支持塩としては各種のリチウム塩を用いることができる。例えば、BF4 -,PF6 -,CF3SO3 -,(CF3SO2)2N-,(C2F5SO2)2N-等のアニオンとリチウムイオンとの塩を用いることができる。その電解質に含まれる常温溶融塩を構成するアニオンと同種のアニオンとリチウムイオンとの塩を用いることが好ましい。
【0027】
電解質に含有させるフッ素系溶媒としては、使用する常温溶融塩よりも低粘度のものであれば特に限定されない。本発明にとり好ましいフッ素系溶媒は、常温における粘度が凡そ20mPa・s以下(例えば0.1〜20mPa・s)のものであり、凡そ10mPa・s以下(例えば0.1〜10mPa・s)のものがより好ましく、凡そ5mPa・s以下(例えば0.1〜5mPa・s)のものがさらに好ましい。このようなフッ素系溶媒は電解質の粘度を低下させる効果が大きい。また、電解質の蒸気圧が高くなりすぎることを回避するという観点からは、沸点が凡そ80℃以上(より好ましくは100℃以上)であるフッ素系溶媒が好適である。上述したような支持塩を溶解しやすい(すなわち支持塩を解離させやすい)フッ素系溶媒が好ましい。このフッ素系溶媒が極性溶媒であると有利である。0〜4.5V(Li/Li+)の範囲を包含する電位窓を有するフッ素系溶媒が好ましく用いられる。このようなフッ素系溶媒は、酸化および/または還元に対する耐性がよいこと等から電解質の構成成分として適している。上記範囲を含む電位窓を有するフッ素系溶媒を用いた電解質は、特にリチウムイオン電池用の電解質として好適である。
【0028】
典型的には、一分子当たり一つ以上のフッ素原子を有する有機化合物からなるフッ素系溶媒(以下、「フッ素系有機溶媒」という。)を電解質に含有させる。かかるフッ素系有機溶媒は、実質的に一種類の有機フッ素化合物から構成されていてもよく、二種以上の有機フッ素化合物を含む混合物であってもよい。フッ素系有機溶媒を構成する有機フッ素化合物は、環状フッ素化合物および鎖状フッ素化合物のいずれでもよく、これらの混合物であってもよい。環状の有機フッ素化合物としては、2−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)−テトラヒドロフラン等のフッ素置換環状エーテル類(フッ素原子を有する置換基が環に結合していてもよく、環にフッ素原子が直接結合していてもよい。)、4−エチルフルオロベンゼン、3−フルオロアニリン、4−フルオロアニリン等のフッ素置換芳香族化合物類、フルオロエチレンカーボネート(例えば、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート)、フルオロプロピレンカーボネート(例えばトリフルオロメチル基を有するもの)等のフッ素置換環状カーボネート類等を例示することができる。鎖状の有機フッ素化合物としては、フルオロジエチルカーボネート(例えば、1,1,7,7−テトラフルオロジエチルカーボネート)、フルオロメチルエチルカーボネート(例えば、(トリフルオロメチル)エチルカーボネート)等のフッ素置換鎖状カーボネート類、フルオロメチルアセテート、ヘプタフルオロブチルアセテート等のフッ素置換エステル類、ヘプチルフルオライド(例えば、1,1,7,7−テトラフルオロヘプタン)等のフッ素置換アルカン類等を例示することができる。
【0029】
好ましく用いられるフッ素系有機溶媒は、分子中に少なくとも一つの酸素原子を有する有機フッ素化合物からなるものである。分子中に少なくとも一つの炭素−酸素結合を有する有機フッ素化合物が好ましい。例えば、エーテル結合を有するもの、カルボニル基を有するもの等を用いることができる。そのようなフッ素系有機溶媒(典型的には極性溶媒)は、支持塩の溶解性のよいものとなりやすい。なお、このフッ素系有機溶媒は水酸基をもつ化合物を実質的に含有しないことが好ましい。
他の好ましいフッ素系有機溶媒としては、質量比で10mass%以上(より好ましくは25mass%以上、さらに好ましくは50mass%)のフッ素原子を含有するものが挙げられる。常温溶融塩の特性の一つとして難燃性である点が挙げられるところ、このようなフッ素系有機溶媒によると、電解質の難燃性を維持しつつその粘度を低下させることができる。すなわち、このようなフッ素系有機溶媒を用いて構成された電解質は難燃性のよいものとなり得る。
このようなフッ素系有機溶媒を含有する電解質は、構成材料としてフッ素系ポリマー(ポリフッ化ビニリデン等)を含む電極と組み合わせて用いることにより、その効果を特によく発揮させることができる。例えば、電解質と電極との接触性が特に良好な蓄電素子を構成することができる。
【0030】
本発明に係る電解質は、上記化学式(a)で表されるような、少なくとも一つの長鎖アルキル基を有するアンモニウムカチオンにより構成されるアンモニウム塩を含有することができる。また、上記化学式(b)で表されるような、少なくとも一つの長鎖アルキル基を有するイミダゾールカチオンにより構成されるイミダゾール塩を含有することができる。このようなアンモニウム塩および/またはイミダゾール塩(長鎖アルキル基含有アンモニウム塩等)としては、二つの長鎖アルキル基を有するカチオンにより構成されるものが好ましい。また、三つの長鎖アルキル基を有するアンモニウムカチオンにより構成されるアンモニウム塩も使用可能である。上記長鎖アルキル基を構成する炭素原子の数(炭素数)は12〜18とすることができ、より好ましい範囲は12〜16である。この長鎖アルキル基は直鎖状でもよく分岐していてもよい。環状部分を有するアルキル基(シクロアルキル基等)であってもよい。なお、上記化学式(a)または(b)で表されるカチオンにより構成される長鎖アルキル基含有アンモニウム塩等は、一般に難燃性が良好である。
【0031】
好ましい電解質は、このような長鎖アルキル基含有アンモニウム塩等と、上述したアンモニウム系および/またはイミダゾリウム系の常温溶融塩とを含有する。この電解質は、さらに上記フッ素系溶媒(好ましくはフッ素系有機溶媒)を含有することができる。
好ましく使用される長鎖アルキル基含有アンモニウム塩等の例としては、上記化学式(a)におけるR11およびR13がそれぞれ炭素数1〜3のアルキル基(好ましくはメチル基)であり、上記化学式(a)におけるR12およびR14がそれぞれ炭素数12〜18のアルキル基(好ましくは直鎖アルキル基)であるアンモニウム塩が挙げられる。電解質の組成としては、かかるアンモニウム塩とアンモニウム系常温溶融塩との組み合わせ、該アンモニウム塩とイミダゾリウム系常温溶融塩との組み合わせ、該アンモニウム塩とアンモニウム系およびイミダゾリウム系の双方を含む常温溶融塩との組み合わせがいずれも好ましい。このような組成の電解質は、長鎖アルキル基含有アンモニウム塩と常温溶融塩との混合適正(相溶性)と、そのアンモニウム塩の濡れ向上剤としての効果(すなわち電解質の濡れ性を向上させる効果)とのバランスが良好である。
また、好ましく使用される長鎖アルキル基含有アンモニウム塩等の他の例としては、上記化学式(b)におけるR21が炭素数1〜3のアルキル基(好ましくはメチル基)であり、上記化学式(b)におけるR22が炭素数12〜18のアルキル基(好ましくは直鎖アルキル基)であるイミダゾール塩が挙げられる。電解質の組成としては、かかるイミダゾール塩と、アンモニウム系常温溶融塩との組み合わせ、該イミダゾール塩とイミダゾリウム系常温溶融塩との組み合わせ、該イミダゾール塩とアンモニウム系およびイミダゾリウム系の双方を含む常温溶融塩との組み合わせがいずれも好ましい。このような組成の電解質は、長鎖アルキル基含有イミダゾール塩と常温溶融塩との混合適正(相溶性)と、そのイミダゾール塩の濡れ向上剤としての効果とのバランスが良好である。
【0032】
特に限定するものではないが、フッ素系溶媒を含有する電解質では、常温溶融塩のモル数とフッ素系溶媒(典型的には有機フッ素化合物)とのモル数の合計を100%として、その合計モル数に占めるフッ素系溶媒のモル数の割合を例えば5%以上とすることができ、15%以上とすることが好ましく、30%以上とすることがより好ましい。また、上記合計モル数に占めるフッ素系溶媒のモル数の割合を例えば95%以下とすることができ、85%以下とすることが好ましく、70%以下とすることがより好ましい。また、濡れ向上剤(長鎖アルキルアンモニウム塩等)を含有する組成の電解質では、該濡れ向上剤と常温溶融塩との合計量に占める濡れ向上剤の割合を質量比で3mass%以上(好ましくは5mass%以上)とすることができる。この濡れ向上剤の含有割合は50mass%以下とすることが好ましく、30mass%以下とすることがより好ましい。
電解質に含有させる支持塩の濃度は、媒体の組成等によっても異なるが、例えば、常温溶融塩とフッ素系溶媒および/または濡れ向上剤の合計量1リットル当たり0.1〜5モル(好ましくは0.1〜3モル、より好ましくは0.5〜2モル)の支持塩を含有する組成とすることができる。一般に支持塩の濃度を高くすると充放電特性は向上する。ただし、広い温度範囲で使用するのに適した蓄電素子を構成するためには、少なくとも10℃以上(好ましくは0℃以上)の温度範囲で支持塩が安定して溶解し得る(析出等が認められない)程度の濃度とすることが好ましい。
【0033】
なお、本発明に係る常温溶融塩は、その効果を顕著に損なわない範囲で他の成分を含有することができる。例えばフッ素原子を含有しない有機溶媒(非フッ素系有機溶媒)を含有する構成とすることができる。この非フッ素系有機溶媒の含有割合は、常温電解質のモル数と該有機溶媒との合計モル数に対して5%未満とすることが好ましく、3%未満とすることがより好ましく、1%未満とすることがさらに好ましい。また、フッ素系溶媒を含有する組成の電解質では、フッ素系溶媒のモル数と非フッ素系有機溶媒との合計モル数に対して、非フッ素系有機溶媒のモル数の割合を50%未満とすることが好ましく、10%未満とすることがより好ましい。
【0034】
このような電解質を一対の電極の間に配置して蓄電素子を構成することができる。好ましく使用される電極は、導電性のよい材料(金属材料等)からなる集電体の表面に、電極活物質を主体とする活物質層が設けられた構成のものである。これらの電極構成材料としては、蓄電素子の種類、電極の正・負の別等に応じた材料を適宜選択することができる。例えば、リチウムイオン二次電池の正極であれば、集電体としてアルミニウム箔等を、電極活物質(正極活物質)としてリチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO2)、リチウム鉄酸化物(例えばLiFeO2)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMn2O4)等の一般的な正極活物質材料を選択することができる。また、リチウムイオン二次電池の負極であれば、集電体としてアルミニウム箔等を、電極活物質(負極活物質)としてリチウムイオンを吸蔵放出することのできる炭素材料(アモルファスカーボン、グラファイト等)、チタン酸リチウム(例えばLi4Ti5O12)等を選択し得る。
【0035】
このような電極活物質は一般に粒子状であり、通常は適当な結着材とともに集電箔表面に付着されて活物質層を構成している。結着材としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系ポリマーや、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等を用いることができる。結着材としてフッ素系ポリマーを用いた活物質層を備える電極と、フッ素系溶媒を含有する電解質とを組み合わせて蓄電素子を構成することが好ましい。かかる組み合わせによると、電極(活物質層)に対する電解質の接触性が特に良好なものとなり得る。なお、活物質層には必要に応じて他の成分(例えば、カーボンブラック(CB)、黒鉛等のような導電化材)を含有させることができる。
【0036】
この発明はまた、下記の形態で実施することができる。
(形態1)
常温溶融塩とフッ素系有機溶媒とを含有する電解質用媒体組成物。かかる媒体組成物に適当量の支持塩を混合することによって、電極との接触性のよい常温溶融塩電解質を容易に調製することができる。例えば、支持塩としてのリチウム塩を、媒体組成物1リットル当たり0.1〜5モル(好ましくは0.1〜2モル、より好ましくは0.5〜1.5モル)の割合で添加することにより、リチウムイオン電池用として適した常温溶融塩電解質を調製することができる。このような媒体組成物は、フッ素系結着材を含む活物質層を備える電極を用いて構成された蓄電素子(例えばリチウムイオン電池)用の電解質を調製するための媒体組成物として特に好適である。
【0037】
(形態2)
フッ素系結着材を含む活物質層を備える一対の電極の間に電解質が配置された蓄電素子であって、その電解質は、常温溶融塩とフッ素系溶媒とを含む媒体と、その媒体1リットル当たり0.5モル以上(典型的には0.5〜5モル/リットル、好ましくは0.5〜3モル/リットル)の支持塩とを含有し、前記フッ素系結着材に対する前記電解質の接触角が常温において40°以下であることを特徴とする蓄電素子。このような蓄電素子は、電解質が活物質層を濡らしやすい(活物質層の空孔に染み込みやすい)ので、電解質と活物質層との接触性が良好である。このため性能のよい(例えば、放電容量等の充放電性能に優れた)蓄電素子となり得る。
好ましい形態では、媒体1リットル当たり0.75モル以上(典型的には0.75〜3モル/リットル)の支持塩を含有することができ、より好ましい形態では媒体1リットル当たり1モル以上(典型的には1〜3モル/リットル)の支持塩を含有することができる。フッ素系結着材としてはPVDF、PTFE等を用いることができる。この電解質は非フッ素系有機溶媒を実質的に含有しないことが好ましい。常温溶融塩とフッ素系溶媒との合計モル数に占めるフッ素系溶媒のモル数が15%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。例えばリチウムイオン二次電池の場合には、支持塩として各種のリチウム塩(好ましくは、電解質に含まれる常温溶融塩を構成するアニオンと同種のアニオンとリチウムイオンとの塩)を用いることができる。
【0038】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0039】
<実験例1:常温溶融塩電解質の調製>
以下のようにして常温溶融塩電解質を調製した。
[参考例1] 常温溶融塩としての1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムトリフルオロスルホニルイミド(EMI−TFSI)と、フッ素系有機溶媒としての4−エチルフルオロベンゼン(EFB)とを80:20のモル比で混合した。この混合物(混合媒体)1リットル当たり1.25モル(359g)の割合で、支持塩としてのリチウムトリフルオロスルホニルイミド(LiTFSI)の粉末を添加して攪拌混合した。このようにして参考例1の常温溶融塩電解質を調製した。なお、EFBの分子量は約160であり、分子量に占めるフッ素原子の割合(質量比)は約15mass%である。
[参考例2および3] EMI−TFSIとEFBとの混合割合(モル比)を60:40(質量比で3.67:1)(参考例2)および40:60(参考例3)とした点以外参考例1と同様にして、参考例2および参考例3の常温溶融塩電解質を調製した。
[参考例4] EMI−TFSIと、フッ素系有機溶媒としてのヘキサフルオロプロピルテトラヒドロフラン(HFPTHF)とを80:20のモル比で混合した。この混合物(混合媒体)1リットル当たり1.25モルの割合でLiTFSIを混合して、参考例4の常温溶融塩電解質を調製した。なお、HFPTHFの分子量は約222であり、分子量に占めるフッ素原子の割合(質量比)は約63mass%である。
[参考例5および6] EMI−TFSIとHFPTHFとの混合割合(モル比)を60:40(参考例2)および40:60(参考例3)とした点以外は実験例1と同様にして、参考例5および参考例6の常温溶融塩電解質を調製した。
[参考例7] 混合媒体1リットル当たりに混合するLiTFSIの割合を2モル(574g)とした点以外は参考例2と同様にして、参考例7の常温溶融塩電解質を調製した。
[実施例1] EMI−TFSIに対し、下記化学式(c)で示されるアンモニウム塩(濡れ向上剤)を質量比で10mass%の割合で混合した。この混合物1リットル当たり1.25モル(359g)の割合でLiTFSIを混合した。このようにして実施例1の常温溶融塩電解質を調製した。
【0040】
[N(CH3)2(C12H25)2]+・[N(SO2CF3)2]- ・・・(c)
【0041】
[実施例2] EMI−TFSIに対する濡れ向上剤の混合割合(質量比)を20mass%とした点の以外は実施例1と同様にして、実施例2の常温溶融塩電解質を調製した。
[参考例8] 1リットルのEMI−TFSIに対して1.25モル(325g)のLiTFSIを混合して、比較例の常温溶融塩電解質を調製した。
[参考例9] EMI−TFSIとエチルメチルカーボネート(EMC)とを60:40のモル比で混合した。この混合物(混合媒体)1リットル当たり1.25モルの割合でLiTFSIを混合して、参考例9の常温溶融塩電解質を調製した。
[比較例] 1リットルのEMI−TFSIに対して2モルのLiTFSIを混合して、比較例の常温溶融塩電解質を調製した。この電解質を0℃に冷却したところLi塩が析出した。一方、実施例1、2及び参考例1〜9の電解質を同様に0℃まで冷却したところ、いずれもLi塩の析出はみられなかった。
実施例1及び2並びに参考例1〜9及び比較例で調製した常温溶融塩の組成を表1および表2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
<実験例2:電極の作製>
アルミニウム箔の表面に正極活物質層を形成して正極を作製した。すなわち、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、カーボンブラック(CB)およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN−メチルピロリドンとともに混合して正極活物質ペーストを調製した。このペーストは、LiCoO2:CB:PVDFをほぼ85:10:5の質量比で含有する。なお、コバルト酸リチウムとしては、日本化学工業株式会社製の商標「セルシード C」を使用した。また、カーボンブラックとしては、電気化学工業株式会社製の商標「HS−100」を使用した。ポリフッ化ビニリデンとしては、呉羽化学株式会社製の商標「KFポリマー#1120」を使用した。
厚さ約15μmのアルミニウム箔(正極集電体)に上記で得られた正極活物質ペーストを塗布した。その塗布物を80℃で乾燥させた後、厚み方向にプレスして、集電体の片面に約6mg/cm2の正極活物質層が形成された正極シートを作製した。この正極シートを直径16mmの大きさに打ち抜いて正極とした。
【0045】
一方、アルミニウム箔の表面に負極活物質層を形成して負極を作製した。すなわち、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)、カーボンブラック(CB)およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)をN−メチルピロリドンとともに混合して負極活物質ペーストを調製した。このペーストは、Li4Ti5O12:CB:PVDFをほぼ85:10:5の質量比で含有する。なお、チタン酸リチウムとしては高純度化学株式会社製のものを用いた。カーボンブラックおよびポリフッ化ビニリデンとしては正極と同じものを使用した。
厚さ約15μmのアルミニウム箔(負極集電体)に上記で得られた負極活物質ペーストを塗布した。その塗布物を80℃で乾燥させた後、厚み方向にプレスして、集電体の片面に約8mg/cm2の負極活物質層が形成された負極シートを作製した。この負極シートを直径16mmの大きさに打ち抜いて負極とした。
【0046】
<実験例3:電極気孔率評価>
上記実施例2で作製した正極を用いて、実験例2,7,8および10の電解質につき、電極への電解質の含浸(浸透)しやすさの程度を評価した。具体的には以下の方法により、電解質と接触させる前に電極(主として活物質層)が有していた空孔の体積のうち、電解質を含浸させた後にも残存する(電解質で満たされていない)空孔の体積の割合を測定した。この空孔残存割合(以下、「電極気孔率」という。)が低いということは、電解質が活物質層内の微小な隙間(空孔)にまでよく行き渡っているということ、したがって電極(活物質層)と電解質との接触性が良好であることを示している。
【0047】
[電極気孔率測定方法]
(1).使用する正極の厚さ(集電体と正極活物質層との合計厚さ)および面積を測定し、これらの値から電極の見掛けの体積(実体のある部分と空孔部分とを含めた外形体積)V1を算出した。また、この正極の空気中での重さG1を測定し、式「G1/V1」により正極の見掛け密度ρ3を算出した。
(2).一方、正極を構成する各材料の密度から、正極の実体(すなわち空孔部分を含まない)部分の平均密度(真密度)ρ1を算出した。なお、アルミニウムの密度は2.70g/cm3、LiCoO2の密度は5.0g/cm3、CBの密度は1.95g/cm3、PVDFの密度は1.78g/cm3とした。
(3).次に、アルキメデス法により、電解質を含浸させた後に残存した空孔と正極の実体部分とを含めた正極の密度(含浸後密度)ρ2を測定した。すなわち、ロータリーポンプにより1mTorr(約0.13Pa)に減圧した雰囲気下で電解質中に正極を5分間含浸(真空含浸)し、電解質中での正極の重さG2を測定した。そして、上記(1).で測定した空気中での正極の重さG1および電解質の比重ρ0を用いて、式「G1/(G1−G2)×ρ0」により得られた値をρ2とした。
(4).ここで、電解質含浸前の正極中に存在する空孔の合計体積(含浸前空孔体積)Pallは、式「G1(1/ρ3−1/ρ1)」で表される。一方、電解質含浸後の正極に残存する空孔の合計体積(含浸後空孔体積)Pbubbleは、式「G1(1/ρ2−1/ρ1)」で表される。これらの値を用いて、式「1−Pbubble/Pall」により算出された値を電極気孔率(体積%)とした。
【0048】
フッ素系有機溶媒(EFB)を含有する参考例2および参考例7、濡れ向上剤を含有する実施例1、それらのいずれをも含有しない参考例8(比較例)の各電解質を用いて測定した電極気孔率の値を、それらの各電解質の概略組成とともに表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
この表3から判るように、比較例の電解質の電極気孔率に比べて、参考例2,7,実施例1の電解質の電極気孔率はいずれもその1/4以下(参考例2および7では1/10以下)と明らかに低い。これは、電解質にフッ素系有機溶媒または濡れ向上剤を含有させることにより電極との接触性が向上したことを示している。また、一般に支持塩(ここではLi塩)の濃度が高くなると電解質の粘度が高くなり、電極との接触性は低下する傾向にあるところ、参考例7の電解質は、比較例の電解質よりも明らかに高いリチウム塩濃度を有するにもかかわらず電極に対して良好な接触性を示した。このような電極との接触性のよさ(電極気孔率の低さ)は、後述する実験例5の結果にも表れている。
【0051】
<実験例4:リチウムイオン二次電池の作製>
実験例1で調製した電解質および実験例2で作製した電極を用いてリチウムイオン二次電池を作製した。これらの材料の他に、セパレータとして、多孔質ポリプロピレンフィルム(旭化成株式会社製、商標「N6022」を使用した。)を直径20mmの大きさに打ち抜いたものを用意した。このセパレータを挟んで実験例2で作製した正極と負極とを活物質層同士が対向するように配置し、正極(正極活物質層)とセパレータとの界面およびセパレータと負極(負極活物質層)との界面に実施例1で調製した電解質を滴下して、直径約20mm、厚さ約3.2mm(2032型)のコイン型リチウムイオン二次電池を作製した。なお、この操作はアルゴン雰囲気下で行った。
【0052】
<実験例5:放電特性評価>
実験例4で作製したリチウムイオン二次電池のうち、実施例1並びに参考例2,7,およびの電解質を用いたものにつき、以下の方法により各放電レートにおける放電容量(放電レート特性)を測定した。
【0053】
[放電レート特性の評価]
作製した電池に対し、極間電圧が1.5V〜2.6Vまでの範囲で、286μA(約1/5Cに相当する。)の電流で2サイクルの充放電を行った。その後、1.43mA(約1Cに相当する。)で電圧上限が2.6VとなるようにCC−CV(定電流−定電圧)充電を4時間行って満充電状態にした。この状態の電池を、25℃の恒温槽内で1/10C〜5Cの各電流値(放電レート)で1.5Vまで放電させて放電容量を評価した。なお、1Cの理論値は正極活物質の量に比容量(140mA/g)を掛けて求めた。
【0054】
図1は、これらの測定結果を表した特性図である。この図から判るように、比較例の電解質を用いた電池に比べて、参考例2の電解質(比較例と同等のリチウム塩を含有し、その常温溶融塩の40モル%がフッ素系溶媒で置き換えられた組成に相当する)を用いた電池は、測定した放電レートの全範囲で放電容量が向上していた。これは、上記参考例1で電極気孔率が低いことから判るように、参考例2の電解質を用いた電池では活物質層に電解質がよく浸透し、電解質と活物質層(電極活物質)との実質的な接触面積(有効比表面積)が増大し、電極活物質をより有効に利用できるようになったためと推察される。この参考例2の電解質は、後述する実験例7に示すように、比較例の電解質に比べて活物質層の構成材料(特にPVDF)に対する濡れ性が良好である。このことは参考例2の電解質が活物質層に浸透するのに有利である。
【0055】
参考例2と同様の媒体組成においてリチウム塩濃度を高めた参考例2(2モル/リットル)では放電容量がさらに向上し、特に高放電レート側(1C以上)では大きな効果がみられた。これは、リチウム塩濃度を高くしたことにより、電解質中の全イオンでのイオン伝導度はほぼ同程度であるが、電解質中の全イオンに対するリチウムイオンの導体濃度が上昇したためリチウムイオン伝導度が向上し、これにより高電流での電池放電特性が向上したものと考えられる。なお、媒体として常温溶融塩のみを用いて参考例7と同じリチウム塩濃度に調製した参考例10の電解質では0℃においてリチウム塩が析出したのに対して、実験例7の電解質ではかかる析出が生じなかったのは、比較例の電解質に使用したフッ素系溶媒がリチウム塩を溶解しやすいことによると考えられる。
【0056】
また、図1から判るように、比較例の電解質を用いた電池に比べて、濡れ向上剤を添加した実施例1の電池では、測定した放電レートの全体で放電容量が改善されていた。これは、実施例1の電解質を用いた電池では、後述する実施例1に示すように、比較例の電解質に比べて活物質層の構成材料(特にPVDF)に対する濡れ性が向上していることから、活物質層に電解質がよりよく浸透したことによると推察される。
【0057】
<実験例6:濡れ性評価>
濡れ向上剤を含有する実施例1および2の電解質につき、電極(活物質層)構成材料に対する接触角を測定した。すなわち、各電解質につき、活物質層を構成する正極活物質(LiCoO2)、導電化材(CB)および結着材(PVDF)の夫々に対する接触角を測定し、これらの各材料に対する電解質の濡れ性を評価した。接触角の測定は以下の方法で行った。その結果を表4に示す。
【0058】
[接触角測定方法]
集電体として用いたものと同じアルミニウム箔上に、N−メチルピロリドンにLiCoO2(粒子状)を分散させたペーストを塗布し、乾燥させてプレスした。このLiCoO2層上に、有機溶媒を含有しない実験例10の電解質、フッ素系有機溶媒を含有する実験例2の電解質、および非フッ素系有機溶媒(EMC)を含有する実験例11の電解質を滴下して(約0.02ml)、常温における接触角を測定した。同様にしてアルミニウム箔上にCB層およびPVDF層を形成し、これらの層に対する各電解質の接触角を測定した。その結果を、比較例についての測定結果とともに表4に示す。表4には、各電解質の粘度を落球式粘度計により測定した結果を併せて示している。
【0059】
【表4】
【0060】
表4に示すように、実施例1の電解質は比較例の電解質に比べて接触角が低下している。PVDFに対する接触角の低下が特に顕著である。一方、実施例1の電解質は比較例の電解質よりもむしろ高粘度である。したがって、上記接触角の低下(濡れ性が向上)は濡れ向上剤の添加による効果であると考えられる。また、濡れ向上剤の添加量を多くした実施例2では実施例1に比べて接触角の低下効果が少なくなっている。これは、濡れ向上剤の添加による接触角低下効果の一部が、粘度の増加による接触角増大効果によって打ち消されたことによると考えられる。本実施例の組成では、濡れ向上剤の濃度を凡そ20mass%以下の範囲とすることが適当であるといえる。
【0061】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 放電容量と放電レートとの関係を示す特性図である。
Claims (5)
- 前記化学式(a)において、前記炭素数1〜4のアルキル基はメチル基であり、前記炭素数1〜18のアルキル基のいずれか一方はメチル基であり他方は炭素数12〜18のアルキル基である請求項1に記載の電解質。
- 一対の電極と、それらの電極の間に配置された請求項1又は2に記載の電解質とを備える蓄電素子。
- 前記一対の電極の少なくとも一方は前記電解質に接して設けられた活物質層を有する請求項3に記載の蓄電素子。
- 前記活物質層はフッ素系結着剤を含有する請求項4に記載の蓄電素子。
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