JP4883263B2 - イオン伝導体及びエネルギーデバイス - Google Patents
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Description
かかるプロトン交換体において、プロトン伝導性の発現は、ヘテロ原子を含む塩基性化合物のヘテロ原子に結合する水素原子を利用して行われている。
更に、固定化により膜化形態とすることができ、これにより、電解質のハンドリングが容易となり、従来のPEFCの構造を維持したまま、本発明のイオン伝導体を適用することが可能になる。
上述の如く、本発明のイオン伝導体は、非共有電子対を有するヘテロ原子をその骨格部位内に含むポリマー(A)と、カチオン成分とアニオン成分を含む電解質(B)とを共存させて成るものである。
まず、(A)成分である所定ポリマーにつき説明する。
ここで、「ヘテロ原子」とは、炭素原子及び水素原子以外の原子を意味し、複素環(ヘテロ環)を構成する炭素原子以外の原子に限定されないものとする。
また、非共有電子対を有するヘテロ原子としては、窒素原子(N)を挙げることができる。
本発明は、後述するように、イオン伝導体におけるキャリアーイオンの伝導性を向上することを骨子とするものであるが、かかる特定ヘテロ原子が繰り返し単位内に存在すれば、キャリアーイオンがルイス酸(キャリアーイオン)−ルイス塩基(非共有電子対を持つヘテロ原子)の共役化を行うことが可能となる結合部位が、化学構造式的に等間隔で且つ多く提供されることになるので、キャリアーイオン伝導性を向上させるのに有効である。
本発明のイオン伝導体をPEFCの電解質膜に適用する場合には、プロトン伝導性が直接の技術対象となる。
なお、これが他のエネルギーデバイス、例えばリチウムイオン電池になれば、そのキャリアーイオンはLi+となり、目的とするエネルギーデバイスの形態によってキャリアーイオンは適宜変更することが可能である。
このようなヘテロ環を有するポリマーは、一般に耐熱性に優れるので、イオン伝導体のキャリアーイオン伝導性を改善するだけではなく、高温安定性も向上できる。
従って、かかるヘテロ環を有するポリマーを含む本発明のイオン伝導体を、例えば燃料電池の電解質に適用すれば、従来のPEFCでは発電が困難な100〜150℃程度においても発電を行える可能性が生ずる。
次に、(B)成分である所定の電解質につき説明する。
この電解質(B)に含まれるアニオン成分としては、複数個の原子から形成される多原子性(例えば、分子性)のものが使用可能である。
特に、Rがメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基のものを好適に使用できる。
特に、Rが水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ノニル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、ベンジル基のものを好適に使用できる。
特に、R1、R2がメチル基、R3が水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又はヘキシル基であるものを好適に使用できる。
また、イオン伝導体を適用するエネルギーデバイスに応じて、当該電解質を好適化することが容易となり、エネルギーデバイスへの実際の適用性を向上できる。
かかる常温溶融塩は、一般にイオン液体と称されており、常温溶融塩であるがゆえに蒸気圧が極めて低く、蒸発し難い。また、難燃性で、熱分解温度が通例250℃以上と高く、凝固点も通例は−20℃以下であり、安定性に優れた材料である。
よって、かかる特定ヘテロ原子を有する分子性カチオンを含むイオン液体を電解質(B)に用いることにより、得られるイオン伝導体のプロトン伝導性をもいっそう向上できることになる。
上述のように、本発明のイオン伝導体は、以上に説明した所定ポリマー(A)と所定電解質(B)を混在させて成るものであり、後述するメカニズムによって、キャリアーイオンの伝導性に優れるものである。
よって、本発明によれば、固体高分子型燃料電池(PEFC)などへの適用性に優れたイオン伝導体を提供できる。
なお、ポリマー(A)の多孔質化に際し、多孔体ポリマーの気孔率、細孔径や細孔分布を調整することが可能であり、これにより、キャリアーイオン伝導度や電解質保持力を設計できるので、用途などに応じた所望のイオン伝導体を得られるようになる。
本発明は、所定ポリマー(A)と所定電解質(B)を混在させること、典型的には所定ポリマー(A)に所定電解質(B)を固定化することにより、プロトンに代表されるキャリアーイオン伝導経路を、所定ポリマー(A)と所定電解質(B)とで協同的に形成したものである。
この際、所定電解質(B)もキャリアーイオン伝導性を有するものであるため、キャリアーイオンは、所定ポリマー(A)(特に非共有電子対部位)と、所定電解質(B)との間を行き来しながら、ルイス塩基部位をホッピングして当該イオン伝導体を伝導するのであり、この意味において、本発明は、所定ポリマー(A)と所定電解質(B)とで、キャリアーイオンの伝導経路を協同的に形成するものである。
同図では、本発明のイオン伝導体の一例として、ポリマー(A)としてポリベンズイミダゾール、電解質(B)のイオン液体における分子性カチオンとしてイミダゾリウム系カチオンを採用したものを示している。
この際、分子性カチオンの一例であるイミダゾリウム系カチオンにも、プロトンの脱離によって生じる非共有電子対を有する窒素原子が存在するので、キャリアーイオンは分子性カチオンに対しても酸塩基共役・解離を行いながら、このイオン伝導体をイオンホッピング(グロータス)機構によって伝導して行く。
またこの際、所定電解質(B)は、特定ヘテロ原子の非共有電子対を有するので、上述したグロータス機構によるプロトン伝導性を発揮するものであり、更にキャリアーイオン伝導性が向上する可能性がある。
このようなヘテロ環構造の近似性がある場合には、ポリマー(A)と電解質(B)との間において、キャリアーイオンの酸塩基共役・解離がカチオン種、アニオン種を利用して円滑に進行するので、キャリアーイオン伝導性を向上する上で好適である。
上述の如く、本発明のエネルギーデバイスは、上記のイオン伝導体を電極で挟持した構造部位を有するものである。
上記イオン伝導体がキャリアーイオン伝導性に優れるので、このエネルギーデバイスは電圧降下(IR降下)に伴うエネルギー損失が小さく、従って、高エネルギー性能を発揮し得る。
なお、水電解、ハロゲン化水素酸電解、食塩電解、酸素濃縮器、湿度センサー及びガスセンサーに用いられる固体高分子電解質膜にも適用することができる。
この燃料電池は、上記のエネルギーデバイスを単セルとするものであり、上述のIR降下抑制能から、高い発電力を発揮するものである。
また、この燃料電池をスタッキングすることなどにより、燃料電池(発電)システムを構築することも可能であるが、このシステムが高い発電力を発揮することはいうまでもない。
この結果、ラジエターを小型化できるのみならず、発電システムが占有する容積を低減したり、軽量化することも可能になる。
従って、本発明の燃料電池や燃料電池システムを適用した移動体においては、水貯蔵容器などを備え付ける必要がなくなり、管理が簡便化するとともに軽量化でき、燃費の向上などが実現される。
(実施例1)
所定ポリマー(A)としてポリ−N−ビニルイミダゾールを用い、所定電解質(B)として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMImBF4)とのコンポジット化によるイオン伝導体を以下の手順で調製した。
なお、ここで使用したEMImBF4は、市販されているグレードのものをヘキサン/酢酸エチル混合溶媒(容量比1/1)で洗浄を行った後、減圧乾燥したものである。
所定ポリマー(A)としてポリベンズイミダゾール(PBI)を用い、所定電解質(B)として1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMImBF4)とのコンポジット化によるイオン伝導体を以下の手順で調製した。
なお、ここで使用したEMImBF4は、実施例1と同様に市販されているグレードのものをヘキサン/酢酸エチル混合溶媒(容量比 1/1)で洗浄を行った後、減圧乾燥したものである。
実施例2で作製した膜をポリフッ化ビニリデン多孔質材に置き換えた以外は実施例2と同様の操作を繰り返し、本例のイオン伝導体を作製した。
なお、ポリフッ化ビニリデン多孔質体は、市販されているフィルター(デュラポアメンブレンフィルターGVHP04700 細孔径0.22μm、空隙率75%)を用いた。
この多孔質体をEMImBF4へ含浸し、50℃で5時間、減圧下に置いた後、電解質とコンポジット化した本例のイオン伝導体を得た。
(イオン伝導度の計測)
イオン伝導度は、表面に白金黒を形成したPt電極を備える専用セルを用いて測定した。
実施例1及び2、比較例で得られたイオン伝導体をこの白金黒を形成したPt電極にて両面から挟み込み、計測セルを構成した。なお、界面においての接触抵抗の影響を緩和させるため、Pt電極とイオン伝導体の間に数滴のイオン液体を滴下してイオン伝導体を挟み込んだ。このセルの両端に形成された端子間の抵抗を、交流インピーダンス法により測定し、各例のイオン伝導体のイオン伝導度を計測した。得られた結果を図2に示す。
例えば、実施例では、単一組成のイオン液体を電解質として用いたが、2種類以上のイオン液体を混合して使用してもよい。
また、イミダゾールのようなオニウム塩となっていないものを混合してもよい。この場合、イミダゾールの非共有電子対を持つ窒素原子(N)もイオン伝導に寄与できる。
Claims (11)
- イミダゾール系ポリマーと、分子性カチオン及び分子性アニオンからなる常温溶融塩を含む電解質とが共存しているイオン伝導体であって、
上記分子性カチオンがイミダゾリウム系カチオンであることを特徴とするイオン伝導体。 - 上記イミダゾール系ポリマーが、ポリ−N−ビニルイミダゾールであることを特徴とする請求項1に記載のイオン伝導体。
- 上記イミダゾール系ポリマーが、ポリベンズイミダゾールであることを特徴とする請求項1に記載のイオン伝導体。
- 上記分子性カチオンが下記一般式(3)〜(5)で表されるイミダゾリウム誘導体カチオンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載のイオン伝導体。
- 上記ポリマーが、上記電解質の支持材として機能することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載のイオン伝導体。
- 上記ポリマーがフィルム状をなすことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載のイオン伝導体。
- 上記ポリマーが多孔体を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載のイオン伝導体。
- キャリアーイオンがプロトンであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つの項に記載のイオン伝導体。
- 請求項1〜9のいずれか1つの項に記載のイオン伝導体を電極で挟持した構造部位を備えることを特徴とするエネルギーデバイス。
- 請求項10に記載のエネルギーデバイスを単セルとして備えることを特徴とする燃料電池。
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