JP4258772B2 - 変寸抑制特性に優れた冷間ダイス鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、広い概念で言えば、金型材料に係わり、特に、家電、携帯電話、自動車等の構成部品を成形するための金型に好適に使用される冷間ダイス鋼に関するものである。
従来、冷間ダイス鋼にはJIS SKD11が多用されているが、一部では、SKD11を改良して、新たに被削性、靭性、二次硬化硬さを向上させる試みがなされている。例えば、(1)C,Crの添加量を調整することでSKD11のマトリックス(基地)組成を極力維持しながら未固溶炭化物を減らし、被削性や靭性を改良した10%CrSKD(特開平11−279704号公報参照)と呼ばれる冷間ダイス鋼、或いは(2)SKD11のマトリックス組成を極力維持しながら未固溶炭化物量を減らした上に、更にMo量を高めることで二次硬化能を高めた8%CrSKD(特開平01−011945号公報参照)と呼ばれる冷間ダイス鋼が提案されている。
上述の手法は、冷間ダイス鋼に求められる諸特性の向上に有効である。しかし、これらはいずれも焼戻し時に生じる変寸が大きいところに課題がある。つまり、焼戻しの二次硬化領域にて発生する膨張量が大きいことから、熱処理後の加工工数の増加に繋がる。
焼戻し時の膨張変寸の発生は、先に施された焼入れ時の残留応力の解放(残留オーステナイトの分解)が原因であって、これは、従来、二次硬化を期待して添加されるMo等が形成する焼戻し炭化物の析出により促進される。また、残留オーステナイトは、造塊時に形成され、もとより存在する未固溶の一次炭化物によって拘束されれば、その焼戻し時の分解は抑制されるが、一次炭化物は被削性の劣化要因となることから低減することが好ましく、これによってやはり残留オーステナイトの分解は促進され、変寸は助長される。
近年、金型加工業においては、加工技術の発達により、熱処理前の加工工数こそ激減しているが、熱処理後の加工、調整の工数は以前よりあまり変化しておらず、特に、熱処理後の工程改善が急務となっている。そこで本発明は、焼入れ、焼戻し時に発生する変寸を抑制することで、金型製作工数を依然として引き上げていた熱処理後の加工、調整工程を削減できる、特に金型材料に適した冷間ダイス鋼を提供するものである。
まず、本発明者らは、冷間ダイス鋼の焼戻し時において、冷間ダイス鋼に求められる諸特性の全てを維持しなければならないという要求条件の下で、十分な抑制が難しい変寸を、逆に相殺手段によって抑制する手法を模索した。さらに、焼戻し時にマトリックスで生じる組織変化を子細に調べて、焼戻し炭化物それ自体は二次硬化への寄与度が低いことも突きとめた。そして、変寸を抑制でき、かつ、硬度も上昇できる新たな手段を見いだしたことで、その他の特性をも十分に備えた冷間ダイス鋼を得ることができた。
かくして、本発明によれば、以下の組成を有する、変寸抑制特性に優れた冷間ダイス鋼が提供される。
すなわち、質量%で、C:0.7〜1.6%未満、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.1〜3.0%、P:0.05%未満(0%を含む)、硫黄(S):0.01〜0.12%、Cr:7.0〜13.0%、MoおよびWから成る群から選ばれる1種または2種の元素:式(Mo+(W/2))=0.5〜1.7%で規定される量、V:0.7%未満(0%を含む)、Ni:0.3〜1.5%、Cu:0.1〜1.0%、および、Al:0.1〜0.7%を含む冷間ダイス鋼。
好ましくは、この冷間ダイス鋼は、質量%で、式:Ni/Al=1〜3.7を満たす。さらに、冷間ダイス鋼は、質量%で、(Cr−4.2×C)=5以下、および、(Cr−6.3×C)=1.4以上の関係式を満たすことが好ましい。また、0.3%以下のNbを含有することも望ましい。
本発明の重要な特徴は、冷間ダイス鋼に求められる諸特性を維持しながら、根本的な抑制が難しい変寸を、相殺手段によって抑制することにある。しかも、焼戻し時の膨張変寸を促進する要因になるにもかかわらず、二次硬化のために採用されてきた、上述の焼戻し炭化物であるが、それの「冷間ダイス鋼の熱処理硬化挙動の子細な見直しで突きとめた、二次硬化能の不足」についても、変寸の抑制と同時に、その二次硬化能不足をも補う手段を見いだした。この補足手段によれば、被削性や耐摩耗性を含む必要特性を阻害することなく、優れた変寸抑制特性と高硬さを達成できる。
本発明の原理は、一次炭化物を低減し、諸特性を満足できる範囲で、できるだけ変寸の発生を抑制し得る成分組成を基に、適正量のNi,Alを添加し、しかも、それに応じた適正量のCuをも添加した、変寸制御特性および高硬度特性に優れた冷間ダイス鋼である。
本発明において、Ni,Alは、それらが金属間化合物を形成し、上記工具鋼の二次硬化領域での焼戻し時(時効時)に析出することで、収縮方向の変寸に働くことから、残留オーステナイトの分解による前記膨張を相殺することができる。そして、このNi−Al系金属間化合物を工具鋼の二次硬化領域温度でこそ析出させることが、上記の相殺効果を発揮する上で重要であって、そのための作用効果を有するCu量の調整も適正に行なうものである。
さらに、本発明者らは、特に膨張変寸の問題が多発する、残留オーステナイトの分解と焼戻し炭化物の析出する高温焼戻し時の熱処理において、そのマトリックスがどのような組織変化を呈しているのかを、透過型電子顕微鏡による観察を利用して詳細に調査した。その結果、変寸を促進する焼戻し炭化物については、耐摩耗性の向上にこそ大きく寄与するものの、特に二次硬化の寄与要因として従来考えられてきた微細な炭化物の析出はほとんど確認されず、二次硬化の程度はマトリックス側の要因によるところが大きいことを知見した。
本発明が採用するNi−Al系金属間化合物の場合、それらは析出強化元素としての二次硬化作用も有することから、上記の変寸相殺作用に加えて、二次硬化作用をも更に補完し、よって、被削性や耐摩耗性といった他の必要特性を阻害せずに、優れた耐変寸特性と高硬度特性を達成できるのである。
この金属間化合物による析出強化は、従来、マルエージング鋼等への適用が多く見られる手段であるが、0.2質量%以上のCを含む工具鋼の分野、特に本発明の対象とするような冷間工具鋼の分野では使用されてこなかった。本発明では、その変寸相殺特性に加えて、工具鋼自体に考えられてきた焼戻し炭化物による二次硬化作用が実は薄いものであることをも知見し、このような金属間化合物の利用にまで着目できたものであるが、それであっても、そのNiやAl個々には工具鋼の要求特性を阻害する作用もあることから、工具鋼の成分組成、そしてCuとの相互かつ適正な合金設計が必要となる。
次に、焼入れ時に発生する変寸について述べると、その程度は焼入れ時のマトリックス中の固溶C量に左右され、すなわち、マルテンサイト組織中に固溶するCによって結晶格子が押し広げられ、膨張するものである。従来鋼の場合は、その焼入れ時の固溶C量がSKD11にならって0.6(質量%)の付近になるように全体の合金設計がされているが、本発明の冷間工具鋼は、その固溶C量を下げ、0.53%付近を目標にした成分設計を行なっている。
そして、これをCu,Ni,Alという固溶C量を低下させる元素の添加によっても達成しており、焼入れ時の膨張を抑制する設計則としている。このような固溶C量を達成するに好ましい要件は、本発明の基本組成とCu,Ni,Al量の適正な添加量に加えて、冷間ダイス鋼全体としての添加C,Cr量を(Cr−4.2×C)=5以下かつ(Cr−6.3×C)=1.4以上に調整することである。望ましくは、(Cr−6.3×C)=1.7以上である。
これらをまとめた概念図が図1である。(*注:図1において、記号Aは、「固溶炭素量を下げたことによる膨張抑制効果」を示す。記号Bは、「析出強化によって変寸量が相殺されること」を示す。記号Cは、「本発明鋼の二次硬化温度」を示す。)
本発明の冷間工具鋼は、JIS SKD11よりも大きな二次硬化が起こるのにもかかわらず、より変寸を抑えることが可能なものであることを示している。本発明の原理は、(1)焼入れ時の固溶C量を減少させること(図1中の記号A参照)、および、(2)Cu,Ni,Alの添加により二次硬化時のマトリックスの体積変化を相殺する(図1中の記号B参照)という2点が同時に満たされる点である。項目(1)についての考え方は、固溶C量を汎用焼入れ温度である温度1030℃前後で0.53%前後にすることが産業上最も重要である。(2)についての考え方は、CuとNiの添加により、熱間、冷間加工性の劣化が懸念されるが、それを防止可能なレベルでかつ最大の析出強化を引き起こすバランスに調整することが重要である。
以下、本発明の冷間工具鋼を構成する成分組成について説明する。なお、各元素の含有量を示す%の表記は、質量%である。
Cは一部が基地中に固溶して強度を付与し、一部は炭化物を形成することで耐摩耗性や耐焼付き性を高める重要な元素である。ここで、鋼中のCが固溶Cと炭化物になる割合は主にCrとの相互作用で決まるため、CはCrとの相互作用を認識して同時に規定することが必須である。しかし、被削性と熱処理変形安定性の両者をバランスよく満たす実用的な冷間ダイス鋼とするためにも、Cの成分範囲は単独において0.7〜1.6%とする。好ましくは、0.9〜1.3%である。
Siは本発明の冷間ダイス鋼にとって重要な元素である。Siは通常、脱酸剤として0.3%程度が添加されるが、本発明では焼入れ時の膨張を抑えた成分設計としている結果として焼入れ硬さの低下が懸念されるので、焼戻し時の温度490℃付近までの軟化現象を抑制するために通常よりも高い0.5%以上とすることが重要である。なお、過多の含有はデルタフェライトの形成を起こすため、上限を3.0%とする。好ましくは、0.9〜2.0%である。
MnもSiと同様、脱酸剤として使用され、最低でも0.1%を含有する。しかし、過度に含有すると切削性を阻害するので、上限を3.0%に規定した。好ましくは、0.1〜1.0%である。
Crは焼入れ性を高めるとともに、炭化物を形成するのに欠かせない元素である。ここで、Cの時に同様、鋼中のCrが固溶Crと炭化物になる割合はCとの相互作用によって決まるため、やはりその含有量はCとの相互作用を認識して同時に規定することが必須である。しかし、被削性と熱処理変形安定性の両者をバランスよく満たす実用的な冷間ダイス鋼とするためにも、Crの成分範囲は、単独において、7.0〜13.0%とする。好ましくは、8.0〜11.0%である。
MoとWは同様の作用効果を付与し、その程度は原子量の関係から(Mo+(W/2))で規定することができる。Mo,Wは工具鋼の二次硬化を担う元素とされ、特にバイト、ドリル等の小物製品への適用で高硬度を必要とする高速度工具鋼に多く添加される。本発明においても、Mo,Wは二次硬化を発揮するマトリックス状態に大きく寄与するものであることから添加を必要とするが、0.5%より少ないと十分な効果が得られず、一方、これらの元素は上記の通り変寸を助長することから、冷間金型等の大物製品にとって過多の添加はよくない。よって、本発明の冷間ダイス鋼では(Mo+(W/2))=0.5〜1.7%と規定した。好ましくは、(Mo+(W/2))=0.75〜1.5%である。
AlはNiと結合してNiAlもしくはNiAlといったNi−Al系金属間化合物を形成し、析出による二次硬化を担う。また、この析出反応によりマトリックスが収縮するため、工具鋼における二次硬化時の膨張反応を相殺し、その結果、変寸を抑制する、本発明にとっての重要元素である。しかし、0.1%より少ないと十分な効果は得られず、一方、0.7%を超える過多のAlは、著しいデルタフェライトの形成を起こすので、0.1〜0.7%に規定する。好ましくは、0.1〜0.5%、さらに好ましくは、0.15〜0.45%である。
Niは、上記の通り、Alと結合してNi−Al系金属間化合物を形成・析出し、二次硬化と変寸の抑制を同時に達成する、本発明にとっての重要元素である。また、後述のCuを含有する本発明の冷間ダイス鋼にとって赤熱脆性を抑える有益な元素でもある。しかし、0.3%より少ないと十分な効果は得られず、一方、1.5%を越える過多の含有はFe中のCの固溶限を上げ、焼鈍状態の加工性を阻害するため、0.3〜1.5%とした。好ましくは、0.4〜1.5%、さらに好ましくは、0.5〜1.3%である。
さらには、Ni/Al=1〜3.7の関係を満たすよう、Ni,Al量を調整することで、金属間化合物の形成に参加しない、マトリックス中のNi,Al量を調整することができる。特に金属間化合物の析出後において、マトリックス中のNi量を低減できるので、熱処理(時効)後の被削性を良好に保つことができる。好ましくは、Ni/Al=1.2〜3.7、より好ましくは、1.3〜3.7、さらに好ましくは、2.5〜3.5である。
Cuは、そのCu金属相が温度約480℃以上から析出し始め、これが金属間化合物の析出核になることから、本来はより高温で析出する上記のNi−Al系金属間化合物をちょうど工具鋼の二次硬化温度付近で析出させることを可能にする。よって、本発明のNi−Al系金属間化合物の析出による変寸相殺効果および二次硬化を最大限に発揮できる。しかし、Cuは多量に添加すると赤熱脆性が起こるため、本発明では0.1〜1.0%に規定することが重要である。好ましくは、0.2〜0.8%である。
硫黄(S)は被削性を向上させる有益な、本発明の冷間ダイス鋼にとっての必須元素である。しかし、過多に含有すると靭性を低下させるので、0.01〜0.12%とした。好ましくは、0.03〜0.09%である。
Nbは組織中の炭化物の分布を均一化し、熱処理変形を小さくする働きがあることから、本発明の冷間ダイス鋼にとっては、その含有の好ましい元素である。特に0.03%以上の含有が好ましいが、その含有により形成されるMX化合物の量が多すぎると被削性を害するので、0.3%以下の含有が望ましい。
また、以下の元素は下記の範囲内であれば本発明鋼に含まれてもよい。
Pは靭性を阻害する元素であることから、0.05%未満、好ましくは0.02%以下に規制する。Vは焼入れ性の向上の上で添加することができるが、被削性を阻害する元素であることから、含有する場合であっても0.7%未満、好ましくは0.5%以下に制限する。
本発明は、以上を満たす冷間ダイス鋼であって、残部を実質的にFeとする鋼とすることができる。例えば上述の元素種以外はFeと他の元素は総計で20%以下、10%以下、5%以下といった冷間ダイス鋼や、残部はFeおよび不可避的不純物で構成される冷間ダイス鋼であれば、優れた変寸抑制特性と二次硬化を同時に達成できる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
図1は、冷間ダイス鋼の焼戻しによる寸法および硬さの変化を示す図であり、本発明の効果を説明する図である。
図2は、冷間ダイス鋼の熱処理前後での寸法変化量を示す図である。
図3Aは、冷間ダイス鋼の熱処理前後でのねじれ量を測定するための、本発明の実施例で使用するテストピースの正面図である。
図3Bは、冷間ダイス鋼の熱処理前後でのねじれ量を測定するための、本発明の実施例で使用するテストピースの側面図である。
図4は、冷間ダイス鋼の熱処理前後でのねじれ量を示す図である。
大気中の高周波誘導溶解により、表1に示す残部Feおよび不可避的不純物の組成に調整した本発明例であるNo.1〜6、比較例であるNo.7〜9の、断面寸法80×80mmのインゴットを得た。ここでNo.7はJIS SKD11、No.8は8%CrSKD、No.9は10%CrSKDと呼称される材料である。
Figure 0004258772
まず、これらのインゴットに熱間加工を施して断面寸法15mm×15mmの線状素材とし、焼鈍処理後に8mmφ×80mmLの試験片を作製して、長手方向の寸法の測定を行った。そして、これらに温度1030℃の焼入れ(気圧0.506MPaの窒素冷却)と、続く2回の、それぞれの試料が二次硬化を起こす高温焼戻しを行なって硬さを60〜63HRC前後に調質し、その状態で再び寸法の測定を行った。なお、No.8(8%CrSKD)は温度約525℃の焼戻し温度で二次硬化を迎え、それ以外の試料は温度約510℃の焼戻し温度で二次硬化を迎える。そして、No.1〜6の調質硬さは全てSKD11(No.7)よりも高く、優れた二次硬化能を示した。
それぞれの試料における熱処理前後での寸法変化量、すなわち二次硬化時の変寸量を図2に示す。この熱処理変寸量は、上記の熱処理前後の長手方向の寸法測定結果より、以下の式で算出したものである。
熱処理変寸量=((熱処理後の寸法−熱処理前の寸法)/熱処理前の寸法)×100
No.8は、膨張量が最も多く、変寸が大きい。これはMoを過多に含有するためである。No.7,9は、Mo当量(Mo+(W/2))が1.0%辺りの適度に調整されてこそいるが、やはり0.05%程度の膨張を起こしている。これに対し、適正量のNi,Cu,Alが添加されたNo.1〜6は、熱処理変寸が0.01%以下に抑制されており、二次硬化領域でのNi−Al系金属間化合物の析出反応による膨張の相殺が作用していることが分かる。
次に、焼鈍処理後材より図3A(正面図),図3B(側面図)に示す形状のテストピースを作製した。なお、図3Aの矢印(1)(左から2.5mm)、矢印(2)(左から5.0mm)、矢印(3)(左から7.5mm)の位置におけるクリアランス(隙間寸法)は0.5mmである。そして、実施例1に同じ熱処理を行なった後に、改めて同位置のクリアランスを測定して、それらの変化量から下記の計算式による“ねじれ量”を求めた。
ねじれ量(絶対値)=
|((1)〜(3)の平均変化量)−((1)もしくは(3)のうちの、上記平均量から最も離れた方の値)|
計算したねじれ量の結果を図4に示す。No.7のねじれ量が最も大きいが、これはマルテンサイトへの固溶C量が多く、未固溶炭化物量も多いことから、マトリックスの膨張と未固溶炭化物の拘束によって生じる内部歪が大きいことによるものである。そして、未固溶炭化物の少ないNo.8,9であっても大きなねじれが発生しているが、Ni−Al系金属間化合物の析出によりマトリックスの内部歪が相殺されているNo.1〜6は、ねじれ量も少ないことが分かる。しかも適量のNbを含むNo.6は、±0.0001mmの測定精度においてねじれが確認されない良好な結果を得た。
本発明であれば、熱処理変寸および変形が少なくなるため、熱処理後の手直しによる仕上げ加工が低減/省略できることから、金型製造のコスト低減が可能になる。さらに、金型製作の納期短縮や、より複雑な形状の金型の熱処理にも対応の可能性が広がるため、産業上極めて有益な技術となる。
本発明の冷間ダイス鋼は、機械装置用部品を成形するための金型材料として好適に使用される。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.7〜1.6%未満、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.1〜3.0%、P:0.05%未満(0%を含む)、S:0.01〜0.12%、Cr:7.0〜13.0%、MoおよびWから成る群から選ばれる1種または2種の元素:式(Mo+(W/2))=0.5〜1.7%で規定される量、V:0.7%未満(0%を含む)、Ni:0.3〜1.5%、Cu:0.1〜1.0%、Al:0.1〜0.7%、残部Feおよび不可避的不純物からなる、変寸抑制特性に優れた冷間ダイス鋼。
  2. 質量%で、Ni/Al=1〜3.7を満たす請求項1に記載された冷間ダイス鋼。
  3. 質量%で、(Cr−4.2×C)=5以下、および、(Cr−6.3×C)=1.4以上の関係を満たす請求項1又は請求項2に記載された冷間ダイス鋼。
  4. 質量%で、0.3%以下(ゼロを含まず)のNbを含有する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された冷間ダイス鋼。
  5. 二次硬化時の熱処理変寸量が0.01%以下である請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された冷間ダイス鋼。
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