JP2019019374A - 焼入れ性および靱性に優れた熱間工具鋼 - Google Patents
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さらに、合金成分の式L=−0.4×Si−9.7×Mn+3.7×Ni+54.4×Moとするとき、式Lの値が54〜65であり、
かつ、合金成分の式Y=−17.1×C+0.1×Si+0.2×Mn+0.2×Ni+0.5×Cr+Mo+5.0とするとき、式Yの値が0.0以上であること、を特徴とする、焼入れ性および靱性に優れた熱間工具鋼である。
ただし、上記の式Lおよび式Yでは、その式中の[各元素記号]の文字の部分には、各成分元素の量を%表記で示す際の数値のみを代入して値を求めるものとする。
望ましくは、0.39〜0.43%
Cは、硬質炭化物を形成し、硬さ、耐摩耗性を向上させるとともに焼入れ性を高める成分である。Cが0.37%より低すぎると、硬さ、耐磨耗性、焼入れ性において十分な効果が得られない。もっとも、Cが0.45%より多すぎると、粗大な炭化物を形成し靱性を悪化させる。そこで、Cは0.37〜0.45%とする。さらに、焼入れ性が高くかつ靱性を悪化させないために、望ましくはCは0.39〜0.43%とするとよい。
望ましくは、0.4〜1.1%
Siは、脱酸剤であり、基地の硬さを得るための成分であり、また切削時に工具表面に付着して酸化皮膜を形成し、工具の焼付きを抑制する。Siが0.3%より低すぎると、硬さや焼付き抑制といった効果が十分に得られない。もっともSiが1.2%より多すぎると、固溶強化が進み、靭性が悪化する。そこで、Siは0.3〜1.2%とする。さらに、硬さや焼付き抑制といった効果をより得るには、望ましくは、Siは0.4〜1.1%とするとよい。
望ましくは、0.7〜1.4%
Mnは、脱酸剤であり、焼入れ性を得るための成分である。Mnが0.6%より低すぎると、十分な焼入れ性を得ることができない。もっとも、Mnが1.5%より多すぎると、マトリックスを脆化させ、靭性が悪化する。そこで、Mn:0.6〜1.5%とする。さらに、靱性を悪化させることなく、焼入れ性を十分に得るには、望ましくは、Mnは0.7〜1.4%とするとよい。
望ましくは、0.5〜0.9%
Niは焼入れ性、靭性を得るための成分である。Niが0.3%より低すぎると、十分な焼入れ性と靱性が得られなくなる。もっとも、Niが1.0%より多すぎると、焼なましがされにくくなり、焼なまし時にミクロ組織が部分的に(フェライト+球状炭化物)+ベイナイト混晶組織になり、合金元素の分布が不均一となるので、被削性が低下することとなる。そこで、Niは0.3〜1.0%とする。さらに、焼入れ性と靱性を十分に得つつ、被削性を低下させないようにするには、望ましくは、Niは0.5〜0.9%とするとよい。
望ましくは、1.2〜1.8%
Crは、硬質炭化物を形成し、硬さ、耐摩耗性を向上させるとともに焼入れ性を高める成分である。Crが1.0%より低すぎると、その効果を十分に得ることができなくなる。他方、Crが2.0%より高すぎると、粗大な炭化物を形成し靭性や軟化抵抗性が悪化する。そこで、Crは1.0〜2.0%とする。さらに、硬さ、耐磨耗性を向上させ、十分に焼入れ性を高めつつ、靱性や軟化抵抗性を悪化させないためには、望ましくは、1.2〜1.8%とするとよい。
Moは、硬質炭化物を形成し、硬さ、耐摩耗性を向上させるとともに焼入れ性、焼戻し軟化抵抗性を高める成分である。Moが1.1%より低すぎると、その効果を十分に得ることができなくなる。他方、Moが1.4%より高すぎると、粗大な炭化物を形成し、靭性が悪化してしまう。そこで、Moは、1.1〜1.4%とする。
望ましくは、0.1〜0.2%
Vは、硬質炭化物を形成し、硬さ、耐摩耗性を向上させるとともに、焼入れ時の結晶粒の粗大化を抑制する効果があり靭性の向上に寄与する成分である。Vが0.1%より低すぎると、その効果を十分に得ることができない。他方、Vが0.3%より高すぎると、粗大な炭窒化物を形成し靭性、被削性が悪化してしまう。そこで、Vは、0.1〜0.3%とする。さらに、硬さ、耐磨耗性を向上させつつ、靱性を向上させ、被削性を悪化させないためには、望ましくは、0.1〜0.2%とするとよい。
Lの値:54〜65
ただし、上記の式Lでは、その式中の[各元素記号]の文字の部分には、各成分元素の量を%表記で示す際の数値のみを代入して値を求めるものとする。
この式Lの値は、靭性および靱性の等方性を表している。成分元素のSi、Mnが増えすぎると、素地の靭性が低下してくる。そこで、靭性向上に効果のあるNi、Moの成分組成比を上げることで靭性は向上させることができるが、増やしすぎると成分偏析が顕著になりやすいので、L方向/T方向の靭性差が大きくなってしまう。そこで、Lの値を45〜65とすることで、素地の靭性が高く、L方向/T方向の靭性差の小さい鋼種が得られることとなる。
Yの値:0.0以上
ただし、上記の式Yでは、その式中の[各元素記号]の文字の部分には、各成分元素の量を%表記で示す際の数値のみを代入して値を求めるものとする。
この式で求められるYの値は、焼入れ性を表す。0.0以上とすることで、焼入れ性を向上させる各元素量が多くなり、大形の金型でも中心部まで十分焼入れできる焼入れ性を確保することができる。Cは多くなると焼入れ性を向上させる元素の一部と結合して炭化物を形成し、焼入れ性を低下させるので、この式Yの値を0.0以上とすることで、焼入れ性を確保した適切な鋼を得ることができる。
連続冷却したときのベイナイト変態の開始ノーズ時間は、時間が長いほど焼入れ性に優れていることを示している。大形の金型でも中心部まで十分焼きが入る焼入れ性を確保し、中心部の靭性低下が起こらないようにするためには、焼入れ性が高いJIS鋼種のSKD61と同等以上であることが望ましい。SKD61では、1030℃に加熱し、連続冷却したときのベイナイト変態の変態開始ノーズ時間は60分である。そこで、1030℃に加熱し、連続冷却したときのベイナイト変態の開始ノーズ時間を60分以上とした。
その後、500〜600℃に1時間加熱し、次いで空冷する焼戻し処理を2回繰り返すことで、47HRCに調質した。
これらの焼入れ焼戻し処理を行った角材の中心部から、角10mm、長さ55mmのシャルピー衝撃試験片を鍛伸方向(以下、「L方向」という。)およびL方向の直角方向(以下、「T方向」という。)を割出して、2mmUノッチの試験片に加工し、これらの試験片を用いて常温でシャルピー衝撃値を測定した。
そこで、下記の表2において、本願の発明鋼および比較鋼における、L方向およびT方向の衝撃値が共に40J/cm2以上であれば十分な靱性が有るとして靱性値評価の欄に○と表記し、L方向またはT方向の衝撃値のどちらかが40J/cm2より低ければ十分な靱性が得られない低靭性として靱性値の評価の欄に×と表記した。
No.25は、Cの含有量が本願発明の範囲の0.45%よりも高Cのため、粗大な炭窒化物が増えて低靭性でかつ式Yの値が−1.9で0.0未満であり、焼入れ性のベイナイト変態開始ノーズ時間が55分と60分未満であり、焼入れ性の評価が×であって、焼入れ性が悪い。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.37〜0.45%、Si:0.3〜1.2%、Mn:0.6〜1.5%、Ni:0.3〜1.0%、Cr:1.0〜2.0%、Mo:1.1〜1.4%、V:0.1〜0.3%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼であって、
さらに、合金成分の式L=−0.4×Si−9.7×Mn+3.7×Ni+54.4×Moとするとき、式Lの値は54〜65であり、
かつ、合金成分の式Y=−17.1×C+0.1×Si+0.2×Mn+0.2×Ni+0.5×Cr+Mo+5.0とするとき、式Yの値は0.0以上であること
(ただし、上記の式Lおよび式Yでは、その式中の[各元素記号]の文字の部分には、各成分元素の量を%表記で示す際の数値のみを代入して値を求めるものとする。)
を特徴とする、焼入れ性および靱性に優れた熱間工具鋼。 - 1030℃に加熱し、連続冷却したときのベイナイト変態の開始ノーズ時間が60分以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱間工具鋼。
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JP2017138654A JP6903507B2 (ja) | 2017-07-15 | 2017-07-15 | 焼入れ性および靱性に優れた熱間工具鋼 |
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