JP7214313B2 - 高い耐摩耗性を有する高靭性の冷間工具鋼 - Google Patents
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質量%で、C:0.8~0.9%、Si:0.4~0.9%、Mn:0.3~0.5%、Cr:3.0~7.0%、Mo+W/2:2.2~3.2%、V+Nb/2:0.4~0.7%を有し、
式A=5.6C+1.3Si+1.1Crとするとき、式Aの値は8.8~13.7で、
式B=11V-Cr-(Mo+Nb)とするとき、式Bの値は-5.6以上であり、
(ただし式A、Bにおける各化学成分は%における数値を代入した値である。)、
N:299ppm以下であって、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼であって、
この鋼の焼入焼戻し後の炭化物の面積率は10.0~16.0%となり、
焼入焼戻し後の直径10μm以下の炭化物中に占める各炭化物の質量分率が、MC:6%以上、M6C:20%以上、M7C3+M23C6:65%以下であり、M7C3/M23C6の質量分率比:0.12以上となり、
1030℃で焼入れし500~600℃で焼戻した後の最大硬さが63HRC以上となること、を特徴とする高い耐摩耗性を有する高靭性の冷間工具鋼である。
Cは、硬質炭化物を形成し、鋼の硬さ、耐摩耗性を向上させるとともに、焼入性を高める元素である。しかし、Cが0.8%未満であると、これらの効果は得られない。一方、Cが0.9%より多いと、粗大な炭化物を形成して鋼の靭性および加工性を悪化する。そこで、Cは0.8~0.9%とする。
Siは、精錬時の脱酸剤として作用し、かつ基地の硬さを向上させるために必要な元素である。しかし、Siが0.4%未満であると、これらの効果は得られない。一方、Siが0.9%より多いと、得られた鋼の靭性および加工性が悪化する。そこで、Siは0.4~0.9%とする。
Mnは、製錬時の脱酸剤として作用し、かつ鋼の焼入性を増進する元素である。しかし、Mnが0.3%未満であると、これらの効果は得られない。一方、Mnが0.5%より多いと、得られた鋼のマトリックスを脆化させるので、靭性が悪化する。そこで、Mnは0.3~0.5%とする。
Crは、硬質炭化物を形成し、硬さ、耐摩耗性を向上させるとともに、焼入性を高める元素である。しかし、Crが3.0%未満であると、これらの効果は得られない。一方、Crが7.0%より多いと、得られた鋼に粗大な炭化物を形成して、靭性および加工性を悪化する。そこで、Crは3.0~7.0%とし、望ましくは3.5~6.5%とする。
Mo+W/2は、硬質炭化物を形成し、硬さ、耐摩耗性を向上させるとともに、焼入性および焼戻し軟化抵抗性を高める元素である。しかし、Mo+W/2が2.2%未満であると、これらの効果は得られない。一方、Mo+W/2が3.2%より多いと、得られた鋼に粗大な炭化物を形成して、靭性および加工性を悪化する。そこで、Mo+W/2は2.2~3.2%とする。
V+Nb/2は、硬質炭化物を形成し、硬さ、耐摩耗性および焼入性を向上させるとともに、焼入れ時の結晶粒の粗大化を抑制する効果があり、靭性の向上に寄与する元素である。しかし、V+Nb/2が0.4%未満であると、これらの効果は得られない。一方、V+Nb/2が0.7%より多いと、得られた鋼に粗大な炭窒化物を形成して、靭性および加工性を悪化する。そこで、V+Nb/2は0.4~0.7%とする。
Nは、窒化物を形成するために必要な元素であり、形成された窒化物が耐摩耗性を向上させるとともに、結晶粒の粗大化を防止して靭性の低下を抑制する効果を有する。その効果を得るためには、Nが299ppm以下とする必要がある。一方、Nが299ppmより多いとこれらの効果は得られず、粗大な窒化物を形成し靭性および加工性を悪化する。そこで、Nは299ppm以下、望ましくは200ppm以下とする。
5.6C+1.3Si+1.1Crを式Aとする。この式Aは、M23C6の析出しやすさを表しており、この式Aの値が高くなる程、M23C6は析出しやすくなる。M23C6は、耐摩耗性の向上に寄与する。しかし、M23C6が析出することで、他の種類の炭化物を形成するために必要なC量が少なくなる結果、二次硬化に寄与する炭化物が析出しにくくなる。そのために、M23C6の析出を限定する必要がある。そこで、式Aの値を8.8~13.7とする。
11V-Cr-(Mo+Nb)を式Bとする。この式Bは、MCの析出しやすさを表す。ところで、このMCは微細な炭化物を形成しやすく、かつ二次硬化への寄与が特に大きい。これらの効果を得るために必要なMCを十分に形成させるためには、式Bの値を-5.6以上とする必要がある。そこで、式Bの値は-5.6以上とする。
十分な耐摩耗性を得るためには、焼入焼戻し後の炭化物面積率は10.0%以上が必要である。ただし、多すぎると靭性の低下を招くため、上限は16.0%とした。そこで、焼入焼戻し後の炭化物面積率は10.0~16.0%とする。
MCおよびM6Cは、二次硬化を得るために必要な炭化物であり、必要な焼戻し硬さを得るためには、MCは6%以上、M6Cは20%以上の質量分率が必要である。M7C3+M23C6は、耐摩耗性を向上させる炭化物であるが、それらの量が多すぎると粗大化炭化物を形成しやすくなり、靭性や疲労強度の低下を招くだけでなく、他の炭化物を形成するために必要なC量が少なくなる結果、二次硬化に寄与する炭化物を析出しにくくなる。そのために、M23C6+M7C3の質量分率の上限を65%とした。また、M7C3は、二次硬化に寄与するとともに、M23C6が増えることで、粗大化炭化物になりやすいM23C6の析出を抑制するため、M7C3とM23C6の比であるM7C3/M23C6≧0.12とする。
本発明は、高い耐摩耗性を得るために、1030℃で焼入れし、500~600℃で焼戻した後の最大硬さの下限値を63HRCとする。
本願の高い耐摩耗性かつ高靭性を有する冷間工具鋼工程について説明する。
先ず、表1の発明鋼No.1~14と比較鋼No.15~30に示した各化学成分と残部Feおよび不可避不純物とからなるNo.1~30の各材料を、それぞれ100kgを真空誘導溶解炉にて溶製し、各発明鋼No及び比較鋼No.の得られた鋼をそれぞれ角50mmの棒鋼に鍛伸した。次いで、これらの棒鋼を1030℃に加熱し、この温度から空冷して焼入れした後、500~600℃に加熱した後に空冷する焼戻し処理を少なくとも2回行なった。なお、表1には、発明鋼および比較鋼の合金成分である化学成分と、式A=5.6C+1.3Si+1.1Crの値と式B-11V-Cr-Moの値をそれぞれ示している。
63HRC以上の硬さが得られる鋼種であるJIS鋼種のSKH51は、焼戻し硬さが63HRCのとき3000N/mm2の抗折力の靭性を有する。こうしたSKH51鋼を基準に、より抗折力の高い3500N/mm2以上の抗折力が得られていれば靱性に優れているといえるので、表2においては3500N/mm2以上の抗折力が得られていれば○と評して示した。
一方、3500N/mm2未満と抗折力が低ければ悪いものとし、表2においては×として示した。
Claims (1)
- 質量%で、C:0.8~0.9%、Si:0.4~0.9%、Mn:0.3~0.5%、Cr:3.0~7.0%、Mo+W/2:2.2~3.2%、V+Nb/2:0.4~0.7%を有し、
式A=5.6C+1.3Si+1.1Crとするとき、式Aの値は8.8~13.7で、
式B=11V-Cr-(Mo+Nb)とするとき、式Bの値は-5.6以上であり、
(ただし式A、Bにおける各化学成分は%における数値を代入した値である。)、
N:299ppm以下であって、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼がさらに焼入焼戻しされた状態であって、
その炭化物の面積率は10.0~16.0%であり、
その直径10μm以下の炭化物中に占める各炭化物の質量分率が、MC:6%以上、M6C:20%以上、M7C3+M23C6:65%以下であり、M7C3/M23C6の質量分率比:0.12以上であり、
最大硬さが63HRC以上であること、
を特徴とする高い耐摩耗性を有する高靭性の冷間工具鋼。
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