JP2021011618A - 熱伝導率に優れる熱間工具鋼 - Google Patents

熱伝導率に優れる熱間工具鋼 Download PDF

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Abstract

【課題】高熱伝導率、高硬度、高軟化抵抗性、高靭性を兼ね備えた、ダイカストやホットスタンピングなどに適用可能な金型用鋼である熱間工具鋼を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.35超〜0.70%、Si:0.01〜1.20%、Mn:0.01〜1.50%、Cr:0.40〜4.00%、Cu:0.05〜3.50%、MoとWのうちの1種類または2種類であって、Mo:3.00%以下、W:6.00%以下で、かつ、Mo+5/6・W:1.50%以上、Mo+1/2・W:3.00%以下であり、V:0.10超〜0.55%を有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする熱間工具鋼。【選択図】なし

Description

本発明は、熱伝導率に優れる熱間工具鋼に関する。特に熱間工具鋼のうち、ダイカストやホットスタンピングなどの、高温環境下で使用される金型用鋼に関する。
近年、ダイカスト分野において、自動車の軽量化を目的としたアルミ部品の高強度化や生産性向上を目的とした部品成形の加工ピッチの短縮化から、ダイカスト金型への機械的及び熱的負荷が増大している。その結果、金型には、摩耗、大割れ、ヒートチェックといった問題が生じやすくなっている。これらの問題に対応するため、金型材料には、硬度・靭性に優れる材料が求められている。また、ホットスタンピングでは、被加工材である鋼板の表面に発生したスケールによる金型の摩耗が問題となっており、金型材料には、高い硬度及び軟化抵抗性が求められている。
さらに、ダイカストやホットスタンピング用の金型は、内部に冷却回路が作製されており、ここを流れる冷却水による冷却効率が生産サイクルスピードに大きく影響する。冷却効率を高める方法としては、金型の高熱伝導率化がある。そのため、前述した生産性向上を目的とした、生産サイクルスピードの向上に対する要求に応えるためには、材料の特性として、高い熱伝導率が必要である。
特許文献1〜特許文献8には、上記要請の改善を試みる従来技術が提案されている。
まず、特許文献1にはCuを含有しないダイカスト金型用鋼が提案されている。もっとも、言及のないCuは不可避不純物の範囲に留まっているので、不完全焼入れ相であるベイナイトが形成しやすく、靱性が不足する問題がある。
また、焼入れ性確保のためにMnが1.50%より多く含有されている金型用鋼が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、このようにMnが過剰添加されると熱伝導率が低下する問題がある。
また、被削性確保のためにVが0.1%以下で含有されている金型用鋼が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、このようにVが少ないと、焼入焼戻し硬さが不足する問題がある。
また、焼入れ時のγ結晶粒粗大化抑制のため、Vが0.55%より多く含有されている金型用鋼を用いた成形具が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、このようにVが過剰に添加されると、熱伝導率が低下する問題がある。
また、耐食性確保のためにCrが4.00%以上と多く含有されている金型用鋼が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。しかし、Crの過剰添加によって、熱伝導率が低下する問題がある。
溶接割れ抑制のためCが0.35%以下と少なく含有されているダイカスト金型用プリハードン鋼が提案されている(例えば、特許文献6参照。)しかし、このようにC量が少ないと、焼入焼戻し硬さが不足する問題がある。
また、Mo+1/2・Wが3.0%より大きい熱間工具鋼が提案されている(例えば、特許文献7参照。)。しかし、MoまたはWの過剰添加によって、熱伝導率が低下する問題がある。
また、Niが3%以上含有されている熱間工具鋼が提案されている(例えば、特許文献8参照。)。この文献の請求項や実施例に記載の鋼は、Niを3%より多く含有している。しかし、3%以上では、Niの過剰添加によって熱伝導率が低下する問題がある。
特開2012−153919号公報 特開2011−094168号公報 特開2010−013716号公報 特開2017−053023号公報 特開2015−224363号公報 特開2005−307242号公報 特表2014−508218号公報 特開2017−095802号公報
本発明が解決しようとする課題は、高い熱伝導率、高い硬度、優れた軟化抵抗性、高い靭性を兼ね備えた、ダイカストやホットスタンピングなどに適用可能な金型用鋼である熱間工具鋼を提供することである。熱間工具鋼とは、熱間温度域の被加工物を加工する工具として用いられる工具鋼のことである。
発明者は鋭意開発を進めた結果、合金成分を特定の範囲に規定し、さらには鋼の組織、炭化物状態を特定することで、高い熱伝導率、高い硬度、軟化抵抗性に優れ、および高い靭性を兼備した熱間工具鋼が得られることを見出した。
課題を解決するための第1の手段は、質量%で、
C:0.35超〜0.70%、
Si:0.01〜1.20%、
Mn:0.01〜1.50%、
Cr:0.40〜4.00%、
Cu:0.05〜3.50%、
MoとWのうちの1種類または2種類であって、Mo:3.00%以下、W:6.00%以下で、かつ、Mo+5/6・W:1.50%以上、Mo+1/2・W:3.00%以下であり、
V:0.10超〜0.55%、
を有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする熱間工具鋼である。
その第2の手段は、第1の手段の化学成分に加えて、質量%でNi:0.01〜2.99%を有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする熱間工具鋼である。
その第3の手段は、第1の手段もしくは第2の手段のいずれかの化学成分に加えて、質量%でN:0.001〜0.040%を有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする熱間工具鋼である。
その第4の手段は、第1から第3のいずれか1の手段の化学成分に加えて、質量%で、Al:0.001〜0.300%を有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする熱間工具鋼である。
その第5の手段は、第1から第4のいずれか1の手段の化学成分に加えて、残部:Feおよび不可避的不純物からなる、マルテンサイト単相組織であることを特徴とする熱間工具鋼である。
その第6の手段は、第1から第4のいずれか1の手段の化学成分に加えて、残部:Feおよび不可避的不純物からなる熱間工具鋼であって、炭化物の種類がM3C、M73、M2C、MCのいずれか1〜4種からなることを特徴とする熱間工具鋼である。
その第7の手段は、第5の手段に記載の熱間工具鋼であって、さらに炭化物の種類がM3C、M73、M2C、MCのいずれか1〜4種からなることを特徴とする熱間工具鋼である。
さて、上記の本発明の各手段の熱間工具鋼は、これを焼入焼戻しされた状態で、室温での熱伝導率が25.0W/m・K以上の高熱伝導率となり、室温での硬さが48.0HRC以上の高硬度となり、焼入焼戻し後に600℃で100時間保持した後の室温での硬さが32.0HRC以上の高軟化抵抗性を示し、室温でのシャルピー衝撃値が20J/cm2以上の高靭性となる。そこで、本発明の各手段の熱間工具鋼を用いると、金型用鋼として好適な、高熱伝導率、高硬度、高軟化抵抗性、高靱性を兼備するものとできる。
なお、本発明において、
高熱伝導率とは:焼入焼戻し後の室温での熱伝導率が25.0W/m・K以上、
高硬度とは:焼入焼戻し後の室温での硬さが48.0HRC以上、
高靱性とは:焼入焼戻し後の室温でのシャルピー衝撃値が20J/cm2以上、
高軟化抵抗性とは:焼入焼戻し後に600℃で100h保持後の室温での硬さが32.0HRC以上のことをいう。
まず、本発明の課題を解決するための手段の熱間工具鋼における化学成分の規定理由と、この熱間工具鋼の組織および炭化物の種類について規定する理由を以下に説明する。
C:0.35超〜0.70%以下
Cは、固溶することでマトリックスを強化し、また、炭化物を形成すること析出強化を促す元素である。ところで、Cが0.35%以下と少ない場合には、十分な焼入焼戻硬さが得られない。一方、Cが0.70%を超えて過多となると、偏析を助長し、靭性を低下させる。そこでCは0.35%超から0.70%以下とし、望ましくは、Cは0.55%超から0.70%以下とする。
Si:0.01〜1.20%
Siは、製鋼時の脱酸剤として必要な元素である。ところで、Siが0.01%より少ないと、製鋼時に十分に脱酸されない。一方、Siは1.20%より多過ぎると、炭化物を形成することなくマトリックスに固溶して熱伝導率を低下させる。そこで、Siは0.01%以上1.20%以下とする。なお、Siは0.05%以上であるときは、マトリックスに固溶することで硬さを向上させる効果がある。そこで、望ましくは、Siは0.05%以上1.00%以下とする。
Mn:0.01〜1.50%
Mnは、製鋼時の脱酸剤として必要な元素である。ところで、Mnが0.01%より少ないと、十分に脱酸されない。一方、Mnが1.50%より多すぎると、マトリックスに固溶して熱伝導率を低下させる。そこで、Mnは0.01%以上1.50%以下とし、望ましくはMnは0.05%以上0.92%未満とし、より望ましくはMnは0.10%以上0.50%未満とする。
Cr:0.40〜4.00%
Crは、焼入れ性を向上させ、ベイナイト形成による靱性の低下を抑制するのに必要な元素である。ところで、Crが0.40%より少ないと、十分な靭性が得られない。一方、Crが4.00%より過多であると、マトリックスに固溶して熱伝導率を低下させる。また、Crが多すぎると、焼戻し時に高温で粗大化しやすいM6C炭化物やM236炭化物が析出し、軟化抵抗性が低下する。そこで、Crは0.40%以上4.00%以下とし、望ましくは、Crは0.45%以上2.60%未満とし、より望ましくは、Crは0.50%以上2.10%未満とする。
Cu:0.05〜3.50%
Cuは、焼入れ性を向上させ、ベイナイト形成による靱性の低下を抑制するために必要な元素である。ところで、Cuは0.05%より少ないと、十分な靭性が得られない。一方、Cuは3.50%より多過ぎると、マトリックスに固溶して熱伝導率を低下させる。そこで、Cuは0.05%以上3.50%以下とし、望ましくは、Cuは0.10%以上3.00%以下とする。
MoまたはWのいずれか1種または2種を含有し、
Mo:3.00%以下、
W:6.00%以下
Mo+5/6・W:1.50%以上、
Mo+1/2・W:3.00%以下であること

MoとWは、焼戻し時の二次硬化を促進し、焼入焼戻し硬さを高めるために必用な元素である。MoやWは、多すぎると、マトリックスに残存するMoやWが増加し、熱伝導率を低下させる。そこで、Mo+1/2・Wが3.00%以下であって、Mo:3.00%以下、W:6.00%以下とする。
他方、MoやWが少なすぎると、十分な焼入焼戻し硬さがえられない。そこで、Mo、Wは1種又は2種を含有するものとし、Mo+5/6・W:1.50%以上とする。
V:0.10超〜0.55%
Vは、焼戻し時の二次硬化を促進し、焼入焼戻し硬さを高める元素である。ところが、Vが0.10%以下であると、十分な焼入焼戻し硬さが得られない。一方、Vが0.55%より多すぎると、マトリックスに残存するVが増加し、熱伝導率を低下させる。そこで、Vは0.10超から0.55%以下とし、望ましくは、Vは0.25%以上0.45%未満とする。
Ni:0.01〜2.99%
Niは、必ずしも添加する必要はない元素であるが、Crと同様に、焼入れ性を向上させ、ベイナイト形成による靱性の低下を抑制する元素である。ところで、Niは2.99%より多く含有されると、マトリックスに固溶して熱伝導率を低下させる。そこで、Niは2.99%以下とし、望ましくは、Niは0.01%以上2.00%以下とする。
N:0.001〜0.040%
Nは、必ずしも添加する必要はないが、Cと同様に焼入焼戻硬さを大きくするのに有効な元素である。ところで、Nが0.040%より過剰に添加されると、製錬の際に時間を要するので、製錬時のコストの上昇を招く。そこで、Nは0.001%以上0.040%以下とし、望ましくは、Nは0.001%以上0.030%以下とする。
Al:0.001〜0.300%
Alは、必ずしも添加する必要はないが、マトリクスに固溶して硬さを向上する元素である。ところで、Alが0.001%未満であると、マトリックスに固溶して硬さが向上されない。一方、Alが0.300%より多いと、マトリックスに固溶して熱伝導率を低下させる。そこで、Alは0.001以上0.300%以下とし、望ましくは、Alは0.005%以上0.150%以下とする。
次に熱間工具鋼の組織について説明する。
焼入焼戻し状態での組織:マルテンサイト単相
焼入焼戻し後の組織に不完全焼入れ相であるベイナイトが存在すると、靭性が大幅に低下するので、ホットスタンピング・ダイカスト金型として使われた際には、十分な金型寿命が得られなくなる。そこで、本願ではマルテンサイト単相であることが望ましい。
焼入焼戻しされた状態の熱間工具鋼の炭化物の種類:M3C、M73、M2C、MCのいずれか1〜4種からなること
焼入焼戻しされた状態の熱間工具鋼中にM6C炭化物やM236炭化物が存在すると、M6C炭化物やM236炭化物は高温で粗大化しやすい炭化物であることから、鋼材の軟化抵抗性が低下する。
そこで、焼入焼戻しされた状態の熱間工具鋼における炭化物の種類を、M3C炭化物、M73炭化物、M2C炭化物、MC炭化物のいずれか1種類、いずれか2種類、いずれか3種類、あるいは4種類であることが望ましい。
次いで、本発明の実施の形態について、適宜、表を参照しながら順次説明する。
本発明の実施例として、以下の表1および表2に、発明鋼No.1〜No.66の化学成分を示す。また、表3にNo.67〜83の比較鋼の化学成分を示す。なお、残部はFeおよび不可避的不純物である。
これらの化学成分のNo.1〜83の発明鋼ならびに比較鋼は、それぞれ、真空誘導溶解炉にて溶製して、得られた各No.の100kgの鋼塊を、それぞれ幅65mmで高さ30mmのブロックに熱間鍛伸により鍛伸材とした。次いで、これらの各No.の鍛伸材を870℃で焼なましを行った後、それらの表面と中心との中間位置から、直径16mmで長さ160mmの丸棒をそれぞれ採取した。
さらに、これらの各丸棒を1030℃に保持して均熱化した後、空冷によって焼入れを行ない、次いで570〜670℃で2回の焼戻しを行った。その後、焼入焼戻しされた状態の各鋼材の組織、析出炭化物種を観察し、また表4〜表6に示す各種の特性についての調査を実施した。
上記の各種の特性とは、熱伝導率(W/m・K)、焼入焼戻し硬さ(HRC)、靭性を示すシャルピー衝撃値(J/cm2)および高温保持後の硬さ(HRC)すなわち軟化抵抗性である。
Figure 2021011618
Figure 2021011618
Figure 2021011618
1)組織観察は、焼入焼戻しされた状態の各試料について、その鍛伸方向に平行な面を鏡面になるまで研磨した後、ナイタールで腐食処理し、これを走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて行った。
2)焼入焼戻し状態で存在する炭化物の同定は、焼入焼戻し後の試料から析出物を電解抽出し、その後、X線回折することで行った。
3)熱伝導率の測定には、レーザフラッシュ法を用いた。焼入焼戻しされた状態の各試料を直径10mm×1mmの円柱形状に仕上げ加工して、試験に供した。熱伝導率は、室温で測定した。
4)焼入焼戻し硬さは、ロックウェル硬さ試験機により室温で測定した。焼入焼戻しされた状態の各試料について、その鍛伸方向に垂直な面の硬さを測定した。
5)靭性は、室温でのシャルピー衝撃試験により評価を実施した。試験片は、焼入焼戻し後の鋼材の試料から作製した。試験片形状は2mmUノッチシャルピー試験片であり、ノッチ方向は鍛伸方向に対して垂直な方向とした。
6)軟化抵抗性は、焼入焼戻し後の鋼材の試料を600℃で100時間保持して空冷した後、室温での硬さをロックウェル硬さ試験機で測定することで評価した。
上記の1)の組織および2)の炭化物の種類については、表1〜3に示した。表中の組織のMの記号がマルテンサイト単相であることを意味する。M+Bはマルテンサイトとベイナイトの混合組織である。また、炭化物種の○は、同定された炭化物がM3C炭化物、M73炭化物、M2C炭化物、MC炭化物のみであり、他の炭化物種が観察されなかったことを意味する。×は、M3C炭化物、M73炭化物、M2C炭化物、MC炭化物以外に、M6C炭化物、M236炭化物が含まれていたことを意味する。
上記の3)で測定した熱伝導率、4)で測定した焼入焼戻し硬さ、5)で測定したシャルピー衝撃値(靭性)、および6)で測定した高温保持後の硬さ(軟化抵抗性)、について、以下の表4および表5で発明鋼について示し、さらに以下の表6で比較鋼について示した。
Figure 2021011618
Figure 2021011618
Figure 2021011618
本願の発明鋼は、表1および表2の各No.1〜66の化学成分を有し、マルテンサイト単相組織であって、炭化物種がM3C炭化物、M73炭化物、M2C炭化物、MC炭化物のみであった。そしてこれらは、表4および表5の各No.1〜66において示すように、熱伝導率が25.0W/m・K以上、焼入焼戻し硬さが48.0HRC以上、シャルピー衝撃値が20J/cm2以上、高温保持後の硬さが32.0HRC以上であった。このように、本願の熱間工具鋼は、成分組成、組織、炭化物に着目することで、焼入焼戻した状態のときに、高熱伝導率、高硬度、高軟化抵抗性および高靭性を兼備する熱間工具鋼として、金型用鋼等に好適に適用しうるものとなる。
これに対して、比較鋼では、表3の各No.67〜83における化学成分には、本願の規定する成分範囲から一部が外れている。また、組織がマルテンサイト単相ではなく、マルテンサイトとベイナイトの混合組織であるもの、炭化物種に、M3C炭化物、M73炭化物、M2C炭化物、MC炭化物以外を含むものがある。
これら比較鋼の特性については、表6の各No.67〜83に示すとおり、熱伝導率、硬度、軟化抵抗性、靭性のいずれかの特性が本願の熱間工具鋼よりも劣るものとなった。
比較例について、さらに以下に詳述する。
No.67では、表3に示すように、Cが0.32%で規定より少なく、表6に示すように、焼入れ焼戻し硬さが44.3HRCで規定より低い。
No.68では、表3に示すように、Cが0.73%で規定より多く、表6に示すように、シャルピー衝撃値が14.1J/cm2で規定より低い。
No.69では、表3に示すように、Siが1.28%で規定より多く、表6に示すように、熱伝導率が23.6W/m・Kで規定より低い。
No.70では、表3に示すように、Mnが1.57%で規定より多い。表6に示すように、熱伝導率が24.3W/m・Kで規定より低い。
No.71では、表3に示すように、Crが0.31%で規定より少なく、また、組織がマルテンサイトとベイナイトの混合組織であった。表6に示すように、シャルピー衝撃値が14.6J/cm2で規定より低い。
No.72では、表3に示すように、Crが4.28%で規定より多く、表6に示すように、熱伝導率が24.1W/m・Kで規定より低い。
No.73では、表3に示すように、Crが4.85%で規定より多く、また炭化物種にM3C炭化物、M73炭化物、M2C炭化物、MC炭化物以外も含まれていた。表6に示すように、熱伝導率が23.4W/m・Kで規定より低く、また高温保持後の硬さも31.1HRCと低い。
No.74では、表3に示すように、Cuが0.03%で規定より少なく、また、組織がマルテンサイトとベイナイトの混合組織であった。表6に示すように、シャルピー衝撃値が14.0J/cm2で規定より低い。
No.75では、Cuが3.62%で規定よりやや多く、表6に示すように、熱伝導率が23.4W/m・Kで規定より低い。
No.76では、表3に示すように、Moが3.12%で規定より多く、Mo+1/2・Wも3.12%で規定より多く、表6に示すように、熱伝導率が23.1W/m・Kで規定より低い。
No.77では、表3に示すように、Wが6.21%で規定より多く、さらにMo+1/2・Wが3.11%で規定より多く、表6に示すように、熱伝導率が24.9W/m・Kで規定より低い。
No.78では、表3に示すように、Mo+1/2・Wが3.24%で規定より多く、表6に示すように、熱伝導率が23.1W/m・Kで規定より低い。
No.79では、表3に示すように、Mo+5/6・Wが1.45%で規定より少なく、表6に示すように、焼入れ焼戻し硬さが43.4HRCで規定より低い。
No.80では、表3に示すように、Vが0.09%で規定より少なく、表6に示すように、焼入れ焼戻し硬さが46.7HRCで規定より低い。
No.81では、表3に示すように、Vが0.59%で規定より多く、表6に示すように、熱伝導率が24.3W/m・Kで規定より低い。
No.82では、表3に示すように、Niが3.14%で規定より多く、表6に示すように、熱伝導率が23.5W/m・Kで規定より低い。
No.83では、表3に示すように、Alが0.325%で規定より多く、表6に示すように、熱伝導率が23.7W/m・Kで規定より低い。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C:0.35超〜0.70%、
    Si:0.01〜1.20%、
    Mn:0.01〜1.50%、
    Cr:0.40〜4.00%、
    Cu:0.05〜3.50%、
    MoとWのうちの1種類または2種類であって、Mo:3.00%以下、W:6.00%以下で、かつ、Mo+5/6・W:1.50%以上、Mo+1/2・W:3.00%以下であり、
    V:0.10超〜0.55%、
    を有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする熱間工具鋼。
  2. 請求項1に記載の化学成分に加えて、質量%でNi:0.01〜2.99%を有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする熱間工具鋼。
  3. 請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の化学成分に加えて、質量%でN:0.001〜0.040%を有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする熱間工具鋼。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の化学成分に加えて、質量%でAl:0.001〜0.300%を有し、残部:Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする熱間工具鋼。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化学成分に加えて、残部:Feおよび不可避的不純物からなる、マルテンサイト単相組織であることを特徴とする熱間工具鋼。
  6. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化学成分に加えて、残部:Feおよび不可避的不純物からなる熱間工具鋼であって、炭化物の種類がM3C、M73、M2C、MCのいずれか1〜4種からなることを特徴とする熱間工具鋼。
  7. 請求項5に記載の熱間工具鋼であって、さらに炭化物の種類がM3C、M73、M2C、MCのいずれか1〜4種からなることを特徴とする熱間工具鋼。
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