JPH11269603A - 被削性および工具寿命に優れた熱間工具鋼 - Google Patents

被削性および工具寿命に優れた熱間工具鋼

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JPH11269603A
JPH11269603A JP7434698A JP7434698A JPH11269603A JP H11269603 A JPH11269603 A JP H11269603A JP 7434698 A JP7434698 A JP 7434698A JP 7434698 A JP7434698 A JP 7434698A JP H11269603 A JPH11269603 A JP H11269603A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】被削性を具備し、工具寿命を改善するに充分な
高温強度と靭性を有する熱間工具鋼を提供する。 【解決手段】C:0.25〜0.40%、Si:0.50%を超え1.00
%未満、Mn:0.30〜1.50%、Ni:0.50〜2.00%、Cr:2.
70〜5.50%、Mo:1.00〜2.00%、V:0.50%を超え0.80
%未満、Al:0.005〜0.10%未満を含有し、残部はFe
および不可避不純物からなり、不純物中のPは0.015%
以下、Sは0.005%以下、Nは0.015%以下であり、さら
に焼入時の組織がマルテンサイトおよびベイナイトの混
合組織である熱間工具鋼。上記熱間工具鋼では、ASTM
E399に準じた破壊靱性試験で破壊靱性値が250kgf/mm3/2
以上であり、かつ JIS G O567に準拠した高温強度試験
で試験温度700℃におけるの0.2%耐力が20kgf/mm2以上
であるのが望ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は熱間工具鋼に関し、
さらに詳しくは熱間鍛造用金型、押し出し型やダイカス
ト金型などに使用される被削性および工具寿命に優れた
熱間工具鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】熱間鍛造、熱間押出しやダイカストなど
に用いられる金型に使用される工具鋼には、金型作製に
おける加工時間の短縮、切削工具の長寿命化等の被削性
が要求される。
【0003】合金工具鋼鋼材で JIS G 4404に規格化さ
れている鋼のうち熱間工具用としては、5Cr−Mo−V系
のSKD61やSKD62など、3Cr−3Mo−V系のS
KD7およびNi−Cr−Mo−V系の低合金鋼であるSKT
3やSKT4などが多用されている。しかし、このよう
にJISに規定されている合金工具鋼鋼材では、前記した
熱間工具に要求される被削特性を満足することは困難で
ある。
【0004】上記の状況に対応して、快削元素を添加し
熱間工具の快削性を高めようとする技術がいくつか提案
されている。例えば、特開平9−217147号公報には、鋼
の靱性、耐ヒートチェック性を高めた低Si含有鋼にS、
Teを添加させ、これらを鋼中に非金属介在物として介在
せしめ、切削加工時に応力集中源として作用させ、切削
抵抗の低下とともに切削屑の破砕性を高めることによっ
て、鋼の被削性を向上させる技術が提案されている。し
かし、提案の工具鋼では、ある程度の被削性の向上が望
まれるが、鋼中に介在する非金属介在物によって、靱性
の低下および高温強度の低下が避け難く、工具寿命が十
分でないという問題がある。
【0005】また、特開平4−358040号公報では、ST
K系の工具鋼にCを低めに、かつNiを1.3%未満に設定
することを基本として、さらにWおよびMoを適正量に規
制した上でCrを増量することによって耐割れ感受性の低
減と安定性を向上させる技術が開示されている。しか
し、開示された工具鋼の耐割れ感受性の安定化は、鋼の
被削性の低下の原因となる炭化物量の低減によるもので
あるから、熱間工具鋼としての使用にともない、高温強
度の低下要因となって工具寿命を低下させるという問題
がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述の通り、従来技術
においては、熱間工具に対し金型製作の際の被削性と同
時に、勒性および高温強度の特性で示される工具寿命を
要求することが困難な状況にある。加えて近年、熱間加
工に対する要求がますます厳しくなっており、熱間鍛造
サイクルの高速化や複雑な製品形状が一層要求されるよ
うになっている。そのため、熱間工具の使用条件も一層
過酷なものとなって、被削性のみならず、充分な工具寿
命を実現し得る熱間工具鋼の開発要請が強くなってい
る。
【0007】本発明は、このような従来技術の問題点お
よび近年の開発要請に鑑みてなされたものであり、金型
製作に際し、被削性のみならず、熱間工具の寿命を改善
するのに充分な靱性と高温強度とを有する熱間工具鋼を
提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するため、JIS G 4404に規定する5Cr−Mo−V
系のSKD61を基本組成とする熱間工具鋼の特性に及
ぼす各種元素の影響について検討を重ねた結果、まず、
上記成分系の熱間工具鋼の靭性改善にはMnおよびNiの含
有量を増やすことが非常に効果的であるが、これらの元
素の増量は高温強度の低下を招くことが明らかになっ
た。そのため、MnとNiの増量がもたらす靭性改善の効果
を維持しつつ高温強度を向上させるためには、Nが大き
く影響していることを見出して、N含有量を著しく低減
させることとした。
【0009】さらに、本発明者らは、上記の改善にかか
る熱間工具鋼の特性に及ぼすSiの影響に着目して、さら
なる検討を加えた結果、Si含有量と被削性、靱性および
高温強度に関し、次の(1)〜(4)の知見を得ることができ
た。
【0010】(1)Si含有量と鋼の被削性について 図1は、4Cr−Mo−V系の熱間工具鋼の被削性に及ぼすS
i含有量の影響を、焼入時の組織との関係で示したもの
である。同図では、被削性として、後述する実施例で示
すように、PVDコーテッド超硬工具(K20)を用いて、所
定の切削条件でフライス加工を行った際の切削工具寿命
までの切削長さ(m)で示している。
【0011】図1から明らかなように、鋼の被削性向上
にはSi含有量が0.5%を超えることが必須であり、それ
以上にSi含有量を増加させることによって、被削性が逐
次向上している。このとき、焼入時の組織をマルテンサ
イト、マルテンサイトおよびベイナイト混合(単に「マ
ルテンサイト+ベイナイト」と表示する場合もある。)
およびベイナイトと変化させたが、鋼の被削性には焼入
時の組織は影響を及ぼさないことが分かる。また、同様
の調査によって、鋼の硬さも被削性には影響を及ぼさな
いことを確認している。
【0012】(2)Si含有量と鋼の靱性について 図2は、4Cr−Mo−V系の熱間工具鋼の靱性に及ぼすSi
含有量の影響を、焼入時の組織との関係で示したもので
ある。同図では、鋼の靱性として、後述する実施例で示
すように、ASTM E399に準じた破壊靱性試験によって測
定される破壊靱性値を用いている。通常、鋼の靱性はSi
含有量の低減によって改善されることが知られている
が、このとき焼入組織の影響を大きく受けることにな
る。
【0013】焼入時の組織がマルテンサイトである場合
には、鋼の靭性はSi含有量の増加にともなって低下する
が、Si含有量が1.5%であっても破壊靱性値は250kgf/mm
3/2以上を確保することができる。焼入時の組織がマル
テンサイト+40〜60%ベイナイトである場合には、マル
テンサイト組織の場合に比べて、鋼の靱性は劣化傾向を
示す。すなわち、鋼の靭性はSi含有量の増加にともなっ
て低下し、Si含有量が1.0%において破壊靱性値は250kg
f/mm3/2以上程度となる。
【0014】一方、焼入時の組織が全てベイナイトであ
る場合には、Si含有量に拘わらず、破壊靱性値は250kgf
/mm3/2以上を確保することができず、鋼の靱性にはSi含
有量が全く影響を及ぼさないことが明らかになった。
【0015】(3)Si含有量と鋼の高温強度について 図3は、4Cr−Mo−V系の熱間工具鋼の高温強度に及ぼ
すSi含有量の影響を、焼入時の組織との関係で示したも
のである。同図では、鋼の高温強度として、後述する実
施例で示すように、JIS G O567に準拠した高温強度試験
の試験温度700℃で測定される0.2%耐力を用いている。
通常、鋼の高温強度も靱性の挙動と同様に、Si含有量の
低減によって改善されるとともに、焼入組織の影響を大
きく受けることになる。しかし、焼入組織の影響は、鋼
の靱性に及ぼすものと大きく異なるものである。
【0016】図3から明らかなように、焼入時の組織が
マルテンサイト、マルテンサイト+40〜60%ベイナイ
ト、またはベイナイトのいずれの場合でも、鋼の高温強
度はSi含有量の増加にともなって低下する。この傾向は
焼入時の組織の影響を強く受け、マルテンサイト組織に
比較してマルテンサイト+40〜60%ベイナイト組織が高
温強度に優れ、さらにマルテンサイト+40〜60%ベイナ
イト組織よりもベイナイト組織が高温強度に優れる。こ
のため、焼入時の組織がマルテンサイト+40〜60%ベイ
ナイトまたはベイナイトである場合には、Si含有量を1.
00%未満にすることによって、0.2%耐力を20kgf/mm2
上で確保できる。
【0017】(4)Si含有量、焼入時の組織および鋼の各
特性について 上述の通り、熱間工具鋼の被削性の向上には、Si含有量
の増加が有効な手段であるが、同時に鋼の靱性を低下を
招くだけでなく、高温強度も低下させることになる。し
かし、Si含有量を増加させた場合であっても、焼入時の
マルテンサイト組織にベイナイト組織を混合させること
によって、靱性の低下が現れるが、高温強度の大幅な低
下を抑えることができる。このように焼入組織へのベイ
ナイトの混合比率を増加させることによって、マルテン
サイト組織に比べ靱性が低下するものの高温強度を上昇
させることができるのは、ベイナイトとマルテンサイト
から析出する炭化物の形態に起因している。具体的に
は、焼き戻し後のベイナイトは、マルテンサイトと比較
すると、粗大な炭化物が析出するので靱性が低下するこ
とになるが、Mo2Cが微細析出するので高温強度が上昇す
ることになるからである。
【0018】本発明は、上述の熱間工具鋼の靭性改善に
関するMn、NiおよびNに関する知見、さらに上記(1)〜
(4)のSiに関する知見に基づいて完成されたものであ
り、下記の熱間工具鋼を要旨としている。
【0019】すなわち、重量%で、C:0.25〜0.40%、
Si:0.50%を超え1.00%未満、Mn:0.30〜1.50%、Ni:
0.50〜2.00%、Cr:2.70〜5.50%、Mo:1.00〜2.00%、
V:0.50%を超え0.80%未満、Al:0.005〜0.10%未満
を含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなり、不
純物中のPは0.015%以下、Sは0.005%以下、Nは0.01
5%以下であり、さらに焼入時の組織がマルテンサイト
およびベイナイトの混合組織であることを特徴とする被
削性および工具寿命に優れた熱間工具鋼である。
【0020】上記熱間工具鋼では、ASTM E399に準じた
破壊靱性試験で破壊靱性値が250kgf/mm3/2以上であり、
かつ JIS G O567に準拠した高温強度試験で試験温度700
℃におけるの0.2%耐力が20kgf/mm2以上であるのが望ま
しい。
【0021】
【発明の実施の形態】以下に、本発明における鋼の化学
組成を上記のように限定する理由について説明する。な
お、「%」は「重量%」を意味する。
【0022】C:Cは鋼の焼入性を高めるとともに、靱
性を向上させる。さらに焼き戻し時に炭窒化物(なかで
もV炭窒化物)として2次析出して、高温強度を向上さ
せる作用を有する。しかし、その含有量が0.25%未満で
は添加効果が乏しく、0.40%を超えて含有させると、被
削性の低下を引き起こすことになる。そのため、Cの含
有量は0.25〜0.40%とした。
【0023】Si:Siは、前記図1に示すように、鋼の被
削性を向上させる作用を有する。しかし、その含有量が
0.50%以下では添加効果に乏しく、一方、図2、図3に
示すように、1.00%以上であると鋼の靱性および高温強
度を低下させ、熱間工具の寿命低下の要因となる。そこ
で、Siの含有量を0.50%を超え、1.00%未満とした。特
に望ましい含有量は、0.50%を超え、0.80%未満であ
る。
【0024】Mn:Mnは鋼の焼入性を向上させて靭性を高
めるのに有効な元素である。しかし、その含有量が0.30
%未満では所望の効果が得られず、1.50%を超えると偏
析が生じて靭性と強度の低下を招くようになるので、Mn
の含有量を0.30〜1.50%とした。
【0025】Ni:NiもMnと同様に鋼の焼入性を向上させ
て靭性を改善するのに有効な元素である。しかし、その
含有量が0.50%未満では添加効果に乏しく、一方、2.00
%を超えると変態点を下げて高温強度の低下を招く。し
たがって、Niの含有量を0.50〜2.00%とした。
【0026】Cr:Crは靭性および耐摩耗性の向上に有効
な元素である。しかし、その含有量が2.70%未満では充
分な効果が得られず、5.50%を超えると高温強度の低下
を招くようになるので、Crの含有量を2.70〜5.50%と
した。特に望ましい含有量は、3.50〜4.50%である。
【0027】Mo:Moは鋼の焼入性と焼戻し軟化抵抗を向
上させて、靭性と高温強度を高める作用を有する。しか
し、その含有量が1.00%未満では所望の添加効果が得ら
れず、一方、2.00%を超えると被削性および靭性の低下
をきたす。したがって、Moの含有量を1.00〜2.00%とし
た。
【0028】V:Vは焼戻し時に炭窒化物を形成して、
熱間工具の高温強度を高めるのに最も寄与する元素であ
る。しかし、Vの含有量が0.50%以下であるとその効果
が得難く、0.8%を超えて含有させると、鋼の被削性と
靭性を悪化させる。したがって、Vの含有量を0.50%を
超え、0.80%未満とした。
【0029】Al:Alは鋼の脱酸の安定化およぴ均質化を
図るのに有効な元素であるが、その含有量が0.005%未
満では所望の効果を得ることができない。一方、含有量
が0.10%以上では被削性の低下や鋼中の地きずの原因と
なる。そのためAl含有量を0.005%〜0.10%未満とし
た。
【0030】本発明においては、不純物元素としての
P、SおよびNの含有量をそれぞれ下記の通りに規制す
る。
【0031】P:Pは含有量が多いと偏析が大きくなり
靱性の劣化をきたす。さらに、熱亀裂の発生を助長する
ので、その含有量は可能な限り低いことが望ましい。そ
こで、不純物としてのPの含有量を0.015%以下に限定
した。
【0032】S:Sは硫化物を形成し、被削性を向上さ
せるが、靱性を低下させるので、含有量は可能な限り低
いことが望ましい。そこで、不純物としてのSの許容上
限を0.005%に限定した. N:NはVと窒化物を形成して焼入れ加熱時の固溶V量
を減少させる。固溶V量が少ないと焼戻し時に2次析出
するV炭窒化物の量も必然的に減少し、高温強度が低下
する。そこで、不純物としてのNの含有量を0.015%以
下に限定した。
【0033】焼入組織:本発明が対象とする焼入時の組
織は、図2、図3に示すように、マルテンサイトおよび
ベイナイトの混合組織に限定される。このときの混合組
織のベイナイトの混合比率を示すベイナイト率は、簡易
に求めることができる。すなわち、厚さ10mmの試材を焼
入する際に、水冷した試料の硬さをH1とし、室温まで2
0時間かけて冷却した試料の硬さをH2とした場合に、実
際に焼入を実施して測定対象となる試料の硬さをHとし
すると、下記の式から算出される。ただし、硬さはビ
ッカース硬さ(HV)で表示する。
【0034】 ベイナイト率(%)=100−(H−H2)/(Hl−H2)×100 ・・・ 本発明において、式で算出されるベイナイト率が0%
(すなわち、100%マルテンサイト)〜4%の場合に
は、鋼の高温強度を向上させるには不十分であり、ベイ
ナイト率が80%を超え、100%の場合には鋼の靭性が低
下する。このため、焼入時のマルテンサイトおよびベイ
ナイトの混合組織は、ベイナイト率を5〜80%にするの
が望ましい。
【0035】
【実施例】本発明の熱間工具鋼の効果を、実施例に基づ
いて具体的に説明する。
【0036】表1および表2に示す化学組成を有する発
明鋼および比較鋼の38種の鋼種を電気炉で溶製して、得
られた鋼塊を分塊し、さらに鍛錬比5以上で鍛造をし
た。比較鋼のうち鋼種No37はJIS SKT4、鋼種No38はJIS
SKD61をベースにする従来鋼である。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】これらの発明鋼および比較鋼は、厚さ10〜
800mm×幅20〜1500mmの角材に熱間鍛造の後、800〜850
℃で焼鈍した。次いで鍛造された鋼種の焼入組織を変化
させるために、900〜1050℃に加熱してから水冷、油冷
および炉冷によって焼入を実施し、引き続き焼戻を550
〜640℃で行い、各鋼種とも硬さHS55〜60になるように
調整した。
【0040】被削性試験は、PVDコーテッド超硬工具(K
20)を用いて、所定の切削条件でフライス加工(V=50m
/min、f=0.18mm/刃、d=3.Omm)を行った際の切削工具
寿命までの切削長さを測定した。ただし、工具寿命の判
断は、最大工具摩耗量が0.25mmを超えたときとした。こ
れらの結果を表3に示す。
【0041】高温強度試験は、上記焼戻を実施した角材
から JIS 14A 号試験片(直径D=6mm)を切り出して、J
IS G O567に準拠し、試験温度を700℃として0.2%耐力
を測定した。また、破壊靱性試験は、ASTM E399に準じ
て長さ方向から試験片を採取して行った。これらの試験
結果も表3に併せて示す。
【0042】
【表3】
【0043】通常、工具鋼の被削性に関し、切削長さ2
mが目安とされ、これを超える切削長さの場合に被削性
に優れると評価される。また、工具寿命に関しては、破
壊靱性値が250kgf/mm2以上で、かつ700℃の0.2%耐力が
20kgf/mm2以上のときに工具寿命が優れると評価され
る。表3から明らかなように、発明鋼No6〜8は、焼入
時の組織がマルテンサイト+40〜60%ベイナイトである
場合には、切削長さ、破壊靱性値および0.2%耐力のい
ずれもが目安値を満足して、切削性とともに工具寿命に
も優れることが分かる。すなわち、発明鋼においては、
被削性向上にSi含有量の増加が有効であり、しかもSi含
有量の増加による高温強度が低下を、焼入組織をマルテ
ンサイトおよびベイナイトの混合組織にすることによっ
て、抑制している。
【0044】表4は、鋼種No11〜No38について、焼入時
の組織をマルテンサイト+5〜80%ベイナイトとして、
切削長さ、破壊靭性値および700℃での0.2%耐力を測定
した結果を示している。同表から、比較鋼では切削長
さ、破壊靭性値および0.2%耐力のうちいずれかが、上
記の目安値を達成していないのに対し、発明鋼ではいず
れもが目安値を満足して、切削性および工具寿命に優れ
れることが分かる。
【0045】各鋼種から金型を製造し、これらを用いて
工具寿命の比較試験を実施した。得られた金型を、6,50
0t熱間プレスにて実際の型鍛造に供し、寿命を測定し
た。なお熱間鍛造金型の寿命は、型彫り面の欠損やへた
り摩耗により金型が著しく損傷して型鍛造の継続が不能
になるまでの型打ち数で評価した。この結果を表5に示
す。
【0046】金型寿命に関しては、鋼種No7、13、26の
発明鋼を用いて作製した熱間鍛造金型では、いずれも使
用回数が大幅に増加しており、比較鋼を用いて作製した
金型の寿命が5,200〜7,000回に留まるのに対し、12,300
回以上と長寿命化が図れる。
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】
【発明の効果】本発明の熱間工具鋼によれば、Mn、Niお
よびNによる靭性改善が図れるとともに、Siの増量が切
削性に有効であり、しかもSiの増量による高温強度が低
下を、焼入組織をマルテンサイトおよびベイナイトの混
合組織にすることによって抑制できる。したがって、本
発明の熱間工具鋼を用いれば、熱間鍛造、熱間押出しや
ダイカストなどに用いられる金型の製作に際し、加工時
間の短縮や工具寿命の延長を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】4Cr−Mo−V系の熱間工具鋼の被削性に及ぼすS
i含有量の影響を、焼入時の組織との関係で示したもの
である。
【図2】4Cr−Mo−V系の熱間工具鋼の靱性に及ぼすSi
含有量の影響を、焼入時の組織との関係で示したもので
ある。
【図3】4Cr−Mo−V系の熱間工具鋼の高温強度に及ぼ
すSi含有量の影響を、焼入時の組織との関係で示したも
のである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山口 働 大阪府大阪市此花区島屋5丁目1番109号 住友金属工業株式会社関西製造所製鋼品事 業所内 (72)発明者 岡田 康孝 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号住 友金属工業株式会社内 (72)発明者 近藤 邦夫 大阪府大阪市中央区北浜4丁目5番33号住 友金属工業株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.25〜0.40%、Si:0.50%
    を超え1.00%未満、Mn:0.30〜1.50%、Ni:0.50〜2.00
    %、Cr:2.70〜5.50%、Mo:1.00〜2.00%、V:0.50%
    を超え0.80%未満、Al:0.005〜0.10%未満を含有し、
    残部はFe及び不可避不純物からなり、不純物中のPは
    0.015%以下、Sは0.005%以下、Nは0.015%以下であ
    り、さらに焼入時の組織がマルテンサイトおよびベイナ
    イトの混合組織であることを特徴とする被削性および工
    具寿命に優れた熱間工具鋼。
  2. 【請求項2】ASTM E399に準じた破壊靱性試験で破壊靱
    性値が250kgf/mm3/2以上であり、かつ JIS G O567に準
    拠した高温強度試験で試験温度700℃におけるの0.2%耐
    力が20kgf/mm2以上であることを特徴とする請求項1記
    載の被削性および工具寿命に優れた熱間工具鋼。
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