JP2014025103A - 熱間工具鋼 - Google Patents

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直樹 横井
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Abstract

【課題】焼入れ性、球状化焼鈍性、被削性、熱伝導率、耐食性、軟化抵抗の各特性のバランスが取れた熱間工具鋼を提供する。
【解決手段】質量%で、0.25<C<0.45、0.29<Si<0.40、0.52<Mn<0.9、5.95<Cr<6.79、1.23<Mo<1.51、0.40<V<0.60、残部Fe及び不可避的不純物の組成を有する熱間工具鋼とした。本熱間工具鋼の用途としては、例えば、ダイカスト金型、ダイクエンチ金型、熱間鍛造用金型、温熱間鍛造用金型等が挙げられる。
【選択図】図1

Description

本発明は、焼入れ性、球状化焼鈍(SA)性、被削性、熱伝導性、耐食性、軟化抵抗の各特性のバランスの取れた熱間工具鋼に関するものである。
従来より、温熱間鍛造、ダイカスト、金型内にて焼入れを行うダイクエンチの金型材料として、JIS SKD61をはじめとする各種の熱間工具鋼が使用されている。ダイクエンチは、ホットスタンプ、ホットプレス、ホットフォームとも言われ、高強度のプレス加工部品等の自動車用部品の製造に利用されている。
近年、自動車部品の大型化等のニーズが高まり、金型の大型化が進んでいる。金型が大型化した場合でも、金型寿命向上の観点から、焼入れ性が良くいわゆる大割れしにくいと同時に、使用中の軟化による摩耗を起こしにくい金型材料が求められている。一方、金型を低廉化する上で被削性を確保することも重要である。通常、切削加工に先立って球状化焼鈍処理を行い、金型材料を軟化させた状態とした上で、切削加工業者が所要の切削加工を行う。その場合、球状化焼鈍性の悪い金型材料は、軟化処理後も硬いため被削性が非常に悪く、切削加工のための所要時間が長くなる。特に、ダイカスト用の金型は、構造が複雑であり、削り難ければ金型製造に手間と時間がかかり、金型製作ためのコストが高くなってしまう。
ダイカストやダイクエンチには、ハイサイクル化(1サイクルの製品成形に要する時間が短く、単位時間あたりの製造個数が多いこと)が求められている。ハイサイクル化を実現するためには、金型材料の熱伝導率を高くする、金型を冷却するための水冷孔を増やす、といった手段が考えられる。水冷孔を増やした場合、錆を生じる可能性も増え、錆を起点とした水冷孔割れによる意匠面への水漏れが問題となる。ここで、水冷孔割れを抑制する手段として耐食性を高めることが考えられる。また、ダイカスト、ダイクエンチ、温熱間鍛造金型には軟化抵抗の高さが求められる。軟化抵抗が低ければ常温での硬さは高くても使用中に軟化して、摩耗やヒートチェックなどの損傷を発生しやすくなるからである。このため、金型の軟化抵抗を高めておくことは金型の長寿命化に有効である。
しかし、焼入れ性と球状化焼鈍(SA)性、被削性と熱伝導性、耐食性と軟化抵抗の各特性は、片方の特性を重視すれば、その
分だけもう片方の特性が疎かにならざるを得ないトレードオフの関係にあった。そのため、全ての特性をバランス良く兼ね備えた金型用鋼が望まれていた。現状、JISに規定されている3Cr系(SKD7など)、5Cr系(SKD61など)、12Cr系(SKD11など)では上記特性のバランスが良いとは言えない。
本発明に対する先行技術として、下記特許文献1には、靭性等の基本特性を確保しつつ、耐摩耗性に優れた熱間鍛造金型を得ること提供することを目的として、
「質量%で、C:0.32〜0.42%、Si:0.3%以下、Mn:0.3〜1.5%、Ni:0.5%以下、Cr:4.0〜6.0%、V:0.2〜1.0%、Mo+1/2W:0.8〜2.0%、及び、N:0.005〜0.04%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物」の組成を有する点が開示されている。特許文献1に記載された発明は、Si、Crの添加量が本発明の添加量とは実質的に異なるものである。
また、特許文献2には、汎用金型鋼より熱伝導率に優れ、かつ汎用金型鋼よりも衝撃値が高い熱間工具鋼を提供することを目的として、「0.20≦C≦0.50質量%、0.40<Si<0.75質量%、0.50<Mn≦1.50質量%、5.24≦Cr≦9.00質量%、1.08<Mo<2.99質量%、及び、0.30<V<0.70質量%を含み、残部がFe及び不可避的不純物」の組成を有する点が開示されている。特許文献2に記載された発明は、Siの添加量が本発明の添加量と重複せず、Crの添加量が本発明の添加量とは実質的に異なるものである。
更に、特許文献3には、金型形状への加工が工業的に可能な被削性を備えるとともに、汎用金型鋼(例えば、JIS SKD61)に比べて熱伝導率及び衝撃値が高い熱間工具鋼を提供することを目的として、「0.20≦C≦0.50質量%、 0.01≦Si<0.25質量%、0.50<Mn≦1.50質量%、5.24<Cr≦9.00質量%、1.24<Mo<2.95質量%、及び、0.30<V<0.70質量%を含み、残部がFe及び不可避的不純物」の組成を有する点が開示されている。特許文献3に記載された発明は、Siの添加量が本発明の添加量と重複せず、Crの添加量が本発明の添加量とは実質的に異なるものである。
特開2008−308745号公報 特開2011−1573号公報 特開2011−1572号公報
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、焼入れ性、球状化焼鈍性、被削性、熱伝導率、耐食性、軟化抵抗の各特性のバランスが取れた熱間工具鋼を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、この課題を解決できることを見い出した。その具体的手段は以下の通りである。まず、第1の発明は、質量%で(以下、同じ)、0.25<C<0.45、0.29<Si<0.40、0.52<Mn<0.9、5.95<Cr<6.79、1.23<Mo<1.51、0.40<V<0.60、残部Fe及び不可避的不純物の組成を有する熱間工具鋼である。
次に、第2の発明は、上記した第1の発明に係る熱間工具鋼であって、0.30≦W≦4.00を更に含有することを特徴とする。
次に、第3の発明は、第1又は第2のいずれかの発明に係る熱間工具鋼であって、
0.30≦Co≦3.00を更に含有することを特徴とする。
次に、第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明に係る熱間工具鋼であって、
0.004≦Nb≦0.100、0.004≦Ta≦0.100、0.004≦Ti≦0.100、0.004≦Zr≦0.100、0.030≦Al≦0.100のうち少なくとも1種以上を更に含有することを特徴とする。
次に、第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明に係る熱間工具鋼であって、
0.15≦Cu≦1.50、0.15≦Ni≦1.50、0.0001≦B≦0.0100のうち少なくとも1種以上を更に含有することを特徴とする。
次に、第6の発明は、第1から第5のいずれかの発明に係る熱間工具鋼であって、
0.010≦S≦0.50、0.0005≦Ca≦0.2000、0.03≦Se≦0.50、0.005≦Te≦0.100、0.01≦Bi≦0.30、0.03≦Pb≦0.50のうち少なくとも1種以上を更に含有することを特徴とする。
次に、第7の発明は、第1から第6のいずれかの発明に係る熱間工具鋼であって、
0.030≦N≦0.300を更に含有することを特徴とする。
本発明者らは、熱間工具鋼の各種の添加成分の焼入れ性、球状化焼鈍性、被削性、熱伝導率、耐食性の各特性に及ぼす影響を調べたところ、Si、Mn、Crの添加量を最適化すると、上記各特性のバランスが取り得ることを見出した。
すなわち、本発明に係る熱間工具鋼は、Si添加量が最適化されているため、金型の被削性を十分確保しつつ所望の値以上の熱伝導率が得られる。
また、本発明に係る熱間工具鋼は、Mn添加量が最適化されているため、十分な焼入れ性を確保しつつ十分に軟化させることのできる球状化焼鈍性を付与することができる。通常、焼入れ性を良くしすぎると、球状化焼鈍しにくくなり焼鈍時間が長くなってしまう。このような場合には、製造コストが高くなる。つまり、本発明ではMn添加量が最適化することで、良好な焼入れ性と球状化焼鈍性を確保している点に特徴がある。
さらに、本発明に係る熱間工具鋼は、Cr添加量が最適化されているため、所望の耐食性を確保しつつ軟化抵抗性に優れる。特に、水冷孔が多く設けられるダイカスト、ダイクエンチ金型に用いられる場合に高耐食性の効果がある。また、温熱間鍛造金型に用いられる場合、特に高軟化抵抗の効果が発揮される。
以上より、焼入れ性、球状化焼鈍性、被削性、熱伝導率、耐食性、軟化抵抗の各特性のバランスが取れた本発明に係る熱間工具鋼は、焼入れ性と耐食性を確保し大割れを防止すると同時に軟化抵抗を高めることで長い金型寿命が得られ、良好な球状化焼鈍性を付与し短時間の焼鈍で被削性を確保することにより製造コストの低減、金型製作時間の短縮が実現でき、熱伝導率を確保しハイサイクル化に寄与することにより生産性向上が達成され得る。
Si含有量と被削性(工具摩耗量)との関係を示した図である。 Si含有量と熱伝導率との関係を示した図である。。 Mn含有量と衝撃値との関係を示した図である。 本発明に係る熱間工具鋼のCCT曲線の概念を示す概念図である。 Mn含有量とSA硬さとの関係を示した図である。 Cr含有量と耐食性との関係を示した図である。 Cr含有量と軟化抵抗との関係を示した図である。
本発明の一実施形態に係る熱間工具鋼(以下、「本熱間工具鋼」ということがある。)について詳細に説明する。本熱間工具鋼の用途としては、例えば、ダイカスト金型、ダイクエンチ金型、熱間鍛造用金型、温熱間鍛造用金型等が挙げられる。
本熱間工具鋼は、以下のような元素を含有する。添加元素の種類、その成分範囲及びその限定理由は、以下の通りである。
0.25<C<0.45
0.25%以下では、所望の硬さ43HRC以上を焼入れ速度が低下した場合に得にくい。0.45%を越えると、炭窒化物の量が過度となり、衝撃値を劣化させる。好適な範囲は、硬さと衝撃値のバランスに優れた0.30≦C≦0.40である。
0.29<Si<0.40
0.29%以下では被削性の劣化が著しく、金型形状への加工が非常に難しくなる。0.40%以上になると、熱伝導率の低下が大きい。好適な範囲は、高い熱伝導率が得られ、かつ工業的な被削性が確保できる0.35≦Si<0.40である。
図1は、0.35C−0.75Mn−6.45Cr−1.40Mo−0.55V鋼を切削距離に対する工具摩耗量により評価した結果である。詳細には、55mm×55mm×200mmの試験片(硬度45HRC)を切削距離30m、切込深さ2mm、径方向切込1.6mm、送り速度200m/minの条件におけるインサートの横逃げ面最大摩耗量により評価した。切削工具の横逃げ面最大摩耗量が小さいほど、良く削れて好ましい。図1に示すように、0.29%以下では被削性が十分ではない(摩耗量が大きい)ことがわかる。
なお、被削性評価用の素材は以下の手順で作成した。まず、真空中で溶解・精錬した溶鋼を2tonのインゴットに鋳込んだ。このインゴットに、1250℃で18Hr加熱する均質化熱処理を施した。その後、横断面が250mm×250mmのブロックを、このインゴットの熱間鍛造によって製造した。鍛造後の高温状態にあるブロックは室温まで放冷し、670℃における6Hrの加熱後に900℃へ再加熱し、4Hrの保持後に30℃/Hrでゆっくりと冷却した。ブロックが650℃になった時点でゆっくりとした冷却を中止し、ブロックを炉から出して室温まで放冷した。このような一連の処理によって、硬さが88〜92HRB程度と軟質で組織の均一な状態のブロックを製造した。このブロックを素材として、55mm×55mm×200mmの試験片を作成し、被削性を調査した結果を示したのが図1である。
図2は、0.35C−0.75Mn−6.45Cr−1.40Mo−0.55V鋼の熱伝導率を評価した結果である。図1の試験に用いたと同じ素材の同じ部位から削りだしたφ11mm×50mmの丸棒を1030℃に加熱して急冷し、焼戻して43HRCに調質した。さらに、この丸棒からφ10mm×2mmの熱伝導率測定用試験片を作成した。レーザーフラッシュ法によって室温で測定した熱伝導率を、Si量に対して示せば図2の通りである。熱伝導率が大きいほど、金型となった場合の冷却能に優れるため好ましい。図2に示すように、0.40%以上になると十分な熱伝導性が得られないことがわかる。
0.52<Mn<0.9
0.52%以下では焼き入れ性が不足し、金型が大きくなった(焼入れ速度が小さくなった)場合の硬さや衝撃値の確保が困難となり、金型の大割れの恐れがある。0.9%以上では十分に軟化させることのできる球状化焼鈍性を付与するが困難となる。好適な範囲は、十分な衝撃値が得られ、かつ球状化焼鈍性を付与することができる0.60≦Mn≦0.80である。
図3は、0.35C−0.35Si−6.45Cr−1.40Mo−0.55V鋼の衝撃値を評価した結果である。詳細には、被削性評価用の素材と同様に製造したブロックを切り出し、さらに100mm×100mm×60mmのブロックを加工した上、1030℃に加熱して急冷、焼戻して43HRCに調質した。さらに、このブロックの中央部から10mm×10mm×55mmのJIS 3号衝撃試験片を作成し、衝撃値を室温で測定した。衝撃値が大きいほど、金型となった場合に割れにくいため好ましい。Mn含有量が少ない鋼は、ブロック中央部まで焼きが入り難い(焼入れ性が悪い)ため、粗大な組織となりやすく、低衝撃値となる。図3に示すように、0.52%以下では、十分な衝撃値が得られないことがわかる。
図4は、本発明に係る熱間工具鋼のCCT曲線の概念を示す概念図である。一般に、CCT曲線とは、焼入温度から種々の冷却速度で等速冷却した場合に、どのような変態組織が出現するかを示した図を指す。冷却速度が遅くなるとベイナイトやパーライトといった不完全焼入れ組織が生ずる。この不完全焼入れ組織の出現しない限界の冷却速度を臨界冷却速度と言う。この臨界冷却速度が小さいほど、すなわち緩やかな冷却でも焼きが入りやすいことを意味している。図4に示すように、本発明に係る0.52%超となる熱間工具鋼は、パーライトが析出しない臨界冷却速度(Ps)が5℃/min以下であり、マルテンサイト組織のみになる臨界冷却速度(Ms)が10℃/min以下であった。つまり、臨界速度がこの範囲であれば、十分な衝撃値が得られることがわかる。
図5は、0.35C−0.35Si−6.45Cr−1.40Mo−0.55V鋼のSA(球状化焼鈍)硬さを評価した結果である。詳細には、被削性評価用の素材と同様に製造したブロックを切り出し、さらに310mm×650mm×4500mmのブロックを得て、この素材の中心付近から、素材の高さ方向に11mm×11mm×60mmの角棒を試験片として切り出した。この試験片を室温から900℃まで4時間かけて加熱し、その後900℃に4時間保持した後に加熱炉内で放冷し、その際6600℃までを30℃/minの冷却速度で冷却する球状化焼鈍処理を行い、その焼鈍処理後の試験片のロックウェルBスケール硬さ(HRB)を測定し、この硬さを球状化焼鈍性の指標とした。図5に示すように、0.9%未満では、十分に軟化させることが可能な球状化焼鈍性を付与できることがわかる。
5.95<Cr<6.79
5.95%以下では十分な耐食性が確保できない。また、6.79%以上では十分な軟化抵抗が得られない。好適な範囲は、十分な耐食性と軟化抵抗を得られる6.00≦Cr≦6.50である。
図6は、0.35C−0.35Si−0.75Mn−1.40Mo−0.55V鋼を耐食性測定試験により評価した結果である。詳細には、耐食性試験は、上記衝撃値評価用の素材と同じ手順で作成した調質済のブロックから直径10mm、長さ50mm丸棒試験片(棒の断面の中心から軸方向に沿って直径1mm水冷孔を形成)を作製し、当該試験片について、屋根があって雨は当たらないが外気(約10〜15℃)に触れる環境下に3日間置く暴露試験を行い、水冷孔断面の錆面積率を画像(写真)解析により測定した。面積率が5%以下の場合が○、面積率が5〜10%の場合が△、面積率が10%以上の場合が×として評価した。図6に示すように、5.95以下では、耐食性が十分に確保できないことがわかる。
図7は、0.35C−0.35Si−0.75Mn−1.40Mo−0.55V鋼を軟化抵抗試験により評価した結果である。詳細には、耐食性試験は、上記衝撃値評価用の素材と同じ手順で作成した調質済のブロックから10mm×10mm×55mmの試験片を作成し、600℃×3時間の焼戻しを実施した。図7の縦軸は、焼戻し後のHRC硬さを示している。図7に示すように、6.79%以上では、低下が著しい(十分な軟化抵抗が得られない)ことがわかる。
1.23<Mo<1.51
1.23%以下では、十分な高温強度が得られない。1.51%以上では、脆化して衝撃値が低下する。好適な範囲は、1.30≦Mo≦1.50である。
0.40<V<0.60
0.40%以下では、焼入れ時の結晶粒が粗大化して衝撃値を低下させる。一方、0.60%以上では粗大な炭窒化物の量が過度となって衝撃値を低下させる。また、V量が0.80%以上では粗大な炭窒化物の量が更に増えるだけでなくコスト増が工業的な問題となる。好適な範囲は、0.50≦V≦0.55である。
本発明では、不純物成分について以下のように規制することができる。
W<0.30、Co<0.30、Nb<0.004、Ta<0.004、Ti <0.004、Zr<0.004、Al<0.030、Cu<0.15、Ni< 0.15、B<0.0001、S<0.010、Ca<0.0005、Se<0.03、Te<0.005、Bi<0.01、Pb<0.03、Mg<0.005、O<0.0080、N<0.030
本発明では、炭化物の析出によって強度を上げるため、必要に応じて下記範囲でWを添加することができる。
0.30≦W≦4.00
0.30%未満では高強度化の効果が小さく、4.00%を越えると効果の飽和と著しいコスト増を招く。
本発明ではまた、母材への固溶によって強度を上げるため、必要に応じて下記
範囲でCoを添加することができる。
0.30≦Co≦3.00
0.30%未満では高強度化の効果が小さく、3.00%を越えると効果の飽和
とコストの著しい増加を招く。
本発明では更に、VCNによる結晶粒微細化の効果が充分でない場合、更なる細粒化を目的として、必要に応じ以下のうち少なくとも1種を添加することができる。
0.004≦Nb≦0.100
0.004≦Ta≦0.100
0.004≦Ti≦0.100
0.004≦Zr≦0.100
0.030≦Al≦0.100
いずれの元素も、所定量未満では強度と靭性の改善効果が小さい。また所定量
を越えると炭化物や窒化物や酸化物が過度に生成し、かえって靭性の低下を招く。
本発明では、焼入れ性を向上させるため、必要に応じ以下のうち少なくとも1
種を添加することができる。
0.15≦Cu≦1.50
0.15≦Ni≦1.50
0.0001≦B≦0.0100
いずれの元素も、所定量未満では焼入れ性の改善効果が小さい。また、所定量を越えると効果が飽和して実益に乏しい。さらに、CuとNiについては、過度の添加は熱伝導率を低下させる。
本発明では、被削性を向上するため、必要に応じ以下のうち少なくとも1種を添加することができる。
0.010≦S≦0.500
0.0005≦Ca≦0.2000
0.03≦Se≦0.50
0.005≦Te≦0.100
0.01≦Bi≦0.30
0.03≦Pb≦0.50
いずれの元素も、所定量未満では被削性の改善効果が小さい。また、所定量を越えると熱間加工性が著しく劣化するため、塑性加工における割れが多発して生産性と歩留まりを低下させる。
本発明ではまた、
AlNを形成して、焼入れにおける結晶粒の粗大化を防止する効果、又は固
溶して強度向上、耐食性向上の効果を得るため、必要に応じて下記範囲でNを添加することができる。
0.030≦N≦0.300
0.030%未満では上記の効果が小さく、0.300%を越えると効果の特性
の飽和を招くのみで実益に乏しい。
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明する。
表1に示す各実施例及び各比較例について、ダイカスト金型又はダイクエンチ金型を作製し、各種の評価試験を行った。なお、試験結果も表1にあわせて示している。
Figure 2014025103
<金型の作成>
各鋼種を真空中で溶解し、溶湯を鋳型に鋳込んで6tonのインゴットとした。このインゴットを1250℃で均質化処理した。その後、断面が310mm×660mmの矩形ブロックを熱間鍛造で製造した。次いで、その矩形ブロックを670℃で焼戻した後、更に900℃へ加熱して徐冷した。これにより、その矩形ブロックを88〜92HRBまで軟化させた。そして、この矩形ブロックから700kg程度の金型を削りだした。この金型を真空中で1030℃まで加熱し、1Hrの保持後に窒素ガスを噴射して焼入れた。引き続き、580〜610℃で焼戻して45HRC程度に調質した。また、仕上げの機械加工を施して約650kgの金型を製造した。
<熱伝導率測定試験>
上記矩形ブロックの一部からφ10mm×2mmの熱伝導率測定用試験片(硬度45HRC)を作成し、レーザーフラッシュ法によって室温で測定した。
<被削性試験>
上記矩形ブロックの一部から55mm×55mm×200mmの試験片(硬度45HRC)を作製し、図1で示した方法と同様の試験を実施した。
<臨界冷却速度試験>
矩形ブロックの一部から直径4mm×10mmの変態点測定用試験片を作製し、1030℃からの冷却速度を変化させた実験後の組織観察結果から各鋼種の臨界冷却速度(Ps、Ms)を判定した。
<球状化焼鈍(SA)性試験>
上記矩形ブロックの一部から11mm×11mm×60mmの試験片を作製し、図5で示した方法と同様の試験を実施した。
<耐食性試験>
上記矩形ブロックの一部から直径10mm、長さ50mm丸棒試験片を作製し、図6で示した方法と同様の試験を実施した。
<破壊靭性測定試験>
ASTM E399(金属材料の線形弾性平面ひずみ破壊靭性KICのための標準試験方法)に準じて、矩形ブロックの一部から各鋼種の
試験片を作製し、予きれ裂を導入後に破壊
靭性KIC(臨界応力拡大係数)を求めた。
<実機試験>
(1)ダイカスト金型
作製したダイカスト型をマシンに組み付け、アルミ合金の鋳造を行った。アルミ合金には、ADC12を用い、溶解保持炉の温度は680℃とした。また、ダイカスト品の重量は約5kg、1サイクルは60sである。30000ショットの鋳造後、30000ショットの鋳造が完了するまでの間、内部冷却回路の割れによる水漏れがあったか否か、金型を交換する程度の割れ(大割れ)があったか否かについて確認した。
(2)ダイクエンチ金型
加熱装置により、高張力鋼板を30秒間で900℃まで急速加熱した後、大気中雰囲気にて、金型内に搬送してプレス成形した後、金型によって冷却し、焼入れを行った。30000回のプレス後、30000回のプレスが完了するまでの間、内部冷却回路の割れによる水漏れがあったか否か、金型を交換する程度の割れ(大割れ)があったか否かについて確認した。
表1に示すように、以下のことが分かる。
比較鋼1、2は、Siの含有量が本発明の規定範囲の上限を上回っているため、熱伝導率が23W/m/K未満となった。また、Crの含有量が本発明の規定範囲の下限を下回っているため、所望の臨界冷却速度(Ps:5℃/min以下、Ms:10℃/min以下)が得られなかった。このことが原因で焼入れ性が不足して靭性が低下し大割れが発生したものと推定される。さらに、耐食性の結果も悪くなった。なお、比較鋼2は、Vの含有量が本発明の規定範囲の上限を上回っているため、コスト高となる。
比較鋼3、4は、Crの含有量が本発明の規定範囲の下限を大きく下回っているっているため、耐食性の結果が悪く、そのことが原因で水漏れ、大割れが発生水冷孔から割れが生じ、大割れに発展したものと推定される。また、比較例2は、所望の臨界冷却速度も得られなかった。なお、比較鋼3は、Moの含有量が本発明の規定範囲の上限を上回っているため、破壊靭性の結果が悪くなった。
比較鋼5〜9は、Siの含有量が少なくなっているため、熱伝導率が23W/m/Kを大きく上回った。しかし、その一方で被削性の結果が悪くなった。また、比較鋼5〜9は、Crの含有量が本発明の規定範囲の下限を大きく下回っているため、所望の臨界冷却速度が得られず、耐食性の結果も悪く、そのことが原因で水冷孔から割れが生じ、大割れに発展したものと推定される。さらに、Crの含有量が本発明の規定範囲の下限を下回っているっているため、球状化焼鈍性(SA性)の結果が悪くなった。
比較鋼10〜12は、SiとCrの含有量が本発明の規定範囲の下限を下回っているため、被削性の結果が悪くなった(比較鋼12は、切削工具に欠けが発生し、測定不可となった)。また、Crの含有量が本発明の規定範囲の下限を下回っているため、耐食性の結果も悪くなった。さらに、Moの含有量が本発明の規定範囲の上限を上回っているため、破壊靭性の結果が悪くなり、そのことが原因で大割れが発生したものと推定される。
これら比較鋼に対し、発明鋼は、焼入れ性、球状化焼鈍性、被削性、熱伝導率、耐食性の各特性のバランスが取れた良好な結果を得ている。通常、工具鋼は、Cr量で分類されることが多い。SKD7に代表される3Cr鋼、SKD61に代表される5Cr鋼、SKD11に代表される12Cr鋼、JIS規格にはないが各社が独自開発した8Cr鋼がその例である。本発明は、上記いずれにも属さない6.5Crという新しい範疇の工具鋼となる。
以上、本発明の実施形態、実施例について説明した。本発明は、これらの実施形態、実施例に特に限定されることなく、種々の改変を行うことが可能である。

Claims (7)

  1. 質量%で(以下、同じ)、
    0.25<C<0.45
    0.29<Si<0.40
    0.52<Mn<0.9
    5.95<Cr<6.79
    1.23<Mo<1.51
    0.40<V<0.60
    残部Fe及び不可避的不純物の組成を有する熱間工具鋼。
  2. 請求項1において、
    0.30≦W≦4.00
    を更に含有して成る熱間工具鋼。
  3. 請求項1、2の何れかにおいて、
    0.30≦Co≦3.00
    を更に含有して成る熱間工具鋼。
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、
    0.004≦Nb≦0.100
    0.004≦Ta≦0.100
    0.004≦Ti≦0.100
    0.004≦Zr≦0.100
    0.030≦Al≦0.100
    のうち少なくとも1種以上を更に含有して成る熱間工具鋼。
  5. 請求項1〜4の何れかにおいて、
    0.15≦Cu≦1.50
    0.15≦Ni≦1.50
    0.0001≦B≦0.0100
    のうち少なくとも1種以上を更に含有して成る熱間工具鋼。
  6. 請求項1〜5の何れかにおいて、
    0.010≦S≦0.50
    0.0005≦Ca≦0.2000
    0.03≦Se≦0.50
    0.005≦Te≦0.100
    0.01≦Bi≦0.30
    0.03≦Pb≦0.50
    のうち少なくとも1種以上を更に含有して成る熱間工具鋼。
  7. 請求項1〜6の何れかにおいて、
    0.030≦N≦0.300
    を更に含有して成る熱間工具鋼。
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