JP5332646B2 - 冷間鍛造性に優れた浸炭用鋼の製造方法 - Google Patents

冷間鍛造性に優れた浸炭用鋼の製造方法 Download PDF

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本発明は、自動車や各種産業機器等に供して好適な冷間鍛造性に優れた浸炭用鋼の製造方法に関するものである。
自動車等に用いられている歯車には、近年、省エネルギー化による車体重量の軽量化に伴って、サイズの小型化が要求され、またエンジンの高出力化に伴って歯車にかかる負荷が増大している。歯車の耐久性は、主に歯元の曲げ疲労破壊ならびに歯面の面圧疲労破壊によって決まる。
従来、歯車は、JIS SCM420H、SCM822H等により規定された肌焼鋼を用いて歯車材を調製し、この歯車材に浸炭等の表面処理を施して製造されていた。しかしながら、このような歯車は、高応力下での使用に耐え得るものではないことから、鋼材の変更や熱処理方法の変更、さらには表面の加工硬化処理等によって、歯元曲げ疲労強度および耐ピッチング性の向上を図っていた。
例えば、特許文献1には、鋼中のSiを低減すると共に、Mn、Cr、MoおよびNiをコントロールすることにより、浸炭熱処理後の表面の粒界酸化層を低減して亀裂の発生を少なくし、また不完全焼入層の生成を抑制することにより、表面硬さの低減を抑えて疲労強度を高め、さらにCaを添加して、亀裂の発生・伝播を助長するMnSの延伸を制御する方法が開示されている。
特許文献2には、素材としてSiを0.25〜1.50%添加した鋼材を用いて焼戻し軟化抵抗を高める方法が開示されている。
また、棒材を冷間成形して製造される自動車等の部品素材は、高い冷間鍛造性が要求される。そのため、球状化熱処理を施して炭化物を球状化し、冷間鍛造性を高めることが行われる。
しかしながら、熱処理前の部品素材の組織がフェライト−パーライト組織の場合は、層状セメンタイトを分断し難いため、球状化しにくいという問題がある。
特公平07−122118号公報 特許第2945714号公報
しかしながら、上述した特許文献1,2にはいずれも、以下に述べるような問題があった。
特許文献1によれば、Siを低減することにより、粒界酸化層および不完全焼入れ層が低減するので、歯元での曲げ疲労亀裂発生を抑えることはできる。しかしながら、単純なSiの低減のみでは、逆に焼戻し軟化抵抗が低下して、破壊の発生が歯元から歯面側に移行する結果、歯面での摩擦熱による焼戻し軟化を抑えることができなくなって表面が軟化するため、ピッチングが発生し易くなるという問題があった。
本発明は、上記の実状に鑑み開発されたもので、歯元の曲げ疲労強度が従来の歯車よりも高く、さらに面圧疲労特性にも優れた高強度歯車等の素材として好適で、しかも初期組織がフェライト−パーライト組織であっても炭化物の球状化が比較的容易で、冷間鍛造性に優れ、かつ量産化が可能な浸炭用鋼の有利な製造方法を提案することを目的とする。
さて、発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下に述べる知見を得た。
a)鋼材中のSi,Mn,Cr量を適正化することによって、焼戻し軟化抵抗を高めると共に、歯車接触面での発熱による軟化を抑えれば、歯車駆動時に生じる歯面の亀裂発生を抑制することができる。
b)曲げ疲労および疲労亀裂の起点となり得る粒界酸化層については、Si,Mn,Crをある量以上添加することにより、粒界酸化層の成長方向が深さ方向から表面の密度増加方向に変わる。従って、起点となるような深さ方向に成長した酸化層がなくなるので、曲げ疲労および疲労亀裂の起点となり難くなる。
c)上記aおよびbで述べたとおり、Si,Mn,Crは、焼戻し軟化抵抗の向上と粒界酸化層のコントロールに有効であるが、これらの効果を両立させるためには、Si,Mn,Crについて、その含有量を厳密に制御する必要がある。
d)炭化物の球状化を促進し、冷間鍛造性を向上させるには、C,Si,Mn,Crの添加量を適正化することが有利である。特にCrの多量添加が有効である。
本発明は上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、C:0.1〜0.35%、Si:0.01〜0.6%、Mn:0.3〜1.5%、Cr:1.35〜3.0%、P:0.018%以下、S:0.02%以下、Al:0.015〜0.05%、N:0.008〜0.025%およびO:0.0015%以下を、下記式(1),(2),(3)を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、かつ酸化物系非金属介在物の最大径が19μm 以下である組織の鋼素材を、1100℃以上に加熱後、総圧下率:70%以上かつ800〜950℃の温度域での圧下率:30%以上の条件で圧延を終了したのち、800〜500℃の温度域を0.1〜1.0℃/sの速度で冷却することを特徴とする冷間鍛造性に優れた浸炭用鋼の製造方法。

3.1 ≧{([%Si]/2)+[%Mn]+[%Cr]}≧ 2.2 --- (1)
[%C]−([%Si]/2)+([%Mn]/5)+2[%Cr] ≧ 3.0 --- (2)
2.5 ≧ [%Al]/[%N] ≧ 1.7 --- (3)
但し、[%M]は、元素Mの含有量(質量%)
2.質量%で、C:0.1〜0.35%、Si:0.01〜0.6%、Mn:0.3〜1.5%、Cr:1.35〜3.0%、P:0.018%以下、S:0.02%以下、Al:0.015〜0.05%、N:0.008〜0.025%およびO:0.0015%以下を、下記式(1),(2),(3)を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、かつ酸化物系非金属介在物の最大径が19μm 以下である組織の鋼素材を、1100℃以上に加熱後、総圧下率:70%以上かつ800〜950℃の温度域での圧下率:30%以上の条件で圧延を終了したのち、800〜500℃の温度域を0.1〜1.0℃/sの速度で冷却し、さらに加熱温度および熱間圧延温度、または加熱温度および熱間鍛造温度を1050〜800℃とした後、800〜500℃の温度域を0.1〜1.0℃/sの速度で冷却することを特徴とする冷間鍛造性に優れた浸炭用鋼の製造方法。

3.1 ≧{([%Si]/2)+[%Mn]+[%Cr]}≧ 2.2 --- (1)
[%C]−([%Si]/2)+([%Mn]/5)+2[%Cr] ≧ 3.0 --- (2)
2.5 ≧ [%Al]/[%N] ≧ 1.7 --- (3)
但し、[%M]は、元素Mの含有量(質量%)
3.上記1または2において、鋼素材が、質量%でさらに、Cu:1.0%以下、Ni:0.5%以下、Mo:0.2%以下およびV:0.5%以下のうちから選んだ一種または二種以上を含有することを特徴とする冷間鍛造性に優れた浸炭用鋼の製造方法。
本発明によれば、例えば歯車に加工した場合に、歯元の曲げ疲労特性なみならず、歯面の面圧疲労特性に優れた浸炭用鋼を、冷間鍛造を伴う工程において量産化の下で得ることができる。
球状化熱処理における熱処理条件を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、鋼片の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.1〜0.35%
浸炭処理後の焼入れにより中心部の硬度を高めるためには0.1%以上のCを必要とするが、含有量が0.35%を超えると心部の靭性が低下するので、C量は0.1〜0.35%の範囲に限定した。好ましくは0.1〜0.3%の範囲である。
Si:0.01〜0.6%
Siは、歯車等が転動中に到達すると思われる200〜300℃の温度域における軟化抵抗を高める元素であり、その効果を発揮するためには少なくとも0.01%の添加が不可欠である。好ましくは0.03%以上を添加する。しかしながら、一方でSiはフェライト安定化元素であり、過剰な添加はAc3変態点を上昇させ、通常の焼入れ温度範囲で炭素の含有量の低い心部でフェライトが出現し易くなり強度の低下を招く。また、過剰な添加は浸炭前の鋼材を硬化させ、冷間鍛造性を劣化させる不利もある。この点、Si量が0.6%以下であれば、上記のような弊害は生じないので、Si量は0.01〜0.6%の範囲に限定した。好ましくは0.03〜0.5%の範囲である。
Mn:0.3〜1.5%
Mnは、焼入性に有効な元素であり、少なくとも0.3%の添加を必要とする。しかしながら、Mnは、浸炭異常層を形成し易く、また過剰な添加は残留オーステナイト量が過多となって硬さの低下を招くので、上限を1.5%とした。好ましくは0.3〜1.2%の範囲である。
Cr:1.35〜3.0%
Crは、焼入性のみならず焼戻し軟化抵抗の向上に有効に寄与し、さらには炭化物の球状化促進にも有用な元素であるが、含有量が1.35%に満たないとその添加効果に乏しく、一方3.0%を超えると軟化抵抗を高める効果は飽和し、むしろ浸炭異常層を形成し易くなるので、Cr量は1.35〜3.0%の範囲に限定した。
P:0.018%以下
Pは、結晶粒界に偏析し、浸炭層および心部の靭性を低下させるので、その混入は低いほど望ましいが、0.018%までは許容される。好ましくは0.016%以下である。
S:0.02%以下
Sは、硫化物系介在物として存在し、被削性の向上に有効な元素である。しかしながら、過剰な添加は疲労強度の低下を招く要因となるので、上限を0.02%とした。
Al:0.015〜0.05%
Alは、Nと結合してAlNを形成し、オーステナイト結晶粒の微細化に寄与する元素であり、この効果を得るためには0.015%以上、好ましくは0.018%以上の添加を必要とするが、含有量が0.05%を超えると疲労強度に対して有害なAl2O3介在物の生成を助長するため、Al量は0.015〜0.05%の範囲に限定した。
N:0.008〜0.025%
Nは、Alと結合してAlNを形成し、オーステナイト結晶粒の微細化に寄与する元素である。従って、適正添加量はAlとの量的バランスで決まるが、その効果を発揮するためには0.008%以上の添加が必要である。しかし、過剰に添加すると凝固時の鋼塊に気泡が発生したり、鍛造性の劣化を招くため、上限を0.025%とする。好ましくは0.010〜0.020%の範囲である。
O:0.0015%以下
Oは、鋼中において酸化物系介在物として存在し、疲労強度を損なう元素である。低いほど望ましいが、0.0015%までは許容される。
以上、本発明の基本成分の適正組成範囲について説明したが、本発明では、各々の元素が単に上記の範囲を満足するだけでは不十分で、Si,Mn,Cr,C,AlおよびNについては、次式(1),(2),(3)の関係を満足させることが重要である。
3.1 ≧{([%Si]/2)+[%Mn]+[%Cr]}≧ 2.2 --- (1)
[%C]−([%Si]/2)+([%Mn]/5)+2[%Cr] ≧ 3.0 --- (2)
2.5 ≧ [%Al]/[%N] ≧ 1.7 --- (3)
但し、[%M]は、元素Mの含有量(質量%)
上掲(1)式は、焼入性および焼戻し軟化抵抗性に影響を与える因子で、(1)式が2.2未満では焼入性および焼戻し軟化抵抗性の改善効果が十分でなく、一方3.1を超えると上記の改善効果が飽和するだけでなく、加工性の劣化を招く。
また、上掲(2)式は、炭化物の球状化の容易さに影響を与える因子で、(2)式が3.0以上を満たすことで球状化が容易になる。
さらに、上掲(3)式は、オーステナイト結晶粒の微細化に影響を与える因子で、(3)式の値が1.7に満たないと微細化効果に乏しく、一方2.5を超えると結晶粒が容易に粗大化するだけでなく、固溶Al,Nに起因して加工性の低下を招く。
以上、本発明の基本成分について説明したが、本発明では、その他にも必要に応じて、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Cu:1.0%以下
Cuは、母材の強度向上に有効に寄与するが、含有量が1.0%を超えると熱間脆性を生じ、鋼材の表面性状が劣化するので、1.0%以下に限定した。
Ni:0.5%以下
Niは、母材の強度および靱性の向上に有効に寄与するが、高価であるので、0.5%以下で含有させるものとした。
Mo:0.2%以下
Moも、Niと同様、母材の強度および靱性の向上に有効に寄与するが、高価であるので、0.2%以下で含有させるものとした。
V:0.5%以下
Vは、Siと同様、焼戻し軟化抵抗を高めるのに有用な元素であるが、含有量が0.5%を超えると効果が飽和するので、0.5%以下に限定した。
さらに、本発明では、素材中に存在する酸化物系介在物の大きさを制御することも重要である。
すなわち、鋼中の酸素量を下げても、鋼中の酸化物の最大径が大きいと面疲労強度の向上は望めないため、素材中に存在する酸化物系介在物の最大径は19μm 以下に制限する。
なお、酸化物系介在物の大きさを上記の範囲に調整するには、RH脱ガス工程が重要で、このときの処理時間を50分以上とすることが好ましい。
次に、本発明の製造条件について説明する。
本発明では、上述した好適成分組成になる鋼素材を、1100℃以上に加熱後、総圧下率:70%以上かつ800〜950℃の温度域での圧下率:30%以上の条件で圧延を終了したのち、800〜500℃の温度域を0.1〜1.0℃/sの速度で冷却することが、またさらにはその後に加熱温度および熱間圧延温度、または加熱温度および熱間鍛造温度を1050〜800℃とした後、800〜500℃の温度域を0.1〜1.0℃/sの速度で冷却することが必要である。
以下、各処理条件を上記のように限定した理由について説明する。
鋼素材加熱温度:1100℃以上
本発明では、熱間加工前にAlNを十分に固溶させておく必要があるため、熱間加工に先立ち鋼素材を1100℃以上の温度に加熱するものとした。
熱間加工における総圧下率:70%以上
総圧下率が少ないと結晶粒が粗大となり、冷却後のフェライト分率が減少して、浸炭時に粗大粒が発生し易くなるだけでなく、圧延材の硬さが上昇するため、70%以上とする。
800〜950℃の温度域での圧下率:30%以上
この温度域での圧下率が30%に満たないと、結晶粒が粗大となり、冷却後のフェライト分率が減少して、浸炭時に粗大粒が発生し易くなるだけでなく、圧延材の硬さが上昇するため、30%以上とする。
なお、この圧下率は、熱間加工により得る鋼材が板の場合には厚さの減少率を、一方棒鋼や線材の場合には減面率のことをいう。
500〜800℃の温度域の冷却速度:0.1〜1.0℃/s
熱間加工後の冷却過程において、800〜500℃の温度域における冷却速度が0.1℃/sに満たないと、フェライト粒径が大きくなり、また浸炭時における粒径も粗大粒となり、一方1.0℃/sを超えると冷却後のフェライト分率が減少して、浸炭時に粗大粒が発生し易くなるだけでなく、圧延材の硬さが上昇するため、この温度域における冷却速度は0.1〜1.0℃/sの範囲に限定した。
本発明では、上記の冷却処理終了後、さらに熱間圧延や熱間鍛造を行うことができるが、その場合には、次の条件で行うことが好ましい。
加熱温度および熱間圧延温度、または加熱温度および熱間鍛造温度:1050〜800℃
再加熱温度は高温過ぎると微細なAlNが得られず、浸炭時に粗大粒が発生し易くなる。一方、低温過ぎるとフェライトや炭化物が残存し、圧延材の組織が不均一となるため、加熱温度は1050〜800℃の範囲に限定した。また、熱間圧延または熱間鍛造を行う場合も同様である。
800〜500℃の温度域の冷却速度:0.1〜1.0℃/s
この温度域での冷却速度を0.1〜1.0℃/sの範囲に限定したのは、上述したところと同じである。
かかる再加熱圧延または再加熱鍛造時の加工率については、どのような条件で行っても、本発明の効果を消失させるものではない。
表1に示す種々の成分組成になる鋼を、100kg真空溶解炉にて溶製し、鋳片を表2に示す熱間圧延条件および冷却条件にて圧延を実施し、棒鋼とした。なお、表2において、2回目の圧延条件が空欄の場合は、1回の加熱圧延で仕上げたことを意味している。また、2回目の圧延を行う場合は、圧下率:30%、圧延温度:800℃以上で行った。
得られた棒鋼について、冷間加工性、球状化熱処理性、浸炭部特性および疲労特性の評価を、以下の条件にて行った。
(1)冷間加工性の評価方法
冷間加工性は、変形抵抗および限界据え込み率の2項目で評価した。
変形抵抗は、圧延ままの棒鋼の1/4D位置から、直径:10mm、高さ:15mmの試験片を採取し、300t(9.8 kN)プレス機を用いて、70%据え込み時の圧縮荷重を測定し、日本塑性加工学会が提唱している端面拘束圧縮による変形抵抗測定方法を用いて求めた。
限界据え込み率は、変形抵抗を測定した方法で圧縮加工を行い、端部に割れが入ったときの据え込み率を限界据え込み率とした。
変形抵抗値が 918 MPa以下、限界据え込み率が76%以上であれば冷間加工性は良好であるといえる。
(2)球状化熱処理性の評価方法
球状化熱処理性は、球状化熱処理後の炭化物の球状化率、変形抵抗および限界据え込み率の3項目で評価した。
上記(1)と同様にして、圧延ままの棒鋼の1/4D位置から、直径:10mm、高さ:15mmの試験片を採取し、球状化熱処理後、炭化物の球状化率、変形抵抗および限界据え込み率を求めた。球状化熱処理は、図1に示す条件で行い、球状化率は炭化物のアスペクト比(長径/短径)が2以下のものの割合とした。この割合が80%以上であれば、球状化熱処理性に優れているといえる。
また、球状化熱処理後の変形抵抗値が 890 MPa以下、限界据え込み率が80%以上であれば冷間加工性は良好であるといえる。
(3)浸炭部特性の評価方法
浸炭部特性は、浸炭部での粗大粒発生の有無と粒界酸化深さの2項目で評価した。
浸炭部において、粗大粒の発生がなかった場合を○、粗大粒の発生があった場合を×とした。用いた試験片は、後述する疲労特性の評価で用いた試験片と同様のものである。
粒界酸化挙動は、浸炭処理後の試験片の表面を光学顕微鏡で観察し、粒界酸化深さを測定することで評価した。すなわち、倍率:400倍で光学顕微鏡観察し、各視野での最大粒界酸化深さを求め、10視野の平均値を粒界酸化深さとした。
浸炭部での粗大粒の発生がなく、粒界酸化深さが10μm 以下であれば、浸炭部特性に優れているといえる。
(4)疲労特性の評価方法
疲労特性は、回転曲げ疲労試験片と面疲労強度の2項目で評価した。
すなわち、圧延ままの棒鋼から回転曲げ疲労試験片と面疲労強度を評価するためのローラピッチング試験片とを加工し、試験に供した。これらの試験片に930℃、7時間、カーボンポテンシャル:0.8%の条件で浸炭を実施後、180℃,1時間の加熱焼戻し処理を施した。
回転曲げ疲労試験は回転数:1800rpmで実施し、107回時間強度で評価した。
ローラピッチング試験は、すべり率:40%、油温:80℃の条件で107回時間強度で評価した。
回転曲げ疲労強度が 860 MPa以上で、面疲労強度が3120 MPa以上であれば、疲労強度は良好であるといえる。
得られた結果を表3に示す。
Figure 0005332646
Figure 0005332646
Figure 0005332646
表3に示したとおり、本発明に従い得られた発明例はいずれも、圧延ままおよび球状化熱処理後の冷間加工性に優れ、また粒界酸化深さが浅く、かつ浸炭部に粗大粒の発生もなく、さらに比較例に比べて回転曲げ疲労強度および面圧疲労強度に優れていることが分かる。
本発明によれば、高強度構造部品の素材として好適で、しかも初期組織がフェライト−パーライト組織であっても炭化物の球状化が比較的容易で冷間鍛造性に優れ、かつ量産化が可能な浸炭用鋼を得ることができ、自動車をはじめとする各種産業機器等に供して好適である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.1〜0.35%、Si:0.01〜0.6%、Mn:0.3〜1.5%、Cr:1.35〜3.0%、P:0.018%以下、S:0.02%以下、Al:0.015〜0.05%、N:0.008〜0.025%およびO:0.0015%以下を、下記式(1),(2),(3)を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、かつ酸化物系非金属介在物の最大径が19μm 以下である組織の鋼素材を、1100℃以上に加熱後、総圧下率:70%以上かつ800〜950℃の温度域での圧下率:30%以上の条件で圧延を終了したのち、800〜500℃の温度域を0.1〜1.0℃/sの速度で冷却することを特徴とする冷間鍛造性に優れた浸炭用鋼の製造方法。

    3.1 ≧{([%Si]/2)+[%Mn]+[%Cr]}≧ 2.2 --- (1)
    [%C]−([%Si]/2)+([%Mn]/5)+2[%Cr] ≧ 3.0 --- (2)
    2.5 ≧ [%Al]/[%N] ≧ 1.7 --- (3)
    但し、[%M]は、元素Mの含有量(質量%)
  2. 質量%で、C:0.1〜0.35%、Si:0.01〜0.6%、Mn:0.3〜1.5%、Cr:1.35〜3.0%、P:0.018%以下、S:0.02%以下、Al:0.015〜0.05%、N:0.008〜0.025%およびO:0.0015%以下を、下記式(1),(2),(3)を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になり、かつ酸化物系非金属介在物の最大径が19μm 以下である組織の鋼素材を、1100℃以上に加熱後、総圧下率:70%以上かつ800〜950℃の温度域での圧下率:30%以上の条件で圧延を終了したのち、800〜500℃の温度域を0.1〜1.0℃/sの速度で冷却し、さらに加熱温度および熱間圧延温度、または加熱温度および熱間鍛造温度を1050〜800℃とした後、800〜500℃の温度域を0.1〜1.0℃/sの速度で冷却することを特徴とする冷間鍛造性に優れた浸炭用鋼の製造方法。

    3.1 ≧{([%Si]/2)+[%Mn]+[%Cr]}≧ 2.2 --- (1)
    [%C]−([%Si]/2)+([%Mn]/5)+2[%Cr] ≧ 3.0 --- (2)
    2.5 ≧ [%Al]/[%N] ≧ 1.7 --- (3)
    但し、[%M]は、元素Mの含有量(質量%)
  3. 請求項1または2において、鋼素材が、質量%でさらに、Cu:1.0%以下、Ni:0.5%以下、Mo:0.2%以下およびV:0.5%以下のうちから選んだ一種または二種以上を含有することを特徴とする冷間鍛造性に優れた浸炭用鋼の製造方法。
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