JP4632931B2 - 冷間加工性に優れる高周波焼入れ用鋼及びその製造方法 - Google Patents

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Description

自動車や各種産業機械の分野にて冷間加工を実施しその後高周波焼入れ処理により表面に硬さの高い硬化層を付与する部品に使用される冷間加工性に優れた高周波焼入れ用鋼に関する。
従来、自動車や各種産業機械に使用される部品、例えば等速ジョイント部品、各種シャフト、各種ギヤ、クランクシャフト、ハブユニット、軸受部品などの製造において、炭素を概ね0.3%以上含む鋼を高周波焼入れすることで表面に硬さの高い硬化層を形成して疲労強度や耐摩耗性などを付与させた部品を製造する方法が使用されている。
この高周波焼入れによる部品の製造方法は、鋼材表面を硬化する最も一般的な方法である浸炭焼入れ方法に比べ、熱処理時間自体が短縮できることやインラインでの熱処理が可能であることなどのメリットが得られるため、靭性を大きく要求されない比較的形状の簡単な部品においては、高周波焼入れを用いた部品の製造が行われている。
この高周波焼入れに使用される鋼(以下、「高周波焼入れ用鋼」と称す。)については、要求される硬さレベルに合わせて含有される炭素量が選択される。しかし、一般的には質量%で炭素量0.45〜0.55%の中炭素量の鋼が用いられている。炭素量が0.45%未満では焼入れ後の硬さが58HRC以下となり、特に転動疲労特性や耐摩砕性を必要とする部品においては十分な特性が得られない。また、炭素量が0.55%を超えると、焼入れ後の硬さは十分得られるものの、部品を加工する際に成形性が劣るといった問題や、被削性が劣るといった問題がある。特に冷間加工により部品を成形する際には、炭素量が多いと素材硬さが高くなり、変形抵抗が上がり、金型寿命が劣化し、かつ、冷間加工時に割れが発生するといった問題がある。例えば、軸受のレースのような加工率の低い単純な形状の部品においては、0.6%を超える高炭素量の鋼であっても、冷間加工により部品を成形している。しかし、例えば、等速ジョイントに使われるアウターレースのような冷間加工により最終製品に近い形状まで加工する高加工度の部品においては、冷間加工により金型寿命が低下し、かつ、被加工材に割れが発生するという問題がある。そこで、炭素量0.6%以下の高周波焼入れ用鋼が使用されることが一般的である。
転動疲労特性や耐摩耗性などの特性で見れば、炭素量を向上させることにより高周波焼入れ後の硬さが向上し、その結果、部品の機能が大きく向上するため、高炭素量の鋼で冷間加工性に優れる高周波焼入れ用鋼が求められていた。
ここで冷間加工性について説明すると、最近の金型用材の進歩やVCなどの形成による硬化処理(TD処理)やダイヤモンド状炭素膜形成(DLC)処理などの各種の表面処理により、過酷な条件下においても使用可能な金型が開発されており、炭素量の増量により変形抵抗が上がることによる冷間加工性の低下は比較的重視されなくなってきている。しかしながら、被加工材の冷間加工時の割れについては、金型の性能が上がっても向上するわけではなく、むしろ金型の性能向上により過酷な冷間加工が行われる今日では、この冷間加工時の割れ発生をいかに抑制するかが重要となってきている。
冷間加工を行うに当たり冷間加工の前の熱処理において、一般的には球状化焼きなましが用いられる。この球状化焼きなましは、ミクロ組織をフェライトと球状化セメンタイトの組織として硬さを低下させ、冷間加工時の割れ発生を低減する熱処理である。
一般的には、この球状化焼きなましを施すことで冷間加工性が向上すると言われているが、今回のような高炭素の鋼の場合、同じような硬さの鋼材であっても冷間加工時に割れが発生するものとしないものがあり、実際のところ素材硬さと冷間加工時の割れ自体には必ずしも相関があるわけではない。
例えば、冷間加工時の割れを抑制するに当たり、ASTM法に順じて測定したAl23、TiN等の硬質介在物量を制御することが有効であると述べられている(特許文献1参照。)が、ここに述べられている鋼材を用いても加工度の大きな冷間加工においては割れ発生が避けられない場合がある。
また、例えば、球状化焼きなまし後の炭化物粒径や炭化物間の距離などを規定することにより冷間加工性が向上すると述べられている(特許文献2参照、あるいは、特許文献3参照。)が、これらの文献に述べられている鋼材を用いても、加工度の大きな冷間加工においては割れ発生が避けられない場合があるのが実態である。
そこで、出願人は、高炭素鋼としながらも球状化焼きなまし後の高加工率の冷間加工をしても割れを発生し難く、高周波焼入れ後の硬さを確保した高炭素含有鋼を開発した(例えば、特許文献4参照。)。しかし、このものは限界据込率を65%以上とするものであった。
特開平9−87740号公報 特開平11−335773号公報 特開2002−12919号公報 特開2005−2366号公報
一般に炭素鋼や合金鋼において、冷間加工後に高周波焼入れする場合、冷間加工性を考慮して炭素量を0.55質量%以下に抑えるのが通常である。しかし、このものはその後の高周波焼入れにおいて硬さが低くなる問題がある。一方、炭素量が0.55質量%を超える高炭素含有鋼では、冷間加工において割れが発生する問題がある。そこで発明者らは鋭意研究して上記の先願の高炭素含有鋼を開発したが、さらに研究し、球状化焼きなましを行う前組織を初析フェライトがない状態とするとともに、さらに鋼成分において、AlとNのバランスを図り、かつ、フェライト強化元素を低減することで、炭素量が0.60%以上の高炭素含有鋼において、球状化焼きなまし後の硬さが低く、従って限界据込率が70%以上と先願の発明に比してより高くしながらも、割れを生ずることなく容易に冷間加工でき、その後の高周波焼入れで先願の発明に劣らない十分な硬さが得られる鋼及び鋼の製造方法を見出した。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、炭素量が0.60%以上の高炭素含有鋼において、球状化焼きなまし後の硬さが低く、限界据込率が70%以上において割れを生ずることなく容易に冷間加工でき、その後の高周波焼入れで十分な62HRC以上の硬さが得られる鋼及び鋼の製造方法を提供することである。
上記の課題を解決するための本発明の、第1の手段は、鋼成分が、質量%で、C:0.60〜0.80%、Si:0.03〜0.20%、Mn:0.15〜0.80%、P:0.30%以下、S:0.015%以下、Al:0.020〜0.050%、N:0.0100%以下、O:0.0015%以下、かつ、AlとNは式:Al>2.5Nを満足し、残部Fe及び不可避不純物からなるもので、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライト面積率が2%以下で、球状化焼きなまし後の硬さが85HRB以下で、かつ球状化焼きなまし後のミクロ組織中の球状化炭化物比率が80%以上で、その後の高周波焼入れにおいて62HRC(≒740HV)以上の硬さを確保可能とした冷間加工性に優れた高周波焼入れ用鋼である。
第2の手段は、鋼成分が、上記の第1の手段の鋼成分に加えて、さらに焼入性を向上させる元素として、質量%で、Ni:0.07〜1.0%、Cr:0.15〜0.8%、Mo:0.02〜0.20%、B:0.0005〜0.0030%から選択した1種又は2種以上を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなるもので、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライト面積率が2%以下で、球状化焼きなまし後の硬さが85HRB以下で、かつ球状化焼きなまし後のミクロ組織中の球状化炭化物比率が80%以上とし、その後の高周波焼入れにおいて62HRC以上の硬さを確保可能とした冷間加工性に優れた高周波焼入れ用鋼である。この場合、上記の鋼成分は、さらにその成分範囲を減縮している。
第3の手段は、鋼成分が、上記の第1又は第2の手段の鋼成分に加えて、さらに冷間加工性を向上させる元素として、質量%で、Ti:0.02〜0.05%,V:0.01〜0.10%から選択した1種又は2種を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなるもので、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライト面積率が2%以下で、球状化焼きなまし後の硬さが85HRB以下で、かつ球状化焼きなまし後のミクロ組織中の球状化炭化物比率が80%以上で、その後の高周波焼入れにおいて62HRC以上の硬さを確保可能とした冷間加工性に優れた高周波焼入れ用鋼である。
第4の手段は、鋼成分が、上記の第1〜3のいずれか1項の手段の鋼成分に加えて、さらに被削性を向上させる元素として、質量%で、Pb:0.001〜0.30%,Se:0.001〜0.30%、Te:0.001〜0.30%,Bi:0.001〜0.30%から選択したいずれか1種又は2種以上を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなるもので、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライト面積率が2%以下で、球状化焼きなまし後の硬さが85HRB以下で、かつ球状化焼きなまし後のミクロ組織中の球状化炭化物比率が80%以上で、その後の高周波焼入れにおいて62HRC以上の硬さを確保可能とした冷間加工性に優れた高周波焼入れ用鋼である。
上記の第1〜4の手段において、球状化炭化物比率とは、被検面積0.1mm2中の(長径/短径)の比が2以下である炭化物の個数Aを被検面積0.1mm2炭化物の総個数Bで除した個数比A/Bを百分率で示す値である。
第5の手段は、上記の第1〜4のいずれか1項の手段の鋼成分からなる鋼を溶製し、熱間鍛造により鍛伸して700℃〜500℃までの平均冷却速度を0.2℃/秒〜10℃/秒として冷却することでミクロ組織中の初析フェライトの面積率を2%以下に抑える。次いで球状化焼きなまし時の加熱保持温度を720〜780℃とし、かつ650℃までの徐冷速度を30℃/Hr以下として冷却することにより球状化焼きなまし処理をすることを特徴とする冷間加工性に優れた高周波焼入れ用鋼の製造方法である。
上記の手段における鋼成分の限定理由を以下に説明する。なお、%は質量%を示す。
C:0.60〜0.80%
Cは、0.60%未満では、初析フェライト面積率が多くなり、冷間加工時に局所的な変形を促進させ、割れ発生の原因となる。しかし、0.80%を超えると、熱間加工後の冷却において網状の炭化物が析出し、冷間加工時の割れ発生に原因となる。そこでCは0.60〜0.80%とする。
Si:0.03〜0.20%
Siは、脱酸に必要な元素で、脱酸には0.03%以上は必要ある。一方、フェライト強化元素であるため、球状化焼なまし後の硬さを上昇させる。このため、0.20%を超えると、フェライトの硬さの上昇を招き、冷間加工時に変形抵抗の上昇と割れ発生を促進する。そこでSiは0.03〜0.20%とする。
Mn:0.15〜0.80%(好ましくは、Mn:0.15〜0.50%)
Mnは、脱酸に必要な元素で、脱酸には0.15%以上は必要である。一方、フェライト強化元素であるため、球状化焼なまし後の硬さを上昇させる。このため、0.80%を超えると、フェライトの硬さの上昇を招き、冷間加工時に変形抵抗の上昇と割れ発生を促進する。しかし、より好ましくは上限を0.50%とする。
P:0.30%以下
Pは、結晶粒界に偏在し強度を低下させるため、低い方が望ましいが、0.30%以下であれば許容できる。そこで、Pは0.30%以下とする。
S:0.015%以下(好ましくは、S:0.005%以下)
Sは、Mnと結合してMnSを形成する元素であり、形成されたMnSは被削性を向上させる効果を有する。しかし、MnSは冷間加工時の割れ発生の原因となり得るため、Sは0.015%以下とする。好ましくは、S:0.005%以下とする。
Al:0.020〜0.050%
Alは、脱酸に必要な元素であると同時に、鋼中の固溶Nを固着することにより冷間加工時の変形抵抗増大を抑制する。その効果を発揮させるには0.020%以上の添加が必要である。しかし、Alが0.050%を超えると、Alの再酸化による大きな酸化物系介在物が残存し冷間加工時の割れ発生の原因となる。そこでAlは0.020〜0.050%とする。
N:0.0100%以下(好ましくは、N:0.0080%以下)
Nは、フェライト中に固溶した場合に歪時効を生じ、冷間加工時の変形抵抗の増大を招くため、極力低減することが望ましい。Alとの兼ね合いから0.0100%までは許容できる。そこでNは0.0100%以下とする。好ましくは、Al>2.5Nの関係からN:0.0080%以下とする。
O:0.0015%以下(好ましくはO:0.0010%以下)
Oは、冷間加工時に割れの発生の起点となりうる酸化物を形成するため、低減することが望ましい。そこでOは0.0015%以下とする。好ましくはO:0.0010%以下とする。
Al>2.5Nとする理由
鋼成分のAlとNは、式Al>2.5Nを満足しない場合、固溶Nによる歪時効硬化が生じ、冷間加工時の変形抵抗の増大を招く。そこでAl>2.5Nとする。
球状化焼鈍後の硬さを85HRB以下とする理由
球状化焼鈍後の硬さが85HRBを超えると、冷間加工時の変形抵抗が高くなり、成形が困難になり、金型などを損傷させる。そこで球状化焼鈍後の硬さを85HRB以下とする。
Ni:0.07〜1.0%
Niは、焼入れ性を向上させる元素であるが、0.07%未満ではその効果は認められない。一方、1.0%を超えると球状化焼きなまし後の硬さを上昇させる。そこでNiは0.07〜1.0%とする。
Cr:0.15〜0.8%
Crは、焼入れ性を向上させ、球状化焼きなまし時の炭化物の球状化を促進させる元素であるが、0.15%未満ではその効果は認められない。一方0.8%を超えると、球状化焼きなまし後の硬さを上昇させる。そこでCrは0.15〜0.8%とする。
Mo:0.02〜0.20%
Moは、焼入れ性を向上させ、球状化焼きなまし時の炭化物の球状化を促進させる元素であるが、0.02%未満ではその効果が認められない。一方、0.20%を超えると、球状化焼きなまし後の硬さを上昇させる。そこでMoは0.02〜0.20%とする。
B:0.0005〜0.0030%
Bは、焼入れ性を向上させる元素であるが、0.0005%未満では焼入れ性向上の効果がない。一方、0.0030%を超えると焼入性向上の効果は飽和し、靱性が低下する。そこでBは0.0005〜0.0030%とする。
なお、これらのNi、Cr、Mo及びBは選択的に1種又は2種以上を添加することができる。
Ti:0.02〜0.05%
Tiは、固溶Nを固着して、冷間加工時の変形抵抗の上昇を抑制するが、0.02%未満では、その効果はなく、0.05%を超えると、被削性を低下させる。そこでTiは0.02〜0.05%とする。
V:0.01〜0.10%
Vは、固溶Nを固着して、冷間加工時の変形抵抗の上昇を抑制するが、0.01%未満ではその効果はなく、0.10%を超えると、被削性を低下させる。そこで、Vは0.01〜0.10%とする。
なお、Ti、Vは選択的に1種又は2種を添加することができる。
Pb:0.001〜0.30%、Se:0.001〜0.30%、Te:0.001〜0.30%、Bi:0.001〜0.30%
Pb、Se、Se、Biは選択的に適応できる元素である。これらは0.001未満では被削性向上の効果がない。一方、0.30%を超えると巨大なPb、Se、Te、Biが介在物となって存在して冷間加工性を低下させる。そこで、これらはPbが0.001〜0.30%、Seが0.001〜0.30%、Seが0.001〜0.30%、Biが0.001〜0.30%の範囲で1種または2種以上を選択的に適応する。
さらに第5の手段で、熱間加工終了後の700℃から500℃まで平均冷却速度を0.2℃/秒〜10℃/秒として冷却した後、放冷する理由は、700℃から500℃まで平均冷却速度が0.2℃秒未満では、初析のフェライトが多く生成し、球状化焼きなまし後にも球状化セメンタイトの存在しないフェライトの領域が残って冷間加工時の割れ発生の原因となる。一方、10℃/秒を超えると、初析フェライトは生成しないもののベイナイト組織が顕著に現れ、球状化焼きなまし後に球状化セメンタイトが微細に分散するため、硬さが下がらず、冷間加工時の割れ発生の原因となる。そこで熱間加工後の冷却速度を0.2℃/秒〜10℃/秒とした。
さらに熱間加工終了後の球状化焼きなまし時の加熱保持温度を720℃〜780℃とする理由を説明すると、熱間加工終了後の加熱保持温度が720℃未満では、オーステナイト化が充分でなくセメンタイトの球状化が不充分となり、冷間加工時の割れを招く。しかし、780℃を超えると、セメンタイトの固溶化が進み、その後の冷却で層状のセメンタイトが現れ、冷間加工時の割れを招く。そこで熱間加工終了後の加熱保持温度は720℃〜780℃とする。
さらに、650℃までの徐冷速度を30℃/Hr以下とする理由は、650℃までの徐冷速度が30℃/Hrを超えると、加熱時に固溶したセメンタイトが層状に析出し冷間加工時の割れを招く。そこで650℃までの徐冷速度を30℃/Hrとする。
本発明の鋼は、その製造において、球状化焼きなましを行う前組織を初析フェライトの面積率を2%以下の状態とし、さらにAlとNのバランスを図り、フェライト強化元素であるSi、Mnを低減することで、得られた鋼は球状化焼きなまし後は硬さが低く、かつ、均一な球状化組織を有し、炭素含有量が0.6%以上の高炭素鋼あるいは高炭素合金鋼でありながら、球状化焼きなまし後に、高加工率の冷間加工を施しても割れを発生することなく、冷間加工性に優れ、高周波焼入れ後に62HRC以上の硬さの高周波焼入れ溶鋼を確保できる。さらに上記の鋼の鋼成分を基本成分とし、さらに、この基本成分に対応した請求項2〜4に規定する鋼成分を加えることで、それぞれ焼入性や、冷間加工性や、被削性を一層良好とした高周波焼入れ用鋼であり、本発明は優れた効果を奏するものである。
以下に本発明の最良の実施の形態を表及び図面を参照して説明する。
表1に示す成分からなる、本発明の成分の鋼材であるNo.1〜12と、比較成分の鋼材であるNo.13〜22の組成範囲からなる供試材の鋼を100kg真空溶解炉で溶製し、鋼塊に鋳造し、これらの鋼塊を1100℃に加熱して熱間鍛造によりφ20mmの棒鋼材に鍛伸して放冷した。なお、表1において各成分の数値に付したアステリスクマークは不可避的な不純物を示す。
Figure 0004632931
得られたφ20mmの棒鋼材について、(1)初析フェライト面積率を棒鋼材の直径の1/4の部分について画像解析により測定した。さらに、表2に示す球状化焼きなまし条件の加熱保持温度に加熱し、次いで650℃までの冷却速度を表2に示す速度として冷却することで球状化焼きなまし処理をした。この球状化焼なまし処理を実施した後、さらに(2)この球状化焼きなましを行った棒鋼材の直径の1/4の部分における球状化焼きなまし後の硬さをロックウェル硬さ試験機により測定した。さらに、(3)球状化焼きなましを行った棒鋼材の直径の1/4の部分についての球状化焼きなまし後の、炭化物の総数と長径/短径の値が2以下の大きさの炭化物の数を、画像解析により測定して球状化炭化物比率を計算し、その球状化炭化物比率を表2において球状化比率(%)として示した。なお、上記の測定の被検面積は0.1mm2とした。
さらに(4)球状化焼きなましを行った棒鋼材の直径の1/4の部分より、径φ14、高さ21mmの円筒形の試験片を各2個ずつ作製し、これらの試験片を冷間にて60%据込み加工を実施し、60%据込み時の変形抵抗を測定することで冷間据込み試験による変形抵抗を調査した。この調査した測定結果を60%据込み時の変形抵抗として表2に示した。
さらに(5)球状化焼きなましを行った棒鋼材の直径の1/4の部分より、径φ14、高さ21mmの円筒形の試験片を各5個ずつ作製し、これらの試験片を冷間にて据込み加工を実施し冷間据込み試験による限界据込み率を調査した。据込み加工した試験片の表面に10倍の拡大鏡で見える割れが発生した時点を、その試験片の割れ発生とし、その時点の据込み加工率の平均値を限界据込み率として表2に示した。
さらに、(6)上記のφ20mmの棒鋼材から径3mmで長さ10mmの試験片を作製し、これらの試験片を高周波誘導加熱により150℃/secにて900℃まで加熱し、5秒間保持した後に、N2ガスにて50℃/secの冷却速度で室温まで冷却して焼入れし、次いで150℃、90分の焼戻しをした後、ビッカース硬さ試験機により、高周波焼入れ焼戻し後の硬さを測定した。この高周波焼入れ焼戻し後の硬さを表2において焼入れ硬さ(HV)として示した。
この表2示す結果から、この60%据込み時の変形抵抗が1100MPaを基準とし、1100MPa以下のものを冷間加工時の変形抵抗に優れるものとした。さらに、この冷間加工時の割れに強い基準を限界据込み率70%とし、70%以上のものを冷間加工時の割れに対して強いものとした。さらに、冷間加工時の割れに強い基準は限界据込み率70%以上とした。本発明の鋼成分を有する鋼の球状化焼きなましを実施したものは、冷間加工性時の変形抵抗に優れ、割れに対しても強いことがわかる。
Figure 0004632931
一方、図1に鋼成分のC量と限界据込み率の関係を示し、図2に球状化比率と限界据込み率の関係を示す。図1において、本発明に規定する鋼成分のC量を有し、かつ、本発明の熱処理条件を満たしたものでは、限界据込み率をみると、限界据込み率はいずれも74%を超えている。これに対し、本発明に規定する鋼成分のC量を有していても、本発明の熱処理条件を満たさないものでは、限界据込み率は68%、69%、70%、71%である。
さらに、図2において球状化比率をみると、本発明のC量を有し、かつ、本発明の熱処理条件を満たしたものでは、球状化比率はいずれも80%を超えているが、本発明に規定する鋼成分のC量を有していても、本発明の熱処理条件を満たさないものでは、球状化比率は80%未満のものもある。これに対し、炭素含有量が本発明の範囲から外れるものは、限界据込率は約68%に中心があり、球状化率は約70%に中心があり、これらは、本発明に比して共に低い値である。以上の結果から、鋼成分のC量が本発明における0.60%〜0.80%の範囲において限界据込率が優れることが分かる。また、図2から限界据込み率は球状化比率が高いほど優れることがいえる。
C量と限界据込率との関係を示すグラフである。 球状化比率と限界据込率との関係を示すグラフである。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.60〜0.80%、Si:0.03〜0.20%、Mn:0.15〜0.80%、P:0.30%以下、S:0.015%以下、Al:0.020〜0.050%、N:0.0100%以下、O:0.0015%以下、かつ、AlとNは式:Al>2.5Nを満足し、残部Fe及び不可避不純物からなり、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライト面積率を2%以下とし、球状化焼きなまし後の硬さを85HRB以下とし、かつ球状化焼きなまし後のミクロ組織中の球状化炭化物比率を80%以上とし、その後の高周波焼入れにおいて62HRC以上の硬さを確保可能としたことを特徴とする冷間加工性に優れた高周波焼入れ用鋼。
    なお、球状化炭化物比率は、被検面積0.1mm2中の(長径/短径)の比が2以下である炭化物の個数Aを被検面積0.1mm2炭化物の総個数Bで除した個数比A/Bを百分率で示す値である。
  2. 請求項1に記載の鋼成分に加えて、さらに焼入性を向上させる元素として、質量%で、Ni:0.07〜1.0%、Cr:0.15〜0.8%、Mo:0.002〜0.20%、B:0.0005〜0.0030%から選択した1種又は2種以上を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライト面積率を2%以下とし、球状化焼きなまし後の硬さを85HRB以下とし、かつ球状化焼きなまし後のミクロ組織中の球状化炭化物比率を80%以上とし、その後の高周波焼入れにおいて62HRC以上の硬さを確保可能としたことを特徴とする冷間加工性に優れた高周波焼入れ用鋼。
    なお、球状化炭化物比率は、被検面積0.1mm2中の(長径/短径)の比が2以下である炭化物の個数Aを被検面積0.1mm2炭化物の総個数Bで除した個数比A/Bを百分率で示す値である。
  3. 請求項1又は2に記載の鋼成分に加えて、さらに冷間加工性を向上させる元素として、質量%で、Ti:0.02〜0.05%,V:0.01〜0.10%から選択した1種又は2種を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライト面積率を2%以下とし、球状化焼きなまし後の硬さを85HRB以下とし、かつ球状化焼きなまし後のミクロ組織中の球状化炭化物比率を80%以上とし、その後の高周波焼入れにおいて62HRC以上の硬さを確保可能としたことを特徴とする冷間加工性に優れた高周波焼入れ用鋼。
    なお、球状化炭化物比率は、被検面積0.1mm2中の(長径/短径)の比が2以下である炭化物の個数Aを被検面積0.1mm2炭化物の総個数Bで除した個数比A/Bを百分率で示す値である。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼成分に加えて、さらに被削性を向上させる元素として、質量%で、Pb:0.001〜0.30%,Se:0.001〜0.30%、Te:0.001〜0.30%,Bi:0.001〜0.30%から選択したいずれか1種又は2種以上を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライト面積率を2%以下とし、球状化焼きなまし後の硬さを85HRB以下とし、かつ球状化焼きなまし後のミクロ組織中の球状化炭化物比率を80%以上とし、その後の高周波焼入れにおいて62HRC以上の硬さを確保可能としたことを特徴とする冷間加工性に優れた高周波焼入れ用鋼。
    なお、球状化炭化物比率は、被検面積0.1mm2中の(長径/短径)の比が2以下である炭化物の個数Aを被検面積0.1mm2炭化物の総個数Bで除した個数比A/Bを百分率で示す値である。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼成分からなる鋼を溶製し、熱間鍛造により鍛伸して700℃〜500℃までの平均冷却速度を0.2℃/秒〜10℃/秒として冷却し、ミクロ組織中の初析フェライトの面積率を2%以下に抑え、次いで球状化焼きなまし時の加熱保持温度を720〜780℃とし、かつ650℃までの徐冷速度を30℃/Hr以下として冷却することにより球状化焼きなまし処理をすること特徴とする冷間加工性に優れた高周波焼入れ用鋼の製造方法。
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