JP2005002366A - 冷間加工性に優れた高硬度高周波焼入れ用鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭素含有量が0.55%を超える高炭素鋼において、高加工率の冷間加工により割れを発生することなく、高周波焼入れ後の硬さ62HRC以上を確保した高炭素鋼およびその製法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.60〜0.90%、Si:0.01〜0.50%、Mn:1.00超〜2.00%、P≦0.03%、S≦0.03%、Al:0.001〜0.050%、O≦0.0015%からなり、残部Feおよび不可避不純物からなり、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライトの面積率を2%以下とした冷間加工性に優れ、その後の高周波焼入れにおいて62HRC以上の硬さを確保可能としたことを冷間加工性に優れた高硬度高周波焼入れ用鋼。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
自動車や各種産業機械の分野にて冷間加工を実施しその後高周波焼入れ処理により表面に硬さの高い硬化層を付与する部品に使用される冷間加工性に優れた高硬度高周波焼入れ用鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車や各種産業機械に使用される部品、例えば等速ジョイント部品、各種シャフト、各種ギヤ、クランクシャフト、ハブユニット、軸受部品などの製造において、炭素を概ね0.3%以上含む鋼を高周波焼入れすることで表面に硬さの高い硬化層を形成して疲労強度や耐摩耗性などを付与させた部品を製造する方法が使用されている。
【0003】
この高周波焼入れによる部品の製造方法は、鋼材表面を硬化する最も一般的な方法である浸炭焼入れ方法に比べ、熱処理時間自体が短縮できることやインラインでの熱処理が可能であることなどのメリットが得られるため、靭性を大きく要求されない比較的形状の簡単な部品においては、高周波焼入れを用いた部品の製造が行われている。
【0004】
この高周波焼入れに使用される鋼(以下高周波焼入れ用鋼と称す)については、要求される硬さレベルに合わせて含有される炭素量が選択されるが、一般的には質量%で炭素量0.45〜0.55%の中炭素量の鋼が用いられている。炭素量が0.45%未満では焼入れ後の硬さが58HRC以下となり、特に転動疲労特性や耐摩砕性を必要とする部品においては十分な特性が得られない。また、炭素量が0.55%を超えると、焼入れ後の硬さは十分得られるものの、部品を加工する際に成形性が劣るといった問題や、被削性が劣るといった問題がある。特に冷間加工により部品を成形する際には、炭素量が多いと素材硬さが高くなり、変形抵抗が上がり、金型寿命が劣化し、かつ、冷間加工時に割れが発生するといった問題がある。例えば、軸受のレースのような加工率の低い単純な形状の部品においては、0.6%を超える高炭素量の鋼であっても、冷間加工により部品を成形している。しかし、例えば、等速ジョイントに使われるアウターレースのような冷間加工により最終製品に近い形状まで加工する高加工度の部品においては、冷間加工により金型寿命が低下し、かつ、被加工材に割れが発生するという問題があるので、炭素量0.6%以下の高周波焼入れ用鋼が使用されることが一般的である。
【0005】
転動疲労特性や耐摩耗性などの特性でみれば、炭素量を向上させることにより高周波焼入れ後の硬さが向上し、その結果、部品の機能が大きく向上するため、高炭素量の鋼で冷間加工性に優れる高周波焼入れ用鋼が求められていた。
【0006】
ここで冷間加工性について説明すると、最近の金型用材の進歩やVCなどの形成による硬化処理(TD処理)やダイヤモンド状炭素膜形成(DLC)処理などの各種の表面処理により、過酷な条件下においても使用可能な金型が開発されており、炭素量の増量により変形抵抗が上がることによる冷間加工性の低下は比較的重視されなくなってきている。しかしながら、被加工材の冷間加工時の割れについては、金型の性能が上がっても向上するわけではなく、むしろ金型の性能向上により過酷な冷間加工が行われる今日では、この冷間加工時の割れ発生をいかに抑制するかが重要となってきている。
【0007】
冷間加工を行うに当たり冷間加工の前熱処理において、一般的には球状化焼きなましが用いられる。この球状化焼きなましは、ミクロ組織をフェライトと球状化セメンタイトの組織として硬さを低下させ、冷間加工時の割れ発生を低減する熱処理である。
【0008】
一般的には、この球状化焼きなましを施すことで冷間加工性が向上すると言われているが、今回のような高炭素の鋼の場合、同じような硬さの鋼材であっても冷間加工時に割れが発生するものとしないものがあり、実際のところ素材硬さと冷間加工時の割れ自体には必ずしも相関があるわけではない。
【0009】
例えば、冷間加工時の割れを抑制するに当たり、ASTM法に順じて測定したAl、TiN等の硬質介在物量を制御することが有効であると述べている(特許文献1参照。)が、ここに述べられている鋼材を用いても加工度の大きな冷間加工においては割れ発生が避けられない場合がある。
【0010】
また、例えば、球状化焼きなまし後の炭化物粒径や炭化物間の距離などを規定することにより冷間加工性が向上すると述べられている(特許文献2参照、あるいは、特許文献3参照。)が、これらの文献に述べられている鋼材を用いても、加工度の大きな冷間加工においては割れ発生が避けられない場合があるのが実態である。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−87740号公報
【特許文献2】
特開平11−335773号公報
【特許文献3】
特開2002−12919号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、炭素含有量が0.55%を超える高炭素鋼において、球状化焼きなまし後の高加工率の冷間加工により割れを発生することなく、高周波焼入れ後の硬さを確保した高炭素鋼およびその製法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
出願人は、高炭素を含有した鋼において高加工度の冷間加工を行う場合、球状化焼きなまし前の組織が重要であること、その組織を得るためには好適な成分範囲および熱間加工条件が存在すること、球状化焼きなましの加熱温度にも好適な範囲が存在することを見出した。
【0014】
高炭素を含有する鋼を球状化焼きなまし処理を行い、さらに冷間加工を実施して割れが発生する事例を詳細に調べていくと、割れが発生した材料には、割れの発生しないものに比べて僅かではあるが、球状化セメンタイトの存在しない領域が認められる。これは球状化焼きなまし前の前組織において存在する初析のフェライト(オーステナイト域から冷却した際に変態により最初にでてくるフェライト)の影響が残存したものであると考えられる。そして球状化焼きなまし後に存在するこの球状化セメンタイトの存在しないフェライトの領域と球状化セメンタイトの存在するフェライトの領域での変形の差により、割れが発生していることを見出した。さらに検討を重ね、この球状化焼きなまし前に存在する初析フェライトの量を2%以下に低減することにより、球状化焼きなまし後の冷間加工性が大きく向上することを見出した。
【0015】
ここで球状化焼きなまし前に存在する初析フェライトについて説明すると、初析フェライトは鋼材をオーステナイト化温度以上に保持しその後の冷却における変態の過程にて生成するものである。これに対して鋼材の成分面から前記のような成分範囲に限定することにより初析フェライトの生成を抑制することが可能になることを見出し、初析フェライトの抑制により球状化焼きなまし後冷間加工時の割れ発生を抑制できることを見出した。
【0016】
また初析フェライトの生成に対し球状化焼きなまし前の熱間鍛造や圧延などの熱間加工に着目しこの熱間加工後の冷却速度の条件を限定することにより初析フェライトの生成を抑えその後の球状化焼きなまし後の冷間加工時の割れ発生を抑制できることを見出した。
【0017】
さらには上記成分範囲における球状化焼きなまし条件についても検討を重ね、上記加熱条件及び冷却条件に限定することにより球状化焼きなまし後の冷間加工時の割れ発生を抑制できることを見出した。
【0018】
そこで、上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、質量%で、C:0.60〜0.90%、Si:0.01〜0.50%、Mn:1.00超〜2.00%、P≦0.03%、S≦0.03%、Al:0.001〜0.050%、O≦0.0015%からなり、残部Feおよび不可避不純物からなり、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライトの面積率を2%以下とし、冷間加工性に優れ、その後の高周波焼入れにおいて62HRC以上の硬さを確保可能としたことを特徴とする冷間加工性に優れた高硬度高周波焼入れ用鋼である。
【0019】
請求項2の発明では、請求項1の手段の鋼成分に加えて、さらに焼入性を向上させる元素として、質量%で、Ni:0.1〜1.0%、Cr:0.1〜1.5%、Mo:0.01〜0.50%、B:0.0005〜0.0030%から選択した1種又は2種以上を含有し、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライトの面積率を2%以下とし、冷間加工性に優れ、その後の高周波焼入れにおいて62HRC以上の硬さを確保可能としたことを特徴とする冷間加工性に優れた高硬度高周波焼入れ用鋼である。
【0020】
請求項3の発明では、請求項1または2の手段の鋼成分に加えて、さらに結晶粒を微細化し冷間加工性を向上させる元素として、質量%で、Nb:0.001〜0.15%又はTi:0.001〜0.20%から選択した1種又は2種を含有し、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライトの面積率を2%以下とし、冷間加工性に優れ、その後の高周波焼入れにおいて62HRC以上の硬さを確保可能としたことを特徴とする冷間加工性に優れた高硬度高周波焼入れ用鋼である。
【0021】
請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれか1項の手段の鋼成分に加えて、さらに被削性を向上させる元素として、質量%で、Pb:0.001〜0.30%、Se:0.001〜0.30%、Te:0.001〜0.30%、Bi:0.001〜0.30%から選択した1種又は2種以上を含有し、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライトの面積率を2%以下とし、冷間加工性に優れ、その後の高周波焼入れにおいて62HRC以上の硬さを確保可能としたことを特徴とする冷間加工性に優れた高硬度高周波焼入れ用鋼である。
【0022】
請求項5の発明では、請求項1〜4のいずれか1項の手段の鋼に対する、球状化焼きなまし前の熱間加工において、熱間加工終了後の700℃から500℃まで平均冷却速度を0.2℃/秒〜10℃/秒として冷却し、ミクロ組織中の初析フェライトの面積率を2%以下に抑え、その後に加熱温度を720〜760℃とし、かつ、徐冷速度を30℃/Hr以下とする球状化焼きなましすることを特徴とする冷間加工性に優れた高硬度高周波焼入れ用鋼の製造方法である。
【0023】
なお、上記の各発明において、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライトの面積率は0%でもよい。
【0024】
ここで上記の本願の発明に係る冷間加工性に優れた高硬度高周波焼入れ用鋼の成分限定理由について説明する。なお、限定理由における%は質量%を示す。
【0025】
C:0.60〜0.90%
Cは0.60%未満では初析フェライトの面積率を2%以下に抑えるには不十分であり、さらに高周波焼入れ後の硬さの62HRCを得るにも不十分である。一方、0.90%を超えると、初析フェライトは生成しないものの熱間加工後の冷却において網状の炭化物が析出し、冷間加工時の割れ発生の原因となる。そこで、Cは0.60〜0.90%とする。
【0026】
Si:0.01〜0.50%
Siは0.01%未満では焼入性向上の効果が期待できず高周波焼入れ後に十分な硬さが得られない。一方、0.50%を超えると、初析フェライトを生成し易くなり、またフェライト素地自体の硬度を上げるため球状化焼きなましを施しても硬さが下がらず冷間加工時の割れ発生の原因となる。そこで、Siは0.01〜0.50%とする。
【0027】
Mn:1.00超〜2.00%
Mnは1.00%以下では初析フェライトを生成し易くなる。一方、2.00%を超えるとフェライト素地自体の硬度を上げるため球状化焼きなましを施しても硬さが下がらず冷間加工時の割れ発生の原因となる。そこで、Mnは1.00超〜2.00%とする。
【0028】
P:0.03%以下
Pは結晶粒界に偏在し強度を低下させるので低い方がよく、0.03%以下であれば許容できる。そこでP:0.03%以下とする。
【0029】
S:0.03%以下
SはMnと結合しMnSを形成する。MnSは被削性を向上させる効果を有する。ところで、MnS付近のMn濃度を低下して初析フェライトを生成し易くするために、Sは0.03%以下とする。
【0030】
Ni:0.1〜1.0%
Niは0.1%未満では焼入性向上及び靭性向上の効果がない。一方、1.0%を超えると球状化焼きなましを施しても硬さが下がらず冷間加工時の割れ発生の原因となる。そこでNiは0.1〜1.0%とする。
【0031】
Cr:0.1〜1.5%
Crは0.1%未満では焼入性向上の効果がない。一方、1.5%を超えると球状化焼きなましを施しても硬さが下がらず冷間加工時の割れ発生の原因となる。そこでCrは0.1〜1.5%とする。
【0032】
Mo:0.01〜0.50%
Moは0.01%未満では焼入性向上の効果がない。一方、0.50%を超えると球状化焼きなましを施しても硬さが下がらず冷間加工時の割れ発生の原因となる。そこでMoは0.01〜0.50%とする。
【0033】
B:0.0005〜0.0030%
Bは0.0005%未満では焼入性向上の効果がない。一方、0.0030%を超えると焼入性向上の効果が飽和し、靭性が低下する。そこでBは0.0005〜0.0030%とする。
【0034】
なお、Ni、Cr、MoおよびBは選択的に1種または2種以上を添加することができる。
【0035】
Al:0.001〜0.050%
Alは0.001%未満では脱酸の効果が無く、大きな酸化物系介在物が残存し冷間加工時の割れ発生の原因となる。一方、0.050%を超えると脱酸の効果が飽和し、またAlの再酸化による大きな酸化物系介在物が残存し冷間加工時の割れ発生の原因となる。そこでAlは0.001〜0.050%とする。
【0036】
Nb:0.001〜0.15%
Nbは0.001%未満では細粒化の効果がない。一方、0.15%を超えると効果が飽和しコストが高くなる。そこでNbは0.001〜0.15%とする。
【0037】
Ti:0.001〜0.20%
Tiは0.001%未満では細粒化の効果がない。一方、0.20%を超えると効果が飽和しコストが高くなる。そこでTiは0.001〜0.20%とする。
【0038】
なお、NbおよびTiは選択的に1種または2種を添加する。
【0039】
Pb:0.001〜0.30%、Se:0.001〜0.30%、Se:0.001〜0.30%、Bi:0.001〜0.30%
Pb、Se、SeまたはBiは選択的に適応できる元素である。これらは0.001未満では被削性向上の効果がない。一方、0.30%を超えると巨大なPb、Se、Te、Biが介在物となって存在して冷間加工性を低下させる。そこで、これらはPbが0.001〜0.30%、Seが0.001〜0.30%、Seが0.001〜0.30%、Biが0.001〜0.30%の範囲で1種または2種以上を選択的に適応する。
【0040】
O:0.0015%以下
Oは鋼中に微細な酸化物として存在する元素で、この酸化物を核として初析フェライトが生成し易くする。そこでOは0.0015%以下とする。
【0041】
さらに請求項に係る発明における限定理由について以下に説明する。
【0042】
球状化焼きなまし前の熱間加工後の組織における初析フェライトの面積率:2%以下
初析フェライトの面積率が2%を超える場合には、球状化焼きなまし後にも球状化セメンタイトの存在しないフェライトのみの領域が残り、冷間加工時の割れ発生の原因となる。しかし、面積率が2%以下では、球状化セメンタイトの残存しないフェライトのみの領域はあっても、ごく僅かに分散して存在しているのみであり、問題とはならない。そこで上記の初析フェライトの面積率は2%以下とする。
【0043】
熱間加工後の平均冷却速度:0.1℃/秒〜10℃/秒
熱間加工終了後の700℃から500℃までの平均冷却速度が0.1℃/秒未満では、初析のフェライトが多く生成し、球状化焼きなまし後にも球状化セメンタイトの存在しないフェライトの領域が残って冷間加工時の割れ発生の原因となる。一方、10℃/秒を超えると、初析フェライトは生成しないもののベイナイト組織が顕著に現れ、球状化焼きなまし後に球状化セメンタイトが微細に分散するため、硬さが下がらず冷間加工時の割れ発生の原因となる。そこで熱間加工後の平均冷却速度は0.1℃/秒〜10℃/秒とする。
【0044】
球状化焼きなましの加熱温度:720〜760℃
球状化焼きなましの加熱温度が720℃未満では、オーステナイト化が十分でなくセメンタイトの球状化が不十分となり冷間加工時の割れを招く。一方、760℃を超えると、炭素の固溶化が進みその後の冷却で層状のセメンタイトが現れ、冷間加工時の割れを招く。そこで球状化焼きなましの加熱温度は720〜760℃とする。
【0045】
徐冷速度:30℃/hr以下
徐冷速度が30℃/hrを超えると加熱時に固溶した炭素が層状に析出し冷間加工時の割れを招く。そこで徐冷速度は30℃/hr以下とする。ところで、徐冷速度が30℃/hr以下であれば、遅ければ遅いほど球状化に有効ではあるが、工業上の観点では5℃/hr以上で冷却することが望ましい。
【0046】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について以下に説明する。表1に示す鋼材A〜Gの本発明の組成範囲からなる鋼と鋼材H〜Nの比較例の組成範囲からなる鋼を100kg真空溶解炉で溶製してインゴットに鋳造し、これらのインゴットを1100℃に加熱して、径32mmの棒鋼に熱間鍛造した。
【0047】
【表1】
Figure 2005002366
【0048】
その後、熱間鍛造の終了からの冷却を模擬するため、上記の鋼材を冷却速度のコントロール可能な真空炉にて850℃加熱し、表2に示すように、700〜500℃の平均冷却速度を種々の条件にて冷却した後、ミクロ組織を確認して初析フェライトの面積率を画像解析を用いて判定した。その後、表2に示す条件で球状化焼きなましを行い、球状化焼きなまし後の硬さをロックウェル硬さ試験機にて測定した。この球状化焼きなましを行った鋼材の直径の1/4の部分より、径14mm、高さ21mmの円筒形の試験片を各5個作成し、これらの試験片を冷間にて表2に示す限界据込率で据込みを実施した。すなわち、据込みした試験片の表面に10倍の拡大鏡で見える割れが発生した時点を、その試験片の割れ発生とし、その時の据込み率の平均値を限界据込み率とし評価を実施した。なお実部品での割れ発生と照らし合わせて限界据込み率65%以上を冷間加工性が良いと判断した。
【0049】
【表2】
Figure 2005002366
【0050】
高周波焼入れ硬さは、径3mm×長さ10mmの試験片を作成し、これらの試験片を高周波誘導加熱により150℃/秒にて900℃まで加熱し、5秒間保持した後に、Nガスにて50℃/secの冷却速度で室温まで冷却し、150℃、90分の焼戻しを実施した後、ビッカース硬さ試験機にて焼入れ硬さ測定を実施した。その時の焼入れ硬さ740HV(≒62HRC)以上を良好と判断した。
【0051】
表2に示すように、たとえ組成範囲が本願の発明の範囲に鋼材A〜Gであっても、熱間鍛造後の処理条件が本発明の範囲外であると限界据込率が65%未満で、冷間加工性が悪く割れが発生した。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による鋼は、高炭素鋼でありながら、球状化焼きなまし後の高加工率の冷間加工を施して割れを発生することのなく、高周波焼入れ後に62HRC以上の硬さを確保できる優れた効果を有する。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.60〜0.90%、Si:0.01〜0.50%、Mn:1.00超〜2.00%、P≦0.03%、S≦0.03%、Al:0.001〜0.050%、O≦0.0015%からなり、残部Feおよび不可避不純物からなり、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライトの面積率を2%以下とし、冷間加工性に優れ、その後の高周波焼入れにおいて62HRC以上の硬さを確保可能としたことを特徴とする冷間加工性に優れた高硬度高周波焼入れ用鋼。
  2. 請求項1に記載の鋼成分に加えて、さらに焼入性を向上させる元素として、質量%で、Ni:0.1〜1.0%、Cr:0.1〜1.5%、Mo:0.01〜0.50%、B:0.0005〜0.0030%から選択した1種又は2種以上を含有し、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライトの面積率を2%以下とし、冷間加工性に優れ、その後の高周波焼入れにおいて62HRC以上の硬さを確保可能としたことを特徴とする冷間加工性に優れた高硬度高周波焼入れ用鋼。
  3. 請求項1または2に記載の鋼成分に加えて、さらに結晶粒を微細化し冷間加工性を向上させる元素として、質量%で、Nb:0.001〜0.15%又はTi:0.001〜0.20%から選択した1種又は2種を含有し、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライトの面積率を2%以下とし、冷間加工性に優れ、その後の高周波焼入れにおいて62HRC以上の硬さを確保可能としたことを特徴とする冷間加工性に優れた高硬度高周波焼入れ用鋼。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼成分に加えて、さらに被削性を向上させる元素として、質量%で、Pb:0.001〜0.30%、Se:0.001〜0.30%、Te:0.001〜0.30%、Bi:0.001〜0.30%から選択した1種又は2種以上を含有し、球状化焼きなまし前のミクロ組織中の初析フェライトの面積率を2%以下とし、冷間加工性に優れ、その後の高周波焼入れにおいて62HRC以上の硬さを確保可能としたことを特徴とする冷間加工性に優れた高硬度高周波焼入れ用鋼。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼に対する、球状化焼きなまし前の熱間加工において、熱間加工終了後の700℃から500℃まで平均冷却速度を0.2℃/秒〜10℃/秒として冷却し、ミクロ組織中の初析フェライトの面積率を2%以下に抑え、その後に加熱温度を720〜760℃とし、かつ、徐冷速度を30℃/Hr以下とする球状化焼きなましすることを特徴とする冷間加工性に優れた高硬度高周波焼入れ用鋼の製造方法。
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