JPWO2017056896A1 - クランク軸粗形材、窒化クランク軸及びその製造方法 - Google Patents

クランク軸粗形材、窒化クランク軸及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

優れた疲労強度と曲げ矯正性を備えたクランク軸粗形材を提供する。クランク軸粗形材は、化学組成が、質量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.01〜0.45%、Mn:1.3〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.005〜0.100%、Cr:0.05〜0.90%、Al:0.001〜0.080%、N:0.003〜0.025%、Ti:0〜0.05%、Nb:0〜0.05%、Mo:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Ni:0〜0.50%、Ca:0〜0.005%、残部:Fe及び不純物であり、表面から10mm深さの組織が、体積%で、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計が50%以上、初析フェライトが10%以下、パーライトが40%以下である。

Description

本発明は、鋼素材を熱間でクランク軸の粗形状に成形した後、焼入れ・焼戻し処理を施したクランク軸粗形材、同粗形材を機械加工仕上げして窒化処理した窒化クランク軸、及びその製造方法に関する。本発明の窒化クランク軸は、優れた疲労強度と曲げ矯正性を備え、自動車、産業機械、及び建設機械などの機械部品として用いるのに好適である。
クランク軸にとって疲労強度は重要な機械的特性である。クランク軸は、機械構造用鋼を所望の形状に熱間鍛造し、熱間鍛造ままの状態又は熱処理を施した後に、機械加工仕上げし、さらに疲労強度を向上させるための窒化処理を施すことがある。窒化処理を施すと、クランク軸の疲労強度は向上するが、クランク軸には若干の反りが生じる。発生した反りは曲げ応力をかけて解消しなければならない。そのため、反りの矯正のし易さである曲げ矯正性は、疲労強度とともに窒化部品にとって重要な特性の一つである。窒化クランク軸の製造における問題は、窒化後の表層が硬くなるほど、疲労強度は向上し、曲げ矯正性は劣化するという特性である。疲労強度と曲げ矯正性を両立させるための技術としては、例えば、特開2004−162161号公報に開示されているものがある。
特開2004−162161号公報には、鋼成分を最適化し、窒化後の窒化層の硬さ分布と、窒化の影響の及ばない芯部の硬さを制御することで、疲労強度と曲げ矯正性の両立を図った技術が開示されている。
一般的に、窒化処理の前に鋼に焼入れ焼戻しや焼ならしといった前熱処理を施すことで、窒化後の曲げ矯正性、疲労強度は向上する。特に、窒化前に焼入れ焼戻し処理を施してから窒化処理を施すと、熱間鍛造ままの鋼に窒化処理を施した場合と比較して、曲げ矯正性と疲労強度が向上する。
窒化前に焼入れ焼戻し処理を施すことで、窒化後の疲労強度と曲げ矯正性を両立させる技術が、特開2009−167505号公報、及び特開2011−42846号公報に開示されている。特開2009−167505号公報では、Vを含有し、さらにCrとAlの含有量を制限した鋼を焼入れ焼戻しした後に軟窒化する軟窒化用粗形品、及びクランク軸が開示されている。この技術では、V炭窒化物のピンニング作用により、焼入れ時のオーステナイト粒径が微細化し、曲げ矯正性が向上する。さらに、鋼の組織をパーライト主体の組織とすることで、優れた疲労強度を具備させることが出来ている。
特開2011−42846号公報には、成分を最適化した鋼を用いて、窒化後の表層近傍の硬さを制御し、かつ化合物層深さを薄くすることで高い疲労強度と曲げ矯正性を得ることが可能な軟窒化部品が開示されている。
前述の特開2004−162161号公報記載の技術は、鋼成分を最適化することで、窒化後の窒化層の硬さ分布と、窒化の影響の及ばない芯部の硬さを制御しているが、鋼組織の最適化がなされていないため、十分に高いレベルで疲労強度と曲げ矯正性を両立できているとは言い難い。
特開2009−167505号公報で示される技術では、V炭窒化物のピンニング効果を活用し、焼入れ時のオーステナイト粒径を微細化させることで疲労強度と曲げ矯正性の両立を図っている。ところが、焼入れ焼戻し処理における一般的な加熱温度は、V炭窒化物の固溶温度に近いことから、焼入れ時の加熱温度が変化すると機械的特性にばらつきが生じる。
特開2011−42846号公報記載の技術は、化合物層を薄くするために、特殊な装置を用いて窒化時のガス組成の制御を行い、特殊な条件で窒化処理を実施する必要がある。また、窒化後に化合物層を除くための加工を施すためにコストが高くなる。
十分に優れた曲げ矯正性を鋼に具備させるためには、窒化後の表層硬さが高くなり過ぎないようにする必要がある。本発明者らは、表層硬さを過度に高くせずに疲労強度を高めるためには、窒化時に導入される圧縮残留応力を大きくすればよいと考え、圧縮残留応力を大きくする手法について検討を行った。その結果、下記(a)〜(g)の知見を得た。
(a)残留応力を高めるための方法の一つは、窒化物形成元素の含有量を多くして、窒化後の合金窒化物の生成量を増やすことである。一方、窒化物形成元素の含有量が多い程、窒化後の表層硬さは高くなり、同時に曲げ矯正性が劣化する。
(b)合金窒化物は微細であればあるほど、鋼に対する強化能が大きくなる。一方、合金窒化物の析出に起因する残留応力の大きさは、合金窒化物のサイズによらず、総量によって決まる。すなわち、所定の硬化量を得る場合、少量の微細な合金窒化物を活用するよりも、多量の粗大な合金窒化物を活用して鋼を強化した方が、導入される残留応力は大きくなる。
(c)残留応力を高めるための方法のもう一つは、鋼中にセメンタイトを分散させることである。セメンタイトを分散させた鋼を窒化すると、導入される窒素量が増大し、大きな残留応力を導入できる。
(d)鋼中で合金窒化物を形成しうる合金元素の内、窒素との相互作用が比較的弱い元素であるMnは、適度に粗大化した合金窒化物を形成しやすい。一方、窒素との相互作用が比較的強い元素であるCr、Al、V等の含有量が多くなりすぎると、微細な合金窒化物が生成しやすい。
次に発明者らは、合金窒化物を適度に粗大化させ、曲げ矯正性を確保したまま疲労強度を向上させるのに適した母材組織について検討した。その結果、下記(e)〜(g)の知見を得た。
(e)曲げ矯正性を確保したまま疲労強度を向上させるためには、窒化層の組織はできるだけ均質な組織であることが好ましい。初析フェライトの混在は好ましくない。組織の一部が初析フェライトであれば、鋼の硬さが不均一になり、疲労特性が劣化するためである。一方、窒化前の組織を、焼入れ焼戻しによって得られる焼戻しマルテンサイトあるいは焼戻しベイナイトとすると、疲労特性は向上する。
(f)窒化前のクランク軸粗形材の組織は、焼入れままのマルテンサイトやベイナイトが主体であってはならない。これらの組織は過飽和な炭素と高い転位密度によって、内在するひずみ量が大きくなる。そのため、これらの組織中では、合金窒化物が微細に析出しやすい。一方、焼入れ後に焼戻しして、内在するひずみ量を低減すれば、合金窒化物を適度に粗大化させやすい。
(g)窒化前のクランク軸粗形材の組織に残留オーステナイトは含まれない方がよい。残留オーステナイトは窒化中に変態することで膨張を生じることがある。残留オーステナイトは窒素濃度が高くなるほど安定して変態しにくくなるため、窒化時の残留オーステナイトの変態による膨張量は、窒化層では少なく、窒化の影響のない芯部では大きくなる。そのため、窒化層の圧縮の残留応力を減少させてしまう。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(6)に示すクランク軸粗形材、窒化クランク軸、及び窒化クランク軸の製造方法にある。
(1)化学組成が、質量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.01〜0.45%、Mn:1.3〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.005〜0.100%、Cr:0.05〜0.90%、Al:0.001〜0.080%、N:0.003〜0.025%、Ti:0〜0.05%、Nb:0〜0.05%、Mo:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Ni:0〜0.50%、Ca:0〜0.005%、残部:Fe及び不純物であり、表面から10mm深さの組織が、体積%で、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計が50%以上、初析フェライトが10%以下、パーライトが40%以下である、クランク軸粗形材。
(2)前記化学組成が、質量%で、Ti:0.005〜0.05%、及びNb:0.005〜0.05%、からなる群から選択される1種又は2種を含有する、上記(1)に記載のクランク軸粗形材。
(3)前記化学組成が、質量%で、Mo:0.03〜0.50%、Cu:0.05〜0.50%、及びNi:0.05〜0.50%、からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、上記(1)又は(2)に記載のクランク軸粗形材。
(4)前記化学組成が、質量%で、Ca:0.0001〜0.005%、を含有する、(1)〜(3)のいずれかに記載のクランク軸粗形材。
(5)生地の化学組成が、質量%で、C:0.35〜0.70%、Si:0.01〜0.45%、Mn:1.3〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.005〜0.100%、Cr:0.05〜0.90%、Al:0.001〜0.080%、N:0.003〜0.025%、Ti:0〜0.05%、Nb:0〜0.05%、Mo:0〜0.50%、Cu:0〜0.50%、Ni:0〜0.50%、Ca:0〜0.005%、残部:Fe及び不純物であり、表面から10mm深さの組織が、体積%で、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計が50%以上、初析フェライトが10%以下、パーライトが40%以下であり、ビッカース硬さが、生地のビッカース硬さよりも50HV以上高い硬化層を表層に有し、前記硬化層の厚さが200μm以上である、窒化クランク軸。
(6)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のクランク軸粗形材を準備する工程と、前記粗形材を機械加工する工程と、前記機械加工された粗形材を窒化雰囲気で540〜620℃で30〜360分保持する窒化処理工程とを備える、窒化クランク軸の製造方法。
本発明によれば、優れた疲労特性と曲げ矯正性を備えたクランク軸粗形材、窒化クランク軸及びその製造方法が提供され、窒化クランク軸以外の、自動車、産業機械及び建設機械などの機械部品を製造する場合にも応用することができる。
図1は、小野式回転曲げ疲労試験片の正面図である。 図2は、4点曲げ試験片の正面図である。 図3は、4点曲げ試験を説明するための図である。
以下、本発明の一実施形態によるクランク軸粗形材及び窒化クランク軸について詳しく説明する。各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
[化学組成]
本実施形態によるクランク軸粗形材の化学組成は、次の元素を含有する。
C:0.35〜0.70%
炭素(C)は、鋼材の硬さ及び疲労強度を高める。さらに、Cは、セメンタイトとして鋼中に存在し、窒化時に導入される窒素量を増大させ、残留応力を大きくする効果がある。C含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、C含有量が高すぎれば、鋼材中のセメンタイトの体積率が高くなりすぎ、被削性が低下する。したがって、C含有量は0.35〜0.70%である。C含有量の好ましい下限は0.40%であり、さらに好ましくは0.45%である。C含有量の好ましい上限は0.65%であり、さらに好ましくは0.60%であり、さらに好ましくは0.58%である。
Si:0.01〜0.45%
シリコン(Si)は、固溶して鋼材を強化する(固溶強化)。Si含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Si含有量が高すぎれば、窒化処理時において表層の硬さが過剰に高くなる。そのため、鋼材の曲げ矯正性が低下する。さらに、窒化処理時における窒素の拡散が阻害される。したがって、Si含有量は0.01〜0.45%である。Si含有量の好ましい下限は、0.05%であり、さらに好ましくは0.10%であり、さらに好ましくは0.15%である。Si含有量の好ましい上限は0.40%であり、さらに好ましくは0.35%であり、さらに好ましくは0.30%である。
Mn:1.3〜3.0%
マンガン(Mn)は、本発明において最も重要な合金元素である。Mnは窒化処理により鋼材内に導入されたNと結合して窒化物を形成し、表層の硬さを適度に高めながら、大きな圧縮の残留応力を導入する。Mnはさらに、鋼材中でMnSを形成して鋼材の被削性を高める。Mn含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、偏析によって硬さのばらつきが大きくなる。したがって、Mn含有量は1.3〜3.0%である。Mn含有量の好ましい下限は1.4%であり、さらに好ましくは1.5%であり、さらに好ましくは1.6%である。Mn含有量の好ましい上限は2.5%であり、さらに好ましくは2.2%であり、さらに好ましくは2.0%である。
P:0.05%以下
燐(P)は、不純物である。Pは結晶粒界に偏析し、粒界脆化割れを引き起こす。したがって、P含有量はなるべく低い方が好ましい。P含有量の上限は0.05%である。好ましいP含有量の上限は0.02%である。
S:0.005〜0.100%
硫黄(S)は、鋼材中でMnと結合してMnSを形成し、鋼材の被削性を高める。S含有量が低すぎれば上記効果が得られない。一方、S含有量が高すぎれば、粗大なMnSが形成され、鋼材の疲労強度が低下する。したがって、S含有量は0.005〜0.100%である。S含有量の好ましい下限は0.010%であり、さらに好ましくは0.020%であり、さらに好ましくは0.030%である。S含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.070%であり、さらに好ましくは0.060%である。
Cr:0.05〜0.90%
クロム(Cr)は、窒化処理により鋼材内に導入されたNと結合して窒化層中にCrNを形成し、窒化層を強化し、かつ圧縮の残留応力を導入する。Cr含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、窒化層が過度に硬化し、曲げ矯正性が劣化する。したがって、Cr含有量は0.05〜0.90%である。Cr含有量の好ましい下限は0.08%であり、さらに好ましくは0.12%であり、さらに好ましくは0.15%である。Cr含有量の好ましい上限は0.70%であり、さらに好ましくは0.50%であり、さらに好ましくは0.40%である。
N:0.003〜0.025%
窒素(N)は、鋼材に固溶して鋼材の強度を高める。N含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、N含有量が高すぎれば、鋼材中に気泡が生成される。気泡が欠陥となるため気泡の発生は抑制される方が好ましい。したがって、N含有量は0.003〜0.025%である。N含有量の好ましい下限は0.005%である。N含有量の好ましい上限は0.020%であり、さらに好ましくは0.018%である。
Al:0.001〜0.080%
アルミニウム(Al)は鋼を脱酸する元素である。一方、Al含有量が高すぎれば、微細な窒化物が形成され、鋼を過度に硬化し、曲げ矯正性を劣化させる。したがって、Al含有量は0.001〜0.080%である。Al含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Al含有量の好ましい上限は0.060%であり、さらに好ましくは0.050%であり、さらに好ましくは0.040%である。
本実施形態によるクランク軸粗形材の化学組成の残部は、Fe及び不純物である。ここで、不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから混入されるものであって、本実施形態によるクランク軸粗形材に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
[任意元素について]
本実施形態における任意元素のうち、Ti及びNbからなる群は、オーステナイト結晶粒の粗大化防止作用があり、1種又は2種を含有してもよい。
Ti:0〜0.05%
チタン(Ti)は、窒化物や炭窒化物を形成し、熱間鍛造時、焼入れ時の結晶粒の粗大化を抑制する。しかしながらTi含有量が高すぎれば、TiCが生成して鋼材の硬さのばらつきが大きくなる。したがって、Ti含有量は0〜0.05%である。Tiを含有させる場合のTi含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Ti含有量の好ましい上限は0.04%であり、さらに好ましくは0.03%である。
Nb:0〜0.05%
ニオブ(Nb)は、窒化物や炭窒化物を形成し、熱間鍛造時、焼入れ時の結晶粒の粗大化を抑制する。Nbはさらに、熱間鍛造時、焼入れ焼戻し時の再結晶を遅らせ、結晶粒の粗大化を抑制する。しかしながらNb含有量が高すぎれば、炭化物が生成して鋼材の硬さのばらつきが大きくなる。したがって、Nb含有量は0〜0.05%である。Nbを含有する場合、好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Nb含有量の好ましい上限は0.04%であり、さらに好ましくは0.03%である。
本実施形態における任意元素のうち、Mo、Cu及びNiからなる群は、クランク軸粗形材の強度を高める作用があり、1種又は2種以上を含有してもよい。
Mo:0〜0.50%
モリブデン(Mo)は、含有される場合、鋼の焼入れ性を高めることで鋼材の強度を高める。その結果、鋼材の疲労強度が高くなる。しかしながら、Mo含有量が過度に多くなれば、その効果が飽和する上に鋼材のコストが高くなる。したがって、Mo含有量は0〜0.50%である。Mo含有量の好ましい下限は0.03%であり、さらに好ましくは0.05%である。Mo含有量の好ましい上限は0.40%であり、さらに好ましくは0.30%であり、さらに好ましくは0.20%である。
Cu:0〜0.50%
銅(Cu)は、含有される場合、固溶して鋼材の強度を高める。そのため、鋼材の疲労強度が高まる。しかしながら、Cu含有量が過度に多くなると、熱間鍛造時に鋼の粒界に偏析して熱間割れを誘起する。したがって、Cu含有量は0〜0.50%である。Cu含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。Cu含有量の好ましい上限は0.30%であり、さらに好ましくは0.20%である。
Ni:0〜0.50%
ニッケル(Ni)は、含有される場合、固溶して鋼材の強度を高める。そのため、鋼材の疲労強度が高まる。Niはさらに、鋼材がCuを含有する場合に、Cuに起因する熱間割れを抑制する。しかしながら、Ni含有量が多すぎれば、その効果が飽和し、製造コストが高くなる。したがって、Ni含有量は0〜0.50%である。Ni含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。Ni含有量の好ましい上限は0.30%であり、さらに好ましくは0.20%である。
本実施形態によるクランク軸粗形材の化学組成はさらに、任意元素としてCaを含有してもよい。
Ca:0〜0.005%
カルシウム(Ca)は、含有される場合、鋼材の被削性を高める。しかしながら、Ca含有量が高すぎれば、粗大なCa酸化物が生成し、鋼材の疲労強度が低下する。したがって、Ca含有量は0〜0.005%である。上記効果を安定して得るためのCa含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%である。Ca含有量の好ましい上限は0.003%であり、さらに好ましくは0.002%である。
[クランク軸粗形材の微細組織(Microstructure)]
クランク軸軸粗形材は、鋼素材を熱間鍛造でクランク軸に粗成形したものである。本実施形態によるクランク軸粗形材は、窒化処理後に窒化層中の硬さを均一にするとともに、窒化層に生成する合金窒化物を適度に粗大化させるために、窒化の影響が及ぶ表層部の組織を焼戻しマルテンサイト及び焼戻しベイナイトを主体とする組織にすることが必要である。より具体的には、表面から10mm深さの組織における焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計の体積分率が50%以上である必要がある。焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計の体積分率の好ましい下限は60%であり、さらに好ましくは70%であり、さらに好ましくは80%である。
初析フェライトは窒化層の硬さのばらつきの原因となるため、少ない方がよい。本実施形態によるクランク軸粗形材は、表面から10mm深さの組織における初析フェライトの体積分率を10%以下とする必要がある。初析フェライトの体積分率の好ましい上限は8%であり、さらに好ましくは6%である。
フェライトとセメンタイトの混合組織であるパーライトは、合金窒化物を粗大化させるためには好ましい組織であるが、パーライトを構成するブロックと呼ばれる下部組織単位は、フェライトの結晶方位が一定方向に揃っているためと、焼戻しマルテンサイト及び焼戻しベイナイト中のブロックと比べて粗大化しやすいために、疲労特性が劣化することがある。そのため、本実施形態によるクランク軸粗形材は、表面から10mm深さの組織におけるパーライトの体積分率は少ない方が好ましい。パーライト体積分率の好ましい上限は40%であり、さらに好ましくは30%であり、さらに好ましくは20%である。
本実施形態によるクランク軸粗形材は、焼入れと焼戻しを施した鋼材であるため、不可避的に残留オーステナイトが存在する場合があるが、残留オーステナイトは、窒化時に部品を変形させるため好ましくない。そのため、鋼に含まれる表面から10mm深さの組織における残留オーステナイトの体積分率は、5%以下が好ましく、さらに好ましくは0%である。
[窒化クランク軸の微細組織(Microstructure)]
本実施形態による窒化クランク軸は、上述したクランク軸粗形材を機械加工した後に窒化処理を施したものである。窒化クランク軸は、上述した化学組成と微細組織を有する鋼材を生地として、窒化処理によって形成される硬化層を表層に有する。生地とは、窒化クランク軸において、窒化処理によって表面から導入される窒素の影響がない部位、すなわち窒素濃度が一定の部位のことである。窒化クランク軸は、具体的には、ビッカース硬さが、生地の硬さよりも50HV以上高い硬化層を表層に有し、この硬化層の厚さが、200μm以上である。
後述するように、窒化処理は540〜620℃で行われる。この温度域では、鋼の組織は影響を受けない。そのため、窒化クランク軸は、窒素が高濃度に拡散した表層部を除き、クランク軸粗形材の組織とほぼ同じ組織を有する。
[製造方法]
本実施形態によるクランク軸粗形材、窒化クランク軸、及び窒化クランク軸の製造方法の一例を説明する。
本実施形態による窒化クランク軸の製造方法は、鋼素材準備工程と、クランク軸成型工程と、焼入れ焼戻し工程と、機械加工工程と、窒化処理工程とを含む。以下、それぞれの工程を説明する。
[鋼素材準備工程]
上述した化学組成を満たす溶鋼を製造する。製造された溶鋼を用いて、一般的な連続鋳造法により鋳片(スラブ、ブルーム)にする。又は、溶鋼を用いて、造塊法によりインゴットにする。鋳片又はインゴットを熱間加工して、ビレットを製造する。熱間加工は、熱間圧延でもよいし、熱間鍛造でもよい。さらに、ビレットを一般的な条件で加熱、圧延、冷却して棒鋼を製造し、これをクランク軸の素材とする。
[クランク軸成型工程]
製造された上記棒鋼を熱間鍛造でクランク軸の粗形状に成型してクランク軸粗形材の中間品を製造する。熱間鍛造の加熱温度が低すぎれば、鍛造装置に過度の負荷が掛かる。一方、加熱温度が高すぎれば、スケールロスが大きい。したがって、好ましい加熱温度は1000〜1300℃である。
熱間鍛造の好ましい仕上げ温度は900℃以上である。仕上げ温度が低すぎれば、金型への負担が大きくなるためである。一方、仕上げ温度の好ましい上限は、1250℃である。
[焼入れ焼戻し処理]
熱間鍛造後の中間品に対して、焼入れ焼戻し処理を実施してクランク軸粗形材を製造する。このとき、焼入れ温度は、(1)式で表されるA3点よりも10℃低い温度以上、すなわち(A−10)℃以上である。また、焼戻し温度は、550℃以上で、かつ(2)式で表されるA1点以下である。焼戻し時間は30分以上であることが好ましい。
3=910−203C+44.7Si−30Mn−11Cr (1)
1=723−10.7Mn+29.1Si−16.9Ni+16.9Cr (2)
初析フェライトを10%以下にするためには、焼入れ温度は(A−10)℃以上とする必要がある。焼入れ直前の組織をオーステナイト単相とするため、焼入れ温度はA3点以上とすることが好ましい。焼入れ温度は1000℃以下が好ましい。焼入れ温度は950℃以下がさらに好ましく、900℃以下がさらに好ましい。
焼入れによってクランク軸粗形材の組織はマルテンサイトやベイナイトを主体としたものとなる。マルテンサイトやベイナイトは炭素過飽和な状態となる。焼戻し処理によって、マルテンサイトとベイナイトの過飽和炭素を析出させ、続く窒化処理において合金窒化物を適度に粗大化させるためには、550℃以上の温度で焼戻しすることが好ましい。焼戻し温度は600℃以上がさらに好ましく、620℃以上がさらに好ましい。一方、焼戻し時の逆変態を抑制するために、焼戻し温度はA1点以下とする必要がある。
[機械加工]
上述のクランク軸粗形材に対して機械加工を実施して所定のクランク軸形状にする。
[窒化処理]
機械加工されたクランク軸粗形材に対して、窒化処理を実施する。本実施形態では、周知の窒化処理が採用される。窒化処理は例えば、ガス窒化、塩浴窒化、イオン窒化等である。窒化中に炉内に導入するガスは、NH3のみであってもよいし、NH3と、N2及び/又はH2とを含有する混合気であってもよい。また、これらのガスに、浸炭性のガスを含有して、軟窒化処理を実施してもよい。したがって、本明細書にいう「窒化」とは「軟窒化」も含む。
ガス軟窒化処理を実施する場合、例えば、吸熱型変成ガス(RXガス)とアンモニアガスとを1:1に混合した雰囲気中で、均熱温度を540〜620℃にして30〜360分間均熱すればよい。
以上の製造工程により製造された窒化クランク軸は、優れた疲労強度と、優れた曲げ矯正性とを有する。
真空溶解炉を用いて表1に示す化学組成を有する鋼A、Iの150kgのインゴットを製造した。また、真空溶解炉を用いて鋼B〜H、J〜Rの50kgのインゴットを製造した。表中の「−」は、当該元素を添加していないことを示す。
Figure 2017056896
表1中の「A1」、「A3」欄には、それぞれ、式(2)で定義されるA1点(℃)、式(1)で定義されるA3点(℃)が記載されている。
各インゴットを1250℃に加熱した。加熱されたインゴットを熱間鍛造して、55mmの直径を有する棒鋼を製造した。棒鋼を素材として、クランク軸粗形材の熱間鍛造工程を模擬する1200℃加熱、空冷を施した。放冷された丸棒に対して、表2中の一段目の熱処理欄に記載の条件で熱処理を行い、室温付近まで冷却した後に、二段目の熱処理欄に記載の条件で熱処理を行った。一段目の熱処理欄が熱間鍛造ままとなっているものは、熱間鍛造後の素材に熱処理を施さず、そのままの状態の素材から試験片を加工して窒化処理を行った。
[評価試験]
各試験番号の丸棒を用いて、次の試験を実施した。
[硬さ測定及び組織体積率測定]
試験番号1〜18、21〜24の二段階の熱処理後の丸棒のR/2位置から、横断面を被検面とするサンプルを採取した。また、試験番号19、20の熱間鍛造後の丸棒のR/2位置から、横断面を被検面とするサンプルを採取した。R/2の位置は、直径55mmの丸棒の表面から13.75mm深さである。採取されたサンプルの任意の7点でJIS Z 2244に基づくビッカース硬さ(HV)を測定した。試験力は9.8Nであった。得られた7つのビッカース硬さの平均値を、各試験番号の窒化前硬さと定義した。硬さが300HV以下である場合、被削性に優れると判断した。
硬さ測定後のサンプルは、ナイタルで腐食し組織を現出させた。その後、倍率1000倍の光学顕微鏡写真を撮影し、画像解析から各組織の分率を求めた。表面から13.75mm深さの組織が、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計が50%以上、初析フェライトが10%以下、パーライトが40%以下である場合、それより浅い位置である、表面から10mm深さの組織は、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計が50%以上、初析フェライトが10%以下、パーライトが40%以下であると判断した。
[小野式回転曲げ疲労試験片及び4点曲げ試験の試験片の作成]
各試験番号の丸棒のR/2位置から、丸棒の長手方向に沿って、図1に示す小野式回転曲げ疲労試験片を複数採取した。図中の長さL1は80mmであり、直径D1は12mmであった。試験片中央部の切り欠き部の曲率半径R1は3mmであり、切り欠き底での試験片横断面の直径は8mmであった。
さらに、各試験番号の丸棒のR/2位置から、丸棒の長手方向に沿って図2に示す4点曲げ試験片を採取した。4点曲げ試験片の長さL2は180mmであり、直径D2は15mmであった。試験片中央部の切り欠き部の曲率半径R2は4mmであり、切り欠き底での試験片横断面の直径は12mmであった。
採取された小野式回転曲げ疲労試験片及び4点曲げ試験片に対して、表2に示す条件(熱処理温度及び均熱時間)で窒化処理を実施した。具体的には、試験片を熱処理炉に挿入し、炉内を表2の「窒化条件」欄の熱処理温度(℃)まで昇温しながら、アンモニアガスとRXガスを流量が1:1になるようにして炉内に導入した。そして、表2の「窒化条件」欄に示す熱処理温度(℃)及び保持時間(h)で窒化処理を実施した。保持時間が経過した後、試験片を熱処理炉から取り出し、100℃の油で急冷した。
[硬化層深さ測定]
上述の窒化処理がされた4点曲げ試験片の平行部から、横断面を被検面とするサンプルを採取した。採取されたサンプルの中心部のビッカース硬さを測定数7点、試験力9.8Nで測定した。サンプルの窒化層のビッカース硬さ分布を測定した。測定範囲は、最表面から深さ1.20mmまでとして、50μmピッチで測定を行った。各深さ位置での測定は測定数3点、試験力は2.9Nで行った。測定した結果、表面からの深さが1.20mmのビッカース硬さと、中心部のビッカース硬さは変わらなかった。そこで、中心部のビッカース硬さを生地の硬さとし、中心部の硬さよりも50HV以上高い表面からの領域を硬化層と定義し、各試験番号の硬化層深さを算出した。なお、各測定深さ位置の間の硬さ分布は、両側の測定値を結ぶ直線で近似して、硬化層深さを算出した。
[小野式回転曲げ疲労試験]
上述の窒化処理がされた小野式回転曲げ疲労試験片を用いて、小野式回転曲げ疲労試験を実施した。JIS Z2274(1978)に準拠した回転曲げ疲労試験を室温(25℃)の大気雰囲気中において実施した。試験は、回転数3000rpmの両振り条件で実施した。繰り返し数1.0×107回まで破断しなかった試験片のうち、最も高い応力を、その試験番号の疲労強度(MPa)と定義した。疲労強度が570MPa以上である場合、疲労強度に優れると判断した。
[4点曲げ試験]
上述の窒化処理がされた4点曲げ試験片を用いて、4点曲げ試験を室温、大気中で実施した。4点曲げ試験の配置を図3に模式的に示す。図3中の距離d1〜d5はそれぞれ、21.5mm、51.0mm、17.5mm、90mm、及び180mmである。試験時の支点は、試験片軸方向の両端部から各21.5mmの位置、及び各72.5mm位置とした。試験片の切り欠き底のひずみ量を測定するため、切り欠き底の中央に試験片の軸方向と平行にひずみゲージを貼付した。軸方向中心に近い2箇所の支点に対して、押し込み速度0.5mm/分の押し込みストロークを与えた。押し込みストロークが増えるにしたがって切り欠き底のひずみ量は増加し、やがて切り欠き底に有害なき裂が発生すると、押し込みストロークの増分に対するひずみの増分が急激に大きくなる。そこで、上記押し込み速度で押し込みストロークを増加し、押し込みストロークが0.01mm増えた際のひずみゲージの値の増分が2400με以上となった時に試験片にき裂が発生したとして、その直前のひずみ量を、矯正可能ひずみ量(με)と定義した。矯正可能ひずみ量が12500με以上である場合、曲げ矯正性に優れると評価した。
[試験結果]
表2に試験結果を示す。表2中の「組織分率」は鋼を構成する各組織の分率(体積%)を意味する。「調質組織」は、焼戻しマルテンサイトの分率と焼戻しベイナイトの分率との和を意味する。「疲労強度」は小野式回転曲げ試験で得られた疲労強度(MPa)を意味する。
Figure 2017056896
表2を参照して、試験番号1〜15では、化学組成と鋼の微細組織が本発明の範囲内である。これらの試験番号のものは、疲労強度が570MPa以上であり、ひずみ量が13659με以上であり、疲労強度と曲げ矯正性が両立できていることが分かる。これに対して、本発明の規定から外れた試験番号16〜24の場合には、目標とする性能が得られていない。
試験番号16〜18の化学組成は本発明の範囲内であったものの、鋼の微細組織が本発明の範囲外であった。そのため、疲労強度が535MPa以下と低い。
試験番号19及び20の化学組成は本発明の範囲内であったものの、熱間鍛造したままで、熱処理を実施しなかったため、鋼の微細組織が本発明の範囲外であった。そのため、矯正可能ひずみ量が9001με以下であり、曲げ矯正性が劣る。
試験番号21の鋼組織は本発明の範囲内であったものの、C量が本発明の範囲より低いため、疲労強度が560MPaと目標よりも低く、矯正可能ひずみ量が10182μεと曲げ矯正性が劣る。
試験番号22の鋼組織は本発明の範囲内であったものの、C量が本発明の範囲より高いため、窒化前の硬さが302Hvと高く被削性が劣る。
試験番号23の鋼組織は本発明の範囲内であったものの、Mn量が本発明の範囲より低いため、疲労強度が515MPaと低い。
試験番号24の鋼組織は本発明の範囲内であったものの、Cr量が本発明の範囲より高いため、ひずみ量が7512μεと低く、曲げ矯正性が劣る。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (6)

  1. 窒化クランク軸用のクランク軸粗形材であって、化学組成が、質量%で、
    C :0.35〜0.70%、
    Si:0.01〜0.45%、
    Mn:1.3〜3.0%、
    P :0.05%以下、
    S :0.005〜0.100%、
    Cr:0.05〜0.90%、
    Al:0.001〜0.080%、
    N :0.003〜0.025%、
    Ti:0〜0.05%、
    Nb:0〜0.05%、
    Mo:0〜0.50%、
    Cu:0〜0.50%、
    Ni:0〜0.50%、
    Ca:0〜0.005%、
    残部:Fe及び不純物であり、
    表面から10mm深さの組織が、体積%で、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計が50%以上、初析フェライトが10%以下、パーライトが40%以下である、クランク軸粗形材。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Ti:0.005〜0.05%、及び
    Nb:0.005〜0.05%、
    からなる群から選択される1種又は2種を含有する、請求項1に記載のクランク軸粗形材。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    Mo:0.03〜0.50%、
    Cu:0.05〜0.50%、及び
    Ni:0.05〜0.50%、
    からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、請求項1又は2に記載のクランク軸粗形材。
  4. 前記化学組成が、質量%で、
    Ca:0.0001〜0.005%、
    を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のクランク軸粗形材。
  5. 生地の化学組成が、質量%で、
    C :0.35〜0.70%、
    Si:0.01〜0.45%、
    Mn:1.3〜3.0%、
    P :0.05%以下、
    S :0.005〜0.100%、
    Cr:0.05〜0.90%、
    Al:0.001〜0.080%、
    N :0.003〜0.025%、
    Ti:0〜0.05%、
    Nb:0〜0.05%、
    Mo:0〜0.50%、
    Cu:0〜0.50%、
    Ni:0〜0.50%、
    Ca:0〜0.005%、
    残部:Fe及び不純物であり、
    表面から10mm深さの組織が、体積%で、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計が50%以上、初析フェライトが10%以下、パーライトが40%以下であり、
    ビッカース硬さが、生地のビッカース硬さよりも50HV以上高い硬化層を表層に有し、
    前記硬化層の厚さが200μm以上である、窒化クランク軸。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のクランク軸粗形材を準備する工程と、
    前記粗形材を機械加工する工程と、
    前記機械加工された粗形材を窒化雰囲気で540〜620℃で30〜360分保持する窒化処理工程とを備える、窒化クランク軸の製造方法。
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