JP6477614B2 - 軟窒化用鋼および部品ならびにこれらの製造方法 - Google Patents

軟窒化用鋼および部品ならびにこれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、軟窒化用鋼およびその軟窒化用鋼から得られる部品、さらにはこれらの製造方法に関し、特に軟窒化処理後において疲労特性に優れ、自動車や建設機械用部品として好適な材料を提供しようとするものである。
自動車の歯車等の機械構造部品には優れた疲労特性が要求されるため、表面硬化処理が施されるのが通例である。表面硬化処理としては、浸炭処理や高周波焼入処理、窒化処理などが良く知られている。
これらのうち、浸炭処理は、高温のオーステナイト域においてCを侵入・拡散させることから、深い硬化深さが得られ、疲労強度の向上に有効である。しかしながら、浸炭処理により熱処理歪が発生するため、静粛性等の観点から厳しい寸法精度が要求される部品に対しては、その適用が困難であった。
また、高周波焼入処理は、高周波誘導加熱により表層部を焼入れする処理であるため、やはり熱処理歪みが発生し、浸炭処理と同様に寸法精度の面で問題があった。
一方、窒化処理は、Ac1変態点以下の比較的低温度域で窒素を侵入・拡散させて表面硬さを高める処理であるため、上記したような熱処理歪みが発生する、おそれはない。しかしながら、処理時間が50〜100時間と長く、また処理後に表層の脆い化合物層を除去する必要がある、という問題があった。
そのため、窒化処理と同程度の処理温度で処理時間を短くした、いわゆる軟窒化処理が開発され、近年では機械構造用部品などを対象に広く普及している。この軟窒化処理は、500〜600℃の温度域でNおよびCを同時に侵入・拡散させて、表面を硬化するものであり、従来の窒化処理に比べて処理時間を半分以下にすることが可能である。
しかしながら、軟窒化処理においては、その処理温度および時間の問題から、Nの鋼中への拡散に伴い形成される硬化層の深さを十分に得ることが困難である。このため十分な疲労強度を得るためには、Nの拡散が及ばない芯部の硬度上昇が有力な手段となり得る。しかしながら、軟窒化処理は鋼の変態点以下の温度で処理を行うものであるため、一般的には処理中の芯部硬度上昇は困難である。
従来、軟窒化前の鋼素材中に0.1%以上のCを添加して、芯部の強度を確保することが行われているが、鋼中Cの増大は、軟窒化処理前の鋼素材の硬さを上昇させるために、切削や冷間鍛造などの冷間加工性が著しく阻害されて、完成部品の寸法精度の劣化や、切削、冷間鍛造時の工具の消費を激しくすることに伴う製造コストの増大をもたらすこととなる。
なお、軟窒化処理材の疲労強度の上昇を目的として、芯部硬度を上昇させるために軟窒化処理前に焼入・焼戻し処理を行い、処理前の被削性と軟窒化後の疲労特性を両立させる方法もあるが、焼入れ・焼もどしによって芯部に十分な強度を与えるために製造コストが上昇するのは避けられず、さらに機械加工性の確保も十分とはいえなかった。
このような問題を解決するものとして、特許文献1には、鋼中に、NiやCu,Al、Cr、Tiなどを含有させることにより、軟窒化処理後に高い曲げ疲労強度を得ることを可能にした軟窒化用鋼が提案されている。
すなわち、この鋼は、軟窒化処理により、芯部についてはNi−Al、Ni−Ti系の金属間化合物あるいはCu化合物で時効硬化させる一方、表層部については窒化層中にCr、Al、Ti等の窒化物や炭化物を析出硬化させることにより、曲げ疲労強度を向上させている。
また、特許文献2には、Cuを0.5〜2%含有させた鋼を、熱間鍛造で鍛伸後、空冷して、Cuが固溶したフェライト主体の組織とし、580℃、120分の軟窒化処理中にCuを析出硬化させ、さらにTi、VおよびNb炭窒化物の析出硬化も併用することによって、軟窒化処理後において優れた曲げ疲労特性が得られる軟窒化用鋼が提案されている。
さらに、特許文献3には、Ti−Mo炭化物、またそれらにさらにNb、V、Wの一種または二種以上を含む炭化物を分散させた、軟窒化用鋼が提案されている。
またさらに、特許文献4には、V,Nbを含有する鋼において、窒化前の組織をベイナイト主体の組織とし、窒化前の段階におけるV,Nb炭窒化物の析出を抑制する一方、窒化時にこれら炭窒化物を析出させることにより、芯部硬度を向上させた疲労強度に優れる窒化用鋼材が提案されている。
特開平5−59488号公報 特開2002−69572号公報 特開2010−163671号公報 特開2013−166997号公報
しかしながら、特許文献1に記載の軟窒化鋼は、Ni−Al、Ni−Ti系の金属間化合物やCu等の析出硬化により曲げ疲労強度は向上するものの、加工性の確保が十分とは言い難かった。
また、特許文献2に記載の軟窒化用鋼は、Cu、Ti、V、Nbを比較的多量に添加する必要があるため、生産コストが高いという問題があった。
さらに、特許文献3に記載の軟窒化用鋼は、Ti、Moを比較的多量に含むため、やはり高コストであるという問題があった。
一方、特許文献4に記載の窒化用鋼材は、Nb、Vを添加し、窒化処理時のこれら元素の芯部を含む窒化物析出を利用して窒化処理後の疲労強度上昇を図っている。しかしながら、Nb、Vの添加は合金添加コストを上昇させるとともに、これらの炭窒化物形成に起因する製造性の劣化を引き起こし、製品歩留まりの低下や製造コストの増大をもたらすなどが問題であった。また、Nb、Vの炭窒化物は軟窒化前の鋼中にも存在し、これら硬質な析出物により被削性が低下することも問題であった。
本発明は、上記の問題を有利に解決するものであり、軟窒化処理前の組織を有利に制御することで極めて優れた機械加工性を達成する軟窒化用鋼を、その製造方法とともに提供することを目的とする。
また、本発明は、機械加工後並びに軟窒化処理後にも高い芯部硬さを保持し、もって疲労特性を確保した部品を、その製造方法とともに提供することを目的とする。
さて、本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋼の成分組成および組織の影響について鋭意検討を行った。
その結果、C:0.1質量%未満に制限した鋼の軟窒化前組織を50%超のベイナイト相とすることにより、極めて優れた機械加工性と、高い疲労強度の達成のために必要となる芯部硬さとを高次元でバランスすることが可能であるとの知見を得た。
本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を加えた末に完成されたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.02〜0.10%未満、
Si:1.0%以下、
Mn:0.50〜3.0%、
Cr:0.30〜3.0%、
Mo:0.005〜0.4%、
Al:0.020超〜0.2%、
N:0.0200%以下、
P:0.02%以下および
S:0.06%以下を、下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の成分組成を有し、さらに、ベイナイト相の面積率が50%超である組織を有することを特徴とする軟窒化用鋼。

6.3≦〔Mn〕+2.5×〔Cr〕+20×〔Mo〕≦12 --- (1)
但し、〔 〕は該括弧内の元素の含有量(質量%)
2.前記1に記載の成分組成および組織を有する芯部と、該芯部の成分組成に対して窒素および炭素の含有量が高い成分組成を有する表層部とを有することを特徴とする部品。
3.質量%で、
C:0.02〜0.10%未満、
Si:1.0%以下、
Mn:0.50〜3.0%、
Cr:0.30〜3.0%、
Mo:0.005〜0.4%、
Al:0.020超〜0.2%、
N:0.0200%以下、
P:0.02%以下および
S:0.06%以下を、下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の成分組成を有する鋼材を加熱温度:950〜1250℃、仕上温度:800℃以上の条件で熱間加工し、その後、少なくとも700〜550℃の温度域を0.4℃/s以上の速度で冷却することを特徴とする軟窒化用鋼の製造方法。

6.3≦〔Mn〕+2.5×〔Cr〕+20×〔Mo〕≦12 --- (1)
但し、〔 〕は該括弧内の元素の含有量(質量%)
4.前記3に記載の製造方法にて得られた軟窒化用鋼を、所望の形状に仕上げたのち、処理温度:500〜700℃、処理時間:10分以上の条件で軟窒化処理を施すことを特徴とする部品の製造方法。
本発明によれば、安価な成分系で、機械加工性に極めて優れた軟窒化用鋼を得ることができ、優れた加工後および軟窒化処理後の寸法精度の確保と冷間加工コストの低減を可能とし、また軟窒化処理後は、同様に軟窒化処理を施したJIS SCr420, SCM420材と同等以上の疲労特性を有する部品を得ることができる。
そして、本発明に従い得られた部品は、自動車等の機械構造部品に適用して極めて有用である。
軟窒化部品を製造する製造工程を示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、以下の成分組成に関する「%」表示は、特に断らない限り「質量%」を意味するものとする。
C:0.02%以上0.10%未満
Cは、ベイナイト相の生成および強度確保のために添加する。しかしながら、含有量が0.02%未満の場合、十分な量のベイナイト相面積率が得られないだけでなく、ベイナイトそのものの硬度も不足し、強度確保が困難となるため、0.02%以上添加する必要がある。一方、含有量が0.10%以上になると、生成したベイナイト相の硬さが増加し、機械加工性を著しく低下させるため、C量は0.02%以上0.10%未満の範囲とする。より好ましくは0.05%以上0.10%未満の範囲である。
Si:1.0%以下
Siは、脱酸だけでなく、ベイナイト相の生成に有効なため添加するが、1.0%を超える
とフェライトおよびベイナイト相に固溶し、その固溶硬化により、機械加工性および冷間加工性を劣化させるため、Si量は1.0%以下とする。好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下である。
なお、Siを脱酸に有効に寄与させるためには、添加量を0.01%以上とすることが好ましい。
Mn:0.50%以上3.0%以下
Mnは、鋼の焼入れ性を高め、ベイナイト相を安定的に生成させる作用がある。Mn量が0.50%未満の場合、上記効果は乏しく、他方、MnSの生成量が十分でないため、被削性が低下する。従って、Mn量は0.50%以上添加する。一方、3.0%を超えると機械加工性および冷間加工性を劣化させるので、Mn量は3.0%以下とする。好ましくは1.0%以上2.5%以下、より好ましくは1.5%以上2.5%以下の範囲である。
Cr:0.30〜3.0%
Crは、ベイナイト相の生成に有効であるとともに、硬質な窒化物形成元素であり、軟窒化後の表層硬さの上昇に有効なため添加する。含有量が0.30%未満の場合、ベイナイト相の生成量が少なくなり芯部の硬さが低下し、さらに表層でのCr窒化物形成が不足して表層でも硬さが低下するため、軟窒化処理後の強度確保が困難となる。従って、Cr量は0.30%以上とする。一方、3.0%を超えると機械加工性および冷間加工性を劣化させるので、Cr量は3.0%以下とする。好ましくは0.5〜2.0%、より好ましくは0.5〜1.5%の範囲である。
Mo:0.005〜0.4%
Moは、ベイナイト相を安定に生成させるために有効である。ここに、強度向上のためには0.005%以上の添加を必要とするが、高価な元素であるため0.4%を超えて添加すると、成分コストの上昇を招く。このため、Mo量は0.005〜0.4%の範囲とする。好ましくは0.01〜0.3%、より好ましくは0.04%以上0.2%未満の範囲である。
Al:0.020%超0.2%以下
Alは、軟窒化処理後の表面硬さを高め、かつ有効硬化層深さを深くするのに有用な元素であり、積極的に添加する。また、熱間鍛造時におけるオーステナイト粒成長を抑制することによって、組織を微細化し靭性を向上させる上でも有用な元素である。このような観点から、Alは0.020%を超えて含有させる。一方、0.2%を超えて含有させてもその効果は飽和し、むしろ成分コストの上昇を招く不利が生じるので、Al量は0.2%以下に限定する。好ましくは0.020%超0.1%以下の範囲、より好ましくは0.020%超0.04%以下の範囲である。
N:0.0200%以下
Nは、鋼中で炭窒化物を形成し、軟窒化処理材の強度を向上させるとともに、Alなどとの結合により生成する窒化物が鋼組織の微細化に有用な元素である。従って、0.0020%以上含有させることが好ましい。しかしながら、含有量が0.0200%を超えると、鋼材の延靭性を低下させるとともに、鋳片の表面割れが生じ、鋳片品質が低下する。このため、Nは0.0200%以下に限定する。
P:0.02%以下
Pは、オーステナイト粒界に偏析し、粒界強度を低下させることにより、強度、靭性を低下させる。従って、Pの含有は極力抑制することが望ましいが、0.02%までは許容される。なお、Pを0.001%未満とするには高いコストを要することから、工業的には0.001%まで低減すればよい。
S:0.06%以下
Sは、鋼中でMnSを形成し、被削性を向上させる有用元素であるが、0.06%を超えて含有させると靭性を損なうため、0.06%以下に制限する。好ましくは0.04%以下である。
なお、Sによる被削性向上効果を発現させるためには、S量を0.002%以上とすることが好ましい。
さらに、本発明の成分系において、Mn、CrおよびMoの添加量が必要以上に増加すると、熱間圧延前の素材である鋼片を溶鋼から鋳造する際に鋼片表面割れが発生しやすくなる。従って、鋼片表面割れを抑制するためには、Mn、CrおよびMoの添加量を抑制する必要がある。具体的には、〔Mn〕+2.5×〔Cr〕+20×〔Mo〕にて算出される値(但し、[ ]は該括弧内の元素の含有量(質量%))を12以下とすることが肝要である。この式に従ってMn、CrおよびMoの添加量を制限することによって、鋼片表面割れが抑制される。
また、Mn、CrおよびMoの添加量について、本発明で所期する50%超のベイナイト組織を安定して実現するためには、上記の〔Mn〕+2.5×〔Cr〕+20×〔Mo〕の式で算出される値を6.3以上とする。
以上のことから、下記(1)式を満足させることを要件とした。
6.3≦〔Mn〕+2.5×〔Cr〕+20×〔Mo〕≦12 --- (1)

但し、〔 〕は該括弧内の元素の含有量(質量%)
なお、本発明の鋼において、上記した成分以外は、Feおよび不可避不純物である。不可避不純物のうち、特にTi、VおよびNbは、軟窒化後の強度上昇に有効な反面、軟窒化前の鋼中にも存在することにより被削性を著しく低下させるため、極力含有させない必要がある。すなわち、TiおよびVは好ましくは0.010%未満、Nbは好ましくは0.005%未満とする。
次に、本発明における軟窒用鋼の鋼組織を前記の範囲に限定した理由を説明する。
ベイナイト相:組織全体に対する面積率で50%超
本発明では、ベイナイト相を組織全体に対する面積率で50%超とすることが、極めて重要である。
ベイナイト相は、同一の硬さを有するフェライト−パーライト組織に比べ、切削時の工具寿命などに影響を及ぼす被削性に優れる組織である。その理由は必ずしも明確ではないが、フェライト−パーライトが軟質なフェライトと硬質なパーライトとの混合組織であるのに対して、ベイナイトは比較的均質な組織を形成すること、またフェライトのような軟質な組織が却って切りくず発生に必要なせん断エネルギーを増大させるのに対して、ベイナイト中には比較的微細な炭化物が均一に分散し、これらが応力集中源となってせん断エネルギーを低下させていること、が考えられる。
従って、本発明の軟窒化用鋼の鋼組織、すなわち軟窒化処理前の鋼組織はベイナイト相を主体とする。具体的には、ベイナイト相を組織全体に対する面積率で50%超とする。好ましくは60%超、より好ましくは80%超である。また100%であってもよい。
なお、ベイナイト相以外の組織としては、フェライト相やパーライト相等が考えられるが、これらの組織は少ないほど好ましいのは言うまでもない。
ここに、各相の面積率は、次のようにして求めることができる。すなわち、得られた軟窒化用鋼から試験片を採取し、圧延方向に平行な方向の断面(L断面)について、研磨後ナイタールで腐食し、光学顕微鏡(200倍)または走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる、断面組織観察(200倍の光学顕微鏡組織観察)により相の種類を同定し、各相の面積率を求める。
次に、本発明の軟窒化用鋼およびこれを用いた部品の製造工程について説明する。
図1に、本発明に係る軟窒化用鋼(例えば、棒鋼)を用いて部品を製造する代表的な製造工程を示す。ここで、S1は素材となる棒鋼製造工程、S2は搬送工程、S3は製品(軟窒化部品)仕上げ工程である。
まず、棒鋼製造工程(S1)で鋼塊を熱間圧延して棒鋼とし、品質検査後、出荷する。
そして、搬送(S2)後、製品(軟窒化部品)仕上げ工程(S3)において、該棒鋼を所定の寸法に切断し、熱間鍛造あるいは冷間鍛造を行い、必要に応じてドリル穿孔や旋削等の切削加工で所望の形状(例えば、ギア製品やシャフト部品)としたのち、軟窒化処理を行って、製品(部品)とする。
また、熱間圧延材をそのまま旋削やドリル穿孔等の切削加工で所望の形状に仕上げ、その後軟窒化処理を行い製品とすることもある。なお、熱間鍛造の場合、熱間鍛造後に冷間矯正が行われる場合がある。また、最終製品にペンキやメッキ等の皮膜処理がなされる場合もある。
本発明の軟窒化用鋼の製造方法では、軟窒化処理直前の熱間加工工程において、熱間加工時の加熱温度、加工温度を特定の条件とすることにより、前述したようなベイナイト相主体の組織とする。
ここに、熱間加工とは、主に熱間圧延または熱間鍛造を意味するが、熱間圧延後さらに熱間鍛造を行ってもよい。また、熱間圧延後、冷間鍛造を行ってもよい。
ここで、軟窒化処理直前の熱間加工工程が熱間圧延工程である場合、すなわち熱間圧延後に熱間鍛造を行わない場合は、熱間圧延工程において以下に示す条件を満足させることが好ましい。
圧延加熱温度:950〜1250℃
熱間圧延工程では、圧延材(冷間鍛造および/または切削加工による部品の素材となる棒鋼)に微細析出物が析出し鍛造性を損なわないよう、溶解時から残存する炭化物を固溶させる。
ここで、圧延加熱温度が950℃に満たないと、溶解時から残存する炭化物が固溶し難くなる。一方、1250℃を超えると、結晶粒が粗大化して鍛造性が悪化しやすくなる。このため、圧延加熱温度は950℃〜1250℃の範囲とすることが好ましい。
圧延仕上げ温度:800℃以上
圧延仕上げ温度が800℃未満の場合、フェライト相が生成するため、軟窒化処理前に組織全体に対する面積率で50%超を満足するベイナイト相を生成させる上で不利となる。また、圧延負荷も高くなる。従って、圧延仕上げ温度は800℃以上とすることが好ましい。なお、熱間圧延後のオーステナイト粒の極端な粗大化を防止する観点から、上限値については、1100℃程度とすることが好ましい。
圧延後の少なくとも700〜550℃の温度域における冷却速度:0.4℃/s以上
鋼中のベイナイト組織の面積率増大を目的として、少なくともフェライト−パーライト変態が活発となる温度範囲である700〜550℃の温度域においては、圧延後の冷却速度を、フェライト変態を抑制し得る限界冷却速度である0.4℃/s以上の速度とする必要がある。なお、上限値については、200℃/s程度とすることが好ましい。
また、窒化処理直前の熱間加工工程が熱間鍛造工程である場合、すなわち熱間鍛造のみを行う場合または熱間圧延後に熱間鍛造を行う場合は、熱間鍛造工程において以下に示す条件を満足させる。
なお、熱間鍛造前に熱間圧延を行う場合には、熱間圧延条件として必ずしも上記した条件を満足していなくてもよい。
熱間鍛造条件
この熱間鍛造では、ベイナイト相を組織全体に対する面積率で50%超とするため、および熱間鍛造後の冷間矯正や被削性の観点から微細析出物が析出しないようにするため、熱間鍛造時の加熱温度を950〜1250℃、そして鍛造仕上げ温度を800℃以上とすることが好ましい。
さらに、熱間鍛造後の冷却速度を少なくとも700〜550℃の温度域において0.4℃/s以上とすることは上記と同様に重要である。なお、上限値については、200℃/s程度とすることが好ましい。
ついで、得られた圧延材または鍛造材に対して切削加工等を施して部品形状とし、その後、以下の条件で軟窒化処理を行う。
軟窒化処理(析出処理)条件
軟窒化処理は、微細析出物を析出させるように、処理温度:500〜700℃、処理時間:10分以上の条件で行う。ここに、軟窒化処理温度を500〜700℃の範囲とするのは、500℃に満たないと鋼中へのNの拡散速度が十分に得られず、一方700℃を超えるとオーステナイト域となり軟窒化が困難となるからである。より好ましくは550〜630℃の範囲である。
なお、軟窒化処理では、NとCを同時に浸入・拡散させるため、NH3やN2といった浸窒性ガスと、CO2やCOといった浸炭性ガスとの混合雰囲気、例えばNH3:N2:CO2=50:45:5の雰囲気で軟窒化処理を行えばよい。塩浴、プラズマ窒化などの活用も可能である。
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
表1に示す成分組成の鋼を150kg真空溶解炉にて溶製し、1150℃加熱後、圧延仕上げ温度:970℃の条件で熱間圧延し、その後0.9℃/sの速度で室温まで冷却し、50mmφの棒鋼とした。なお、鋼種OはJIS SCr420に相当する鋼である。
これらの素材をさらに、1200℃に加熱後、仕上げ温度:1100℃の条件で熱間鍛造して、40mmφの棒鋼とし、その後、700〜550℃の範囲での冷却速度を表2に示す通りとして、室温まで冷却した。
かくして得られた熱間鍛造材について、被削性、特にドリル加工性をドリル切削試験により評価した。すなわち、熱間鍛造材を20mm厚に切断したものを試験材として、JIS高速度工具鋼SKH51の6mmφのストレートドリルで、送り:0.15mm/rev、回転数:795rpmの条件で、1断面当たり5箇所の貫通穴を開け、ドリルが切削不能になるまでの総穴数で評価した。
また、上記した熱間鍛造材について、組織観察および硬度測定を行った。組織観察では、前述した方法により、相の種類を同定するとともに、各相の面積率を求めた。
硬度測定では、ビッカース硬度計を用い、JIS Z 2244に準拠して芯部の硬さを2.94N(300gf)の試験荷重で5点測定し、その平均値を硬さHVとした。
ついで、上記の熱間鍛造後、さらに軟窒化処理を施した。
軟窒化処理は、NH3:N2:CO2=50:45:5の雰囲気で570〜600℃に加熱し、3.5時間保持することによって行った。
かくして得られた熱処理材について、組織観察、硬度測定および疲労特性評価を行った。
ここで、組織観察では、軟窒化処理前と同様、前述した方法により、相の種類を同定するとともに、各相の面積率を求めた。
硬度測定では、上記熱処理材の表面硬さを表面から0.05mmの位置で、芯部硬さを中心部(芯部)でそれぞれ測定した。また、表面硬さおよび芯部硬さの測定はいずれも、ビッカース硬度計を用い、JIS Z 2244に準拠して芯部の硬さを2.94N(300gf)の試験荷重で5点測定し、その平均値をそれぞれ表面硬さHV、芯部硬さHVとした。さらに、有効硬化層深さは、HV400となる表面からの深さと定義して、測定した。
疲労特性評価は、小野式回転曲げ疲労試験により行い、107回で未破断の疲労強度(疲労限)を求めた。疲労試験は、上記熱間鍛造材より切欠き付き試験片(ノッチR:1.0mm、ノッチ径:8mm、応力集中係数:1.8)を採取し、この試験片に対して上記した軟窒化処理および浸炭処理を施した熱処理材を用いて行った。
表2に試験結果を示す。No.1〜4が発明例、No.5〜15が比較例、No.16がJIS SCr420相当鋼に軟窒化処理を施した従来例である。
Figure 0006477614
Figure 0006477614
表2から明らかなように、発明例No.1〜4は、従来例No.16よりも優れた軟窒化処理前のドリル加工性を示した。また、発明例No.1〜4はいずれも、従来例No.16に比べて、同等以上の疲労強度を得た。
これに対し、比較例No.5〜15は成分組成あるいは得られた鋼組織が本発明範囲外であったため、ドリル加工性、疲労強度のいずれか、あるいはその両方で劣っている。
すなわち、No.5は、熱間鍛造後の冷却速度が遅いため、適正量のベイナイト相が得られず、発明例に比較してドリル加工性と軟窒化後の疲労強度がともに劣る。
No.6は、式(1)が発明範囲(上限)から外れており、連続鋳造した鋼片に表面割れが発生したため、以降の圧延を中止した。
No.7は、式(1)が好適範囲(下限)に満たず、適正量のベイナイト相が得られなかった。
No.8はCが適正範囲を超えており、式(1)が本発明の好適範囲であるにもかかわらず連続鋳造した鋼片に表面割れが発生したため、以降の圧延を中止した。
No.9ではCが適正範囲を超え、一方で式(1)が本発明の好適範囲の下限に満たず、結果的に連続鋳造、熱間加工とも問題なく進行して、最終部品まで製造が可能であったが、軟窒化処理前の熱間鍛造材の硬さが増加し、ドリル加工性が低下している。
No.10はC量が適正範囲下限に満たず、疲労強度が従来例よりも劣化している。
No.11は、Si量およびMn量が適正範囲を超えているため、窒化処理前の熱間鍛造材の硬さが増加し、ドリル加工性が従来例No.16よりも低下している。
No.12〜14は、Mn,Cr,Mo量のいずれかが適正範囲に満たないため、式(1)を満足することが出来ず、軟窒化処理前の熱間鍛造材の鋼組織がフェライト相−パーライト相とベイナイトとの混合組織となってとなっている。このため、組織中のベイナイト分率が本発明の好適範囲を満足せず、ドリル加工性と疲労特性が低下している。
No.15は、Al量が適正範囲に満たないため、疲労強度が低下している。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.02〜0.10%未満、
    Si:1.0%以下、
    Mn:0.50〜3.0%、
    Cr:0.30〜3.0%、
    Mo:0.005〜0.4%、
    Al:0.020超〜0.2%、
    N:0.0200%以下、
    P:0.02%以下および
    S:0.06%以下を、下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の成分組成を有し、さらに、ベイナイト相の面積率が50%超である組織を有することを特徴とする軟窒化用鋼。

    6.3≦〔Mn〕+2.5×〔Cr〕+20×〔Mo〕≦12 --- (1)
    但し、〔 〕は該括弧内の元素の含有量(質量%)
  2. 請求項1に記載の成分組成および組織を有する芯部と、該芯部の成分組成に対して窒素および炭素の含有量が高い成分組成を有する表層部とを有することを特徴とする部品。
  3. 質量%で、
    C:0.02〜0.10%未満、
    Si:1.0%以下、
    Mn:0.50〜3.0%、
    Cr:0.30〜3.0%、
    Mo:0.005〜0.4%、
    Al:0.020超〜0.2%、
    N:0.0200%以下、
    P:0.02%以下および
    S:0.06%以下を、下記式(1)を満足する範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の成分組成を有する鋼材を加熱温度:950〜1250℃、仕上温度:800℃以上の条件で熱間加工し、その後、少なくとも700〜550℃の温度域を0.4℃/s以上の速度で冷却して、ベイナイト相の面積率が50%超である組織とすることを特徴とする軟窒化用鋼の製造方法。

    6.3≦〔Mn〕+2.5×〔Cr〕+20×〔Mo〕≦12 --- (1)
    但し、〔 〕は該括弧内の元素の含有量(質量%)
  4. 請求項3に記載の製造方法にて得られた軟窒化用鋼を、所望の形状に仕上げたのち、処理温度:500〜700℃、処理時間:10分以上の条件で軟窒化処理を施すことを特徴とする部品の製造方法。
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