JP3546284B2 - 窒化用鋼および機械構造部品の製造方法 - Google Patents
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Description
この発明は、耐はく離性に優れた化合物層を形成する窒化処理に供する、窒化用鋼とくに耐摩耗性、耐疲労性、切削性および熱間鍛造性に優れたクランクシャフトなどの機械構造部品の製造に有利に適合する窒化用鋼、そして該窒化用鋼を用いた機械構造部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、耐摩耗性が要求される機械構造部品には、表面硬化処理が施されるのが通例である。この表面硬化方法としては、浸炭処理、高周波焼入れ処理および窒化処理がよく知られている。
【0003】
すなわち、浸炭処理は、高温のオーステナイト域においてCを侵入・拡散させるために、深い硬化深さが得られるが、熱処理歪みが問題となるところから、厳しい寸法精度の要求される機械構造用部品には、その適用が困難であった。また、高周波焼入れ処理は、高周波誘導加熱により表層部を焼入れする処理であるが、浸炭処理と同様に寸法精度に劣るという問題を残していた。さらに、窒化処理は、A1 変態点以下の温度域で窒素を侵入・拡散させて表面硬さを高める処理であるが、処理時間が50〜100 時間と長く、また処理後に表層の脆い化合物層を除去する必要があった。
【0004】
そこで、処理温度が低くかつ処理時間の短い窒化処理、いわゆる軟窒化処理が注目され、近年では機械構造用部品などを対象に急速に普及しつつある。この処理は、500 〜600 ℃の温度域でNとCを同時に侵入・拡散させて、表面を硬化するものであり、従来の窒化処理と比較して半分以下の処理時間で済む利点がある。
【0005】
ところが、現在、軟窒化処理に供されている、機械構造用炭素鋼や低合金鋼では、窒化処理後の化合物の厚みが均一ではないために、耐はく離性および耐疲労性が未だ不十分である。すなわち、機械構造用炭素鋼などは、フェライト−パーライト組織になるのが普通であるが、この機械構造用炭素鋼に、鉄と窒素とを反応させて表面に耐磨耗性に優れた化合物層を形成する、窒化処理を施すと、フェライトとパーライトとで窒素の拡散速度が異なるために、フェライト相およびパーライト相における化合物層の形成深さが異なる結果、化合物層の厚さは不均一になる。
【0006】
この問題を回避するために、従来は組織を微細化して窒化深さを平均化することを所期して、焼ならし処理を必須としていた。この焼ならし処理は、次工程の切削等の加工を容易にするために、硬さを低減する目的も兼ねている。例えば、クランクシャフトなどの機械構造部品は、機械構造用炭素鋼のブルームを連続鋳造し、熱間圧延を施した後、熱間鍛造、次いで焼ならし処理を行ってから、切削加工し、その後窒化処理を施すのが一般的である。
【0007】
この焼ならし処理で組織を微細化することによって、確かに化合物層厚の変動幅を小さくすることはできるが、化合物層厚の変動そのものを抑えることはできないから、化合物層厚が不均一になることは避けられない。従って、化合物層の耐はく離性および耐疲労性は、未だ満足する水準に達していないのである。
【0008】
一方、近年の省エネルギーの立場から、熱処理工程などを省略することによるコストダウンの要求が強く、上記の焼ならし処理についても、その省略が検討されている。
【0009】
ここに、特開昭63−216950号公報では、化学組成の規制によって、表面硬さおよび硬化深さの向上を非調質の下に達成する技術が開示されている。しかし、この手法では、化学成分の組成範囲が広くて目的を達成することが難しい上、十分な化合物層の耐はく離性が得られないところに問題が残る。
【0010】
同様に、化学組成を規制して、組織をフェライト・パーライト主体の組織とすることにより、硬化性の向上および非調質化に併せて、熱処理歪みの低減を図ることが、特開平8−176733号公報に記載されている。しかし、この手法をもってしても、化合物層の耐はく離性については十分な特性が得られない。さらに、機械構造用部品の実生産では、熱間鍛造後に複数の部品を同一のバスケット等に入れて放冷する場合もあり、各部品の製造工程によって冷却速度の範囲が異なることが多々ある。そのため、フェライト・パーライト組織を有する場合、それらの組織分率や粒径が冷却速度によって異なるため、上記手法では冷却速度を厳密に管理しなくてはならない不利もある。
【0011】
また、特開昭60−92450号公報には、焼ならし処理を省略して熱間鍛造後の加工(切削)性を確保するために、窒化処理工程において、時効硬化処理を兼ねた析出強化を利用して、部品の心部強度を確保することが、開示されている。しかし、この手法では、熱間鍛造後の冷却速度によりミクロ組織が異なるため、製品に際しては厳密な冷却速度の管理が必要となる他、この成分系をもつ鋼材では鍛造後の冷却過程でCuが析出し芯部強度が上昇するため、焼ならし処理を省略している一方で、切削工程の前に溶体化処理が必要となるため省エネルギー化の要求に対する回答とはなり得ない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、熱間加工あるいは熱間鍛造のままで切削性に優れ、かつ窒化処理、とりわけ軟窒化処理によっても化合物層の厚みを均一にすることによって、化合物層の耐はく離性に優れた、窒化用鋼を提供するところにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記目的を達成するために種々の検討を行った。まず、フェライト・パーライト混合組織を有する従来鋼を用いて、種々の粒径を持つ試験材を作製し、これらに軟窒化処理を施した結果、組織の粒径が大きくなるほど、化合物層の耐はく離性に劣ることが明らかとなった。次に、フェライトとパーライトの分率が異なる試験材を作製し、これらに軟窒化処理を施した結果、フェライト分率が大きくなるほど、換言すると、単一組織に近くなるほど、耐はく離性が向上することが明らかとなった。すなわち、従来技術において耐はく離性の改善が不十分であったのは、窒化処理後の製品に、例えば矯正等を行った場合に、ミクロ的な変形能が組織によって異なるために、化合物層がそれぞれの変形に追従できずに剥離するためであることが判明した。
【0014】
そこで、組織を均一化する手法について検討したところ、低炭素とし、かつ焼入れ性向上元素を適量添加することにより、熱間鍛造後の冷却速度に依存することなく均一なベイナイト組織が得られることがわかった。一方、切削性は、組織を低炭素ベイナイトとしても改善されなかった。これは、ベイナイト中の比較的大きな炭化物が工具寿命を低減させているためである。従って、切削性向上のためには、大きな炭化物の生成をできるだけ抑制する必要があり、炭素量をさらに制限することにより、この問題も解決できることが明らかとなった。同時に、炭素量を低減することにより、軟窒化処理時の窒素拡散深さが深くなり、同一処理時間で従来鋼よりも深い窒化深さが得られることも明らかになった。しかし、これだけでは芯部強度が低く高強度部品に対応することが困難であることから、軟窒化処理後の高強度化について検討し、析出強化元素としてCuを添加することによって窒化処理時の強度上昇が可能であることおよび、Cu添加により切削時の工具寿命を大幅に増大させる作用があることを明らかにした。また、Cuは軟質のε-Cu として非常に微細に析出するため、従来法のように硬質析出物を用いた析出強化鋼とは異なり疲労特性にも優れることも明らかにした。
【0015】
以上の検討結果から、炭素量を制限しかつ焼入れ性向上元素を添加して低炭素ベイナイト組織とすることによって、組織の冷却速度依存性をなくし、良好な化合物層の耐はく離性を実現し、さらにCuを添加することにより、切削性が良好となる他、軟窒化処理後の強度上昇が可能となる知見を新たに得たのである。
【0016】
すなわち、この発明は、
(1) C:0.10wt%未満、Si:0.005 〜2.5 wt%、Mn:0.50〜5.0 wt%、Nb:0.001 〜0.20wt%、Cu:0.8 〜3.5 wt%、Ni:0.1 〜3.0 wt%、Al:0.005 〜0.05wt%およびS:0.001 〜0.50wt%を含む成分組成になり、かつ体積率で90%以上がベイナイト組織であることを特徴とする窒化用鋼(第1発明)、
(2) 第1発明において、さらにV:0.5wt %以下およびN:0.02wt%以下を含有する組成になる窒化用鋼(第2発明)、
(3) 第1発明または第2発明において、さらにCr:0.3 wt%以下、Mo:1.0 wt%以下、Ti:0.1 wt%以下およびB:0.05wt%以下の1種または2種以上を含有する組成になる窒化用鋼(第3発明)、
(4) 第1発明〜第3発明のいずれかにおいて、さらにPb:0.30wt%以下、P:0.10wt%以下、Ca:0.010 wt%以下、Te:0.05wt%以下、Se:0.05wt%以下およびBi:0.3 wt%以下の1種または2種以上を含有する組成になる窒化用鋼(第4発明)
である。
【0017】
また、この発明は、C:0.10wt%未満、Si:0.005 〜2.5 wt%、Mn:0.50〜5.0 wt%、Nb:0.001 〜0.20wt%、Cu:0.8 〜3.5 wt%、Ni:0.1 〜3.0 wt%、Al:0.005 〜0.05wt%およびS:0.001 〜0.50wt%を含む成分組成になる鋼素材に、熱間圧延、次いで熱間鍛造を施し、引き続き切削加工を施して所望の形状に仕上げたのち、窒化処理を施すことを特徴とする機械構造部品の製造方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の各化学成分の限定理由について説明する。
C:0.10wt%未満
Cは、冷却速度に依存せずに鋼の組織をベイナイト主体あるいはベイナイト単相とするために、0.10wt%未満、好ましくは0.04wt%以下、より好ましくは0.02wt%以下に制限する必要がある。また、C量が0.10wt%以上では、大きな炭化物の析出量が多くなる結果、切削性が損なわれるため、0.10wt%未満とした。
【0019】
Si:0.005 〜2.5 wt%
Siは、脱酸および固溶強化を確保するために少なくとも0.005 wt%、好ましくは0.05wt%以上を必要とし、一方過剰に含有すると靱性を低下させることから、上限は2.0 wt%、好ましくは1.5 wt%とした。
【0020】
Mn:0.5 〜5.0 wt%
Mnは、焼入れ性を向上してベイナイト組織の強度を確保するために0.5 wt%以上、好ましくは0.8 wt%以上は必要であり、一方5.0 wt%をこえると切削性が劣化することから、上限は5.0 wt%、好ましくは3.0wt %とする。
【0021】
Nb:0.001 〜0.20wt%
Nbは、焼入れ性を向上させ、冷却速度に依存することなく均一な組織を得るために必要な元素であり、また冷却中のCu析出を抑制する効果がある。このために0.001 wt%以上、好ましくは0.005wt %以上は必要であるが、0.20wt%をこえると、熱間圧延性を阻害することから、上限は0.20wt%、好ましくは0.10 wt %とする。
【0022】
Al:0.005 〜 0.050wt%
Alは、脱酸のために必要な成分であり、0.005 wt%以上、好ましくは0.01wt%以上を必要とするが、1.0 wt%をこえるとアルミナ系介在物が増えて、靱性を損なうために、 0.050wt%好ましくは0.03wt%を上限とする。
【0023】
S:0.001 〜0.50wt%
Sは、切削性を向上する成分であり、その効果を発揮させるには0.001 wt%以上、好ましくは0.005wt %以上の添加が必要である。しかし過剰に添加すると、清浄性および靱性の低下を招くため、上限を0.50wt%好ましくは0.30wt%とする。
【0024】
Cu:0.8 〜 3.5wt%
Cuは、析出強化および切削性を向上する成分であり、その効果を発揮させるには0.8 wt%以上、好ましくは1.0wt %以上の添加が必要である。しかし過剰に添加すると、靱性の急激な低下を招くため、上限を3.5 wt%好ましくは3.0wt %とする。
【0025】
Ni:0.1 〜 3.0wt%
Niは、強度および靱性を向上し、またCuを添加した場合に圧延や熱間鍛造時のCu割れを防止するのに有効であり、0.1 wt%以上、好ましくは0.5wt %以上の添加が必要である。しかし過剰に添加しても、その効果が飽和するため、 3.0wt%を上限とする。
【0026】
V: 0.5wt%以下
Vは、窒化を促進し、表面硬さを上昇させる成分であるが、過剰に添加すると、窒化層が却って脆弱になるため、上限を0.5 wt%好ましくは0.3wt %とする。
【0027】
N:0.02wt%以下
Nは、窒化による表面硬さ上昇を促進するために制限する必要がある。すなわち、0.02wt%をこえると、V窒化物を形成し、窒化後の硬さ上昇に必要な固溶Vが減少し、Vの効果が得られなくなるため、0.02wt%以下好ましくは0.015wt %以下に抑制する。
【0028】
また、この発明においては、上記基本的成分に、所定の化学成分を添加することによって、さらなる強度向上あるいは、製品に仕上げる際の切削加工における切削性の向上を達成することができる。
まず、強度向上をはかるために、Cr:0.3 wt%以下、Mo:1.0 wt%以下、Ti:0.1 wt%以下およびB:0.01wt%以下の1種または2種以上を、添加することが有利である。
【0029】
Cr:0.3 wt%以下
Crは、強度上昇に有効であるが、過剰に添加すると靱性を低下するため、0.3 wt%以下とする。
【0030】
Mo:1.0 wt%以下
Moは、常温および高温での強度を上昇するのに有効であるが、過剰に添加すると靱性が低下することから1.0 wt%以下の範囲で添加する。
【0031】
Ti:0.1 wt%以下
Tiは、析出強化に加えて、過剰のCを固定して靱性を向上するのに有効であるが、過剰に添加すると、冷却速度が遅い場合に粗大なTiN を析出し、却って靱性を低下することになるから、0.1 wt%を上限とする。
【0032】
B:0.05wt%以下
Bは、焼入れ性を向上する成分であるが、0.05wt%をこえて含有しても、その効果は飽和するため、0.05wt%以下とする。
【0033】
また、切削性の向上をはかるために、Pb:0.30wt%以下、P:0.10wt%以下、Ca:0.010 wt%以下、Te:0.05wt%以下、Se:0.05wt%以下およびBi:0.3 wt%以下の1種または2種以上を含有することができる。
【0034】
Pb:0.30wt%以下
Pbは、切削性を向上するのに有効な成分であるが、0.30wt%をこえると、その効果は飽和する上、疲労特性が低下するため、0.30wt%以下の範囲とする。
【0035】
P:0.10wt%以下
Pは、切削性の向上を目的として添加することが可能であるが、靱性あるいは疲労特性に悪影響をおよぼすため、0.10wt%以下に制限する必要があり、より好ましくは0.07wt%以下とする。
【0036】
Ca:0.010 wt%以下
Caは、Pbとほぼ同様な効果を有する成分であるが、0.01wt%をこえると、その効果は飽和するため、0.010 wt%以下の範囲とする。
【0037】
Te:0.05wt%以下
Teも、PbやCaと同じく切削性を向上する成分であるが、0.05wt%をこえると、効果が飽和する上、耐疲労性も低下するため、0.05wt%以下の範囲とする。
【0038】
Se:0.05wt%以下
Seは、Mnと結合してMnSeを形成し、これがチップブレイカーとして作用することにより被削性を改善するが、0.05wt%を超える添加は耐疲労性に悪影響を及ぼすため、0.05wt%以下の範囲とする。
【0039】
Bi:0.3 wt%以下
Biは、Pbと同様に融点が低く、切削時の鋼材の発熱により溶融すると、液体潤滑作用を発揮して被削性を向上させる元素であるが、他の快削性元素と同様、多量の添加は耐疲労性に悪影響を及ぼすため、0.3 wt%以下の範囲とする。
なお、以上の添加成分は微量でもその効果を発揮するため、とくに下限は設定しない。
【0040】
この発明の窒化用鋼は、上述した基本組成に成分調整をすることによって、均質なベイナイト組織、具体的には体積率で90%以上がベイナイトの組織が得られるため、製造条件を厳密に制御する必要はなく、とりわけ、熱間鍛造後の焼ならし処理を省略しても、その後の窒化処理において均一な化合物層を得ることができる。なお、その他の製造条件は、機械構造部品の一般に従えばよい。
【0041】
例えば、材料メーカーでは、上述した基本組成に成分調整した連続鋳造ブルームを、1200℃に加熱後、800 〜1200℃の温度域での熱間圧延により棒鋼を得ることができる。かくして得られた棒鋼は、部品メーカーなどのユーザーにて、熱間鍛造を施し、次いで焼ならし処理を行うことなく目的とするミクロ組織が得られ、切削加工に供し、その後窒化処理を行って目的とする特性を有する製品となる。
【0042】
【実施例】
表1に示す種々の化学組成を有するブルームを、連続鋳造により複数製造したのち、熱間圧延により90mmφの丸棒とし、その後放冷とした。放冷時の冷却速度は約20℃/minであった。次いで、これらの丸棒を1200℃に加熱し、仕上げ温度950 ℃の熱間鍛造を施して直径40mmの丸棒とした後、放冷または徐冷を行った。従来鋼は、放冷後に850 ℃×1hで焼ならし処理を施した。
【0043】
【表1】
【0044】
次に、各丸棒を冷却後、JIS 4号引張試験片、JIS 3号シャルピー衝撃試験片および切削性試験片(直径40mm、長さ40mm) をそれぞれ採取し、鍛造後の引張試験、シャルピー衝撃試験および切削性試験を行った。ここで、切削性試験は、ドリル切削性試験を行った。すなわち、工具に直径4mmのコーティングなしのストレートドリルを用いて、送り速度0.15mm/revの乾式切削を行い、S 48C とPb入りと同等以上の被削性を示したものを○、同等のものを△、劣るものを×と評価し、特に優れるものを◎と評価した。
【0045】
また、軟窒化処理後の特性を調査するために、硬度測定用試験片(直径40mm、長さ30mm) およびJIS 1号回転曲げ疲労試験片を採取し、NH3 ガス:RXガス=1:1の混合ガス中で570 ℃×3hの軟窒化処理を施し、油冷却を行った。硬度測定用試験片については、表層部からビッカース硬さ(荷重300g)を測定し、Hv300 以上となる深さを硬化深さとして評価した。また、回転曲げ疲労試験片については、小野式回転曲げ疲労試験を行い寿命が107 となる疲労強度を求めて評価した。
【0046】
さらに、化合物層の耐はく離性を調査するために、JIS 4号引張試験片を2本採取し、そのうち1本にはNH3 ガス:RXガス=1:1の混合ガス中で570 ℃×3hの軟窒化処理を行い、残り1本についてはArガス中で570 ℃×3hの熱処理を施して、それぞれについて引張速度5mm/minで引張試験を行った。このときの引張強度差ΔTS (=軟窒化処理試験片TS−熱処理試験片TS)が大きい程耐はく離性が良好と評価した。
【0047】
各評価結果を表2および3に示す通り、発明鋼はいずれの冷却速度においても比較鋼と同一の強度レベルの場合でも靭性が高くなっている。切削性も比較鋼よりも高く、深い硬化深さが得られた。また、硬化深さが深く化合物層の耐はく離性についても比較鋼よりも良好であったため、同一強度レベルの比較鋼と比べても高い疲労強度が得られた。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【発明の効果】
この発明によれば、熱間加工あるいは熱間鍛造ままで切削性に優れ、かつ軟窒化特性、特に化合物層の耐はく離性に優れた窒化用鋼が得られる。従って、窒化処理を必要とする自動車用重要保安部品或いはシャフト類などの機械部品に有利に適用することができる。
Claims (5)
- C:0.10wt%未満、 Si:0.005 〜2.5 wt%、
Mn:0.50〜5.0 wt%、 Nb:0.001 〜0.20wt%、
Cu:0.8 〜3.5 wt%、 Ni:0.1 〜3.0 wt%、
Al:0.005 〜0.05wt%およびS:0.001 〜0.50wt%
を含む成分組成になり、かつ体積率で90%以上がベイナイト組織であることを特徴とする窒化用鋼。 - 請求項1において、さらに
V:0.5wt %以下およびN:0.02wt%以下
を含有する組成になる窒化用鋼。 - 請求項1または2において、さらに
Cr:0.3 wt%以下、Mo:1.0 wt%以下、
Ti:0.1 wt%以下およびB:0.05wt%以下
の1種または2種以上を含有する組成になる窒化用鋼。 - 請求項1ないし3のいずれか1項において、さらに
Pb:0.30wt%以下、P:0.10wt%以下、
Ca:0.010 wt%以下、Te:0.05wt%以下、
Se:0.05 wt %以下およびBi:0.3 wt%以下
の1種または2種以上を含有する組成になる窒化用鋼。 - C:0.10wt%未満、 Si:0.005 〜2.5 wt%、
Mn:0.50〜5.0 wt%、 Nb:0.001 〜0.20wt%、
Cu:0.8 〜3.5 wt%、 Ni:0.1 〜3.0 wt%、
Al:0.005 〜0.05wt%およびS:0.001 〜0.50wt%
を含む成分組成になる鋼素材に、熱間圧延、次いで熱間鍛造を施し、引き続き切削加工を施して所望の形状に仕上げたのち、窒化処理を施すことを特徴とする機械構造部品の製造方法。
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