JP3629851B2 - プラズマ浸炭用冷間工具鋼 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマ浸炭を施して冷間加工用の工具を製造するための鋼と、その鋼から製造した工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
使用条件が苛酷であって高度の耐摩耗性を要求される冷間加工用工具の材料としては、従来、一次炭化物を付与した高硬度の冷間ダイス鋼や高速度工具鋼が使用されて来た。 この種の材料の欠点は、耐摩耗性が必要な表面だけでなく内部にも一次炭化物が存在するため、表面にワレが発生するとそれが内部まで容易に進行してしまうことであり、これが工具寿命を短くする原因となっていた。
【0003】
こうした問題への対策として、硬度を低下させた材料に表面処理を施して耐摩耗性を改善することが試みられているが、一般にこの手法をとると表面処理層のワレ感受性が高まるため、耐摩耗性と高靱性とを兼ねそなえた冷間工具を得るのは困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の困難を克服して、すぐれた耐摩耗性と高い靱性とを兼ねそなえた冷間工具を実現する鋼を提供すること、およびその鋼を使用しプラズマ浸炭により表面処理して冷間加工用の工具を製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の冷間工具鋼は、C:0.40〜0.80%、Si:0.05〜1.50%、Mn:0.05〜1.50%およびV:1.8〜6.0%を含有し、さらにNi:0.10〜2.50%、Cr:0.1〜2.0%およびMo:3.0%以下の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避の不純物からなるプラズマ浸炭用冷間工具鋼である。 この冷間工具鋼は、上記の合金成分に加えてさらに、Nb:3.0%以下およびTa:3.0%以下の1種または2種(2種の場合は合計量で3.0%以下)を含有してもよく、それに代えて、またはそれとともに、N:0.02〜0.15%を含有してもよい。
【0006】
これらの材料から冷間工具を製造する本発明の方法は、上記した合金組成のいずれかを有するプラズマ浸炭用冷間工具鋼をほぼ工具形状に成形してプラズマ浸炭を施してなり、浸炭層中のVCまたはV(CN)が、面積率にして全炭化物または全炭窒化物の50%を占める冷間工具とすることからなる。
【0007】
【作用】
発明者らは、前記した困難の克服を企て、その手段として、靱性の高い基地に耐摩耗性にすぐれた表面硬化層を付与する途をえらんだ。 しかし、主たる用途である冷間金型や冷間圧延ロールは、負荷応力の観点からHRC50以上の基地硬さが必要と考えられ、このような硬さの鋼にあって、靱性を支配するものはワレの発生であって、表面硬化部からワレが発生する金型では、基地の靱性を高めてみても、表面硬化部のワレ発生感受性が高いため、前述のようにワレが進行してしまい、そのことが型やロールを短寿命にする。
【0008】
したがって、表面硬化層としてワレ発生感受性の低いものを形成すべきであり、その方策として本発明ではプラズマ浸炭を選んだ。 プラズマ浸炭層に形成させる炭化物としては、VCが最適であることがわかった。 浸炭層に形成されたVCは硬質であって、少量の炭化物で耐摩耗性が改善されることに加えて、VCは個々の粒子が他の炭化物にくらべて微細なため、浸炭層のワレ発生感受性を低くする。
【0009】
プラズマ浸炭法の特徴として、浸炭後に焼入れ焼戻しを同一炉内で連続的に実施できることが挙げられる。 この特徴を生かし、熱処理による歪みを抑えて浸炭−熱処理後の加工を最少限にし、または省略可能にするためには、大型の製品であっても基地の強度が確保できるほど高い焼入れ性が要求される。 この要求をみたすために、焼入れ性向上元素としてNi,CrおよびMoの少なくとも1種を添加するとともに、それによって不可避的に形成される一次炭化物の形態を制御するため、NbおよびTaの1種または2種を添加する。
【0010】
本発明のプラズマ浸炭用冷間工具鋼において、合金組成を前記のように定めた理由は、つぎのとおりである。
【0011】
C :0.40〜0.80%
マトリクスに固溶し、焼入れ時のマルテンサイト変態に際してマルテンサイトの硬さを決定する。 少なすぎるとマルテンサイト硬さが低く、多すぎれば浸炭前に炭化物形成元素との間で一次炭化物を生成してしまい、靱性を低下させる。 これらの点から、上記0.40〜0.80%の範囲を定めた。
【0012】
Si:0.05〜1.50%
高温焼戻し硬さを高めるとともに、焼入れ性を改善するため必要な元素である。 この効果を得るためには0.05%以上の存在が必要であるが、多す
ぎると靱性を損ねるので、1.50%以内とする。
【0013】
Mn:0.05〜1.50%
炭化物を形成することなく焼入れ性を高めるために必要な元素で、このために少なくとも0.05%存在すべきであるが、多量になると焼戻し後の残留
オーステナイト量を増大させるので、1.50%の上限を設けた。
【0014】
V :1.8〜6.0%
本発明の鋼にとって不可欠の成分であり、浸炭により炭化物を適量生成させ
るため、1.8〜6.0%範囲内で添加する。
【0015】
Ni:0.10〜2.50%
Mnと同様の作用をする。 0.10〜2.50%の下限に満たない少量では効果がないし、上限を超える大量になると焼入れ後、大量のオーステナイ
トを残留させるというマイナスがある。
【0016】
Cr:0.1〜2.0%
焼入れ性を高め、二次硬化に寄与するので適宜添加する。 下限は効果の認められる最小添加量である。 炭化物形成元素のひとつであって、多量になると M3C,M7 C3 の一次炭化物が析出するので、上限の2.0%以内の
添加量をえらぶ。
【0017】
Mo:3.0%以内
ベイナイト焼入性を改善するとともに、マトリクスに固溶して二次硬化作用をするので、所望により添加する。 多量に過ぎると晶出一次炭化物を形成して全体の靱性を低下させるので、3.0%を限度とした。
【0018】
Nb:3.0%以下、Ta:3.0%以下
これらはVに次ぐ炭化物形成元素であって、Cと優先的に結合して他の元素の一次炭化物の晶出を抑えるとともに、一部が晶出するときに微細に晶出して靱性の低下を防ぐ。 添加量が過大になると、多量の一次炭化物を形成して靱性を損なうし、全炭化物中のVCの割合を低くして好ましくないから、いずれも上限値3.0%(2種併用の場合は合計量で)以内の量を添加する。
【0019】
N :0.02〜0.15%
不可避的に晶出することのある一次炭化物を微細にするとともに、浸炭時に
形成されるVCの形態を改善する。
【0020】
VCまたはV(CN)の量が、面積率にして全炭化物または全炭窒化物中の50%以上
この条件を満たすことによって、冷間工具鋼の耐摩耗性と靭性の両立がはかれる。
【0021】
[実施例および比較例]
表1に掲げる合金組成のプラズマ浸炭用冷間工具鋼を溶製した。
【0022】
上記に加えて、No.12はW:6.3%を、No.15はW:7.2%を含有する。
【0023】
各鋼から一辺10mmの正方形断面をもち長さが55mmの試験片をつくり、(Ar+H2+C3H8 )混合ガス中、900℃×1時間の処理条件でプラズマ浸炭を行ない、続いて焼入れ(ガス冷却)、焼戻しをした。 基地の硬さ、全炭化物中にVCの占める割合、耐摩耗性(大越式試験機による。 相手材SCM415、荷重6kgf、すべり速度1m/sec)およびシャルピー衝撃値(10Rノッチ付シャルピー試験片)を測定した。 それらの結果を、表2に示す。
【0024】
【0025】
【発明の効果】
本発明のプラズマ浸炭用冷間工具鋼は、浸炭法としてプラズマ浸炭を選択したところにより、常用の浸炭法に伴う粒界酸化が避けられ、硬化層の靱性を損なう要因が除かれることと、炭(窒)化物としてVCを主体にすることで、最も微細な形態での炭化物の晶出を実現したので、それらがあいまって硬化層ワレ感受性が低く抑えられ、耐摩耗性と靱性とを兼ねそなえたものとなる。
【0026】
この鋼を材料とすれば、プラズマ浸炭に続く熱処理に伴う歪みは小さく、最少限の仕上げ加工で、目的とする冷間工具を製造することができる。 本発明は、とくに冷間鍛造用金型や冷間圧延ロールなどの製造に適用したとき、その意義が大きい。
Claims (3)
- 重量%で、C:0.40〜0.80%、Si:0.05〜1.50%、Mn:0.05〜1.50%およびV:1.8〜6.0%を含有し、さらにNi:0.10〜2.50%、Cr:0.1〜2.0%およびMo:3.0%以下の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避の不純物からなる合金組成を有するプラズマ浸炭用冷間工具鋼。
- 請求項1に記載の合金成分に加えて、重量%で、Nb:3.0%以下およびTa:3.0%以下の1種または2種(2種の場合は合計量で3.0%以下)、およびN:0.02〜0.15%を含有するプラズマ浸炭用冷間工具鋼。
- 請求項1または2のプラズマ浸炭用冷間工具鋼をほぼ工具形状に成形してプラズマ浸炭を施してなり、浸炭層中のVCまたはV(CN)が、面積率にして全炭化物または全炭窒化物の50%以上を占める冷間工具。
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