JPH1112685A - 窒化用鋼および機械構造部品の製造方法 - Google Patents

窒化用鋼および機械構造部品の製造方法

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JPH1112685A
JPH1112685A JP17163397A JP17163397A JPH1112685A JP H1112685 A JPH1112685 A JP H1112685A JP 17163397 A JP17163397 A JP 17163397A JP 17163397 A JP17163397 A JP 17163397A JP H1112685 A JPH1112685 A JP H1112685A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱間加工あるいは熱間鍛造のままで切削性に
優れ、軟窒化処理で形成される化合物層の厚みを均一に
することによって、耐はく離性に優れた、窒化用鋼を提
供する 【解決手段】 C:0.10wt%未満、Si:0.005 〜2.5 wt
%、Mn:0.50〜5.0 wt%、Nb:0.001 〜0.20wt%、Al:
0.005 〜0.05wt%、Cu:0.8 〜3.5 wt%、Ni:0.1 〜3.
0 wt%およびS:0.001 〜0.50wt%を含む成分組成にな
り、かつ体積率で90%以上をベイナイト組織とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】この発明は、耐はく離性に優れた化合物層
を形成する窒化処理に供する、窒化用鋼とくに耐摩耗
性、耐疲労性、切削性および熱間鍛造性に優れたクラン
クシャフトなどの機械構造部品の製造に有利に適合する
窒化用鋼、そして該窒化用鋼を用いた機械構造部品の製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、耐摩耗性が要求される機械構造部
品には、表面硬化処理が施されるのが通例である。この
表面硬化方法としては、浸炭処理、高周波焼入れ処理お
よび窒化処理がよく知られている。
【0003】すなわち、浸炭処理は、高温のオーステナ
イト域においてCを侵入・拡散させるために、深い硬化
深さが得られるが、熱処理歪みが問題となるところか
ら、厳しい寸法精度の要求される機械構造用部品には、
その適用が困難であった。また、高周波焼入れ処理は、
高周波誘導加熱により表層部を焼入れする処理である
が、浸炭処理と同様に寸法精度に劣るという問題を残し
ていた。さらに、窒化処理は、A1 変態点以下の温度域
で窒素を侵入・拡散させて表面硬さを高める処理である
が、処理時間が50〜100 時間と長く、また処理後に表層
の脆い化合物層を除去する必要があった。
【0004】そこで、処理温度が低くかつ処理時間の短
い窒化処理、いわゆる軟窒化処理が注目され、近年では
機械構造用部品などを対象に急速に普及しつつある。こ
の処理は、500 〜600 ℃の温度域でNとCを同時に侵入
・拡散させて、表面を硬化するものであり、従来の窒化
処理と比較して半分以下の処理時間で済む利点がある。
【0005】ところが、現在、軟窒化処理に供されてい
る、機械構造用炭素鋼や低合金鋼では、窒化処理後の化
合物の厚みが均一ではないために、耐はく離性および耐
疲労性が未だ不十分である。すなわち、機械構造用炭素
鋼などは、フェライト−パーライト組織になるのが普通
であるが、この機械構造用炭素鋼に、鉄と窒素とを反応
させて表面に耐磨耗性に優れた化合物層を形成する、窒
化処理を施すと、フェライトとパーライトとで窒素の拡
散速度が異なるために、フェライト相およびパーライト
相における化合物層の形成深さが異なる結果、化合物層
の厚さは不均一になる。
【0006】この問題を回避するために、従来は組織を
微細化して窒化深さを平均化することを所期して、焼な
らし処理を必須としていた。この焼ならし処理は、次工
程の切削等の加工を容易にするために、硬さを低減する
目的も兼ねている。例えば、クランクシャフトなどの機
械構造部品は、機械構造用炭素鋼のブルームを連続鋳造
し、熱間圧延を施した後、熱間鍛造、次いで焼ならし処
理を行ってから、切削加工し、その後窒化処理を施すの
が一般的である。
【0007】この焼ならし処理で組織を微細化すること
によって、確かに化合物層厚の変動幅を小さくすること
はできるが、化合物層厚の変動そのものを抑えることは
できないから、化合物層厚が不均一になることは避けら
れない。従って、化合物層の耐はく離性および耐疲労性
は、未だ満足する水準に達していないのである。
【0008】一方、近年の省エネルギーの立場から、熱
処理工程などを省略することによるコストダウンの要求
が強く、上記の焼ならし処理についても、その省略が検
討されている。
【0009】ここに、特開昭63−216950号公報
では、化学組成の規制によって、表面硬さおよび硬化深
さの向上を非調質の下に達成する技術が開示されてい
る。しかし、この手法では、化学成分の組成範囲が広く
て目的を達成することが難しい上、十分な化合物層の耐
はく離性が得られないところに問題が残る。
【0010】同様に、化学組成を規制して、組織をフェ
ライト・パーライト主体の組織とすることにより、硬化
性の向上および非調質化に併せて、熱処理歪みの低減を
図ることが、特開平8−176733号公報に記載され
ている。しかし、この手法をもってしても、化合物層の
耐はく離性については十分な特性が得られない。さら
に、機械構造用部品の実生産では、熱間鍛造後に複数の
部品を同一のバスケット等に入れて放冷する場合もあ
り、各部品の製造工程によって冷却速度の範囲が異なる
ことが多々ある。そのため、フェライト・パーライト組
織を有する場合、それらの組織分率や粒径が冷却速度に
よって異なるため、上記手法では冷却速度を厳密に管理
しなくてはならない不利もある。
【0011】また、特開昭60−92450号公報に
は、焼ならし処理を省略して熱間鍛造後の加工(切削)
性を確保するために、窒化処理工程において、時効硬化
処理を兼ねた析出強化を利用して、部品の心部強度を確
保することが、開示されている。しかし、この手法で
は、熱間鍛造後の冷却速度によりミクロ組織が異なるた
め、製品に際しては厳密な冷却速度の管理が必要となる
他、この成分系をもつ鋼材では鍛造後の冷却過程でCuが
析出し芯部強度が上昇するため、焼ならし処理を省略し
ている一方で、切削工程の前に溶体化処理が必要となる
ため省エネルギー化の要求に対する回答とはなり得な
い。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、熱
間加工あるいは熱間鍛造のままで切削性に優れ、かつ窒
化処理、とりわけ軟窒化処理によっても化合物層の厚み
を均一にすることによって、化合物層の耐はく離性に優
れた、窒化用鋼を提供するところにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上記目的を
達成するために種々の検討を行った。まず、フェライト
・パーライト混合組織を有する従来鋼を用いて、種々の
粒径を持つ試験材を作製し、これらに軟窒化処理を施し
た結果、組織の粒径が大きくなるほど、化合物層の耐は
く離性に劣ることが明らかとなった。次に、フェライト
とパーライトの分率が異なる試験材を作製し、これらに
軟窒化処理を施した結果、フェライト分率が大きくなる
ほど、換言すると、単一組織に近くなるほど、耐はく離
性が向上することが明らかとなった。すなわち、従来技
術において耐はく離性の改善が不十分であったのは、窒
化処理後の製品に、例えば矯正等を行った場合に、ミク
ロ的な変形能が組織によって異なるために、化合物層が
それぞれの変形に追従できずに剥離するためであること
が判明した。
【0014】そこで、組織を均一化する手法について検
討したところ、低炭素とし、かつ焼入れ性向上元素を適
量添加することにより、熱間鍛造後の冷却速度に依存す
ることなく均一なベイナイト組織が得られることがわか
った。一方、切削性は、組織を低炭素ベイナイトとして
も改善されなかった。これは、ベイナイト中の比較的大
きな炭化物が工具寿命を低減させているためである。従
って、切削性向上のためには、大きな炭化物の生成をで
きるだけ抑制する必要があり、炭素量をさらに制限する
ことにより、この問題も解決できることが明らかとなっ
た。同時に、炭素量を低減することにより、軟窒化処理
時の窒素拡散深さが深くなり、同一処理時間で従来鋼よ
りも深い窒化深さが得られることも明らかになった。し
かし、これだけでは芯部強度が低く高強度部品に対応す
ることが困難であることから、軟窒化処理後の高強度化
について検討し、析出強化元素としてCuを添加すること
によって窒化処理時の強度上昇が可能であることおよ
び、Cu添加により切削時の工具寿命を大幅に増大させる
作用があることを明らかにした。また、Cuは軟質のε-C
u として非常に微細に析出するため、従来法のように硬
質析出物を用いた析出強化鋼とは異なり疲労特性にも優
れることも明らかにした。
【0015】以上の検討結果から、炭素量を制限しかつ
焼入れ性向上元素を添加して低炭素ベイナイト組織とす
ることによって、組織の冷却速度依存性をなくし、良好
な化合物層の耐はく離性を実現し、さらにCuを添加する
ことにより、切削性が良好となる他、軟窒化処理後の強
度上昇が可能となる知見を新たに得たのである。
【0016】すなわち、この発明は、(1) C:0.10wt%
未満、Si:0.005 〜2.5 wt%、Mn:0.50〜5.0 wt%、N
b:0.001 〜0.20wt%、Cu:0.8 〜3.5 wt%、Ni:0.1
〜3.0 wt%、Al:0.005 〜0.05wt%およびS:0.001 〜
0.50wt%を含む成分組成になり、かつ体積率で90%以上
がベイナイト組織であることを特徴とする窒化用鋼(第
1発明)、(2) 第1発明において、さらにV:0.5wt %
以下およびN:0.02wt%以下を含有する組成になる窒化
用鋼(第2発明)、(3) 第1発明または第2発明におい
て、さらにCr:0.3 wt%以下、Mo:1.0 wt%以下、Ti:
0.1 wt%以下およびB:0.05wt%以下の1種または2種
以上を含有する組成になる窒化用鋼(第3発明)、(4)
第1発明〜第3発明のいずれかにおいて、さらにPb:0.
30wt%以下、P:0.10wt%以下、Ca:0.010 wt%以下、
Te:0.05wt%以下、Se:0.05wt%以下およびBi:0.3 wt
%以下の1種または2種以上を含有する組成になる窒化
用鋼(第4発明)である。
【0017】また、この発明は、C:0.10wt%未満、S
i:0.005 〜2.5 wt%、Mn:0.50〜5.0 wt%、Nb:0.001
〜0.20wt%、Cu:0.8 〜3.5 wt%、Ni:0.1 〜3.0 wt
%、Al:0.005 〜0.05wt%およびS:0.001 〜0.50wt%
を含む成分組成になる鋼素材に、熱間圧延、次いで熱間
鍛造を施し、引き続き切削加工を施して所望の形状に仕
上げたのち、窒化処理を施すことを特徴とする機械構造
部品の製造方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】次に、この発明の各化学成分の限
定理由について説明する。 C:0.10wt%未満 Cは、冷却速度に依存せずに鋼の組織をベイナイト主体
あるいはベイナイト単相とするために、0.10wt%未満、
好ましくは0.04wt%以下、より好ましくは0.02wt%以下
に制限する必要がある。また、C量が0.10wt%以上で
は、大きな炭化物の析出量が多くなる結果、切削性が損
なわれるため、0.10wt%未満とした。
【0019】Si:0.005 〜2.5 wt% Siは、脱酸および固溶強化を確保するために少なくとも
0.005 wt%、好ましくは0.05wt%以上を必要とし、一方
過剰に含有すると靱性を低下させることから、上限は2.
0 wt%、好ましくは1.5 wt%とした。
【0020】Mn:0.5 〜5.0 wt% Mnは、焼入れ性を向上してベイナイト組織の強度を確保
するために0.5 wt%以上、好ましくは0.8 wt%以上は必
要であり、一方5.0 wt%をこえると切削性が劣化するこ
とから、上限は5.0 wt%、好ましくは3.0wt %とする。
【0021】Nb:0.001 〜0.20wt% Nbは、焼入れ性を向上させ、冷却速度に依存することな
く均一な組織を得るために必要な元素であり、また冷却
中のCu析出を抑制する効果がある。このために0.001 wt
%以上、好ましくは0.005wt %以上は必要であるが、0.
20wt%をこえると、熱間圧延性を阻害することから、上
限は0.20wt%、好ましくは0.10 wt %とする。
【0022】Al:0.005 〜 0.050wt% Alは、脱酸のために必要な成分であり、0.005 wt%以
上、好ましくは0.01wt%以上を必要とするが、1.0 wt%
をこえるとアルミナ系介在物が増えて、靱性を損なうた
めに、 0.050wt%好ましくは0.03wt%を上限とする。
【0023】S:0.001 〜0.50wt% Sは、切削性を向上する成分であり、その効果を発揮さ
せるには0.001 wt%以上、好ましくは0.005wt %以上の
添加が必要である。しかし過剰に添加すると、清浄性お
よび靱性の低下を招くため、上限を0.50wt%好ましくは
0.30wt%とする。
【0024】Cu:0.8 〜 3.5wt% Cuは、析出強化および切削性を向上する成分であり、そ
の効果を発揮させるには0.8 wt%以上、好ましくは1.0w
t %以上の添加が必要である。しかし過剰に添加する
と、靱性の急激な低下を招くため、上限を3.5 wt%好ま
しくは3.0wt %とする。
【0025】Ni:0.1 〜 3.0wt% Niは、強度および靱性を向上し、またCuを添加した場合
に圧延や熱間鍛造時のCu割れを防止するのに有効であ
り、0.1 wt%以上、好ましくは0.5wt %以上の添加が必
要である。しかし過剰に添加しても、その効果が飽和す
るため、 3.0wt%を上限とする。
【0026】V: 0.5wt%以下 Vは、窒化を促進し、表面硬さを上昇させる成分である
が、過剰に添加すると、窒化層が却って脆弱になるた
め、上限を0.5 wt%好ましくは0.3wt %とする。
【0027】N:0.02wt%以下 Nは、窒化による表面硬さ上昇を促進するために制限す
る必要がある。すなわち、0.02wt%をこえると、V窒化
物を形成し、窒化後の硬さ上昇に必要な固溶Vが減少
し、Vの効果が得られなくなるため、0.02wt%以下好ま
しくは0.015wt %以下に抑制する。
【0028】また、この発明においては、上記基本的成
分に、所定の化学成分を添加することによって、さらな
る強度向上あるいは、製品に仕上げる際の切削加工にお
ける切削性の向上を達成することができる。まず、強度
向上をはかるために、Cr:0.3 wt%以下、Mo:1.0 wt%
以下、Ti:0.1 wt%以下およびB:0.01wt%以下の1種
または2種以上を、添加することが有利である。
【0029】Cr:0.3 wt%以下 Crは、強度上昇に有効であるが、過剰に添加すると靱性
を低下するため、0.3wt%以下とする。
【0030】Mo:1.0 wt%以下 Moは、常温および高温での強度を上昇するのに有効であ
るが、過剰に添加すると靱性が低下することから1.0 wt
%以下の範囲で添加する。
【0031】Ti:0.1 wt%以下 Tiは、析出強化に加えて、過剰のCを固定して靱性を向
上するのに有効であるが、過剰に添加すると、冷却速度
が遅い場合に粗大なTiN を析出し、却って靱性を低下す
ることになるから、0.1 wt%を上限とする。
【0032】B:0.05wt%以下 Bは、焼入れ性を向上する成分であるが、0.05wt%をこ
えて含有しても、その効果は飽和するため、0.05wt%以
下とする。
【0033】また、切削性の向上をはかるために、Pb:
0.30wt%以下、P:0.10wt%以下、Ca:0.010 wt%以
下、Te:0.05wt%以下、Se:0.05wt%以下およびBi:0.
3 wt%以下の1種または2種以上を含有することができ
る。
【0034】Pb:0.30wt%以下 Pbは、切削性を向上するのに有効な成分であるが、0.30
wt%をこえると、その効果は飽和する上、疲労特性が低
下するため、0.30wt%以下の範囲とする。
【0035】P:0.10wt%以下 Pは、切削性の向上を目的として添加することが可能で
あるが、靱性あるいは疲労特性に悪影響をおよぼすた
め、0.10wt%以下に制限する必要があり、より好ましく
は0.07wt%以下とする。
【0036】Ca:0.010 wt%以下 Caは、Pbとほぼ同様な効果を有する成分であるが、0.01
wt%をこえると、その効果は飽和するため、0.010 wt%
以下の範囲とする。
【0037】Te:0.05wt%以下 Teも、PbやCaと同じく切削性を向上する成分であるが、
0.05wt%をこえると、効果が飽和する上、耐疲労性も低
下するため、0.05wt%以下の範囲とする。
【0038】Se:0.05wt%以下 Seは、Mnと結合してMnSeを形成し、これがチップブレイ
カーとして作用することにより被削性を改善するが、0.
05wt%を超える添加は耐疲労性に悪影響を及ぼすため、
0.05wt%以下の範囲とする。
【0039】Bi:0.3 wt%以下 Biは、Pbと同様に融点が低く、切削時の鋼材の発熱によ
り溶融すると、液体潤滑作用を発揮して被削性を向上さ
せる元素であるが、他の快削性元素と同様、多量の添加
は耐疲労性に悪影響を及ぼすため、0.3 wt%以下の範囲
とする。なお、以上の添加成分は微量でもその効果を発
揮するため、とくに下限は設定しない。
【0040】この発明の窒化用鋼は、上述した基本組成
に成分調整をすることによって、均質なベイナイト組
織、具体的には体積率で90%以上がベイナイトの組織が
得られるため、製造条件を厳密に制御する必要はなく、
とりわけ、熱間鍛造後の焼ならし処理を省略しても、そ
の後の窒化処理において均一な化合物層を得ることがで
きる。なお、その他の製造条件は、機械構造部品の一般
に従えばよい。
【0041】例えば、材料メーカーでは、上述した基本
組成に成分調整した連続鋳造ブルームを、1200℃に加熱
後、800 〜1200℃の温度域での熱間圧延により棒鋼を得
ることができる。かくして得られた棒鋼は、部品メーカ
ーなどのユーザーにて、熱間鍛造を施し、次いで焼なら
し処理を行うことなく目的とするミクロ組織が得られ、
切削加工に供し、その後窒化処理を行って目的とする特
性を有する製品となる。
【0042】
【実施例】表1に示す種々の化学組成を有するブルーム
を、連続鋳造により複数製造したのち、熱間圧延により
90mmφの丸棒とし、その後放冷とした。放冷時の冷却速
度は約20℃/minであった。次いで、これらの丸棒を1200
℃に加熱し、仕上げ温度950 ℃の熱間鍛造を施して直径
40mmの丸棒とした後、放冷または徐冷を行った。従来鋼
は、放冷後に850 ℃×1hで焼ならし処理を施した。
【0043】
【表1】
【0044】次に、各丸棒を冷却後、JIS 4号引張試験
片、JIS 3号シャルピー衝撃試験片および切削性試験片
(直径40mm、長さ40mm) をそれぞれ採取し、鍛造後の引
張試験、シャルピー衝撃試験および切削性試験を行っ
た。ここで、切削性試験は、ドリル切削性試験を行っ
た。すなわち、工具に直径4mmのコーティングなしのス
トレートドリルを用いて、送り速度0.15mm/revの乾式切
削を行い、S 48C とPb入りと同等以上の被削性を示した
ものを○、同等のものを△、劣るものを×と評価し、特
に優れるものを◎と評価した。
【0045】また、軟窒化処理後の特性を調査するため
に、硬度測定用試験片(直径40mm、長さ30mm) およびJI
S 1号回転曲げ疲労試験片を採取し、NH3 ガス:RXガス
=1:1の混合ガス中で570 ℃×3hの軟窒化処理を施
し、油冷却を行った。硬度測定用試験片については、表
層部からビッカース硬さ(荷重300g)を測定し、Hv300
以上となる深さを硬化深さとして評価した。また、回転
曲げ疲労試験片については、小野式回転曲げ疲労試験を
行い寿命が107 となる疲労強度を求めて評価した。
【0046】さらに、化合物層の耐はく離性を調査する
ために、JIS 4号引張試験片を2本採取し、そのうち1
本にはNH3 ガス:RXガス=1:1の混合ガス中で570 ℃
×3hの軟窒化処理を行い、残り1本についてはArガス
中で570 ℃×3hの熱処理を施して、それぞれについて
引張速度5mm/minで引張試験を行った。このときの引張
強度差ΔTS (=軟窒化処理試験片TS−熱処理試験片TS)
が大きい程耐はく離性が良好と評価した。
【0047】各評価結果を表2および3に示す通り、発
明鋼はいずれの冷却速度においても比較鋼と同一の強度
レベルの場合でも靭性が高くなっている。切削性も比較
鋼よりも高く、深い硬化深さが得られた。また、硬化深
さが深く化合物層の耐はく離性についても比較鋼よりも
良好であったため、同一強度レベルの比較鋼と比べても
高い疲労強度が得られた。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【発明の効果】この発明によれば、熱間加工あるいは熱
間鍛造ままで切削性に優れ、かつ軟窒化特性、特に化合
物層の耐はく離性に優れた窒化用鋼が得られる。従っ
て、窒化処理を必要とする自動車用重要保安部品或いは
シャフト類などの機械部品に有利に適用することができ
る。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.10wt%未満、 Si:0.005 〜2.5
    wt%、 Mn:0.50〜5.0 wt%、 Nb:0.001 〜0.20wt%、 Cu:0.8 〜3.5 wt%、 Ni:0.1 〜3.0 wt%、 Al:0.005 〜0.05wt%およびS:0.001 〜0.50wt%を含
    む成分組成になり、かつ体積率で90%以上がベイナイト
    組織であることを特徴とする窒化用鋼。
  2. 【請求項2】 請求項1において、さらにV:0.5wt %
    以下およびN:0.02wt%以下を含有する組成になる窒化
    用鋼。
  3. 【請求項3】 請求項1または2において、さらにCr:
    0.3 wt%以下、Mo:1.0 wt%以下、 Ti:0.1 wt%以下およびB:0.05wt%以下の1種または
    2種以上を含有する組成になる窒化用鋼。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれか1項におい
    て、さらにPb:0.30wt%以下、P:0.10wt%以下、 Ca:0.010 wt%以下、Te:0.05wt%以下、 Se:0.05 wt %以下およびBi:0.3 wt%以下の1種また
    は2種以上を含有する組成になる窒化用鋼。
  5. 【請求項5】C:0.10wt%未満、 Si:0.005 〜2.5
    wt%、 Mn:0.50〜5.0 wt%、 Nb:0.001 〜0.20wt%、 Cu:0.8 〜3.5 wt%、 Ni:0.1 〜3.0 wt%、 Al:0.005 〜0.05wt%およびS:0.001 〜0.50wt%を含
    む成分組成になる鋼素材に、熱間圧延、次いで熱間鍛造
    を施し、引き続き切削加工を施して所望の形状に仕上げ
    たのち、窒化処理を施すことを特徴とする機械構造部品
    の製造方法。
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