JPH10226817A - 軟窒化用鋼材の製造方法及びその鋼材を用いた軟窒化部品 - Google Patents

軟窒化用鋼材の製造方法及びその鋼材を用いた軟窒化部品

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JPH10226817A
JPH10226817A JP24794997A JP24794997A JPH10226817A JP H10226817 A JPH10226817 A JP H10226817A JP 24794997 A JP24794997 A JP 24794997A JP 24794997 A JP24794997 A JP 24794997A JP H10226817 A JPH10226817 A JP H10226817A
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nitrocarburizing
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Yasuo Kurokawa
八寿男 黒川
Kenichi Kawazoe
健一 河添
Yoshihiko Kamata
芳彦 鎌田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】優れた耐疲労特性、耐摩耗性、耐ピッチング
性、耐スポーリング性を呈する軟窒化部品と、その素材
となる軟窒化用鋼材の製造方法を提供する。 【解決手段】C:0.15〜0.45%、Si:0.10超〜0.50
%、Mn:0.2〜2.5%、Cr:0.5〜2.0%、V:0.05〜0.5
%、Al:0.005〜0.3%、Ti:0〜0.2%、Zr:0〜0.2%、
Nb:0〜0.2%、Pb:0〜0.35%、Ca:0〜0.01%、S≦0.1
3%、残部はFe及び不純物の組成からなる鋼を熱間加工
後に球状化焼鈍して芯部硬度をHv 180以下とし、次いで
冷間加工して芯部硬度をHv250以上で、脱炭深さを鋼材
の表面から0.1〜0.4mmにする軟窒化用鋼材の製造方法。
素材鋼の成分は、Si 以外はのままで、Si:0.05〜
0.50%、Mo+0.5W: 0.02〜 0.3%であっても良い。上
記とのいずれかの方法で製造した軟窒化用鋼材を素
材とし、軟窒化後の表面硬度がHv600以上、且つ、有効
硬化深さが0.1mm以上である軟窒化部品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軟窒化用鋼材の製
造方法及びその鋼材を用いた軟窒化部品に関し、より詳
しくは耐疲労特性、耐摩耗性、耐ピッチング性や耐スポ
ーリング性に優れた軟窒化部品と、その軟窒化部品の素
材となる軟窒化用鋼材の製造方法に関する。(なお、繰
り返し面圧の負荷によって材料表面が剥離する疲労現象
のうち、剥離が比較的小さいものを「ピッチング」、剥
離が比較的大きいものを「スポーリング」と呼ぶことが
多いので、本明細書においてもこれに倣った。)
【0002】
【従来の技術】自動車や産業機械に使用される多くの部
品、例えば歯車や軸受などには、一般に大きな疲労強度
や耐摩耗性が要求される。そのため前記部品は、所謂
「表面硬化処理」を施して製造されてきた。
【0003】表面硬化処理としては一般に、浸炭焼入
れ、高周波焼入れ、炎焼入れ、窒化や軟窒化などの処理
が知られている。このうち、浸炭焼入れ、高周波焼入れ
や炎焼入れといったオーステナイト状態の高温域から急
冷(焼入れ)して表面を硬化させる処理では、部品に大
きな焼入れ歪が生じてしまう。更に、場合によっては焼
入れした部品に焼割れが生ずることもある。
【0004】このため、所要部品に対して特に低歪であ
ることが要求される場合には、窒化や軟窒化処理が施さ
れている。
【0005】しかし、一般の窒化処理は、アンモニアの
気流中で500〜550℃に20〜100時間加熱後徐
冷する所謂「ガス窒化」処理であるため生産性が低くコ
ストが嵩む。このため、窒化温度が550℃前後の液体
窒化法が開発されているが、この方法の場合にも窒化に
は12時間程度を要するので、必ずしも量産部品を低コ
ストで効率よく製造するのに適した方法とは言えない。
イオン窒化法によれば短時間で窒化が可能ではあるが、
温度測定が困難なことや、陰極となる被処理部品の配置
や形状、質量などによって温度や窒化層が不安定になっ
たりするので、この方法もやはり量産部品の製造に適し
ているとは言い難い。
【0006】一方、軟窒化処理は、570℃程度の温度
のシアン系化合物の塩浴、又はRXガス(RXガスは吸
熱型変成ガスの商標)にアンモニアを添加したガス中に
保持することにより、鋼材表面からN(窒素)とC(炭
素)を鋼中に浸入させて表層部を硬化させる方法で、短
時間処理が可能である。このうち前者のシアン系化合物
の塩浴を用いる方法は、廃液の処理にコストが嵩むた
め、後者のガスを用いる「ガス軟窒化法」が、低歪が要
求される量産品に適した表面硬化処理方法として重用さ
れている。
【0007】従来、軟窒化用鋼としては、例えば、JIS
G 4105に規定されているクロムモリブデン鋼鋼材(SC
M435など)や、JIS G 4202のアルミニウムクロムモ
リブデン鋼鋼材(SACM645)が多く使用されてき
た。
【0008】しかし、SCM435を初めとするJIS
に規定されたクロムモリブデン鋼鋼材を素材鋼とした部
品の場合、軟窒化処理後の表面からビッカース硬度(H
v)500の位置までの距離(以下、有効硬化深さとい
う)は0.05mm程度と小さい。更に、表面から0.
025mmの位置におけるビッカース硬度(以下、表面
硬度という)もHv600以上にならない場合が多い。
このため、疲労強度や耐摩耗性の点で充分に満足できる
ものではなかった。
【0009】一方、上記の欠点を改良するためにSAC
M645には窒化特性向上元素であるAl及びCrが多
量に添加されている。しかし、SACM645を素材鋼
とした場合も、軟窒化処理によって表面硬度はHvで8
00〜1100と非常に高くなるものの、有効硬化深さ
は0.08mm程度と小さい。したがって、表面部から
芯部(以下、軟窒化処理後の表面硬化されていない部分
を「芯部」という)への硬度勾配が急激になりすぎる。
そのため、高負荷の下で運転される歯車や軸受などで
は、表面硬化部と芯部の境界付近から剥離現象が起きや
すく、耐ピッチング性あるいは耐スポーリング性が劣っ
ていた。更に、SACM645は溶製、鋳造、熱間加工
が比較的困難であるし、冷間加工性が悪く複雑な形状の
部品にはプレス成形し難いという問題もあった。
【0010】特公平1ー37472号公報には、JIS
規格鋼の問題点を解決した「軟窒化用鋼」が開示されて
いる。この公報で提案された鋼を素材鋼として用いれ
ば、確かに疲労強度、耐摩耗性に優れるとともに耐ピッ
チング性、耐スポーリング性にも優れた軟窒化部品を得
ることは可能である。しかし、Siなどの強化に有効な
元素の含有量を低減して冷間加工性を向上させた鋼であ
るため、軟窒化によって表面部は硬化するものの、逆に
芯部は軟窒化時の加熱で軟化するので、軟窒化後に芯部
硬度が低くなりすぎて疲労特性が劣化する場合もあっ
た。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に
鑑みなされたもので、冷間加工性に優れた鋼を素材鋼と
し、優れた耐疲労特性、耐摩耗性、耐ピッチング性や耐
スポーリング性を呈する軟窒化部品を提供することを課
題とする。更に、本発明は、上記軟窒化部品の素材とな
る軟窒化用鋼材の製造方法を提供することも課題とす
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)及び(2)の軟窒化用鋼材の製造方法、並びに
(3)のその鋼材を用いた軟窒化部品にある。
【0013】(1)重量%で、C:0.15〜0.45
%、Si:0.10%を超え0.50%まで、Mn:
0.2〜2.5%、Cr:0.5〜2.0%、V:0.
05〜0.5%、Al:0.005〜0.3%、Ti:
0〜0.2%、Zr:0〜0.2%、Nb:0〜0.2
%、Pb:0〜0.35%、Ca:0〜0.01%、
S:0.13%以下、残部はFe及び不可避不純物の化
学組成からなる鋼を熱間加工後に球状化焼鈍して芯部硬
度をHv180以下とし、次いで冷間加工して芯部硬度
をHv250以上とするとともに、脱炭深さを鋼材の表
面から0.1〜0.4mmにすることを特徴とする軟窒
化用鋼材の製造方法。
【0014】(2)重量%で、C:0.15〜0.45
%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.2〜2.
5%、Cr:0.5〜2.0%、Mo:0.02〜0.
3%、V:0.05〜0.5%、Al:0.005〜
0.3%、Mo+0.5W:0.02〜0.3%、T
i:0〜0.2%、Zr:0〜0.2%、Nb:0〜
0.2%、Pb:0〜0.35%、Ca:0〜0.01
%、S:0.13%以下、残部はFe及び不可避不純物
の化学組成からなる鋼を熱間加工後に球状化焼鈍して芯
部硬度をHv180以下とし、次いで冷間加工して芯部
硬度をHv250以上とするとともに、脱炭深さを鋼材
の表面から0.1〜0.4mmにすることを特徴とする
軟窒化用鋼材の製造方法。
【0015】(3)上記(1)と(2)のいずれかに記
載の方法で製造した軟窒化用鋼材を素材とし、軟窒化後
の表面硬度がHv600以上、且つ、有効硬化深さが
0.1mm以上であることを特徴とする軟窒化部品。
【0016】なお、「軟窒化用鋼材」とは、冷間加工に
よって所望の形状に成形されたもの、あるいは冷間加工
の後に更に研磨などを施されたもののことをいい、これ
が軟窒化処理に供される。
【0017】又、既に述べたように、「有効硬化深さ」
とは軟窒化処理後の表面からビッカース硬度(Hv)5
00の位置までの距離のことをいい、「表面硬度」とは
表面から0.025mmの位置におけるビッカース硬度
のことをいう。更に、「芯部」とは軟窒化処理後の表面
硬化されていない部分のことをいう。
【0018】なお、本発明における「脱炭」とは、「芯
部」のC含有量よりも重量%で、0.05%以上C含有
量が低下したことをいう。
【0019】以下において、上記(1)〜(3)に記載
のものをそれぞれ(1)〜(3)の発明という。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明者らは、冷間加工性に優れ
た鋼を素材鋼とし、冷間加工後に軟窒化処理するだけで
優れた耐疲労特性、耐摩耗性、耐ピッチング性や耐スポ
ーリング性を呈する軟窒化部品を提供するとともに、上
記軟窒化部品の素材となる軟窒化用鋼材の製造方法を提
供することを目的として種々の調査・研究を行った。す
なわち、上記課題を解決するために、軟窒化部品の素材
となる鋼材の化学組成、並びに各製造工程における適正
なミクロ組織や機械的性質に関して調査・研究を重ね
た。その結果、下記〜の知見を得た。
【0021】軟窒化部品の耐疲労特性や耐ピッチング
性を向上させるには、いずれも表面硬度と有効硬化深さ
を大きくすれば良い。又、耐摩耗性を向上させるには、
表面硬度を大きくすれば良い。一方、耐スポーリング性
を向上させるには、有効硬化深さを大きくすれば良い。
【0022】軟窒化処理を施し、表面硬度をHV60
0以上、有効硬化深さを0.1mm以上とすれば、軟窒
化部品の耐疲労特性、耐摩耗性、耐ピッチング性及び耐
スポーリング性を高めることができる。
【0023】鋼材を球状化焼鈍して硬度をHv180
以下に低下させれば、冷間加工性が向上して金型寿命を
大幅に改善できる。
【0024】素材鋼の化学組成を調整して、球状化焼
鈍で硬度をHv180以下にした鋼材を冷間加工で加工
硬化させ、Hv250以上の硬度にすれば、これに軟窒
化処理を施しても芯部硬度の低下は極めて小さく、Hv
250以上の値が保てる。
【0025】なお、特に断らない限り、軟窒化する前の
状態(例えば球状化焼鈍後や冷間加工後)の硬度とは、
軟窒化後の芯部に相当する部分(例えば「中心部」)の
硬度のことをいう。
【0026】軟窒化後の芯部硬度がHv250以上で
あれば、例えば、自動車のミッションギアのように高い
負荷が加わる部品においても、部品内部を起点として曲
げ疲労が生ずることはない。
【0027】更に、本発明者らが重量%で、C:0.3
0%、Si:0.25%、Mn:0.6%及びAl:
0.03%を基本組成とし、C含有量だけを0.15%
から0.45%まで変化させた鋼材に軟窒化処理を行っ
たところ、軟窒化処理後の有効硬化深さはC含有量が低
い鋼材ほど大きくなることが分かった。そこで、前記の
C含有量を変化させた鋼材を種々の深さまで脱炭させ、
次いで軟窒化処理を行った。この結果、下記に示す重
要な知見が得られた。
【0028】軟窒化処理前の鋼材の表面を0.1〜
0.4mm脱炭させて表層部のC含有量を芯部のC含有
量より低減させた場合に、特に、軟窒化処理後の有効硬
化深さを大きく増大できる。
【0029】上記の〜から、下記の知見が得られ
た。
【0030】優れた冷間加工性を有する鋼を素材鋼と
し、これに冷間加工を施して加工硬化により充分な硬度
を確保し、次に軟窒化して硬く深い窒化層を形成させる
が、この軟窒化のための加熱で前記の加工硬化による硬
度(すなわち芯部硬度)を維持するか、硬度低下を小さ
く抑えることができれば、軟窒化部品に大きな耐疲労特
性、耐摩耗性、耐ピッチング性及び耐スポーリング性を
付与できる。特に、軟窒化前の脱炭深さが0.1〜0.
4mmの場合には、軟窒化処理後の有効硬化深さを大き
くできるので、軟窒化部品に極めて大きな耐疲労特性、
耐摩耗性、耐ピッチング性及び耐スポーリング性を付与
できる。
【0031】本発明は、上記の知見に基づいて完成され
たものである。
【0032】以下、本発明の各要件について詳しく説明
する。なお、成分含有量の「%」は「重量%」を意味す
る。
【0033】(A)素材鋼の化学組成 C:Cは、静的強度を確保するために必要な元素であ
る。しかし、その含有量が0.15%未満では所望の静
的強度(冷間加工後に軟窒化処理した後の芯部硬度、す
なわち最終製品である軟窒化部品の芯部硬度としてHv
250以上)が確保できない。一方、0.45%を超え
ると芯部の延性、靭性の低下をきたすとともに、切削性
や冷間加工性を劣化させてしまう。更に、軟窒化後の表
面硬度及び硬化深さが却って減少するようになる。した
がって、Cの含有量を0.15〜0.45%とした。
【0034】Si:Siは、鋼の焼入れ性を高めるとと
もに静的強度を向上させる作用を有する。しかし、
(1)の発明に係るMo、Wを含まない鋼を素材鋼とす
る軟窒化用鋼材の場合には、Siの含有量が0.10%
以下では、又、(2)の発明に係るMoの含有量とWの
含有量の半分との和であるMo+0.5Wの値が0.0
2%以上の鋼を素材鋼とする軟窒化用鋼材の場合には、
Siの含有量が0.05%未満では、それぞれ前記した
所望の静的強度を安定して確保できない場合がある。一
方、上記のいずれの発明に係る鋼を素材鋼とする軟窒化
用鋼材の場合にも、Siの含有量が0.50%を超える
と靱性の劣化を招いて、冷間加工性に悪影響を及ぼす。
【0035】したがって、(1)の発明に関しては、素
材鋼のSi含有量を0.10%を超え0.50%までと
した。
【0036】又、(2)の発明に関しては、素材鋼のS
i含有量を0.05〜0.50%とした。
【0037】Mn:Mnは、焼入れ性の向上と芯部強度
の確保に有効な元素である。しかし、その含有量が0.
2%未満では添加効果に乏しく、一方、2.5%を超え
て含有すると偏析を生じて冷間加工性の劣化をもたら
す。したがって、Mnの含有量を0.2〜2.5%とし
た。なお、Mnの含有量は0.5〜1.5%とすること
が好ましい。
【0038】Cr:Crは、軟窒化時に鋼材表面から侵
入してくるNと結合して、表面硬度を高めるとともに硬
化深さを大きくするのに極めて有効な元素である。しか
し、その含有量が0.5%未満では上記の作用が期待で
きない。一方、Crを2.0%を超えて含有させると、
軟窒化によって表面硬度が高くなりすぎるために、表面
から芯部にかけての硬度勾配が急激なものとなってしま
い、却って耐スポーリング性や耐ピッチング性が劣化し
てしまう。したがって、Crの含有量を0.5〜2.0
%とした。
【0039】V:Vは、軟窒化処理時に鋼材表面から侵
入してくるN及びCと結合して微細なバナジウム炭窒化
物として析出することにより、表面硬度を高め、更に、
硬化深さを大きくする作用を有する。V添加鋼において
は上記のCr添加の場合に比べて、表面硬度の上昇割合
が小さいのに対して硬化深さの増大割合は極めて大き
く、且つ前記炭窒化物が析出して芯部硬度を高めるた
め、硬化深さの大きい、表面から芯部への硬度勾配が緩
やかな硬化曲線が得られる。しかし、V含有量が0.0
5%未満では添加効果に乏しく、一方、0.5%を超え
て含有させても前記の効果が飽和してコストが嵩むばか
りか、却って脆化現象の発現をきたすようになる。した
がって、V含有量を0.05〜0.5%とした。なお、
V含有量は0.1〜0.3%とすることが好ましい。
【0040】Al:Alは、鋼の脱酸の安定化及び均質
化を図る作用がある。更に、侵入Nと結合して表面硬度
を高める効果を有する。しかし、その含有量が0.00
5%未満では上記の作用が期待できない。一方、0.3
%を超えると硬化深さを小さくしてしまう。したがっ
て、Alの含有量を0.005〜0.3%とした。な
お、Al含有量は0.005〜0.15%とすることが
好ましい。
【0041】Mo+0.5W:MoとWは、鋼の焼入れ
性を高めて軟窒化時の芯部の軟化抵抗を高め、前記した
所望の静的強度を確保するのに有効な元素である。又、
焼準後の組織をベイナイト含有組織とする効果も有す
る。
【0042】しかし、(1)の発明に係るSiを0.1
0%を超えて含む鋼を素材鋼とする軟窒化用鋼材の場合
には、前記した所望の静的強度を、最終製品である軟窒
化部品に対して容易に付与できるため、Mo、Wを含有
させる必要はない。
【0043】(2)の発明に関しては、特に0.10%
以下のSiしか含有しない鋼を素材鋼とする軟窒化用鋼
材の場合(この発明にあっては、Si:0.05〜0.
10%の場合)には、Moの含有量とWの含有量の半分
との和であるMo+0.5Wの値が0.02%未満では
添加効果に乏しい。そのため、Mo+0.5Wで0.0
2%以上のMoとWを含有させることが必要である。な
お、(2)の発明において、Siを0.10%を超えて
含む鋼を素材鋼とする軟窒化用鋼材にあっては、0.0
2%以上のMo+0.5Wが含有されていると、所望の
静的強度を最終製品である軟窒化部品に付与することが
極めて容易となり、又、焼準後の組織も容易にベイナイ
ト含有組織にすることが可能である。
【0044】一方、(2)の発明に関して、(a)Si
の含有量が0.10%以下である鋼を素材鋼とする軟窒
化用鋼材、(b)0.10%を超えるSiを含有する鋼
を素材鋼とする軟窒化用鋼材、のいずれの場合にも、M
oとWがMo+0.5Wの値で0.3%を超えて含有さ
れていても所望の静的強度確保の効果及び焼準後の組織
をベイナイト含有組織とする効果が飽和してコストが嵩
むばかりとなる。したがって、(2)の発明に関して
は、素材が含有するMo+0.5Wの量を0.02〜
0.3%とした。なお、(2)の発明においてWを単独
で添加する場合のW含有量の上限は0.5%とすること
が好ましい。
【0045】Ti:Tiは添加しなくても良い。添加す
れば窒化物や炭窒化物として析出し、軟窒化時の芯部の
軟化抵抗を高める作用を有するので、前記した所望の静
的強度が安定して確保できる。上記の効果を確実に得る
には、Tiは0.01%以上の含有量とすることが好ま
しい。しかし、Tiを0.20%を超えて含有させると
靭性の劣化をきたす。したがって、Tiの含有量を0〜
0.20%とした。
【0046】Zr:Zrは添加しなくても良い。添加す
れば窒化物や炭窒化物として析出し、軟窒化時の芯部の
軟化抵抗を高める作用を有するので、前記した所望の静
的強度が安定して確保できる。上記の効果を確実に得る
には、Zrは0.01%以上の含有量とすることが好ま
しい。しかし、Zrを0.20%を超えて含有させると
靭性の劣化をきたす。したがって、Zrの含有量を0〜
0.20%とした。
【0047】Nb:Nbは添加しなくても良い。添加す
れば窒化物や炭窒化物として析出して軟窒化時の芯部の
軟化抵抗を高め、更に組織を微細化するので、前記した
所望の静的強度が安定して確保できる。上記の効果を確
実に得るには、Nbは0.01%以上の含有量とするこ
とが好ましい。しかし、Nbを0.20%を超えて含有
させると靭性の劣化をきたす。したがって、Nbの含有
量を0〜0.20%とした。
【0048】Pb:Pbは添加しなくても良い。添加す
れば軟窒化処理前に、冷間加工して成形した部品(軟窒
化用鋼材)を切削して成形する場合の切削性を向上させ
る効果を有する。この効果を確実に得るには、Pbは
0.03%以上の含有量とすることが好ましい。しか
し、Pbを0.35%を超えて含有させると熱間加工性
が劣化して熱間圧延や熱間鍛造などの熱間加工時に割れ
の発生を招く。したがって、Pbの含有量を0〜0.3
5%とした。
【0049】Ca:Caも添加しなくても良い。添加す
れば冷間加工で成形した部品に切削成形が必要な場合の
切削性を向上させる効果を有する。この効果を確実に得
るには、Caは0.001%以上の含有量とすることが
好ましい。一方、Caを0.01%を超えて含有させる
には特殊な溶製技術や設備を要してコストが嵩む。した
がって、Caの含有量を0〜0.01%とした。
【0050】S:Sは含有させなくても良い。含有させ
れば軟窒化処理前に、冷間加工で成形した部品を切削し
て成形する場合の切削性を高める効果を有する。この効
果を確実に得るためには、Sは0.04%以上の含有量
とすることが好ましい。しかし、Sを0.13%を超え
て含有させると熱間加工性及び冷間加工性の著しい劣化
を招く。したがって、Sの含有量を0.13%以下とし
た。
【0051】(B)球状化焼鈍 球状化焼鈍は上記(A)に示した化学組成を有する鋼材
を熱間加工(例えば熱間圧延)した後に、その硬度を低
下させて冷間加工性を高めるとともに、それによって金
型寿命を大幅に改善し、最終製品である所要の軟窒化部
品の製造コストを低く抑えるのに必須の処理である。
又、球状化焼鈍は鋼材に対して後述する所定の脱炭深さ
を付与するためにも必須の処理である。
【0052】球状化焼鈍後の硬度、特に芯部硬度がHv
180を超えると、金型の寿命が大幅に低下してしまう
ため、最終製品である所望の軟窒化部品の製造コストが
著しく高くなる。したがって、球状化焼鈍後の芯部硬度
はHv180以下としなければならない。なお、球状化
焼鈍後の硬度の下限値については、特に制限する必要は
ない。
【0053】なお、鋼材に対する球状化焼鈍は熱間加工
した後そのまま行っても良いし、熱間加工後に焼準を施
してから行っても良い。更に、球状化焼鈍は、その処理
後に所望のHv180以下の芯部硬度、及び0.1mm
以上の脱炭深さが得られさえすれば何ら特殊な方法で行
う必要はなく、通常の方法で行えば良い。予備テストに
よって、球状化焼鈍前に行った熱間加工の条件及び焼準
条件との関係で球状化焼鈍後の脱炭深さを求めておくこ
とによって、球状化焼鈍の詳細なヒートパターンを決定
することが可能である。
【0054】(C)冷間加工 球状化焼鈍して芯部硬度をHv180以下に調整した上
記(B)の鋼材を、次に冷間加工して所望の軟窒化部品
の形状に仕上げる。
【0055】なお、既に述べたように(1)及び(2)
の発明に係る「軟窒化用鋼材」とは、軟窒化処理に供さ
れる前のものをいう。
【0056】上記の冷間加工は、例えば、冷間鍛造、冷
間転造や冷間引き抜きなど、通常の方法で行えば良い
が、加工した部品の芯部硬度をHv250以上にする必
要がある。何故ならば、芯部硬度をHv180以下に調
整された上記(B)の鋼材は、冷間での加工を受けて芯
部硬度がHv250以上に上昇すれば、これに軟窒化処
理を施しても、軟窒化時の加熱による芯部硬度の低下は
極めて小さく、Hv250以上の値が保てるからであ
る。そして、軟窒化後の芯部硬度がHv250以上であ
れば、既に述べたように、例えば、自動車のミッション
ギアのように高い負荷が加わる部品においても、部品内
部を起点として曲げ疲労が生ずることはない。
【0057】上記(B)に示した球状化焼鈍して芯部硬
度をHv180以下に調整した鋼材を冷間加工して、芯
部硬度をHv250以上となすには、減面率で20%以
上の加工が加わるようにして寸法調整しておけば良い。
【0058】なお、冷間加工後の芯部硬度の上限値は特
に制限する必要はない。すなわち、次に述べる鋼材の表
面からの脱炭深さとして0.1〜0.4mmが得られさ
えすれば、設備上加えることが可能な最高の減面率で加
工して、極めて大きな硬度となっても良い。但し、極め
て良好な衝撃特性が求められる用途の場合には、冷間加
工後の芯部硬度の上限値をHv400に制限することが
好ましい。
【0059】(D)脱炭深さ 軟窒化処理前の鋼材の表面を0.1〜0.4mm脱炭さ
せて表層部のC含有量を芯部のC含有量より低減させた
場合に、特に、軟窒化処理後の有効硬化深さを大きく増
大できる。そして、軟窒化前の脱炭深さが0.1〜0.
4mmで、且つ、芯部硬度がHv250以上の場合に
は、軟窒化後に極めて大きな耐疲労特性、耐摩耗性、耐
ピッチング性及び耐スポーリング性が得られる。
【0060】なお、「脱炭」とは既に述べたように、
「芯部」のC含有量よりも0.05%以上C含有量が低
下したことをいう。この「脱炭」は熱間加工、焼準及び
球状化焼鈍時に生じさせることができる。脱炭量は、鋼
材表面から0.1mmの深さの位置でのC含有量が、
「芯部」におけるC含有量の半分以下となることが好ま
しい。
【0061】脱炭深さが、鋼材表面から0.1mm未満
の場合には、軟窒化による充分な有効硬化深さが得られ
ない。一方、脱炭深さが鋼材表面から0.4mmを超え
た場合には、軟窒化処理すると、軟窒化硬化層と芯部と
の境界にC含有量の低い軟化層が残存したままとなるた
め、前記の境界付近から剥離を生じてしまう。したがっ
て、脱炭深さを鋼材の表面から0.1〜0.4mmと規
定した。
【0062】なお、本発明で規定する脱炭深さは、軟窒
化処理に供する前のものであるので、前記(C)の冷間
加工を受けた鋼材が所定の脱炭深さを有しておれば、脱
炭深さを調整することなくその鋼材を軟窒化処理すれば
良い。一方、前記(C)の冷間加工した鋼材の脱炭深さ
が0.4mmを超える場合には、切削や研磨によって所
定の脱炭深さに調整してから鋼材を軟窒化処理すれば良
い。なお、研削や研磨を行った後の寸法が、所望の軟窒
化部品の寸法よりも小さくなる場合には、研削代や研磨
代を加味して冷間加工時の寸法調整をしておけば良い。
【0063】(B)の球状化焼鈍の項でも述べたが、予
備テストによって、球状化焼鈍前に行った熱間加工の条
件及び焼準条件との関係で球状化焼鈍後の脱炭深さを求
めておけば、前記(C)の冷間加工した鋼材の脱炭深さ
を0.1〜0.4mmに調整することは比較的容易であ
る。
【0064】これまで述べてきた製造方法によって、
(1)及び(2)の発明に係る「軟窒化用鋼材」が得ら
れる。この鋼材は、次に述べる軟窒化処理を施されて、
(3)の発明に係る軟窒化部品となる。
【0065】(E)軟窒化 軟窒化用鋼材に施す軟窒化の方法は何ら制限しなくても
良く、通常の方法で行えば良い。軟窒化処理を施し、表
面硬度をHv600以上、有効硬化深さを0.1mm以
上とすれば、軟窒化部品の耐疲労特性、耐摩耗性、耐ピ
ッチング性及び耐スポーリング性を高めることができる
のである。
【0066】既に述べた軟窒化用鋼材を軟窒化して表面
硬度をHv600以上、有効硬化深さを0.1mm以上
とするには、たとえば、その軟窒化用鋼材を570℃程
度の温度の、RXガスにアンモニアを添加したガス中に
3〜9時間保持し、その後油中に冷却すれば良い。
【0067】なお、軟窒化後の表面硬度及び有効硬化深
さの上限値は特に制限しなくても良い。
【0068】(3)の発明に係わる軟窒化部品は、素材
鋼である上記(A)の化学組成を有する鋼を、例えば通
常の方法によって溶製した後、熱間で圧延又は鍛造し、
必要に応じて焼準を施し、(B)に示した球状化焼鈍を
行い、次いで、(C)に示した冷間加工によって所望の
部品形状に成形するとともに表面からの脱炭深さを調整
し、更に、必要に応じて表面からの脱炭深さ調整のため
の切削や研磨を行ってから軟窒化処理し、この後更に必
要に応じて研削や研磨を施して製造される。
【0069】ここで、本発明が対象とする化学組成を有
する素材鋼においては、熱間加工後に焼準して、ベイナ
イトを含む組織としておけば、球状化焼鈍後の炭化物
(主としてセメンタイト)の球状化率が向上する。した
がって、球状化焼鈍で冷間加工前の硬度を大きく低下さ
せることができる。冷間加工前の鋼の硬度を下げること
は、冷間加工性の向上につながり、金型寿命が延びて金
型コストの削減が図れる。更に、球状化焼鈍時間を短縮
することができて、生産性の向上と製造コストの低減が
図れる。このため、(1)及び(2)の発明の軟窒化用
鋼材の製造方法においては、熱間加工後に焼準してから
球状化焼鈍することが好ましい。
【0070】
【実施例】表1及び表2に示す化学組成を有する鋼を通
常の方法によって180kg真空溶製した。表1におけ
る鋼1〜15は化学組成が本発明で規定する範囲内の鋼
(以下、本発明例の鋼という)、鋼16〜25は成分の
いずれかが本発明で規定する範囲から外れた比較例の鋼
である。比較例の鋼のうち鋼24及び鋼25はそれぞれ
JIS規格のSCM435及びSACM645に相当す
るものである。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】次いで、これらの鋼を通常の方法によって
鋼片とした後、1250℃に加熱してから、1250〜
950℃の温度で熱間鍛造して、直径32mmとし、更
に、ピーリング加工して黒皮を取り除き、直径30mm
の丸棒とした。
【0074】鋼6については、上記と同じ条件で熱間鍛
造して直径40mmの丸棒も作製した。なお、この直径
40mmの丸棒は、後述するようにピーリング代を大き
くして、芯部と表面部のC含有量を同じ値とするために
準備したものである。
【0075】こうして得られた直径30mmと40mm
の丸棒を、870〜925℃の各種温度で焼準し、次い
で、図1に示すヒートパターンで球状化焼鈍し、脱炭深
さを変化させた。
【0076】なお、鋼2及び鋼9については、比較のた
めに、直径32mmに熱間鍛造後、直径30mmにピー
リング加工したまま、つまり焼準を行わないで球状化焼
鈍するものも加えた。
【0077】上記のようにして得られた直径が30mm
の丸棒を用いて、下記の各種調査を行った。
【0078】先ず、焼準ままの丸棒からは、直径が30
mmで厚さが20mmの試験片を切り出し、光学顕微鏡
による中心部の組織観察を行った。
【0079】一方、球状化焼鈍後の各丸棒からは、直径
が30mmで厚さが20mmの硬度試験片と直径が15
mmで長さが22.5mmの冷間加工用試験片を作製し
た。
【0080】上記の硬度試験片を用いて、マイクロビッ
カース硬度計により中央部の硬度測定を行った。
【0081】又、上記の冷間加工用試験片を用いて、5
00t高速プレス機による通常の方法で冷間(室温)拘
束型据え込み試験を行い、限界据え込み率を測定した。
なお、各条件ごとに3回の据え込み試験を行い、3個の
試験片のすべてに割れが発生しない最大加工率(減面
率)を限界据え込み率として評価した。
【0082】一方、前記のようにして得られた球状化焼
鈍後の直径30mmの各丸棒を、通常の方法により冷間
(室温)で直径25mm(減面率30.6%)までドロ
ーベンチを用いて引き抜き加工した。次いで、RXガス
にアンモニアガスを1:1の割合で添加した温度が57
0℃のガス中で6時間保持して軟窒化処理を施し、その
後油中へ冷却した。
【0083】引き抜きままの丸棒からは、直径が25m
mで厚さが20mmの硬度試験片を作製し、マイクロビ
ッカース硬度計を用いて中央部の硬度測定を行った。
又、直径が25mmで厚さが5mmの試験片を切り出
し、EPMAを用いてC元素の線分析を行うことによ
り、表面からの脱炭深さを測定した。
【0084】軟窒化処理した丸棒からも、直径が25m
mで厚さが20mmの硬度試験片を作製し、マイクロビ
ッカース硬度計により表面硬度(表面から0.025m
mの位置におけるHv硬度)、有効硬化深さ(表面から
Hv500の位置までの距離)及び中央部硬度の測定を
行った。
【0085】鋼6の球状化焼鈍した直径が40mmの丸
棒を用いた下記の各種調査も行った。
【0086】すなわち、直径40mmの丸棒から、直径
が25mmで長さが15mmの硬度試験片と直径が15
mmで長さが22.5mmの冷間加工用試験片を作製し
た。
【0087】こうして得た硬度試験片を用いて、マイク
ロビッカース硬度計により中央部の硬度測定を行った。
【0088】又、上記の冷間加工用試験片を用いて、5
00t高速プレス機による通常の方法で冷間(室温)拘
束型据え込み試験を行い、限界据え込み率を測定した。
なお、各条件ごとに3回の据え込み試験を行い、3個の
試験片のすべてに割れが発生しない最大加工率(減面
率)を限界据え込み率として評価した。
【0089】一方、球状化焼鈍後の直径40mmの丸棒
を、直径25mmにピーリング加工し、この後、通常の
方法によって冷間(室温)で直径20.9mm(減面率
30.1%)までドローベンチを用いて引き抜き加工し
た。次いで、前述のRXガスにアンモニアガスを1:1
の割合で添加した温度が570℃のガス中で6時間保持
して軟窒化処理を施し、その後油中へ冷却した。
【0090】引き抜きままの丸棒からは、直径が20.
9mmで厚さが20mmの硬度試験片を作製し、マイク
ロビッカース硬度計を用いて中央部の硬度測定を行っ
た。又、直径が20.9mmで厚さが5mmの試験片を
切り出し、EPMAを用いてC元素の線分析を行うこと
により、芯部と表面部のC含有量が等しいことを確認し
た。
【0091】軟窒化処理した丸棒からも、直径が20.
9mmで厚さが20mmの硬度試験片を作製し、マイク
ロビッカース硬度計により表面硬度(表面から0.02
5mmの位置におけるHv硬度)、有効硬化深さ(表面
からHv500の位置までの距離)及び中央部硬度の測
定を行った。
【0092】表3〜5に各種の試験結果をまとめて示
す。
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
【表5】
【0096】表3及び表4から、本発明例の場合には、
球状化焼鈍後の芯部硬度はいずれもHvで180を下回
り、限界据え込み率は80%を超えている。そして、減
面率で30.6%の冷間加工(引き抜き加工)によっ
て、容易にHv250を超える芯部硬度が得られてい
る。更に、軟窒化処理後にはHv600を超える表面硬
度と、0.1mmを超える有効硬化深さが得られてお
り、しかも軟窒化のための570℃での6時間の熱処理
を受けても中央部硬度(芯部硬度)はHv250を超え
る値に維持されている。
【0097】一方、表5から下記の事項が明らかであ
る。
【0098】すなわち、本発明例の鋼であっても、脱炭
深さが表面から0.1mm未満の場合には、有効硬化深
さが0.1mmに達していない。
【0099】又、比較例の鋼の場合には、(イ)球状化
焼鈍後の芯部硬度がHv180を超えて限界据え込み率
が低い、(ロ)冷間加工後の芯部硬度が低いために軟窒
化後の芯部硬度も低い、(ハ)冷間加工後の芯部硬度は
Hv250を超えるものの軟窒化後の芯部硬度が大きく
低下する、(ニ)軟窒化後の表面硬度がHv600を下
回る、(ホ)軟窒化後の有効硬化深さが0.1mmを下
回る、のいずれか1つ以上に該当する。このため、冷間
加工時の金型寿命が短くて金型コストが嵩むため、所望
の軟窒化部品の製造コストは極めて高いものとなってし
まったり、製造コストは低くても軟窒化部品の耐疲労特
性、耐摩耗性、耐ピッチング性及び耐スポーリング性は
劣ったものとなってしまう。
【0100】
【発明の効果】本発明の軟窒化部品には、Hv250を
超える芯部硬度、Hv600を超える表面硬度及び0.
1mmを超える有効硬化深さが得られる。このため、本
発明の軟窒化部品は耐疲労特性、耐摩耗性、耐ピッチン
グ性及び耐スポーリング性に優れる。したがって、自動
車用や産業機械用の歯車など大きな疲労強度や耐摩耗性
が要求される部品として利用することができる。この軟
窒化部品の素材となる軟窒化用鋼材は、本発明の方法に
よって比較的容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における球状化焼鈍のヒートパターンを
示す図である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.15〜0.45%、S
    i:0.10%を超え0.50%まで、Mn:0.2〜
    2.5%、Cr:0.5〜2.0%、V:0.05〜
    0.5%、Al:0.005〜0.3%、Ti:0〜
    0.2%、Zr:0〜0.2%、Nb:0〜0.2%、
    Pb:0〜0.35%、Ca:0〜0.01%、S:
    0.13%以下、残部はFe及び不可避不純物の化学組
    成からなる鋼を熱間加工後に球状化焼鈍して芯部硬度を
    Hv180以下とし、次いで冷間加工して芯部硬度をH
    v250以上とするとともに、脱炭深さを鋼材の表面か
    ら0.1〜0.4mmにすることを特徴とする軟窒化用
    鋼材の製造方法。
  2. 【請求項2】重量%で、C:0.15〜0.45%、S
    i:0.05〜0.50%、Mn:0.2〜2.5%、
    Cr:0.5〜2.0%、V:0.05〜0.5%、A
    l:0.005〜0.3%、Mo+0.5W:0.02
    〜0.3%、Ti:0〜0.2%、Zr:0〜0.2
    %、Nb:0〜0.2%、Pb:0〜0.35%、C
    a:0〜0.01%、S:0.13%以下、残部はFe
    及び不可避不純物の化学組成からなる鋼を熱間加工後に
    球状化焼鈍して芯部硬度をHv180以下とし、次いで
    冷間加工して芯部硬度をHv250以上とするととも
    に、脱炭深さを鋼材の表面から0.1〜0.4mmにす
    ることを特徴とする軟窒化用鋼材の製造方法。
  3. 【請求項3】請求項1、請求項2のいずれかに記載の方
    法で製造した軟窒化用鋼材を素材とし、軟窒化後の表面
    硬度がHv600以上、且つ、有効硬化深さが0.1m
    m以上であることを特徴とする軟窒化部品。
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