JP2011122208A - 軟窒化歯車 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造性と疲労特性に優れ、自動車、建設機械用として好ましい軟窒化歯車を提供する。
【解決手段】質量%で、C≦0.15%、Si≦0.5%、Mn≦2.5%、Ti:0.03〜0.35%、Mo:0.03〜0.8%、必要に応じて、Nb≦0.08%、V≦0.3%、W≦1.5%の一種または二種以上を含み、且つ下記式を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる、軟窒化後において、ベイナイト面積率50%以上の組織を有し、ベイナイト相中に粒径が10nm未満の微細析出物が全析出物の90%以上、分散析出した歯車。0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184)}≦1.5、各元素は含有量(mass%)で含有しない元素は0とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、軟窒化歯車に関し、特に製造性と疲労特性に優れ、自動車、建設機械用として好ましいものに関する。
自動車等の歯車には優れた疲労特性が要求され、表面硬化処理が施されるのが通例である。表面硬化処理として浸炭処理、高周波焼入処理および窒化処理が良く知られている。
浸炭処理は高温のオーステナイト域においてCを侵入・拡散させるために、深い硬化深さが得られ、疲労強度の向上に有効である。
しかしながら、熱処理歪が発生することから、静粛性等の観点より厳しい寸法精度の要求される歯車には、その適用に限界があった。
高周波焼入処理は高周波誘導加熱により表層部を焼入れする処理で、浸炭処理と同様に寸法精度に劣る。
窒化処理はAc変態点以下の温度域で窒素を侵入・拡散させて表面硬さを高める処理であるが、処理時間が50〜100時間と長く、また処理後に表層の脆い化合物層を除去する必要があった。
そのため、窒化処理と同程度の処理温度で、窒化を短時間で処理する軟窒化処理が開発され、近年では機械構造用部品などを対象に広く普及している。軟窒化処理は500−600℃の温度域でNとCを同時に侵入・拡散させて、表面を硬化するもので、従来の窒化処理と比較して半分以下の処理時間とすることが可能である。
しかしながら、浸炭処理では焼入硬化により芯部硬度を上昇させることが可能であるのに対し、軟窒化処理は鋼の変態点以下の温度で処理を行うため、芯部硬度が上昇せず、軟窒化処理材は浸炭処理材と比較すると、疲労強度が劣る。
軟窒化処理材の疲労強度を高めるため、通常、軟窒化前に焼入・焼戻し処理により、芯部硬度を上昇させることが行われるが、得られる疲労強度は十分とは言い難く、また、製造コストが上昇し、機械加工性も低下する。
このような問題を解決するため、鋼の成分組成を、Ni,Al,Cr,Tiを含有する成分組成とし、軟窒化時に芯部はNi−Al、Ni−Ti系の金属間化合物あるいはCu化合物により時効硬化させ、表面は窒化層中にCr,Al,Ti等の窒化物や炭化物を析出硬化させることが提案されている(特許文献1、特許文献2)。
特許文献3にはCuを0.5〜2%含有した鋼を、熱間鍛造で鍛伸後、空冷してCuを固溶したフェライト主体組織とし、580℃×120分の軟窒化処理中にCuを析出させ、更にTi,V、Nb炭窒化物の析出硬化も併用して軟窒化処理後において優れた曲げ疲労特性を備えた鋼とすることが記載されている。
特開平5−59488号公報 特開平7−138701号公報 特開2002−69572号公報
しかしながら、特許文献1,2記載の軟窒化鋼はCu等の析出硬化により、曲げ疲労強度は向上するものの、加工性の確保が十分とは言い難く、特許文献3記載の軟窒化鋼は、Cu,Ti,V,Nbを比較的多量に添加することが必要で、生産コストが高く、特許文献1〜3記載の軟窒化鋼を用いて、安価で疲労特性に優れる軟窒化歯車を製造することは困難であった。
そこで、本発明は比較的安価な生産コストで軟窒化後における芯部硬さを高めることが可能で、疲労特性に優れる軟窒化歯車を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋼の軟窒化後の疲労特性に及ぼす組織、組成の影響について鋭意検討を行い、軟窒化時に微細なナノメータサイズの析出物を析出させて芯部硬度を上昇させた場合、軟窒化後において、優れた疲労特性が得られることを知見した。
本発明は以上の知見を基に更に検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、
1.質量%で、C≦0.15%、Si≦0.5%、Mn≦2.5%、Ti:0.03〜0.35%、Mo:0.03〜0.8%を含み、軟窒化後において、ベイナイト面積率50%以上の組織を有し、ベイナイト相中に粒径が10nm未満の微細析出物が全析出物の90%以上、分散析出していることを特徴とする軟窒化歯車。
2.鋼組成が、更に式(1)を満足することを特徴とする、1記載の軟窒化歯車。
0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦1.5 −−−(1)
但し、各元素は含有量(質量%)とし、含有しない元素は0とする。
3.微細析出物がTi、Moを含む炭化物であることを特徴とする1または2記載の軟窒化歯車。
4.鋼組成として、更に質量%で、Nb≦0.08%、V≦0.3%、W≦1.5%の一種または二種以上を含有する、1記載の軟窒化歯車。
5.鋼組成が、更に式(2)を満足することを特徴とする、4に記載の軟窒化歯車。
0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184)}≦1.5 −−−(2)
但し、各元素は含有量(質量%)とし、含有しない元素は0とする。
6.微細析出物がTiと、Moと、Nb、V、Wの少なくとも一種とを含む炭化物であることを特徴とする、4または5に記載の軟窒化歯車。
本発明によれば、軟窒化前は被削性に優れ、軟窒化後は従来鋼:例えばSCM420鋼を用いた歯車と同等の強度・靭性と、より優れた疲労特性とを備えた軟窒化歯車が安価な製造コストで得られ、産業上極めて有用である。
軟窒化歯車を製造する概略製造工程を示す図。
本発明に係る軟窒化歯車のミクロ組織、素材の成分組成および好ましい製造条件について以下に詳細に説明する。尚、ミクロ組織は軟窒化後のミクロ組織とする。
1.ミクロ組織
軟窒化後のミクロ組織をベイナイト面積率50%以上で、かつベイナイト相中に粒径10nm未満の微細析出物を分散析出させた組織とする。母相をベイナイト組織とした場合、フェライト等その他の組織に比べ、軟窒化後の微細析出物の析出量が多く、ベイナイト面積率を50%以上とすると、軟窒化後の疲労強度ならびに強度が顕著に向上する。
微細析出物の粒径は10nm未満とする。微細析出物の粒径が10nm以上の場合、軟窒化後の析出強化が不充分で、従来鋼(SCM420等)の焼入・焼戻し材を素材として軟窒化した場合と比較して強度が向上せず、また、強度特性において降伏比も上昇しないので、疲労特性も向上しない。
強度・疲労特性の向上には、微細析出物の粒径は小さいほど有効で、望ましくは5nm、更に望ましくは3nm以下である。
そのような微細析出物としてTiとMoを含む炭化物、またそれらに更にNb、V、Wの一種または二種以上を含む炭化物が好ましい。これらの微細析出物の分布形態は母相中に分散析出することが望ましい。本発明において分散析出は均一分散を意味する。
また、本発明において、上述した微細析出物が、全析出物の90%以上であれば、軟窒化後目的とする疲労強度が得られる。但し、10nm以上の大きさの析出物は、析出する際に析出物形成元素を消費し、強度に悪影響をあたえるため、50nm以下とすることが好ましい。
上述した析出物との他に少量のFe炭化物を含有しても本発明の効果は損なわれないが、平均粒径が5μm以上のFe炭化物を多量に含むと靭性を阻害するため、本発明においては含有されるFe炭化物の大きさの上限は5μm、含有率は全体の5%以下とすることが望ましい。
本発明における微細析出物の全析出物に占める割合は、次の方法で決定できる。まず電子顕微鏡試料を、ツインジェット法を用いた電解研磨法で作成し、加速電圧200kVで観察する。
その際、微細析出物が母相に対して計測可能なコントラストになるように母相の結晶方位を制御し、析出物の数え落としを最低限にするために焦点を正焦点からずらしたデフォーカス法で観察を行う。
また、析出物粒子の計測を行った領域の試料の厚さは電子エネルギー損失分光法を用いて、弾性散乱ピークと非弾性散乱ピーク強度を測定することで評価する。
この方法により、粒子数の計測と試料厚さの計測を同じ領域について実行することができる。粒子数および粒子径の測定は試料の0.5×0.5μmの領域4箇所について行い、1μm当たりに分布する析出物を粒径ごとの個数として算出する。
得られた値と試料厚さから、1μm当たりに分布する析出物の、粒子径ごとの個数を算出し、径が10nm未満の析出物について、測定した全析出物に占める割合を算出する。
また、本発明においてベイナイト面積率50%以上の組織とは、断面組織観察(200倍の光学顕微鏡組織観察)でベイナイト組織の面積率50%以上とし、好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上とする。
2.成分組成
本発明に係る軟窒化歯車に用いる素材は、以下の成分組成とすることが好ましい。説明において%,ppmは質量%,質量ppmとする。

Cはベイナイト組織生成および強度確保のため添加する。0.15%超えで含有すると微
細析出物が粗大化し、強度が低下するため0.15%以下とする。より好ましくは0.03%以上0.12%以下である。
Si
Siは脱酸のため添加するが、0.5%を超えるとフェライトおよびベイナイト組織中に
固溶し、機械加工性および冷間加工性を劣化させるため0.5%以下とする。より好まし
くは0.3%以下である。
Mn
Mnはベイナイト組織生成ならびに強度向上に有効なため添加するが、2.5%を超える
と機械加工性および冷間加工性を劣化させるので2.5%以下とする。より好ましくは0.5%以上2.0%以下である。さらに好ましくは1.0%以上2.0%以下である。
Ti
TiはTi系炭化物や、MoとともにTi−Mo系炭化物を含む析出物を微細に析出させ、軟窒化処理材の疲労強度を向上させるため添加する。0.03%未満では析出物量が少なく所望の疲労強度が得られないため0.03%以上とし、一方、0.35%を超えて添加すると析出物が粗大化し、疲労強度向上効果が低下するため0.03〜0.35%とする。より好ましくは0.03〜0.25%である。
Mo
MoはMo系炭化物や、TiとともにTi−Mo系炭化物を含む析出物を微細に析出させ、軟窒化処理材の疲労強度を向上させるため添加する。疲労強度向上のため0.03%以上添加し、一方、0.8%を超えて添加すると、機械加工性が低下するため0.03〜0.8%とする。より好ましくは0.10〜0.45%である。さらに好ましくは0.12〜0.40%である。
Moは拡散速度が遅く、Tiとともに析出する場合、析出物の成長速度が低下し、微細な析出物が得られやすい。
(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}
本パラメータ式は、析出物の大きさに影響を与えるもので、0.5以上、1.5以下とした場合、粒径10nm未満の微細析出物の形成が容易となる。本パラメータ式において各元素は含有量(質量%)とする。
以上が本発明に係る軟窒化歯車に用いる素材の基本成分組成であるが、更に、特性を向上させる場合、Nb、V、Wの一種または二種以上を添加する。
Nb
NbはTiと同様に、微細析出物を形成して疲労強度向上に寄与する。また、組織を微細
化し、結晶粒の整粒化により延性を向上させる。0.08%を超えると過度に微細化し、
延性が低下するため添加する場合は、0.08%以下とする。より好ましくは0.04%以下である。

VはTiと同様に、微細析出物を形成して疲労強度向上に寄与するが、0.3%を超えると析出物が粗大化するようになるため、添加する場合は0.3%以下とする。より好ましくは0.2%以下である。さらに好ましくは0.15%以下である。

WはTiと微細析出物を形成して疲労強度向上に寄与するが、1.5%を超えると析出物が粗大化するようになるため、添加する場合は1.5%以下とする。より好ましくは1.0%以下である。
これらの元素の添加においては、C、Ti、Mo、Nb、V、Wの原子比を規定することが炭化物の微細化に有効で(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184)}を0.5以上、1.5以下とした場合、粒径10nm未満の微細析出物の形成が容易となる。本パラメータ式において各元素は含有量(質量%)とする。
本発明に係る軟窒化歯車に用いる素材の、鍛造後や軟窒化処理後の被削性を向上させる場合は、0.03≦S≦0.1%とし、Pb≦0.2%、Ca≦0.005%、Bi≦0.02%の一種以上を添加することができる。
また、上記添加元素以外の残部はFe及び不可避不純物とするが、脱酸剤としてAlを0.1%以下添加することができる。更に素材の冷間鍛造性を向上させる場合、P≦0.040%、N≦80ppmとし、強度を向上させる場合、Cu≦2%、Ni≦2%、Cr≦2%、B:0.0003〜0.005%の一種または二種以上を添加することができる。尚、これらの元素の含有量や添加の有無により本発明の効果が損なわれることはない。
3.製造条件
図1は本発明に係る軟窒化歯車を製造する概略製造工程を示し、S1は素材となる棒鋼製造工程、S2は搬送工程、S3は軟窒化歯車の仕上げ工程を示す。棒鋼製造工程(S1)で鋼塊を熱間圧延し棒鋼とし品質検査後、出荷する。
軟窒化歯車の仕上げ工程(S3)で、該棒鋼を所定の寸法に切断し、熱間鍛造あるいは冷間鍛造を行い、必要に応じてドリル穿孔や旋削等の切削加工で所望の形状とした後、軟窒化処理を行い歯車製品とする。
また、熱間圧延材をそのまま旋削やドリル穿孔等の切削加工で所望の形状に仕上げ、その後軟窒化処理を行い歯車製品とすることもある。尚、熱間鍛造の場合、熱間鍛造後に冷間矯正が行われる場合がある。また、最終歯車製品に皮膜処理、ショットピーニング処理等がなされる場合もある。以下に望ましい製造工程について詳細に説明する。
圧延加熱温度
圧延加熱温度は950〜1250℃とする。本発明では、圧延材(熱間鍛造部品の素材となる棒鋼)に微細析出物が析出し鍛造性を損なわないよう、熱間圧延時に溶解時から残存する炭化物を固溶させる。
圧延加熱温度は950℃未満とした場合、溶解時から残存する炭化物が固溶しないため、950℃以上とする。また、1250℃を超えると、結晶粒が粗大化して鍛造性が悪化するため、加熱温度は950℃〜1250℃とする。
圧延仕上げ温度
圧延仕上げ温度は800℃未満ではフェライト組織が生成し、次工程として特に、冷間鍛造あるいは切削加工後に軟窒化を施す場合、軟窒化後に母相を面積率で50%以上のベイナイト組織とするためには不利である。また、圧延荷重が高く、圧延材の真円度も劣化する。このため、圧延仕上げ温度を800℃以上とする。
冷却速度
鍛造前に微細析出物が析出し、鍛造性を損なわないよう、圧延後の冷却速度を規定する。微細析出物の析出温度範囲の700〜550℃を、微細析出物が得られる限界冷却速度(0.5℃/sec)超えで冷却する。
軟窒化処理(析出処理)
得られた棒鋼を素材とし、鍛造後、切削加工等により歯車部品形状とする。その後、軟窒化処理を行う。軟窒化処理は微細析出物を析出させるように、軟窒化処理温度:550〜750℃、処理時間10分以上で行う。550℃未満では、十分な量の析出物が得られず、750℃超えでは析出物が粗大化するため、550〜750℃とする。なお、より好ましくは550〜700℃とする。
尚、熱間鍛造を用いた場合、軟窒化後、母相を面積率で50%以上のベイナイト組織とするため、ならびに、熱間鍛造後の冷間矯正や切削加工性の観点から、微細析出物が析出しないように、熱間鍛造時の加熱温度を950〜1250℃、鍛造仕上げ温度を800℃以上、鍛造後の冷却速度を0.5℃/sec超えで行う。
上記製造条件を用いて、図1に示す製造工程により、上述した成分組成の鋼を用いて軟窒化歯車を製造すると優れた疲労特性を有する軟窒化歯車が得られる。以下、本発明の効果を実施例を用いて示す。
表1に示す組成の鋼(No.1〜14)を150kg真空溶解炉にて溶製し、圧延を1200℃加熱、990℃仕上げで行い、その後0.7℃/secで室温まで冷却し90mmφの棒鋼とした。No.14は従来材JIS SCM420である。
これらの素材をさらに、1200℃に加熱後、1100℃にて熱間鍛造を行い、1℃/secおよび一部比較として0.2℃/secで室温まで冷却後切削を行い、モジュール2.5、歯数28枚の歯車に加工した。
得られた歯車について、被削性をドリル切削試験により評価した。熱間鍛造歯車の側面歯底下部に、JIS高速度工具鋼SKH51の6mmφのストレートドリルで送り0.15mm/rev、回転数745rpm、1断面当たり5箇所の貫通穴を開け、ドリルが穿孔不能になるまでの総穴数で評価した。
また、これらの熱間鍛造歯車について、歯の内部(歯面より内側の部分で軟窒化処理を施した場合、窒化されない部分、以下、芯部)の硬度をビッカース硬度計を用い、試験荷重100gにて調査した。
鋼No.1〜13による歯車は、熱間鍛造材にさらにガス軟窒化処理し、鋼No.14による歯車は熱間鍛造材に焼入・焼戻し処理した後、さらにガス軟窒化処理を行った。ガス軟窒化処理はNH:N:CO=50:45:5の雰囲気で525〜775℃に加熱し、5時間保持して行った。 これらの軟窒化処理歯車について、組織観察、硬度および疲労特性調査を行った。
組織観察は歯面中央部断面を光学顕微鏡で観察するとともに、析出物を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、組成をエネルギー分散型X線分光装置(EDX)により求めた。
軟窒化後の表面硬さは歯面の中央部で表面から0.02mmの位置でビッカース硬度計を用い、試験荷重100gにて測定を行い、有効硬化層深さは400HVとなる表面からの深さと定義して測定した。
疲労強度は動力循環式歯車試験機により、回転速度3000rpm、負荷トルク245N・mの条件で試験を行い、歯車破損までの繰り返し回数で評価した。
表2に試験結果を示す。No.1〜8が本発明例、No.9〜16が比較例、No.17がJIS SCM420鋼による従来例である。
表から明らかなように、No.1〜8の軟窒化処理歯車は、従来材(No.17)を焼入・焼戻し処理後軟窒化処理した歯車より、疲労強度が優れている。軟窒化処理前の歯車(熱間鍛造まま歯車)の硬度、ドリル切削加工性については、No.1〜8は、硬度は従来材を用いた歯車(No.17)と同等以上で、ドリル切削加工性は従来材と実用上同等レベルである。
比較例No.9〜16は化学組成あるいは得られたミクロ組織が本発明範囲外で、疲労強度あるいはドリル加工性に劣る。No.9は軟窒化処理温度が高いため、軟窒化処理後、フェライト+パーライト組織となり、また、析出物の粒径も大きく、微細析出物量が少ないため、析出強化が不足し、疲労強度が低い。
No.10は軟窒化処理温度が低いため、軟窒化処理による、微細析出物の生成量が少なく、析出強化が不足し、疲労強度が低い。
No.11は熱間鍛造後の冷却速度が本発明範囲外で遅いため、ベイナイト組織が得られず、軟窒化処理による、微細析出物の生成量が少なく、析出強化が不足し、発明例に比べ疲労強度が低い。
No.12は素材(鋼No.9)のCが本発明範囲外で高いため、軟窒化処理後の微細析出物量が少なく、十分な析出強化が得られず、従来材を用いた歯車より疲労強度が低い。
No.13は素材(鋼No.10)のSi、Mnが本発明範囲外で高いため軟窒化処理前である熱間鍛造ままの歯車の硬度が高く、ドリル加工性が従来材の1/3程度まで低下している。
No.14は素材(鋼No.11)のTiが本発明範囲外で低く、C/(Ti+Mo)も本発明範囲外で高いため、軟窒化処理後の微細析出物量が少なく、十分な析出強化が得られないため、従来材歯車より疲労強度が低い。
No.15は素材(鋼No.12)のMoが本発明範囲外で低いため、軟窒化処理後の微細析出物量が少なく、十分な析出強化が得られないため、従来材歯車より疲労強度が低い。
No.16は素材(鋼No.13)のC/(Ti+Mo)が本発明範囲外で低いため、軟窒化処理後の微細析出物量が少なく、十分な析出強化が得られないため、従来材を用いた歯車より疲労強度が低い。
Figure 2011122208
Figure 2011122208

Claims (6)

  1. 質量%で、C≦0.15%、Si≦0.5%、Mn≦2.5%、Ti:0.03〜0.35%、Mo:0.03〜0.8%を含み、軟窒化後において、ベイナイト面積率50%以上の組織を有し、ベイナイト相中に粒径が10nm未満の微細析出物が全析出物の90%以上、分散析出していることを特徴とする軟窒化歯車。
  2. 鋼組成が、更に式(1)を満足することを特徴とする、請求項1記載の軟窒化歯車。
    0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦1.5 −−−(1)
    但し、各元素は含有量(質量%)とし、含有しない元素は0とする。
  3. 微細析出物がTi、Moを含む炭化物であることを特徴とする請求項1または2記載の軟窒化歯車。
  4. 鋼組成として、更に質量%で、Nb≦0.08%、V≦0.3%、W≦1.5%の一種または二種以上を含有する、請求項1記載の軟窒化歯車。
  5. 鋼組成が、更に式(2)を満足することを特徴とする、請求項4に記載の軟窒化歯車。
    0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184)}≦1.5 −−−(2)
    但し、各元素は含有量(質量%)とし、含有しない元素は0とする。
  6. 微細析出物がTiと、Moと、Nb、V、Wの少なくとも一種とを含む炭化物であることを特徴とする、請求項4または5に記載の軟窒化歯車。
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