JP3734765B2 - 浸炭部品およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は浸炭部品およびその製造方法に関し、特に熱処理歪が少なく自動車、建設機械用に好ましいものに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のクランクシャフトや歯車には優れた疲労特性、耐摩耗性や耐ピッチング性が要求され、C量0.2%前後のクロム鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼等を所望の形状に成形後、浸炭、浸炭窒化処理して製造されている。
【0003】
浸炭処理では、焼入れ時に熱処理歪が生じることが多く、歯車の場合は歯形状が狂い、仕上げ加工、研磨工程が必要で、軸条部品の場合は曲がりを矯正することが必要となり、生産性を阻害し、コストが上昇する。
【0004】
熱処理歪は浸炭処理中にオーステナイト結晶粒が粗大化し、焼入れ性が不安定となり、マルテンサイト変態時の膨張による応力不均一により生じるとされ、その解消が課題となっている。
【0005】
特開昭58−45354号公報、特開昭61−261427号公報は鋼の熱履歴とAl,Nb,N量を調整し、AlやNb窒化物のピン止め効果により粗大粒の発生を抑制することを提案しているが、粗大粒抑止効果の安定性が懸念される。
【0006】
特開平11−50191号公報、特開平11−335777号公報はAl,Nb,Tiなどの窒化物、炭化物、炭窒化物形成元素量と各析出物の大きさ、分布密度、ベイナイト組織分率、フェライトバンド評点、圧延条件(加熱温度、圧延仕上げ温度、冷却速度)を制御することが開示されている。
【0007】
しかしながら、種々の寸法形状を圧延する実操業においてこれら多数のパラメータを制御するのは困難である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、浸炭処理において粗大粒の発生を防止し、熱処理歪の少ない浸炭部品を製造する方法はいまだ確立されていない。
【0009】
そこで本発明では、実操業でも安定して粗大粒の抑制が可能な浸炭部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するため浸炭処理後時のピンニング効果を強化すべく、組織、組成の影響について鋭意検討を行い、浸炭処理前に鋼組織をフェライト単相組織とし、浸炭処理時の加熱を利用して微細析出物を析出させた場合、安定して粗大粒が抑制されることを知見した。
【0011】
本発明は以上の知見を基に更に検討を加えてなされたものである。すなわち、本発明は、
1.鋼組成が、質量%で、C :0.03〜0.2%、Si≦0.5%、Mn≦2%、
Al≦0.1%、Ti:0.03〜0.15%、Mo:0.05〜0.6%、残部Fe及び不可避的不純物よりなり、フェライト面積率が95%以上のフェライト単相組織を有し、フェライト相中に粒径が10nm未満の微細析出物が1×10 個/μm 以上、分散析出していることを特徴とする浸炭部品。
【0012】
2.鋼組成として更に式(1)を満足することを特徴とする、1記載の浸炭部品。
0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦1.5 --- (1)
但し、各元素は含有量(質量%)とする。
【0013】
3.微細析出物がTi、Moの炭化物であることを特徴とする、1または2に記載の浸炭部品。
【0014】
4.鋼組成として、更に質量%で、Nb≦0.08%、V≦0.15%、W≦1.5%の一種または二種以上を含有することを特徴とする、1から3の何れか1つに記載の浸炭部品。
【0015】
5.鋼組成として更に式(2)を満足することを特徴とする、4記載の浸炭部品。
0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184)}≦1.5 --- (2)
但し、各元素は含有量(%)とし、含まれないものは0とする。
【0016】
6.微細析出物がTiとMoとNb、V、Wの内の少なくとも一種とを含む炭化物であることを特徴とする、4または5記載の浸炭部品。
【0017】
7.鋼組成として更に質量%で、S:0.03〜0.1%、Pb≦0.2%、Ca≦0.005%、B≦0.02%の一種または二種以上を添加することを特徴とする、1から6の何れか1つに記載の浸炭部品。
【0018】
8.下記の工程を備えたことを特徴とする浸炭部品の製造方法。
(1)請求項1から7の何れか1つに記載の組成の鋼を1100℃以上に加熱後、仕上げ圧延温度800℃以上で圧延し、圧延後の冷却において、550〜700℃を0.5℃/sec超えの冷却速度で常温まで冷却して、フェライト面積率95%以上のフェライト単相組織を有する棒鋼とする工程。
(2)棒鋼を部品形状とした後、浸炭処理の加熱時に550〜700℃の温度範囲を0.5℃/sec以下の加熱速度で加熱して、フェライト相中に粒径10nm未満の微細析出物を1×10 4 個/μm 3 以上、分散析出させた後、浸炭処理する工程。
【0019】
9.下記の工程を備えたことを特徴とする浸炭部品の製造方法。
(1)請求項1から7の何れか1つに記載の組成の鋼を1100℃以上に加熱後、仕上げ圧延温度800℃以上で圧延し、圧延後の冷却において、550〜700℃を0.5℃/sec超えの冷却速度で常温まで冷却して、フェライト面積率95%以上のフェライト単相組織を有する棒鋼とする工程。
(2)棒鋼を部品形状とした後、浸炭処理の加熱時に550〜700℃の温度範囲で10分以上保持して、フェライト相中に粒径10nm未満の微細析出物を1×10 4 個/μm 3 以上、分散析出させた後、浸炭処理を行う工程。
【0020】
10.下記の工程を備えたことを特徴とする浸炭部品の製造方法。
(1)請求項1から7の何れか1つに記載の組成の鋼を1100℃以上に加熱後、仕上げ圧延温度800℃以上で圧延し、圧延後の冷却において、550〜700℃を0.5℃/sec超えの冷却速度で常温まで冷却して、フェライト面積率95%以上のフェライト単相組織を有する棒鋼とする工程。
(2)棒鋼を部品形状とした後、550〜700℃の温度範囲に10分以上保持して、フェライト相中に粒径10nm未満の微細析出物を1×10 4 個/μm 3 以上、分散析出させる工程。
(3)浸炭工程。
【0021】
11.下記の工程を備えたことを特徴とする浸炭部品の製造方法。
(1)請求項1から7の何れか1つに記載の組成の鋼を1100℃以上に加熱後、仕上げ圧延温度800℃以上で圧延し、圧延後の冷却において、550〜700℃を0.5℃/sec超えの冷却速度で常温まで冷却して、フェライト面積率95%以上のフェライト単相組織を有する棒鋼とする工程。
(2)棒鋼を部品形状とした後、550〜700℃の温度範囲を0.5℃/sec以下の加熱速度で加熱して、フェライト相中に粒径10nm未満の微細析出物を1×10 4 個/μm 3 以上、分散析出させる工程。
(3)浸炭工程。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明に係る浸炭部品のミクロ組織、成分組成および製造条件について以下に詳細に説明する。
【0026】
1.ミクロ組織
本発明に係る浸炭部品は、そのミクロ組織をフェライト単相で且つ粒径10nm未満の微細析出物を含む組織に規定する。
【0027】
浸炭処理前後において部品の母相は変化せず、浸炭処理後の母相を規定することは、浸炭処理前の組織を規定することを意味する。
【0028】
浸炭処理後の組織をフェライト単相とした場合、浸炭処理前の組織もフェライト単相組織となり、粗大粒の発生が抑制される。
【0029】
浸炭処理前、フェライト中に圧延方向につながるパーライトを有する組織の場合、オーステナイト変態時、混粒が生じ、ベイナイト、パーライトを含む複合組織の場合は、制御因子が多く、実製造に適用することはできない。
【0030】
更に上記組織中に微細析出物が分散析出すると、ピンニング作用により粗大粒の生成が抑制される。
【0031】
本発明では微細析出物の粒径は10nm未満とする。析出物の粒径が10nm以上の場合、ピンニング効果が不充分で、粗大粒の生成を抑制できない。
【0032】
微細析出物の粒径は小さいほど有効で、望ましくは5nm,更に望ましくは3nm以下で、そのような微細析出物はTi、Moを単独または複合含有した炭化物、またそれらに更にNb,V,Wの一種または二種以上を含む炭化物が好ましい。
【0033】
微細析出物の単位体積当りの個数は1×104個/μm3以上必要である。微細析出物の個数が少ないとピンニング作用により粗大粒の生成作用が不十分となる。好ましくは、5×104個/μm3以上必要である。
【0034】
これらの微細析出物の分布形態は特に規定しないが、母相中に均一分散(分散析出)することが望ましい。
【0035】
また、本発明において、大きさが10nm未満の微細析出物の占める割合が全析出物の90%以上であれば、焼戻し後目的とする引張強さが得られる。但し、10nm以上の大きさの析出物は析出物形成元素を消費し、強度に悪影響をあたえるため、10nm未満とすべきである。
【0036】
上述した析出物とは別に少量のFe炭化物を含有しても本発明の効果は損なわれないが、平均粒径が1μm以上のFe炭化物を多量に含むと靭性を阻害するため、本発明においては含有されるFe炭化物の大きさ上限は1μm、含有率は全体の1%以下とすることが望ましい。
【0037】
微細析出物の個数、及び全析出物に占める割合は、以下の方法により求める。電子顕微鏡試料を、ツインジェット法を用いた電解研磨法で作成し、加速電圧200kVで観察する。その際、微細析出物が母相に対して計測可能なコントラストになるように母相の結晶方位を制御し、析出物の数え落としを最低限にするために焦点を正焦点からずらしたデフォーカス法で観察を行う。
【0038】
また、析出物粒子の計測を行った領域の試料の厚さは電子エネルギー損失分光法を用いて、弾性散乱ピークと非弾性散乱ピーク強度を測定することで評価する。
【0039】
この方法により、粒子数の計測と試料厚さの計測を同じ領域について実行することができる。粒子数および粒子径の測定は試料の0.5×0.5μmの領域4箇所について行い、1μm2当たりに分布する析出物を粒径ごとの個数として算出する。
【0040】
この値と試料厚さから、析出物の1μm3当たりに分布する粒子径ごとの個数を算出し、径が10nm未満の析出物について、測定した全析出物に占める割合を算出する。
【0041】
本発明ではこのようにして微細析出物の数を求め、1×104個/μm3個以上に規定する。
【0042】
また、本発明においてフェライト単相組織とは、断面組織観察(200倍の光学顕微鏡組織観察)でフェライト面積率95%以上とし、好ましくは98%以上とする。
【0043】
2.成分組成
本発明に係る浸炭部品は上述したミクロ組織で目的とする性能が得られるが、以下の成分組成とすることが好ましい。
【0044】

Cは強度確保のため添加する。0.03%未満では強度に劣り、0.2%を超えるとパーライトやベイナイトが生成し、フェライト単相組織が得られなくなるため0.03〜0.2%とする。
【0045】
Si
Siは強度、延性を向上させるため添加する。0.5%を超えるとその効果が飽和し、冷間加工時の変形抵抗が高く、加工性が低下するため、0.5%以下とする。
【0046】
Mn
Mnは強度、延性を向上させるため、2%以下を添加する。
【0047】
Al
脱酸剤として、及び強度、延性を向上させるため0.1%以下を添加する。
【0048】
Ti
TiはTi系炭化物や、MoとともにTi−Mo系炭化物を含む析出物を微細に析出させ、ピンニング効果を向上させるため添加する。0.03%未満では析出物量が少なく粗大粒の抑制に必要なピンニング効果が得られないため0.03%以上とし、一方、0.15%を超えて添加すると析出物が粗大化し、そのような効果が低下するため0.03〜0.15%とする。
【0049】
Mo
MoはMo系炭化物や、TiとともにTi−Mo系炭化物を含む析出物を微細に析出させ、ピンニング効果を向上させるため添加する。そのような効果を得るため0.05%以上とし、一方、0.6%を超えて添加するとベイナイトやマルテンサイト相を形成するため0.05〜0.6%とする。
【0050】
Moは拡散速度が遅く、Tiとともに析出する場合、析出物の成長速度が低下し、微細な析出物が得やすい。
【0051】
(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}
本パラメータは、析出物の大きさ及び個数に影響を与えるもので、0.5以上、1.5以下とした場合、粒径10nm未満の微細析出物が1×104個/μm3以上容易に形成されるため好ましい。微細なTi,Mo系炭化物では、炭化物中のTi、Moは原子比でTi/Moが0.2〜2.0、更に微細な炭化物では0.7〜1.5であることが観察された。
【0052】
更に、特性を向上させる場合、Nb,V,Wの一種または二種以上を添加することが好ましい。
【0053】
Nb
NbはTiとともに微細析出物を形成して強度上昇に寄与する。また組織を微細化し、結晶粒の整粒により延性を向上させる。0.08%を超えると過度に微細化し、延性が低下するため0.08%以下とする。
【0054】

VはTiと微細析出物を形成するが、0.15%を超えると析出物が粗大化するようになるため、0.15%以下とする。
【0055】

WはTiと微細析出物を形成するが、1.5%を超えると析出物が粗大化するようになるため、1.5%以下とする。
【0056】
これらの元素の添加においては、C,Ti,Mo,Nb,V,Wの原子比を規定することが炭化物の微細化に有効で(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184)}を0.5以上、1.5以下とした場合、粒径10nm未満で1×104個/μm3以上の微細析出物の形成が容易となる。
【0057】
Nb,V,Wの一種または二種以上を含む微細な炭化物の場合は、(Ti+Nb+V)/(Mo+W)が0.2〜2.0、更に微細な炭化物の場合は0.7〜1.5であることが観察された。
【0058】
また、本発明鋼では、部品成形時の被削性を向上させる場合は、S:0.03〜0.1%とし、Pb≦0.2%、Ca≦50ppm,B≦200ppmの一種または二種以上を添加することができる。
【0059】
上記添加元素以外の残部はFe及び不可避的不純物とするが、強度、延性を向上させる場合、Ni,Crの一種または二種をNi≦2%、Cr≦2%の範囲で添加してもかまわない。
【0060】
靭性を向上させる場合、不可避的不純物であるP、をP≦0.040%、N≦80ppmに規制することが望ましい。
【0061】
尚、これらの元素の含有量や添加の有無により本発明の効果が損なわれることはない。
【0062】
3.製造条件
図1は本発明に係る浸炭部品の概略製造工程図でS1は素材となる棒鋼製造工程、S2は搬送工程、S3は製品(浸炭部品)仕上げ工程を示す。棒鋼製造工程(S1)で鋼塊を熱間圧延し棒鋼とし品質検査後、出荷する。
【0063】
製品(浸炭部品)仕上げ工程(S3)で、該棒鋼を所定の寸法に切断し、冷間鍛造、冷間曲げなどの冷間鍛造を行い、必要に応じてドリル穿孔や旋削等の切削加工で所望の形状とした後、析出処理後浸炭化処理を行い、仕上研削加工等を経て製品とする。
【0064】
以下に望ましい製造工程について詳細に説明する。
【0065】
圧延加熱温度
圧延加熱温度は1100℃以上とする。本発明では、圧延材(素材となる棒鋼)に微細析出物が析出しないよう、熱間圧延時に溶解時から残存する炭化物を固溶させる。
【0066】
圧延加熱温度を1100℃未満とした場合、溶解時から残存するTi−Mo系炭化物等が固溶しないため1100℃以上とする。
【0067】
圧延仕上げ温度
圧延仕上げ温度は800℃未満では表層が粗大粒となり組織均一性が失われる。また、延性、靭性が損なわれ、圧延荷重が高く真円度が劣化するため800℃以上とする。
【0068】
冷却速度
冷間加工前に微細析出物が析出し、冷間加工性を損なわないよう、圧延後の冷却速度を規定する。微細析出物の析出温度範囲の700〜550℃を、微細析出物の限界冷却速度(0.5℃/sec)超えで冷却する。
【0069】
析出処理
得られた棒鋼を素材とし、冷間鍛造後、切削加工等により部品形状とする。その後、浸炭処理の加熱時の熱履歴を制御することで微細析出物の析出処理を行う。浸炭処理では、通常900℃以上に加熱されるが、微細析出物を析出させるように、加熱途中、550〜700℃を0.5℃/sec以下の加熱速度で加熱を行う。または550〜700℃で10分以上保持する。
【0070】
0.5℃/secを超える加熱速度では、微細析出物の析出個数が少なく、ピンニング効果が不十分である。
【0071】
保持する場合、550℃未満では、粗大粒抑制に必要なだけのピンニング効果を生じる寸法と量の析出物が得られず、700℃超えでは析出物が粗大化し、常温、高温強度が低下するため、550〜700℃とする。
【0072】
尚、該熱履歴は浸炭処理の加熱時に限られたものではなく、部品加工中の低温焼鈍処理等の際に施すことも可能である。
【0073】
【実施例】
表1に示す組成の鋼を150kg真空溶解炉にて溶製し、160mm角に造塊後、ダミービレットに溶接し、圧延を種々の加熱温度、仕上げ温度で行い25mmφの丸鋼とした。
【0074】
これら丸棒からφ20mm×100mmの試験片を採取し、浸炭処理後、オーステナイト粒度を観察した。浸炭処理は950℃×10時間とし、微細析出物を析出させるための熱履歴は浸炭処理時の加熱速度を調整し施した。
【0075】
また、圧延後の丸鋼の組織、及び700℃に加熱された際の組織について、組織観察を行った。700℃に加熱後の組織は浸炭処理材と同寸法の試験片を別途採取し、700℃に加熱された時点で水冷したものについて観察した。
【0076】
圧延後の丸鋼の組織は丸鋼断面を光学顕微鏡で観察し、700℃加熱試験片は析出物を透過型電子顕微鏡(TEM)で薄膜観察した。析出物はエネルギー分散型X線分光装置(EDX)により同定した。
【0077】
浸炭処理材は旧オーステナイト粒度の観察をJISG0551に準じ100倍で10視野について行った。浸炭処理後、オーステナイト粒度8番以上の整細粒が得られた場合を発明例とした。
【0078】
表2に試験結果を示す。No.1、3,5,7,9,11、12は本発明例であり、浸炭処理前にフェライト単相中に10nm未満の微細析出物が1×104個/μm3以上観察された。その結果、浸炭処理後、オーステナイト粒度8番以上の整細粒が得られた。(ピン止め効果により整細粒が得られた場合、判定として○印で表示している。)
No.2,4,6,8,10は請求項4記載の成分組成は満足するが、浸炭処理時の550〜700℃における加熱速度が0.5℃/sec超えと早く、10nm以下の微細析出物であるがその量が不足し、ピンニング効果が不充分で整細粒が得られなかった。
【0079】
表中、(4.5×4)は平均粒度は6番以上8番未満であるが5番以下の粗大粒4.5番のオーステナイト粒が4視野で観察されたことを示す。
【0080】
No.13〜16はいずれも成分組成または/および製造条件の一部が本発明範囲外で微細析出物が析出せず、浸炭処理後オーステナイト粒度8番以上の整細粒組織が得られなかった。
【0081】
上述したように、浸炭処理前に10nm以下の微細析出物が析出した試験片ではいずれも浸炭処理後整細粒が得られ、さらに実機において浸炭処理後に熱歪が生じないことが確認された。
【0082】
【表1】
Figure 0003734765
【0083】
【表2】
Figure 0003734765
【0084】
【発明の効果】
本発明によれば、浸炭処理後の組織が、整細粒で熱歪の小さい浸炭部品が成形性良く得られ、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る浸炭部品の製造工程の一例を示す図。

Claims (11)

  1. 鋼組成が、質量%で、
    C :0.03〜0.2%、
    Si≦0.5%、
    Mn≦2%、
    Al≦0.1%、
    Ti:0.03〜0.15%、
    Mo:0.05〜0.6%、
    残部Fe及び不可避的不純物
    よりなり、フェライト面積率が95%以上のフェライト単相組織を有し、フェライト相中に粒径が10nm未満の微細析出物が1×104個/μm3以上、分散析出していることを特徴とする浸炭部品。
  2. 鋼組成として更に式(1)を満足することを特徴とする、請求項1記載の浸炭部品。
    0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦1.5---(1)
    但し、各元素は含有量(質量%)とする。
  3. 微細析出物がTi、Moの炭化物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の浸炭部品。
  4. 鋼組成として、更に質量%で、Nb≦0.08%、V≦0.15%、W≦1.5%の一種または二種以上を含有することを特徴とする、請求項1から3の何れか1つに記載の浸炭部品。
  5. 鋼組成として更に式(2)を満足することを特徴とする、請求項4記載の浸炭部品。
    0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184)}≦1.5 ---(2)
    但し、各元素は含有量(%)とし、含まれないものは0とする。
  6. 微細析出物がTiとMoとNb,V,Wの内の少なくとも一種とを含む炭化物であることを特徴とする、請求項4または5記載の浸炭部品。
  7. 鋼組成として更に質量%で、
    S:0.03〜0.1%、
    Pb≦0.2%、
    Ca≦0.005%、
    B≦0.02%
    の一種または二種以上を添加することを特徴とする、請求項1から6の何れか1つに記載の浸炭部品。
  8. 下記の工程を備えたことを特徴とする浸炭部品の製造方法。
    (1)請求項1から7の何れか1つに記載の組成の鋼を1100℃以上に加熱後、仕上げ圧延温度800℃以上で圧延し、圧延後の冷却において、550〜700℃を0.5℃/sec超えの冷却速度で常温まで冷却して、フェライト面積率95%以上のフェライト単相組織を有する棒鋼とする工程。
    (2)棒鋼を部品形状とした後、浸炭処理の加熱時に550〜700℃の温度範囲を0.5℃/sec以下の加熱速度で加熱して、フェライト相中に粒径10nm未満の微細析出物を1×10 4 個/μm 3 以上、分散析出させた後、浸炭処理する工程。
  9. 下記の工程を備えたことを特徴とする浸炭部品の製造方法。
    (1)請求項1から7の何れか1つに記載の組成の鋼を1100℃以上に加熱後、仕上げ圧延温度800℃以上で圧延し、圧延後の冷却において、550〜700℃を0.5℃/sec超えの冷却速度で常温まで冷却して、フェライト面積率95%以上のフェライト単相組織を有する棒鋼とする工程。
    (2)棒鋼を部品形状とした後、浸炭処理の加熱時に550〜700℃の温度範囲で10分以上保持して、フェライト相中に粒径10nm未満の微細析出物を1×10 4 個/μ 3 以上、分散析出させた後、浸炭処理を行う工程。
  10. 下記の工程を備えたことを特徴とする浸炭部品の製造方法。
    (1)請求項1から7の何れか1つに記載の組成の鋼を1100℃以上に加熱後、仕上げ圧延温度800℃以上で圧延し、圧延後の冷却において、550〜700℃を0.5℃/sec超えの冷却速度で常温まで冷却して、フェライト面積率95%以上のフェライト単相組織を有する棒鋼とする工程。
    (2)棒鋼を部品形状とした後、550〜700℃の温度範囲に10分以上保持して、フェライト相中に粒径10nm未満の微細析出物を1×10 4 個/μm 3 以上、分散析出させる工程。
    (3)浸炭工程。
  11. 下記の工程を備えたことを特徴とする浸炭部品の製造方法。
    (1)請求項1から7の何れか1つに記載の組成の鋼を1100℃以上に加熱後、仕上げ圧延温度800℃以上で圧延し、圧延後の冷却において、550〜700℃を0.5℃/sec超えの冷却速度で常温まで冷却して、フェライト面積率95%以上のフェライト単相組織を有する棒鋼とする工程。
    (2)棒鋼を部品形状とした後、550〜700℃の温度範囲を0.5℃/sec以下の加熱速度で加熱して、フェライト相中に粒径10nm未満の微細析出物を1×10 4 個/μm 3 以上、分散析出させる工程。
    (3)浸炭工程。
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