JP2003321743A - 耐遅れ破壊特性に優れた高強度ボルトおよびその製造方法 - Google Patents
耐遅れ破壊特性に優れた高強度ボルトおよびその製造方法Info
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Abstract
およびその製造方法に関する。 【解決手段】焼戻しマルテンサイト相中に粒径10nm
未満の微細析出物が分散析出している焼戻しマルテンサ
イト単相組織を有し、質量%で、C≦0.35%、Si
≦0.50%、Mn:0.1〜2%、Ti:0.03〜
0.20%、Mo:0.05〜0.6%、更にNb≦
0.08%、V≦0.15%、W≦1.5%の一種また
は二種以上、Cu:0.01〜0.3%、Ni:0.0
5〜1.0%、Cr:0.01〜0.3%、B:0.0
003〜0.003%の一種または二種以上、0.5≦
(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+
(Nb/93)+(V/51)+(W/192)}≦5
を満足する残部Fe及び不可避的不純物よりなるボル
ト。上記組成の鋼を1100℃以上で加熱後、仕上げ圧
延温度800℃以上で圧延し、その後の冷却において、
550〜700℃を0.5℃/sec超えで冷却し棒鋼
となし、ボルトに成形後、焼入れし、その後、550〜
700℃に10分間以上保持する。
Description
その製造方法に関し、特にミクロ組織の調整により耐遅
れ破壊特性に優れたものに関する。
aを超えると遅れ破壊が生じやすくなるため、JISB
1186,JISB1051によって上限強度をF10
T級、12T級に規定されている。
2T級用鋼としてはSCM435やSCM440が主に
用いられている。
して18Niマルエージ鋼が知られているものの低合金
鋼と比較して極めて高価であり、高強度ボルト用鋼とし
て用いることはできない。
9−182950号公報、特開昭59−182951号
公報にはマルエージ鋼より安価で、低合金鋼より遅れ破
壊特性に優れる鋼が記載されている。
に記載の鋼のNi含有量も、マルエージ鋼に比較して少
ないとはいえ、ボルト用鋼として大量に使用できる程に
は低減されておらず、安価で耐遅れ割れ破壊特性に優れ
た鋼の開発が課題とされている。
1300MPa以上の高強度を有し、且つ耐遅れ破壊特
性に優れたボルトおよびその製造条件を提供することを
目的とする。
を解決するため耐遅れ破壊特性に及ぼす鋼の組織、組成
の影響について鋭意検討を行い、遅れ破壊の原因である
拡散性水素のトラップサイトとして微細析出物が有効
で、特に10nm未満とした場合、優れた効果が得ら
れ、更に、そのような微細析出物としてTi,Mo系炭
化物を含有するものが好ましく、また高強度化にも有効
であることを知見した。
てなされたものであり、すなわち、本発明は、 1.焼戻しマルテンサイト単相組織を有し、焼戻しマル
テンサイト相中に粒径10nm未満の微細析出物が分散
析出していることを特徴とする耐遅れ破壊特性に優れた
高強度ボルト。
0.50%、Mn:0.1〜2%、Al:0.01〜
0.1%、Ti:0.03〜0.20%、Mo:0.0
5〜0.6%、残部Fe及び不可避的不純物よりなる1
記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度ボルト。
ことを特徴とする2記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強
度ボルト。 0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦5 (1) 但し、各元素は含有量(質量%)とする。
ることを特徴とする2または3記載の耐遅れ破壊特性に
優れた高強度ボルト。
0.08%、V≦0.15%、W≦1.5%の一種また
は二種以上を含有する2記載の耐遅れ破壊特性に優れた
高強度ボルト。
ことを特徴とする5記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強
度ボルト。 0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93) +(V/51)+(W/184)}≦5 (2) 但し、各元素は含有量(質量%)とし、含有しないもの
は0とする。
Wの内の少なくとも一種とを含む炭化物であることを特
徴とする5または6に記載の耐遅れ破壊特性に優れた高
強度ボルト。
0.01〜0.3%、Ni:0.05〜1.0%、C
r:0.01〜0.3%、B:0.0003〜0.00
3%の一種または二種以上を含有することを特徴とする
1乃至7のいずれか一つに記載の耐遅れ破壊特性に優れ
た高強度ボルト。
記載の組成の鋼を1100℃以上に加熱後、仕上げ温度
800℃以上で圧延し、その後の冷却において700〜
550℃を0.5℃/sec超えの冷却速度で冷却して
棒鋼とした後、ボルト成形後、焼入れし、その後、55
0〜700℃で10分以上保持することを特徴とする耐
遅れ破壊特性に優れた高強度ボルトの製造方法。
織、成分組成および製造条件について以下に詳細に説明
する。
0MPa以上の高強度が得られるよう、そのミクロ組織
を焼戻しマルテンサイト単相で且つ粒径10nm未満の
微細析出物を含む組織に規定する。
ることにより、強度及び靭性を向上させ、更に該組織中
に微細析出物を分散析出させることにより強度の向上と
ともに耐遅れ破壊特性を向上させる。
は、断面組織観察(200倍の光学顕微鏡組織観察)で
マルテンサイト面積率95%以上とし、好ましくは98
%以上とする。
とする。析出物の粒径が10nm以上の場合、拡散性水
素のトラップサイトとしての働きが不充分で強度および
耐遅れ破壊特性の向上が得られにくい。
ましくは5nm,更に望ましくは3nm以下で、そのよ
うな微細析出物としてTi、Moを複合含有した炭化
物、またそれらに更にNb,V,Wの一種または二種以
上を含む炭化物が好ましい。
しないが、母相中に均一分散(分散析出)することが望
ましい。
さは、全析出物の90%以上で満足すれば、焼戻し後目
的とする引張強さが得られる。但し、10nm以上の大
きさの析出物は析出物形成元素を消費し、強度に悪影響
をあたえるため、50nm以下とすることが好ましい。
を含有しても本発明の効果は損なわれないが、平均粒径
が1μm以上のFe炭化物を多量に含むと靭性を阻害す
るため、本発明においては含有されるFe炭化物の大き
さ上限は1μm、含有率は全体の1%以下とすることが
望ましい。
同定は、薄膜を用いた透過型電子顕微鏡(TEM)やT
EMに装備されたエネルギー分散型X線分光装置(ED
X)により行うことができる。
下の方法により求める。電子顕微鏡試料を、ツインジェ
ット法を用いた電解研磨法で作成し、加速電圧200k
Vで観察する。その際、微細析出物が母相に対して計測
可能なコントラストになるように母相の結晶方位を制御
し、析出物の数え落としを最低限にするために焦点を正
焦点からずらしたデフォーカス法で観察を行う。
料の厚さは電子エネルギー損失分光法を用いて、弾性散
乱ピークと非弾性散乱ピーク強度を測定することで評価
する。
の計測を同じ領域について実行することができる。粒子
数および粒子径の測定は試料の0.5×0.5μmの領
域4箇所について行い、1μm2たりに分布する析出物を
粒径ごとの個数として算出する。粒径は平均粒径とし
た。
当たりに分布する粒子径ごとの個数を算出し、径が10
nm未満の析出物について、測定した全析出物に占める
割合を算出する。
性能が得られるが、以下の成分組成とすることが好まし
い。
すると微細析出物が粗大化し、強度が低下するため0.
35%以下とする。
の効果が飽和し、冷間加工時の変形抵抗が高く、加工性
が低下するため、0.50%以下とする。
加する。一方、2%を超えると耐遅れ破壊特性が低下す
るため0.1〜2%とする。
し、Bの焼入れ性効果を向上させるため0.01%以上
添加する。一方、0.1%を超えるとその効果が飽和す
るため、0.01〜0.1%とする。
物を含む析出物を微細に析出させ、拡散性水素のトラッ
プサイトを形成することにより耐遅れ破壊特性を向上さ
せ、また強度も向上させるため添加する。0.03%未
満では析出物量が少なく所望の強度及び耐遅れ破壊特性
が得られないため0.03%以上とし、一方、0.20
%を超えて添加すると析出物が粗大化し、強度向上効果
を失うため0.03〜0.20%とする。
物を含む析出物を微細に析出させ、拡散性水素のトラッ
プサイトを形成することにより耐遅れ破壊特性を向上さ
せ、また、強度も向上させるため添加する。所望の引張
強度とし、耐遅れ破壊特性を向上させるため0.05%
以上とし、一方、0.6%を超えて添加すると冷間鍛造
性が低下するため0.05〜0.6%とする。
する場合、析出物の成長速度が低下し、微細な析出物が
得られやすい。
で、0.5以上、5以下とした場合、強度の向上ととも
に耐遅れ破壊特性の向上に有効な粒径10nm未満の微
細析出物の形成が容易となり好ましい。
のTi,Moは原子比で2.0≧Ti/Mo≧0.2、
更に微細な場合は1.5≧Ti/Mo≧0.7であるこ
とが観察された。
Wの一種または二種以上を添加することが好ましい。
与する。また組織を微細化し、また結晶粒の整粒により
延性を向上させる。0.08%を超えると過度に微細化
し、延性が低下するため0.08%以下とする。
ると析出物が粗大化するようになるため、0.15%以
下とする。
と析出物が粗大化するようになるため、1.5%以下と
する。
i,Mo,Nb,V,Wの原子比を規定することが炭化
物の微細化に有効で(C/12)/{(Ti/48)+
(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W
/184)}を0.5以上、5以下とした場合、強度の
向上とともに耐遅れ破壊特性の向上に有効な粒径10n
m未満の微細析出物の形成が容易となる。
W)系炭化物では、炭化物中の各元素は原子比で2.0
≧(Ti+Nb+V)/(Mo+W)≧0.2、更に微
細な炭化物では1.5≧(Ti+Nb+V)/(Mo+
W)≧0.7であることが観察された。
Cu,Ni,Cr,Bの一種または二種以上を添加する
ことができる。各元素の添加量はそのような効果が得ら
れるようCu:0.01〜0.3%、Ni:0.05〜
1.0%、Cr:0.01〜0.3%、B:0.000
3〜0.005%とする。
不可避的不純物をP:0.02%以下、S:0.02%
以下、N:0.01%以下に規制することが望ましい。
より本発明の効果が損なわれることはない。
鋼製造工程、S2は搬送工程、S3は製品(ボルト)仕
上げ工程を示す。棒鋼製造工程(S1)で鋼塊を熱間圧
延し棒鋼とし品質検査後、出荷する。
棒鋼を所定の寸法に切断し、冷間鍛造等の冷間加工を行
い、必要に応じて旋削等の切削加工で所望の形状とした
後、焼入れ焼戻しを施し、製品(ボルト)とする。以下
に望ましい製造工程について詳細に説明する。
延材(棒鋼)に微細析出物が析出し冷間加工性を損なわ
ないよう、熱間圧延時に溶解時から残存する炭化物を固
溶させる。
合、溶解時から残存するTi−Mo系炭化物等が固溶し
ないため1100℃以上とする。
度が劣化するため800℃以上とする。
ないよう、圧延後の冷却速度を規定する。微細析出物の
析出温度範囲の700〜550℃を、微細析出物が得ら
れる限界冷却速度(0.5℃/sec)超えで冷却す
る。
れた耐遅れ破壊特性を付与させるため、焼入れ焼戻し処
理を行う。焼戻しは微細析出物を析出させるように、焼
入れ後、加熱温度:550〜700℃、保持温度10分
以上で焼戻しを行う。550℃未満では、十分な量の析
出物が得られず、700℃超えでは析出物が粗大化する
ため、550〜700℃とする。
れか一つに記載の組成を有する棒鋼を素材とし、上述し
た条件でボルトを製造した場合、特に強度、耐遅れ破壊
特性に優れたものが得られる。
を用い、強度、耐遅れ破壊特性に及ぼす成分組成の影響
について調査した。表中No.A,BはTi−Mo系の
本発明例、No.CはさらにCrを添加した本発明例、
No.DはTi−Mo系にNb、V、Wを添加した本発
明例、No.E〜Iは比較例である。
造断面160×160mm鋼塊に鋳造後、22mm径の
棒鋼に熱間圧延した。その後、冷間鍛造でM22のボル
トに成形し、焼入れ焼戻しを行った。
組織観察を行った。耐遅れ破壊試験は各供試鋼からボル
トを40本採取し、鋼板(SS400)にナット回転角
法で最大荷重まで締め付け、3.5%食塩水で乾湿繰り
返し試験を9ヶ月間実施し、破断状況を観察した。引張
試験はボルトから平行径10mmの引張試験片を用い、
引張強さを求めた。組織観察はボルト首下断面を光学顕
微鏡で観察するとともに、析出物を透過型電子顕微鏡
(TEM)で観察し、その組成をエネルギー分散型X線
分光装置(EDX)により求めた。
〜4は焼戻しマルテンサイト組織中に10nm以下の微
細析出物が観察され、1300MPa以上の高強度でか
つ優れた耐遅れ破壊特性(破断数0本)が得られた。
本発明範囲内であるが、ボルト成形−焼入れ後の焼戻し
温度が本発明範囲外で高く、析出物が150nmと粗大
化し、強度、耐遅れ破壊特性に劣る。
No.8はMn量が、No.10はTi量が夫々本発明
範囲外であり、引張強さ、耐遅れ破壊特性のいずれまた
は両者が劣っている。No.9はP量が多く、耐遅れ破
壊特性に劣る。
且つ高強度なボルトおよびその製造方法が得られ、産業
上極めて有用である。
Claims (9)
- 【請求項1】 焼戻しマルテンサイト単相組織を有し、
焼戻しマルテンサイト相中に粒径10nm未満の微細析
出物が分散析出していることを特徴とする耐遅れ破壊特
性に優れた高強度ボルト。 - 【請求項2】 質量%で、C≦0.35%、Si≦0.
50%、Mn:0.1〜2%、Al:0.01〜0.1
%、Ti:0.03〜0.20%、Mo:0.05〜
0.6%、残部Fe及び不可避的不純物よりなる請求項
1記載の耐遅れ破壊特性に優れた高強度ボルト。 - 【請求項3】 鋼組成として更に式(1)を満足するこ
とを特徴とする請求項2記載の耐遅れ破壊特性に優れた
高強度ボルト。 0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦5 (1) 但し、各元素は含有量(質量%)とする。 - 【請求項4】 微細析出物がTiとMoの炭化物である
ことを特徴とする請求項2または3記載の耐遅れ破壊特
性に優れた高強度ボルト - 【請求項5】 鋼組成として、更に質量%で、Nb≦
0.08%、V≦0.15%、W≦1.5%の一種また
は二種以上を含有する請求項2記載の耐遅れ破壊特性に
優れた高強度ボルト。 - 【請求項6】 鋼組成として更に式(2)を満足するこ
とを特徴とする請求項5記載の耐遅れ破壊特性に優れた
高強度ボルト。 0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93) +(V/51)+(W/184)}≦5 (2) 但し、各元素は含有量(質量%)とし、含有しないもの
は0とする。 - 【請求項7】 微細析出物がTiとMoとNb,V,W
の内の少なくとも一種とを含む炭化物であることを特徴
とする請求項5または6に記載の耐遅れ破壊特性に優れ
た高強度ボルト。 - 【請求項8】 鋼組成として更に質量%で、Cu:0.
01〜0.3%、Ni:0.05〜1.0%、Cr:
0.01〜0.3%、B:0.0003〜0.003%
の一種または二種以上を含有することを特徴とする請求
項1乃至7のいずれか一つに記載の耐遅れ破壊特性に優
れた高強度ボルト。 - 【請求項9】 請求項2、3、5,6、8のいずれか一
つに記載の組成の鋼を1100℃以上に加熱後、仕上げ
温度800℃以上で圧延し、その後の冷却において70
0〜550℃を0.5℃/sec超えの冷却速度で冷却
して棒鋼とした後、ボルト成形後、焼入れし、その後、
550〜700℃で10分以上保持することを特徴とす
る耐遅れ破壊特性に優れた高強度ボルトの製造方法。
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JP2002125405A JP3754658B2 (ja) | 2002-04-26 | 2002-04-26 | 耐遅れ破壊特性に優れた高強度ボルトおよびその製造方法 |
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