JP3467929B2 - 高周波焼入れ用高靱性熱間鍛造非調質鋼 - Google Patents
高周波焼入れ用高靱性熱間鍛造非調質鋼Info
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Description
高周波焼入れのみによって浸炭処理鋼と同等の表面硬さ
を得ることができる熱間鍛造非調質鋼に関するものであ
る。
加工後に焼入れ焼戻しの調質処理を行って使用に供され
るのが一般的であったが、この調質処理には多くのエネ
ルギ−と手間や設備コストが費やされていた。そこで、
近年では、「省エネルギ−」という社会的要請に応える
べく熱間加工のままで使用できる“非調質鋼”の開発が
盛んに行われるようになってきた。
を施して使用されることが多く、表面硬化法としては浸
炭,窒化及び高周波焼入れが採用されている。この中
で、特に「浸炭」はマトリックスが高靱性である材料の
表層を高炭素化することにより硬化することを狙ったも
ので、疲労強度の向上を目的として主にギア等の材料に
適用されている。なお、これらのマトリックスの靱性の
確保にはC量を低減させる手段が一般的に採用されてお
り、この点からも表面層の硬化には浸炭処理が有効であ
った。
チ処理が主流をなしており、例えば900℃近傍で数時
間以上の加熱保持を有するといったように多くのエネル
ギ−とコストが費やされる。また、実操業においては、
浸炭材の処理等のために環境の悪化を伴いがちである等
といった問題のほか、インライン化が困難であるといっ
たような問題もあった。
焼入れ処理のみで所望の表面硬化を行うことが研究され
るようになった。なぜなら、高周波焼入れ処理は表面硬
化処理時間の短縮やエネルギ−の低減、更には環境のク
リ−ン化に非常に有利だからである。
れ処理について幾つかの報告がなされている。例えば特
開昭63−100157号公報には、化学成分組成を特
定し、ベイナイトの占める体積率が75%以上である組
織を有せしめた高周波焼入れ用非調質鋼が開示されてい
る。しかし、この鋼は母材の組織がベイナイト率75%
以上となるもので、そのため機械構造用鋼に望まれる重
要特性の1つである“被削性”が低下するという問題が
あった。
は、AlでNを固定すると共に、B添加で焼入れ性を向上
させることによって硬化層深さを確保するようにした高
周波焼入れ用非調質鋼が開示されている。しかしなが
ら、AlによってNを十分に固定するためには比較的多量
のAl添加が必要であるが、Alを過剰に添加すると硬い A
l2O3 相を形成して被削性を低下するという問題があ
り、この点からも上記鋼は実用上好ましいものとは言え
なかった。
周波焼入れクランクシャフト用非調質鋼に関する提案が
掲載されているが、これはC,Mn,Crの量を調整するこ
とによってマトリックス(芯部)自体にも所要硬さを確
保したものである。しかし、その実施例の記載からも分
かるように、靱性の観点からC量を0.52%以下に抑えざ
るを得ないこの鋼では表面硬さHR C60前後(ビッカ
−ス硬度で約700程度)を確保するのが精々で、やは
り表面硬化鋼としては十分なものとは言えなかった。
のは、熱間鍛造のままの鋼材を出発材とし、これに高周
波焼入れ処理を施すことのみで経済的にかつ浸炭材なみ
の表面硬度を有すると共に、芯部の靱性が高い高周波焼
入れ用被調質鋼を提供することである。
を達成すべく、特に高周波焼入れによる表面硬化能と母
材靱性に及ぼす機械構造用非調質鋼の化学成分組成の影
響について鋭意研究を重ねた結果、次のような一連の知
見を得ることができた。
ると、熱間鍛造における冷却時にNb炭化物生成されるよ
うになるが、その後に高周波焼入れを施すとその加熱時
にこれがオ−ステナイト中に固溶し、この固溶Nbが焼入
れ性を向上させ硬化層深さを確保する。
揮させるためには、所定量のTi,Bを複合添加すること
が有効である。即ち、所定量のTi,Bを複合添加する
と、TiによるNの固定によってBが固溶状態で存在する
ことができるようになり、従って焼入れ性が向上してNb
同様に硬化層深さを確保する作用が発揮され、これがNb
の効果に悪影響を及ぼさないばかりか、Nbの効果と協働
して優れた表面硬化能を発揮するようになる。また、特
にTiについては、TiNを生成させNを固定すると共に、
TiNにより熱間鍛造における加熱時のオ−ステナイト粒
の成長を抑制し組織を微細化し、マトリックスの靱性の
向上にも寄与する。
を行うと一段と良好なマトリックス靱性の確保が叶うば
かりか、被削性や強度面の改善にも有効である。
すると、Nd硫化物の生成によりMnSが微細分散してフェ
ライト生成核密度が高まり、一層微細なフェライト・パ
−ライト組織を得ることができ、マトリックスが更に強
靱化する。
り高周波焼入れの際の加熱時におけるフェライトの溶け
残り量が低減されるようになって、より深い硬化深さを
確保できる。
されたものであり、「熱間鍛造非調質鋼を、C:0.40〜
0.70%(以降、 成分割合を表す%は重量%とする),Si:
0.05〜 0.8%, Mn: 0.5〜 2.0%, S:0.01〜
0.15%,P:0.01〜0.07%, Cr: 0.1〜 1.5%,
Ti: 0.005〜0.05%,Nb: 0.005〜0.05%, B:0.
0005〜 0.005%, Al: 0.005〜0.05%,N: 0.005〜
0.02%を含有するか、 あるいは更にNd: 0.005〜 0.1%
をも含むと共に、 残部が実質的にはFe及び不純物元素か
らなる化学成分組成に構成することによって、 この鋼を
熱間鍛造した後に空冷又は放冷することによりフェライ
ト・パ−ライト組織が形成されるようにし、 高周波焼入
れによって浸炭焼入れ材なみの表面硬化層が形成される
と同時に優れた芯部(マトリックス)靱性をも発揮でき
るようにした点」に大きな特徴を有している。
戻し処理等の調質処理を行わない所謂“非調質鋼”であ
って、かつ熱間鍛造のままの鋼材から高周波焼入れ処理
を施すことで低コストにて浸炭材なみの表面硬度を有す
るところの“芯部がフェライト・パ−ライト組織からな
る高強度高靱性機械構造用鋼”を提供するものである
が、以下、本発明に係る高周波焼入れ用非調質鋼におい
て化学成分組成を前記の如くに限定した理由をその作用
と共に説明する。
は高周波焼入れ後の表面硬さを確保する作用があるが、
その含有量が0.40%を下回ると前記作用による所望の効
果が得られず、一方、0.70%を超えて含有させると靱性
が劣化するようになる。従って、C含有量は0.40〜0.70
%と定めたが、上記効果をより安定に確保するためには
0.53〜0.70%に調整するのが好ましい。
フェライトの強化にも効果的に作用する。従って、これ
らの作用を有効ならしめるために0.05%以上の含有量を
確保する必要がある。しかし、Si含有量が 0.8%を超え
ると前記効果は飽和してしまい、また靱性も劣化するよ
うになる。そのため、Si含有量は0.05〜0.8%と定めた
が、上記効果をより安定に確保するためには 0.3〜 0.8
%に調整するのが好ましい。
有量が 0.5%未満であると前記作用による所望の効果が
得られず、一方、 2.0%を超えて含有させると焼入れ性
が向上し過ぎてベイナイト組織あるいは島状マルテンサ
イト組織の生成が促進され、被削性が低下するようにな
る。従って、Mn含有量は 0.5〜 2.0%と定めたが、上記
効果をより安定に確保するためには 0.7〜 1.6%に調整
するのが好ましい。
なくとも0.01%の含有量を確保することが必要である
が、多量に含有させてもその効果が飽和するばかりか靱
性を低下させることにもなるので、S含有量は0.01〜0.
15%と定めた。しかし、上記効果をより安定に確保する
ためにはS含有量を0.02〜0.07%に調整するのが好まし
い。
0.01%未満では該作用による所望の効果を得ることがで
きず、一方、0.07%を超えて含有させてもその効果が飽
和するばかりか、靱性の劣化をもたらすようになる。従
って、P含有量は0.01〜0.07%と定めたが、好ましくは
0.01〜0.05%に調整するのが良い。
加を必要とする元素であるが、その含有量が 0.1%未満
であると前記作用による所望の効果を得ることができ
ず、一方、 1.5%を超えて含有させると焼入れ性が向上
し過ぎてベイナイト組織あるいは島状マルテンサイト組
織の生成が促進され、被削性が低下する。従って、Cr含
有量は 0.1〜 1.5%と定めたが、より好ましくは 0.1〜
1.0%に調整するのが良い。
長を抑制し組織の微細化を達成する作用を有すると共
に、後で説明するNb及びBの効果を有効ならしめるため
には欠かせない成分である。しかし、Ti含有量が 0.005
%未満であると前記作用による所望の効果が得られず、
一方、0.05%を超えて含有させると鋼中に形成されるTi
Nが粗大化してピンニングの効果(オ−ステナイト粒の
成長を抑制する効果)が薄れ、熱間鍛造の加熱時にオ−
ステナイト粒が粗大化して靱性を低下させるようにな
る。従って、Ti含有量は 0.005〜0.05%と定めたが、上
記効果をより安定して確保するためには0.01〜0.04%に
調整するのが好ましい。
焼入れにおける加熱によってこのNb炭窒化物が溶解し、
解離したNbがオ−ステナイトに固溶して焼入れ性を向上
させ十分な硬化層深さを確保する作用を発揮する。しか
しながら、Nb含有量が 0.005%未満であると前記作用に
よる所望の効果が得られず、一方、0.05%を超えて含有
させると形成されるNb炭窒化物が粗大となるためにオ−
ステナイト中へ十分に固溶させることができず、所望の
硬化層深さを確保することができなくなる。また、Nb含
有量が多すぎると形成される粗大介在物により靱性の低
下を来たすほか、コスト面からも好ましくない。従っ
て、Nb含有量は 0.005〜0.05%と定めたが、上記効果を
より安定して確保するためには0.01〜0.04%に調整する
のが好ましい。
を確保するための必須成分であり、所望の効果を得るた
めには0.0005%以上含有させる必要がある。しかし、B
含有量が 0.005%を超えるとその効果は飽和してしま
う。従って、B含有量は0.0005〜 0.005%と定めたが、
より好ましくは0.0005〜 0.003%に調整するのが良い。
脱酸効果を確保するためには 0.005%以上含有させるこ
とが必要である。しかし、0.05%を超えてAlを含有させ
てもその効果が飽和してしまうばかりか、鋼の被削性を
低下させるようにもなる。従って、Al含有量は 0.005〜
0.05%と定めたが、好ましくは 0.005〜0.025 %に調整
するのが良い。
を窒化物として析出させてオ−ステナイト粒の粗大化を
防止する作用を発揮するが、N含有量が 0.005%未満で
は前記作用による所望の効果が得られず、一方、0.02%
を超えて含有させると靱性が低下するようになる。従っ
て、N含有量は 0.005〜0.02%と定めたが、前記効果を
より安定して得るためには 0.008〜0.02%に調整するの
が良い。
しているので必要に応じて含有せしめられる成分であ
る。即ち、Ndは、Nd硫化物の生成によりMnSを球状化及
び微細分散化させてフェライト変態核密度を高くし、微
細なフェライト・パ−ライト組織を形成しやすくして更
なる高強度高靱性化が安定して達成されるようにする。
特に、鋼材の芯部靱性向上に顕著な効果を発揮する。し
かし、Nd含有量が 0.005%未満であると前記作用による
所望の効果が得られず、一方、 0.1%を超えて含有させ
るとフェライトが過剰に生成されて強度が著しく低下す
るようになる。従って、Nd含有量は 0.005〜 0.1%と定
めたが、前記効果をより安定して得るためには0.01〜0.
05%に調整するのが好ましい。
分組成に構成されるものであるが、このような化学成分
組成に調整することにより機械構造用鋼として必要な特
性が付与されるだけでなく、機械構造用部品を製造する
に当り常法に従い1050〜1300℃に加熱して「9
00℃〜加熱温度」の範囲で熱間鍛造した後空冷又は放
冷すると、フェライト・パ−ライトからなる靱性の高い
組織となる。従って、これに高周波焼入れを施して表面
硬化を図っても、その芯部は高い強靱性を保持すること
になる。
各成分の他、Pb,Bi,Te,Ca等の被削性を改善する快削
元素を添加しても前述した効果が損なわれることがな
い。従って、一層の被削性が望まれる場合には上記快削
元素の1種又は2種以上を添加しても良い。
明する。
示す化学成分組成の鋼1〜35を溶製し、インゴットに鋳
造した。
℃に加熱し、1000℃仕上げの条件にて1回あるいは
2〜3回の熱間鍛造で直径40mmの丸棒鋼に成形した。
そして、得られた各丸棒鋼の“R/2の位置(半径の1/
2 の位置)”よりJIS14A号の引張試験片とJIS
3号衝撃試験片を採取し、室温での引張強度並びに衝撃
特性を調査した。
し、これによって達成された表面硬さ及び硬化層深さを
調査した。なお、このときの高周波焼入れ条件は、 周波数:20kHz, 出力:45kW, 移動速度:5mm/s であった。
も準備し、それらに関する特性も調査した。ここで、従
来鋼36は従来の浸炭焼入れ焼戻し材で、従来鋼37,38は
特開平2−179841号公報に記載されている高周波
焼入れ用非調質鋼の一部である。これらの調査結果を前
記表1及び表2に併せて示した。
ことが分かる。本発明鋼1〜9(第1発明鋼)及び本発
明鋼18〜26(第2発明鋼)は、マトリックスの強度,靱
性に優れる共に、高周波焼入れによって十分な表面硬度
及び硬化層深さが安定して得られる。つまり、本発明鋼
は、表面硬度及び硬化層深さが従来鋼36と同等以上で、
表面硬度,硬化層深さが共に従来鋼37,38より優れてい
ることが分かる。
不足しているため十分な表面硬度が得られていない。ま
た、比較鋼15及び32はNb量が不足していて十分な硬化層
深さが得られておらず、比較鋼16及び33はNbが過剰に添
加されているために靱性が劣化している。そして、他の
比較鋼については強度,靱性の確保に有効な成分の含有
量が本発明の規定範囲を逸脱しているために所望の強
度,靱性が得られていない。特に、比較鋼34は、Ndが過
剰に添加されていることから過剰にフェライトを析出し
強度が著しく低下している。
ば、高周波焼入れ処理のみで浸炭処理鋼と同等の表面硬
さを得ることができる高強度高靱性熱間鍛造非調質鋼を
提供することが可能となり、従来は浸炭処理を施してい
た鋼種に代わって各種機械構造用部品の性能向上や製造
コスト低減に大きく資するなど、産業上有用な効果がも
たらされる。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量割合にてC:0.40〜0.70%, S
i:0.05〜 0.8%, Mn: 0.5〜 2.0%,S:0.01〜
0.15%, P:0.01〜0.07%, Cr: 0.1〜 1.5
%,Ti: 0.005〜0.05%, Nb: 0.005〜0.05%,
B:0.0005〜 0.005%,Al: 0.005〜0.05%, N:
0.005〜0.02%を含有し、残部がFe及び不可避不純物か
らなることを特徴とする、高周波焼入れ用高靱性熱間鍛
造非調質鋼。 - 【請求項2】 重量割合にてC:0.40〜0.70%, S
i:0.05〜 0.8%, Mn: 0.5〜 2.0%,S:0.01〜
0.15%, P:0.01〜0.07%, Cr: 0.1〜 1.5
%,Ti: 0.005〜0.05%, Nb: 0.005〜0.05%,
B:0.0005〜 0.005%,Al: 0.005〜0.05%, N:
0.005〜0.02%, Nd: 0.005〜 0.1%を含有し、残部
がFe及び不可避不純物からなることを特徴とする、高周
波焼入れ用高靱性熱間鍛造非調質鋼。
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---|---|---|---|
JP25566095A JP3467929B2 (ja) | 1995-09-07 | 1995-09-07 | 高周波焼入れ用高靱性熱間鍛造非調質鋼 |
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---|---|---|---|
JP25566095A JP3467929B2 (ja) | 1995-09-07 | 1995-09-07 | 高周波焼入れ用高靱性熱間鍛造非調質鋼 |
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JPH0978183A JPH0978183A (ja) | 1997-03-25 |
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JP25566095A Expired - Fee Related JP3467929B2 (ja) | 1995-09-07 | 1995-09-07 | 高周波焼入れ用高靱性熱間鍛造非調質鋼 |
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1995
- 1995-09-07 JP JP25566095A patent/JP3467929B2/ja not_active Expired - Fee Related
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