JP4344126B2 - ねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼 - Google Patents

ねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼入後の焼もどし処理において短時間の高周波誘導加熱を行うことにより製造され、ねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼に関するものである。特に、本発明の鋼は、自動車用ドライブシャフトおよび等速ジョイント等に適用される機械構造用鋼として用いるのが好適である。
【0002】
従来、自動車用ドライブシャフトや等速ジョイント等の機械構造用部材は、熱間圧延棒鋼に熱間鍛造、あるいは切削、冷間鍛造等により所定の形状に加工した後、高周波焼入れ−炉加熱焼もどしを行い、機械構造用部材としての重要な特性であるねじり強度およびねじり疲労強度を確保しているのが一般的である。
【0003】
他方、近年環境問題から自動車部材に対して部品の軽量化の要求が強く、この点から自動車用部材のねじり強度およびねじり疲労強度の向上が要求されている。
また、部材の製造プロセスに関し、近年、生産性向上の観点から従来の炉加熱による焼もどしに替わり、高周波加熱による焼もどしプロセスの採用が検討されつつある。高周波焼もどしによれば、加熱時間が数秒間から長くても数分間以下と従来の炉加熱等による焼もどしの数十分間から数時間といった加熱時間に比べ大幅に短くでき、これにより、焼もどし処理時間の短縮が可能となり生産性向上が期待される。
【0004】
さらに後に述べるように本発明者らの検討では、高周波加熱の特徴である短時間急速加熱を活用することにより、ねじり特性向上の可能性が期待される。
例えば、特許文献1には、特定成分の鋼を用い、これに高周波焼入れを施した部材のある特定の式で定義される断面平均硬さが560以上であることを特徴とする軸部品において、ねじり強度160kgf/mm2以上が得られることが示されている。しかしながら、上掲公報には、機械構造用部材として他の重要な特性であるねじり疲労強度に関しては言及されていない。また、上掲公報においては、高周波焼入条件に関しては種々検討されているが、焼もどし条件に関しては検討されておらず、また焼もどし条件は170℃で1時間という記載があるのみであり、この記載からすると、焼もどしは短時間で行える高周波焼もどしではなく、通常の炉加熱等による焼もどしであると考えられる。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−90484号公報
【0006】
また、ねじり疲労強度に関しては、特許文献2に、重量比として、C:0.35〜0.65%、Si:0.35〜2.5%、Mn:1.0〜1.8%、Mo:0.05〜0.8%、S:0.01〜0.15%、Al:0.015〜0.05%、Ti:0.005〜0.05%、B:0.0005〜0.005%、N:0.002〜0.01%を含有し、またはさらに、P、Cu、O量を特定以下に制限し、またはさらに特定量のNb、Vの1種または2種を含有し、またはさらに、特定量のCr、Niの1種または2種を含有し、かつフェライトの組織分率が35%以下で、フェライト結晶粒径が20μm 以下であることを特徴とするねじり疲労強度の優れた高周波焼入れ軸部品用鋼材が開示されている。しかしながら、特許文献2の記載によれば、実施例中の焼もどし条件が170℃で1時間という記載のみであり、この記載からすると、短時間で行う高周波焼もどしではなく、炉加熱等による加熱による焼もどしプロセスを前提として検討がされている。
また、特許文献2には、ねじり疲労強度に関しても記述があり、ねじり強度とねじり疲労強度を両立した鋼材であることが示されている。しかしながら、当該鋼材では、5×10サイクルの繰り返し数におけるねじり疲労強度が最大で771MPaであり、近年の高強度化要求に対しては強度が不足する場合が生じる。
【0007】
【特許文献2】
特開平8−253842号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の上記したような問題を解決し、ねじり強度およびねじり疲労強度を含むねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼を提供することを目的としてなされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、短時間の高周波焼もどし処理を行うことを前提としたねじり強度およびねじり疲労強度の向上について鋭意検討を行った。
その結果、鋼素材の化学組成および組織を規定し、焼入れ後の焼もどし処理における加熱を高周波誘導加熱によって行うこととし、その加熱条件を規定することによって、下記(1)〜(6)に示す理由から、優れたねじり強度ならびにねじり疲労強度を有する機械構造用部材が得られるという知見を得た。
【0010】
すなわち、
(1)鋼素材に焼入れを行い、その後の焼もどし処理において100〜370℃で120秒以下の高周波誘導加熱を行うことにより、焼もどしを炉加熱で行った場合、粗大な炭化物が粒界に析出し粒界強度が低下しねじり特性が低下するのに対し、高周波誘導加熱では炉加熱に比べ急速短時間加熱であるために粗大炭化物の粒界析出が抑制され、粒界強度の低下が抑制されるためねじり特性が向上する。
【0011】
(2)鋼素材の組織を、本発明で規定する組織分率でベイナイト相を含む組織にすることにより、ベイナイト組織がフェライト−パーライト組織に比べ炭化物が微細に分散した組織であるために、焼入加熱時に炭化物の溶解が促進され、高周波焼もどし時の炭化物生成の核となる焼もどし前の焼入組織(マルテンサイト組織)の粒界に残留する炭化物(以下「粒界残留炭化物」という。)が減少する結果、高周波焼もどし時の粒内核生成数が増加する。これにより、粒界強度に悪影響を与える粒界炭化物が減少し、粒界強度が向上する結果、ねじり応力下での粒界破壊が抑制され、ねじり強度及びねじり疲労強度が増加する。
【0012】
(3)鋼素材の組織を、本発明で規定する組織分率でベイナイト相を含む組織にすることにより、高周波焼もどし前の焼入加熱時のオーステナイト粒径が、前記組織分率が本発明範囲外の場合に比べて微細化する。その結果、粒界残留炭化物が減少する。このため高周波焼もどし後の粒界炭化物が減少する。また、粒界面積が増加するため、P等の粒界偏析不純物量が減少する。これらのことにより、粒界強度が向上するため、ねじり応力下での粒界破壊が抑制され、ねじり強度及びねじり疲労強度が増加する。
【0013】
(4)Si、Al、さらにはMo、Cu、NiおよびCoのうちの1種または数種を適量添加することで、炭化物が不安定化し焼入加熱時に炭化物の溶解が促進され、高周波焼もどし時の炭化物生成の核となる焼もどし前の焼入組織(マルテンサイト組織)の粒界に残留する炭化物が減少する結果、高周波焼もどし時の粒内核生成数が増加する。これにより、粒界強度に悪影響を与える粒界炭化物が減少し、粒界強度が向上する結果、ねじり応力下での粒界破壊が抑制され、ねじり強度及びねじり疲労強度が増加する。
【0014】
(5)Crの添加は炭化物を安定化させ、残留炭化物生成を促進するため、その添加量を規制あるいは無添加とすることで、炭化物が不安定化し焼入加熱時に炭化物の溶解が促進され、高周波焼もどし時の炭化物生成の核となる焼もどし前の焼入組織(マルテンサイト組織)の粒界に残留する炭化物が減少する結果、高周波焼もどし時の粒内核生成数が増加する。これにより、粒界強度に悪影響を与える粒界炭化物が減少し、粒界強度が向上する結果、ねじり応力下での粒界破壊が抑制され、ねじり強度及びねじり疲労強度が増加する。
【0015】
(6)Ti、またはTiとNbおよび/またはVとを適量添加することで、Ti、Nb、Vの微細球状炭化物あるいは微細球状炭窒化物が生成し、これが高周波焼もどし時の炭化物生成核となり炭化物形状が球状となる。この球状の炭化物あるいは炭窒化物は、粒内の他、(マルテンサイトの)粒界にも存在するが、通常の炉加熱焼もどし時に一般的に生成する棒状あるいは板状のものに比べると、粒界での存在体積が小さく粒界強度に対する悪影響が小さいため、ねじり応力下における粒界破壊が抑制され、ねじり強度およびねじり疲労強度が向上する。
【0016】
本発明は以上の知見をもとになされたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
すなわち、本発明は、
1) 質量%で
C:0.35〜0.7%、
Si:0.08〜1.5%、
Mn:0.2〜2.5%、
P≦0.020%、
S≦0.06%、
Al:0.005〜0.25%、
Ti:0.005〜0.1%、
B:0.0003〜0.0060%、
N:0.002〜0.02%、および
O≦0.0030%
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる組成を有する鋼素材に焼入れを行い、その後の焼もどし処理において100〜370℃で120秒以下の高周波誘導加熱を行うことにより製造されことを特徴とする、ねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼。
【0017】
2) 上記1)において、鋼素材が、さらに質量%でCr≦0.20%を含有することを特徴とする、ねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼。
【0018】
3) 上記1)または2)において、鋼素材が、さらに質量%で、
Mo:0.02〜1.0%、
Cu≦1.0%、
Ni:0.05〜3.5%、および
Co:0.01〜1.0%
から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、ねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼。
【0019】
4) 上記1)、2)または3)において、鋼素材が、さらに質量%で、
Nb:0.005〜0.1%、および
V:O.01〜0.5%
から選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする、ねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼。
【0020】
5) 上記1)〜4)のいずれか1項において、鋼素材の組織が、組織分率にして10%以上のベイナイト相を含む組織であることを特徴とする、ねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の限定理由について説明する。なお、質量%は単に%と記す。
C:0.35〜0.7%
Cは、焼入れ性への影響が最も大きい元素であり、焼入硬化層の硬さおよび深さを高めて、ねじり強度を向上させる上で有用である。しかしながら、C含有量が0.35%に満たないと、必要とされるねじり強度を確保するため焼入硬化深さを飛躍的に高めなければならず、その際、焼割れの発生が顕著になることから、C含有量は0.35%以上とする。一方、C含有量が0.7%を超えると、切削性および冷間鍛造性が低下し、また、ねじり試験時の破壊が脆性破壊となり、かえってねじり強度が低下する他、耐焼割れ性も低下する。したがって、C含有量は、0.35〜0.7%の範囲とし、好ましくは0.4〜0.6%の範囲とする。
【0022】
Si:0.08〜1.5%
Siは、炭化物生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制する。また、フェライト中に固溶して強化するほか、焼入れ後の焼もどし時の焼もどし軟化抵抗を向上させる元素であり、このことにより、ねじり強度を向上させる。さらに、Siは脱酸元素としても有用であるため、それらの効果を発揮させる観点から、Si含有量は0.08%以上とする必要がある。しかしながら、Si含有量が1.5%を超えると、フェライトの固溶硬化により硬さが上昇し、切削性および冷間鍛造性の低下を招く。したがってSi含有量は、0.08〜1.5%の範囲とし、好ましくは0.1〜1.5%の範囲とする。
【0023】
Mn:0.2〜2.5%
Mnは、焼入性を向上させ、焼入時の硬化深さを確保する上で必須の成分であり積極的に添加するが、0.2%未満の添加ではその効果に乏しく、また、2.5%を超えて添加すると、焼入後の残留オーステナイトを増加させることにより、かえって表面硬さを低下させ、ねじり強度および疲労強度を低下させることになることから、Mn含有量は0.2〜2.5%の範囲とし、好ましくは0.3〜1.5%の範囲とする。
【0024】
P:0.020%以下
Pは、オーステナイトの粒界に偏析し、粒界強度を低下させることにより、ねじり強度および疲労強度を低下させ、また、焼割れを助長する。したがって、P含有量は極力低下させるのが望ましく、具体的には、0.020%以下とする。
【0025】
S:0.06%以下
Sは、鋼中でMnSを形成し、切削性を向上させるため添加するが、0.06%を超えて添加すると粒界に偏析して粒界強度を低下させるため、Sは、0.06%以下の添加とする。
【0026】
Al:0.005〜0.25%
Alは、脱酸に有効な元素であり低酸素化のために有用な元素であるとともに、Nと結合して、AlNを形成しこれが焼入加熱時のオーステナイト粒の成長を抑制する。また、炭化物生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制する。これらのことにより、ねじり強度及びねじり疲労強度を向上させる元素である。しかしながら、Al含有量が0.005%未満ではその効果が小さく、また、0.25%を超えてもその向上効果は期待できないばかりか、成分コストの上昇を招くことから、Alは、0.005〜0.25%の範囲の添加とし、好ましくは0.02〜0.15%の範囲とする。
【0027】
Ti:0.005〜0.1%
Tiは、鋼中でC、Nと結合し微細球状の炭化物あるいは炭窒化物を形成し、これが高周波焼もどし後の粒界炭化物形状を球状化することで粒界強度の低下を抑制し、ねじり強度及びねじり疲労強度を向上させる。また、TiはNと結合する事で、BがBNとなりBの焼入性向上効果が消失するのを防止するため、Bの焼入性向上効果を十分発揮させるために添加する。
Tiは、0.005%未満の添加ではその効果は小さく、また、0.1%を超えて添加すると、TiNが多量に形成される結果、これが疲労破壊の起点となってねじり疲労強度の低下が顕著となることから、Tiは、0.005〜0.1%の範囲とし、好ましくは0.01〜0.08%の範囲とする。
【0028】
B:0.0003〜0.0060%
Bは、微量の添加により焼入性を向上させ、焼入れ時の焼入深さを高めることによりねじり強度を向上させる。また、Bは、ベイナイト相の生成を促進し、焼入加熱時のオーステナイト粒径を微細化して粒界残留炭化物を減少させ粒界強度を高めて、ねじり強度およびねじり疲労強度を向上させる。さらに、Bは、粒界に優先的に偏析し、粒界に偏析するPの濃度を低減し、粒界強度を高めてねじり強度およびねじり疲労強度を向上させる。このため、Bは、ねじり強度およびねじり疲労強度を向上させるのに有効な元素であるため積極的に添加する。しかしながら、Bは、0.0003%未満の添加ではその効果が小さく、0.0060%を超えて添加しても、その向上効果は期待できないばかりか、成分コストの上昇を招くことから、Bは0.0003〜0.0060%の範囲の添加とし、好ましくは0.0005〜0.0040%の範囲の添加とする。
【0029】
N:0.002〜0.02%
Nは、Al、TiまたはNbと窒化物を形成し、あるいはAl、TiまたはNbとCとともに結合して炭窒化物を形成することにより、これが焼入加熱時のオーステナイトの成長を抑制することにより、粒界強度を高め、ねじり強度およびねじり疲労強度を向上させる元素であるので積極的に添加する。しかしながら、Nは、0.002%未満の添加ではその効果が小さく、また、0.02%を超えて添加すると熱間変形能を低下させることにより、連続鋳造時に鋳片の表面欠陥を著しく増加させることになることから、Nは、0.002〜0.02%の範囲の添加とし、好ましくは0.002〜0.015%の範囲の添加とする。
【0030】
O:0.0030%以下
Oは、硬質の酸化物系非金属介在物として存在するとともに、粒界に偏析し粒界強度を低下させる。また、O含有量の増大は、酸化物系非金属介在物のサイズを非常に粗大化させる。これらは、特にねじり疲労強度に有害であるため、O含有量は、極力低減することが望ましく、具体的には0.0030%以下に低減する必要がある。なお、O含有量は、好ましくは0.0020%以下とする。
【0031】
上記の化学組成の他に本発明においては、必要に応じて、Cr:0.20%以下を含有させることができる。
Cr:0.20%以下
Crは、焼入性向上元素であり、この目的のために添加することができる。しかしながら、Crは、炭化物を安定化させて残留炭化物生成を促進し、粒界強度を低下させるため、ねじり強度及びねじり疲労強度を劣化させることから、Cr添加量は極力低下させるべきであり、具体的には0.20%以下とし、好ましくは0.05%以下とする。
【0032】
また、本発明においては、必要に応じて、Mo:0.02〜1.0%、Cu≦1.0%、Ni:0.05〜3.5%、およびCo:0.01〜1.0%から選ばれる1種または2種以上を含有させることができる。これらの元素の添加範囲の限定理由は以下の通りである。
【0033】
Mo:0.02〜1.0%
Moは、粒界に偏析するP等の不純物元素を低減させることにより粒界強度を高め、脆性破壊を抑制することにより、ねじり強度およびねじり疲労強度を向上させる作用がある。また、Moはベイナイト相の生成を促進する効果がある。さらに、Moは焼入性向上に有用な元素であり、焼入性を調整するため必要量添加することが好ましい。加えて、Moは、焼もどし軟化抵抗を向上させるので、ねじり強度の向上にも有効な元素である。このように本目的においては、Moは好適な選択的添加元素である。しかしながら、Moは、0.02%未満の添加ではその効果が小さい。一方、Moを1.0%を超えて添加すると、圧延材の硬さが著しく増加して加工性を低下させるとともに、例えば高周波焼入のような急速短時間加熱の場合には、オーステナイト中への溶解が困難な炭化物を形成しやすくなる。このため、Moは、0.02〜1.0%の範囲の添加とすることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.7%の範囲の添加とする。
【0034】
Cu:1.0%以下
Cuは、炭化物生成を抑制することにより炭化物による粒界強度の低下を抑制して、ねじり強度及びねじり疲労強度を向上させる元素である。また、Cuは、焼入性向上に有効な元素であり、さらに、フェライト中に固溶して鋼を強化して、ねじり強度を向上させる。しかしながら、Cuは、1.0%を超えて添加すると熱間加工性を阻害するため1.0%以下の添加とすることが好ましく、より好ましくは0.5%以下とする。
【0035】
Ni:0.05〜3.5%
Niは、炭化物生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制してねじり強度及びねじり疲労強度を向上させる元素である。また、Niは、焼入性を向上させる元素であるので、焼入性を調整する場合に用いることができる。しかしながら、Niは、0.05%未満の添加ではその効果が小さい。一方、Niは極めて高価な元素であるので3.5%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するため好ましくない。このため、Niは、0.05〜3.5%の範囲の添加とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0%の範囲とする。
【0036】
Co:0.01〜1.0%
Coは、炭化物生成を抑制することにより炭化物による粒界強度の低下を抑制し、ねじり強度及びねじり疲労強度を向上させる元素である。しかしながら、Coは、0.01%未満の添加ではその効果が小さい。一方、Coは、極めて高価な元素であるので、1.0%を超えて添加すると鋼材のコストが上昇するため好ましくない。このため、Coは、0.01〜1.0%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.5%の範囲とする。
【0037】
さらに本発明においては、必要に応じて、Nb:0.005〜0.1%およびV:O.01〜0.5%から選ばれる1種または2種を添加することができる。これらの元素の添加範囲の限定理由は以下の通りである。
【0038】
Nb:0.005〜0.1%
Nbは、鋼中でC、Nと結合し微細球状の炭化物あるいは炭窒化物を形成し、これが高周波焼もどし後の粒界炭化物形状を球状化することで粒界強度の低下を抑制する。また、Nbは、析出強化作用の極めて強い元素であることと、焼もどし軟化抵抗を向上させる元素である。これらのことにより、ねじり強度およびねじり疲労強度を向上させる。しかしながら、Nbは、0.005%未満の添加ではその効果が小さい。一方、Nbは0.1%を超えて添加しても、その向上効果は期待できないばかりか、成分コストの上昇を招くため好ましくない。このため、Nbは、0.005〜0.1%の範囲の添加とすることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.05%の範囲の添加とする。
【0039】
V:O.01〜0.5%
Vは、鋼中でC、Nと結合し微細球状の炭化物あるいは炭窒化物を形成し、これが高周波焼もどし後の粒界炭化物形状を球状化することで粒界強度の低下を抑制する。またVは、析出強化作用の極めて強い元素であることと、焼もどし軟化抵抗を向上させる元素である。これらのことにより、ねじり強度およびねじり疲労強度を向上させる。しかしながら、Vは、0.01%未満の添加ではその効果が小さい。一方、Vは0.5%を超えて添加しても、その向上効果は期待できないばかりか、成分コストの上昇を招くため好ましくない。このため、Vは、0.01〜0.5%の範囲の添加とすることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.3%の範囲の添加とする。
【0040】
また、本発明の高周波焼もどし鋼は、上記組成を有する鋼素材に焼入れを行い、その後の焼もどし処理において100℃以上で120秒以下の高周波誘導加熱を行うことを必須とする。この理由は、焼もどしを炉加熱で行った場合、粗大な炭化物が粒界に析出し粒界強度が低下しねじり特性が低下するのに対し、焼もどしを高周波誘導加熱で行った場合には、炉加熱の場合に比べ急速短時間加熱であるために粗大炭化物の粒界析出が抑制され、粒界強度の低下が抑制されるためねじり特性が向上するからである。
【0041】
なお、加熱温度を100℃以上とするのは、100℃未満の温度だと焼もどしによる効果が十分に得られないからである。加熱温度は、好適には120℃以上である。加熱温度を370℃以下とするのは、370℃を超えると、炭化物の粗大化が起こり粒界強度が低下するためである。また、加熱時間、すなわち100℃以上の温度での保持時間を120秒以下とするのは、120秒よりも長い時間加熱した場合には、炭化物の粗大化が起こり粒界強度が低下するためである。加熱時間は、好適には90秒以下であり、さらに好適には10秒以下である。なお、一瞬でも100℃以上になればよく、加熱時間の下限値は特に規定しない。
【0042】
高周波誘導加熱時の加熱温度は特段の規定はしないが、通常の高周波加熱時の加熱速度である10℃/s以上とすればよい。
【0043】
また、本発明においては、鋼素材の組織が、組織分率(面積率)にして10%以上のベイナイト相を含む組織であることが好ましい。この理由は、ベイナイト相の組織分率が10%未満の場合、焼入加熱時、特に高周波加熱のような急速短時間加熱の場合の炭化物溶解が遅くなることおよびベイナイト相の組織分率が10%以上(本発明範囲内)の場合に比べ、オーステナイト粒径が粗大化するため、高周波焼もどし後に粒界炭化物が多数存在するようになる。さらに、オーステナイト粒径が粗大化することにより、P等の粒界偏析不純物量が増えるため粒界強度が低下する。これらのことにより、粒界強度が低下するため、ねじり強度およびねじり疲労強度が低下するからである。なお、ベイナイト相の組織分率は好ましくは20%以上とする。ベイナイト組織以外の残りの組織は、フェライト、パーライト等いずれでも良く特に規定はしない。
【0044】
次に、本発明における高周波焼もどし鋼の製造方法の一例を説明する。
ここでは、鋼素材の組織を、組織分率(面積率)にして10%以上のベイナイト相を含む組織とすることによって、本発明の鋼を製造する方法を説明すると、上記化学組成を満足する鋼素材、例えば鋳片に仕上温度900℃以上にて熱間圧延を施し、熱間圧延終了後に0.2〜10℃/sの冷却速度で冷却して、鋼素材の組織を、組織分率(面積率)にして10%以上のベイナイト相を含む組織とした後、鋼素材に焼入れを行い、その後の焼もどし処理において100℃以上で120秒以下の高周波誘導加熱を行うことによって、本発明の鋼を製造することができる。
【0045】
なお、熱間圧延終了後の冷却は、0.2℃/s未満の冷却速度の場合、フェライト、パーライト等の徐冷組織が生成してベイナイト組織が得られがたくなり、ベイナイト相の組織分率を10%以上にすることができなくなる場合が生じ、かかる場合にも、十分なねじり強度およびねじり疲労強度を得る上では不利となる。一方、冷却速度が10℃/sを超えると、マルテンサイト等の硬質相が生成促進される結果、ベイナイト相の組織分率を10%以上にすることができなくなる場合が生じ、かかる場合にも、十分なねじり強度およびねじり疲労強度を得る上では不利となる。このため、熱間圧延終了後の冷却は、0.2〜10℃/sの冷却速度で行うことが好ましい。なお、かかる冷却速度は、好ましくは0.3〜6℃/sの範囲とする。
また、熱間圧延の仕上温度は、適正組織分率のベイナイト相生成の観点から、900℃以上が好ましい。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
表1に示す化学組成の鋼を転炉−連続鋳造プロセスにより溶製した。鋳造時の鋳片サイズは300mm×400mmであった。この鋳片をブレークダウン工程を経て150mm角ビレットに圧延したのち30mmφの棒鋼に熱間圧延した。熱間圧延の仕上温度は840〜920℃とした。熱間圧延後の冷却は、0.07〜0.7℃/sの冷却速度で行った。この棒鋼を用いて、段付ねじり試験片(段底部応力集中係数1.5、段底部径20mmφ)を作製し、周波数15kHzの高周波焼入装置を用いて焼入れた後、同じく高周波焼入装置により表2に示すような条件で高周波誘導加熱を行うことによって焼もどし処理を行った後、ねじり試験を行った。ねじり強度試験は、最大トルク4900N・mのねじり試験機を用いて、最大ねじりせん断応力を求め、ねじり強度とした。ねじり疲労強度試験は、最大トルク4900N・mのねじり試験機を用いて、両振りで応力条件を変えて行い、1×10回で寿命となる応力を疲労強度として評価した。これらの評価結果を表2に示す。
【0047】
【表1】
Figure 0004344126
【0048】
【表2】
Figure 0004344126
【0049】
表2において、試験片No.1〜No.12は本発明例であり、試験片No.13〜No.23は比較例である。
表2に示す結果から、本発明例である試験片No.1〜12はいずれも、ねじり強度が1900 MPa以上であり、かつ、ねじり疲労強度が705 MPa以上であり、ねじり強度およびねじり疲労強度に優れている。
一方、比較例である試験片No.14〜21はいずれも、鋼中の化学組成が本発明の範囲外であるため、ねじり強度およびねじり疲労強度とも本発明例に比較して低い。
比較例である試験片No.13およびNo.22は、鋼中の化学組成については本発明の範囲内であるが、高周波焼もどし時の加熱温度あるいは加熱時間が本発明の範囲外であるため、ねじり強度およびねじり疲労強度ともに本発明例に比較して低い。
比較例である試験片No.23は、化学組成については本発明の範囲内であるが、高周波焼入後の焼もどしが本発明範囲外の炉加熱により行った場合であり、焼もどし時間が高周波焼もどしの場合に比べ30分間と長時間を要している結果、ねじり強度およびねじり疲労強度ともに本発明例に比較して低い。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、短時間の高周波焼もどしプロセスによって、ねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼の提供が可能になり、これは、産業上の利用価値が大である。特に、本発明の鋼は、自動車用ドライブシャフトおよび等速ジョイント等に適用される機械構造用部材として用いると顕著な効果がある。

Claims (5)

  1. 質量%で
    C:0.35〜0.7%、
    Si:0.08〜1.5%、
    Mn:0.2〜2.5%、
    P≦0.020%、
    S≦0.06%、
    Al:0.005〜0.25%、
    Ti:0.005〜0.1%、
    B:0.0003〜0.0060%、
    N:0.002〜0.02%、および
    O≦0.0030%
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる組成を有する鋼素材に焼入れを行い、その後の焼もどし処理において100〜370℃で120秒以下の高周波誘導加熱を行うことにより製造されことを特徴とする、ねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼。
  2. 請求項1において、鋼素材が、さらに質量%でCr≦0.20%を含有することを特徴とする、ねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼。
  3. 請求項1または2において、鋼素材が、さらに質量%で、
    Mo:0.02〜1.0%、
    Cu≦1.0%、
    Ni:0.05〜3.5%、および
    Co:0.01〜1.0%
    から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、ねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼。
  4. 請求項1、2または3において、鋼素材が、さらに質量%で、
    Nb:0.005〜0.1%、および
    V:O.01〜0.5%
    から選ばれる1種または2種を含有することを特徴とする、ねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項において、鋼素材の組織が、組織分率にして10%以上のベイナイト相を含む組織であることを特徴とする、ねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼。
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