JP5070947B2 - 焼入れ鋼板部材および焼入れ用鋼板とそれらの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車のボデー構造部品、足回り部品等を始めとする機械構造部品等として好適な、高強度の焼入れ鋼板部材およびその製造方法、ならびにそのための焼入れ用鋼板およびその製造方法、さらにはこの焼入れ鋼板部材を用いた構造体に関する。
近年、自動車の燃費向上のため、使用する鋼材の高強度化を図り、自動車の重量を減ずる努力が進んでいる。その結果、自動車に広く使用される薄鋼板においては、鋼板強度の増加に伴うプレス成形性の低下により、複雑な形状の部品を製造することが困難になってきている。具体的には、鋼板の延性が低下し、加工度が高い部位で破断が生じる;スプリングバックや壁反りが大きくなり、成形された部品の寸法精度が劣化する、といった問題が発生している。そのため、高強度、特に780MPa級以上の引張強さを有する鋼板を用いたプレス成形により部品を製造することは容易ではない。
特許文献1に提案されているように、加熱した鋼板をプレス成形する熱間プレス成形と呼ばれる方法では、高温の鋼板が軟質かつ高延性になっているため、複雑な形状を寸法精度よく成形することが可能である。その上、鋼板をオーステナイト域に加熱してからプレス成形し、プレス成形に用いた金型内で成形品を急冷して焼入れすることによって、鋼板の成形と同時に、マルテンサイト変態による鋼板の高強度化を達成することができる。
特許文献2には、鋼板素材を予め室温で所定の形状にプレス成形した後、成形に用いた金型に入れたまま成形品をオーステナイト域に加熱し、金型内で急冷することによって、鋼板の高強度化とプレス成形を同時に行う予成形プレスクエンチ法が開示されている。
英国特許公報1490535号 特開平10−96031号公報
上述した熱間プレス成形法や予成形プレスクエンチ法は、鋼板のプレス成形とプレス成形品の高強度化を同時に達成することができる優れた方法である。しかし、部材の引張強さ(以下、TSとも表記する)が1.8GPa以上になってくると、従来のTSが1.5GPa級の焼入れ部材の場合に比して、スポット溶接継手のせん断強度が著しく低くなるという問題が生じてくることが、本発明者らの検討により初めて明らかとなった。溶接による部品の製造ができないと、部品の適用範囲が著しく制限される。
本発明の具体的課題は、焼入れ後の溶接性に優れた、TS≧1.8GPaの高強度焼入れ鋼板部材を比較的容易に製造することを可能にする焼入れ用鋼板、それにより得られる焼入れ鋼板部材、およびそれらの製造方法、ならびに焼入れ鋼板部材を用いた構造体を提供することである。
本発明者らは、焼入れ後のTSが1.8GPa以上の高強度焼入れ鋼板部材の溶接性を改善すべく鋭意検討を行った結果、主に鋼板成分を調整することにより、溶接性が大幅に改善されることを知見した。その知見に基づき完成させた本発明は、次の通りである。
(1)質量%で、C:0.25〜0.45%、Mn+Cr:0.5〜3.0%、およびNd:0.01〜0.5%を含有し、さらにSi:0.5%以下、Ni:2%以下、Cu:1%以下、V:1%以下およびAl:1%以下の1種または2種以上を含有し、さらに、下記式(1)を満たす量のTiを含有し、残部Fe及び不純物からなる化学組成を有し、引張強さが1.8GPa以上であることを特徴とする、焼入れ鋼板部材:
3.42N+0.001≦Ti≦3.42N+0.5 (1)
ここで、式中のTiおよびNは鋼中の各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
(2)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、B:0.01%以下を含有する。
(3)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Nb:1.0%以下およびMo:1.0%以下よりなる群から選ばれる1種または2種を含有する。
)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.001〜0005%を含有する。
)前記化学組成に不純物として含まれるP、SおよびNの含有量が、質量%で、P:0.005%以下、S:0.005%以下およびN:0.002%以下の少なくとも1条件を満足する。
)上記(1)〜(5)の各項記載の化学組成を有する鋼板であって、Ac3点以上、(Ac3点+100℃)以下の温度域に5分以下の時間保持し、次いで上部臨界冷却速度以上の冷却速度でMs点以下の温度域まで冷却して焼入れを施すことで、引張強さ1.8GPa以上の焼入れ鋼板部材を製造することができる焼入れ用鋼板。
)上記(1)〜()の各項記載の化学組成を有する鋼材を、Ac3点以上、(Ac3点+100℃)以下の温度域に5分以下の時間保持し、次いで上部臨界冷却速度以上の冷却速度でMs点以下の温度域まで冷却して焼入れを施すことを特徴とする、焼入れ鋼板部材の製造方法。
)上記(1)〜()の各項記載の化学組成を有する鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃としたのちに熱間圧延を施し、800〜950℃で熱間圧延を完了し、500〜700℃で巻取ることを特徴とする、焼入れ用鋼板の製造方法。
)上記(1)〜()の各項記載の化学組成を有する鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃としたのちに熱間圧延を施し、800〜950℃で熱間圧延を完了し、500〜700℃で巻取って熱間圧延鋼板とし、この熱間圧延鋼板に脱スケール処理と冷間圧延とを施すことを特徴とする、焼入れ用鋼板の製造方法。
10)上記(1)〜()の各項記載の化学組成を有する鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃としたのちに熱間圧延を施し、800〜950℃で熱間圧延を完了し、500〜700℃で巻取ることにより熱間圧延鋼板とし、この熱間圧延鋼板に脱スケール処理と冷間圧延とを施し、次いで(Ac1点+10℃)〜Ac3点の温度域に10秒間以上保持したのちに1〜100℃/秒の平均冷却速度で300〜500℃の温度域まで冷却し、さらに300〜500℃の温度域に30秒間〜10分間保持し、その後に1〜50℃/秒の平均冷却速度で室温まで冷却することを特徴とする、焼入れ用鋼板の製造方法。
11)上記(1)〜()の各項記載の化学組成を有する鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃としたのちに熱間圧延を施し、800〜950℃で熱間圧延を完了し、500〜700℃で巻取ることにより熱間圧延鋼板とし、この熱間圧延鋼板に脱スケール処理と冷間圧延とを施し、次いで(Ac1点−100℃)〜(Ac1点+30℃)の温度域に1〜24時間保持したのちに1〜50℃/時の平均冷却速度で室温まで冷却することを特徴とする、焼入れ用鋼板の製造方法。
12)上記(1)〜()の各項記載の化学組成を有する鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃としたのちに熱間圧延を施し、800〜950℃で熱間圧延を完了し、500〜700℃で巻取ることにより熱間圧延鋼板とし、この熱間圧延鋼板に脱スケール処理と溶融亜鉛めっきとを施し、次いで500℃〜Ac1点の温度域で合金化熱処理を施すことを特徴とする、焼入れ用鋼板の製造方法。
13)上記(1)〜()の各項記載の化学組成を有する鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃としたのちに熱間圧延を施し、800〜950℃で熱間圧延を完了し、500〜700℃で巻取ることにより熱間圧延鋼板とし、この熱間圧延鋼板に脱スケール処理と冷間圧延と溶融亜鉛めっきとを施し、次いで500℃〜Ac1点の温度域で合金化熱処理を施すことを特徴とする、焼入れ用鋼板の製造方法。
14)上記(1)〜()の各項記載の化学組成を有する鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃としたのちに熱間圧延を施し、800〜950℃で熱間圧延を完了し、500〜700℃で巻取ることにより熱間圧延鋼板とし、この熱間圧延鋼板に脱スケール処理と冷間圧延とを施し、次いで(Ac1点+10℃)〜Ac3点の温度域に10秒間以上保持したのちに1〜60℃/秒の平均冷却速度で500℃まで冷却し、さらに溶融亜鉛めっきを施したのちに500℃〜Ac1点の温度域で合金化熱処理を施すことを特徴とする、焼入れ用鋼板の製造方法。
15)上記(1)〜()の各項記載の焼入れ鋼板部材が下記式(2)を満足する継手でスポット溶接されていることを特徴とする構造体。
d≧3√t (2)
ここで、dはスポット溶接継手のナゲット径(単位:mm)、tはスポット溶接される鋼板部材の板厚(単位:mm)である。
本発明により、TSが1.8GPa以上と高強度でありながら溶接性にも優れた焼入れ鋼板部材を作製できる焼入れ用鋼板の実用化が可能になるという、技術的に価値ある効果が達成される。従って、本発明は特に、スポット溶接などの溶接により製作される部品の製造に有用であるが、用途はそれのみに制限されるものではない。高強度を生かして、溶接を利用しない用途に適用することも可能である。
次に、本発明において、各範囲に限定した理由について説明する。以後の説明で合金元素についての「%」は「質量%」を表す。
(化学組成)
本発明に係る焼入れ用鋼板および焼入れ鋼板部材の鋼板(鋼板がめっき鋼板である場合には素地鋼板)の化学組成は次の通りである。
C:0.25〜0.45%
Cは、鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後強度を主に決定する非常に重要な元素である。焼入れ後強度でTS≧1.8GPaを確保するには、C含有量を少なくとも0.25%とする必要がある。一方で、C含有量が0.45%を超えると、焼入れ後の強度が高くなりすぎるため、靱性劣化が著しくなる。より望ましいC含有量は0.28〜0.33%である。
Mn+Cr:0.5〜3.0%
MnおよびCrは、鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後強度を安定して確保するために、非常に効果のある元素である。しかし、MnおよびCrの合計含有量(以下、「(Mn+Cr)含有量」ともいう。)が0.5%未満ではその効果は十分ではなく、一方で、(Mn+Cr)含有量が3.0%を超えるとその効果は飽和し、逆に安定した強度確保が困難となる。より望ましい(Mn+Cr)含有量は0.8〜2.0%である。
Nd:0.01〜0.5%
Ndは、焼入れ後の溶接性、すなわち焼入れ後のスポット溶接継手のせん断強度、を大幅に改善する効果を有する元素である。しかし、Nd含有量が0.01%未満ではその効果は十分ではない。一方、Nd含有量が0.5%を超えると、その効果は飽和する上、粗大なNd系介在物が生成するようになり、溶接性が低下する。より望ましいNd含有量は0.02〜0.2%、さらに望ましくは0.03〜0.15%である。
Si:0.5%以下、Ni:2%以下、Cu:1%以下、V:1%以下およびAl:1%以下の1種または2種以上
これらの元素は、いずれも鋼板の焼入れ性を高め、かつ高い焼入れ後強度を安定して達成するのに効果があるので、それらの1種又は2種以上を含有させる。これらの元素のこの効果は、Si:0.01%以上、Ni:0.01%以上、Cu:0.01%以上、V:0.01%以上、Al:0.01%以上で顕著となる。しかし、各元素をその上限値以上に含有させても上記効果は小さく、かついたずらにコスト増を招くため、各元素の含有量は上述の範囲とする。これらの1種又は2種以上の元素を添加する場合の好ましい含有量は、Si:0.02〜0.4%、Ni:0.02〜1%、Cu:0.02〜0.8%、V:0.02〜0.5%、Al:0.01〜0.1%である。
B:0.01%以下
Bは、任意添加元素であり、鋼板の焼入れ性を高め、かつ焼入れ後強度の安定確保効果をさらに高めるのに有効である。また、粒界に偏析して粒界強度を高め、靱性を向上させる点でも重要な元素である。さらに、加熱時のオーステナイト粒成長抑制効果も高い。しかし、B含有量が0.01%を超えるとその効果は飽和し、かつコスト増を招く。より望ましいB含有量は0.0010〜0.0030%である。
Nb:1.0%以下
Nbは、任意添加元素であり、鋼板をAc3点以上に加熱したときに、再結晶を抑制しかつ微細な炭化物を形成してオーステナイト粒を細粒にするため、靱性を大きく改善する効果を有する。しかし、Nb含有量が1.0%超になると、その効果は飽和し、いたずらにコスト増を招く。より望ましいNb含有量は0.02〜0.15%であり、さらに望ましくは0.04〜0.10%である。
Mo:1.0%以下
Moは、任意添加元素であり、鋼板をAc3点以上に加熱したときに、微細な炭化物を形成してオーステナイト粒を細粒にするため、靱性を大きく改善する効果を有する。しかし、Mo含有量が1.0%超になると、その効果は飽和し、いたずらにコスト増を招く。より望ましいMo含有量は0.01〜0.2%であり、さらに望ましくは0.04〜0.15%である。
3.42N+0.001≦Ti≦3.42N+0.5
Tiは、鋼板をAc3点以上に加熱したときに、再結晶を抑制し微細な炭化物を形成してオーステナイト粒を細粒にするため、靱性を大きく改善する効果を有する。かかる効果を確実に得るためにTi含有量を(3.42N+0.001)以上とすることが好ましい。一方で、Ti含有量が(3.42N+0.5)超になると、その効果は飽和し、いたずらにコスト増を招く。より望ましいTi含有量は3.42N+0.02≦Ti≦3.42N+0.08である。
Ca:0.001〜0.005%
Caは、任意添加元素であり、鋼中の介在物を微細化し、焼入れ後の靱性を向上させる効果を有する。かかる効果を確実に得るためにCa含有量を0.001%以上とすることが好ましい。一方、Ca含有量が0.005%を超えるとその効果は飽和する。より望ましいCa含有量は0.002〜0.004%である。
P:0.005%以下
Pは不純物であり、焼入れ後の靱性を大きく劣化させる元素であるため、その含有量を0.005%以下とすることが好ましい。より望ましくは0.003%以下である。
S:0.005%以下
Sも不純物であり、焼入れ後の靱性を大きく劣化させる元素であるため、その含有量を0.005%以下とすることが好ましい。より望ましくは0.003%以下である。
N:0.002%以下
Nも不純物であり、鋼中にて介在物を形成し、焼入れ後の靱性を劣化させる元素であるため、その含有量を0.002%以下とすることが好ましい。より望ましくは0.001%以下である。
(焼入れ処理)
本発明によれば、上記化学組成を有する鋼材に対して熱間プレス成形法や予プレスクエンチ法や高周波焼入れ法等により焼入れ処理を施すが、熱間プレス成形法や予プレスクエンチ法により焼入れ処理を施すときの加熱条件 (保持温度および保持時間) は次の通りである。
焼入れ処理により1.8GPa以上という目的とする強度を得るために、焼入れ処理に供する鋼材をAc3点以上、(Ac3点+100℃)以下の温度域で5分以下の時間保持する。保持温度の下限は、鋼の組織を一旦オーステナイト単相として、焼入れ処理により目的とする強度を得るためである。保持温度の上限および保持時間の上限は、焼入れ処理後の旧オーステナイト粒径の粗大化を抑制して靭性を確保し、スケールロスを抑制し、製造コストの増加を抑制するためである。保持温度を(Ac3点+100℃)超とするか、あるいは保持時間を5分超とすると、旧オーステナイト粒径が粗大化して、必要な靱性が確保できなくなる場合があり、またスケールロスや製造コストが増加する。より望ましい保持温度は、Ac3点以上、(Ac3点+50℃)以下で、より望ましい保持時間は2分以下である。なお、旧オーステナイト粒径は細粒であればあるほど好ましいので、保持時間の下限は特に規定しない。
焼入れ処理に熱間プレス成形法を用いる場合には、熱間プレス成形に供する鋼板を上記条件で加熱してから熱間プレス成形を施せばよく、予成形プレスクエンチ法を用いる場合には、予成形された成形品の加熱を上記条件で行ってから焼入れ処理を施せばよい。
焼入れ処理における冷却は、焼入れ処理により目的とする強度を得るために上部臨界冷却速度以上の冷却速度でMs点以下の温度域まで冷却する。本発明鋼板では60℃/秒以上とすれば十分である。
焼入れ処理として熱間プレス成形法や予プレスクエンチ法を用いる場合における成形の形態は、特に制限されないが、例示すれば、曲げ加工、絞り成形、張出し成形、穴拡げ成形、フランジ成形がある。採用する成形法は、目的とする熱間プレス成形鋼板部材の種類によって適宜選べばよい。熱間プレス成形鋼板部材の代表例として、自動車用補強部品であるドアガードバーやバンパーレインフォースメントなどを挙げることができる。本発明の焼入れ鋼板部材の製造方法は、適切な焼入れ処理手段を備えていれば、プレス成形以外の成形法、例えばロール成形に適用することもできる。
上述した化学組成を有する鋼板から、熱間プレス成形法や予プレスクエンチ法等により焼入れ処理された焼入れ鋼板部材は、スケール除去の目的でショットブラストにより処理されるのが普通である。このショットブラスト処理には、表面に圧縮応力を導入する効果があるため、遅れ破壊が抑制され、かつ疲労強度が向上する、という利点がある。
本発明に係る焼入れ鋼板部材は、TS:1.8GPa以上の高強度を有するにもかかわらず、特にNdの含有により良好な溶接性を示し、従来のTS:1.5GPa級の焼入れ鋼板部材と同レベルの高いせん断強度を有する溶接継手を形成することができる。
熱間プレス成形法では、鋼板は成形前にオーステナイト温度域に加熱されてオーステナイト変態を受けるので、軟質化する。従って、予め常温でプレス成形を行う予成形プレスクエンチ法は別にして、加熱前の室温での鋼板の機械的特性は重要ではないので、鋼板の種類や加熱前の金属組織については特に規定しない。つまり、熱間プレス成形用鋼板は、熱間圧延鋼板、冷間圧延鋼板(フルハード材、焼鈍材)、めっき鋼板のいずれを使用してもよい。また、その製造方法も特に限定されない。めっき鋼板としては、アルミニウム系めっき鋼板(例、溶融アルミニウムめっき鋼板、溶融55%Al−Zn合金めっき鋼板)、亜鉛系めっき鋼板(例、電気もしくは溶融亜鉛めっき鋼板、溶融5%Al−Znめっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気Ni−Zn合金めっき鋼板)等が挙げられる。
一方、予め常温でプレス成形を行う予成形プレスクエンチ法のような方法では、熱間プレス成形に供する鋼板は、できるだけ軟質であることが望ましい。例えば、熱間圧延鋼板や連続焼鈍を施した冷間圧延鋼板については、引張強が780MPa以下、冷間圧延ままの鋼板については引張強さが780〜1180MPa、箱焼鈍を施した冷間圧延鋼板については引張強さが590MPa以下であることが望ましい。
(焼入れ処理用鋼板の製造方法)
以下には、特に予成形プレスクエンチ法のような常温でプレス成形を行う場合に有用な軟質な鋼板を得るのに適した焼入れ用鋼板の好適な製造方法について説明する。
熱間圧延:
上述した化学組成を有する鋼塊又は鋼片を、1050〜1300℃としたのちに熱間圧延を施し、800〜950℃で熱間圧延を完了し、500〜700℃で巻取りを行う。
鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃とするのは、加工性を劣化させる非金属介在物を十分に固溶させるためである。この効果は、上記組成の鋼板に対して1050℃以上とすることで認められるが、1300℃超としても効果が飽和するだけでなく、スケールロスが増加する。このため、熱間圧延に供する鋼塊又は鋼片の温度を1050℃〜1300℃とする。望ましくは1050〜1250℃、さらに望ましくは1050〜1200℃である。
熱間圧延に供する鋼塊又は鋼片の温度を1050〜1300℃とする手法は、1050℃未満となった鋼塊又は鋼片を加熱して1050〜1300℃とする場合のみならず、連続鋳造後の鋼塊又は分塊圧延後の鋼片を1050℃未満に低下させることなく熱間圧延に供する場合をも含む。
熱間圧延完了温度については、Ar3点未満にならないようにする必要がある。Ar3点未満で圧延を施すと、加工フェライトが残存し、延性が大幅に劣化するためである。上述した化学組成の鋼板では、800℃以上とすれば、これらの問題は生じない。一方、仕上げ圧延完了温度が950℃超になると、スケール噛み込み等の表面欠陥を生じる場合がある。したがって、熱間圧延完了温度を800〜950℃とする。
巻取り温度については、その温度が低すぎると、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトといった低温変態組織が多く生成し、フェライト組織が減少するため、鋼板強度が高くなってしまう。そのため下限温度を500℃とする。一方、巻取り温度が高すぎると、酸化スケールが厚くなり、脱スケール処理が困難となるため、上限温度を700℃とする。巻取り温度は望ましくは550〜650℃である。
このようにして得られる熱間圧延鋼板は、鋼板を所望形状の部材へ加工する際の加工性確保の観点より、体積率で50%以上のフェライトを含有する組織とし、TSが780MPa以下であることが好ましい。残部の組織には、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト、又は残留オーステナイトのうち1種又は2種以上含まれていてもよい。なおフェライトには、セメンタイトといったFe系炭化物やTi系、Nb系、Mo系、Cr系、V系、Mn系炭化物が含まれていてもよい。また、鋼板強度については、より低強度のほうが望ましいが、コスト面や強度調整のしやすさといった点より、下限強度は590MPa程度とするのが望ましく、さらに望ましくは690MPa程度である。
熱間圧延後に巻き取られて放冷された鋼板(より正確には鋼帯)は、通常は、アンコイルしてから、酸洗、ショットブラスト、研削等の処理により、表面に生成したスケールの除去を行う。
冷間圧延:
上述の熱間圧延された鋼板に、冷間圧延を施して冷間圧延ままの鋼板(フルハード材)として、所望形状へのプレス成形に使用する場合には、成形性確保の観点より、体積率で50%以上のフェライトを含有する組織とし、TSを1180MPa以下であることが好ましい。鋼板強度については、より低強度のほうが望ましいが、コスト面や強度調整のしやすさといった点より、TSが780MPa以上であることが好ましい。より望ましくは、TS:780〜1100MPa、さらに望ましくはTS:780〜1050MPaである。また冷間圧延時の圧下率は、30〜80%とするのが望ましく、より望ましくは40〜70%である。
焼鈍:
上記のように冷間圧延された鋼板に焼鈍を施す場合、焼鈍は連続焼鈍と箱焼鈍のいずれの方法で実施してもよい。
連続焼鈍の場合、冷間圧延鋼板を(Ac1点+10℃)以上、Ac3点以下に加熱し、その温度域で10秒間以上保時したのち、1〜100℃/秒の平均冷却速度で300〜500℃の温度域まで冷却し、さらに300〜500℃の温度域に30秒間から10分間以上保持し、その後に1〜50℃/秒の平均冷却速度で室温まで冷却する。
(Ac1点+10℃)以上、Ac3点以下に加熱するのは、(Ac1点+10℃)より低い温度では、再結晶が十分に進行せず、鋼板強度が高くなりやすいという問題があり、一方、Ac3点より高い温度では、オーステナイト単相化に起因して、冷却中に低温変態相が生成しやすく、鋼板強度が高くなりやすいという問題があるためである。保持時間10秒間以上としたのは、保持時間が10秒間より短くなると、置換型元素であるMn等の偏析が残り、焼鈍板の組織が不均一となるためである。なお、長時間加熱はいたずらにコスト増を招くため、保持時間は300秒間以下とするのが望ましい。なお、焼鈍雰囲気は非酸化性雰囲気(たとえば98体積%N2+2体積%H2)とすることが好ましい。
上記温度域からの平均冷却速度を1〜100℃/秒としたのは、冷却が速すぎると、低温変態相が多く生成し、フェライトが減少して鋼板強度が高くなりすぎてしまうという問題があり、一方、冷却が遅すぎると、生産効率が落ちてしまうという問題があるためである。この速度は望ましくは1〜50℃/秒であり、さらに望ましくは1〜20℃/秒である。また冷却停止温度域を300〜500℃としたのは、低温変態相の生成をできるだけ抑制するためである。この温度域は望ましくは、350〜500℃、より望ましくは400〜450℃である。冷却停止温度域で30秒間〜10分間保持するのは、未変態オーステナイトのフェライト変態を促進するためである。より望ましい保持時間は30秒間〜5分間、さらに望ましくは30秒間〜3分間である。室温までの平均冷却速度を1〜50℃/秒としたのは、この冷却が速すぎると、低温変態相が多く生成し、鋼板強度が高くなりすぎてしまうという問題があり、一方冷却が遅すぎると、生産効率が落ちてしまうという問題があるためである。この平均冷却速度は望ましくは1〜50℃/秒である。
このようにして得られる冷間圧延後に連続焼鈍が施された冷間圧延鋼板は、鋼板を所望形状の部材へ加工する際の成形性確保の観点より、体積率で50%以上のフェライトを含有する組織とし、TSが780MPa以下であることが好ましい。より低強度のほうが望ましいが、コスト面や強度調整のしやすさといった点より、下限強度(TS)は440MPa程度とするのが望ましい。
冷間圧延鋼板に箱焼鈍を施す場合には、(AC1点−100℃)以上、(AC1点+30℃)以下の温度域に1〜24時間保持したのち、1〜50℃/時の平均冷却速度で室温まで冷却する。
保持温度が(AC1点−100℃)より低いと、鋼板強度が十分に低下しないという問題があり、一方、(AC1点+30℃)より高い温度では、セメンタイトの再固溶−逆変態が進行し過ぎ、その後の冷却過程で低温変態相が生成し、鋼板強度が高くなりやすいという問題があるので、保持温度は(AC1点−100℃)以上、(AC1点+30℃)以下の温度域とする。
保持時間については、1時間未満では鋼板強度の低下が十分ではなく、一方、24時間を超えても効果は飽和し、いたずらにエネルギーの浪費を招くので、1〜24時間とする。焼鈍後の冷却過程では、冷却速度が速いと低温変態相が生成するため、できるだけ遅いほうが好ましい。しかし遅すぎると処理効率の低下をいたずらに招くだけであるため、冷却速度は1〜50℃/時とする。望ましくは1〜30℃/時である。
なお、焼鈍処理時の炉内雰囲気は、窒素ガスの混入が少なく、露点ができるだけ低い、水素を95容積%以上含むガスであることが好ましい。
このようにして得られる冷間圧延後に箱焼鈍が施された冷間圧延鋼板は、鋼板を所望形状の部材へ加工する際の成形性確保の観点より、体積率で50%以上のフェライトを含有する組織とし、TSが590MPa以下であることが好ましい。より低強度のほうが望ましいが、コスト面や強度調整のしやすさといった点より、下限強度(TS)は440MPa程度とするのが望ましい。
溶融亜鉛めっき:
溶融亜鉛めっきの母材は、熱間圧延鋼板、冷間圧延鋼板(未焼鈍のフルハード材)、焼鈍冷間圧延鋼板のいずれであってもよい。すなわち、上述した熱間圧延工程で得られた熱間圧延鋼板を脱スケール処理した後、またはさらに冷間圧延を施した後に、溶融亜鉛めっきを行うことができ、或いは冷間圧延後に焼鈍を施してから溶融亜鉛めっきを行ってもよい。
溶融亜鉛めっきは、製造コストの観点から連続溶融亜鉛めっきラインにて行うことが好ましい。通常の連続溶融亜鉛めっきラインは、加熱炉、冷却ゾーン、溶融亜鉛浴、合金化炉が連続して配置されている。ここでは、鋼板の金属組織形成に影響を及ぼす、各段階での好適な製造条件について述べる。
冷間圧延ままの冷間圧延鋼板に焼鈍を施す場合には(Ac1点+10℃)以上、Ac3点以下に加熱し、その温度域で10秒間以上保時する。(Ac1点+10℃)以上、Ac3点以下に加熱するのは、(Ac1点+10℃)より低い温度では、再結晶が十分に進行せず、鋼板強度が高くなりやすいという問題があり、一方、Ac3点より高い温度では、オーステナイト単相化に起因して、冷却中に低温変態相が生成しやすく、鋼板強度が高くなりやすいという問題があるためである。保持時間10秒間以上としたのは、保持時間が10秒間より短くなると、置換型元素であるMn等の偏析が残り、焼鈍板の組織が不均一となるためである。なお、長時間加熱はいたずらにコスト増を招くため、保持時間は300秒間以下とするのが望ましい。なお、焼鈍雰囲気は非酸化性雰囲気(たとえば、98体積%N2+2体積%H2)とすることが好ましい。
熱間圧延鋼板、冷間圧延ままの冷間圧延鋼板、または別工程にて焼鈍を施した焼鈍冷間圧延鋼板に溶融亜鉛を施す場合、連続溶融亜鉛めっきラインの操業性の観点から、めっき前の鋼板の加熱温度を著しく低温とすることは困難であるので、通常の操業範囲内の加熱を行うことが好ましく、上記理由により最高加熱温度をAc3点より低温(一般に900℃以下)とすることが好ましい。
焼鈍温度や最高加熱温度から溶融亜鉛めっきを施すために冷却するが、この際の500℃までの平均冷却速度は1〜60℃/秒とすることが好ましい。冷却が速すぎると、低温変態相が多く生成し、フェライトが減少して鋼板強度が高くなりすぎる。一方、冷却が遅すぎると、生産効率が落ちる。
溶融亜鉛めっきは、常法により、溶融した亜鉛および亜鉛合金めっき浴に鋼板を浸漬して引き上げればよい。めっき付着量の制御は引き上げ速度やノズルより吹き出すワイピングガスの流量調整により行われる。
溶融亜鉛めっき処理を行ったのちは、ガス炉、誘導加熱炉等で再加熱することにより、めっき層と素地鋼板との間での金属拡散により合金化を進行させる。そのときの温度は、500℃以上とすることが望ましい。合金化温度が500℃未満では合金化速度が遅いため、ライン速度を低下させる必要が生じて生産性を阻害するか、あるいは合金化炉を長くする等の設備的対応が必要となる。合金化温度が高いほど、合金化速度が速くなるが、Ac点超では、上述した焼鈍温度の上限や最高加熱温度と同じ理由により、鋼板が高強度化してしまう。合金化熱処理温度の好ましい範囲は550〜650℃である。
以上のように、種々の製造方法で製造された焼入れ用鋼板に、平坦矯正、表面粗度の調整のために、調質圧延を行ってもよい。なお、以上にはめっきが合金化溶融亜鉛めっきである場合を例示したが、本発明に係る焼入れ用鋼板は、合金化処理しない溶融亜鉛めっき、あるいは55%Al−Zn合金めっき等の他のめっきを施したものであってもよい。
(構造体)
上述した焼入れ鋼板部材は、下記式(2)で規定される条件を満たす継手でスポット溶接された構造体とすることが好ましい。
下記式(1)で規定される条件を満たす継手でスポット溶接されることにより、従来の引張強さが1.5GPa級の焼入れ鋼板部材を用いた場合と同等のスポット溶接継手のせん断強度が得られる。
d≧3√t (2)
ここで、dはスポット溶接継手のナゲット径(単位:mm)、tはスポット溶接される鋼板部材の板厚(単位:mm)である。スポット溶接される2枚の鋼板部材の板厚が互いに異なる場合には板厚の薄い方の板厚である。
したがって、このようにして得られる構造体は、スポット溶接部で容易に破断することがないので、構造体全体としての強度を向上させることが可能となる。スポット溶接される相手方の鋼板部材は、本発明に係る焼入れ鋼板部材であってもよいし、その他の鋼材であってもよい。
以下の実施例は本発明を例示するものであり、本発明を制限する意図はない。
表1に示した化学組成を有する鋼板(板厚:1.6mm)を素地鋼板とした。これらの鋼板は、実験室にて溶製したスラブを、1250℃に加熱した後、表2に示す条件で熱間圧延および冷間圧延を施した。冷間圧延は、アンコイルされた熱間圧延鋼板を酸洗処理により脱スケールしてから実施した。鋼種No.5については、冷間圧延を行わず、脱スケールのままとした。
その後、鋼種No.2の冷間圧延鋼板には合金化溶融亜鉛めっきを、鋼種No.3の冷間圧延鋼板には連続焼鈍を、鋼種No.4の冷間圧延鋼板には箱焼鈍を、それぞれ表2に示す条件で施した。合金化溶融亜鉛めっきは、めっきシミュレーターを用いて行い、溶融亜鉛めっきの片面あたりのめっき付着量は60g/m2であり、合金化熱処理後のめっき皮膜中のFe含有量は15質量%であった。各鋼板の引張強さ(TS)をJISに規定の引張試験法により測定した結果も表2に併記する。
これらの鋼板を、1.6t×100w×200L(mm)の寸法に切断し、大気雰囲気の加熱炉内で、表3の条件にて加熱して、加熱炉より取り出し、その直後に常温の平板の鋼製金型を用いて熱間プレス成形を行って、焼入れ部材を作製した。表3において、保持時間とは、炉に装入後のAc3点に達した時から、炉から取り出すまでの時間をいう。焼入れは、鋼板から平板金型への熱伝達により必要な冷却が確保されることで達成された。鋼板に熱電対を貼付し、その時の冷却速度の測定を行って、150℃までの平均冷却速度を求めた。なお、これらの鋼板のMs点はいずれも150℃超であった。
表3には、各鋼種のAc1点、Ac3点および上部臨界冷却速度も併記する。これらは所定の昇温速度で900℃まで加熱した試験片を各種冷却速度で冷却した時の熱膨張変化の測定により求めた。さらに、各鋼種の試験片のビッカース硬さ測定と組織観察の結果からその鋼種の上部臨界冷却速度を見積もった。
熱間プレス成形により得られた各焼入れ部材の引張強さ(TS)はJISに規定の引張試験法により測定した。
また、各焼入れ部材から、JIS Z 3136に準拠して引張せん断試験片を作製し、単相交流スポット溶接機を用いて、チリ発生電流以下で、ナゲット径が3√t(tはスポット溶接される鋼板部材の板厚(単位:mm))となるよう、同種の2枚の試験片をスポット溶接して、溶接継手を作製した。スポット溶接条件は次の通りであった。
電極:DR6−40R、
加圧力:3920N(=400kgf)、
電流値:チリ発生電流値以下、
通電時間:0.33秒。
得られたスポット溶接継手の引張せん断荷重を測定した。この値が10kN以上となる場合が合格である。これらの試験結果を表3に併せて示す。
Figure 0005070947
Figure 0005070947
Figure 0005070947
表3からわかるように、素地鋼板の化学組成がNdを含有しない比較例では、C含有量が低いために焼入れ後(熱間プレス成形後)の引張強さが1.5GPa級である鋼種No.6の鋼板は、スポット溶接継手の引張せん断荷重は10kNを超え、良好であった。しかし、C含有量が高く、焼入れ後の引張強さが1.8GPaと高かった鋼種No.7の鋼板は、スポット溶接継手の引張せん断荷重が6.0kNと著しく低く、実用レベルには達していなかった。
これに対し、素地鋼板が本発明に従った化学組成を有する鋼種No.1〜5は、焼入れ前の鋼板が、熱間圧延鋼板、冷間圧延鋼板(未焼鈍のフルハード材)連続もしくは箱焼鈍された冷間圧延鋼板、ならびに合金化溶融亜鉛めっき鋼板のいずれであろうと、焼入れ後(熱間プレス成形後)の引張強さが1.8GPa以上と高強度であるにもかかわらず、スポット溶接継手の引張せん断荷重が10kN以上と高く、実用に十分な良好な溶接性を有していた。

Claims (15)

  1. 質量%で、C:0.25〜0.45%、Mn+Cr:0.5〜3.0%、およびNd:0.01〜0.5%を含有し、さらにSi:0.5%以下、Ni:2%以下、Cu:1%以下、V:1%以下およびAl:1%以下の1種または2種以上を含有し、さらに、下記式(1)を満たす量のTiを含有し、残部Fe及び不純物からなる化学組成を有し、引張強さが1.8GPa以上であることを特徴とする、焼入れ鋼板部材:
    3.42N+0.001≦Ti≦3.42N+0.5 (1)
    ここで、式中のTiおよびNは鋼中の各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
  2. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、B:0.01%以下を含有する、請求項1に記載の焼入れ鋼板部材。
  3. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Nb:1.0%以下およびMo:1.0%以下よりなる群から選ばれる1種または2種を含有する、請求項1または2に記載の焼入れ鋼板部材。
  4. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.001〜0.005%を含有する、請求項1〜のいずれかに記載の焼入れ鋼板部材。
  5. 前記化学組成に不純物として含まれるP、SおよびNの含有量が、質量%で、P:0.005%以下、S:0.005%以下およびN:0.002%以下の少なくとも1条件を満足する請求項1〜のいずれかに記載の焼入れ鋼板部材。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の化学組成を有する鋼板であって、Ac3点以上、(Ac3点+100℃)以下の温度域に5分以下の時間保持し、次いで上部臨界冷却速度以上の冷却速度でMs点以下の温度域まで冷却して焼入れを施すことで、引張強さ1.8GPa以上の焼入れ鋼板部材を製造することができる焼入れ用鋼板。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の化学組成を有する鋼材を、Ac3点以上、(Ac3点+100℃)以下の温度域に5分以下の時間保持し、次いで上部臨界冷却速度以上の冷却速度でMs点以下の温度域まで冷却して焼入れを施すことを特徴とする、焼入れ鋼板部材の製造方法。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の化学組成を有する鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃としたのちに熱間圧延を施し、800〜950℃で熱間圧延を完了し、500〜700℃で巻取ることを特徴とする、焼入れ用鋼板の製造方法。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載の化学組成を有する鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃としたのちに熱間圧延を施し、800〜950℃で熱間圧延を完了し、500〜700℃で巻取って熱間圧延鋼板とし、この熱間圧延鋼板に脱スケール処理と冷間圧延とを施すことを特徴とする、焼入れ用鋼板の製造方法。
  10. 請求項1〜のいずれかに記載の化学組成を有する鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃としたのちに熱間圧延を施し、800〜950℃で熱間圧延を完了し、500〜700℃で巻取ることにより熱間圧延鋼板とし、この熱間圧延鋼板に脱スケール処理と冷間圧延とを施し、次いで(Ac1点+10℃)〜Ac3点の温度域に10秒間以上保持したのちに1〜100℃/秒の平均冷却速度で300〜500℃の温度域まで冷却し、さらに300〜500℃の温度域に30秒間〜10分間保持し、その後に1〜50℃/秒の平均冷却速度で室温まで冷却することを特徴とする、焼入れ用鋼板の製造方法。
  11. 請求項1〜のいずれかに記載の化学組成を有する鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃としたのちに熱間圧延を施し、800〜950℃で熱間圧延を完了し、500〜700℃で巻取ることにより熱間圧延鋼板とし、この熱間圧延鋼板に脱スケール処理と冷間圧延とを施し、次いで(Ac1点−100℃)〜(Ac1点+30℃)の温度域に1〜24時間保持したのちに1〜50℃/時の平均冷却速度で室温まで冷却することを特徴とする、焼入れ用鋼板の製造方法。
  12. 請求項1〜のいずれかに記載の化学組成を有する鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃としたのちに熱間圧延を施し、800〜950℃で熱間圧延を完了し、500〜700℃で巻取ることにより熱間圧延鋼板とし、この熱間圧延鋼板に脱スケール処理と溶融亜鉛めっきとを施し、次いで500℃〜Ac1点の温度域で合金化熱処理を施すことを特徴とする、焼入れ用鋼板の製造方法。
  13. 請求項1〜のいずれかに記載の化学組成を有する鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃としたのちに熱間圧延を施し、800〜950℃で熱間圧延を完了し、500〜700℃で巻取ることにより熱間圧延鋼板とし、この熱間圧延鋼板に脱スケール処理と冷間圧延と溶融亜鉛めっきとを施し、次いで500℃〜Ac1点の温度域で合金化熱処理を施すことを特徴とする、焼入れ用鋼板の製造方法。
  14. 請求項1〜のいずれかに記載の化学組成を有する鋼塊又は鋼片を1050〜1300℃としたのちに熱間圧延を施し、800〜950℃で熱間圧延を完了し、500〜700℃で巻取ることにより熱間圧延鋼板とし、この熱間圧延鋼板に脱スケール処理と冷間圧延とを施し、次いで(Ac1点+10℃)〜Ac3点の温度域に10秒間以上保持したのちに1〜60℃/秒の平均冷却速度で500℃まで冷却し、さらに溶融亜鉛めっきを施したのちに500℃〜Ac1点の温度域で合金化熱処理を施すことを特徴とする、焼入れ用鋼板の製造方法。
  15. 請求項1〜のいずれかに記載の焼入れ鋼板部材が下記式(2)を満足する継手でスポット溶接されていることを特徴とする構造体。
    d≧3√t (2)
    ここで、dはスポット溶接継手のナゲット径(単位:mm)、tはスポット溶接される鋼板部材の板厚(単位:mm)である。
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