JP5200552B2 - 調質型軟窒化クランク軸用粗形品および調質型軟窒化クランク軸 - Google Patents
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C:0.30〜0.55%
Cは、NとともにVと結合してV炭窒化物を形成し、生地である芯部の硬さを高めて、疲労強度を向上させる作用を有する。また、前記のV炭窒化物は、ピンニング作用によって焼入れの際のオーステナイト結晶粒を微細にするので、調質処理である焼入れ−焼戻し後のミクロ組織が容易に微細化し、このため、後工程としての軟窒化処理で生じる拡散層の組織も微細になるので、軟窒化処理後の表面硬さが過度に上昇することが抑止され、クランク軸に優れた曲げ矯正性を具備させることが可能となる。さらに、Cには、クランク軸の耐摩耗性を高める作用もある。こうした効果を得るためには0.30%以上の量のCを含有させる必要がある。しかしながら、Cの含有量が多くなり、特に、0.55%を超えると、芯部硬さが上昇するものの延性および靱性が低下して却って疲労強度の低下をきたす。したがって、Cの含有量を0.30〜0.55%とした。
Siは、脱酸作用を有するとともにパーライト組織中のフェライトを固溶強化する作用を有するので、0.05%以上含有させる。しかしながら、Siの含有量が多くなると曲げ矯正性が損なわれるとともにフェライト・パーライト混合組織におけるフェライトの割合が高くなって疲労強度が低下し、特に、Siの含有量が0.30%を超えると、曲げ矯正性の劣化が著しくなるとともにフェライト・パーライト混合組織におけるフェライトの割合が容易に10%以上となることによる疲労強度の低下が著しくなる。したがって、Siの含有量を0.05〜0.30%とした。
Mnは、固溶強化元素であり、母材硬さを高めて疲労強度を向上させる作用を有する。この効果を得るには、0.20%以上のMn含有量が必要である。しかしながら、Mnを過剰に含有すると曲げ矯正性が損なわれ、特に、Mnの含有量が0.80%以上になると曲げ矯正性の劣化が著しくなる。したがって、Mnの含有量を0.20%以上0.80%未満とした。
Pは、強化元素として有効であるため0.005%以上含有させる。しかしながら、過剰のPは粒界に偏析して粒界の脆化割れを助長し、特に、その含有量が0.05%を超えると粒界の脆化割れが著しくなる。したがって、Pの含有量を0.005〜0.05%とした。
Sは、鋼の被削性の向上に有効な元素であり、この効果を得るためには0.005%以上含有させる必要がある。しかしながら、Sの含有量が多すぎると熱間加工性や疲労強度の低下を招き、特に、その含有量が0.10%を超えると熱間加工性および疲労強度の低下が著しくなる。したがって、Sの含有量を0.005〜0.10%とした。
Vは、本発明において最も重要な成分元素である。すなわち、CrおよびAlの含有量を後述のとおり制限した本発明において、VはCおよびNと結合してV炭窒化物として析出し、生地である芯部の硬さを高めて、疲労強度を向上させる作用を有する。また、前記のV炭窒化物は、ピンニング作用によって焼入れの際のオーステナイト結晶粒を微細にするので、調質処理である焼入れ−焼戻し後のミクロ組織が容易に微細化し、このため、後工程としての軟窒化処理で生じる拡散層の組織も微細になるので、軟窒化処理後の表面硬さが過度に上昇することが抑止され、クランク軸に優れた曲げ矯正性を具備させることが可能となる。こうした効果を得るためには0.01%を超える量のVを含有させる必要がある。しかしながら、Vの過度の添加はコスト増大につながり、特に、Vの含有量が0.30%を超えると、コスト増大が著しくなる。したがって、Vの含有量を0.01%を超えて0.30%以下とした。
Nは、CとともにVと結合してV炭窒化物を形成し、生地である芯部の硬さを高めて、疲労強度を向上させる作用を有する。また、前記のV炭窒化物は、ピンニング作用によって焼入れの際のオーステナイト結晶粒を微細にするので、調質処理である焼入れ−焼戻し後のミクロ組織が容易に微細化し、このため、後工程としての軟窒化処理で生じる拡散層の組織も微細になるので、軟窒化処理後の表面硬さが過度に上昇することが抑止され、クランク軸に優れた曲げ矯正性を具備させることが可能となる。さらに、Nはそれ自体が生地に固溶し、固溶強化によって疲労強度を向上させる作用もある。こうした効果を得るためには0.005%以上の量のNを含有させる必要がある。しかしながら、Nを含有量で0.030%を超えて添加するのは工業的な困難を伴う上、例えば、インゴット中で気泡欠陥を生成して材質を損なうことがある。このため、Nの含有量を0.005〜0.030%とした。
0.01%を超えるVを含む場合、Crは曲げ矯正性の低下を招き、特に、その含有量が0.10%以上になると、曲げ矯正性の低下が著しくなる。したがって、不純物中のCrの含有量を0.10%未満とした。なお、不純物中のCrの望ましい含有量は0.07%以下である。
Alは、母材強度にほとんど寄与せず、曲げ矯正性を劣化させるため、不純物として混入する以外は添加せずその含有量は少ないほどよい。製造コストを勘案して曲げ矯正性を害さない範囲でAlは0.05%以下まで許容できるので、不純物中のAlの含有量を0.05%以下とした。
第1群:Mo:0.15%以下およびTi:0.030%以下のうちの1種または2種、
第2群:Ca:0.020%以下、
の少なくとも1つの群の元素のうち1種以上を含有するものとすることができる。
MoおよびTiは、いずれも、疲労強度を高める作用を有する。このため、より優れた疲労強度を得たい場合には以下の範囲で含有してもよい。
Moは、固溶強化元素としてパーライト中のフェライトを強化し、疲労強度を向上させる作用を有するので、さらなる疲労強度向上のために含有してもよい。しかしながら、Moは高価な元素であるため、過度の添加はコストの増大につながり、特に、Moの含有量が0.15%を超えると、コスト増大が著しくなる。したがって、Moの含有量を0.15%以下とした。
Tiは、疲労強度を向上させる作用を有する。また、Tiの微細な析出物には、熱間加工時の結晶粒粗大化を抑制し、ひいては、曲げ矯正性を向上させる作用がある。したがって、さらなる疲労強度向上のために、また、さらなる曲げ矯正性向上のためにTiを含有してもよい。しかしながら、Tiの含有量が多くなると却って疲労強度の低下を招き、特に、Tiの含有量が0.030%を超えると、疲労強度の低下が著しくなる。したがって、Tiの含有量を0.030%以下とした。
第2群の元素であるCaは、被削性を改善する作用を有するので、さらなる被削性向上のために含有させてもよい。しかしながら、0.020%を超えるCaを添加、含有させても被削性向上効果が飽和するのでコストが嵩んで経済性が損なわれるばかりである。したがって、Caの含有量を0.020%以下とした。
Cuは、その含有量が0.3%を超えると、粒界偏析に起因した熱間加工割れをきたすおそれがある。したがって、Cuの含有量は0.3%以下とすることが好ましい。
Niは、その含有量が0.3%を超えると被削性が低下する。したがって、Niの含有量は0.3%以下とすることが好ましい。
知見(f)に述べたように、CrおよびAlの含有量を制限したうえでVを含有させた場合に、調質型軟窒化クランク軸に高い疲労強度を具備させることができる好適なミクロ組織は、パーライト組織またはフェライトの割合が10%未満のフェライト・パーライト混合組織である。
前記(A)項で述べた化学組成を有するとともに上記(B)項で述べた表面からの深さが2mm以上である部位のミクロ組織が、パーライト組織またはフェライトの割合が10%未満のフェライト・パーライト混合組織である調質型軟窒化クランク軸用粗形品を表面からの深さで少なくとも2mm以上切削加工して所定のクランク軸形状に仕上げた場合、そのミクロ組織は、全体がパーライト組織またはフェライトの割合が10%未満のフェライト・パーライト混合組織である。このため、上記の仕上げ加工後に軟窒化処理を施せば、調質型軟窒化クランク軸に高い疲労強度を具備させることができる。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.30〜0.55%、Si:0.05〜0.30%、Mn:0.20%以上0.80%未満、P:0.005〜0.05%、S:0.005〜0.10%、V:0.01%を超えて0.30%以下およびN:0.005〜0.030%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のCrおよびAlがそれぞれ、Cr:0.10%未満およびAl:0.05%以下の化学組成を有し、表面からの深さが2mm以上である部位のミクロ組織が、パーライト組織またはフェライトの割合が10%未満のフェライト・パーライト混合組織であることを特徴とする調質型軟窒化クランク軸用粗形品。
- 化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Mo:0.15%以下およびTi:0.030%以下のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の調質型軟窒化クランク軸用粗形品。
- 化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.020%以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の調質型軟窒化クランク軸用粗形品。
- 請求項1から3までのいずれかに記載の調質型軟窒化クランク軸用粗形品を素材とする調質型軟窒化クランク軸であって、前記粗形品を表面からの深さで少なくとも2mm以上切削加工してから軟窒化処理されたことを特徴とする調質型軟窒化クランク軸。
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