JP6693206B2 - クランクシャフト及びその製造方法並びにクランクシャフト用鋼 - Google Patents

クランクシャフト及びその製造方法並びにクランクシャフト用鋼 Download PDF

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Description

本発明は、高周波焼入れ後に高い疲労強度を安定して得ることができ、製造時の被削性にも優れたクランクシャフト及びその製造方法並びにこのクランクシャフトの製造に用いられるクランクシャフト用鋼に関する。
従来、自動車用エンジンのクランクシャフトの多くは、炭素鋼や若干の合金元素を添加した低合金鋼を熱間鍛造することにより製造されている。また、クランクシャフトにおけるジャーナル部及びピン部の外周面には、疲労強度の向上を目的として、高周波焼入れにより硬化層が形成されることがある。
この種のクランクシャフトとして、例えば特許文献1には、母材にベイナイトおよび/またはマルテンサイトを析出させることにより、高周波焼入れ後の結晶粒の微細化を図ったクランクシャフトが記載されている。また、特許文献2には、Ti(チタン)を含有する化学成分を有するクランクシャフトが記載されている。このクランクシャフトにおいては、熱間鍛造後の冷却時にTi炭窒化物を析出させ、その後の高周波焼入れ時にピン止め効果により結晶粒を微細化することを図っている。
そして、これらのクランクシャフトにおいては、硬化層の結晶粒を微細化することにより、クランクシャフトに要求される疲労強度の確保を図っている。
特開2005−60723号公報 特開2012−52153号公報
しかし、特許文献1のクランクシャフトは、母材組織にベイナイト組織やマルテンサイト組織が含まれているため、局所的に硬度が高くなるおそれがある。そのため、機械加工を行う際に、工具の摩耗量の増大や加工精度の悪化を招くおそれがある。
また、特許文献2のクランクシャフトにおいては、上述したように、疲労強度を確保するために、Ti炭窒化物によるピン止め効果を利用して結晶粒の微細化を図っている。Ti炭窒化物によるピン止め効果を十分に得るためには、熱間鍛造時の加熱により、鋼材中に存在するピン止め効果に寄与しない粗大なTi炭窒化物を一度固溶させた後、熱間鍛造後の冷却時に、ピン止め効果に寄与できる微細なTi炭窒化物を析出させる必要がある。
しかし、Ti炭窒化物を十分に、かつ確実に鋼材中に固溶させようとすると、一般的な条件に比べて熱間鍛造時の加熱温度を高めに設定する必要があるため、製造プロセスの省エネルギー化の点で問題が生じる。また、Tiの添加量によっては、熱間鍛造後の冷却によりベイナイト組織が生成され、被削性の低下を招くおそれがある。
このように、ピン止め効果を得るためにTi炭窒化物を利用しようとすると、製造プロセスの省エネルギー化や被削性の観点で問題が生じるおそれがある。
一方、ピン止め効果を得るためには、V(バナジウム)炭窒化物を利用する方法も考えられる。しかし、V炭窒化物は、比較的低温で鋼材中に固溶しやすいため、高周波焼入れ時の加熱によって鋼材中に固溶し易いという問題がある。そのため、従来は、ピン止め効果を得るためにV炭窒化物を利用した場合に、期待する効果が得られないことがあった。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、熱間鍛造時の加熱温度を高めに設定することなく製造可能であり、製造時に必要な水準の被削性を十分に確保し、高周波焼入れ後の疲労強度に優れたクランクシャフト及びその製造方法ならびにこのクランクシャフトを製造するためのクランクシャフト用鋼を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、複数のピン部及び複数のジャーナル部を有するクランクシャフトであって、
質量%で、C(炭素):0.35%以上0.50%以下、Si(シリコン):0.05%以上1.00%以下、Mn(マンガン):1.00%以上2.00%以下、S(硫黄):0.040%以上0.150%以下、Cr(クロム):0.50%以下(但し、0%を除く)、Al(アルミニウム):0.001%以上0.050%以下、V(バナジウム):0.05%以上0.15%以下、N(窒素):0.0100%以上0.0200%以下、Ca(カルシウム):0.0100%以下(但し、0%を除く)を含有し、残部がFe(鉄)及び不可避的不純物からなるとともに、下記式(1)により算出されるピン止め性指数Rが0.010以上である化学成分を有し、
金属組織がフェライト面積率20%以下のフェライト・パーライト組織である母材部と、
金属組織がマルテンサイト組織であり、結晶粒度が7番以上であり、上記複数のピン部及び上記複数のジャーナル部における上記母材部の表面に形成された硬化層とを有しており、
上記母材部及び上記硬化層におけるFe母相中にV炭窒化物が分散していることを特徴とするクランクシャフトにある。
Figure 0006693206
但し、上記式(1)において、[X]は元素Xの含有率(質量%)の値を表す。
本発明の他の態様は、複数のピン部及び複数のジャーナル部を有するクランクシャフトの製造方法であって、
質量%で、C:0.35%以上0.50%以下、Si:0.05%以上1.00%以下、Mn:1.00%以上2.00%以下、S:0.040%以上0.150%以下、Cr:0.50%以下(但し、0%を除く)、Al:0.001%以上0.050%以下、V:0.05%以上0.15%以下、N:0.0100%以上0.0200%以下、Ca:0.0100%以下(但し、0%を除く)を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるとともに、上記式(1)により得られるピン止め性指数Rが0.010以上である化学成分を有する鍛造用鋼材を準備し、
該鍛造用鋼材を1100℃以上1350℃以下の温度に加熱して熱間鍛造を行うことにより、上記複数のピン部及び上記複数のジャーナル部を有する鍛造部品を作製し、
該鍛造部品を冷却して、金属組織をフェライト面積率が20%以下のフェライト・パーライト組織にするとともに、Fe母相中にV炭窒化物を析出させ、
上記複数のピン部及び上記複数のジャーナル部にオーステナイト化温度以上1050℃以下の加熱温度で高周波焼入れを施すことにより、これらの外周面に結晶粒度が7番以上である硬化層を形成することを特徴とするクランクシャフトの製造方法にある。
本発明の更に他の態様は、上記の態様のクランクシャフトを作製するためのクランクシャフト用鋼にある。
上記クランクシャフトは、上記特定の化学成分及び金属組織を有する上記母材部及び上記硬化層を有している。上記クランクシャフトは、上記母材部の金属組織がフェライト面積率が20%以下のフェライト・パーライト組織であるので、製造時に要求される水準の被削性を確保することができる。
そして、上記母材部及び上記硬化層におけるFe母相中には、熱間鍛造後の冷却時に析出したV炭窒化物が、微細に分散した状態で存在している。上述したように、従来は、高周波焼入れの際にV炭窒化物の大半が鋼材中に固溶することがあり、V炭窒化物によるピン止め効果を得ることができない場合があった。しかし、本発明者は、検討を重ねた結果、VとNとの含有量のバランスを適正な範囲に調整することにより、高周波焼入れ時の加熱によるピン止めに効果的なV炭窒化物の固溶を抑制し、鋼材中に確実に残存させることができることを見出した。
即ち、上記クランクシャフトは、単にVとNとを含んでいるだけではなく、上記式(1)により算出されるピン止め指数Rが上記特定の範囲内となる化学成分を有している。これにより、高周波焼入れ時の加熱の際にピン止めに効果的なV炭窒化物を鋼材中に確実に残存させることができる。そして、上記クランクシャフトは、V炭窒化物のピン止め効果により、上記硬化層の結晶粒度を上記特定の範囲とすることができる。その結果、疲労強度のバラつきを小さくし、クランクシャフトに要求される水準の疲労強度を容易に確保することができる。
また、上記クランクシャフトにおいては、ピン止め効果を得るために、固溶温度の高いTi炭窒化物ではなく、V炭窒化物を利用している。そのため、熱間鍛造時の加熱温度を高めに設定することなく、上記鍛造用鋼材中の粗大なV炭窒化物を容易に固溶させることができる。それ故、優れた疲労強度を確保しつつ、上記クランクシャフトの製造性を大きく向上させることができる。
実施例における、クランクシャフトの一例を示す平面図である。 図1における、ピン部の断面の一例を示す図である。 実施例における、結晶粒度と疲労強度の標準偏差との相関関係を示す説明図である。 実施例における、試験材1、6及び30の疲労強度評価の結果を示す説明図である。 実施例における、ピン止め性指数Rと結晶粒度との相関関係を示す説明図である。
上記クランクシャフトにおける化学成分の限定理由を以下に説明する。
・C(炭素):0.35%以上0.50%以下
Cは、母材部、即ち高周波焼入れの影響が及ばない部分に必要な強度を確保するとともに、硬化層の硬さを高くする作用を有している。C含有量を上記特定の範囲とすることにより、母材部の強度及び硬化層の硬さを、クランクシャフトとして好適な範囲にすることができる。C含有量が0.35%未満の場合には、母材部の強度及び/または硬化層の硬さが不足するおそれがある。一方、C含有量が0.50%を超える場合には、高周波焼入れ前の鍛造部品の硬さが上昇し、被削性が悪化するおそれがある。
・Si(シリコン):0.05%以上1.00%以下
Siは、製鋼時の脱酸材として不可欠な元素である。Si含有量を上記特定の範囲とすることにより、必要とする脱酸効果を得ることができる。Si含有量が0.05%未満の場合には、上述の効果が十分に得られないおそれがある。一方、Si含有量が1.00%を超える場合には、フェライト組織へのSiの固溶量が多くなり、母材部の硬さが過度に高くなるおそれがある。その結果、被削性の悪化を招くおそれがある。
・Mn(マンガン):1.00%以上2.00%以下
Mnは、焼入性向上に有効な元素である。また、Mnは、Sと結合することによりMnSを生成し、被削性を向上させることができる。Mn含有量を上記特定の範囲とすることにより、焼入性及び被削性を向上させることができる。Mn含有量が1.00%未満の場合には、上述の効果が十分に得られないおそれがある。一方、Mn含有量が2.00%を超える場合には、残留オーステナイトが増加することにより、強度の低下を招くおそれがある。
・S(硫黄):0.040%以上0.150%以下
Sは、被削性を向上させる作用を有している。S含有量を上記特定の範囲とすることにより、製造時に必要な被削性を容易に確保することができる。S含有量が0.040%未満の場合には、被削性が不十分となるおそれがある。一方、S含有量が0.150%を超える場合には、添加量に見合った効果が得られなくなるおそれがある。
・Cr(クロム):0.50%以下(但し、0%を除く)
Crは、Mnと同様に焼入性向上に有効な元素である。上記クランクシャフトにおいては、主にMnの添加によって必要な焼入性を確保している。Crは、上記クランクシャフトのサイズに応じてその含有量を調整することにより、必要とされる水準の焼入性を容易に確保することができる。一方、Cr含有量が0.50%を超える場合には、硬いCr炭化物が生成されることにより、疲労強度や被削性の低下を招くおそれがある。
・Al(アルミニウム):0.001%以上0.050%以下
Alは、脱酸材として必要な元素である。Al含有量が0.001%未満の場合には、脱酸が不十分となるおそれがある。一方、Al含有量が0.050%を越える場合には、アルミナ系介在物の増加により、被削性の悪化を招くおそれがある。
・V(バナジウム):0.05%以上0.15%以下
Vは、熱間鍛造の後、鍛造部品を冷却する際に炭窒化物となってFe母相中に微細に析出する。このV炭窒化物は、結晶粒界の移動を阻害する、いわゆるピン止め効果により、高周波焼入れ時の加熱に伴う結晶粒の粗大化を抑制することができる。
V含有量を0.05%以上とすることにより、硬化層の結晶粒の粗大化を抑制し、上記特定の範囲の結晶粒度を容易に実現することができる。その結果、疲労強度のバラつきを小さくすることができ、ひいてはバラつきを考慮した疲労強度の下限値を高くすることができる。しかし、V含有量が過度に多くなると、原料コストが増加する一方で、添加量に見合った効果が得られなくなる。従って、疲労強度を向上させる効果と原料コストとのバランスの観点から、V含有量は0.15%以下とする。
・N(窒素):0.0100%以上0.0200%以下
Nは、熱間鍛造の後、鍛造部品を冷却する際にVと結合し、Fe母相中に微細なV炭窒化物を析出させる。そして、Fe母相中に微細に析出したV炭窒化物は、ピン止め効果により、その後の高周波焼入れ時に結晶粒が粗大化することを抑制する作用を有する。
Nは、不純物として不可避に含有される元素であるが、N含有量を不可避的不純物としての量よりも多めに調整し、確実に0.0100%以上とすることにより、硬化層の結晶粒の粗大化を抑制することができる。その結果、疲労強度のバラつきを小さくすることができ、ひいてはバラつきを考慮した疲労強度の下限値を高くすることができる。しかし、N含有量が過度に多くなると、製造コストが増加する一方で、添加量に見合った効果が得られなくなる。従って、疲労強度を向上させる効果とコストとのバランスの観点から、N含有量は0.0200%以下とする。
・Ca(カルシウム):0.0100%以下(但し、0%を除く)
Caは、不純物として鋼材中に少量含まれている元素であるが、必要に応じて積極的に添加することにより、被削性を向上させることができる。しかし、Ca含有量が過度に多くなると、原料コストが増加する一方で、添加量に見合った効果が得られなくなる。従って、被削性向上の効果と原料コストとのバランスの観点から、Ca含有量は0.0100%以下とする。
上記クランクシャフトは、上述した必須成分の含有量を上記特定の範囲とした上で、さらに、下記式(1)により算出されるピン止め性指数Rが0.010以上となる化学成分を有している。
Figure 0006693206
但し、上記式(1)において、[X]は元素Xの含有率(質量%)の値を表す。
上述したように、高周波焼入れ時の加熱の際にピン止めに有効なV炭窒化物が固溶してピン止め効果が得られなくなることを防止するためには、単にVとNとを含んでいるだけでなく、VとNとの含有量のバランスを適正な範囲に調整することが重要である。上記式(1)は、このような観点に基づいて多数の実験を行った結果、V含有量及びN含有量とピン止め効果の大小との関係を見出したことにより決定された式である。そして、ピン止め効果をより高めるための条件を詳細に検討した結果、上記式(1)により算出されるピン止め性指数Rを0.010以上にすることにより、V炭窒化物によるピン止め効果を十分に得ることができることが見出されたものである。
即ち、ピン止め性指数Rの値を0.010以上とすることにより、高周波焼入れ時の加熱の際に、ピン止めに有効なV炭窒化物が完全に固溶することを抑制し、V炭窒化物を残留させ易くすることができる。これにより、V炭窒化物によるピン止め効果を確実に得ることができ、高周波焼入れ中の結晶粒の粗大化を抑制することができる。その結果、疲労強度のバラつきを小さくし、ひいてはバラつきを考慮した疲労強度の下限値を高くすることができる。ピン止め性指数Rの値が0.010未満の場合には、高周波焼入れ時の加熱の際に必要とする量のV炭窒化物を確保することができなくなるため、ピン止め効果を十分に得られなくなるおそれがある。その結果、硬化層の結晶粒が粗大になり、クランクシャフトの疲労強度が低下するおそれがある。
・硬化層
上記硬化層の結晶粒度は、7番以上とする。この場合には、硬化層の結晶粒が十分に微細化されているため、クランクシャフトの疲労強度のバラつきをより小さくすることができる。なお、硬化層の結晶粒度を示す粒度番号は、JIS G0551:2013(ISO 643:2003)に規定された方法により決定することができる。
硬化層の深さは、1.0〜5.0mmであることが好ましい。硬化層の深さを1.0mm以上とすることにより、ピン部及びクランク部における母材部の影響を軽減し、母材部を起点とする折損の発生をより効果的に抑制することができる。また、硬化層の深さを5.0mm以下とすることにより、高周波焼入れ時の曲がりの発生をより容易に回避することができる。なお、硬化層の深さは、JIS G0559に記載された高周波焼入硬化層深さ測定方法に基づいて測定することができる。
・母材部
上記母材部においては、高周波焼入れ前の金属組織が維持されている。母材部の金属組織、即ち高周波焼入れ前の鍛造部品の金属組織は、フェライト・パーライト組織である。これにより、クランクシャフトの被削性を向上させることができる。製造上問題のない水準の被削性を確保する観点からは、母材部のビッカース硬さを300HV以下とすることが好ましい。
また、母材部のフェライト面積率は、20%以下とする。高周波焼入れにおいては短時間で加熱を行うため、短時間でオーステナイト化が可能な前組織とする必要がある。しかし、母材部のフェライト面積率が過度に高くなると、短時間の加熱では、母材部の表面のオーステナイト化が不完全になりやすくなる。その結果、焼入れ後の組織にフェライト組織が残留し、強度の低下を招くおそれがある。母材部のフェライト面積率を20%以下とすることにより、かかる問題を容易に回避することができる。なお、フェライト面積率は、母材部の断面にナイタール腐食を施した後、当該断面にJIS G0555に準拠した点算法を適用することにより算出することができる。
また、母材部には、ベイナイト組織が生成されることがある。しかし、ベイナイト組織が過度に多くなると、被削性の悪化を招くおそれがある。被削性の悪化を回避する観点からは、金属組織中のベイナイト面積率は0%であることが最も好ましいが、ベイナイト面積率が5%以下であれば、製造上問題のない水準の被削性を確保することができる。なお、ベイナイト面積率は、フェライト面積率と同様に、母材部の断面にナイタール腐食を施した後、当該断面にJIS G0555に準拠した点算法を適用することにより算出することができる。
上記クランクシャフトは、上述したように、疲労強度のバラつきを小さくすることができ、その結果、バラつきを考慮した疲労強度の下限値を高くすることができる。それ故、疲労強度のバラつきを考慮しても、上記ピン部及び上記ジャーナル部において750MPa以上の曲げ疲労強度を容易に確保することができる。上記特定の範囲の曲げ疲労強度を有するクランクシャフトは、優れた耐久性を有しているため、種々の自動車エンジンに好適である。
・製造方法
上記クランクシャフトを製造するに当たっては、少なくとも、電気炉等で原料を溶解し、上記特定の化学成分を有する鋳造片を作製し、これに熱間圧延等の熱間加工を加えて鍛造用鋼材を準備する工程と、鍛造用鋼材に対して熱間鍛造を施す工程と、鍛造部品を冷却する冷却工程と、ピン部及びジャーナル部の外周面に硬化層を形成する高周波焼入れ工程とを行う。
熱間鍛造時の加熱温度は1100℃以上1350℃以下とする。鍛造用鋼材中には、ピン止め効果を有しない粗大なV炭窒化物が析出している。熱間鍛造時の加熱温度を1100℃以上とすることにより、これらのV炭窒化物を十分に固溶させることができる。また、上記V炭窒化物は、ピン止め効果を得るためにTi炭窒化物を利用する場合に比べて低い温度で鋼材中に固溶する。それ故、Ti炭窒化物を利用する場合に比べて、製造プロセスの省エネルギー化の点で有利である。
V炭窒化物を十分に固溶させる観点から、熱間鍛造時の加熱温度は1150℃以上であることが好ましい。また、加熱温度を高くしても製造上問題はないが、省エネルギー化の観点から、加熱温度は1350℃以下とする。省エネルギー化を重視する場合には、加熱温度を1300℃以下とすることが好ましい。
熱間鍛造の後、鍛造部品を冷却することにより、金属組織がフェライト・パーライト組織である鍛造部品を得ることができる。また、この冷却の際に、熱間鍛造時の加熱により固溶させたV炭窒化物が、Fe母相中に微細かつ多量に析出する。このように、熱間鍛造において一度Vを固溶させた後、冷却時にV炭窒化物として析出させることにより、ピン止め効果を有する微細なV炭窒化物を生じさせることができる。鍛造部品の冷却は、例えば、空冷処理等の公知の手段により行うことができる。
その後、複数のピン部及び複数のジャーナル部にオーステナイト化温度以上1050℃以下の加熱温度で加熱、急冷する高周波焼入れを施すことにより、これらの外周面に硬化層を形成する。高周波焼入れにおける加熱は、短時間の加熱によりオーステナイト化が可能であり、かつ、オーステナイト組織中でのCの拡散が十分に行われる温度で行う必要がある。より具体的には、高周波焼入れ時の加熱温度は900℃以上であることが好ましい。
一方、高周波焼入れ時の加熱温度を1050℃以下とすることにより、V炭窒化物の再固溶を抑制しつつ、焼入れを行うことができる。これにより、V炭窒化物によるピン止め効果を確実に得ることができる。その結果、硬化層の結晶粒の粗大化を抑制することができ、ひいては疲労強度のバラつきを低減することができる。また、高周波焼入れ時の加熱温度は、1000℃以下であることが好ましい。この場合には、V炭窒化物の再固溶をより効果的に抑制することができる。その結果、疲労強度のバラつきをより低減することができる。
高周波焼入れ時の加熱時間は、加熱温度に応じて適宜調整することができる。生産の効率化の観点からは、V炭窒化物の再固溶を抑制できる範囲で加熱温度を高くした上で、加熱時間を30秒以下とすることが好ましい。また、加熱温度が1000℃以下の場合には、オーステナイト化が十分に行われるように、加熱時間を若干長く設定することが望ましい。
上記クランクシャフト及びその製造方法の実施例を、図を用いて説明する。図1に一例を示すように、クランクシャフト50は、複数のピン部51と、複数のジャーナル部52とを有している。ピン部51及びジャーナル部52は、カウンターウェイト部53と一体化されたアーム部54を介して互いに連結されている。
図1及び図2に示すように、ピン部51及びジャーナル部52の外周面には、硬化層Hが形成されている。また、クランクシャフト50における、ピン部51及びジャーナル部52を除く部分の外周面には、母材部Bが露出している。硬化層Hの金属組織はマルテンサイト組織であり、母材部Bの金属組織はフェライト・パーライト組織である。なお、図2に例示したように、ピン部51及びジャーナル部52における硬化層Hよりも内部は、母材部Bより構成されている。
本例では、図1に例示されるクランクシャフト50を作製する場合を想定して種々の加工を加えた試験材を作製し、各種評価を行った。なお、各試験材の製造方法は、公知の種々の方法に変更可能である。表1に、試験材に用いた合金A〜Vの化学成分を示す。なお、表1中のV(バナジウム)の欄、Ca(カルシウム)の欄及びTi(チタン)の欄に示した記号「−」は、当該元素が積極的に添加されていないことを示す。また、表1中に具体的な値は記載しないが、合金A〜H及び合金L〜Vは、1〜5ppm程度のCaを不可避的不純物として含んでいる。また、P(リン)については、合金A〜Vのいずれにも積極的な添加を行っていない。表1中のP(リン)の欄には、不純物として含まれている量を記載した。
Figure 0006693206
<母材部の金属組織観察及び硬さ測定>
電気炉にて溶解して作製した鋳造片に熱間圧延を加えて棒鋼とし、この棒鋼を鍛伸して鍛造用鋼材としての直径φ20mmの丸棒を作製した。次いで、この丸棒を、実際の熱間鍛造における加熱温度に相当する1100℃、1200℃または1350℃のいずれかの温度まで加熱し、この温度を30分間保持した。その後、通常の空冷処理(自然放冷)により、丸棒を室温まで冷却した。以上により、鍛造部品に相当する試験片を作製した。
得られた試験片を用い、以下の項目について評価を行った。
・金属組織:ナイタール腐食を施した試験片の断面を、光学顕微鏡を用いて観察した。その結果、断面にフェライト組織が存在した場合には表2及び表3中の「金属組織」欄に記号Fを、パーライト組織が存在した場合には同欄に記号Pを、ベイナイト組織が存在した場合には同欄に記号Bを記載した。
・フェライト面積率:JIS G0555に準拠した点算法により、上記の断面におけるフェライト面積率を算出した。
・硬さ測定:JIS Z2244に準拠してビッカース硬さを測定した。
<疲労強度評価>
JIS Z2273の規定に従い、上記により得られた丸棒から平行部がφ8mmである回転曲げ疲労試験片を作製した。この試験片に、加熱温度1000℃、加熱時間10〜30秒間の条件で高周波焼入れを施した。本実施例においては、試験片の直径が細いため、高周波焼入れにより試験片全体がマルテンサイト組織となった。しかし、疲労強度の値は試験片表面の状態よりほぼ決定されるため、本例の試験片により、実際のクランクシャフトにおける疲労強度が模擬されている。
その後、ステアケース法に基づいて回転曲げ疲労試験を実施した。具体的には、繰り返し数を107回とし、以下のように応力を変化させながら、15本の試験片について順次回転曲げ疲労試験を行った。まず、過去の試験結果から予想される適当な試験応力s1[MPa]で、1本目の試験片の回転曲げ疲労試験を行った。
2本目以降の試験片における試験応力sk(但し、k=2、3、・・・)は、直前の試験における試験結果に応じて、以下のように変化させた。即ち、直前の試験において繰り返し数が107回に到達するまで試験片の破壊が起こらなかった場合には、試験応力sk-1に予め設定した応力階差d[MPa]を加えたsk-1+d[MPa]を新たな試験応力sk[MPa]とした。一方、直前の試験において繰り返し数が107回に到達する前に試験片の破壊が起こった場合には、試験応力sk-1から予め設定した応力階差d[MPa]を差し引いたsk-1−d[MPa]を新たな試験応力sk[MPa]とした。
全ての試験片について回転曲げ疲労試験を行った後、得られた結果を以下のように整理した。まず、各試験片に加えた試験応力sのうち、最小の試験応力sminをS0[MPa]とし、Si[MPa]=S0+id(但し、i=0、1、2、・・・)とおいた。そして、試験応力Siで試験を行った試験片の数をfi(本)とし、下記の式(2)〜式(6)に基づいて疲労強度の平均値SN[MPa]及び標準偏差σ[MPa]を算出した。また、得られたSNの値及びσの値から、バラつきを考慮した疲労強度の下限値に相当するSN−3σの値を算出した。これらの結果は、表2及び表3に示したとおりであった。
Figure 0006693206
Figure 0006693206
Figure 0006693206
Figure 0006693206
Figure 0006693206
<硬化層の結晶粒度評価及び硬さ測定>
・結晶粒度評価:疲労強度評価を行った試験片における、高周波焼入れがされている平行部の適当な位置を切断して断面を露出させた。この断面に存在する硬化層から無作為に20視野を選択して光学顕微鏡像を取得し、JIS G0551に基づき、各視野での粒度番号を決定した。そして、20視野のうち最も小さい粒度番号を表2及び表3中の「結晶粒度の最小値」の欄に示した。
・硬さ測定:JIS Z2244の規定に準拠し、結晶粒度評価を行った断面における、試験片の表面からの深さが0.1mmの位置にてビッカース硬さを測定した。
<被削性試験>
被削性試験に用いる試験片は次のように作製した。まず、電気炉にて各試料の原料の溶解、精錬及び鋳込みを行い、鍛造用鋼材を得た。この鋼材を1200℃に加熱して熱間鍛造を施し、次いで空冷処理を行い、鍛造部品としての丸棒を作製した。
その後、丸棒に切削加工を施して、直径60mmφ×長さ390mmの試験片を得た。なお、熱間鍛造時の加熱温度は、実際のクランクシャフトにおける熱間鍛造時の温度と同程度である。また、空冷処理においては、800℃から500℃までの間の平均冷却速度が約30℃/分であった。
被削性は、旋盤により切削する場合の切削工具の摩耗量によって評価した。上記旋盤としては、森精機製SL−25旋盤を用い、上記切削工具としては、タンガロイ製SNMG120408−サーメットNS530を用いた。試験条件は、切削速度200m/sec、送り速度0.3mm/sec、切り込み:1.5mm、切削時間:8分の条件とした。試験後の切削工具の摩耗量が0.3mm以下の場合には合格と判定し、表2及び表3中の「被削性」の欄に記号Aを記載した。一方、摩耗量が0.3mmを超える場合には不合格と判定し、同欄に記号Bを記載した。
Figure 0006693206
Figure 0006693206
表2及び表3に示したように、試験材1〜26は、上記特定の化学成分を有する鋳造片に、上記特定の条件にて熱間鍛造及び高周波加熱を行うことにより、作製されている。そのため、これらの試験片には、高いピン止め効果を有するV炭窒化物が生成された。そして、V炭窒化物により結晶粒の粗大化が抑制された結果、これらの試験体は、疲労強度のバラつきが小さくなるとともに、SN−3σの値が高くなった。また、これらの試験片は、製造時に要求される水準の被削性を確保することができた。
表3に示すように、試験材27、28は、Vではなく、Tiを含有している。即ち、これらの試験材は、Ti炭窒化物によるピン止め効果を得ることを図った試験材である。しかし、これらの試験材においては、熱間鍛造時の加熱温度を一般的な条件である1200℃に設定したため、鍛造用鋼材へのTi炭窒化物の固溶が不十分となった。そのため、ピン止め効果が不十分となり、高周波焼入れ後に結晶粒の粗大化を招いた。そして、結晶粒が粗大化した結果、疲労強度の標準偏差σの増大を招き、SN−3σの値も小さくなった。
また、試験材28は、C含有量が少なく、高周波焼入れ前のフェライト・パーライト組織におけるフェライト面積率が高かったため、高周波焼入れ時の短時間の加熱ではフェライト組織が完全にオーステナイト化されなかった。そして、焼入れ後の組織に残留したフェライト組織の影響と、C含有量が少ないことによる強度低下の影響とにより、疲労強度の平均値SNが低下した。
また、試験材27と試験材35との比較及び試験材28と試験材36との比較から、Ti炭窒化物のピン止め効果を利用する場合には一般的な条件よりも高温に加熱する必要があり、一般的な条件である1200℃程度の加熱では十分なピン止め効果が得られないことが理解できる。
これに対し、V炭窒化物のピン止め効果を利用する場合には、試験材1〜14及び試験材21〜26のように、一般的な条件である1200℃程度の加熱を行うことにより十分なピン止め効果を得ることができる。また、試験材15〜20のように比較的高温に加熱しても製造上問題はなく、V炭窒化物によるピン止め効果を十分に得ることができる。
試験材29は、試験材27、28、35及び36に比べてTi含有量が多かったため、熱間鍛造時の加熱温度が1200℃の場合でも、熱間鍛造時の加熱により、Ti炭窒化物の全てではないが、ピン止め効果に必要となる量を固溶させることができた。そして、Ti炭窒化物のピン止め効果により、結晶粒の粗大化を抑制することができた。しかし、試験材29を構成する合金Qは、Ti含有量が多くなったため、ベイナイト組織が生成し易い鋼となった。それ故、熱間鍛造後の冷却時に、試験材29の母材部にベイナイト組織が生成し、被削性の悪化を招いた。試験材29のベイナイト面積率は16%であった。
試験材30は、N含有量が少なかったことに加え、Vが含まれていなかったため、V炭窒化物が生成されなかった。そのため、ピン止め効果が得られず、高周波焼入れ後に結晶粒の粗大化を招いた。そして、高周波焼入れ後に結晶粒が粗大化した結果、疲労強度の標準偏差σの増大を招き、SN−3σの値も小さくなった。
試験材31は、V含有量が少なかったため、V炭窒化物が不足した。そのため、ピン止め効果が不十分となり、高周波焼入れ後に結晶粒の粗大化を招いた。そして、高周波焼入れ後に結晶粒が粗大化した結果、疲労強度の標準偏差σの増大を招き、SN−3σの値も小さくなった。
試験材32は、各元素の含有量は上記特定の範囲内であったが、VとNとの含有量のバランスが悪く、ピン止め性指数Rが上記特定の範囲よりも小さかったため、高周波焼入れ時の加熱によりV炭窒化物の大部分が鋼材中に固溶した。そのため、ピン止め効果が不十分となり、高周波焼入れ後に結晶粒の粗大化を招いた。そして、高周波焼入れ後に結晶粒が粗大化した結果、疲労強度の標準偏差σの増大を招き、SN−3σの値も小さくなった。
試験材33は、C含有量が少なかったため、硬化層の硬さが低くなった。その結果、疲労強度の平均値SNが低下した。
試験材34は、C含有量が多かったため、母材部の硬さが過度に高くなった。その結果、被削性が悪化した。
図3〜図5に、疲労強度の評価結果を整理した図を示す。図3に、疲労強度の平均値SNが同程度であるが、ピン止め効果の程度に応じて結晶粒度の最小値が異なる3種の試験材(試験材1、6及び30)の疲労強度の評価結果を示す。図3における縦軸は、疲労強度(MPa)である。また、図3中には、各試験材における結晶粒度の最小値を示した。さらに、図3中には、各試験材の疲労強度の平均値SN(MPa)をプロットするとともに、標準偏差σ(MPa)の3倍に相当する長さのエラーバーを記載した。即ち、エラーバーの下端は、バラつきを考慮した疲労強度の下限値に相当するSN−3σ(MPa)の値を示している。
図4は、縦軸を疲労強度の標準偏差σ(MPa)、横軸を結晶粒度の最小値とし、全ての試験材の評価結果をプロットした図である。
図3及び図4から、結晶粒度の最小値の値が大きくなるほど、疲労強度の標準偏差σが小さくなる傾向があることが理解できる。また、図3に示したように、試験材1、試験材6及び試験材30は、疲労強度の平均値SNが同程度であるにも関わらず、結晶粒度の最小値が大きくなるほど標準偏差σが小さくなり、SN−3σの値が大きくなった。これらの結果から、結晶粒を微細化することにより、バラつきを考慮した疲労強度の下限値を高くできることが理解できる。そして、結晶粒を微細化することにより、高い疲労強度を有するクランクシャフトを安定して製造できることが容易に理解できる。
また、図5に、表2及び表3に示した結果のうち、熱間鍛造時の加熱温度を1200℃とした場合における結晶粒度とピン止め性指数Rとの相関関係をまとめた結果を示す。なお、図5には、Ti添加の影響を除くために、Tiを含有する試験材の結果を除いてプロットを行った。図5の縦軸は結晶粒度の最小値であり、横軸はピン止め性指数Rである。図5から、ピン止め性指数Rを0.010以上とすることにより、粒度番号7番以上の結晶粒度が得られることが容易に理解できる。
上述した種々の評価結果は全て試験片での結果であるが、表1に示す合金Fに相当する試験材を用いて実際にクランクシャフトを作製し、硬化層の結晶粒度を評価した。その結果、試験片による評価と同様に、粒度番号7番以上の結晶粒度が得られたことを確認できた。さらに、このクランクシャフトを用いて疲労試験を行った結果、優れた耐久性を有することを確認できた。
50 クランクシャフト
51 ピン部
52 ジャーナル部
B 母材部
H 硬化層

Claims (4)

  1. 複数のピン部及び複数のジャーナル部を有するクランクシャフトであって、
    質量%で、C:0.35%以上0.50%以下、Si:0.05%以上1.00%以下、Mn:1.00%以上2.00%以下、S:0.040%以上0.150%以下、Cr:0.50%以下(但し、0%を除く)、Al:0.001%以上0.050%以下、V:0.05%以上0.15%以下、N:0.0100%以上0.0200%以下、Ca:0.0100%(但し、0%を除く)以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるとともに、下記式(1)により得られるピン止め性指数Rが0.010以上である化学成分を有し、
    金属組織がフェライト面積率20%以下のフェライト・パーライト組織である母材部と、
    金属組織がマルテンサイト組織であり、結晶粒度が7番以上であり、上記複数のピン部及び上記複数のジャーナル部における上記母材部の表面に形成された硬化層とを有しており、
    上記母材部及び上記硬化層におけるFe母相中にV炭窒化物が分散していることを特徴とするクランクシャフト。
    Figure 0006693206
    (但し、上記式(1)において、[X]は元素Xの含有率(質量%)の値を表す。)
  2. 複数のピン部及び複数のジャーナル部を有するクランクシャフトの製造方法であって、
    質量%で、C:0.35%以上0.50%以下、Si:0.05%以上1.00%以下、Mn:1.00%以上2.00%以下、S:0.040%以上0.150%以下、Cr:0.50%以下(但し、0%を除く)、Al:0.001%以上0.050%以下、V:0.05%以上0.15%以下、N:0.0100%以上0.0200%以下、Ca:0.0100%以下(但し、0%を除く)を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるとともに、下記式(1)により算出されるピン止め性指数Rが0.010以上である化学成分を有する鍛造用鋼材を準備し、
    該鍛造用鋼材を1100℃以上1350℃以下の温度に加熱して熱間鍛造を行うことにより、上記複数のピン部及び上記複数のジャーナル部を有する鍛造部品を作製し、
    該鍛造部品を冷却して、金属組織をフェライト面積率が20%以下のフェライト・パーライト組織にするとともに、Fe母相中にV炭窒化物を析出させ、
    上記複数のピン部及び上記複数のジャーナル部にオーステナイト化温度以上1050℃以下の加熱温度で高周波焼入れを施すことにより、これらの外周面に結晶粒度が7番以上である硬化層を形成することを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
    Figure 0006693206
    (但し、上記式(1)において、[X]は元素Xの含有率(質量%)の値を表す。)
  3. 上記高周波焼入れにおける加熱温度は900℃以上1000℃以下であることを特徴とする請求項2に記載のクランクシャフトの製造方法。
  4. 上記高周波焼入れにおける加熱時間は30秒以下であることを特徴とする請求項2または3に記載のクランクシャフトの製造方法。
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