JP6256416B2 - 肌焼鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、建産機や自動車の分野で用いられる機械構造部品に適用可能である、特に浸炭焼き入れ時のオーステナイト結晶粒粗大化の抑制能に優れる肌焼鋼に関する。
建産機や自動車等に使用される機械構造部品は、鍛造や切削にて部品形状に整えられたのち、疲労強度を向上させるために、浸炭焼き入れ、焼き戻し処理がなされる。浸炭焼き入れは高温で処理されるため、オーステナイト粒の粗大化が起こりやすいという問題がある。その結果、焼入れ後の部品に熱歪が生じたり疲労強度が低下したりすることがあり、部品として使用不可能となる場合がある。
このような事情から、浸炭処理において結晶粒粗大化を防止可能な肌焼鋼の提供が強く求められている。このため、浸炭時における肌焼鋼の結晶粒粗大化を防止する技術が種々提案されている。中でも、Al、NbおよびTi等の元素を添加することによって、AlN、NbCおよびTiC等の析出物を微細に分散させる技術が汎用されている。
例えば、特許文献1には、結晶粒の粗大化防止のためにN量を増加させAlN析出物を増加させることが提案されている。また、特許文献2には、AlやNb等の窒化物、炭化物および炭窒化物を形成する元素の含有量と、各析出物の大きさ、分布密度、ベイナイト組織分率、フェライトバンド評点および圧延条件とを制御することによって、上記した問題の解決を図ることが記載されている。特許文献3には、Tiを添加し、Ti炭化物、Ti含有複合炭化物、Ti窒化物を微細に析出させるとともに、Ti系硫化物を析出させ、結晶粒の粗大化防止と被削性の向上を図ることが記載されている。
特公平3−7744号公報 特許第3725666号公報 特開2007−31787号公報
特許文献1に記載の技術は、N量を増加させAlN析出物を増加させることにより、結晶粒の粗大化防止を図っているが、AlN析出物は比較的粗大なため結晶粒のピン止め力が不安定であり、実部品において、しばしば結晶粒が粗大化してしまう場合があった。
また、特許文献2に記載の技術は、Al, Nbを添加するとともに圧延条件を制御することで、窒化物、炭化物、炭窒化物を分散させ結晶粒の粗大化防止を図っているが、Al、Nbの析出物は、互いに結合し、粗大な析出物となりやすく、結晶粒のピン止め力が不足し、結晶粒が粗大化してしまう場合が多々あるという課題があった。
特許文献3に記載の技術は、Tiを添加し、Ti炭化物、Ti含有複合炭化物、Ti窒化物を微細に析出させるとともに、Ti系硫化物を析出させることで、結晶粒の粗大化防止と被削性の向上を図っているが、Ti窒化物が鋳造凝固時に粗大生成してしまい、Ti微細析出物の分量が減少し、結晶粒のピン止め力が低下する場合があり、結晶粒が粗大化しやすくなるという問題があった。
本発明は、上記の実状に鑑み開発されたものであり、浸炭焼き入れ時のオーステナイト結晶粒の粗大化抑制能に優れる肌焼鋼について提案することを目的とする。
発明者らは、上記の目的を達成すべく、肌焼鋼の成分組成と浸炭焼き入れ時のオーステナイト結晶粒の粗大化挙動との関係を鋭意調査した結果、浸炭焼き入れ時のオーステナイト結晶粒の粗大化抑制能を高めることに寄与する、新たな成分組成を見出すに到った。本発明は上記の知見に立脚するものである。
1.C:0.10〜0.30質量%、
Si:0.01〜0.70質量%、
Mn:0.30〜1.5質量%、
P:0.1質量%以下、
S:0.5質量%以下、
Se:0.0010〜0.300質量%および
N:0.050質量%以下
を含み、残部はFe及び不可避的不純物の成分組成を有する肌焼鋼。
2.前記成分組成は、さらに
Cr:2.0質量%以下、
Mo:1.00質量%以下、
Cu:1.00質量%以下、
Ni:1.00質量%以下および
B:0.0100質量%以下
のうちから選ばれる1種以上を含有する前記1に記載の肌焼鋼。
3.前記成分組成は、さらに
Al:0.100質量%以下、
Nb:0.100質量%以下、
Hf:0.100質量%以下および
Ta:0.100質量%以下
のうちから選ばれる1種以上を含有する前記1または2に記載の肌焼鋼。
4.前記成分組成は、さらに
Sb:0.500質量%以下および
Sn:0.500質量%以下
のうちから選ばれる1種以上を含有する前記1から3のいずれかに記載の肌焼鋼。
本発明によれば、浸炭焼き入れ時のオーステナイト結晶粒の粗大化抑制能に優れる肌焼鋼を提供することができる。
浸炭焼き入れおよび焼き戻し条件を示す図である。
以下、本発明において、肌焼鋼の鋼組成を上記の範囲に限定した理由について詳しく説明する。
C:0.10〜0.30質量%
浸炭熱処理後の焼入れにより、例えば機械構造部品の中心部の硬度を高めるために、0.10質量%以上のCを必要とする。一方、含有量が0.30質量%を超えると、部品芯部の靭性が低下するため、C量は0.10〜0.30質量%の範囲に限定する。好ましくは0.13〜0.27質量%、より好ましくは0.15〜0.25%の範囲である。
Si:0.01〜0.70質量%
Siは、脱酸剤として、少なくとも0.01質量%の添加が必要である。しかしながら、Siは浸炭表層で優先的に酸化し、粒界酸化を促進する元素である。さらに、固溶強化により変形抵抗を高めて鍛造性を劣化させるため、上限を0.70質量%とする。好ましくは0.02〜0.50質量%、さらに好ましくは0.03〜0.35質量%である。
Mn:0.30〜1.5質量%
Mnは、焼入性の向上に有効な元素であるとともに、Seと結合し、高温でも安定な微細析出物を形成することで結晶粒の微細化に寄与する。このためには、少なくとも0.30質量%の添加を必要とする。しかし、Mnの過剰な添加は、固溶強化による変形抵抗の上昇を招くため、上限を1.5質量%とした。好ましくは0.4〜1.0質量%、より好ましくは0.5〜0.9質量%である。
P:0.1質量%以下
Pは、結晶粒界に偏析し、靭性を低下させるため、その混入量は低いほど望ましいが、0.1質量%までは許容される。好ましくは、0.02質量%以下である。また、下限については特に限定せずとも問題はないが、無駄な低P化は精錬時間の増長や精錬コストを上昇させてしまうため、0.003%以上にするとよい。
S:0.5質量%以下
Sは、硫化物系介在物として存在し、被削性の向上に有効な元素であるが、過剰な添加は冷間鍛造性の低下を招くため、上限を0.5質量%とした。また、下限については特に限定しないが、過度の低S化は精錬コストを上昇させてしまうため、0.003%以上にするとよい。好ましくは0.004〜0.3質量%、さらに好ましくは0.005〜0.09質量%である。
Se:0.0010〜0.300質量%
Seは、MnやCuと結合し、鋼中に析出物として分散する。Se析出物は浸炭熱処理温度域で析出物成長がほとんど起こらず安定に存在しており、オーステナイト粒径のピン止め効果が高い。このため、Seの添加は結晶粒の粗大化防止に有効であるが、この効果を得るためには、少なくとも0.0010質量%の添加が必要である。但し、0.300質量%を超えて添加しても、結晶粒の粗大化防止効果は飽和する。以上の理由から、Se添加量は0.0010〜0.300質量%とする。好ましくは0.005〜0.100質量%、さらに好ましくは0.008〜0.090質量%である。
N:0.050質量%以下
Nは、鋼の精錬時に大気中より混入する。0.050質量%を超えた場合、凝固時に割れが発生してしまい、圧延または鍛造後でも疵として残り、製品として使用できなくなる。疵が残ったまま鍛造をした場合、その疵が開き、割れが著しく発生しやすくなってしまう。そこで、Nの上限を0.050質量%とした。また、下限については特に限定しないが、過度の低N化は精錬コストを上昇させてしまうため、0.001%以上とするとよい。好ましくは0.0015〜0.0300質量%、さらに好ましくは0.002〜0.025質量%である。
以上、基本成分について説明したが、本発明では、必要に応じて、さらに、 Cr:2.0質量%以下、
Mo:1.00質量%以下、
Cu:1.00質量%以下、
Ni:1.00質量%以下および
B:0.0100質量%以下
のうちから選ばれる1種以上を含有することができる。
Cr:2.0質量%以下
Crは、焼入性と焼戻し軟化抵抗の向上に寄与し、さらには炭化物の球状化促進にも有用な元素であるため添加することができる。これらの効果を得るためには、0.5質量%以上で添加することが好ましい。一方、2.0質量%を超えると、過剰浸炭や残留オーステナイトの生成を促進し、疲労強度に悪影響を与える。よって、Cr量は2.0質量%以下の範囲にするとよい。好ましくは0.5〜2.0質量%の範囲であり、より好ましくは0.7〜1.9質量%の範囲である。さらに好ましくは0.8〜1.8質量%である。
Mo:1.00質量%以下
Moは、焼入性と焼戻し軟化抵抗の向上に寄与し、さらには浸炭異常層を低減する効果も示し、有用な元素であるため添加することができる。これらの効果を得るためには0.01質量%以上で添加することが好ましい。一方、1.00質量%を超えると、焼入性過剰となり、圧延後の取り扱い時に疵発生または割れ発生する懸念がある。そこで、Mo量は1.00質量%以下の範囲にするとよい。好ましくは0.01〜1.00質量%の範囲であり、より好ましくは0.03〜0.50質量%の範囲である。さらに好ましくは0.05〜0.30質量%である。
Cu:1.00質量%以下
Cuは、焼入性の向上に寄与するとともに、Seと結合し、結晶粒の粗大化防止効果を示し、有用な元素であるため添加することができる。これらの効果を得るためには0.01質量%以上で添加することが好ましい。一方、1.00質量%を超えると、圧延材表面肌が荒れてしまい、疵として残存する懸念がある。そこで、Cu量は1.00質量%以下の範囲にするとよい。好ましくは0.01〜1.00質量%であり、より好ましくは0.015〜0.500質量%、さらに好ましくは0.03〜0.30質量%である。
Ni:1.00質量%以下
Niは、焼入性の向上に寄与するとともに、靱性の向上に有用な元素であるため添加することができる。これらの効果を得るためには0.01質量%以上で添加することが好ましい。一方、1質量%を超えた添加は効果が飽和する。よって、Ni量は1.00質量%以下の範囲にするとよい。好ましくは0.01〜1.00質量%の範囲であり、より好ましくは0.015〜0.500質量%の範囲である。さらに好ましくは0.03〜0.30質量%である。
B:0.0100質量%以下
Bは、粒界に偏析し、拡散型変態を抑制することで、焼入れ性の向上に有効であるため添加することができる。この効果を得るためには0.0003質量%以上添加することが好ましい。一方、0.0100%を超えると、靱性の低下を招くことから、B量は0.0100質量%以下にするとよい。好ましくは0.0003〜0.0100質量%の範囲である。より好ましくは、0.0005〜0.0050質量%の範囲、さらに好ましくは0.0007〜0.0020質量%の範囲である。
同様に、必要に応じて
Al:0.100質量%以下、
Nb:0.100質量%以下、
Hf:0.100質量%以下および
Ta:0.100質量%以下
のうちから選ばれる1種以上を含有することができる。
Al:0.100質量%以下
Alは脱酸に有効な元素であるとともに、窒化物を形成して結晶粒の粗大化防止に有効であるため添加することができる。これらの効果を得るためには、0.001質量%以上で添加することが好ましい。一方、過剰な添加は介在物の増加を招き、疲労破壊の起点を増やし、低疲労強度の原因となることから、上限を0.100質量%とするとよい。好ましくは0.001〜0.100質量%であり、より好ましくは0.01〜0.08質量%であり、さらに好ましくは0.015〜0.055%である。
Nb:0.100質量%以下
Nbは、鋼中でNbCを形成し、浸炭熱処理時のオーステナイト粒径の粗粒化をピン止め効果により抑制するため添加することができる。この効果を得るためには、少なくとも0.003質量%の添加が好ましい。一方、0.100質量%を超えて添加すると、粗大なNbCの析出による粗粒化抑制能の低下や疲労強度の劣化を招くおそれがあるため、0.100質量%以下とする。好ましくは0.003〜0.100質量%であり、より好ましくは0.005〜0.080質量%である。さらに好ましくは、0.01〜0.06質量%である。
Hf:0.100質量%以下
Hfは、鋼中で炭化物を形成し、浸炭熱処理時のオーステナイト粒径の粗粒化をピン止め効果により抑制する。この効果を得るためには、少なくとも0.003質量%の添加が好ましい。一方、0.100質量%を超えて添加すると、鋳造凝固時に粗大な析出を生成し、粗粒化抑制能の低下や疲労強度の劣化を招くおそれがあるため、0.100質量%以下とするとよい。好ましくは0.003〜0.100質量%、より好ましくは0.005〜0.060質量%である。さらに好ましくは、0.01〜0.05質量%である。
Ta:0.100質量%以下
Taは、鋼中で炭化物を形成し、浸炭熱処理時のオーステナイト粒径の粗粒化をピン止め効果により抑制する。この効果を得るためには、少なくとも0.003質量%の添加が好ましい。一方、0.100質量%を超えて添加すると、鋳造凝固時に割れを生じやすくなり、圧延および鍛造後でも疵が残存してしまう懸念があるため、0.100質量%以下とするとよい。好ましくは、0.003〜0.100質量%であり、より好ましくは、0.005〜0.06質量%である。さらに好ましくは、0.01〜0.05質量%である。
同様に、必要に応じて
Sb:0.500質量%以下および
Sn:0.500質量%以下
のうちから選ばれる1種以上を含有することができる。
Sb:0.500質量%以下
Sbは、鋼材表面の脱炭を抑制し、表面硬度の低下を防止するのに有効な元素であるため添加することができる。この効果を得るためには、0.0003質量%以上添加することが好ましい。ただし、過剰な添加は鍛造性を劣化させることから、Sbは0.500質量%以下とする。Sbの好適範囲は0.0003〜0.500質量%であり、好ましくは、0.001〜0.050質量%、更に好ましくは0.0015〜0.0350質量%である。
Sn:0.500質量%以下
Snは、鋼材表面の耐食性を向上させるために有効な元素であるため添加することができる。この効果を得るためには、0.0003質量%以上添加することが好ましい。ただし、過剰な添加は鍛造性を劣化させることから、Snは0.500質量%以下とする。Snの好適範囲は0.0003〜0.500質量%であり、好ましくは、0.0010〜0.050質量%であり、更に好ましくは、0.0015〜0.0350質量%である。
以上、本発明の肌焼鋼における成分元素の含有量について述べたが、上述した元素以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。尚、本発明においては、TiおよびVは添加しない。なぜなら、近年、部品の高強度化のため、浸炭温度を上昇させたり浸炭時間を増加させることにより、浸炭硬化層深さを増大させるケースが増えているが、このような場合に、TiおよびVは浸炭処理の長時間化にともない析出物の粗大化または溶解を通じて、結晶粒の粗大化を誘起するためである。
上記した成分組成に従う肌焼鋼は、機械構造部品としたときの機械特性を十分に満足し、かつ浸炭焼き入れ時のオーステナイト結晶粒の粗大化抑制能に優れるものとなる。具体的には、鍛造時の割れ発生が少ない肌焼鋼が得られ、この肌焼鋼に、定法に従う浸炭焼き入れおよび焼き戻し処理を施した場合に、オーステナイト結晶粒の粗大化が抑制でき、曲げ疲労特性、面疲労特性および衝撃疲労特性の優れた機械構造部品が得られる。
本発明の肌焼鋼は、定法に従って製造することができる。例えば、上記した成分組成に従う鋼を鋳造後、分塊圧延および棒鋼圧延または線材圧延を行って製造される。
以下、実施例に従って、本発明の構成および作用効果をより具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲内にて適宜変更することも可能であり、これらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
表1に示す成分組成の鋼を溶製し熱間圧延によって30mmφの丸棒に成形した。得られた丸棒について、機械構造用鋼に求められる各種特性の評価を行った。すなわち、圧延ままの光学顕微鏡組織観察、硬さ測定、鍛造性(限界割れ試験)、ジョミニー試験、浸炭後硬度分布測定、浸炭後回転曲げ疲労試験、浸炭後ローラーピッチング疲労試験、浸炭後衝撃疲労試験および浸炭後旧オーステナイト粒観察を実施した。
Figure 0006256416
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ここで、圧延ままの光学顕微鏡観察は、丸棒の軸と直交する断面の表面から直径の1/4の深さ位置(以下、1/4位置という)を、鏡面研磨してナイタール3%液でエッチングした後、観察した。倍率:400倍にて10視野撮影後、フェライト面積率を画像解析ソフト(Media Cybernetics社製Image-Pro PLUS)にて定量化し、評価した。このフェライト面積率は90%以下であることが望ましい。なぜなら、フェライトは軟質組織であり、多いほど硬度が低下し、鍛造時の割れが抑制されるからである。
硬さ測定は、丸棒の1/4位置について、300gfでビッカース硬さを測定した。10点計測し、平均値を算出し評価した。冷間鍛造用として使用するにはHV180以下が望ましい。これは、冷間鍛造においては、素材硬度が低いほど割れが発生しにくくなり、また、鍛造荷重も低下して金型の寿命が向上するためである。一方、熱間鍛造用の場合、圧延ままの硬さは任意の値でも問題ない。
鍛造性の評価は、冷間据込み性試験(日本塑性加工学会冷間鍛造分科会制定)によって得られる限界据込率で評価した。すなわち、丸棒の軸と直交する断面の表面から直径の1/2の深さ位置(以下、中心位置という)から、側面にV溝を有し、直径:14mmおよび高さ:21mmの円柱試験片を採取し、300tプレス機を用いて、V溝の溝底から割れが発生するまでの据込率で評価した。V溝は、溝底Rを0.15mmとし、開き角30°で深さ0.8mmとした。熱間鍛造および冷間鍛造ともに、限界据込率が30%以上であれば割れが発生しにくい。
ジョミニー試験は、JIS G0561「鋼の焼入性試験方法(一端焼入方法)」に従って実施した。丸棒の端面から7mmの位置の硬さをJ7mmとし評価した。J7mmがHRC55〜HRC16であれば、浸炭焼き入れにて十分に高疲労強度化される。この範囲を下方に外れる場合は疲労強度不足となり、この範囲を上方に外れる場合は硬くなりすぎて脆くなる、すなわち、靱性不足となる。
浸炭後硬度分布測定は、30mmφの丸棒を図1(a)に示す条件にて浸炭焼き入れおよび焼き戻し処理を実施し、垂直断面(円形状)について、表面から中心までのビッカース硬さを300gfで測定した。有効硬化層深さ(ECD)として、HV550以上の領域の表面からの深さ位置までの硬化層深さを評価した。疲労強度を確保するには、ECDが0.5mm以上であることが望ましい。
浸炭後回転曲げ疲労試験は、丸棒の中心位置より平行部8mmφの試験片を採取し、図1(a)に示す条件にて浸炭焼き入れおよび焼き戻し処理を実施した後、小野式回転曲げ疲労試験に供した。小野式回転曲げ疲労試験は回転数3500rpmで実施し、107回の疲労限強度をもって評価した。この疲労限強度は、800MPa以上であることが望ましい。
浸炭後ローラーピッチング疲労試験は、平行部26mmφの試験片を丸棒の中心位置より採取し、図1(a)に示す条件にて浸炭焼き入れおよび焼き戻し処理を実施し、図1(a)に示す条件にて浸炭焼き入れおよび焼き戻し処理を実施した後、疲労試験に供した。すべり率40%、油温80℃の条件で107回強度(試験片表面にピッチングが発生する限界強度)で評価した。この限界強度は、3000MPa以上であることが望ましい。
浸炭後衝撃疲労試験は、JIS Z2242のシャルピー衝撃試験片を丸棒の中心位置より採取し、図1(a)に示す条件にて浸炭焼き入れおよび焼き戻し処理を実施した後、繰り返し衝撃疲労試験に供した。103回の衝撃疲労限強度を評価した。この疲労限強度は、0.20N・m以上であることが望ましい。
浸炭後旧オーステナイト粒観察は、丸棒の中心から、側面にV溝を有し、直径:14mmおよび高さ:21mmの円柱試験片を採取し、300tプレス機を用いて、据込率0%(鍛造無し)と70%の冷間鍛造を実施し、図1(a)または(b)に記載の条件にて浸炭焼き入れおよび焼き戻し処理を実施した後、断面組織について、JIS G0551の「鋼−結晶粒度の顕微鏡試験方法」に従い、結晶粒度の評価を実施した。この粒度は、図1(a)の条件にて浸炭焼き入れおよび焼き戻し処理を行ったものでは、据込率0%の場合で5以上および据込率70%の場合で4以上であることが好ましい。一方、図1(b)に記載の条件にて浸炭焼き入れおよび焼き戻し処理を行ったものでは、この粒度は据込率0%の場合で4以上および据込率70%の場合で3.5以上であることが好ましい。
加えて、図1(a)に記載の条件にて浸炭焼き入れおよび焼き戻し処理を実施した試験片については、その断面組織を光学顕微鏡で倍率:400倍にて10視野撮影後、62μm以下の結晶粒の面積率および177μm超えの結晶粒の面積率を画像解析ソフト(Media Cybernetics社製Image-Pro_PLUS)にて定量化し、評価した。この面積率が62μm以下の結晶粒で60%以上および177μm超えの結晶粒で1%以下であることが好ましい。
得られた各評価結果を表2に示すとおり、本発明に従う発明例は、いずれも機械構造部品用鋼として十分な諸特性を有している上、結晶粒の粗大化防止特性に優れることがわかる。
Figure 0006256416
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Claims (9)

  1. C:0.10〜0.30質量%、
    Si:0.01〜0.70質量%、
    Mn:0.30〜1.5質量%、
    P:0.1質量%以下、
    S:0.5質量%以下、
    Se:0.0010〜0.300質量%および
    N:0.050質量%以下
    を含み、残部はFe及び不可避的不純物の成分組成を有する肌焼鋼。
  2. 前記成分組成はさらに
    Cr:2.0質量%以下、
    Mo:1.00質量%以下、
    Cu:1.00質量%以下、
    Ni:1.00質量%以下および
    B:0.0100質量%以下
    のうちから選ばれる1種以上を含有する請求項1に記載の肌焼鋼。
  3. 前記成分組成は、さらに
    Sb:0.500質量%以下および
    Sn:0.500質量%以下
    のうちから選ばれる1種以上を含有する請求項1または2に記載の肌焼鋼。
  4. C:0.10〜0.30質量%、
    Si:0.01〜0.70質量%、
    Mn:0.30〜1.5質量%、
    P:0.1質量%以下、
    S:0.5質量%以下、
    Se:0.0010〜0.300質量%および
    N:0.050質量%以下
    を含み、残部はFe及び不可避的不純物の成分組成を有する肌焼鋼を、950℃〜1070℃で浸炭を施した後、焼入れおよび焼戻し処理を施す浸炭焼入れ・焼戻し材の製造方法。
  5. 前記成分組成は、さらに
    Cr:2.0質量%以下、
    Mo:1.00質量%以下、
    Cu:1.00質量%以下、
    Ni:1.00質量%以下および
    B:0.0100質量%以下
    のうちから選ばれる1種以上を含有する請求項に記載の浸炭焼入れ・焼戻し材の製造方法。
  6. 前記成分組成は、さらに
    Al:0.100質量%以下、
    Nb:0.100質量%以下、
    Hf:0.100質量%以下および
    Ta:0.100質量%以下
    のうちから選ばれる1種以上を含有する請求項またはに記載の浸炭焼入れ・焼戻し材の製造方法。
  7. 前記成分組成は、さらに
    Sb:0.500質量%以下および
    Sn:0.500質量%以下
    のうちから選ばれる1種以上を含有する請求項からのいずれかに記載の浸炭焼入れ・焼戻し材の製造方法。
  8. 前記浸炭を施す前に冷間鍛造を施す請求項からのいずれかに記載の浸炭焼入れ・焼戻し材の製造方法。
  9. 前記浸炭素焼入れ・焼戻し材は、JIS G0551に従う結晶粒度が3.5以上である、請求項からのいずれかに記載の浸炭焼入れ・焼戻し材の製造方法。
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