JP4617783B2 - 高温浸炭用熱間鍛造部品の製造方法 - Google Patents

高温浸炭用熱間鍛造部品の製造方法 Download PDF

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本発明は、高温で浸炭処理した場合でも結晶粒異常成長を防止することができ、かつ優れた加工性を確保することのできる高温浸炭用熱間鍛造部品の製造方法に関する。
自動車等、建設車両、建設機器等に使用される歯車やシャフト等の動力伝達に使用される鋼部品には、C量が0.20%程度の肌焼鋼(Cr鋼、Cr-Mo鋼等)を用い、これに浸炭処理を施して表面に硬化層を形成させて、表面強度を高めた材料が使用されている。これは、前記部品には優れた耐摩耗性と高靭性を同時に要求されるため、表面は浸炭処理により硬い組織として耐摩耗性を確保し、内部は低Cのままとして高い靭性をもたせるためである。
最近、これらの部品の高強度化と共に大幅な製造コスト低減が大きな課題になっている。部品の製造コストは、材料自体のコストと浸炭等の熱処理コストに大きく分けることができるが、前者については、特に高価な成分元素が多量に添加されていない肌焼鋼の場合、大きなコスト低減は困難であり、後者の熱処理コストの低減方法の研究が盛んに検討されている。
その中でも、最近検討が進められている方法は高温浸炭処理である。現在肌焼鋼の浸炭処理は、その大部分がガス浸炭処理法により行われており、所定の硬化深さを得るために、4〜20時間程度もの長時間の処理が実施されている。その結果、生産性の面でも問題になるとともに、多大なエネルギーを消費するため、改善が強く要望されていた。高温浸炭処理は、浸炭温度を高く設定して反応を促進させることにより、短時間でより多くの炭素原子を侵入及び拡散させて処理時間の短縮を図る方法で、時間短縮に最も効果的な方法として古くから知られている。
しかしながら、高い浸炭温度での処理は、処理時間の短縮には効果的な方法であるが、一方で大きな問題が生じる。すなわち、浸炭処理後にオーステナイト粒が粗大化したり混粒が生じることである。浸炭処理後においてこのようなオーステナイト粒の粗大化や混粒が生じると、強度が低下したり、熱処理歪のバラツキが生じる。通常浸炭処理後は研磨等の必要最小限の機械加工を施すだけであるのが普通であり、このような歪のバラツキは製品寸法不良の原因となり、問題となる。そのため、従来高い浸炭温度による処理が十分にできないでいた。
このような、浸炭処理時に起きる結晶粒粗大化と混粒化現象は、かなり以前から知られており、様々な対策が検討され、実施されてきた。その中でも主として行われてきた対策は、Al、Nb、Nの添加量を適切に調整して、鋼中にAlN、Nb(C、N)を析出させ、この析出物によるピン止め効果によって結晶粒粗大化を防止しようとするものであり、例えば、特許文献1〜4に示される鋼が提案されている。
しかしながら、その後のさらなる検討によって、Al、N、Nbの単純な添加量の調整のみでは、十分な結晶粒粗大化防止ができないことがわかり、AlN、Nb(C、N)をより大きなピンニング効果の得られる状態に析出させるための取組みがされており、その例として、特許文献5、6に記載の方法が提案されている。この先願に記載の方法は、圧延、熱間鍛造時の加熱及び仕上温度を適切に制御し、800〜500℃の間を1℃/秒以下の速度で冷却することによって、Nb(C、N)を多量に微細分散させるとともに、AlNの析出量の上限を規定し、これによって結晶粒粗大化を抑制しようとするものである。
特開昭56−75551号公報 特開昭59−123714号公報 特開昭49−125220号公報 特願平6−299241号公報 再公表特許99/0533号公報 特開2001−303174号公報
しかしながら、前記した従来の発明には次の問題がある。
特許文献1〜4に示されたような、Al、Nb、Nの添加量の適正化によるAlN、Nb(C、N)の析出物の利用のみでは、優れたピンニング効果が得られず、十分に結晶粒粗大化防止ができないという点については前記した通りである。
前記した通り、その問題を解決するために成された発明が、特許文献5、6に記載されている。しかしながら、特許文献5には、圧延後の析出状態しか記載されておらず、かつ熱間鍛造後に焼準することが前提の技術であり、鍛造後において適切な析出状態を達成するための手段について記載されていない。また、特許文献6は、鍛造条件、鍛造後の冷却条件を適切な条件として、最適な析出状態を得ようとするものであるが、鍛造後の冷却時を単純に徐冷としているため、Nb(C、N)の析出に適した温度領域まで比較的短時間で通過してしまうことになり、最適な析出状態が得られない場合があることが判明した。
さらに、Nb添加によるNb(C、N)の析出は、結晶粒粗大化と混粒発生を防止するのに不可欠ではあるが、同時に析出硬化による硬さの向上をもたらすことにもなるため、鍛造後に機械加工等を行うためには、硬さの上昇が加工性に大きな悪影響を及ぼさない程度に抑制できるような製造方法の検討が必要であった。
本発明は、以上説明した問題点を解決するために成されたものであり、Nb添加による結晶粒粗大化防止効果を十分に確保しつつ、析出硬化による機械加工性の低下を最小限に抑え、高温浸炭処理によって熱処理コストの大幅低減を可能とする高温浸炭用熱間鍛造部品の製造方法を新規に提案することを目的とする。
請求項1の発明は、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.30〜1.50%、Cr:0.30〜2.00%、Al:0.005〜0.050%、Nb:0.01〜0.10%、N:0.0080〜0.0250%、V:0.01%以下を含有し、残部がFe及び不純物元素からなる熱間圧延鋼材を、1150〜1350℃に加熱後、鍛造仕上温度が1100〜1300℃となる条件で熱間鍛造して、鋼中に含有するNb(C、N)が固溶した状態(析出個数で0.3個/μm2以下)とし、鍛造後表面温度が600〜700℃となるまで冷却した時点で炉内温度が620〜670℃に設定されている熱処理炉内に投入して30分〜3時間保持し、その後前記炉内温度に比べ10〜100℃高く、かつ680〜750℃の範囲内の温度に設定された熱処理炉内に投入してさらに15〜60分保持し、室温まで冷却することを特徴とする高温浸炭用熱間鍛造部品の製造方法である。
本発明は、Nb添加鋼でも加工性に悪影響が生じない程度の低い硬さを得ることができ、かつ結晶粒粗大化防止のためのNb(C、N)を十分に析出させた状態とすることのできる製造条件について詳細に検討した結果、下記の知見を得ることにより完成されたものである。
本発明では、鍛造後に620〜670℃の温度域に保持するという方法を採用している。これは、この温度域がNb(C、N)を微細に析出させるために最適な温度であるということと、この温度域に保持することによって、フェライトパーライト変態を完全に終了させ、その後の冷却時にベイナイトが生成して鍛造後の冷鍛や切削等の塑性加工、機械加工時の加工性低下を防止するためである。そして、この処理温度の上限を670℃としたのは、温度を高くすると変態の進行が遅くなり、生産性の面で問題が生じるためである。しかし、一方でNb(C、N)の析出硬化による硬さの上昇は、γが生成しない範囲の高い温度域で保持した方が小さく抑えられるということを本発明者等は実験により確認した。
そこで、熱処理を2段階に分け、前半部分を変態反応が比較的速く進行する温度域である620〜670℃で処理を行って、フェライトパーライト変態反応をほぼ完了した状態にさせた後、熱処理の後半で、より低い硬さを得るために、前半の保持温度に比べ10〜100℃高く、かつ680〜750℃の温度に設定された炉内で熱処理を行うという実験を行った。すると、Nb(C、N)を十分に析出させることが可能であるとともに、加工性の良いフェライトパーライト組織を確保しつつ、比較的低い硬さに抑制することができ、かつ短い処理時間で製造可能なことを見出したものである。
なお、ベイナイトが生成すると加工性が低下する点については前記したが、その他の影響として異常粒成長が起きやすくなるという問題もある。これは、ベイナイト組織中では、フェライトパーライト組織では、γの析出サイトが多く、浸炭時の初期γ粒径が小さくなる傾向があるためである。
次に本発明で使用する鋼の各成分の限定理由について説明する。
C:0.10〜0.30%
Cは浸炭によって強化することができない内部の強度(内部硬さ)を確保するために必要な元素であり、0.10%以上含有させる必要がある。しかし、0.30%を超えて含有させると内部の靭性が劣化し、さらには被削性を低下させるため、上限を0.30%とした。
Si:0.05〜0.50%
Siは、鋼の製造時に脱酸のために必要な元素であり、最低でも0.05%以上の含有が必要である。しかしながら、Siは浸炭処理時、浸炭雰囲気中の酸素と反応して酸化物を形成する。このため被処理品の表層付近は焼入性が低下し、いわゆる浸炭異常層を形成する。従って、多量に含有させると浸炭異常層の生成による悪影響が大きくなって強度が低下するとともに、被削性が低下するので、上限を0.50%とした。
Mn:0.30〜1.50%
Mnは、焼入性を高め、部品の内部まで強度を確保するのに必要な元素であり、0.30%以上のMnを含有する必要がある。しかしながら、多量に含有させると、残留オーステナイトが増加して、硬さ低下、内部の靭性が劣化するとともに、被削性が低下するので、上限を1.50%とした。
P:0.035%以下
Pは製造時に混入が避けられない不純物である。本発明では特に必須の条件としては限定していないが、粒界の強度を低下させ、疲労特性を悪化させる原因となる元素であるので、その上限を0.035%以下とすることが好ましい。
S:0.030%以下
SはPと同様に製造時に少量の混入が避けられない不純物であり、例えばMnS等のような硫化物系介在物となって存在している。しかし、この介在物は、疲労破壊の起点となったり、耐ピッチング性を低下させたり、鋼材の異方性が大きくなる原因となる元素である。従って、本発明では、必須では限定していないが、理想的には極力低減することが好ましく、上限を0.030%とした方がより好ましい。
Cr:0.30〜2.00%
Crは、焼入性を向上させ、必要な強度を確保し、本発明により製造した鋼の性能を向上させるために必要な元素であり、0.30%以上の含有が必要である。しかしながら、多量に含有させると靭性が劣化するとともに被削性が低下するため、上限を2.00%とした。
Al:0.005〜0.050%、
Alは、Siと同様に脱酸に必要な元素であるとともに、AlNとして存在し、ピン止め効果により浸炭処理後の異常粒成長防止に効果のある元素である。従って、最低でも脱酸に必要な量を添加する必要があり、下限を0.005%とした。しかしながら、本発明では高温で浸炭処理することを前提としており、主となるピンニング効果は、AlNに比べ1000℃以上の高温で固溶しにくいNb(C、N)により得ている。また、Alを含有させすぎると、浸炭処理前のAlN析出数が増加し、浸炭初期粒径の微細化につながり、高温浸炭処理した場合、かえって結晶粒微細化が生じやすくなるため、上限を0.050%とした。
Nb:0.01〜0.10%
Nbは本発明において最も重要な元素であり、Nb(C、N)となって鋼中に存在し、特にAlに比べ高温度での浸炭処理における結晶粒異常成長を防止する効果の大きい元素である。Nb添加量が少ない場合、特に1050℃以上の浸炭では浸炭処理前に析出していた炭窒化物の一部が固溶し、ピン止め効果に寄与するNb炭窒化物の量が不足して粗粒化抑制作用が十分に得られなくなるので、下限を0.01%とした。一方、多量に含有させると、熱間鍛造時の加熱によってNb(C、N)が十分に固溶した状態とならず、粗大なNb(C、N)の析出物が残存した状態となって、ピンニング効果が低下するので、上限を0.10%に規定した。
N:0.0080〜0.0250%
Nは上述の通り、AlやNbと結合し、AlNやNb(C、N)となって鋼中に存在し、浸炭処理時に起きる異常粒成長を防止するために効果のある元素である。この効果を十分に得るためには、0.0080%以上のNを含有させる必要がある。しかしながら、AlNやNb(C、N)の析出量には適量があり、多すぎると浸炭初期粒径が細かくなって却って異常粒成長が起きやすくなってしまうため、上限を0.0250%とした。
V:0.01%以下
VはNbと同様に炭窒化物を形成し、ピン止め効果により結晶粒成長の防止に寄与する元素であるが、Vの炭窒化物はNbの炭窒化物に比べ高温で固溶しやすく、1000℃以上の高温浸炭の場合、浸炭加熱によって固溶して浸炭中にピン止め効果が消失し、結晶粒成長抑制効果が得られなくなるので、高温浸炭される場合には、Vよりも高温浸炭処理温度において固溶しにくい炭窒化物を形成する元素に、鋼中のC、Nを優先的に結合させておく必要がある。Vが含有していると、鋼中のC、Nの一部がVと結合し、浸炭初期粒径を微細化する作用が生じ、かつ1000℃以上の浸炭中にそれらが固溶して、ピン止め効果を消失させるので、異常粒成長を助長する。従って、高温浸炭時にはVが存在すると逆に異常粒成長が起きやすくなる。Vは積極添加しなくても鋼の製造時に使用するスクラップ等から少量混入する可能性のある元素であるため、不純物として含有するV量を少なく抑える必要があり、上限を0.01%に規制した。
した。
次に、請求項1の発明の製造条件の限定理由について、以下に説明する。
鍛造時の加熱温度を1150〜1350℃としたのは、鍛造時の加熱の際に圧延鋼材中にNb(C、N)を十分に固溶(具体的には析出個数で0.3個/μm以下)させて、後述の620〜670℃(前半)、680〜750℃(後半)の温度保持(以下析出処理と記す)中に微細に析出させるためである。鍛造時の加熱温度が低く固溶が不十分になってNb(C、N)の粗大な析出物が残存していると、鍛造後の温度保持時に残存している析出物がさらに成長して大きな析出物となり、Nb(C、N)の析出物が結晶粒粗大化防止に寄与しなくなってしまうので、温度の下限を1150℃としてNb(C、N)を十分に固溶させておく必要がある。但しあまり温度を高くしすぎるのは、エネルギーの無駄となるので、上限を1350℃とした。鍛造仕上温度を1100〜1300℃としたのも、同じ理由である。なお、ここで指定している温度は、全て被加工材の表面温度である。
本発明の鍛造部品は、熱間鍛造後に表面温度が600〜700℃となるまで冷却され、620〜670℃の温度に設定された炉内にて温度保持することにより析出処理される。ここで、鍛造直後から析出処理温度までの冷却条件を特に指定していないのは、徐冷、空冷、放冷、加速空冷(ファン冷却)等、通常の鍛造工場で実施できるどのような条件で行っても同様の効果が得られるからである。従って、実際に実施する工場において、最も都合の良い条件を選択して実施することができる。
そして、析出処理の温度範囲の下限を620℃としたのは、この温度より低い温度で保持してもフェライトパーライト変態及びNb(C、N)の析出が効率良く進まないためであり、上限を670℃としたのは、フェライト・パーライト変態に時間がかかり、後述する保持時間中に変態が終了しなくなるためである。また、炉内で析出処理を開始する際の表面温度を600〜700℃と炉内設定温度の上下限値と若干違いがあるのは、Nb(C、N)の微細析出及びフェライトパーライト変態で問題となるのは、保持温度であって、処理の開始温度は若干広い範囲としてもNb(C、N)の微細析出及びフェライトパーライト変態の進行に支障はないからである。
また、温度保持時間を30分〜3時間としたのは、析出処理及びフェライトパーライト変態させるのに必要な時間を考慮すると、この程度の時間が最も適当であるからである。すなわち、30分より短くなると、十分に析出させ、かつ変態を終了させる(後述の後半の析出処理終了時までに)ことが難しくなるためであり、3時間より長くなると、十分に析出させ、かつ変態させることはできるが、生産性が低下して熱処理コストが増加するからである。
この温度保持によって、Nb(C、N)については、十分に析出させた状態とすることが可能であるが、これで析出処理を終了して室温まで冷却した場合には、Nb炭窒化物による析出硬化が大きくなって、硬さが上昇し、加工性が低下するという問題が生じる。そこで、本発明では、さらに被処理鋼材を炉内の設定温度が前記炉内温度に比べ10〜100℃高く、かつ680〜750℃の範囲内の温度に設定された炉内に投入して、さらに15〜60分保持することとしたものである。これにより、Nb炭窒化物が過時効の状態となるため、硬さの上昇が抑えられ、加工性の低下を防止することができる。
ここで、下限の設定温度を680℃としたのは、これより低い温度では、Nb(C、N)が過時効の状態とならず、析出硬化により硬さが上昇して加工性の低下を防ぐことができないためであり、上限を750℃としたのは、これ以上の温度では変態温度を超えて2相域に入ってしまうため、前半の析出処理でフェライト・パーライト変態をさせた意味がなくなるからである。また、前半の炉内設定温度より10〜100℃高い温度としたのは、温度差が10℃未満では、硬さ上昇を抑制する効果が十分に得られないためであり、温度差が100℃を超える場合には、1度冷却した鋼材を再度加熱することになり、エネルギーコストが上昇するからである。また、後半の析出処理時間を15〜60分としたのは、15分未満では、硬さ上昇を抑制する効果が十分に得られないためであり、上限を60分としたのは、これ以上長く保持しても効果が飽和し、投入したエネルギーに見合う効果が得られないためである。
以上説明した2段階の温度保持が終了した後は、室温まで冷却する。なお、この温度保持は、前記した通り、フェライトパーライト変態を促進することを目的としているため、温度保持の終了時点で既に変態は終了している。従って、得られる組織が室温までの冷却条件に左右されることはなく、室温までの冷却条件については熱処理を実施する際の設備等の都合に応じて適切に選択すれば良い。
以上説明した手順で熱間鍛造、析出処理を行うことにより、Nb(C、N)を十分に微細析出させ、かつ硬さの上昇を抑え、加工性の優れた高温浸炭用熱間鍛造部品を得ることができる。
次に、請求項2の発明のように、請求項1の発明で用いる鋼のFeの一部に代えて、Moを0.80%以下含有させた鋼を用いることもできる。以下、その限定理由を記載する。
Mo:0.80%以下
Moは、焼入性および靱性を向上させるとともに、浸炭異常層を抑制して強度を向上させる効果を有する元素であり、必要に応じ少量添加して使用することができる元素である。しかしながら、多量に添加すると、残留オーステナイトが増加し、浸炭硬さの低下の原因になるとともに、内部の靭性、被削性を低下させるため、0.80%を上限とした。
次に、本発明鋼の特徴を比較例と対比して、実施例により説明する。実験に用いた鋼の成分は、A鋼:0.20C-0.31Si-0.78Mn-0.015P-0.016S-1.13Cr-0.17Mo-0.033Al-0.05Nb-0.0144N-0.005VとB鋼:0.21C-0.33Si-0.81Mn-0.016P-0.017S-1.08Cr-0.031Al-0.06Nb-0.0155N-0.003V(数字は全て質量%)、C鋼(JISのSCM420)である。この成分からなる供試鋼の鍛伸材(φ15)を加工して直径8mm、高さが12mmの試験片を準備し、富士電波工機(株)製の「サーメックマスター」を用いて、圧縮率50%の据込み試験を実施した。その際、後述の表2に示すように、据込み加工直前の加熱温度及び温度保持条件を様々に変化させて、試験後の組織、硬さ、異常粒成長の有無について調査した。
なお、加工後に実施される温度保持に伴う恒温変態は、加工時の歪が大きいほど早く進行する傾向がある。しかしながら、実際に製造される鍛造部品においては、部品の部位によって大きく歪を受ける部位とほとんど歪を受けない部位があり、温度保持時間の設定は、最も変態に時間がかかると推定される歪の小さい部位を変態させるのに必要な時間に合わせて、決定する必要がある。そこで、前記据込み試験後の硬さ及び組織調査の際には、据込み加工した際に最も歪が小さくなることがわかっている試験片中心の表面付近(表面から0.5mm)に評価位置を固定して、実施した。
また、硬さを低く抑えることができても異常粒成長が生じた場合には、Nb添加の意味がなくなってしまうため、異常粒成長の評価についても同時に実施した。その評価は、実際の浸炭処理で異常粒成長が起きるかどうかをシミュレートするために、前記した据込み加工後の試験片を1030℃の温度で2時間加熱保持する熱処理を施した。そして、各試験片を光学顕微鏡(倍率は100倍)によってランダムに10視野観察し、観察した範囲内で他の領域に比べ3以上大きく粒成長した領域が20%以上存在する場合に、「混粒」と判断し、異常粒成長有りと判断することとした。なお、結晶粒度の測定は、全てJISG0551の基準に準拠した方法で行った。
なお、この試験では、所定の温度まで加熱し、しばらくの間保持(5分)した後、温度が低下する時間が経過することなく据込み加工しているため、仕上温度は加熱温度とほぼ同一であったため、表1には記載していない。
Figure 0004617783
表1において、試験No.1〜9は、本発明の条件を満足する実施例であり、No.10〜15は一部の製造条件が満足しない比較例、16はNb未添加であるJISのSCM420に1段階のみの温度保持(恒温変態処理)を実施した比較例である。この表で保持温度1、保持時間1と記載されているのは、第1段階目(前半)の保持温度、保持時間であり、保持温度2、保持時間2と記載されているのは、第2段階目(後半)の保持温度、保持時間を意味している。
表1の結果から明らかなように、比較例14〜16に示すように、1段階の温度保持のみでは、Nb未添加のC鋼(試験No.16)の硬さがHV172と軟らかいのに対し、Nb添加鋼であるA、B鋼(試験No.14、15)の硬さはHV230程度とNbの添加によって同じ熱処理をした場合でもHVで60程度硬さが上昇し、機械加工性に悪影響を及ぼすことがわかる。しかしながら、Nb未添加鋼では、高温での浸炭処理で異常粒成長を防止することができず、Nbを添加しても硬さを低くできる製造条件を見出す必要があることがわかる。
これに対し、本発明を満足する実施例である試験No.1〜9の結果をみると、Nb添加鋼であっても、温度保持を2段階に分け、後半の温度保持で若干高めの温度で処理することにより、試験No.14、15の結果に比べHVで20〜40程度硬さを低減し、Nb未添加鋼の1段階処理(試験No.16)とほぼ同程度の硬さに低減することが可能になることがわかる。
また、試験No.10〜13の比較例から明らかなように、異常粒成長を防止しつつ硬さを低減するには、本発明で規定している範囲で製造する必要があり、部分的に条件がはずれても、満足できる結果が得られないことがわかる。すなわち、No.10は、据込み前の加熱温度が低いため、硬さは問題ないが、鋼中のNb(C、N)の固溶が不十分となって、温度保持中のNb(C、N)の微細析出が不十分となり、異常粒成長を防止できなかったものであり、No.11、13は、保持温度1の設定温度は適切でなかったため、フェライトパーライト変態が保持時間1hrの間に完全に終了せず、その後の冷却でベイナイトが生成して硬さが大きく上昇するとともに、異常粒成長が生じたものであり、No.12は、保持時間が短すぎたため、フェライトパーライト変態が完全に終了しないうちに冷却され、No.11、13と同様の理由でベイナイトが生成して、異常粒成長が生じたものである。
この結果より、鍛造後の温度保持を2段階に分け、前半をフェライトパーライト変態重視の温度条件とし、後半を硬さを低くすることを重視して温度を高めに設定することによって、Nb鋼の結晶粒粗大化防止効果をそのまま維持しつつ、硬さを低く調整でき、加工性の優れた鍛造部品の製造が可能になることがわかる。
以上の結果より、小型の試験片にてその効果を確かめることができたので、実際の生産設備を利用して、前記A鋼に相当する鋼について、試験No.1に相当する条件で鍛造部品の試作テストを実施した。その結果、表1に示した条件と同様の効果が得られることが確認できた。
以上説明した通り、本発明は、Nb添加鋼について、鍛造後の温度保持による恒温変態処理を2段階に分け、1段階目より2段階目の設定温度を高めとすることにより、フェライトパーライト変態を確実に進行させつつ、低い硬さを得ることができ、優れた加工性を確保できるとともに、温度保持によりNb(C、N)を微細析出させているので、高温浸炭処理しても結晶粒粗大化しにくい鍛造部品を得ることができる。
従って、浸炭し使用される熱間鍛造部品の製造を大きく効率化することが可能となり、産業への貢献は極めて大きいものである。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.30〜1.50%、Cr:0.30〜2.00%、Al:0.005〜0.050%、Nb:0.01〜0.10%、N:0.0080〜0.0250%、V:0.01%以下を含有し、残部がFe及び不純物元素からなる熱間圧延鋼材を、1150〜1350℃に加熱後、鍛造仕上温度が1100〜1300℃となる条件で熱間鍛造して、鋼中に含有するNb(C、N)が固溶した状態(析出個数で0.3個/μm2以下)とし、鍛造後表面温度が600〜700℃となるまで冷却した時点で炉内温度が620〜670℃に設定されている熱処理炉内に投入して30分〜3時間保持し、その後前記炉内温度に比べ10〜100℃高く、かつ680〜750℃の範囲内の温度に設定された熱処理炉内に投入してさらに15〜60分保持し、室温まで冷却することを特徴とする高温浸炭用熱間鍛造部品の製造方法。
  2. 請求項1の製造方法で使用する鋼に含有するFeの一部に代えて、質量%でさらにMo:0.80%以下を含有する熱間圧延鋼材に、請求項1記載の製造方法を施すことを特徴とする高温浸炭用熱間鍛造部品の製造方法。
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