JP5990428B2 - 転動疲労特性に優れた軸受用鋼材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、接触面圧が高く、また外力が変動するような過酷環境下で使用されるころ軸受、玉軸受、転がり軸受け等の内・外輪や転動体に適用される軸受用鋼材、およびこのような軸受用鋼材を製造するための方法に関するものであり、特に上記部材として用いたときに、優れた転動疲労特性を発揮する軸受用鋼材、およびこのような軸受用鋼材を製造するための有用な方法等に関するものである。
軸受部品は、機械類の回転部や摺動部を支持する重要な部品であり、接触面圧が相当高く、また外力が変動することもあり、使用される環境が過酷である場合が多く、その素材である鋼材には、優れた転動疲労特性が要求される。近年、こうした要求は機械類の高性能化や軽量化が進められるに伴い、年々厳しいものとなっている。軸受部品の耐久性向上には、潤滑性に関する技術の改善も重要であるが、鋼材が転動疲労特性に優れていることが特に重要な要件となる。
軸受部品に用いられる鋼材としては、従来からJIS G 4805(1999)に規定されるSUJ2等の高炭素クロム軸受用鋼材が、自動車や各種産業機械等の種々の分野で用いられている軸受部品の材料として使用されている。軸受部品は、接触面圧が非常に高く、外力が変動するようなころ軸受、玉軸受、転がり軸受け等の内・外輪や転動体等、過酷な環境で用いられるため、軸受用鋼材製造時に不可避的に混入する非金属介在物を起点に疲労破壊が生じ易い。
こうしたことから、鋼材中のO(酸素)量を低減し、非金属介在物を低減することによって、鋼材の転動疲労寿命を向上させる方策がとられてきた。しかし、非金属介在物の少ない軸受用鋼材を製造するには、高価な溶製設備の設置、または従来設備の改良が必要であり、経済的負担が大きいという問題があった。
こうした状況の下で、これまでにも様々なものが提案されている。例えば特許文献1には、被削性および冷間加工性に優れる軸受用鋼材とその焼鈍方法に関する技術が提案されている。この技術では、球状化処理で加熱する段階で、715〜760℃の温度範囲を7℃/時以下の加熱速度で徐々に加熱することよって、ラメラーの分断を抑制し、球状炭化物を粗大化するものである。即ち、この技術では、球状化焼鈍の加熱の途中で徐熱することにより、球状炭化物を積極的に粗大化させ、冷間加工性を向上させている。しかしながら、こうした技術では、球状炭化物が粗大化しているために、良好な転動疲労特性を発揮することはできないことが予想される。
また特許文献2には、棒鋼線材の球状化焼鈍方法に関する技術が開示されている。この技術では、球状化処理する際に、第一保定温度をAc1−100℃〜Ac1とし、第二保定温度をAc1+5℃〜Acm−5℃とし、第三保定温度をAr−5℃〜Ar1−50℃とし、昇温途中に第一保定温度でいったん保定し、更に第二保定温度で加熱保持後、Ar1〜Ar1−70℃の温度範囲を特定の冷却速度で徐冷するか、第三保定温度で特定時間保定することを特徴としている。
この技術においては、第一保定温度は、セメンタイト中に第三元素を適量濃縮することによりセメンタイトを安定化し、第二保定温度で完全に固溶させないようにすることで球状化組織を得て軟質化を達成している。そのために、第一保定温度での保持時間が30〜120分と規定されている。しかしながら、このような条件で製造された鋼材においては、必ずしも良好な転動疲労特性が発揮されるとは限らない。
特許文献3では、伸線性に優れた軸受鋼線およびその製造方法に関する技術が開示されている。この技術では、780〜825℃の保持温度から(Ar1−10℃)〜(Ar1+20℃)の温度範囲を、30℃/時以上の冷却速度で冷却する工程(急冷工程)と、(Ar1−10℃)〜(Ar1+20℃)から650〜720℃の範囲を、18℃/時以下の冷却速度で冷却する工程(徐冷工程)を行う球状化焼鈍に特徴がある。即ち、急冷と徐冷を組み合わせて球状化焼鈍を行うことによって、球状化焼鈍後のセメンタイトの平均円相当径を0.3〜0.7μmで、且つ標準偏差が0.35μm以下の球状化組織を得るものである。しかしながら、この技術においても、良好な転動疲労特性が発揮されるとは限らない。
一方、特許文献4では、疲労特性に優れた軸受用鋼部品に関する技術が開示されている。この技術では、旧オーステナイト粒径を0.35μm以下と非常に微細にして、疲労特性を向上させることに特徴がある。また、あわせて焼入れ前の鋼組織で平均粒子径が0.35〜0.55μmの球状炭化物を有することが記載されている。しかしながら、この技術においても、良好な転動疲労特性が発揮されるとは限らない。
特開平9−227991号公報 特開平4−333527号公報 特開2007−224410号公報 特開2008−88478号公報
本発明はこうした状況の下でなされたものであって、その目的は、新たな設備を導入することなく、良好な転動疲労特性を得ることができる軸受用鋼材、およびこのような軸受用鋼材を製造するための有用な方法等を提供することにある。
本発明に係る転動疲労特性に優れた軸受用鋼材とは、C:0.60〜1.40%(質量%の意味、化学成分組成について、以下同じ)、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.10〜1.0%、P:0.05%以下(0%を含まない)、S:0.05%以下(0%を含まない)、Al:0.005〜0.05%、N:0.02%以下(0%を含まない)、およびCr:0.50〜2.0%、を夫々含み、残部が鉄および不可避不純物からなり、ミクロ組織がフェライトであり、フェライト組織中に含まれる炭化物の平均円相当径が0.30〜0.50μmであると共に、炭化物の円相当径における標準偏差σが0.18μm以下であることを特徴とする。尚、前記「炭化物の平均円相当径」とは、炭化物の粒を同一の面積に換算したときの直径(円相当径)の平均値である。
本発明の軸受用鋼材において、更に(a)Cu:1%以下(0%を含まない)、Ni:1%以下(0%を含まない)およびMo:1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上、(b)Nb:0.5%以下(0%を含まない)、V:0.5%以下(0%を含まない)およびB:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上、等を含有するものであってもよい。
一方、上記目的を達成することのできた本発明の軸受用鋼材の製造方法とは、上記のような化学成分組成を有する鋼材を、600〜690℃の温度範囲で2〜10時間保持し、この温度範囲から750〜890℃の温度範囲へ100〜200℃/時の加熱速度で加熱してこの温度範囲で0.5〜10時間保持し、その後1〜30℃/時の冷却速度で670℃以下まで冷却する球状化焼鈍を行うことを特徴とする。
本発明は、転動寿命に優れた軸受部品の製造方法をも包含し、上記のような化学成分組成を有する鋼材を、600〜690℃の温度範囲で2〜10時間保持し、この温度範囲から750〜890℃の温度範囲へ100〜200℃/時の加熱速度で加熱してこの温度範囲で0.5〜10時間保持し、その後1〜30℃/時の冷却速度で670℃以下まで冷却する球状化焼鈍を施し、更に所定の形状に加工した後、焼入れ焼き戻しを行うことによって転動寿命に優れた軸受部品を製造することができる。
本発明によれば、鋼材の化学成分組成を適切に調整すると共に、ミクロ組織をフェライト組織とし、このフェライト組織中に含まれる炭化物の平均円相当径と、炭化物の円相当径における標準偏差σを適切に制御することによって、従来技術よりも更に転動疲労特性に優れた軸受用鋼材が実現できる。このような軸受用鋼材は、ころ軸受、玉軸受、転がり軸受け等、過酷環境下で使用される軸受部品の素材として極めて有用である。
炭化物の平均円相当径とL10寿命との関係を示すグラフである。 炭化物の円相当径における標準偏差σとL10寿命との関係を示すグラフである。
本発明者らは、接触面圧が高く、また外力が変動するような過酷環境下で使用される軸受部品の転動疲労特性の向上を目指して、特に炭化物の形態制御を中心に検討した。その結果、鋼材の化学成分組成を適切に調整すると共に、球状化焼鈍条件を厳密に規定することによって、炭化物の形態を適切に制御すれば、転動疲労特性が極めて良好になることを見出し、本発明を完成した。
非金属介在物を低減するためには、新たな設備を導入する必要があり、経済的負担が大きくなるばかりか、接触面圧が高く外力が変動するような過酷な環境下では、発生する熱により、基地の固溶Cが析出し、基地が軟化する影響が大きくなり、非金属介在物以外の場所からも疲労破壊するため、その効果には限界がある。そこで、非金属介在物以外の観点として転動疲労特性を向上させることができないか検討した。その結果、特に軸受部品において所定量(10〜20面積%程度)の残留オーステナイトを確保することが転動疲労特性の向上にとって有効であることが判明した。
軸受部品において所定量の残留オーステナイトを確保するという観点からすれば、従来技術ではいずれも不十分であり、こうしたことが転動疲労特性を向上できない理由であると考えられた。例えば特許文献1においては、球状炭化物が粗大化しているために、焼入れ焼戻し後に、所望の残留オーステナイトを得ることはできず、良好な転動疲労特性を発揮することはできない。
また特許文献2では、第一保定温度での保持時間が120分以下の場合はパーライトの分断が不十分となり、炭化物がパーライトのままオーステナイト変態に達し、固溶しきれない炭化物はパーライトが分断したままの小さい粒子となって残留する。このため、この鋼材に通常の焼入れ焼戻しを行うと、炭化物の固溶が促進され残留オーステナイト量が増加し過ぎて、所望の残留オーステナイトを得ることは困難である。
特許文献3では、780〜825℃の保持温度から(Ar1−10℃)〜(Ar1+20℃)の温度範囲を、30℃/時以上の冷却速度で冷却した場合には、パーライト部分は微細に球状化し、パーライトコロニーの周囲では、セメンタイトは析出しやすい方向に伸びて大きくなるため、標準偏差σを小さくすることができない。よって、この鋼材に通常の焼入れ焼戻しを行っても、所望の残留オーステナイトを得ることは困難である。
一方、特許文献4では、球状化焼鈍の均熱温度、時間、冷却速度についての記載はあるが、加熱途中の均熱については記載されておらず、焼入れ前の球状炭化物の標準偏差σは0.18μm以下とならないと考えられる。よって、この鋼材に通常の焼入れ焼戻しを行っても、所望の残留オーステナイトを得ることは困難である。
一般に、ギア等では、残留オーステナイトを積極的に活用する方法があり、使用中の繰返し負荷により、マルテンサイト変態を起こして硬化させることによって、亀裂の成長を止める技術が知られている。しかしながら、軸受部品においては、残留オーステナイトは耐久性にとって悪影響を及ぼすと通常考えられているのが実状である。これは、軸受部品の使用中に、繰返し荷重を受けることによって、加工誘起マルテンサイトへ変態することにより部品形状が変化し、応力集中部が発生するためである。
このような実状に鑑み、本発明者らは、軸受部品の耐久性に及ぼす残留オーステナイトの疲労挙動について詳細に検討した。その結果、残留オーステナイトによる耐久性改善は可能であることを見出した。またそのためには、鋼材組織中の残留オーステナイトを10〜20面積%の範囲になるように制限し、その大きさと分布形態を適切に制御し、且つ安定度を著しく高める(残留オーステナイトを安定的なものとする)ことが、耐久性にとって有効であることを明らかにした。
残留オーステナイトが安定的とは、使用過程で繰返し荷重を受けたとしても、マルテンサイトへ容易に変態しないということである。通常の軸受部品に不可避的に存在する残留オーステナイトは不安定であり、繰返し負荷が付与されると、極初期に変態し、応力集中源を発生させ、耐久性を悪化させる。その一方で、従来のものより、(1)微細である、(2)周囲が拘束されている、等の要件を満足する残留オーステナイトでは、変形が生じにくく、マルテンサイト変態が容易に起こらないため安定的になっている。
このような状態で形成させた安定的な残留オーステナイトは、繰返し負荷が付与されても、初期には変態せず、変態を遅延させることができることを明らかにした。また加工誘起変態した後も、繰返し負荷によって残留オーステナイトの周囲に導入されたひずみとなじむため、形状変化を最小に抑制することができる。
そして、軸受部品において上記のような特性を有する残留オーステナイトを適正に分布させるための要件について更に検討した。その結果、球状化焼鈍において、球状炭化物を微細にし、且つ大きさを均一とした軸受用鋼材を焼入れ焼戻しすることにより、上記のような残留オーステナイトが得られることが判明した。
焼入れを行った際は、球状炭化物はその一部が基地に溶出し、残留した球状炭化物の周囲にはCの濃化部が形成される。通常の球状化条件で処理した鋼材では、球状炭化物の大きさ(円相当径)が1〜2μm程度で範囲であり、標準偏差σが0.3μm以上で分布している。大きな球状炭化物が多数存在する場合には、Cの濃化部は球状炭化物周囲にのみに大きく形成されるため、残留オーステナイトが粗大化する。また、小さいものに比べてCの溶出量が減少し、母相のC量が減少することにより軟化し、拘束力も弱くなる。
こうした知見に基づき、本発明者らが残留オーステナイトを適正に分布させるための要件を検討した結果、球状化組織を(1)炭化物の平均円相当径:0.30〜0.50μm、(2)炭化物の円相当径の標準偏差σ:0.18μm以下、とすることにより、焼入れ焼戻し後に所望の残留オーステナイトを確保し、耐久性に優れた軸受部品を製造できる転動疲労特性に優れた軸受用鋼材を発明するに至った。本発明で規定する炭化物の形態について説明する。
[球状化処理後の炭化物の平均円相当径が0.30〜0.50μm]
球状炭化物の一部が焼入れ時に溶出し、その周囲に残留オーステナイトが生成される。通常の焼入れ焼戻しを行った後の残留オーステナイト量を10〜20面積%に制限し、安定度を高めるためには、球状炭化物の平均円相当径を適切に制御する必要がある。炭化物の平均円相当径が0.30μmよりも小さくなると、焼入れ時に球状炭化物の溶出が促進されすぎて残留オーステナイト量が増加し、耐久性に対して悪影響を及ぼす。一方、炭化物の平均円相当径が0.50μmよりも大きくなると、球状炭化物の周囲にのみCの濃化部が形成させるため、残留オーステナイトが粗大化し、且つ溶出量が減少して母相のC量が減少することによって軟化し、拘束力が弱くなるため、安定度が高い残留オーステナイトを得ることができない。尚、本発明で対象とする炭化物とは、炭化物形成元素と炭素が結合した全ての炭化物[例えば、(Fe,Cr)3C、(Fe,Cr)7C等]が含まれる。
[球状化処理後の炭化物の円相当径の標準偏差σ:0.18μm以下]
本発明の軸受用鋼材では、球状炭化物の円相当径の標準偏差σを0.18μm以下に制御することが重要な要件となる。この標準偏差σが0.18μmを超えて炭化物が分布している場合、微細な炭化物と粗大な炭化物が混在することになる。微細な炭化物は、一部または全部が基地へ固溶し、残留オーステナイト量を増加させ、転動疲労特性に悪影響を及ぼす。一方、粗大な炭化物では、微細で安定度の高い残留オーステナイトを得ることができない。即ち、球状炭化物の円相当径の標準偏差σが0.18μm以下に制御することが、微細で安定度の高い残留オーステナイトを得る上で重要な要件である。
本発明の軸受用鋼材のミクロ組織は、基本的にはフェライトであるが、フェライト組織には、1面積%程度までの少量の他の組織(例えばマルテンサイトやオーステナイト)が含まれることは許容できる。
本発明の軸受用鋼材は、軸受用鋼材としての基本成分を満足させるために、その化学成分組成も適切に調整する必要がある。こうした観点から、鋼材の化学成分組成の範囲設定理由は次の通りである。
[C:0.60〜1.40%]
Cは、基地に固溶して、マルテンサイト粒を強化するため、焼入れ焼戻し後の軸受部品の強度を確保するために有効な元素である。また、球状化焼鈍後において、本発明の鋼材で重要な球状炭化物を形成する元素である。焼入れ時に、この炭化物の一部が基地に固溶してマルテンサイト変態開始温度(Ms点)を低下させ、残留オーステナイトを形成する。軸受部品において、強度と所望の残留オーステナイトを得ることができる球状化組織を得るためには、Cは0.60%以上含有させる必要がある。しかしながら、C含有量が1.40%を超えて過剰になると、溶湯の鋳造後に大型の炭化物を生成し、続く圧延加工中に割れを生じやすくなる。C含有量の好ましい下限は0.7%以上(より好ましくは0.8%以上)であり、好ましい上限は1.3%以下(より好ましくは1.2%以下)である。
[Si:0.05〜0.5%]
Siは、マトリックスの固溶強化および焼入れ性を向上させるために有用な元素である。こうした効果を有効に発揮させるためには、Si含有量は、0.05%以上とする必要がある。しかしながら、Si含有量が過剰になって0.5%を超えると、加工性や被削性が著しく低下する。Si含有量の好ましい下限は0.07%以上(より好ましくは0.1%以上)であり、好ましい上限は0.4%以下(より好ましくは0.3%以下)である。
[Mn:0.10〜1.0%]
Mnは、鋼材マトリックスの固溶強化および焼入れ性を向上させるために有用な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Mnは0.10%以上含有させる必要がある。しかしながら、Mn含有量が多くなり過ぎると加工性や被削性が著しく低下するので、1.0%以下に抑えるべきである。Mn含有量の好ましい下限は0.15%以上(より好ましくは0.20%以上)であり、好ましい上限は0.9%以下(より好ましくは0.8%以下)である。
[P:0.05%以下(0%を含まない)]
Pは、不可避的に不純物として含有する元素であり、粒界に偏析し、加工性を低下させるため極力低減することが望ましい。しかしながら、Pを極端に低減することは製鋼コストの増大を招くことになる。こうしたことから、P含有量は0.05%以下に抑制する必要がある。好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下とするのが良い。尚、Pは鋼材に不可避的に含まれる不純物であり、その量を0%にすることは、工業生産上、困難である。
[S:0.05%以下(0%を含まない)]
Sは、不可避的に不純物として含有する元素であり、MnSとして析出し、転動疲労寿命を低下させるため極力低減することが望ましい。しかしながら、Sを極端に低減することは製鋼コストの増大を招くことになる。こうしたことから、S含有量は、0.05%以下とした。好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下とするのが良い。尚、Sは鋼材に不可避的に含まれる不純物であり、その量を0%にすることは、工業生産上、困難である。
[Al:0.005〜0.05%]
Alは、強度の脱酸作用を有すると共に、Nと化合して窒化物を形成して結晶粒を微細化する元素である。こうした効果を発揮させるためには、Alは0.005%以上含有させる必要がある。但し、Alを0.05%を超えて含有させてもその効果は飽和するので、上限を0.05%とした。尚、Al含有量の好ましい下限は0.007%以上(より好ましくは0.01%以上)であり、好ましい上限は0.04%以下(より好ましくは0.03%以下)である。
[N:0.02%以下(0%を含まない)]
Nは、Alと窒化物を形成してオーステナイト結晶粒の成長を抑制する元素である。こうした効果はその含有量が増加するにつれて大きくなるが、Nが過剰に含有されると窒化物が硬質の析出物となって転動疲労破壊の起点となるため、その上限を0.02%以下とした。好ましくは0.015%以下、より好ましくは0.010%以下とするのが良い。
[Cr:0.50〜2.0%]
Crは、Cと反応して炭化物を形成し、更にオーステナイト中の炭化物を安定化させて炭化物の球状化を促進するのに有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Cr含有量は、0.50%以上とする必要がある。しかしながら、Cr含有量が過剰になって2.0%を超えると、粗大な炭化物が生成し、転動疲労特性を悪化させる。Cr含有量の好ましい下限は0.8%以上(より好ましくは1.2%以上)であり、好ましい上限は1.8%以下(より好ましくは1.6%以下)である。
本発明で規定する含有元素は上記の通りであって、残部は鉄および不可避不純物であり、該不可避不純物として、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素(例えば、As,H,Ti,O等)の混入が許容され得る。また必要によって、更に(a)Cu:1%以下(0%を含まない)、Ni:1%以下(0%を含まない)およびMo:1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上、(b)Nb:0.5%以下(0%を含まない)、V:0.5%以下(0%を含まない)およびB:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上、等を含有するものであってもよい。これらの元素の種類に応じて、鋼材の特性が更に改善される。
[Cu:1%以下(0%を含まない)、Ni:1%以下(0%を含まない)およびMo:1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上]
Cu,NiおよびMoは、いずれも母相の焼入れ性向上元素として作用し、硬さを高めて転動疲労特性の向上に寄与する元素である。しかしながら、過剰に含有されると加工性が劣化するので、いずれも1%以下とすることが好ましい。上記効果を発揮させるためには、いずれも0.01%以上含有させることが好ましい。尚、これらの元素のより好ましい下限は、いずれも0.03%以上(更に好ましくは0.05%以上)であり、より好ましい上限は0.8%以下(より好ましくは0.6%以下)である。
[Nb:0.5%以下(0%を含まない)、V:0.5%以下(0%を含まない)およびB:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上]
Nb,VおよびBは、いずれもNと結合することで窒素化合物を形成し、結晶粒を整粒化して、転動疲労寿命を向上させる上で有効な元素である。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて大きくなるが、過剰に含有されると結晶粒が微細化し、不完全焼入れ相が生成しやすくなるので、NbおよびVで0.5%以下、Bで0.01%以下とすることが好ましい。上記効果を発揮させるためには、NbおよびVで0.01%以上、Bで0.0001%以上含有させることが好ましい。尚、これらの元素のより好ましい下限は、NbおよびVで0.03%以上、Bで0.0005%以上であり、より好ましい上限は、NbおよびVで0.3%以下(更に好ましくは0.1%以下)、Bで0.003%以下(更に好ましくは0.001%以下)である。
上記のような化学成分組成の鋼材を通常の圧延処理を行った後には、初析セメンタイトを含むパーライト組織となっている。また炭化物は、加熱時に分断され、均熱時にオーステナイトへの固溶と球状化、冷却時の成長を経て球状化組織となる。球状炭化物の大きさと標準偏差σを適切な範囲に制御するためには、球状化焼鈍条件を適切に制御する必要がある。こうした観点から、(1)600〜690℃で2〜10時間保持、(2)(1)の温度範囲から750〜890℃の温度範囲へ100〜200℃/時の加熱速度で加熱、(3)750〜890℃の温度範囲で0.5〜10時間保持、(4)1〜30℃/時の冷却速度で670℃以下まで冷却する工程を順次行う球状化焼鈍を施すことによって、球状炭化物の形態を上記のように制御することができる。各工程を設定した理由は下記の通りである。
[600〜690℃で2〜10時間保持(1段目均熱)]
炭化物は欠陥を基にして、600〜690℃の温度範囲で分断が始まる。600〜690℃で2〜10時間加熱保持することによって、炭化物の分断を行い、球状炭化物の核を均一に残存させることができる。このときの温度が600℃未満、または保持時間が2時間未満では、炭化物の分断が十分に行われず、次いで行われる加熱で、炭化物が初析セメンタイトとパーライトのままオーステナイト変態に達し、固溶しきれない初析セメンタイトは大きい粒子として、パーライトは極めて小さい粒子となって残留するため、均一な球状炭化物の核を得ることができない。一方、温度が690℃を超えたり、または保持時間が10時間を超えると、分断した炭化物の一部が結合し、微細な炭化物の中に粗大な炭化物が生成し、所望の球状炭化物を得ることができない。尚、保持温度の好ましい下限は620℃以上であり、好ましい上限は680℃以下である。また保持時間の好ましい下限は4時間以上であり、好ましい上限は8時間以下である。
[1段目均熱から750〜890℃の温度範囲へ100〜200℃/時の加熱速度で加熱]
1段目の均熱からオーステナイト変態までの温度領域は、1段目の均熱で分断した炭化物の結合が著しいため、できるだけ急速に加熱する必要がある。このときの加熱速度が100℃/時未満では、1段目の均熱で分断したパーライトの一部が結合、または成長し、微細な炭化物の中に粗大な炭化物が生成してしまうため、所望の球状炭化物を得ることができない。一方、加熱速度が200℃/時よりも速く急加熱しても、炭化物の結合を抑制する効果は飽和するばかりか、加熱するための炉への負荷が大きくなり、設備寿命が短くなるため、その上限を200℃/時とする。尚、加熱速度の好ましい下限は120℃/時以上であり、好ましい上限は180℃/時以下である。
[750〜890℃で0.5〜10時間保持(2段目均熱)]
この温度域では、炭化物はオーステナイトに固溶すると共に球状化する。このときの温度が750℃よりも低くなったり、または保持時間が0.5時間未満では炭化物は球状化しないものとなる。一方、温度が890℃を超えたり、または保持時間が10時間を超えると、炭化物がオーステナイトへ固溶し過ぎるため、次いで行われる冷却過程で再生パーライトが発生し、炭化物は球状化しない。尚、保持温度の好ましい下限は760℃以上であり、好ましい上限は870℃以下である。また保持時間の好ましい下限は2時間以上であり、好ましい上限は8時間以下である。
[2段目均熱から670℃以下までを30℃/時以下の冷却速度で冷却]
この冷却過程では、2段目の均熱でオーステナイトへ固溶したCが析出し、残存している炭化物が成長する。このとき30℃/時よりも速い冷却速度で冷却した場合には、パーライト内部の炭化物は微細に球状化し、パーライトコロニーの周囲で、炭化物は析出しやすい方向に伸びて大きくなるため、所望の球状炭化物を得ることができない。冷却速度の好ましい下限は1℃/時以上、好ましい上限は25℃/時以下である。尚、冷却停止温度については、少なくとも炭化物の析出が完了する670℃以下となればよく、その下限については室温であってもよい。
上記のようにして製造した鋼材に対して、所定の形状に加工した後、焼入れ焼き戻しを行うことによって、所定の残留オーステナイトを確保した軸受部品が製造でき、こうした軸受部品は転動寿命に優れたものとなる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することは勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1、2に示す各種化学成分組成の鋼材(鋼種A〜T、A1〜L1)を加熱炉またはソーキング炉で1100〜1300℃に加熱した後、900〜1200℃で分塊圧延を実施した。その後、900〜1100℃に加熱した後、圧延して直径:70mmの丸棒材を作製した。圧延終了後、室温までを5℃/秒以下の平均冷却速度で冷却して圧延材を得た。
Figure 0005990428
Figure 0005990428
上記圧延材を用い、下記表3、4に示すように、(1)1段目の均熱温度(保持温度1)と時間(保持時間1)、および(2)1段目の加熱保持から2段目の加熱保持までの加熱速度、(3)2段目の均熱温度(保持温度2)と時間(保持時間2)、(4)2段目の均熱から670以下℃以下までの冷却速度、を様々変化させて球状化焼鈍を行った(試験No.1〜56)。
Figure 0005990428
Figure 0005990428
上記球状化焼鈍材について、炭化物の形態(大きさ、標準偏差σ)、転動疲労特性(転動疲労寿命)を、下記の方法によって測定した。
[炭化物の大きさ、標準偏差σの測定]
(a)上記球状化焼鈍を行った鋼材を長手方向に対して垂直に切断した。
(b)その断面が観察できるように樹脂に埋め込み、エメリー紙による研磨、ダイヤモンドバフによる研磨および電解研磨を順次行なって、観察面を鏡面に仕上げた。
(c)ナイタール(3%硝酸エタノール溶液)で腐食した。
(d)試験片(円盤)のD/4(Dは直径)の位置を、走査型顕微鏡(SEM)にて倍率:2000倍(視野:1688μm2)で観察し、4箇所撮影した。
(e)粒子解析ソフト[「粒子解析III for Windows(登録商標) Version3.00 SUMITOMO METAL TECHNOLOGY製」(商品名)]を用いて、フェライト相を白色、炭化物を黒色とし(即ち、2値化し)、各炭化物の大きさから円相当径を算出し、4視野の平均値(算術平均)を求めた(「平均円相当径」として採用)。また、各箇所内での炭化物の円相当径の分布から標準偏差σを計算し、4視野の平均を求めた。
[転動疲労寿命の測定]
上記球状化焼鈍を行った鋼材から、切削により直径:60mm、厚さ:5mmの円盤を切出し、800〜840℃で30〜60分間加熱後、油焼入れを実施し、120〜180℃で60〜180分焼戻し、最終的に仕上げ研磨を施して試験片を得た。
スラスト型転動疲労試験機にて、繰り返し速度:1500rpm、面圧:5.3GPa、中止回数:2×108回の条件にて、各鋼材(試験片)につき転動疲労試験を各16回ずつ実施し、転動疲労寿命(L10寿命:ワイプル確率紙にプロットして得られる累積破損確率10%における疲労破壊までの応力繰り返し数)を評価した。このとき、転動疲労寿命(L10寿命)で1.0×107回(「1.0E+07」と表示)以上を合格基準とした。
これらの測定結果[炭化物の大きさ(平均円相当径)、標準偏差σ、転動疲労特性(L10寿命)]を、組織評価(炭化物の形態の評価)および寿命評価(合格を「○」、不合格を「×」)と共に、下記表5、6に示す。
Figure 0005990428
Figure 0005990428
これらの結果から、次のように考察することができる。即ち、試験No.2、3、6、7、10、11、14、15、18、19、21〜23、25〜44は、本発明で規定する化学成分組成、およびフェライト形態の要件を満たしており、いずれも転動疲労特性が優れていることが分かる。
これに対して、試験No.1、4、5、8、9、12、13、16、17、20、24、45〜56は、本発明で規定する要件のいずれかを満足しない例であり、良好な転動疲労特性が得られていないことが分かる。即ち、試験No.1では、球状化条件の1段目均熱温度(保持温度1)が低いため、炭化物の分断が不十分となり、均一な大きさの炭化物が得られず、転動疲労寿命が低くなっている(4.6×105回)。試験No.4は、球状化条件の1段目均熱温度(保持温度1)が高いため、一度分断した炭化物の一部が再結合し、均一な大きさの炭化物が得られず、転動疲労寿命が低くなっている(9.0×105回)。
試験No.5は、球状化条件の1段目均熱時間(保持時間1)が短いため、炭化物の分断が不十分となり、均一な大きさの炭化物が得られず、転動疲労寿命が低くなっている(4.2×105回)。試験No.8は、球状化条件の1段目均熱時間(保持時間1)が長いため、一度分断した炭化物の一部が再結合し、均一な大きさの炭化物が得られず、転動疲労寿命が低くなっている(2.0×105回)。
試験No.9は、球状化条件の1段目均熱から2段目均熱までの加熱速度が遅いため、一度分断した炭化物の一部が再結合し、均一な大きさの炭化物が得られず、転動疲労寿命が低くなっている(6.0×105回)。試験No.12は、球状化条件の1段目均熱から2段目均熱までの加熱速度が速いため、炭化物が微細化し過ぎ、転動疲労寿命が低くなっている(1.3×106回)。
試験No.13は、球状化条件の2段目の均熱温度(保持温度2)が低すぎるため、炭化物の固溶が不十分となり炭化物が球状化しないため、均一な大きさの炭化物が得られず、転動疲労寿命が低くなっている(1.7×105回)。試験No.16は、球状化条件の2段目均熱温度(保持温度2)が高すぎるため、炭化物が固溶し過ぎ、次いで行われる冷却工程で再生パーライトが発生し、転動疲労寿命が低くなっている(9.8×103回)。
試験No.17は、球状化条件の2段目の均熱時間(保持時間2)が短すぎるため、炭化物の固溶が不十分となり炭化物が球状化しないため、均一な大きさの炭化物が得られず、転動疲労寿命が低くなっている(1.5×105回)。試験No.20は、球状化条件の2段目の均熱時間(保持時間2)が長すぎるため、炭化物が固溶し過ぎ、次いで行われる冷却工程で再生パーライトが発生し、転動疲労寿命が低くなっている(1.6×105回)。試験No.24は、球状化条件の冷却速度が速すぎるため、球状に炭化物が成長しないため、均一な大きさの炭化物を得られず、転動疲労寿命が低くなっている(5.0×105回)。
試験No.45は、Cr含有量が過剰な鋼材(鋼種A1)を用いた例であり、粗大な炭化物が生成するため、転動疲労寿命が低くなっている(7.4×105回)。試験No.46は、Nが過剰な鋼材(鋼種B1)を用いた例であり、AlNが多数析出し、破壊の起点が増加するため、転動疲労寿命が低くなっている(1.2×106回)。
試験No.47、55は、C含有量が過剰な鋼材(鋼種C1、K1)を用いた例であり、粗大な炭化物が生成するため、転動疲労寿命は低くなっている(3.3×105回、1.3×106回)。試験No.48は、Cr含有量が過剰な鋼材(鋼種D1)を用いた例であり、粗大な炭化物が生成するため(標準偏差σが大きくなる)、転動疲労寿命が低くなっている(7.4×105回)。
試験No.49、52は、Cr含有量が不足する鋼材(鋼種E1、H1)を用いた例であり、球状化中にオーステナイト中の炭化物が不安定となって固溶しすぎ、再生パーライトが発生するため、転動疲労寿命が低くなっている(1.3×106回、1.6×106回)。試験No.50は、Mn含有量が不足する鋼材(鋼種F1)を用いた例であり、焼きが十分に入らず、硬さが不足するため、転動疲労寿命が低くなっている(2.0×106回)。
試験No.51は、Al含有量が過剰な鋼材(鋼種G1)を用いた例であり、AlNが多数析出し、破壊の起点が増加するため、転動疲労寿命が低くなっている(2.0×106回)。
試験No.53は、C含有量が不足する鋼材(鋼種I1)を用いた例であり、焼きが十分に入らず、硬さが不足するため、転動疲労寿命が低くなっている(1.2×105回)。試験No.54は、Si含有量が不足する鋼材(鋼種J1)を用いた例であり、焼きが十分に入らず、硬さが不足するため、転動疲労寿命が低くなっている(2.1×106回)。試験No.56は、Mn含有量が過剰な鋼材(鋼種L1)を用いた例であり、MnSが多数析出し、破壊の起点が増加するため、転動疲労寿命が低くなっている(1.9×106回)。
上記のデータに基づき、鋼種Aを用いたときの、炭化物の平均円相当径と転動疲労寿命(L10寿命)の関係を整理して下記表7に示す(試験No.1、5、8、14、18〜20、23、25)。また、下記表7に基づいて、炭化物の平均円相当径と転動疲労寿命(L10寿命)の関係を図1に示す。この結果から明らかなように、炭化物の平均円相径を0.30〜0.50μmの範囲に制御することは、転動疲労寿命(L10寿命)を良好にする(即ち、L10寿命で1.0×107回以上)上で有効であることが分かる。
Figure 0005990428
上記のデータに基づいて、鋼種Aを用いたときの、炭化物の円相当径における標準偏差σと転動疲労寿命(L10寿命)の関係を整理して下記表8に示す(試験No.3、4、9、10、13、14、16、20、23、24)。また、下記表8に基づいて、炭化物の円相当径における標準偏差σと転動疲労寿命(L10寿命)の関係を図2に示す。この結果から明らかなように、炭化物の円相当径における標準偏差σを0.18μm以下にすることは、転動疲労寿命(L10寿命)を良好にする(即ち、L10寿命で1.0×107回以上)上で有効であることが分かる。
Figure 0005990428

Claims (5)

  1. C :0.60〜1.40%(質量%の意味、化学成分組成について、以下同じ)、
    Si:0.05〜0.5%、
    Mn:0.10〜1.0%、
    P :0.05%以下(0%を含まない)、
    S :0.05%以下(0%を含まない)、
    Al:0.005〜0.05%、
    N :0.02%以下(0%を含まない)、および
    Cr:0.50〜2.0%、
    を夫々含み、残部が鉄および不可避不純物からなり、
    ミクロ組織がフェライトであり、フェライト組織中に含まれる炭化物の平均円相当径が0.30〜0.50μmであると共に、炭化物の円相当径における標準偏差σが0.18μm以下であることを特徴とする転動疲労特性に優れた軸受用鋼材。
  2. 更に、Cu:1%以下(0%を含まない)、Ni:1%以下(0%を含まない)およびMo:1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有するものである請求項1に記載の転動疲労特性に優れた軸受用鋼材。
  3. 更に、Nb:0.5%以下(0%を含まない)、V:0.5%以下(0%を含まない)およびB:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有するものである請求項1または2に記載の転動疲労特性に優れた軸受用鋼材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の軸受用鋼材を製造する方法であって、
    前記化学成分組成を有する鋼材を、600〜690℃の温度範囲で2〜10時間保持し、この温度範囲から760〜890℃の温度範囲へ100〜200℃/時の加熱速度で加熱してこの温度範囲で0.5〜10時間保持し、その後1〜30℃/時の冷却速度で670℃以下まで冷却する球状化焼鈍を行うことを特徴とする転動疲労特性に優れた軸受用鋼材の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の軸受用鋼材を更に所定の形状に加工した後、焼入れ焼き戻しを行うことを特徴とする転動寿命に優れた軸受部品の製造方法。
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