JP5406687B2 - 転動疲労寿命に優れた鋼材 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車や各種産業機械等に使用される軸受部品や機械構造用部品に適用される鋼材に関するものであり、特に上記各種部材として用いたときに優れた転動疲労寿命を発揮する鋼材に関するものである。
軸受やクランクシャフト等の部品は、機械類の回転部や摺動部を支持する重要な部品であり、接触面圧が相当高く、また外力が変動することもあり、使用される環境が過酷である場合が多く、その素材である鋼材には、優れた耐久性が要求される。
近年、こうした要求は機械類の高性能化や軽量化が進められるに伴い、年々厳しいものとなっている。軸部品の耐久性向上には、潤滑性に関する技術の改善も重要であるが、鋼材が転動疲労特性に優れていることが特に重要な要件となる。
軸受に用いられる鋼材としては、従来からJIS G 4805(1999)に規定されるSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼が、自動車や各種産業機械等の種々の分野で用いられている軸受の材料として使用されている。しかし軸受は、接触面圧が非常に高い玉軸受やころ軸受等の内・外輪や転動体等、過酷な環境で用いられるため、非常に微細な欠陥(介在物等)から疲労破壊が生じ易いといった問題がある。この問題に対し、転動疲労寿命そのものを高めて上記保守の回数を低減させるべく、軸受用鋼材の改善が試みられている。
例えば特許文献1には、軸受材料において、TiおよびAlの含有量を規定すると共に、球状化焼鈍後に加熱処理を行なうことによって、微細なTi炭化物、Ti炭窒化物、Al窒化物などの量を制御し、旧オーステナイト結晶粒(旧γ結晶粒)を微細化することによって、転動疲労寿命を向上させることが提案されている。
しかしながら、上記の技術では、Ti含有量が0.26%以上と非常に高くなっており、高コストとなるばかりか、加工性が低下するという問題がある。また、鋳造時に粗大なTiNが生成しやすく、この析出物の生成によって疲労寿命にバラツキが生じることがある。一方、Alの含有量についても0.11%以上となっており、鋳造時および圧延時に生成するAl系窒素化合物によって、割れや傷の発生等があり、製造性が悪くなるという問題がある。
特許第3591236号公報
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、製造性を悪化させることなく、転動疲労寿命を更に向上させることのできる鋼材を提供することにある。
上記目的を達成することのできた本発明に係る鋼材とは、C:0.65〜1.30%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.1〜2.00%、P:0.050%以下(0%を含まない)、S:0.050%以下(0%を含まない)、Cr:0.15〜2.00%、Al:0.010〜0.100%、N:0.025%以下(0%を含まない)、Ti:0.015%以下(0%を含まない)およびO:0.0025%以下(0%を含まない)を夫々含み、残部が鉄および不可避不純物からなり、鋼中に分散するAl系窒素化合物の平均円相当直径が25〜200nmであると共に、円相当直径が25〜200nmのAl系窒素化合物の個数密度が1.1個/μm2以上、6.0個/μm2以下である点に要旨を有するものである。
尚、上記「円相当直径」とは、Al系窒素化合物の大きさに着目して、その面積が等しくなるように想定した円の直径を求めたもので、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)の観察面上で認められるAl系窒素化合物のものである。また、本発明で対象とするAl系窒素化合物は、AlNは勿論のこと、Mn,Cr,S,Si等の元素を一部(合計含有量が30%程度まで)に含有するものも含む趣旨である。
本発明の鋼材においては、旧オーステナイトの平均結晶粒度番号が11.5以下であることが好ましく、こうした要件を満足することによって、転動疲労寿命が更に優れたものとなる。
また、本発明の鋼材には、必要によって、更に他の元素として、(a)Cu:0.25%以下(0%を含まない)、Ni:0.25%以下(0%を含まない)およびMo:0.25%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上、(b)Nb:0.5%以下(0%を含まない)、V:0.5%以下(0%を含まない)およびB:0.005%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上、(c)Ca:0.05%以下(0%を含まない)、REM:0.05%以下(0%を含まない)、Mg:0.02%以下(0%を含まない)、Li:0.02%以下(0%を含まない)およびZr:0.2%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上、(d)Pb:0.5%以下(0%を含まない)、Bi:0.5%以下(0%を含まない)およびTe:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上、等を含有させることも有用であり、含有される成分に応じて鋼材の特性が更に改善される。
本発明によれば、化学成分組成を適切に調整すると共に、適度な大きさのAl系窒素化合物を鋼材内に適切に分散させることによって、転動疲労寿命を更に向上させた鋼材が製造性良く実現できるので、こうした鋼材を軸受等に適用したときには、過酷な環境で用いられても優れた転動疲労寿命を発揮できるものとなる。
Al系窒素化合物の個数密度と疲労寿命L10の関係を示すグラフである。 Al系窒素化合物の個数密度と大きさの関係を示すグラフである。 旧γ結晶粒度番号と疲労寿命L10の関係を示すグラフである。 一次冷却速度とAl系窒素化合物の大きさの関係を示すグラフである。
本発明者らは、製造性を悪化させることなく、転動疲労特性(転動疲労寿命)に優れた鋼材の実現を目指して、様々な角度から検討した。そして、鋼材の転動疲労寿命を向上させる上では、下記(A)〜(D)の要件を満足させることが有効であるとの知見が得られた。
(A)Al含有量が少ない割には、微細なAl系窒素化合物を多量に分散させ、その分散強化によって、亀裂の発生・伝播を抑制し、良好な転動疲労寿命が得ることができること、
(B)鋳造および圧延時での割れを抑制するためには、Al系窒素化合物の量(個数密度)と大きさを規定する必要があること、
(C)微細なAl系窒素化合物における分散度合い(個数密度)を達成するためには、鋼中のAlやNの含有量を厳密に制御することが重要であること、および鋼材の製造工程において、熱間圧延後にAl系窒素化合物の析出温度範囲である850〜650℃の温度範囲を除冷した後、冷却速度を速めることが有用であること、
(D)旧オーステナイト(旧γ)の結晶粒が微細過ぎると、焼入れ性が低下するため、不完全焼入れ相が生成しやすくなり、転動疲労寿命が低下する傾向にあること。
本発明者らは、上記知見に基づき、鋼材の転動疲労寿命を向上させるべく、更に鋭意研究を重ねた。その結果、鋼材中のAlやN含有量を厳密に規定すると共に、その製造条件を制御し、焼入れ・焼戻し後に鋼中に分散するAl系窒素化合物の平均円相当直径が25〜200nmであると共に、円相当直径が25〜200nmのAl系窒素化合物の個数密度が1.1個/μm2以上、6.0個/μm2以下となるようにすれば、鋼材の転動疲労寿命を著しく向上できることを見出し、本発明を完成した。
本発明の鋼材では、円相当直径が25〜200mのAl系窒素化合物の個数密度を適切に制御することが重要な要件となるが、その分散強化によって、亀裂の発生・伝播を抑制し、良好な転動疲労寿命を達成するものである。そのためには、Al系窒素化合物の大きさも適切に制御する必要があり、この大きさ(平均円相当直径)が25nmよりも小さくなったり、200nmよりも大きくなると、分散強化の効果を発揮することができなくなる。このAl系窒素化合物の大きさは、好ましくは40nm以上(より好ましくは50nm以上)であり、好ましくは150nm以下(より好ましくは125nm以下)である。
円相当直径が25〜200mのAl系窒素化合物の個数密度が1.1個/μm2未満では、分散強化による転動疲労寿命向上効果が有効に発揮されなくなり、6.0個/μm2を超えると、結晶粒が粗大化し、不完全焼入れ相(例えば、微細パーライトやベイナイト相)が生成し、転動疲労寿命が低下することになる。Al系窒素化合物の個数密度は、好ましくは1.5個/μm2以上(より好ましくは2.0個/μm2以上)であり、好ましくは5.0個/μm2以下(より好ましくは4.0個/μm2以下)である。
本発明の鋼材においては、旧オーステナイト(旧γ)の結晶粒も制御することが有効である。旧γの結晶粒度番号が大きいほど(結晶粒が小さいほど)、硬さが向上し、亀裂伝播特性が向上することになるが、結晶粒度番号が大きくなり過ぎると(結晶粒が小さくなり過ぎると)、焼入れ性が低下して不完全焼入れ相が生成しやすくなり、却って転動疲労寿命が低下することになる。こうしたことから、旧γの結晶粒度番号は11.5以下とすることが好ましく、より好ましくは11.0以下(更に好ましくは10.5以下)とするのが良い。
本発明の鋼材は、上記したAlやNの含有量を含め、その化学成分組成(C、Si、Mn、P、S、Cr、Al、N、Ti、O)も適切に調整する必要があるが、これらの成分の範囲限定理由は下記の通りである。
[C::0.65〜1.30%]
Cは、焼入硬さを増大させ、室温、高温における強度を維持して耐摩耗性を付与するために必須の元素である。こうした効果を発揮させるためには、Cは0.65%以上含有させなければならず、好ましくは0.8%以上(より好ましくは0.95%以上)含有させることが望ましい。しかしながら、C含有量が多くなり過ぎると巨大炭化物が生成し易くなり、転動疲労特性に却って悪影響を及ぼす様になるので、C含有量は1.30%以下、好ましくは1.2%以下(より好ましくは1.1%以下)に抑えるべきである。
[Si:0.05〜1.00%]
Siは、マトリックスの固溶強化および焼入れ性を向上させるために有用な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Siは0.05%以上含有させる必要があり、好ましくは0.1%以上(より好ましくは0.15%以上)含有させることが望ましい。しかしながら、Si含有量が多くなり過ぎると加工性や被削性が著しく低下するので、Si含有量は1.00%以下、好ましくは0.9%以下(より好ましくは0.8%以下)に抑えるべきである。
[Mn:0.1〜2.00%]
Mnは、マトリックスの固溶強化および焼入れ性を向上させるために有用な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Mnは0.1%以上含有させる必要があり、好ましくは0.15%以上(より好ましくは0.2%以上)含有させることが望ましい。しかしながら、Mn含有量が多くなり過ぎると加工性や被削性が著しく低下するので、Mn含有量は2.00%以下、好ましくは1.6%以下(より好ましくは1.2%以下)に抑えるべきである。
[P:0.050%以下(0%を含まない)]
Pは、不可避的に不純物として含有する元素であるが、粒界に偏析し、加工性を低下させるため極力低減することが望ましいが、極端に低減することは製鋼コストの増大を招くことになる。こうしたことから、P含有量は、0.050%以下とした。好ましくは0.04%以下(より好ましくは0.03%以下)に低減するのが良い。
[S:0.050%以下(0%を含まない)]
Sは、不可避的に不純物として含有する元素であるが、MnSとして析出し、転動疲労寿命を低下させるため極力低減することが望ましいが、極端に低減することは製鋼コストの増大を招くことになる。こうしたことから、S含有量は、0.050%以下とした。好ましくは0.04%以下(より好ましくは0.03%以下)に低減するのが良い。
[Cr:0.15〜2.00%]
Crは、Cと結びついて炭化物を形成し、耐摩耗性を付与すると共に、焼入性の向上に寄与する元素である。この様な効果を発揮させるには、Cr含有量は0.15%以上とする必要がある。好ましくは0.5%以上(より好ましくは0.9%以上)である。しかし、Cr含有量が過剰になると、粗大な炭化物が生成し、転動疲労寿命が却って低下する。従ってCr量は2.00%以下とする。好ましくは1.8%以下(より好ましくは1.6%以下)である。
[Al:0.010〜0.100%]
Alは、本発明の鋼材において重要な役目を果たす元素であり、Nと結合することによって、Al系窒素化合物として鋼中に微細に分散し、鋼材の転動疲労寿命を向上させる上で重要な元素である。微細なAl系窒素化合物を生成させるためには、少なくとも0.010%以上含有させる必要がある。しかしながら、Al含有量が過剰になって0.100%を超えると、析出するAl系窒素化合物の大きさおよび個数が増加し、鋳造や圧延時に割れや傷が生じやすくなる。また、結晶粒が細かくなり過ぎるため、焼入れ性が低下し、大型部品に適用できず、且つ転動疲労寿命が低下することになる。尚、Al含有量の好ましい下限は、0.013%(より好ましくは0.015%以上)であり、好ましい上限は0.08%(より好ましくは0.05%以下)である。
[N:0.025%以下(0%を含まない)]
Nは上記Alと同様に、本発明の鋼材において重要な役目を果たす元素であり、Al系窒素化合物の微細分散による転動疲労寿命向上効果を発揮させる上で重要な元素である。しかしながら、N含有量が過剰になって0.025%を超えると、析出するAl系窒素化合物の大きさおよび個数密度が増加し、鋳造や圧延時に割れ傷が生じやすくなる。また、結晶粒が細かくなり過ぎるため、焼入れ性が低下し、大型部品に適用できず、且つ転動疲労寿命が低下することになる。N含有量の下限は、Al系窒素化合物を所定量析出できる限り特に限定されず、圧延後の冷却速度や、Nと結合する元素(Ti,V,Nb,B,Zr,Te等)の量およびAl含有量に応じて適宜設定すれば良い。例えば、N含有量が0.0035%以上になると、所定量のAl系窒素化合物を析出させることができる。尚、N含有量の好ましい下限は、0.004%(より好ましくは0.006%以上)であり、好ましい上限は0.020%(より好ましくは0.022%以下)である。
[Ti:0.015%以下(0%を含まない)]
Tiは、鋼中のNと結合してTiNを生成し、転動疲労特性に悪影響を及ぼすばかりでなく、冷間加工性や熱間加工性も害する有害元素であり、極力低減することが望ましいが、極端に低減することは製鋼コストの増大を招くことになる。こうしたことから、Ti含有量は0.015%以下とする必要がある。尚、Ti含有量の好ましい上限は0.01%(より好ましくは0.005%以下)である。
[O:0.0025%以下(0%を含まない)]
Oは、鋼中の不純物の形態に大きな影響を及ぼし、転動疲労特性に悪影響を及ぼすAl23やSiO2等の介在物を形成するため、極力低減することが好ましいが、極端に低減することは製鋼コストの増大を招くことになる。こうしたことから、O含有量は0.0025%以下とする必要がある。尚、O含有量の好ましい上限は0.002%(より好ましくは0.0015%以下)である。
本発明で規定する含有元素は上記の通りであって、残部は鉄および不可避不純物であり、該不可避不純物として、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素の混入が許容され得る。尚、転動疲労寿命を高めるため、下記元素を規定範囲内で積極的に含有させることも可能である。
[Cu:0.25%以下(0%を含まない)、Ni:0.25%以下(0%を含まない)およびMo:0.25%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上]
Cu、NiおよびMoは、いずれも母相の焼入性向上元素として作用し、硬さを高めて転動疲労特性の向上に寄与する元素である。これらの効果は、いずれも0.03%以上含有させることによって有効に発揮される。しかしながら、いずれの含有量も0.25%を超えると加工性が劣化することになる。
[Nb:0.5%以下(0%を含まない)、V:0.5%以下(0%を含まない)およびB:0.005%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上]
Nb、VおよびBは、いずれもNと結合することで、窒素化合物を形成して、結晶粒の整粒化し、転動疲労寿命を向上させる上で有効な元素である。しかしながら、NbまたはVで0.5%を超えると、Bで0.005%を超えると、結晶粒が微細化し、不完全焼入れ相が生成しやすくなる。尚、より好ましい上限はNbおよびVで0.3%(更に好ましくは0.1%以下)、Bで0.003%(更に好ましくは0.001%以下)である。
[Ca:0.05%以下(0%を含まない)、REM:0.05%以下(0%を含まない)、Mg:0.02%以下(0%を含まない)、Li:0.02%以下(0%を含まない)およびZr:0.2%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上]
Ca、REM(希土類元素)、Mg、LiおよびZrは、いずれも酸化物系介在物を球状化させ、転動疲労寿命向上に寄与する元素である。これらの効果は、CaまたはREMで0.0005%以上、Mg、LiまたはZrで0.0001%以上含有させることによって有効に発揮される。しかしながら、過剰に含有させても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できず不経済となるので、夫々上記範囲内とするべきである。尚、より好ましい上限は、CaまたはREMで0.03%(更に好ましくは0.01%以下)、MgまたはLiで0.01%(更に好ましくは0.005%以下)、Zrで0.15%(更に好ましくは0.10%以下)である。
[Pb:0.5%以下(0%を含まない)、Bi:0.5%以下(0%を含まない)およびTe:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上]
Pb、BiおよびTeは、いずれも被削性向上元素である。これらの効果は、Pb、Biで0.01%以上、Teで0.0001%以上含有させることによって有効に発揮される。しかし、Pb、Biの含有量が0.5%を超えるか、Teの含有量が0.1%を超えると、圧延傷の発生等、製造上の問題が生じることになる。尚、より好ましい上限はPbおよびBiで0.3%(更に好ましくは0.2%以下)、Teで0.075%(更に好ましくは0.05%以下)である。
本発明の鋼材において、焼入れ・焼戻し後に鋼中に微細なAl系窒素化合物を分散させるためには、鋼材の製造工程において、上記成分組成を満たす鋳片を用い、圧延後の冷却速度を制御することが重要である。圧延後の冷却過程で析出するAl系窒素化合物は、その後の球状化焼鈍、部品加工、焼入れ・焼戻し過程を経ても同様の状態で残存したままである。そのため、Al系窒素化合物の析出温度範囲である850〜650℃までの温度範囲を、一次冷却速度(平均冷却速度)で0.10〜0.90℃/秒の範囲とし、650℃未満から室温(25℃)までの二次冷却速度(平均冷却速度)を1℃/秒以上で冷却することで、焼入れ・焼戻し後の鋼中でもAl系窒素化合物の平均円相当直径を25〜200nmにすると共に、円相当直径で25〜200nmのAl系窒素化合物を1.1個/μm2以上、6.0個/μm2以下分散させることができる。
上記一次冷却速度が0.10℃/秒未満の冷却では、Al系窒素化合物が粗大化し、0.90℃/秒を超えると、Al系窒素化合物の平均円相当直径が25nm未満となったり、所定の大きさの個数密度が1.1個/μm2未満となり、所望の大きさと個数が得られなくなる。また650℃未満での二次冷却速度を1℃/以上とすることによって、Al系窒素化合物の粗大化を抑制し、その大きさを制御することができる。
本発明の鋼材は、所定の部品形状にされた後焼入れ・焼戻しされて軸受部品等に製造されるものであるが、鋼材段階の形状についてはこうした製造に適用できるような線状・棒状のいずれも含むものであり、そのサイズも、最終製品に応じて適宜決めることができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することは勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1、2に示す各種化学成分組成の鋼材(試験No.1〜51)を加熱炉またはソーキング炉で1100〜1300℃に加熱した後、900〜1200℃で分塊圧延を実施した。その後、900〜1100℃に加熱した後、圧延(圧延を模した鍛造も含む)して、直径:70mmの丸棒材を作製した。圧延終了後、850〜650℃までを様々な平均冷却速度で冷却すると共に(下記表3、4)、650℃未満から室温(25℃)までを1℃/秒の平均冷却速度で冷却して圧延材または鍛造材を得た。
上記圧延材または鍛造材を、795℃(保持時間:6時間)で球状化焼鈍を施した後、切削によって皮削りを行なった。その後、直径:60mm、厚さ:5mmの円盤を切り出し、840℃で30分間加熱後の油焼入れを実施し、160℃で120分間焼戻しを実施した。最終的に仕上げ研磨を施して、表面粗さがRa(算術平均粗さ)で0.04μm以下となる試験片を作製した。
上記で得られた試験片を用い、下記の条件にてAl系窒素化合物の個数、大きさ、旧オーステナイト(旧γ)の結晶粒(結晶粒度番号)を測定すると共に、疲労寿命、割れの有無を評価した。
[Al系窒素化合物の個数、大きさの測定]
Al系窒素化合物の分散状況の確認方法としては、熱処理後の試験片を切断し、この断面を研磨した後、その面にカーボン蒸着を行い、FE−TEM(電界放出型透過型電子顕微鏡)によりレプリカ観察を実施した。この際、TEMのEDX(エネルギー分散型X線検出器)によりAl、Nを含むAl系窒素化合物の成分を特定し、30000倍の倍率にてその視野の観察を行なった。このとき、1視野を16.8μm2とし、任意の3視野について観察し(合計50.4μm2)、粒子解析ソフト[「粒子解析III for Windows. Version3.00 SUMITOMO METAL TECHNOLOGY」(商品名)]を用い、その大きさ(平均円相当直径)、および円相当直径が25〜200nmのAl系窒素化合物の個数(個数はμm2当りに換算:個数密度)を求めた。
[旧オーステナイト(旧γ)の結晶粒(結晶粒度番号)の測定]
熱処理後の試験片を切断し、その断面を研磨した後、旧オーステナイト粒界現出腐食を行ない、表層から150μm深さ位置を4箇所撮影し、JIS G 0551に準じて(標準図に基づく方法)旧オーステナイト粒度測定を実施した。
[疲労寿命の測定]
スラスト型転動疲労試験機にて、繰り返し速度:1500rpm、面圧:5.3GPa、中止回数:2×108回の条件にて、各鋼材(試験片)につき転動疲労試験を各16回ずつ実施し、疲労寿命L10(ワイプル確率紙にプロットして得られる累積破損確率10%における疲労破壊までの応力繰り返し数)を評価した。このとき、疲労寿命L10(L10寿命)で1.0×107回以上を合格基準とした。
[割れの有無の評価]
圧延および鍛造後のサンプル表面を切削し、その表面を目視観察し、3mm以上の傷が認められた場合を割れ有りと判定した。
これらの結果を、製造条件(850〜650℃までの平均冷却速度、二次冷却の有無)と共に、下記表3、4に併記する。
これらの結果から、次のように考察することができる。即ち、試験No.3〜5、8、10、11、14、16〜22、27〜32のものは、本発明で規定する要件(化学成分組成、Al系窒素化合物の大きさ、個数)または好ましい要件(旧γ結晶粒度番号)を満足するものであり、いずれも割れが生じることなく、優れた転動疲労寿命が達成されていることが分かる。
これに対し、試験No.1、2、6、7、9、12、13、15、23〜26、33〜51のものは、本発明で規定する要件のいずれかが外れているため、いずれも転動疲労寿命が低くなっている。
試験No.1、6、15、23、26、33、37のものは、圧延後の冷却条件が適切でないので、Al系窒素化合物の大きさが大きくなり過ぎているものであり(このうち、試験No.23、26、33、37のものは、旧γ結晶粒度番号も外れる)、いずれも転動疲労寿命が低くなっている。
試験No.2、7、9、24、25のものは、冷却速度が速いので、試験No.40のものは、Ti含有量が多くなってTiNを形成するので、いずれもAl系窒素化合物の個数が不足するものであり、試験No.34のものは、Al含有量が本発明で規定する範囲よりも多くなっているので、Al系窒素化合物の個数密度および大きさが過剰となっているものであり、いずれも転動疲労寿命が低くなっている。
試験No.12、13のものは、Al系窒素化合物の個数の個数密度が過剰になっており、また好ましい要件である旧γ結晶粒度番号が本発明で規定する範囲を外れるものでありが、いずれも転動疲労寿命が低くなっている。
試験No.36、37、39、41〜51のものは、本発明で規定する化学成分組成を外れるものであり(試験No.37は上記した要件も外れる)、いずれも転動疲労寿命が低くなっている。
これらのデータに基づいて、Al系窒素化合物(円相当直径が25〜200のAl系窒素化合物)の個数密度と疲労寿命L10の関係を図1に、Al系窒素化合物の個数密度と大きさ(平均円相当直径)の関係を図2に(以上、化学成分的に本発明で規定する範囲を満足するものをプロット)夫々示すが、Al系窒素化合物の個数密度や大きさを適切に制御することによって、優れた疲労寿命L10(転動疲労寿命)が達成されることが分かる。
旧γ結晶粒度番号と疲労寿命L10の関係を図3に示すが、旧γ結晶粒度番号を適切な範囲とすることは、優れた疲労寿命L10(転動疲労寿命)を達成する上で有効な手段であることが分かる。また、一次冷却速度(平均冷却速度)とAl系窒素化合物の大きさ(Al系窒素化合物の平均円相当直径)の関係を図4に示すが、一次冷却速度を適正な範囲に調整することは、Al系窒素化合物の大きさを制御する上で有効であることが分かる。

Claims (6)

  1. C:0.65〜1.30%(質量%の意味、以下同じ)、Si:0.05〜1.00%、Mn:0.1〜2.00%、P:0.050%以下(0%を含まない)、S:0.050%以下(0%を含まない)、Cr:0.15〜2.00%、Al:0.010〜0.100%、N:0.025%以下(0%を含まない)、Ti:0.015%以下(0%を含まない)およびO:0.0025%以下(0%を含まない)を夫々含み、残部が鉄および不可避不純物からなり、鋼中に分散する下記に定義されるAl系窒素化合物の平均円相当直径が25〜200nmであると共に、円相当直径が25〜200nmのAl系窒素化合物の個数密度が1.1個/μm2以上、6.0個/μm2以下であることを特徴とする転動疲労寿命に優れた鋼材。
    Al系窒素化合物:AlN、およびAlNにMn,Cr,SまたはSiを一部(合計含有量が30%まで)に含有する化合物。
  2. 旧オーステナイトの平均結晶粒度番号が11.5以下である請求項1に記載の転動疲労寿命に優れた鋼材。
  3. 更に他の元素として、Cu:0.25%以下(0%を含まない)、Ni:0.25%以下(0%を含まない)およびMo:0.25%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上を含む請求項1または2に記載の転動疲労寿命に優れた鋼材。
  4. 更に他の元素として、Nb:0.5%以下(0%を含まない)、V:0.5%以下(0%を含まない)およびB:0.005%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上を含む請求項1〜3のいずれかに記載の転動疲労寿命に優れた鋼材。
  5. 更に他の元素として、Ca:0.05%以下(0%を含まない)、REM:0.05%以下(0%を含まない)、Mg:0.02%以下(0%を含まない)、Li:0.02%以下(0%を含まない)およびZr:0.2%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上を含む請求項1〜4のいずれかに記載の転動疲労寿命に優れた鋼材。
  6. 更に他の元素として、Pb:0.5%以下(0%を含まない)、Bi:0.5%以下(0%を含まない)およびTe:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上を含む請求項1〜5のいずれかに記載の転動疲労寿命に優れた鋼材。
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