JP2015042766A - 肌焼鋼鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】浸炭部品に、JISで規定されたSCM420Hを素材鋼とする場合と同程度以上の良好な曲げ疲労強度とピッチング強度を確保させることができ、成分コストが低く、熱間および冷間での良好な加工性も具備する肌焼鋼鋼材の提供。【解決手段】C:0.10〜0.24%、Si:0.16〜0.35%、Mn:0.40〜0.94%、S:0.005〜0.050%、Cr:1.65〜1.90%、Al:0.015〜0.060%、N:0.0130〜0.0250%と、残部がFe及び不純物とからなり、〔15≰Mn/S≰150〕、〔0.75≰Cr/(Si+2Mn)≰1.40〕及び〔0.30≰Si?Cr≰0.65〕で、不純物中のP≰0.020%、Ti≰0.005%及びO≰0.0020%であり、熱間加工ままの硬さがHV300以下である肌焼鋼鋼材。Feの一部に代えて、Cu≰0.20%、Ni≰0.20%、Mo≰0.03%、V≰0.20%、Nb≰0..060%、Ca≰0.0050%から選択される1種以上を含有してもよい。【選択図】なし

Description

本発明は、肌焼鋼鋼材に関する。詳しくは、成分コストが低く、しかも、曲げ疲労強度および面疲労強度(ピッチング強度)に優れ、自動車用歯車やシャフトなど浸炭部品の素材として用いるのに好適な肌焼鋼鋼材に関する。
自動車部品、なかでもトランスミッションに用いられる歯車、シャフトなどの部品は、曲げ疲労強度向上およびピッチング強度向上の観点から、一般に、浸炭焼入などの表面硬化処理を行った後、焼戻しを施して製造されている。
なお、上記の「浸炭焼入」は、一般に、素材鋼(生地の鋼)として低炭素の「肌焼鋼」を使用し、Ac3点以上の高温のオーステナイト域でCを侵入・拡散させた後、焼入する処理である。
近年、自動車に、軽量化・高トルク化が要求されている。このため、上記自動車用歯車など浸炭部品には、従来にも増して高い曲げ疲労強度と高いピッチング強度とが必要となっている。なお、本明細書においては、以下「浸炭部品」を「歯車」で代表させて説明する。
肌焼鋼にNi、CrおよびMoなどの合金元素を多量に含有させると、歯車に高い曲げ疲労強度と高いピッチング強度を確保させることができるものの、合金元素増量による成分コストの上昇を招いてしまう。
しかしながら、NiとMoはいずれも、浸炭層の深さおよび芯部(生地)の硬さを大きくする重要な元素であり、焼戻し軟化抵抗を向上させる元素である。しかも、NiとMoはともに非酸化性の元素であるため、ガス浸炭の際に表面に生成する粒界酸化層の深さを増大させることなく浸炭層の焼入性を向上させる効果も有している。
このため、歯車の素材となる「肌焼鋼」には、JIS G 4052(2008)に規定されたSNCM220Hなどの「ニッケルクロムモリブデン鋼」またはSCM420Hなどの「クロムモリブデン鋼」が使用されることが多い。しかしながら、特に近年のNiおよびMoの価格高騰の状況を踏まえて、NiおよびMoの含有量を極力抑えて成分コストが低く、しかも、歯車に高い曲げ疲労強度と高いピッチング強度を具備させることができる肌焼鋼鋼材に対する要望が極めて大きくなっている。
そこで、前記した要望に応えるべく、例えば、特許文献1に、「浸炭及び浸炭窒化処理用高クロム鋼」が提案されている。
具体的には、特許文献1に、質量パーセントで、C:0.10〜0.30%、Si:0.15%以下、Mn:0.90〜1.40%、P:0.015%以下、Cr:1.25〜1.70%、Al:0.010〜0.050%、Nb:0.001〜0.050%、O:0.0015%以下およびN:0.0100〜0.0200%と、必要に応じてさらに、(a)Ni:0.15%以下およびMo:0.10%以下、(b)Ti:0.005〜0.015%、ならびに、(c)S:0.005〜0.035%、Pb:0.01〜0.09%、Bi:0.04〜0.20%、Te:0.002〜0.050%、Zr:0.01〜0.20%およびCa:0.0001〜0.0100%、に示される元素から選択される1種以上と、残部がFeおよび不可避的不純物元素とからなる鋼を1200℃以上に加熱し、仕上温度800℃以上で熱間圧延等の熱間成形を終了後、30℃/分以上の平均冷却速度で600℃以下まで冷却して得たことを特徴とする「浸炭及び浸炭窒化処理用クロム鋼」が開示されている。
特開2001−152284号公報
前述の特許文献1で開示された技術は、Siの含有量を低く抑えて粒界酸化を低減する技術的思想を有するものの、曲げ疲労強度およびピッチング強度の低下を招く粒界酸化層および不完全焼入層(以下、総称して「浸炭異常層」ということがある。)の深さを抑制することについての配慮がなされていない。このため、特許文献1の技術は、必ずしも、歯車、シャフトなどの部品に高い曲げ疲労強度と高いピッチング強度を確保させることができるというものではない。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、その目的は、高価な元素であるNiおよびMoを極力含有しない場合であっても、歯車に対して、JIS G 4052(2008)に規定された「クロムモリブデン鋼」のSCM420Hを素材鋼とする場合と同じ程度あるいはそれを上回る曲げ疲労強度とピッチング強度を確保させることができるとともに、成分コストが低く、しかも、熱間および冷間での圧延や鍛造の際の良好な加工性も具備する肌焼鋼鋼材を提供することである。
本発明者らは、前記した課題を解決するために、種々の検討を行った。その結果、先ず、下記(a)〜(d)の知見を得た。
(a)NiおよびMoを極力含有させることなく、高い曲げ疲労強度と高いピッチング強度を確保するためには、鋼の成分組成を、NiおよびMo含有量低減のために生ずる焼入性の低下を抑止することができるものとする必要がある。
(b)粗大なMnSの生成によって、曲げ疲労強度の低下が生じるので、高い曲げ疲労強度の確保のためには、粗大なMnSの生成を抑制することが必要である。
(c)粗大なMnSは熱間圧延、熱間鍛造などの熱間加工時の割れ、さらには冷間鍛造時の割れの起点となる。このため、熱間加工時の割れおよび冷間鍛造時の割れを抑制するためにも粗大なMnSを極力少なくする必要がある。
(d)粗大なMnSを極力少なくするためには、MnとSの個々の含有量の制御だけではなく、MnとSの含有量バランスを適正化することが必要である。具体的には、式中の元素記号を、その元素の質量%での含有量として、〔Fn1=Mn/S〕の式で表されるFn1について、〔15≦Fn1≦150〕に制御することによって、粗大なMnSの生成を抑制することができる。このため、良好な熱間加工性および冷間鍛造性を確保して熱間加工時および冷間鍛造時の割れを抑制するとともに、高い曲げ疲労強度を確保するためには、MnおよびSの個々の含有量を制御するとともに、それらが前記の関係式を満たすようにする必要がある。
そこでさらに本発明者らは、NiおよびMoの含有量低減に見合う分の焼入性を確保し、しかも、MnとSの含有量とそのバランスを適正化して粗大なMnSの生成を抑制した鋼について、種々の検討を行った。その結果、下記(e)〜(i)の知見を得た。
(e)NiおよびMo含有量低減のために生ずる焼入性低下と粗大なMnSの生成を抑制するだけでは、高い曲げ疲労強度と高いピッチング強度を確保することはできない。焼入性の確保と粗大なMnSの生成の抑制に加えて、浸炭異常層の深さ、つまり、粒界酸化層および不完全焼入層の深さを小さくすることも必要である。
(f)酸化性の元素、なかでも、Cr、SiおよびMnの含有量バランスを適正化することによって浸炭異常層である粒界酸化層および不完全焼入層の深さを小さくすることができる。具体的には、式中の元素記号を、その元素の質量%での含有量として、〔Fn2=Cr/(Si+2Mn)〕の式で表されるFn2について、〔0.75≦Fn2≦1.40〕に制御することによって、浸炭異常層の深さを小さくすることが可能となり、高い曲げ疲労強度と高いピッチング強度を確保することができる。
(g)NiおよびMoの含有量を極力抑えた成分組成の場合に、浸炭焼入後の高温強度すなわち焼戻し軟化抵抗を確保するには、SiとCrの含有量バランスを適正化することが必要である。具体的には、式中の元素記号を、その元素の質量%での含有量として、〔Fn3=Si×Cr〕の式で表されるFn3について、〔0.30≦Fn3≦0.65〕に制御することによって、高い焼戻軟化抵抗が確保できて、高いピッチング強度が得られるので、良好な耐ピッチング性を備えることができる。
(h)高い曲げ疲労強度と高いピッチング強度を確保するためには、ASTM−E45−13のA法に準拠して測定したタイプBおよびタイプDの大型の硬質介在物、つまり、主にAl23系介在物であるタイプBの介在物および主にTiN系介在物であるタイプDの介在物のうちで厚さの大きいもの、を抑制する必要がある。これは、上述したタイプBおよびタイプDの大型の硬質介在物が疲労破壊の起点となるためである。
(i)上記のタイプBおよびタイプDの大型の硬質介在物を抑制するためには、不純物のうちでも特にTiおよびO(酸素)の含有量をそれぞれ、0.005%以下および0.0020%以下に制御する必要がある。また、タイプBおよびタイプDの大型の硬質介在物を抑制するためには、真空溶解炉で溶製するか、転炉で溶製する場合には、二次精錬を繰り返すか、連続鋳造の際に電磁攪拌を行うことが望ましい。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記に示す肌焼鋼鋼材にある。
(1)質量%で、C:0.10〜0.24%、Si:0.16〜0.35%、Mn:0.40〜0.94%、S:0.005〜0.050%、Cr:1.65〜1.90%、Al:0.015〜0.060%およびN:0.0130〜0.0250%と、
残部がFeおよび不純物とからなり、
下記の(1)式、(2)式および(3)式で表されるFn1、Fn2およびFn3が、それぞれ、15≦Fn1≦150、0.75≦Fn2≦1.40および0.30≦Fn3≦0.65であり、
不純物中のP、TiおよびOがそれぞれ、P:0.020%以下、Ti:0.005%以下およびO:0.0020%以下である化学組成を有し、
熱間加工ままの硬さがHV300以下であることを特徴とする、肌焼鋼鋼材。
Fn1=Mn/S・・・(1)、
Fn2=Cr/(Si+2Mn)・・・(2)、
Fn3=Si×Cr・・・(3)。
ただし、(1)式、(2)式および(3)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。
(2)Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下およびMo:0.03%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の肌焼鋼鋼材。
(3)Feの一部に代えて、質量%で、V:0.20%以下およびNb:0.060%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の肌焼鋼鋼材。
(4)Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.0050%以下を含有することを特徴とする上記(1)から(3)までのいずれかに記載の肌焼鋼鋼材。
(5)上記(1)から(4)までのいずれかに記載の化学組成を有し、球状化焼鈍処理した後の硬さがHV180以下であることを特徴とする、肌焼鋼鋼材。
本発明の肌焼鋼鋼材は成分コストが低く、熱間および冷間での圧延や鍛造の際の良好な加工性を有する。しかも、この肌焼鋼鋼材を素材とする浸炭部品は、JIS G 4052(2008)に規定された「クロムモリブデン鋼」のSCM420Hを素材とする浸炭部品と同じ程度あるいはそれを上回る曲げ疲労強度とピッチング強度を具備している。このため、本発明の肌焼鋼鋼材は、軽量化・高トルク化のために高い曲げ疲労強度と高いピッチング強度が要求される自動車用歯車、シャフトなど浸炭部品の素材として用いるのに好適である。
実施例で行った熱間圧縮試験について説明する図で、図中の(a)および(b)はそれぞれ、熱間での圧縮試験前および圧縮試験後の試験片の寸法と形状を模式的に示す図である。図中の寸法の単位は「mm」である。 実施例で用いた切欠付き小野式回転曲げ疲労試験片の粗形状を示す図である。図中の寸法の単位は「mm」である。 実施例で用いたローラーピッチング小ローラー試験片の粗形状を示す図である。図中の寸法の単位は「mm」である。 実施例で用いた冷間加工性評価用の切欠付き試験片の形状を示す図である。図中の寸法の単位は「mm」である。 実施例で用いたローラーピッチング大ローラー試験片の粗形状を示す図である。この図5において、(a)は粗形状のローラーピッチング大ローラー試験片を中心線で半割りにした場合の正面図で、また(b)は中心線における断面図である。図中の寸法の単位は「mm」である。 実施例において、図2および図3に示す試験片に施した「浸炭焼入−焼戻し」のヒートパターンを示す図である。 実施例において、図5に示す試験片に施した「浸炭焼入−焼戻し」のヒートパターンを示す図である。 実施例で用いた切欠付き小野式回転曲げ疲労試験片の仕上形状を示す図である。図中の寸法の単位は「mm」である。 実施例で用いたローラーピッチング小ローラー試験片の仕上形状を示す図である。図中の寸法の単位は「mm」である。 実施例で用いたローラーピッチング大ローラー試験片の仕上形状を示す図である。この図10において、(a)はローラーピッチング大ローラー試験片を中心線で半割りにした場合の正面図で、また(b)は中心線における断面図である。図中の寸法の単位は「mm」である。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、以下の説明における各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
(A)化学組成:
C:0.10〜0.24%
Cは、歯車、シャフトなど浸炭部品の強度確保のために必須の元素であり、0.10%以上の含有量が必要である。しかしながら、Cの含有量が多すぎると硬さが大きくなって被削性の低下を招き、特に、その含有量が0.24%を超えると、硬さ上昇に伴う被削性の低下が著しくなる。したがって、Cの含有量を0.10〜0.24%とした。なお、Cの含有量は、0.13%以上、0.23%以下であることが好ましい。
Si:0.16〜0.35%
Siは、焼入性を向上させる作用および脱酸作用を有する。また、Siは焼戻し軟化に対する抵抗を有し、歯車などの摺動表面が高温にさらされた状況下において、表面の軟化を防ぐ効果がある。これらの効果を得るには、0.16%以上のSiを含有する必要がある。しかしながら、Siは酸化性の元素であるため、その含有量が多くなると、浸炭ガス中に含まれる微量のH2OまたはCO2によってSiが選択酸化され、鋼表面にSi酸化物が生成されるので、浸炭異常層である粒界酸化層および不完全焼入層の深さが大きくなる。そして、浸炭異常層の深さが大きくなると、曲げ疲労強度およびピッチング強度の低下を招く。また、Siの含有量が多くなると、焼戻し軟化に対する抵抗効果が飽和するだけでなく、浸炭性を阻害し、さらに被削性が低下する。特に、Siの含有量が0.35%を超えると、浸炭異常層の深さ増大および浸炭性の阻害による表面硬さ低下によって、曲げ疲労強度およびピッチング強度の低下が著しくなり、被削性の低下も著しくなる。したがって、Siの含有量を0.16〜0.35%とした。Siの含有量は、0.18%以上、0.30%以下であることが好ましい。
なお、Siの含有量は上記の範囲において、前記の(2)式および(3)式で表されるFn2およびFn3が、0.75≦Fn2≦1.40および0.30≦Fn3≦0.65を満たす必要もある。
Mn:0.40〜0.94%
Mnは、焼入性を向上させる作用および脱酸作用を有する。また、Mnは焼戻し軟化を抑制する効果も有する。これらの効果を得るには、0.40%以上のMn含有量が必要である。しかしながら、Mnの含有量が多くなると、硬さが大きくなって被削性の低下を招き、特に、その含有量が0.94%を超えると、硬さ上昇に伴う被削性の低下が著しくなる。しかも、Siと同様に、Mnは酸化性の元素であるため、その含有量が多くなると、鋼表面にMn酸化物が生成されるので、浸炭異常層である粒界酸化層および不完全焼入層の深さが大きくなる。そして、浸炭異常層の深さが大きくなると、曲げ疲労強度およびピッチング強度の低下を招き、特に、Mnの含有量が0.94%を超えると、浸炭異常層の深さ増大による曲げ疲労強度およびピッチング強度の低下が著しくなる。したがって、Mnの含有量を0.40〜0.94%とした。Mnの含有量は、0.50%以上、0.90%以下であることが好ましい。
なお、Mnの含有量は上記の範囲において、前記の(1)式および(2)式で表されるFn1およびFn2が、15≦Fn1≦150および0.75≦Fn2≦1.40も満たす必要がある。
S:0.005〜0.050%
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させる作用がある。この効果を得るには、0.005%以上のSを含有させる必要がある。しかしながら、Sの含有量が0.050%を超えると、粗大なMnSを形成して、熱間加工性、冷間鍛造性および曲げ疲労強度が低下する。したがって、Sの含有量を0.005〜0.050%とした。Sの含有量は、0.010%以上、0.040%以下であることが好ましい。
なお、Sの含有量は上記の範囲において、前記の(1)式で表されるFn1が、15≦Fn1≦150も満たす必要がある。
Cr:1.65〜1.90%
Cr:1.65〜1.90%
Crは、焼入性を向上させる効果を有する。Crは、焼戻し軟化に対する抵抗を有し、歯車、シャフトなど浸炭部品の摺動表面が高温にさらされた状況下において、表面の軟化を防ぐ効果もある。これらの効果を得るには、1.65%以上のCr含有量が必要である。しかしながら、Crの含有量が多くなると、硬さが大きくなって被削性の低下を招き、特に、その含有量が1.90%を超えると、硬さ上昇に伴う被削性の低下が著しくなる。しかも、SiおよびMnと同様に、Crは酸化性の元素であるため、その含有量が多くなると、鋼表面にCr酸化物が生成されるので、浸炭異常層である粒界酸化層および不完全焼入層の深さが大きくなる。そして、浸炭異常層の深さが大きくなると、曲げ疲労強度およびピッチング強度の低下を招き、特に、Crの含有量が1.90%を超えると、浸炭異常層の深さ増大による曲げ疲労強度およびピッチング強度の低下が著しくなる。また、Crは炭化物形成元素であるため、Crの含有量が多くなると浸炭時に結晶粒界に粗大な炭化物を形成し、曲げ疲労強度、ピッチング強度の低下を招く。特に、Crの含有量が1.90%を超えると、粗大炭化物による曲げ疲労強度、ピッチング強度の低下が著しくなる。したがって、Crの含有量を1.65〜1.90%とした。Crの含有量は、1.65%以上、1.85%以下であることが好ましい。
なお、Crの含有量は上記の範囲において、前記の(2)式および(3)式で表されるFn2およびFn3が、0.75≦Fn2≦1.40および0.30≦Fn3≦0.65も満たす必要がある。
Al:0.015〜0.060%
Alは、脱酸作用を有する。また、Alには、Nと結合してAlNを形成し、結晶粒を微細化して鋼を強化する作用もある。しかしながら、Alの含有量が0.015%未満では、前記の効果を得難い。一方、Alの含有量が過剰になると、硬質で粗大なAl23形成による被削性の低下をきたし、さらに、曲げ疲労強度も低下する。特に、Alの含有量が0.060%を超えると、被削性および曲げ疲労強度の低下が著しくなる。したがって、Alの含有量を0.015〜0.060%とした。なお、Alの含有量は、0.020%以上、0.055%以下であることが好ましい。
N:0.0130〜0.0250%
Nは、窒化物を形成することにより結晶粒を微細化させ、曲げ疲労強度を向上させる効果を有する。この効果を得るには、Nを0.0130%以上含有する必要がある。しかしながら、Nの含有量が過剰になると、粗大な窒化物を形成して靱性の低下を招き、特に、その含有量が0.0250%を超えると、靱性の低下および冷間鍛造性の低下が著しくなる。したがって、Nの含有量を0.0130〜0.0250%とした。なお、Nの含有量は、0.0130%以上、0.0200%以下であることが好ましい。
本発明に係る肌焼鋼鋼材は、上述のCからNまでの元素と、残部がFeおよび不純物とからなり、さらに後述するFn1、Fn2およびFn3についての条件を満足し、不純物中のP、TiおよびO(酸素)の含有量を後述する範囲に制限した化学組成を有するものである。
なお、残部としての「Feおよび不純物」における「不純物」とは、鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入するものを指す。
Fn1:15〜150
MnおよびSの含有量が、上述した範囲にあっても、粗大なMnSが生成すると、曲げ疲労強度の低下が生じる。したがって、高い曲げ疲労強度を確保するためには、粗大なMnSの生成を抑制することが必要である。しかも、上記の粗大なMnSは、熱間圧延、熱間鍛造などの熱間加工時の割れおよび冷間鍛造時の割れの起点ともなるので、熱間加工時の割れおよび冷間鍛造時の割れを抑制するためには、粗大なMnSを極力少なくすることが必要である。このためには、MnおよびSの含有量のバランスが重要であり、前記(1)式で表されるFn1を一定範囲内とする必要がある。
Fn1が15より小さい場合には、Sの含有量が過剰となって粗大なMnSの生成が避けられない。一方、Fn1が150より大きい場合には、Mnの含有量が過剰となって中心偏析部において粗大なMnSが生成する。そのため、いずれの場合にも、曲げ疲労強度の低下を招き、しかも、熱間加工時の割れおよび冷間鍛造時の割れを避け難い。したがって、Fn1について、15≦Fn1≦150であることとした。Fn1は、30以上、100以下であることが好ましい。
Fn2:0.75〜1.40
NiおよびMoを極力含有させることなく、高い曲げ疲労強度と高いピッチング強度を具備させるためには、焼入性を確保しつつ、浸炭異常層である粒界酸化層および不完全焼入層の深さを小さくする必要がある。そして、そのためには酸化性の元素のうちで、特に、Cr、SiおよびMnの含有量を前記の範囲にしたうえで、これらの元素の含有量バランスとしての前記(2)式で表されるFn2を0.75〜1.40の範囲内とする必要がある。
Fn2が0.75より小さい場合および1.40より大きい場合にはいずれも、浸炭異常層の深さが大きくなるので、曲げ疲労強度およびピッチング強度が低下してしまう。したがって、Fn2について、0.75≦Fn2≦1.40であることとした。Fn2は、0.8以上、1.3以下であることが好ましい。
Fn3:0.30〜0.65
NiおよびMoを極力含有させることなく、高いピッチング強度を具備させるためには、高温強度すなわち焼戻し軟化抵抗を向上させる必要があり、具体的には、焼戻し軟化抵抗を向上させる元素のうちで、特に、SiおよびCrの含有量を前記の範囲にしたうえで、前記の(3)式で表わされるFn3を0.30〜0.65の範囲内とする必要がある。
Fn3が0.30より小さい場合は、焼戻し軟化抵抗が低く、所望のピッチング強度が得られない。また、Fn3が0.65を超える場合は、焼戻し軟化抵抗の向上効果が飽和するばかりか、浸炭異常層の増加を招く。そのため、Fn3について、0.30≦Fn3≦0.65であることとした。Fn3は、0.30以上、0.60以下であることが好ましい。
さらに、本発明においては、不純物中のP、TiおよびOは、その含有量をそれぞれ、P:0.020%以下、Ti:0.005%以下およびO:0.0020%以下に制限する必要がある。
以下、このことについて説明する。
P:0.020%以下
Pは、鋼に含有される不純物であり、結晶粒界に偏析して鋼を脆化させる。特に、その含有量が0.020%を超えると、脆化の程度が著しくなる。したがって、不純物中のPの含有量を0.020%以下とした。なお、不純物中のPの含有量は0.015%以下とすることが好ましい。
Ti:0.005%以下
Tiは、Nとの親和性が高いので、鋼中のNと結合して硬質で粗大なタイプDの非金属介在物であるTiNを形成し、曲げ疲労強度およびピッチング強度を低下させ、さらに、被削性も低下させてしまう。したがって、不純物中のTiの含有量を0.005%以下とした。
O:0.0020%以下
O(酸素)は、鋼中のSi、Alなどと結合して、酸化物を生成する。酸化物のうちでも、特に、タイプBの非金属介在物であるAl23は硬質であるため、被削性を低下させ、さらに、曲げ疲労強度およびピッチング強度の低下も招く。したがって、不純物中のOの含有量を0.0020%以下とした。なお。不純物中のOの含有量は0.0015%以下とすることが好ましい。
本発明に係る肌焼鋼鋼材は、そのFeの一部に代えて、必要に応じてさらに、下記の〈1〉〜〈3〉に示される元素から選択される1種以上を含有してもよい。
〈1〉Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下およびMo:0.03%以下、
〈2〉V:0.20%以下およびNb:0.060%以下、ならびに
〈3〉Ca:0.0050%以下。
すなわち、さらにより優れた特性を得るために、本発明の肌焼鋼鋼材におけるFeの一部に代えて、前記〈1〉〜〈3〉に示される元素から選択される1種以上を任意元素として含有してもよい。
以下、上記の任意元素の作用効果と、含有量の限定理由について説明する。
〈1〉Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下およびMo:0.03%以下
Cu、NiおよびMoは、いずれも、焼入性を高める作用を有する。このため、より大きな焼入性を得たい場合には以下の範囲で含有してもよい。
Cu:0.20%以下
Cuは、焼入性を高める作用を有するので、さらなる焼入性向上のためにCuを含有させてもよい。しかしながら、Cuは高価な元素であるとともに、含有量が多くなると熱間加工性の低下を招き、特に、0.20%を超えると、熱間加工性の低下が著しくなる。したがって、含有させる場合のCuの量を0.20%以下とした。
一方、前記したCuの効果を安定して得るためには、含有させる場合のCuの量は、0.05%以上とすることが好ましく、0.07%以上とすれば一層好ましい。
Ni:0.20%以下
Niは、焼入性を高める作用を有する。さらに、Niは、靱性を向上させる作用を有し、非酸化性の元素であるため、浸炭時に粒界酸化層の深さを増大させずに鋼表面を強靱化することもできる。このため、これらの効果を得るためにNiを含有させてもよい。しかしながら、Niは高価な元素であり、過度の添加は成分コストの上昇につながり、特に、Niの含有量が0.20%を超えると、コスト上昇が大きくなる。したがって、含有させる場合のNiの量を0.20%以下とした。
一方、前記したNiの効果を安定して得るためには、含有させる場合のNiの量は、0.05%以上とすることが好ましく、0.07%以上とすれば一層好ましい。
Mo:0.03%以下
Moは、焼入性を高める作用を有し、浸炭焼入後の表面硬さ、硬化層深さおよび芯部(生地)の硬さを向上させて、浸炭部品の強度を確保する効果がある。しかも、Moは、非酸化性の元素であるため、浸炭時に粒界酸化層の深さを増大させずに鋼表面を強靱化することができる。このため、これらの効果を得るためにMoを含有させてもよい。しかしながら、Moは高価な元素であり、過度の添加は成分コストの上昇につながり、特に、Moの含有量が0.03%を超えると、コスト上昇が大きくなる。したがって、含有させる場合のMoの量を0.03%以下とした。なお、Moの含有量は0.02%以下とすることが好ましい。
なお、上記のCu、NiおよびMoは、そのうちのいずれか1種のみ、または2種以上の複合で含有させることができる。含有させる場合のこれらの元素の合計量は、0.30%以下とすることが好ましい。
〈2〉V:0.20%以下およびNb:0.060%以下
VおよびNbは、いずれもCおよびNと結合して微細な炭化物、窒化物や炭窒化物を形成して結晶粒を微細化し、曲げ疲労強度およびピッチング強度を向上させる効果を有する。このため、さらなる曲げ疲労強度の向上およびピッチング強度の向上のために以下の範囲で含有してもよい。
V:0.20%以下
Vは、CおよびNと結合して微細な炭化物、窒化物や炭窒化物を形成して結晶粒を微細化し、曲げ疲労強度およびピッチング強度を向上させる効果を有するので、こうした効果を得るためにVを含有させてもよい。しかしながら、Vの含有量が過剰になると熱間延性の低下を招き、特に、その含有量が0.20%を超えると、熱間延性の低下が著しくなって、熱間圧延、熱間鍛造など熱間加工時に表面キズが発生しやすくなる。したがって、含有させる場合のVの量を0.20%以下とした。なお、Vの量は、0.10%以下とすることが好ましい。
一方、前記したVの効果を安定して得るためには、含有させる場合のVの量は、0.05%以上とすることが好ましく、0.07%以上とすれば一層好ましい。
Nb:0.060%以下
Nbは、CおよびNと結合して微細な炭化物、窒化物や炭窒化物を形成して結晶粒を微細化し、曲げ疲労強度およびピッチング強度を向上させる効果を有するので、こうした効果を得るためにNbを含有させてもよい。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると熱間延性の低下を招き、特に、その含有量が0.060%を超えると、熱間延性の低下が著しくなって、熱間圧延、熱間鍛造など熱間加工時に表面キズが発生しやすくなる。したがって、含有させる場合のNbの量を0.060%以下とした。なお、Nbの量は、0.050%以下とすることが好ましい。
一方、前記したNbの効果を安定して得るためには、含有させる場合のNbの量は、0.005%以上とすることが好ましく、0.020%以上とすれば一層好ましい。
なお、上記のVおよびNbは、そのうちのいずれか1種のみ、または2種の複合で含有させることができる。含有させる場合のこれらの元素の合計量は、0.160%以下とすることが好ましい。
〈3〉Ca:0.0050%以下
Caは、被削性を改善する作用を有する。このため、被削性向上のためにCaを含有させてもよい。しかしながら、過度のCa添加は成分コストの上昇につながり、特に、Caの含有量が0.0050%を超えると、被削性向上効果が飽和するのでコストが嵩むばかりであって経済性が損なわれる。しかも、Caの含有量が0.0050%を超える場合には、粗大な酸化物を形成して曲げ疲労強度およびピッチング強度の低下も招く。したがって、含有させる場合のCaの量を0.0050%以下とした。なお、Caの量は、0.0030%以下とすることが好ましい。
一方、前記したCaの効果を安定して得るためには、含有させる場合のCaの量は、0.0003%以上とすることが好ましく、0.0005%以上とすれば一層好ましい。
(B)熱間加工ままの硬さ:
本発明に係る肌焼鋼鋼材を、熱間鍛造または冷間鍛造して所望の部品形状に成型する場合、所定の長さに切断する必要がある。切断はシャーまたは鋸で実施されるが、熱間加工ままの硬さが高い場合、シャーまたは鋸の刃の寿命が低下する。そのため、熱間加工ままの硬さは、HV300以下に制限する必要がある。
例えば、前記(A)項で述べた化学組成を有する肌焼鋼を溶製後、鋳造して得た鋳片または鋼塊を、1150〜1350℃の温度で30〜1200分加熱してから分塊圧延して鋼片とし、次いで、その鋼片を900〜1300℃の温度に20〜200分加熱した後、仕上げ温度を700℃以上として熱間圧延し、熱間圧延終了後、大気中で放冷または徐冷カバーなどで徐冷する条件で冷却して製造すれば、熱間加工ままの硬さを上記の範囲に制御することができる。
なお、より好ましい熱間加工ままの硬さは、HV250以下である。上記のようにして製造した場合、本発明に係る肌焼鋼鋼材の熱間加工ままの硬さの下限はHV130程度となる。
また、本発明に係る肌焼鋼鋼材を製造するに際して、(A)項で述べた化学組成を有する肌焼鋼は、真空溶解炉で溶製するか、転炉で溶製する場合には、二次精錬を繰り返したり連続鋳造の際に電磁攪拌を行うことが好ましい。
(C)球状化焼鈍処理した後の硬さ:
本発明に係る肌焼鋼鋼材は、冷間鍛造して所望の部品形状に成型する場合、球状化焼鈍処理を行って硬さを低くすれば、割れの抑制とともに鍛造荷重を低く抑えることができ、特に、球状化焼鈍処理した後の硬さをHV180以下とすれば、安定して、割れが抑制できるとともに鍛造荷重を低く抑えることができる。
本発明に係る肌焼鋼鋼材の球状化焼鈍処理方法は、特に規定するものではなく、例えば、長時間加熱法、繰返し加熱冷却法、徐冷法および等温変態法から適宜の方法を選択すればよい。
なお、より好ましい球状化焼鈍処理した後の硬さは、HV160以下である。上記適宜の方法で球状化焼鈍すれば、本発明に係る肌焼鋼鋼材の球状化焼鈍処理した後の硬さの下限はHV110程度となる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼1〜20を転炉または真空溶解炉によって溶解し、鋳片またはインゴットを作製した。
具体的には、鋼1および鋼9については、70トン転炉によって溶製後、二次精錬を二回実施して成分調整を行った後、連続鋳造して鋳片を作製した。なお、連続鋳造の際、電磁攪拌の制御を行なって介在物を浮上させ、十分に除去した。
鋼2〜8、鋼10〜17、鋼19および鋼20については、150kg真空溶解炉によって溶製後、造塊してインゴットを作製した。
鋼18については、150kg大気溶解炉によって溶製後、造塊してインゴットを作製した。
なお、表1中の鋼1〜10はいずれも、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。
一方、鋼12は、個々の元素の含有量は本発明で規定する範囲内であるものの、Fn1が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼であり、鋼15は、個々の元素の含有量は本発明で規定する範囲内であるものの、Fn2が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。また、鋼16は、個々の元素の含有量は本発明で規定する範囲内であるものの、Fn2およびFn3が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。さらに、鋼11、鋼13、鋼14および鋼17〜20は、少なくともいずれかの元素の含有量が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。
上記の比較例の鋼のうちで鋼11は、JIS G 4052(2008)に規定されたSCM420Hに相当する鋼である。
Figure 2015042766
鋼1〜8および鋼10〜20については、鋳片またはインゴットから、次の〔1〕および〔2〕に示す工程によって直径が35mmの棒鋼を作製した。また、鋼9については、鋳片から、〔1〕および〔2〕に示す工程によって直径が35mmのバーインコイルを作製した。
〔1〕分塊圧延:
各鋳片は、1250℃で2時間保持した後、分塊圧延して160mm角のビレットを製造した。
〔2〕熱間加工:
上記分塊圧延して製造した160mm角のビレットの表面疵をグラインダーで除去し、1100℃で50分保持した後、鋼1については、熱間圧延して直径が35mmの棒鋼を作製し、また、鋼9については、熱間圧延して直径が35mmのバーインコイルを作製した。
他の鋼については、各インゴットを、1250℃で2時間保持した後、熱間鍛造して直径が35mmの棒鋼を作製した。
前記のようにして得た直径が35mmの棒鋼およびバーインコイルを鋸を用いて横断し、すなわち、長さ方向に対してまたは鍛錬軸に対して垂直に切断し、次いで、切断面が被検面になるように樹脂に埋め込だ後、前記面が鏡面仕上になるように研磨して、熱間加工ままの硬さ測定用の試験片を作製した。
なお、上記の鋸切断は、後述する熱間加工ままの硬さがHV305と、本発明で規定する条件から外れる鋼20の棒鋼を除いて、鋸の刃の寿命低下をきたすことなく行うことができた。
次いで、鋼9のバーインコイルは冷間で棒状に矯正した。以下の説明では、この棒状に矯正したものも「棒鋼」という。
前記のようにして得た直径が35mmの各棒鋼の一部を用いて、760℃で10時間保持し、650℃までを9時間かけて徐冷後、放冷する球状化焼鈍処理を施した。次いで、球状化焼鈍処理した棒鋼を鋸を用いて横断し、切断面が被検面になるように樹脂に埋め込だ後、前記面が鏡面仕上になるように研磨して、球状化焼鈍処理した後の硬さ測定用の試験片を作製した。
また、前記のようにして得た直径が35mmの各棒鋼の残りから、次の〔3〕〜〔6〕に示す工程によって、各種の試験片を作製した。さらに、前記球状化焼鈍処理を施した直径が35mmの各棒鋼および別途準備した直径が140mmのJIS G 4052(2008)に規定されたSCM420Hの棒鋼から、それぞれ〔4〕に示す試験片を切り出した。
〔3〕焼準:
各棒鋼の残りは、920℃で1時間保持した後に大気中で放冷して焼準した。
〔4〕機械加工(粗加工または仕上加工):
前記焼準後の直径が35mmの各棒鋼の中心部から、圧延方向または鍛錬軸に平行に、図1に示す熱間圧縮試験用の試験片、図2に示す粗形状の切欠付き小野式回転曲げ疲労試験片および図3に示すローラーピッチング小ローラー試験片を切り出した。
また、前記球状化焼鈍後の直径が35mmの各棒鋼から図4に示す冷間加工性評価用の試験片を切り出した。
さらに、転炉を用いて溶製したJIS G 4052(2008)に規定されたSCM420Hの鋳片を分塊圧延することにより、直径が140mmの棒鋼を製造し、これを920℃で2時間保持した後に、大気中で放冷して焼準したものから、図5に示すローラーピッチング大ローラー試験片を切り出した。
なお、図1〜5中に示した上記の各切り出し試験片における寸法の単位は全て「mm」であり、図中の3種類の逆三角形の記号は、JIS B 0601(1982)の解説表1に記載されていた表面粗さを示す「仕上記号」である。
また、仕上記号に付した「G」は、JIS B 0122(1978)に規定の「研削」を示す加工方法の略号であることを意味する。
なお、前記焼準後の直径が35mmの各棒鋼のそれぞれの残りの一部は、水焼入した後、非金属介在物調査に供した。なお、調査法の詳細については後述する。
〔5〕浸炭焼入−焼戻し:
上記〔4〕で切り出した切欠付き小野式回転曲げ疲労試験片およびローラーピッチング小ローラー試験片に対して図6に示すヒートパターンによる「浸炭焼入−焼戻し」を施した。また、〔4〕で切り出したローラーピッチング大ローラー試験片に対して、図7に示すヒートパターンによる「浸炭焼入−焼戻し」を施した。
なお、切欠付き小野式回転曲げ疲労試験片およびローラーピッチング小ローラー試験片は、吊り下げ用に加工した孔に針金を通し、吊下げた状態で上記の処理を施した。
図6よび図7中の「Cp」はカーボンポテンシャルを表す。また、「130℃油焼入」は油温130℃の油中に焼入したことを、さらに「AC」は空冷したことを表す。
油焼入については、均一に焼入処理されるように、攪拌している焼入油中に試験片を投入して行った。
〔6〕機械加工(浸炭焼入−焼戻し材の仕上加工):
浸炭焼入−焼戻し処理を施した上記の各試験片を仕上加工して、図8に示す切欠付き小野式回転曲げ疲労試験片、図9に示すローラーピッチング小ローラー試験片および図10に示すローラーピッチング大ローラー試験片を作製した。
なお、図8〜10に示した前述の各試験片における寸法の単位は全て「mm」であり、上記各図における2種類の逆三角形の記号は、JIS B 0601(1982)の解説表1に記載されていた表面粗さを示す「仕上記号」である。
また、仕上記号に付した「G」は、JIS B 0122(1978)に規定の「研削」を示す加工方法の略号であることを意味する。
さらに、図8中の「〜(波ダッシュ)」は「波形記号」であり、生地であること、すなわち、前記〔5〕の浸炭焼入−焼戻し処理した表面のままであることを意味する。
鋼1〜20の各々について、熱間加工ままの硬さ測定、球状化焼鈍処理した後の硬さ測定、熱間圧縮試験による熱間加工性の調査、冷間圧縮試験片による冷間加工性の調査、非金属介在物の調査、表面硬さの調査、芯部硬さの調査、有効硬化層深さの調査、粒界酸化層深さの調査、不完全焼入層深さの調査、小野式回転曲げ疲労試験による曲げ疲労強度の調査およびローラーピッチング試験によるピッチング強度の調査を行った。
以下、上記各調査の内容について詳しく説明する。
《1》熱間加工ままの硬さ測定:
鏡面研磨した熱間加工ままの硬さ測定用の試験片の中心部1点とR/2部(「R」は棒鋼の半径を指す。)4点の計5点のHV(ビッカース硬さ)を、JIS Z 2244(2009)に記載の「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、試験力を98Nとしてビッカース硬さ試験機で測定し、その算術平均値を熱間加工ままの硬さとした。
《2》球状化焼鈍処理した後の硬さ測定:
鏡面研磨した球状化焼鈍処理した後の硬さ測定用の試験片の中心部1点とR/2部4点の計5点のHVを、上記JIS Z 2244(2009)に記載の「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、試験力を98Nとしてビッカース硬さ試験機で測定し、その算術平均値を球状化焼鈍処理した後の硬さとした。
《3》熱間加工性の調査:
前記〔4〕のようにして作製した図1の直径が20mmで長さが30mmの熱間圧縮用の試験片を1200℃で30分保持してから、図1の(a)および(b)に示すように、長さ方向を高さとしてクランクプレスによって圧縮し、高さ3.75mmにした。
図1の(a)および(b)はそれぞれ、熱間での圧縮試験前および圧縮試験後の試験片の寸法と形状を模式的に示す図である。
なお、各鋼について上記クランクプレスを用いた圧縮試験を5個ずつ行ない、外周表面における割れを目視で観察し、開口幅2mm以上の割れが5個全ての試験片に1つも認められない場合に、熱間加工性に優れると評価して、これを目標とした。
《4》冷間加工性の調査:
前記〔4〕のようにして作製した図4の試験片を常温で、長さ方向を高さとして油圧プレスによって圧縮し、切欠部に割れが発生するまで圧縮した。なお、各鋼について油圧プレスを用いた圧縮試験を5個ずつ行ない、切欠部における割れを拡大鏡で観察した。5本の試験片のうち3本以上の試験片で割れが認められる場合の圧縮率を限界圧縮率と定義し、限界圧縮率が50%以上である場合、冷間加工性に優れると評価して、これを目標とした。
《5》非金属介在物の調査:
前記〔3〕のようにして焼準処理した直径が35mmの棒鋼について、図1〜3に示す各粗形状の試験片を切り出した残りを、920℃で30分保持した後、水焼入した。
水焼入後は、棒鋼の長さ方向または鍛錬軸に平行に、その中心線をとおって切断した面(以下、「縦断面」という。)が被検面になるようにして樹脂に埋め込み、次いで、前記の面が鏡面仕上げになるように研磨した。
次いで、ASTM−E45−13のA法に準拠して、タイプBおよびタイプDの非金属介在物のうちで厚さが大きいもの、具体的には、厚さがそれぞれ、4μmを超えて12μm以下、および8μmを超えて13μm以下のものを測定し、それぞれの等級判定を行った。
なお、以下の説明においては、上記の厚さが大きいタイプBおよびタイプDの非金属介在物をそれぞれ、「BH」および「DH」という。
《6》表面硬さおよび芯部硬さの調査:
前記〔5〕のようにして浸炭焼入−焼戻し処理した切欠付き小野式回転曲げ疲労試験片を用いて、その直径8mmの切欠部を横断し、切断面が被検面になるように樹脂に埋め込んだ後、前記面が鏡面仕上げになるように研磨し、マイクロビッカース硬度計を使用して表面硬さおよび芯部硬さを調査した。
具体的には、JIS Z 2244(2009)に記載の「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、試験片の表面から0.03mmの深さ位置における任意の10点でのHVを、試験力を0.98Nとしてマイクロビッカース硬度計で測定し、その値を算術平均して表面硬さを評価した。
同様に上記JISの規定に準拠して、浸炭の影響を受けていない生地の部分である芯部における任意の10点でのHVを、試験力を2.94Nとしてマイクロビッカース硬度計で測定し、その値を算術平均して芯部硬さを評価した。
前記〔5〕のようにして浸炭焼入−焼戻し処理したローラーピッチング小ローラー試験片についても、直径26mmの試験部を横断し、上記の切欠付き小野式回転曲げ疲労試験片を用いた場合と同様の方法で、表面硬さおよび芯部硬さを測定した。
なお、前記〔5〕のようにして浸炭焼入−焼戻し処理したローラーピッチング小ローラー試験片は、さらに、真空炉を用いて300℃で1時間の焼戻し後に水冷する処理を行なった場合についても、上記と同様の方法で表面硬さを測定した。
《7》有効硬化層深さの調査:
前記〔5〕の、浸炭焼入−焼戻し処理しただけで上記《6》の表面硬さおよび芯部硬さの調査に用いた、切欠付き小野式回転曲げ疲労試験片とローラーピッチング小ローラー試験片の樹脂埋めした試験片を使用して、有効硬化層深さの調査を行った。
具体的には、上記《6》の表面硬さの調査の場合と同様に、JIS Z 2244(2009)に記載の「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、鏡面仕上げした試験片の表面から中心に向かう方向について、試験力を2.94Nとしてマイクロビッカース硬度計で測定し、HVが550となる場合の表面からの深さを測定し、任意の10箇所を測った最小値を有効硬化層深さとした。
《8》粒界酸化層深さおよび不完全焼入層深さの調査:
前記《6》および《7》で用いた樹脂埋めした小野式回転曲げ疲労試験片を使用して、粒界酸化層深さおよび不完全焼入層深さの調査を行った。
具体的には、上記の樹脂埋めした試験片を再度研磨し、鏡面仕上げしたままの腐食しない状態で、1000倍の倍率で光学顕微鏡によって試験片の表面部を任意に10視野観察して、表面部において粒界に沿って観察される酸化層を粒界酸化層とし、それらの深さを算術平均して粒界酸化層深さを評価した。
さらに、同じ試験片を、ナイタールで0.2〜2秒腐食し、1000倍の倍率で光学顕微鏡によって試験片の表面部を任意に10視野観察して、表面部において周囲より腐食の程度が顕著な部分を不完全焼入層とし、それらの深さを算術平均して不完全焼入層深さを評価した。
《9》小野式回転曲げ疲労試験による曲げ疲労強度の調査:
前記〔6〕の仕上加工した小野式回転曲げ疲労試験片を用いて、下記の試験条件によって小野式回転曲げ疲労試験を実施し、繰返し数が107回において破断しない最大の強度で曲げ疲労強度を評価した。
・温度:室温、
・雰囲気:大気中、
・回転数:3000rpm。
なお、曲げ疲労強度が、JIS G 4052(2008)に規定されたSCM420Hに相当する鋼である鋼11と同じ程度あるいはそれを上回る場合に、曲げ疲労強度に優れると評価して、これを目標とした。
《10》ローラーピッチング試験によるピッチング強度の調査:
前記〔6〕の仕上加工したローラーピッチング小ローラー試験片およびローラーピッチング大ローラー試験片を用いて、下記の試験条件でローラピッチング試験を実施した。すなわち、ローラーピッチング小ローラー試験片およびローラーピッチング大ローラー試験片を接触させた状態で回転させ、接触部には下記の条件で潤滑油を噴き付けた。繰り返し数107回において、ローラーピッチング小ローラー試験片表面に幅が1mm以上のピッチングが発生しない最大の強度でピッチング強度を評価した。ピッチング強度がJIS G 4052(2008)に規定されたSCM420Hに相当する鋼である鋼11と同じ程度あるいはそれを上回る場合に、ピッチング強度に優れると評価して、これを目標とした。
・すべり率:40%、
・ローラーピッチング小ローラー試験片の回転数:1500rpm、
・潤滑:油温100℃のオートマチックトランスミッション用潤滑油を、2.0リットル/分の割合で、ローラーピッチング小ローラー試験片とローラーピッチング大ローラー試験片の接触部に噴出させて実施。
ただし、上記の「すべり率」は、「V1」をローラーピッチング小ローラー試験片表面の接線速度、「V2」をローラーピッチング大ローラー試験片表面の接線速度として、下記の式で計算される値を指す。
{(V2−V1)/V1}×100。
表2および表3に、上記の各調査結果をまとめて示す。
Figure 2015042766
Figure 2015042766
表2および表3から、本発明で規定する条件を満たす試験番号1〜10の場合、良好な熱間加工性および球状化焼鈍後の良好な冷間加工性を有し、しかも、鋼1〜10は、NiおよびMoの含有量が極めて少ないかまたは含まないにも拘わらず、JIS G 4052(2008)に規定された「クロムモリブデン鋼」のSCM420Hに相当する鋼11を用いた試験番号11の場合と同じ程度あるいはそれを上回る曲げ疲労強度とピッチング強度が得られており、高い曲げ疲労強度と高いピッチング強度の確保が可能なことが明らかである。
これに対して、本発明で規定する条件から外れた比較例の試験番号12〜20の場合、曲げ疲労強度(試験番号12)、または曲げ疲労強度とピッチング強度(試験番号13〜20)が、上記鋼11を用いた試験番号11の場合に比べて劣っている。
試験番号12の場合、鋼12のFn1、つまり〔Mn/S〕が本発明で規定する範囲を下回るため、熱間加工性および冷間加工性が劣っている。また、曲げ疲労強度が480MPaと、試験番号11に比べ低い。
試験番号13の場合、鋼13のFn1、つまり〔Mn/S〕が本発明で規定する範囲を上回っているし、MnおよびPの含有量も本発明で規定する範囲を上回っている。このため、熱間加工性および冷間加工性が劣っている。また、曲げ疲労強度が470MPaおよびピッチング強度が1900MPaと、いずれも試験番号11に比べ低い。
試験番号14の場合、鋼14のFn2、つまり〔Cr/(Si+2Mn)〕が本発明で規定する範囲を下回り、一方、Mnの含有量が本発明で規定する範囲を上回っている。このため、曲げ疲労強度が470MPaおよびピッチング強度が1800MPaと、いずれも試験番号11に比べ低い。
試験番号15の場合、鋼15のFn2、つまり〔Cr/(Si+2Mn)〕が本発明で規定する範囲を上回っている。このため、曲げ疲労強度が465MPaおよびピッチング強度が1850MPaと、いずれも試験番号11に比べ低い。
試験番号16の場合、鋼16のFn2、つまり〔Cr/(Si+2Mn)〕およびFn3、つまり〔Si×Cr〕が本発明で規定する範囲を上回っている。このため、曲げ疲労強度が480MPaおよびピッチング強度が1800MPaと、いずれも試験番号11に比べ低い。
試験番号17の場合、鋼17のSiおよびMnの含有量が本発明で規定する値より低く、Cr含有量が本発明で規定する値より高い。また、Fn2、つまり〔Cr/(Si+2Mn)〕が本発明で規定する範囲を上回り、さらに、Fn3、つまり〔Si×Cr〕が本発明で規定する範囲を下回る。そのため、曲げ疲労強度が440MPaおよびピッチング強度が1800MPaと、いずれも試験番号11に比べ低い。
試験番号18の場合、鋼18のMn、S、OおよびMoの含有量が本発明で規定する値より高く、Cr含有量が本発明で規定する値より低い。また、Fn1、つまり〔Mn/S〕、Fn2、つまり〔Cr/(Si+2Mn)〕およびFn3、つまり〔Si×Cr〕が、いずれも本発明で規定する範囲を下回る。そのため、等級2.5のタイプBの大型の硬質介在物が観察され、また、熱間加工性および冷間加工性が劣っており、さらに、曲げ疲労強度が430MPaおよびピッチング強度が1750MPaと、いずれも試験番号11に比べ低い。
試験番号19の場合、鋼19のTi含有量が本発明で規定する値より高く、Fn3、つまり〔Si×Cr〕が本発明で規定する範囲を下回る。そのため、等級1.5のタイプDの大型の硬質介在物が観察され、また、熱間加工性および冷間加工性が劣っており、さらに、曲げ疲労強度が480MPaおよびピッチング強度が1700MPaと、いずれも試験番号11に比べ低い。
試験番号20の場合、鋼20のC、Si、MnおよびCrの含有量が本発明で規定する値より高い。さらに、Fn1、つまり〔Mn/S〕およびFn3、つまり〔Si×Cr〕も、本発明で規定する範囲を上回り、一方、Fn2、つまり〔Cr/(Si+2Mn)〕が本発明で規定する範囲を下回る。そのため、熱間加工性および冷間加工性に劣り、また、曲げ疲労強度が420MPaおよびピッチング強度が1650MPaと、いずれも試験番号11に比べ低い。
本発明の肌焼鋼鋼材は成分コストが低く、熱間および冷間での圧延や鍛造の際の良好な加工性を有する。しかも、この肌焼鋼鋼材を素材とする浸炭部品は、JIS G 4052(2008)に規定された「クロムモリブデン鋼」のSCM420Hを素材とする浸炭部品と同じ程度あるいはそれを上回る曲げ疲労強度とピッチング強度を具備している。このため、本発明の肌焼鋼鋼材は、軽量化・高トルク化のために高い曲げ疲労強度と高いピッチング強度が要求される自動車用歯車、シャフトなど浸炭部品の素材として用いるのに好適である。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.10〜0.24%、Si:0.16〜0.35%、Mn:0.40〜0.94%、S:0.005〜0.050%、Cr:1.65〜1.90%、Al:0.015〜0.060%およびN:0.0130〜0.0250%と、
    残部がFeおよび不純物とからなり、
    下記の(1)式、(2)式および(3)式で表されるFn1、Fn2およびFn3が、それぞれ、15≦Fn1≦150、0.75≦Fn2≦1.40および0.30≦Fn3≦0.65であり、
    不純物中のP、TiおよびOがそれぞれ、P:0.020%以下、Ti:0.005%以下およびO:0.0020%以下である化学組成を有し、
    熱間加工ままの硬さがHV300以下であることを特徴とする、肌焼鋼鋼材。
    Fn1=Mn/S・・・(1)、
    Fn2=Cr/(Si+2Mn)・・・(2)、
    Fn3=Si×Cr・・・(3)。
    ただし、(1)式、(2)式および(3)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。
  2. Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下およびMo:0.03%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の肌焼鋼鋼材。
  3. Feの一部に代えて、質量%で、V:0.20%以下およびNb:0.060%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の肌焼鋼鋼材。
  4. Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.0050%以下を含有することを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の肌焼鋼鋼材。
  5. 請求項1から4までのいずれかに記載の化学組成を有し、球状化焼鈍処理した後の硬さがHV180以下であることを特徴とする、肌焼鋼鋼材。
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