JP2011032537A - 窒化用鋼および窒化部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】窒化前の切削加工が容易で、しかも、高価な元素であるMoの含有量を質量%で、0.50%以下に制限しても、窒化後に高い曲げ疲労強度を有するとともに耐ピッチング性に優れた窒化用鋼の提供。
【解決手段】C:0.05〜0.09%、Si:0.10〜0.35%、Mn:1.0〜2.0%、S:0.005〜0.050%、Cr:1.0〜2.0%、Mo:0.10〜0.50%、Al:0.010〜0.10%、V:0.05〜0.40%を含有するとともに、C、Mo及びVの含有量が、〔{Mo/(2×95.94)}+(V/50.9415)≧C/12〕の式を満たし、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のP、N、Ti及びOがそれぞれ、P:0.030%以下、N:0.008%以下、Ti:0.005%以下及びO:0.0030%以下である窒化用鋼。
【選択図】なし

Description

本発明は、窒化用鋼および窒化を施された部品(以下、「窒化部品」という。)に関する。詳しくは、窒化前の切削加工が容易で、窒化後に高い曲げ疲労強度を有するとともに耐ピッチング性に優れ、自動車用リングギヤなど窒化部品の素材として用いるのに好適な窒化用鋼およびその窒化部品に関する。
自動車のトランスミッションなどに使用される部品には、曲げ疲労強度向上および耐ピッチング性向上の点から、通常、浸炭焼入、高周波焼入、窒化等の表面硬化処理が施される。
上記のうちで、「浸炭焼入」は、一般的に低炭素鋼を使用し、Ac3点以上の高温のオーステナイト域でCを侵入・拡散させた後、焼入する処理である。高い表面硬さと深い硬化層深さが得られる長所があるが、変態を伴う処理であるため、熱処理変形が大きくなるという問題がある。したがって、高い部品精度が要求される場合には、浸炭焼入後に研削、ホーニングなどの仕上加工が必要となる。また、表層に生成する粒界酸化層、不完全焼入層などのいわゆる「浸炭異常層」が曲げ疲労などの破壊起点となり、疲労強度を低下させるといった問題もある。
「高周波焼入」は、Ac3点以上の高温のオーステナイト域に急速加熱、冷却して焼入する処理である。硬化層深さの調整が比較的容易である長所があるが、浸炭のようにCを侵入・拡散させる表面硬化処理ではないため、必要な表面硬さ、硬化層深さおよび芯部硬さを得るために、浸炭用鋼に比べC量が高い中炭素鋼を使用するのが一般的である。しかしながら、中炭素鋼は素材硬さが低炭素鋼に比べ高いため、被削性が低下する問題があった。また、部品ごとに高周波加熱コイルを作製する必要があるという問題もある。
「窒化」は、Ac1点以下の450〜550℃前後の温度で、Nを侵入・拡散させて高い表面硬さと適度な硬化層深さを得る処理である。浸炭焼入や高周波焼入に比べ処理温度が低いため、熱処理変形が小さい長所がある。
「窒化」のなかでも「軟窒化」は、Ac1点以下の500〜600℃前後の温度で、NおよびCを侵入・拡散させて高い表面硬さを得る処理であり、熱処理変形が小さいだけでなく、Nのみを侵入・拡散させる場合に比べて処理時間が数時間と短時間であることから、大量生産に適した処理である。しかしながら、従来の窒化用鋼は、次の〈1〉および〈2〉に示すような問題があった。
〈1〉窒化前の被削性に劣ること。すなわち、窒化は高温のオーステナイト域からの焼入処理を行なわない処理であるため、マルテンサイト変態を伴う強化が活用できない。したがって、窒化部品に所望の強度を確保するためには窒化する前の硬さを高くする必要があって、多量の合金元素を含有させて硬さを高めた場合には、切削が困難となってしまう。
〈2〉窒化後の疲労強度が低いこと。例えば、代表的な窒化用鋼であるJIS G 4202(2005)に規定されているアルミニウムクロムモリブデン鋼(SACM645)はCr、Alなどが表面付近に窒化物を生成するため高い表面硬さを得ることができるものの、硬化層が浅いので、高い疲労強度を確保することができない。
これに対し、例えば、特許文献1〜4に時効硬化を利用した鋼が提案されている。
すなわち、特許文献1に、質量比でC:0.05〜0.20%、Si:0.05〜0.50%、Mn:1.00〜2.50%、Cr:0.30〜1.50%、Mo:0.35〜1.00%、V:0.05〜0.50%、Al:0.005〜0.070%、N:0.005〜0.020%、O:0.0025%以下を含有し、必要に応じてさらに、(a)S:0.035〜0.12%、Pb:0.02〜0.30%、および(b)Ni:2.0%以下、B:0.0005〜0.0050%、の2グループの元素を1または2以上組み合わせて含有し、残部がFeおよび不純物元素からなることを特徴とする「析出硬化型窒化用鋼」が開示されている。
特許文献2に、C:0.11〜0.60質量%、Si:0.03〜3.0質量%、Mn:0.01〜2.5質量%、Mo:0.3〜4.0質量%、V:0.05〜0.5質量%、Cr:0.1〜3.0質量%、必要に応じてさらに、(a)Al:0.001〜0.3質量%、N:0.005〜0.025質量%、(b)Nb:0.5質量%以下、Ti:0.5質量%以下、Zr:0.5質量%以下、(c)Cu:1.0質量%以下、Ni:1.0質量%以下、および(d)S:0.01〜0.20質量%、Ca:0.003〜0.010質量%、Pb:0.3質量%以下、Bi:0.3質量%以下、の4グループの元素を1または2以上組み合わせて含有し、残部がFeと不可避不純物から成り、各成分間では、〔4C+Mn+0.7Cr+0.6Mo−0.2V≧2.5〕、〔C≧Mo/16+V/5.7〕および〔V+0.15Mo≧0.4〕の式を満たす関係が成立しており、圧延、鍛造、または溶体化処理後に、温度800℃から温度300℃の間は0.05〜10℃/秒の平均冷却速度で冷却され、時効処理前においては、ベイナイト組織の面積率が50%以上で、かつ硬さは40HRC以下であり、時効処理によって、硬さが時効処理前の硬さより7HRC以上高くなることを特徴とする「時効硬化鋼」が開示されている。
特許文献3に、C:0.05〜0.15質量%、Si:0.50質量%以下、Mn:1.00質量%以下、Cr:1.00〜2.00質量%、Mo:0.90〜1.50質量%、Al:0.010〜0.100質量%、N:0.0070〜0.0200質量%、さらに、Ni:1.00質量%以下、V:0.10〜0.30質量%、Ti:0.10質量%以下、Nb:0.030質量%以下の1種または2種以上を含有し、必要に応じてさらに、S:0.005〜0.100質量%、Pb:0.03〜0.35質量%、Ca:0.0010〜0.0100質量%、Te:0.001〜0.100質量%、Zr:0.01〜0.20質量%の1種または2種以上を含有し、残部がFeと不可避的不純物から成る析出硬化型鋼であって、温度500〜600℃のガス窒化処理により芯部のビッカース硬さ(HV)がガス窒化処理前の硬さに比べて30以上高くなる性質を備えていることを特徴とする「窒化処理用鋼」が開示されている。
特許文献4に、質量%で、C:0.04〜0.20%、Si:0.05〜0.50%、Mn:0.50〜1.50%、Mo:0.80〜1.50%、V:0.10〜0.30%、Cr:0〜0.50%、Nb:0〜0.05%、Al:0〜0.050%を含有し、必要に応じてさらに、(a)Ti:0.015〜0.100%、B:0.0005〜0.0030%、(b)S:0.005〜0.100%、Ca:0.001〜0.01%、Te:0.001〜0.100%、の2グループの元素を1または2以上組み合わせて含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のNが0.0070%以下、O(酸素)が0.0030%以下であることを特徴とする「軟窒化用鋼」が開示されている。
特開平4−154936号公報 特開2006−37177号公報 特開平11−124653号公報 特開2006−328457号公報
前述の特許文献1で提案された窒化用鋼は、その実施例に示されているように、窒化処理前の硬さがビッカース硬さ(HV硬さ)で276以上と高い。このため、被削性が良好であるとはいいがたい。
特許文献2で提案された時効硬化鋼の時効処理として窒化処理を適用した場合には、C含有量が高いため、窒化処理前の硬さが高く、被削性が良好であるとはいいがたい。
特許文献3および特許文献4で提案された鋼は、いずれも、Moの含有量が高いので、コストが嵩んでしまう。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、窒化前の切削加工が容易で、しかも、高価な元素であるMoの含有量を質量%で、0.50%以下に制限しても、窒化後に高い曲げ疲労強度を有するとともに耐ピッチング性に優れた窒化用鋼およびその窒化部品を提供すること目的とする。
本発明者らは、前記した課題を解決するために、種々の検討を行った。その結果、下記(a)〜(e)の知見を得た。
(a)窒化処理において時効硬化量を大きくするためには、ベイナイト組織が好ましい。
(b)被削性を向上するには、時効硬化前すなわち窒化前の硬さを低く抑える必要があり、そのためにC含有量およびN含有量を極力低減する。
(c)C含有量を低くしたことで低下する強度を、Mn含有量やCr含有量を多くすることで補う。
(d)時効硬化量を大きくするために、MoとVを複合して含有させたうえで、C含有量とのバランスを適正化する。つまり、窒化処理により、MoおよびVの微細な析出物を析出させることによって、時効硬化量を大きくする。
(e)さらに、Ti含有量およびN含有量を制限することにより、曲げ疲労強度と耐ピッチング性に悪影響を及ぼす硬質介在物(TiN)の生成を抑制する。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)に示す窒化用鋼および(2)に示す窒化部品にある。
(1)質量%で、C:0.05〜0.09%、Si:0.10〜0.35%、Mn:1.0〜2.0%、S:0.005〜0.050%、Cr:1.0〜2.0%、Mo:0.10〜0.50%、Al:0.010〜0.10%、V:0.05〜0.40%を含有するとともに、C、MoおよびVの含有量が、下記の(1)式を満たし、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のP、N、TiおよびOがそれぞれ、P:0.030%以下、N:0.008%以下、Ti:0.005%以下およびO:0.0030%以下であることを特徴とする窒化用鋼。
{Mo/(2×95.94)}+(V/50.9415)≧C/12・・・(1)
ただし、(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。
(2)上記(1)に記載の化学組成を有し、表面硬さがビッカース硬さで700〜900、芯部硬さがビッカース硬さで230以上、有効硬化層深さが0.20mm以上であることを特徴とする窒化部品。
本発明において「窒化」とはNのみを侵入・拡散させる処理だけでなく、NおよびCを侵入・拡散させる処理、すなわち「軟窒化」をも含む。
なお、残部としての「Feおよび不純物」における「不純物」とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石やスクラップあるいは環境などから混入するものを指す。
また、「表面硬さ」とは、JIS Z 2244(2003)に記載の「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、試験片の表面から0.03mmの深さ位置における任意の10点でのビッカース硬さ(以下、「HV硬さ」という。)を、試験力を0.98Nとしてビッカース硬さ試験機で測定した値の算術平均値を指す。
「有効硬化層深さ」とは、試験力を1.96Nとして試験片表面から所定の間隔で測定した時のHV硬さの分布図(つまり、HV硬さの推移曲線)を用いて求めた、HV硬さが420となる位置までの表面からの距離を指す。
本発明の窒化用鋼は、窒化前の切削加工が容易であり、しかも、この窒化用鋼を素材とする窒化部品は、高価な元素であるMoの含有量が質量%で、0.50%以下と少ないにもかかわらず、高い曲げ疲労強度と優れた耐ピッチング性を具備している。このため、本発明の窒化用鋼は、高い曲げ疲労強度と長いピッチング寿命が要求される自動車用リングギヤなど窒化部品の素材として用いるのに好適である。
実施例で用いた切欠付き小野式回転曲げ疲労試験片の棒鋼から切り出したままの粗形状を示す図である。 実施例で用いたローラーピッチング小ローラー試験片の棒鋼から切り出したままの粗形状を示す図である。 実施例で用いたローラーピッチング大ローラー試験片の棒鋼から切り出したままの粗形状を示す図である。この図3において、(a)は粗形状のローラーピッチング大ローラー試験片を中心線で半割りにした場合の正面図で、また(b)は中心線における断面図である。 実施例において、鋼1〜12を素材とする図1および図2に示す試験片に施した軟窒化のヒートパターンを示す図である。 実施例において、鋼13を素材とする図1および図2に示す試験片に施した浸炭焼入−焼戻しのヒートパターンを示す図である。 実施例において、鋼13を素材とする図3に示す試験片に施した浸炭焼入−焼戻しのヒートパターンを示す図である。 実施例で用いた切欠付き小野式回転曲げ疲労試験片の仕上形状を示す図である。 実施例で用いたローラーピッチング小ローラー試験片の仕上形状を示す図である。 実施例で用いたローラーピッチング大ローラー試験片の仕上形状を示す図である。この図9において、(a)はローラーピッチング大ローラー試験片を中心線で半割りにした場合の正面図で、また(b)は中心線における断面図である。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)鋼の化学組成
C:0.05〜0.09%
Cは、窒化部品の強度確保のために必須の元素であり、0.05%以上の含有量が必要である。しかしながら、Cの含有量が多くなって0.09%を超えると、窒化前の硬さが高くなって被削性の低下をきたす。このため、Cの含有量を0.05〜0.09%とした。なお、被削性がより重視されるときには、Cの含有量を0.05〜0.08%にすることが好ましい。
Si:0.10〜0.35%
Siは、脱酸作用を有する。この効果を得るには、0.10%以上のSi含有量が必要である。しかしながら、Siの含有量が多くなって0.35%を超えると、窒化前の硬さが高くなって被削性が低下する。したがって、Siの含有量を0.10〜0.35%とした。なお、Siの含有量は0.10〜0.25%にすることが好ましい。
Mn:1.0〜2.0%
Mnは、窒化部品の曲げ疲労強度および耐ピッチング性を確保する作用、ならびに脱酸作用を有する。これらの効果を得るには、1.0%以上の含有量が必要である。しかしながら、Mnの含有量が多くなって2.0%を超えると、窒化前の硬さが高くなりすぎて被削性が低下する。このため、Mnの含有量を1.0〜2.0%とした。なお、被削性が重視される場合のMn含有量は1.0〜1.5%にすることが好ましい。
S:0.005〜0.050%
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させる作用がある。しかしながら、Sの含有量が0.005%未満では、前記の効果が得がたい。一方、Sの含有量が0.050%を超えると、粗大なMnSを形成して、熱間鍛造性および曲げ疲労強度が低下する。そのため、Sの含有量を0.005〜0.050%とした。なお、熱間鍛造性および曲げ疲労強度がより重視される場合には、Sの含有量を0.005〜0.030%とすることが好ましい。
Cr:1.0〜2.0%
Crは、窒化での表面硬さおよび芯部硬さを高め、硬化層を深くし、部品の曲げ疲労強度および耐ピッチング性を確保する作用を有する。しかしながら、Crの含有量が1.0%未満では前記の効果を得ることができない。一方、Crの含有量が多くなって2.0%を超えると、窒化前の硬さが高くなって被削性が低下する。したがって、Crの含有量を1.0〜2.0%とした。なお、被削性がより重視される場合のCr含有量は1.0〜1.5%とすることが好ましい。
Mo:0.10〜0.50%
Moは、窒化温度で鋼中のCと結合して炭化物を形成し、窒化後の芯部硬さを向上させる作用を有する。しかしながら、Moの含有量が0.10%未満では所望の芯部硬さを得ることができない。一方、Moを0.50%を超えて含有すると、窒化前の硬さが高くなって被削性が低下する。そのため、Moの含有量を0.10〜0.50%とした。なお、被削性が重視される場合は、Moの含有量を0.10〜0.40%とすることが好ましい。
Al:0.010〜0.10%
Alは、脱酸作用を有する。また、窒化時に表面から侵入・拡散するNと結合してAlNを形成し、表面硬さを向上させる作用を有する。これらの効果を得るには、Alを0.010%以上含有させる必要がある。しかしながら、Alの含有量が多くなって0.10%を超えると、硬質のAl23を形成して被削性が低下するばかりか、窒化での硬化層が浅くなって曲げ疲労強度や耐ピッチング性が低下する問題が生じる。そのため、Alの含有量を0.010〜0.10%とした。なお、Al含有量の好ましい下限は0.020%であり、好ましい上限は0.070%である。
V:0.05〜0.40%
Vは、Moと同じく、窒化温度で鋼中のCと結合して炭化物を形成し、窒化後の芯部硬さを向上させる作用を有する。また、窒化時に表面から侵入・拡散するNやCと結合して窒化物や炭窒化物を形成し、表面硬さを向上させる作用も有する。これらの効果を得るには0.05%以上のVを含有する必要がある。しかしながら、Vの含有量が多くなって0.40%を超えると、窒化前の硬さが高くなりすぎて被削性が低下するばかりか、熱間鍛造やその後の焼準でマトリックス中にVが固溶しなくなるため、前記の効果が飽和する。そのため、Vの含有量を0.05〜0.40%とした。なお、好ましいVの含有量は0.10〜0.40%である。
{Mo/(2×95.94)}+(V/50.9415)の値:(C/12)以上
窒化前には、Cは、主にセメンタイト中に存在する。この鋼中のCが窒化時に、MoおよびVと結びついて炭化物を形成して時効硬化に寄与する。すなわち、窒化温度において、Moは主にMo2C、Vは主にVCとなって析出し、時効硬化に寄与することになる。そして、C、MoおよびVの原子量はそれぞれ、12、95.94および50.9415であるため、
{Mo/(2×95.94)}+(V/50.9415)≧C/12・・・(1)
の式を満足した場合、Cに対してMoおよびVを過剰に含んでいることになるので、窒化温度において十分な時効硬化量が得られる。したがって、C、MoおよびVの含有量について、既に述べた範囲に制限したうえで、さらに、上記の(1)式を満たすこととした。
本発明においては、不純物中のP、N、TiおよびOは、その含有量をそれぞれ、P:0.030%以下、N:0.008%以下、Ti:0.005%以下およびO:0.0030%以下に制限する必要がある。
以下、このことについて説明する。
P:0.030%以下
Pは、鋼に含有される不純物であり、結晶粒界に偏析して鋼を脆化させ、特に、その含有量が0.030%を超えると、脆化の程度が著しくなる場合がある。したがって、本発明においては、不純物中のPの含有量を0.030%以下とした。なお、不純物中のPの含有量は0.020%以下とすることが好ましい。
N:0.008%以下
鋼中のNは、CおよびVなどの元素と結合して炭窒化物を形成しやすく、窒化前にVCNなどの炭窒化物を形成すると硬さが高くなって、被削性が低下するため、本発明においてはNは好ましくない元素である。また、この炭窒化物は固溶温度が高いため、熱間鍛造やその後の焼準での加熱でVがマトリックスに固溶しにくくなり、鋼中のN含有量が高いと窒化温度における時効硬化による硬さ向上効果が十分に得られない。そのため、本発明においては、不純物中のNの含有量を0.008%以下とした。なお、不純物中のNの好ましい含有量は0.006%以下である。
Ti:0.005%以下
Tiは、Nとの親和性が高く、鋼中のNと結び付いて硬質の窒化物であるTiNを生成しやすい。Tiの含有量が0.005%を超える場合には、生成した粗大なTiNが曲げ疲労強度や耐ピッチング強度を低下させてしまう。したがって、本発明においては、不純物中のTiの含有量を0.005%以下とした。なお、不純物中のTiの好ましい含有量は0.003%以下である。
O:0.0030%以下
Oは、介在物起点の疲労破壊の原因となる酸化物系の介在物を形成して、疲労強度を低下させてしまう。特に、Oの含有量が0.0030%を超えると、疲労強度の低下が著しくなる。そのため、本発明においては、不純物中のOの含有量を0.0030%以下とした。なお、不純物中のOの好ましい含有量は0.0020%以下である。
既に述べたように、「不純物」とは鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石やスクラップあるいは環境などから混入するものを指す。
(B)窒化部品の表面硬さ
窒化部品、すなわち、窒化を施された部品は、その表面硬さが低いと、曲げ疲労強度、耐ピッチング性および耐摩耗性が低下してしまうが、表面硬さがHV硬さで700以上であれば、窒化部品に所望の強度を具備させることができる。一方、表面硬さが高くなって、特に、HV硬さで900を超えると、窒化部品がギヤの場合には、相手ギヤに対する攻撃性が高くなってしまう。したがって、窒化部品は、表面硬さがHV硬さで700〜900であることとした。なお、表面硬さの好ましい下限はHV硬さで720であり、また、好ましい上限はHV硬さで800である。
(C)窒化部品の芯部硬さ
窒化部品の芯部硬さが低いと、負荷が加わった際に内部で塑性変形が生じ、内部で発生した亀裂によりピッチングが発生してしまう。窒化部品で内部の塑性変形を抑制するには、HV硬さで230以上の芯部硬さが必要である。そのため、本発明の窒化部品の芯部硬さはHV硬さで230以上とした。芯部硬さの好ましい下限はHV硬さで250である。
なお、芯部硬さの上限は特に規定する必要はないが、本発明の窒化用鋼を焼入れを行なわずに窒化した場合に到達できる芯部硬さの上限はHV硬さで350程度である。
(D)窒化部品の有効硬化層深さ
窒化部品の有効硬化層深さが浅いと、内部起点の破壊を引き起こし、曲げ疲労強度および耐ピッチング性を低下させてしまう。内部起点の破壊を抑制するためには、有効硬化層深さを0.20mm以上とする必要がある。そのため、本発明の窒化部品の有効硬化層深さは、0.20mm以上とした。有効硬化層深さの好ましい下限は0.25mmである。
なお、有効硬化層深さの上限は特に規定する必要はないが、有効硬化層深さを深くするには窒化処理時間を長くする必要があるためコストが嵩んでしまう。したがって、有効硬化層深さは0.50mm以下とするのが好ましく、0.45mm以下とするのがより好ましい。
(E)窒化部品の製造方法
本発明の窒化部品は、前記(A)項に記載の化学組成を有する鋼を用いて、例えば次のような条件で加工および熱処理し、窒化処理を行うことで製造することができる。
(E−1)熱間鍛造
前記(A)項に記載の化学組成を有する鋼の鋼片や棒鋼等を切断した後、1150〜1270℃に加熱して粗形状に熱間鍛造する。
(E−2)焼準
熱間鍛造ままの鋼材の組織は結晶粒が大きく、曲げ疲労強度の低下を招く場合がある。そのため、850〜970℃の温度で焼準処理を行ない、より小さな結晶粒にすることが好ましい。
焼準後の冷却で、放冷や炉冷などの徐冷を行なうと、冷却過程でVCNなどの炭窒化物が析出して硬さが高くなって、被削性が低下する場合がある。したがって、焼準後の冷却においては、風冷など適宜の手段を講じることによって、冷却過程におけるVCNなどの析出を抑止することが好ましい。
なお、冷却過程におけるVCNなどの析出を抑止して被削性を維持するためには、冷却速度の下限は0.5℃/sであることが好ましく、また、上限は5℃/sであることが好ましい。
(E−3)切削加工
焼準後の粗形品を、旋盤などで切削加工した後、例えばリングギヤの場合には、ブローチ盤、ギヤシェイパーなどの加工機械によって加工する。
(E−4)窒化処理
本発明の窒化部品を得るための窒化処理方法は、特に規定されるものではなく、ガス窒化処理、塩浴窒化処理、イオン窒化処理等を用いることができる。窒化処理の処理温度は500〜650℃が好ましい。軟窒化処理の場合には、例えばNH3に加えてRXガスを併用し、NH3とRXガスが1:1の雰囲気において処理を行えばよい。
処理時間は処理温度により異なるが、軟窒化処理を560℃で行う場合には9時間で、所望の表面硬さ、芯部硬さおよび有効硬化層深さを得ることができる。
また、脆弱な化合物の形成を抑制したい場合には、NH3での窒化処理の前処理としてフッ素ガスを使用したり、窒化処理にNH3とH2との混合ガスを使用することが好ましい。
以下、ガス軟窒化で処理した実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する鋼1〜13を真空溶解炉または転炉によって溶解し、インゴットまたは鋳片を作製した。
具体的には、鋼1〜12については、180kg真空溶解炉によって溶製後、造塊してインゴットを作製した。
鋼13については、70トン転炉によって溶製後、連続鋳造して鋳片を作製した。
なお、表1中の鋼1〜5は、化学組成が本発明で規定する範囲内にある本発明例の鋼であり、一方、鋼6〜13は、化学組成が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。
上記の比較例の鋼のうちで鋼13は、JIS G 4052(2008)に規定されたSCM420Hに相当する鋼である。
Figure 2011032537
上記の鋼1〜12のインゴットは、1250℃で5時間保持する溶体化処理を施して均質化した後、1200℃に加熱して熱間鍛造を行って、直径がそれぞれ、25mmおよび35mmで、長さがいずれも1000mmの棒鋼を作製した。
また、上記の鋼13の鋳片は、1250℃で3時間加熱して分塊圧延して鋼片とした後、1200℃に加熱して熱間鍛造を行って、直径がそれぞれ、25mm、35mmおよび140mmで、長さがいずれも1000mmの棒鋼を作製した。
上記の各棒鋼のうち、鋼1〜12の直径25mmおよび直径35mmの棒鋼については、950℃で1時間保持してから風冷する「焼準」を施した。
一方、鋼13の直径25mmおよび直径35mmの棒鋼については、900℃で1時間保持してから放冷する「焼準」を施した。また、鋼13の直径140mmの棒鋼については、900℃で4時間保持してから放冷する「焼準」を施した。なお、鋼13について、上記900℃での保持後に風冷ではなく放冷を実施したのは、鋼13では放冷しても炭化物が析出せず、逆に風冷を行なうとベイナイト組織が多くなり、硬さが高くなって却って被削性が低下するためである。
上記のようにして焼準した鋼1〜13の各棒鋼から、各種の試験片を採取した。
具体的には、まず、直径25mmの棒鋼を、いわゆる「横断」、すなわち、軸方向(長さ方向)に対して直角に切断し、切断面が被検面になるように樹脂に埋め込んだ後、切断面が鏡面仕上げになるように研磨して、焼準後のビッカース硬さ試験片およびミクロ組織観察試料とした。
また、直径35mmの棒鋼から、直径30mmで長さが300mmの旋削試験片を採取した。
さらに、直径25mmの棒鋼の中心部から、軸方向に平行に図1に示す粗形状の切欠付き小野式回転曲げ疲労試験片を切り出し、同様に、直径35mmの棒鋼の中心部から、軸方向に平行に図2に示す粗形状のローラーピッチング小ローラー試験片を切り出した。
また、鋼13の直径140mmの棒鋼の中心部から、軸方向に平行に図3に示す粗形状のローラーピッチング大ローラー試験片を切り出した。図3において、(a)は粗形状のローラーピッチング大ローラー試験片を中心線で半割りにした場合の正面図で、また(b)は中心線における断面図である。
なお、図1〜3中に示した上記の各切り出し試験片における寸法の単位は全て「mm」であり、図中の仕上記号「▽」、「▽▽」および「▽▽▽」は、JIS B 0601(1982)の解説表1の表面粗さを示す「三角記号」である。
また、「▽▽▽」に付した「G」はJIS B 0122(1978)に規定の「研削」を示す加工方法の略号であることを意味する。
上記のようにして作製した試験片のうち、鋼1〜12の粗形状の切欠付き小野式回転曲げ疲労試験片および粗形状のローラーピッチング小ローラー試験片に対して、図4に示すヒートパターンによる「ガス軟窒化」を施した。なお、「120℃油冷却」は油温120℃の油中に投入して冷却したことを示す。
一方、鋼13の粗形状の切欠付き小野式回転曲げ疲労試験片および粗形状のローラーピッチング小ローラー試験片に対しては、図5に示すヒートパターンによる「浸炭焼入−焼戻し」を施した。なお、図5中の「Cp」はカーボンポテンシャルを表す。また、「120℃油焼入」は油温120℃の油中に投入して焼入したことを、さらに「AC」は空冷したことを表す。
さらに、鋼13の粗形状のローラーピッチング大ローラー試験片に対しては、図6に示すヒートパターンによる「浸炭焼入−焼戻し」を施した。なお、図6においても図5と同様に、「Cp」はカーボンポテンシャルを、また、「50℃油焼入」は油温50℃の油中に投入して焼入したことを、さらに「AC」は空冷したことを表す。
上記の「ガス軟窒化」または「浸炭焼入−焼戻し」した各試験片を仕上加工して、図7に示す切欠付き小野式回転曲げ疲労試験片、図8に示すローラーピッチング小ローラー試験片および図9に示すローラーピッチング大ローラー試験片を作製した。図9において、(a)はローラーピッチング大ローラー試験片を中心線で半割りにした場合の正面図で、また(b)は中心線における断面図である。
なお、図7〜9に示した前述の各試験片における寸法の単位は全て「mm」であり、上記各図における仕上記号「▽」および「▽▽▽」は先の図1〜3におけると同様、それぞれ、JIS B 0601(1982)の解説表1の表面粗さを示す「三角記号」である。
また、「▽▽▽」に付した「G」はJIS B 0122(1978)に規定の「研削」を示す加工方法の略号であることを意味する。
さらに、「〜」は「波形記号」であり、生地であること、すなわち、前記の「ガス軟窒化」あるいは「浸炭焼入−焼戻し」した表面のままであることを意味する。
上記のようにして作製した各試験片を用いて、下記《1》〜《6》に示す試験を行った。
《1》焼準後のビッカース硬さ試験
焼準後のビッカース硬さ試験片の中心部1点とR/2部(「R」は棒鋼の半径を表す。)4点の計5点を、JIS Z 2244(2003)に記載の「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、試験力を9.8Nとしてビッカース硬さ試験機で測定し、5点の平均値を焼準後の硬さとした。
《2》焼準後のミクロ組織観察
焼準後のミクロ組織観察試料をナイタルで腐食し、倍率を400倍として光学顕微鏡でR/2部を観察した。その結果、ミクロ組織はベイナイト、フェライトとベイナイトからなる2相混合組織、フェライト、パーライトとベイナイトからなる3相混合組織のいずれかであった。
《3》旋削試験
旋削試験片を用いて、
・工具:超硬工具(材種:ST20E)、
・周速:200m/min、
・送り:0.4mm/rev、
・切込:1.5mm、
・潤滑剤:なし(ドライ)、
の条件で旋削試験を行った。なお、旋削加工時の切削抵抗を測定して、切削抵抗が1300N未満である場合に、被削性が良好であると評価した。さらに、旋削した際の切屑についても評価し、切屑が小さく分断されて被試験材に巻きつきなどの不具合が生じない場合を「切屑処理性が良好」とし、一方、切屑が長く被試験材に巻きつく不具合が生じた場合を「切屑処理性が不良」とした。
《4》「ガス軟窒化」後および「浸炭焼入−焼戻し」後の表面硬さ、芯部硬さおよび有効硬化層深さの測定
「ガス軟窒化」または「浸炭焼入−焼戻し」後に仕上加工した試験前のローラーピッチング小ローラー試験片を用いて、その直径26mmの部分を横断し、切断面が被検面になるように樹脂に埋め込んだ後、前記面が鏡面仕上げになるように研磨し、ビッカース硬さ試験機を使用して表面硬さ、芯部硬さおよび有効硬化層深さを調査した。
具体的には、JIS Z 2244(2003)に記載の「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、試験片の表面から0.03mmの深さ位置における任意の10点でのHV硬さを、試験力を0.98Nとしてビッカース硬さ試験機で測定し、その値を算術平均して「表面硬さ」とした。
また、同じ埋め込み試料を用いて、上記の場合と同様に、鏡面仕上げした試験片の表面から2mmの深さ位置における任意の10点でのHV硬さを、試験力を1.96Nとしてビッカース硬さ試験機で測定し、その値を算術平均して「芯部硬さ」とした。
さらに、同じ埋め込み試料を用いて、上記の場合と同様に、鏡面仕上げした試験片の表面から中心に向かう方向について、ビッカース硬さ試験機で試験力を1.96Nとして、所定の間隔でHV硬さを測定し、HV硬さの分布図を作成した。そして、HV硬さで420となる位置までの表面からの距離を「有効硬化層深さ」とした。
《5》小野式回転曲げ疲労試験
仕上加工した小野式回転曲げ疲労試験片を用いて、下記の試験条件によって小野式回転曲げ疲労試験を実施し、繰返し数が107回において破断しない最大の強度で「回転曲げ疲労強度」を評価した。JIS G 4052(2008)に規定されたSCM420Hに相当する鋼13を用いて「浸炭焼入−焼戻し」した試験番号13の場合と同等以上の回転曲げ疲労強度を有する場合に、曲げ疲労強度が優れるとした。
・温度:室温、
・雰囲気:大気中、
・回転数:3000rpm。
《6》ローラーピッチング試験
仕上加工したローラーピッチング小ローラー試験片およびローラーピッチング大ローラー試験片を用いて、下記の試験条件でローラーピッチング試験を実施し、長径が1mm以上の大きさのピッチングが発生しない寿命を測定した。上記の試験を3回行なって、3回の平均寿命を「ピッチング寿命」とした。なお、評価した繰返し数は最大で107回とした。JIS G 4052(2008)に規定されたSCM420Hに相当する鋼13を用いて「浸炭焼入−焼戻し」した試験番号13の場合と同等以上のピッチング寿命を有する場合に、長いピッチング寿命を有するとした。
・すべり率:40%、
・面圧:2000MPa、
・小ローラー試験片の回転数:1000rpm、
・潤滑:油温100℃のオートマチックトランスミッション用潤滑油を、2リットル/minの割合で、ローラーピッチング小ローラー試験片とローラーピッチング大ローラー試験片の接触部に噴出させて実施。
ただし、上記の「すべり率」は、「V1」をローラーピッチング小ローラー試験片表面の接線速度、「V2」をローラーピッチング大ローラー試験片表面の接線速度として、下記の式で計算される値を指す。
{(V2−V1)/V1}×100。
表2に「焼準」後に採取した試験片を用いて調査した各試験結果を、また、表3に「ガス軟窒化」または「浸炭焼入−焼戻し」後に仕上加工した試験片を用いて試験した各試験結果を、それぞれ、まとめて示す。
なお、表2の「ミクロ組織」欄における「B」、「F」および「P」はそれぞれ、ベイナイト、フェライトおよびパーライトを意味する。また、「切屑処理性」欄における「○」は、切屑が小さく分断されて被試験材に巻きつきなどの不具合が生じず、「切屑処理性が良好」であったことを示す。
Figure 2011032537
Figure 2011032537
表2および表3から、素材として本発明で規定する条件を満たす鋼1〜5を用いた試験番号1〜5の場合、軟窒化前の被削性は良好であり、JIS G 4052(2008)に規定されたSCM420Hに相当する鋼13を用いて「浸炭焼入−焼戻し」した試験番号13の470MPaを超える回転曲げ疲労強度および試験番号13と同等以上のピッチング寿命を有しており、軟窒化後に高い曲げ疲労強度を有するとともに耐ピッチング性にも優れていることが明らかである。
これに対して、本発明で規定する条件から外れた比較例の試験番号6〜12の場合、被削性の低下が生じたり、あるいは、回転曲げ疲労強度およびピッチング寿命が、上記鋼13を用いた試験番号13の場合に比べて劣っている。
具体的には、試験番号6の場合、鋼6が式(1)を満足しないため、芯部硬さが低く、回転曲げ疲労強度およびピッチング寿命はそれぞれ、450MPaおよび9.35×105回であって、鋼13を用いた試験番号13の場合に比べて劣っている。
試験番号7の場合、鋼7のC含有量が本発明で規定する値より多く、焼準後のHV硬さが高い。このため、切削抵抗が1353Nであり、被削性に劣っている。
試験番号8の場合、鋼8のMnの含有量が本発明で規定する値より少ないため、回転曲げ疲労強度およびピッチング寿命はそれぞれ、450MPaおよび1.25×106回であって、鋼13を用いた試験番号13の場合に比べて劣っている。
試験番号9の場合、鋼9のCrの含有量が本発明で規定する値より少ないため、回転曲げ疲労強度およびピッチング寿命はそれぞれ、440MPaおよび1.15×106回であって、鋼13を用いた試験番号13の場合に比べて劣っている。
試験番号10の場合、鋼10のTiおよびNの含有量が本発明で規定する値より多いため、ピッチング寿命が2.03×106回であって、鋼13を用いた試験番号13の場合に比べて劣っている。
試験番号11の場合、鋼11のMoおよびVの含有量が本発明で規定する値より少なく、かつ式(1)を満足しないため、回転曲げ疲労強度およびピッチング寿命はそれぞれ、420MPaおよび8.91×105回であって、鋼13を用いた試験番号13の場合に比べて劣っている。
試験番号12の場合、鋼12のN含有量が本発明で規定する値より多く、焼準後のHV硬さが高い。このため、切削抵抗が1373Nであり、被削性に劣っている。
本発明の窒化用鋼は、窒化前の切削加工が容易であり、しかも、この窒化用鋼を素材とする窒化部品は、高価な元素であるMoの含有量が質量%で、0.50%以下と少ないにもかかわらず、高い曲げ疲労強度と優れた耐ピッチング性を具備している。このため、本発明の窒化用鋼は、高い曲げ疲労強度と長いピッチング寿命が要求される自動車用リングギヤなど窒化部品の素材として用いるのに好適である。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.09%、Si:0.10〜0.35%、Mn:1.0〜2.0%、S:0.005〜0.050%、Cr:1.0〜2.0%、Mo:0.10〜0.50%、Al:0.010〜0.10%、V:0.05〜0.40%を含有するとともに、C、MoおよびVの含有量が、下記の(1)式を満たし、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のP、N、TiおよびOがそれぞれ、P:0.030%以下、N:0.008%以下、Ti:0.005%以下およびO:0.0030%以下であることを特徴とする窒化用鋼。
    {Mo/(2×95.94)}+(V/50.9415)≧C/12・・・(1)
    ただし、(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。
  2. 請求項1に記載の化学組成を有し、表面硬さがビッカース硬さで700〜900、芯部硬さがビッカース硬さで230以上、有効硬化層深さが0.20mm以上であることを特徴とする窒化部品。
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