JP6488945B2 - 高強度冷間鍛造用肌焼鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、冷間鍛造によって成形された後、浸炭焼入に供される肌焼鋼に関する。
浸炭歯車は、主として熱間鍛造、浸炭焼入、切削工程により製造されている。浸炭焼入は、AC3点以上のオーステナイト域の温度で部品の表層に炭素を侵入・拡散させた後、焼入する処理である。従来は、浸炭歯車の素材として、低炭素の肌焼鋼が使用されていた。
歯車には高い強度が求められるため、焼入れ層の深さを大きくできるように、素材となる鋼には高い焼入性が求められる。そのため、浸炭部品の素材となる肌焼鋼には、JIS G 4052(2003)に限定されたSNCM220Hなどのニッケルクロムモリブデン鋼、SCM420Hなどのクロムモリブデン鋼が使用されることが多い。
Ni及びMoはいずれも、浸炭層の深さ及び芯部の硬さを大きくするために有用な元素である。しかも、Ni及びMoはともに酸化し難い元素である。このため、Ni及びMoは、ガス浸炭の際に表面に生成する粒界酸化層の深さを増大させることなく、浸炭層の焼入性を向上させる効果も有している。しかし、Ni及びMoは高価な合金元素であるため、含有量を極力抑えて合金コストを低くすることが求められている。
省合金の要望に応えるべく、特許文献1には、Si、Mn、CrおよびSの含有量が、下記の(1)式および(2)式で表されるfn1およびfn2の値でそれぞれ、30≦fn1≦150および0.7≦fn2≦1.1を満たす(fn1=Mn/S・・・(1)、fn2=Cr/(Si+2Mn)・・・(2)、但し、(1)式および(2)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。)肌焼鋼が提案されている。特許文献1にて提案された肌焼鋼は、熱間鍛造による浸炭部品を製造する場合に好適である。
ところで、浸炭歯車の生産性を向上させ、低コスト化を図るには、熱間鍛造と比較して鋼材の歩留が良好で、部品の寸法精度が良い冷間鍛造による成形方法を採用することが望ましい。しかし、冷間鍛造では、加工中の鋼材に加工硬化が生じ、延性が低下して部品が割れ易くなる問題がある。特に、熱間圧延により延伸したMnSは、異方性を生じさせ、特定方向の延性が極端に低くなる。
このような問題に対して、Mn硫化物を球状に維持するために、Mn硫化物にCaを固溶させ、また、TeによってCaがMn硫化物に固溶するのを促進するように、Ca、Te、S及びOの含有量とバランスを適正にした冷間鍛造用快削鋼が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2009−249685号公報 特開2012−117098号公報
肌焼鋼の冷間鍛造性には異方性があり、冷間鍛造時に、圧延方向に延伸したMnSが、圧延方向と直行する方向から引張応力を受けると割れが生じ易い。
特許文献1によって提案された肌焼鋼は、熱間鍛造による部品の製造を前提としており、圧延方向に延伸したMnSに起因する延性の異方性に対する配慮がなされていない。このため、冷間鍛造性を満足させることができない場合がある。
また、Ni及びMoを極力含有させることなく、焼入性を確保するためには、Cr含有量を高めることが有効である。しかし、特許文献2によって提案された冷間鍛造用鋼では、Cr含有量を高めた場合のTeの効果について検討されておらず、必ずしも、浸炭焼入性と冷間鍛造性とを両立させることができない場合がある。また、Cr含有量を高めると、浸炭焼入により、浸炭異常層である粒界酸化層及び不完全焼入層が生じることがある。浸炭異常層は、曲げ疲労強度およびピッティング強度に悪影響を及ぼす。
本発明は、高価な元素であるNi及びMoを極力含有せず、冷間鍛造性の異方性が小さく、焼入性に優れ、かつ浸炭焼入による浸炭異常層の深さが浅い高強度冷間鍛造用肌焼鋼の提供を課題とするものである。
本発明者らは、焼入性、MnSの形状、浸炭異常層に影響を及ぼすMn、S、Te、Cr、Siの含有量について検討を行い、下記(a)〜(c)の知見を得た。
(a)優れた冷間鍛造性を得るためには、粗大なMnSを極力少なくすることが有効である。粗大なMnSの生成を抑制するには、MnとSの個々の含有量の制御だけでなく、MnとSの含有量バランスを適正化することが必要である。具体的には、式中の元素記号を、その元素の質量%での含有量として、[fn1=Mn/S]の式で表されるfn1の値を30以上150以下に制御する。このことによって、粗大なMnSの生成を抑制できる。したがって、優れた冷間鍛造性を得るためには、MnおよびSの個々の含有量を制御するとともに、それらが前記の関係式を満たすようにする必要がある。
(b)MnSの形状を極力球形に近づけて、一層優れた冷間鍛造性を得るためには、Teの添加が有効である。さらに、本発明者らは、MnSの球状化のためにはCrとTeの含有量バランスを適正化することが必要であることを初めて明らかにした。具体的には、式中の元素記号を、その元素の質量%での含有量として、[fn2=Cr×Te]の式で表されるfn2の値を0.010以下に制御する。このことによって、製造時におけるMnS粒子の球状化を促進できる。したがって、冷間鍛造性の異方性を小さくし、優れた冷間鍛造性を得るためには、CrおよびTeの個々の含有量を制御するとともに、それらが前記の関係式を満たすようにする必要がある。
(c)浸炭異常層である粒界酸化層および不完全焼入層の深さは、酸化し易い元素、なかでも、Cr、Si及びMnの含有量バランスを適正化することによって小さくできる。具体的には、式中の元素記号を、その元素の質量%での含有量として、[fn3=(14/24)×Cr+(14/25)×Mn−Si]の式で表されるfn3の値を0.90以上1.60以下にする。このことによって、Cr含有量を高めても、浸炭焼入による浸炭異常層の深さを小さくすることが可能となり、優れた冷間鍛造性と焼入性を確保できる。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、以下のとおりである。
[1] 質量%で、
C:0.10〜0.30%、
Si:0.02〜1.00%、
Mn:0.30〜1.00%、
S:0.002〜0.030%、
Cr:1.50〜3.00%、
Al:0.010〜0.050%、
N:0.0040〜0.0250%、
Te:0.0003〜0.0050%
を含有し、
P:0.020%以下、
Ti:0.005%未満、
O:0.0015%以下
に制限し、残部はFe及び不可避的不純物からなり、
Si、Mn、Cr、S及びTeの含有量が、下記の(1)式、(2)式及び(3)式で表されるfn1、fn2及びfn3の値でそれぞれ30≦fn1≦150、fn2≦0.010及び0.90≦fn3≦1.60を満たすことを特徴とする高強度冷間鍛造用肌焼鋼。
fn1:Mn/S・・・(1)
fn2:Cr×Te・・・(2)
fn3:(14/24)×Cr+(14/25)×Mn−Si・・・(3)
但し、(1)式、(2)式及び(3)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。
[2] 更に、質量%で、
Mo:0.10%以下、
Cu:0.20%以下、
Ni:0.20%以下
のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記[1]に記載の高強度冷間鍛造用肌焼鋼。
[3] 更に、質量%で、
V:0.20%以下、
Nb:0.026%以下
の一方又は両方を含有することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の高強度冷間鍛造用肌焼鋼。
[4] 更に、質量%で、
Ca:0.0050%以下、
Zr:0.010%以下
の一方又は両方を含有することを特徴とする上記[1]〜[3]の何れか1項に記載の高強度冷間鍛造用肌焼鋼。
本発明の高強度冷間鍛造用肌焼鋼は、Ni及びMoを極力含有させることなく、優れた冷間鍛造性と焼入性を実現し、また、浸炭焼入による浸炭異常層の生成を抑制できる。
本発明の高強度冷間鍛造用肌焼鋼は、冷間鍛造後に浸炭焼入を行うことにより、優れた曲げ疲労強度およびピッティング強度が得られる。このため、本発明の高強度冷間鍛造用肌焼鋼は、自動車あるいは各種産業機械の歯車用の素材として好適である。
環状切欠き試験片を作製するための試験素材の切り出し方向を説明する図である。 R3環状切欠き引張試験片を示す図である。 R20環状切欠き引張試験片を示す図である。 R3環状切欠き引張試験片及びR20環状切欠き引張試験片の荷重−変位曲線と、延性き裂発生点を説明する図である。 Cr及びTeの添加量とε−εとの関係を説明する図である。 浸炭焼入、焼戻しのヒートパターンを示す図である。 [fn3=(14/24)×Cr+(14/25)×Mn−Si]の値と粒界酸化層深さとの関係を示す図である。 [fn3=(14/24)×Cr+(14/25)×Mn−Si]の値と不完全焼入層深さとの関係を示す図である。 切欠き回転曲げ疲労試験片の切り出しままの粗形状を示す図である。 切欠き回転曲げ疲労試験片の仕上形状を示す図である。 ローラーピッティング小ローラー試験片の切り出しままの粗形状を示す図である。 ローラーピッティング小ローラー試験片の仕上形状を示す図である。 ローラーピッティング大ローラー試験片の切り出しままの粗形状を示す図である。この図において、(a)は粗形状のローラーピッティング大ローラー試験片を中心線で半割りにした場合の正面図で、また(b)は中心線における断面図である。 ローラーピッティング大ローラー試験片の仕上形状を示す図である。この図において、(a)はローラーピッティング大ローラー試験片を中心線で半割りにした場合の正面図で、また(b)は中心線における断面図である。
本発明者らは、特に、焼入性、MnSの形状、浸炭異常層に影響を及ぼすMn、S、Te、Cr、Siの含有量について検討を行った。具体的には、種々の成分組成の鋼材を溶解し、溶製後、鋼片とし、熱間圧延によって、直径55mmの丸棒とした。得られた種々の成分組成の丸棒を用いて、冷間鍛造性、浸炭焼入後の粒界酸化層深さ及び不完全焼入層深さの調査を行った。
<1>冷間鍛造性の調査:
圧縮試験により割れが発生する相当塑性ひずみと、環状切欠き引張試験により割れが発生する相当塑性ひずみには相関がある。このことから、環状切欠き引張試験により冷間鍛造時の割れにくさに及ぼす鋼成分の影響を評価した。
図1は、環状切欠き試験片を作製するための試験素材の切り出し方向を説明する図である。種々の成分組成の棒鋼から、図1に示すように、圧延方向に対して平行の素材(平行素材)と、圧延方向に対して垂直の素材(垂直素材)とを切り出した。棒鋼中のMnSからなる粒子は、図1に示すように、圧延方向に延伸している。
棒鋼から切り出した平行素材および垂直素材のそれぞれについて、球状化焼鈍を施した後、機械加工により、切欠き部の曲率半径が3mmである図2に示すR3環状切欠き引張試験片と、切欠き部の曲率半径が20mmである図3に示すR20環状切欠き引張試験片とを作製し、引張試験を行った。R3環状切欠き引張試験片は、応力集中が厳しい試験片である。R20環状切欠き引張試験片は、応力集中が緩い試験片である。
各試験片に対する引張試験の結果から、それぞれ図4に示すように鋼組成に固有の荷重−変位曲線が得られ、それぞれの荷重−変位曲線の形状から、延性き裂発生点を求めた。
そして、それぞれ、環状切欠き引張試験片の形状と、引張試験結果(すなわち、荷重−変位曲線)をもとにした有限要素解析を行い、切欠き底で延性き裂が発生する臨界の相当塑性ひずみを求めた。
冷間鍛造性は、圧延方向に対して平行に切り出した素材から得た試験片の延性き裂発生点における相当塑性ひずみεにより評価した。その結果、R3環状切欠き引張試験片のεが0.75以上および/またはR20環状切欠き引張試験片のεが1.05以上である鋼は、冷間鍛造時に割れにくく、冷間鍛造性が良好であった。
鋼の冷間鍛造性の異方性は、圧延方向に対して平行に切り出した素材から得た試験片の延性き裂発生点における相当塑性ひずみεと、圧延方向に対して垂直に切り出した素材から得た試験片の延性き裂発生点における相当塑性ひずみεとの差(ε−ε)で評価できる。本発明では、環状切欠き引張試験片の曲率半径に関わらず、ε−εが0.3以下の場合を異方性が小さく、冷間鍛造性に優れると評価した。
鋼の冷間鍛造性と、成分組成との関係を検討した。その結果、冷間鍛造性の異方性(ε−ε)と、CrおよびTeの添加量とに相関が見られることがわかった。また、冷間鍛造性の異方性(ε−ε)は、Cr及びTeの添加量と、その積Cr×Teで整理できることがわかった。
図5は、種々の成分組成の試験片において、CrおよびTeの添加量とε−εとの関係を説明する図である。図5において、○はε−εが0.3以下である試験片を示し、×はε−εが0.3超の試験片を示す。また、図5に示す曲線は、Cr×Te=0.010で示されるものである。また、図5に示す4つの直線は、それぞれCr=1.50質量%、Cr=3.00質量%、Te=0.0003質量%、Te=0.0050質量%で示されるものである。
図5に示したように、Cr:1.50〜3.00質量%、Te:0.0003〜0.0050質量%、Cr×Te≦0.010を満足する成分組成の範囲内で、ε−εが0.3以下となり、異方性が小さく、優れた冷間鍛造性が得られることがわかった。
<2>粒界酸化層深さ及び不完全焼入層深さの測定:
種々の成分組成の素材から圧延方向に対して平行に切り出したR3環状切欠き引張試験片に、図6に示すヒートパターンによる浸炭焼入−焼戻しを施した。なお、図6中のCpはカーボンポテンシャルを表す。また、図6において、120℃油焼入は油温120℃の油中に焼入したことを表し、更にACは空冷したことを表す。油焼入については、均一に焼入処理されるように、攪拌している焼入油中に引張試験片を投入して行った。
次に、浸炭焼入−焼戻し処理したR3環状切欠き引張試験片を、直径6mmの切欠き部を横断するように切断した。その後、圧延方向と直交する切断面が観察面になるように、試験片を樹脂に埋め込み、研磨を行って観察面を鏡面仕上げした。
研磨後、試験片の表層部を、倍率1000倍の光学顕微鏡によって任意に10視野観察した。そして、試験片表層部の結晶粒界に沿って観察される粒界酸化層の深さを測定し、算術平均して、粒界酸化層深さを求めた。
続いて、研磨後の試験片の観察面を、ナイタール(硝酸アルコール溶液)で0.2〜2秒腐食し、倍率1000倍の光学顕微鏡によって、試験片の表層部を任意に10視野観察した。そして、表層部において内部より腐食の程度が顕著な部分を不完全焼入層とし、それらの深さを算術平均して不完全焼入層深さを求めた。
図7に、種々の成分組成の試験片における[fn3=(14/24)×Cr+(14/25)×Mn−Si]の値と粒界酸化層深さの関係を示す。図7において、○は粒界酸化層深さが10μm以下である試験片を示し、×は粒界酸化層深さが10μm超である試験片を示す。
図8に、種々の成分組成の試験片における[fn3=(14/24)×Cr+(14/25)×Mn−Si]の値と不完全焼入層深さの関係を示す。図8において、○は不完全焼入層深さが15μm以下である試験片を示し、×は不完全焼入層深さが15μm超である試験片を示す。
図7および図8に示すように、[fn3=(14/24)×Cr+(14/25)×Mn−Si]が0.90〜1.60の範囲内で、粒界酸化層深さ及び不完全焼入層深さが浅くなり、浸炭異常層の生成を抑制できることがわかった。
以下、本発明について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
C:0.10〜0.30%
Cは、部品の強度確保のため必須の元素であり、0.10%以上の含有量が必要であり、0.15%以上含有することが好ましい。しかしながら、Cの含有量が多過ぎると硬さが大きくなって冷間加工性の低下を招く。特に、Cの含有量が0.30%を超えると、硬さ上昇に伴う冷間加工性の低下が著しくなる。したがって、Cの含有量を0.30%以下とした。なお、より一層良好な冷間加工性が要求される場合には、Cの含有量を0.20%以下とすることが好ましい。
Si:0.02〜1.00%
Siは鋼の焼戻し軟化抵抗を高め、部品が高温で使用される際の軟化を防ぐ効果がある。これらの効果を得るには、0.02%以上のSiを含有する必要がある。一方、Siは少量を含有した場合には、浸炭処理中に表層で選択酸化され、浸炭異常層である粒界酸化層及び不完全焼入層を形成するため、曲げ疲労強度および面疲労強度を表すピッティング強度の低下を招く。しかし、Siを0.15%以上含有した場合には、むしろひび割れ状に発達する表層酸化が抑制されるため、曲げ疲労強度およびピッティング強度の低下は抑制される。よってSiは、0.15%以上含有するのが好ましい。Siの含有量が多くなると、焼戻し軟化抵抗の効果が飽和し、冷間加工性も低下する。特に、Siの含有量が1.00%を超えると、冷間加工性の低下が著しくなる。より一層良好な冷間加工性が要求される場合には、Siの含有量を0.70%以下とすることが好ましい。
なお、Siの含有量は上記の範囲において、前記の(3)式で表されるfn3の値が0.90≦fn3≦1.60をも満たす必要がある。
Mn:0.30〜1.00%
Mnは、焼入性を向上させる作用を有する。焼入性向上の効果を得るには、0.30%以上のMn含有量が必要である。しかしながら、Mnの含有量が多くなると、硬さが大きくなって冷間加工性の低下を招く。特に、Mnの含有量が1.00%を超えると、硬さ上昇に伴う冷間加工性の低下が著しくなる。しかも、Siと同様にMnは酸化し易い元素であるため、その含有量が多くなると、鋼表面にMn酸化物が生成され、浸炭異常層である粒界酸化及び不完全焼入層の深さが大きくなる。そして、浸炭異常層の深さが大きくなると、曲げ疲労強度及びピッティング強度の低下を招く。特に、Mnの含有量が1.00%を超えると、浸炭異常層の深さ増大による曲げ疲労強度及びピッティング強度の低下が著しくなる。したがって、Mnの含有量を0.30〜1.00%とした。なお、Mn含有量の好ましい下限は0.60%である。また、Mn含有量の好ましい上限は0.90%である。
なお、Mnの含有量は上記の範囲において、前記の(1)式で表されるfn1の値が30≦fn1≦150を満たし、前記の(3)式で表されるfn3の値が0.90≦fn3≦1.60を満たす必要がある。
S:0.002〜0.030%以下
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させる作用がある。したがって、Sの含有量を0.002%以上とする。しかし、Sの含有量が0.030%を超えると、粗大なMnSを形成して、熱間加工性、冷間鍛造性、曲げ疲労強度及びピッティング強度が低下する。したがって、Sの含有量を0.030%以下に制限し、好ましくは0.020%以下とする。鋼の被削性を高める場合、好ましいS含有量は0.010%以上である。
なお、Sの含有量は上記の範囲において、前記の(1)式で表されるfn1の値が30≦fn1≦150をも満たす必要がある。
Cr:1.50〜3.00%
Crは、焼入性を向上させる効果、焼戻し軟化抵抗及びMnSの球状化を促進する効果を有し、高温状況下での鋼の軟化を防ぐ効果及び冷間鍛造性の異方性を低減する効果がある。これらの効果を得るには、1.50%以上の含有量が必要である。しかしながら、Crの含有量が多くなると、硬さが高くなって冷間加工性の低下を招く。特に、Crの含有量が3.00%を超えると、硬さ上昇に伴う冷間加工性の低下が著しくなる。しかも、Si及びMnと同様に、Crは酸化し易い元素である。このため、Crの含有量が多くなると、鋼表面にCr酸化物が生成され、浸炭異常層である粒界酸化層及び不完全焼入層の深さが大きくなる。そして、浸炭異常層の深さが大きくなると、曲げ疲労強度及びピッティング強度の低下を招く。特に、Crの含有量が3.00%を超えると、浸炭異常層の深さ増大による曲げ疲労強度及びピッティング強度の低下が著しくなる。したがって、Crの含有量を1.50〜3.00%とした。より一層良好な冷間加工性が要求される場合には、Crの含有量を2.00%以下とすることが好ましい。Crを含有させることによる上記効果を得るには、Crの含有量を1.80%以上とすることが好ましい。
なお、Crの含有量は上記の範囲において、前記の(2)式で表されるfn2の値がfn2≦0.010を満たし、前記の(3)式で表されるfn3の値が0.90≦fn3≦1.60を満たす必要がある。
Al:0.010〜0.050%
Alには、Nと結合してAlNを形成し、結晶粒を微細化して鋼を強化する作用がある。しかしながら、Alの含有量が0.010%未満では、結晶粒微細化の効果が得られ難い。一方、Alの含有量が過剰になると、硬質で粗大なAl形成による被削性の低下をきたし、更に、曲げ疲労強度及びピッティング強度も低下する。特に、Alの含有量が0.050%を超えると、被削性、曲げ疲労強度及びピッティング強度の低下が著しくなる。したがって、Alの含有量を0.010〜0.050%とした。なお、Alの含有量の好ましい下限は0.020%である。また、Alの含有量の好ましい上限は0.040%である。
N:0.0040〜0.0250%
Nは、窒化物を形成することにより結晶粒を微細化させ、曲げ疲労強度を向上させる効果を有する。この効果を得るには、Nを0.0040%以上含有する必要がある。しかしながら、Nの含有量が過剰になると、粗大な窒化物を形成して靭性の低下を招く。特に、Nの含有量が0.0250%を超えると、靭性の低下が著しくなる。したがって、Nの含有量を0.0040〜0.0250%とした。なお、N含有量の好ましい下限は0.0130%である。また、N含有量の好ましい上限は0.0200%である。
Te:0.0003〜0.0050%
Teは、MnSの球状化を促進する極めて重要な元素であり、冷間鍛造性の異方性を低減するために、0.0003%以上を添加する。一方、Te含有量が0.0050%を超えると、鋼の熱間加工性が低下する。したがって、Te含有量は0.0003〜0.0050%とした。Te含有量は、冷間鍛造性の異方性をより低減するため、0.0005%以上であることが好ましい。Te含有量は、熱間加工性の低下を抑制するために、0.0030%以下であることが好ましい。
なお、Teの含有量は上記の範囲において、前記の(2)式で表されるfn2の値がfn2≦0.010をも満たす必要がある。
fn1の値:30以上150以下
粗大なMnSは、熱間圧延や熱間鍛造などの熱間加工時の割れ及び冷間鍛造時の割れの起点となる。このため、熱間加工時の割れ及び冷間鍛造時の割れを抑制するためには、粗大なMnSを極力少なくすることが必要である。
前記の(1)式で表されるfn1の値が30未満である場合には、Sの含有量が過剰となって粗大なMnSの生成が避けられない。一方、fn1の値が150を超える場合には、Mnの含有量が過剰となって中心偏析部において粗大なMnSが生成する。そのため、いずれの場合にも、冷間鍛造性に悪影響を及ぼす。したがって、前記の(1)式、つまり[fn1=Mn/S]で表されるfn1の値が、30≦fn1≦150を満たすこととした。なお、fn1の値の好ましい下限は50である。また、fn1の好ましい上限は100である。
fn2の値:0.010以下
圧延方向に延伸したMnSは、延性の異方性を生じさせる。このため、できるだけMnSの形状を球状に近づけることが必要である。MnSの球状化を促進するためには、Teの添加が有効であるが、Cr含有量が高い場合、前記の(2)式で表されるfn2の値が0.010を超える場合には高温延性が低下する。この理由は必ずしも明らかではないが、結果として、冷間鍛造性に悪影響を及ぼす。したがって、前記の(2)式、つまり[fn2=Cr×Te]で表されるfn2の値が、fn2≦0.010を満たすこととした。fn2の好ましい上限は0.008である。
fn3の値:0.90以上1.60以下
Ni及びMoを極力含有させることなく、高い曲げ疲労強度と高いピッティング強度を具備させるためには、焼入性を確保しつつ、浸炭異常層である粒界酸化層及び不完全焼入性の深さを小さくする必要がある。そのためには、酸化し易い元素のうちで、特に、Cr、Si、Mnの含有量を前記の範囲にしたうえで、これらの元素の含有量バランスとしての前記(3)式で表されるfn3の値を0.90以上1.60以下とする必要がある。すなわち、前記(3)式で表されるfn3の値が0.90未満である場合及び1.60を超える場合にはいずれも、浸炭異常層の深さが大きくなるので、曲げ疲労強度とピッティング強度が低下してしまう。したがって、前記(3)式、つまり[fn3=(14/24)×Cr+(14/25)×Mn−Si]で表されるfn3の値が、0.90≦fn3≦1.60を満たすことが必要である。なお、fn3の好ましい下限は0.95以上である。fn3の好ましい上限は1.55以下である。
本発明においては、P、Ti及びO(酸素)は、不純物であり、その含有量をそれぞれ、P:0.020%以下、Ti:0.005%未満及びO:0.0015%以下に制限する必要がある。
P:0.020%以下
Pは、鋼に含有される不純物であり、結晶粒界に偏析して鋼を脆化させる。特に、Pの含有量が0.020%を超えると、脆化の程度が著しくなる。好ましいPの含有量は0.010%以下である。
Ti:0.005%未満
Tiは、Nとの親和性が高いため、鋼中のNと結合して硬質で粗大な非金属介在物であるTiNを形成し、曲げ疲労強度及びピッティング強度を低下させ、更に、被削性も低下させる。したがって、本発明においては、不純物中のTiの含有量を0.005%未満とした。Ti含有量は0.003%以下であることが好ましい。
O(酸素):0.0015%以下
O(酸素)は、鋼中のSiやAlと結合して、酸化物を生成する。酸化物のうちでも、特に、Alは硬質であるため、被削性を低下させ、更に、曲げ疲労強度及びピッティング強度の低下も招く。したがって、本発明においては、不純物のOの含有量を0.0015%以下とした。O(酸素)含有量は0.0013%以下であることが好ましい。
本発明の肌焼鋼は、必要に応じて更に、下記の第1群〜第3群の各グループの元素の1種類以上を選択的に含有させることができる。
第1群:Mo:0.10%以下、Cu:0.20%以下、Ni:0.20%以下のうちの1種又は2種以上、第2群:V:0.20%以下、Nb:0.050%以下の一方又は両方、第3群:Ca:0.0050%以下、Zr:0.010%以下の一方又は両方。
第1群:Mo:0.10%以下、Cu:0.20%以下及びNi:0.20%以下のうちの1種以上
Mo、Cu及びNiは、いずれも、焼入性を高める作用を有する。このため、より大きな焼入性を得たい場合には、以下の範囲で含有してもよい。ただし、これらの合金元素は高価であり、コストを低下させるために、含有量を制限することが好ましい。
Mo:0.10%以下
Moは、焼入性を高める作用を有し、浸炭焼入後の表面硬さ、硬化層深さ及び芯部硬さを向上させて、浸炭部品の強度を確保する効果がある。しかも、Moは、酸化し難い元素であるため、浸炭時に粒界酸化層の深さを増大させずに鋼表層を強靭化することができる。このため、これらの効果を得るためにMoを含有してもよい。しかしながら、Moは高価な元素であり、過度の添加は成分コストの上昇につながる。したがって、Moの含有量を0.10%以下とした。一方、前記したMoの作用効果を確実に得るためには、Moの含有量は0.04%以上とすることが好ましい。
Cu:0.20%以下
Cuは、焼入性を高める作用を有するので、さらなる焼入性向上のために含有してもよい。しかしながら、Cuは熱間加工性の低下を招く。特に、Cuの含有量が0.20%を超えると、熱間加工性の低下が著しくなる。Cuの好ましい含有量は0.18%以下である。また、Cuを含有することによる焼入性向上効果を確実に得るためには、Cuの含有量は0.05%以上とすることが好ましい。
Ni:0.20%以下
Niは、焼入性を高める作用を有する。Niは、靭性を向上させる作用があり、酸化し難い元素であるため、浸炭時に粒界酸化層の深さを増大させずに鋼表面を強靭化できる。これらの効果を得るためにNiを含有してもよい。しかしながら、Niは高価な元素であるので、Niの含有量を0.20%以下とした。前記したNiの作用効果を確実に得るためには、Niの含有量は0.05%以上とすることが好ましい。
なお、上記のMo、Cu及びNiは、そのうちいずれか1種のみ、又は2種以上を複合で含有することができる。
第2群:V:0.20%以下及びNb:0.050%以下のうちの1種又は2種
V及びNbは、いずれも、C及びNと結合して微細な炭化物、窒化物及び炭窒化物を形成して結晶粒を微細化し、曲げ疲労強度及びピッティング強度を向上させる効果を有する。このため、さらなる曲げ疲労強度の向上及びピッティング強度の向上のために、V及びNbを以下の範囲で含有してもよい。
V:0.20%以下
Vは、C及びNと結合して微細な炭化物、窒化物、炭窒化物を形成して結晶粒を微細化し、曲げ疲労強度及びピッティング強度を向上させる効果を有する。しかしながら、Vの含有量が過剰になると、熱間延性の低下を招く。特に、Vの含有量が0.20%を超えると、熱間延性の低下が著しくなり、熱間圧延時に表面キズが発生しやすくなる。したがって、Vの含有量を0.20%以下とした。Vの結晶粒微細化効果を確実に得るためには、その含有量を0.05%以上とすることが好ましい。このため、より望ましいVの含有量は0.05〜0.20%である。なお、一層望ましいV含有量の下限は0.08%である。また、一層好ましいV含有量の上限は0.10%である。
Nb:0.050%以下
Nbは、C及びNと結合して微細な炭化物、窒化物、炭窒化物を形成して結晶粒を微細化し、曲げ疲労強度及びピッティング強度を向上させる効果を有する。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると、熱間延性の低下を招く。特に、Nbの含有量が0.050%を超えると、熱間延性の低下が著しくなって、熱間圧延時に表面キズが発生しやすくなる。したがって、Nbの含有量を0.050%以下とした。前記したNbの結晶粒微細化効果を確実に得るためには、含有量を0.005%以上とすることが好ましい。このため、より望ましいNbの含有量は0.005〜0.050%である。なお、Nb含有量の一層好ましい下限は0.020%である。また、一層好ましいNb含有量の上限は0.040%である。
なお、上記のV及びNbは、そのうちいずれか1種のみ、又は2種を複合で含有することができる。
第3群:Ca:0.0050%以下及びZr:0.010%以下のうちの1種又は2種
Ca及びZrは、MnSを球状化し、異方性を小さくすることで冷間鍛造性を向上させる。このため、さらなる冷間鍛造性の向上のためには以下の範囲で含有させてもよい。
Ca:0.0050%以下
Caは、軟質酸化物を生成し、被削性を向上させるだけでなく、MnSに固溶してその変形能を低下させ、圧延や熱間鍛造してもMnS形状の延伸を抑制する働きがある。したがって、異方性の低減に有効な元素である。しかし、0.0050%を超えてCaを添加しても硬質のCaOを大量に生成し、かえって被削性や疲労特性などの機械的性質が低下する。したがって、Caの含有量を0.0050%以下とする。好ましくは0.0030%以下である。また、Caの含有量は切削性改善効果を安定的に発現するため、0.0003%以上であることが好ましい。
Zr:0.010%以下
Zrは鋼中に酸化物を生成する。Zr酸化物はMnSの析出核となるため、MnSの析出サイトを増やし、MnSを均一分散させる。また、ZrはMnSに固溶して、複合硫化物を生成してその変形能を低下させ、圧延や熱間鍛造してもMnS形状の延伸を抑制する働きがある。したがって、Zrは、異方性の低減に有効な元素である。しかし、0.010%を超えてZrを添加すると、硬質のZrOやZrSなどを大量に生成し、かえって被削性や疲労特性などの機械的性質が低下する。したがって、Zrの含有量を0.010%以下とする。Zr含有量は、好ましくは0.008%以下である。また、Zrの含有量は、異方性の低減効果および切削性改善効果を安定的に発現するため、0.002%以上であることが好ましい。
本実施形態の肌焼鋼は、従来公知の方法により製造できる。例えば、上述した成分組成の鋼材を、転炉、電気炉等の通常の方法によって溶製し、鋳造工程、必要に応じて分塊圧延工程を経て、線材または棒鋼に熱間圧延することによって製造できる。
本実施形態の肌焼鋼の浸炭焼入条件は、特に限定されるものはない。本実施形態の肌焼鋼を用いて加工される部品の用途等に応じて決定できる。
表1に示す成分組成の鋼材を、150kg真空溶解炉によって溶製後、直径55mmの丸棒に熱間鍛伸することによって、試験番号1〜30の肌焼鋼を製造した。なお、球状化焼鈍として直径55mmの丸棒に対して760℃の温度で4.5時間の熱処理を行った。
表1中の鋼1〜18は、化学組成が本発明で規定する範囲内にある本発明例の鋼であり、一方、鋼19〜30は、化学組成が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。
上記の比較例の鋼のうちで鋼19及び鋼20はそれぞれ、JIS G 4052(2003)に規定されたニッケルクロムモリブデン鋼のSNCM220H及びクロムモリブデン鋼のSCM420Hに相当する鋼である。
Figure 0006488945
上述した<1>冷間鍛造性の調査に記載の方法を用いて、試験番号1〜30の肌焼鋼から、それぞれ図2に示すR3環状切欠き引張試験片及び図3に示すR20環状切欠き引張試験片を採取し、ε−ε(圧延方向に対して平行に切り出した素材から得た試験片の延性き裂発生点における相当塑性ひずみεと、圧延方向に対して垂直に切り出した素材から得た試験片の延性き裂発生点における相当塑性ひずみεとの差)およびεを求めた。
そして、R3環状切欠き引張試験片のεが0.75以上およびR20環状切欠き引張試験片のεが1.05以上の場合、冷間鍛造時に割れにくく、冷間鍛造性が良好であると評価した。また、ε−εが0.3以下の場合を異方性が小さく、冷間鍛造性に優れると評価した。
上述した<2>粒界酸化層深さ及び不完全焼入層深さの調査に記載の方法を用いて、以下に示す試験片を得た。すなわち、試験番号1〜30の肌焼鋼の圧延方向に対して平行に切り出した素材から得た図2に示すR3環状切欠き引張試験片に対して、図6に示すヒートパターンによる浸炭焼入−焼戻しを施した。次いで、浸炭焼入−焼戻し処理したR3環状切欠き引張試験片の直径6mmの切欠き部を横断するように切断した。その後、圧延方向と直交する切断面が観察面になるように、切断した試験片を樹脂に埋め込み、研磨を行って鏡面仕上げした面を観察面とする試験片を得た。
「有効硬化層深さ」
そして、JIS Z 2244に準拠し、マイクロビッカース硬度計を使用して、研磨後の試験片の表面から中心に向かう方向(圧延方向と直交する方向)に、試験力を2.94Nとしてビッカース硬さ(Hv硬さ)を測定した。Hv硬さが550となる場合の表面からの深さを、任意の10箇所で測定し、その最小値を有効硬化層深さとした。有効硬化層深さは0.6mm以上の場合を良好と評価した。
「粒界酸化層深さ」
試験片として、有効硬化層深さの測定に使用した試験片の観察面を再度研磨し、鏡面仕上げしたままのものを用いて、上述した<2>粒界酸化層深さ及び不完全焼入層深さの測定に記載の方法を用いて、粒界酸化層深さを求めた。粒界酸化層深さは10μm以下の場合を良好と評価した。
「不完全焼入層深さ」
粒界酸化層深さの測定に使用した試験片の観察面を、ナイタールで0.2〜2秒腐食し、上述した<2>粒界酸化層深さ及び不完全焼入層深さの測定に記載の方法を用いて、不完全焼入層深さを求めた。不完全焼入層深さは、15μm以下の場合を良好と評価した。
「MnS粒子の平均アスペクト比」
粒界酸化層深さの測定に使用した試験片を圧延方向に沿って切断した。その後、圧延方向に沿う断面である切断面が観察面になるように樹脂に埋め込み、研磨を行って、鏡面仕上げした。観察面を倍率500倍の走査型電子顕微鏡を用いて観察した。そして、300個のMnS粒子について、MnS粒子の長手方向を縦方向として縦および横の長さを測定し、それぞれの平均値を平均アスペクト比(縦の長さ/横の長さ)として算出した。MnS粒子の平均アスペクト比は、6以下の場合を良好と評価した。なお、MnS粒子のアスペクト比は、浸炭焼入−焼戻しを施す前と後とで違いはない。
「回転曲げ疲労試験による疲労特性」
試験番号1〜30の肌焼鋼を上記球状化焼鈍した後の直径55mmの素材から、長さ方向が圧延方向に平行である図9に示す粗形状(切り出しまま)の切欠き回転曲げ疲労試験片を切り出した。図9に示す粗形状の切欠き回転曲げ疲労試験片に対して、図6に示すヒートパターンによる浸炭焼入−焼戻しを施した。その後、仕上げ加工を行い、図10に示す切欠き回転曲げ疲労試験片を作製した。
この仕上げ加工した回転曲げ疲労試験片を用いて、下記の試験条件によって回転曲げ疲労試験を実施し、繰返し数が10回において破断しない最大の強度で回転曲げ疲労強度を評価した。
・温度:室温、
・雰囲気:大気中、
・回転数:3000rpm。
なお、回転曲げ疲労強度が550MPa以上の場合を回転曲げ疲労強度特性に優れるものとした。
「ローラーピッティング試験による耐ピッティング特性評価」
上記球状化焼鈍後の直径55mmの素材から、長さ方向が圧延方向に平行である図11に示す粗形状(切り出しまま)のローラーピッティング小ローラー試験片を切り出した。
その後、図11に示す粗形状のローラーピッティング小ローラー試験片に対して、図6に示すヒートパターンによる浸炭焼入−焼戻しを施し、仕上げ加工を行って、図12に示すローラーピッティング小ローラー試験片を作製した。
また、表2に示す鋼31、すなわちJIS G 4052 (2003)に規定された化学成分を有するSCM420Hを300kg真空溶解炉によって溶製した。その後、直径140mmの丸棒に熱間圧延することによって、試験番号31の肌焼鋼を製造した。なお、球状化焼鈍として直径140mmの丸棒に対して760℃の温度で9.0時間の熱処理を行った。
Figure 0006488945
試験番号31の肌焼鋼を上記球状化焼鈍試験した後の直径140mmの素材から、ローラー試験片の厚さ方向が圧延方向に平行となるように、図13(a)および図13(b)に示す粗形状(切り出しまま)のローラーピッティング大ローラー試験片を切り出した。図13(a)は粗形状のローラーピッティング大ローラー試験片を中心線で半割りにした場合の正面図であり、図13(b)は中心線における断面図である。
その後、図13に示す粗形状のローラーピッティング大ローラー試験片に対して、図6に示すヒートパターンによる浸炭焼入−焼戻しを施し、仕上げ加工を行って、図14に示すローラーピッティング大ローラー試験片を作製した。
図12に示す仕上げ加工したローラーピッティング小ローラー試験片および図14に示すローラーピッティング大ローラー試験片を用いて、下記試験条件でローラーピッティング試験(二円筒転がり疲労試験)を実施し、繰返し数10回において、長辺が1mm以上の大きなピッティングが発生しない最大の面圧でピッティング強度を評価した。
・すべり率:40%、
・回転数:1000rpm、
・潤滑:油温100℃のマニュアルトランスミッション用潤滑油を2.0リットル/分の割合で、ローラーピッティング小ローラー試験片とローラーピッティング大試験片の接触部に噴出させて実施した。
ただし、上記の「すべり率」は、「V1」をローラーピッティング小ローラー試験片表面の接線速度、「V2」をローラーピッティング大ローラー試験片表面の接線速度として、下記の式で計算される値を指す。
すべり率={(V2−V1)/V1}×100
なお、ピッティング強度が1650MPa以上の場合を耐ピッティング特性に優れるものとした。
表3に、ε、ε−εC、有効硬化層深さ、粒界酸化層深さ、不完全焼入層深さ、MnS粒子の平均アスペクト比、曲げ疲労強度、ピッティング強度の結果をまとめて示す。
Figure 0006488945
表3に示したように、本発明で規定する条件を満たす鋼を用いた試験番号1〜18では、ε−εが0.3以下であり、冷間鍛造の異方性が小さかった。また、試験番号1〜18では、R3環状切欠き引張試験のεが0.75以上であって、R20環状切欠き引張試験のεが1.05以上であり、冷間鍛造時に割れにくいものであった。よって、試験番号1〜18で用いた鋼は、良好な冷間鍛造性を有する。
また、本発明で規定する条件を満たす鋼に浸炭焼入−焼戻しを施した試験番号1〜18では、MnS粒子の平均アスペクト比が6以下であり、MnS粒子の圧延方向への延伸が抑性されていた。さらに、試験番号1〜18では、有効硬化層深さが0.6mm以上であるとともに、粒界酸化層深さが10μm以下、不完全焼入層深さは15μm以下であり、浸炭焼入による浸炭異常層の生成が抑制されていた。
また、試験番号1〜18は、鋼19(ニッケルクロムモリブデン鋼のSNCM220Hに相当)及び鋼20(クロムモリブデン鋼のSCM420Hに相当)を用いた試験番号19及び20の場合と同等以上の有効硬化層深さを有し、試験番号19及び20と比較して、粒界酸化層深さ及び不完全焼入層深さが浅かった。
さらに、鋼1〜18を用いた試験番号1〜18では、高い曲げ疲労強度、高いピッティング強度を確保できることがわかった。
これに対して、試験番号19では、鋼19にTeが添加されていないため、ε−εの値が高く、冷間鍛造性の異方性が大きい。また、試験番号19は、R3およびR20環状切欠き引張試験片のεが小さく、冷間鍛造性が不十分である。さらに、試験番号19は平均アスペクト比が高い。また、試験番号19は[fn3=(14/24)×Cr+(14/25)×Mn−Si]の値が本発明で規定する範囲を下回るため、曲げ疲労強度及びピッティング強度に悪影響を及ぼす粒界酸化層深さ及び不完全層焼入層深さは試験番号1〜18と比較して深い。
試験番号20では、鋼20にTeが添加されていないため、ε−εの値が高く、冷間鍛造性の異方性が大きい。また、試験番号20は、R3およびR20環状切欠き引張試験片のεが小さく、冷間鍛造性が不十分である。さらに、試験番号20は平均アスペクト比が高い。また、試験番号20は上記の[fn3]の値が本発明で規定する範囲を下回るため、曲げ疲労強度及びピッティング強度に悪影響を及ぼす粒界酸化層深さ及び不完全層焼入層深さは試験番号1〜18と比較して深い。
試験番号21では、鋼21のCrの添加量が本発明で規定する範囲を下回るため、試験番号1〜18と比較して平均アスペクト比が大きく、曲げ疲労強度及びピッティング強度も試験番号1〜18と比較して低い。
試験番号22では、R3およびR20環状切欠き引張試験片のεが小さく、試験番号1〜18と比較して冷間鍛造性が悪い。また、試験番号22は平均アスペクト比が大きい。これらの結果は、鋼22の[fn1=Mn/S]の値が本発明で規定する範囲を下回るため、粗大なMnSが生成したことによるものであると推定される。さらに、試験番号22では、鋼22の上記[fn3]の値が本発明で限定する範囲を下回るため、不完全焼入層深さが試験番号1〜18と比較して深く、曲げ疲労強度およびピッティング強度が低い。
試験番号23では、鋼23の[fn2=Cr×Te]の値が本発明で規定する範囲を上回るため、ε−εの値が高く、試験番号1〜18と比較して異方性が大きい。さらに、試験番号23は平均アスペクト比が大きい。また、試験番号23はR3およびR20環状切欠き引張試験片のεが小さく、冷間鍛造性が不十分である。
試験番号24では、鋼24の上記[fn3]の値が本発明で限定する範囲を上回るため、粒界酸化層深さおよび不完全焼入層深さが試験番号1〜18と比較して深く、曲げ疲労強度およびピッティング強度が低い。
試験番号25では、R3およびR20環状切欠き引張試験片のεが小さく、試験番号1〜18と比較して冷間鍛造性が悪い。これは、鋼25のMnの添加量が本発明で規定する範囲を上回り、[fn1=Mn/S]の値が本発明で規定する範囲を上回るため、粗大なMnSが生成したことによるものであると推定される。さらに、鋼25の上記[fn3]の値が本発明で限定する範囲を上回るため、不完全焼入層深さが試験番号1〜18と比較して深く、曲げ疲労強度およびピッティング強度が低い。
試験番号26では、鋼26の上記[fn3]の値が本発明で規定する範囲を下回るため、粒界酸化層深さおよび不完全焼入層深さが試験番号1〜18と比較して深く、曲げ疲労強度およびピッティング強度が低い。
試験番号27では、R3およびR20環状切欠き引張試験片のεが小さく、試験番号1〜18と比較して冷間鍛造性が悪い。また、試験番号27は平均アスペクト比が大きい。これらの結果は、鋼27のSの添加量が本発明で規定する範囲を上回り、鋼27の[fn1=Mn/S]の値が本発明で規定する範囲を下回るため、粗大なMnSが生成したことによるものであると推定される。さらに、鋼27の上記[fn3]の値が本発明で限定する範囲を下回るため、粒界酸化層深さおよび不完全焼入層深さが試験番号1〜18と比較して深く、曲げ疲労強度およびピッティング強度が低い。
試験番号28では、Cの添加量が本発明で規定する範囲を下回るため、試験番号1〜18と比較して有効硬化層が浅く、曲げ疲労強度およびピッティング強度が低い。
試験番号29では、Siの添加量が本発明で規定する範囲を上回り、鋼29の上記[fn3]の値が本発明で限定する範囲を下回るため、粒界酸化層深さおよび不完全焼入層深さが試験番号1〜18と比較して深く、曲げ疲労強度およびピッティング強度が低い。
試験番号30では、Teの添加量が本発明で規定する範囲を下回るため、平均アスペクト比が大きい。また、試験番号30は、ε−εの値が高く、試験番号1〜18と比較して異方性が大きい。
本発明の肌焼鋼は、JIS G 4052(2003)に規定されたニッケルクロムモリブデン鋼のSNCM220H及びクロムモリブデン鋼のSCM420Hと比較してNiおよびMoの含有量が少ないため成分コストが低く、冷間鍛造の異方性が小さく良好な鍛造性を有する。しかも、この肌焼鋼を素材とする浸炭歯車は、SNCM220HおよびSCM420Hを素材とする浸炭部品と同じ程度の有効硬化層深さを有し、曲げ疲労強度およびピッティング強度に悪影響を及ぼす粒界酸化層深さおよび不完全焼入れ層深さが浅い。このため、本発明の肌焼鋼は、低コスト・軽量・耐高トルク性能を備えた浸炭歯車用の素材として用いるのに好適である。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.10〜0.30%、
    Si:0.02〜1.00%、
    Mn:0.30〜1.00%、
    S:0.002〜0.030%、
    Cr:1.50〜3.00%、
    Al:0.010〜0.050%、
    N:0.0040〜0.0250%、
    Te:0.0003〜0.0050%
    を含有し、
    P:0.020%以下、
    Ti:0.005%未満、
    O:0.0015%以下
    に制限し、残部はFe及び不可避的不純物からなり、
    Si、Mn、Cr、S及びTeの含有量が、下記の(1)式、(2)式及び(3)式で表されるfn1、fn2及びfn3の値でそれぞれ30≦fn1≦150、fn2≦0.010及び0.90≦fn3≦1.60を満たすことを特徴とする高強度冷間鍛造用肌焼鋼。
    fn1:Mn/S・・・(1)
    fn2:Cr×Te・・・(2)
    fn3:(14/24)×Cr+(14/25)×Mn−Si・・・(3)
    但し、(1)式、(2)式及び(3)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。
  2. 更に、質量%で、
    Mo:0.10%以下、
    Cu:0.20%以下、
    Ni:0.20%以下
    のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度冷間鍛造用肌焼鋼。
  3. 更に、質量%で、
    V:0.20%以下、
    Nb:0.026%以下
    の一方又は両方を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高強度冷間鍛造用肌焼鋼。
  4. 更に、質量%で、
    Ca:0.0050%以下、
    Zr:0.010%以下
    の一方又は両方を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の高強度冷間鍛造用肌焼鋼。
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