JP5742801B2 - 熱間圧延棒鋼または線材 - Google Patents
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C:0.55〜0.75%、
Si:0.1〜1.0%、
Mn:0.3〜1.5%、
Cr:0.1〜2.0%、
S:0.002〜0.05%、
Al:0.01〜0.2%および
N:0.002〜0.01%
を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のPおよびOがそれぞれ、
P:0.025%以下および
O:0.002%以下
で、さらに下記の[1]式で表されるFn1が2.5〜4.5である化学組成を有し、
組織が、
パーライト分率が90%以上、パーライトラメラの平均間隔が150〜300nmで、かつパーライトラメラ間隔の標準偏差が25nm以下である、
ことを特徴とする熱間圧延棒鋼または線材。
Fn1=3Si+Mn+1.5Cr・・・[1]
ただし、[1]式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
Cu:0.4%以下、Ni:0.8%以下、Mo:0.1%以下、V:0.2%以下およびB:0.003%以下のうちの1種以上を含有する、
ことを特徴とする上記(1)に記載の熱間圧延棒鋼または線材。
Ti:0.05%以下およびNb:0.05%以下のうちの1種以上を含有する、
ことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の熱間圧延棒鋼または線材。
C:0.55〜0.75%
Cは、高周波焼入れ部の面疲労強度を向上させるのに有効な元素である。しかし、Cの含有量が0.55%未満では、焼入れ部の硬さが低く、所望の面疲労強度が得られない。一方、Cの含有量が0.75%を超えると、冷間加工性が低下する。従って、Cの含有量を0.55〜0.75%とした。C含有量の好ましい下限は0.60%であり、好ましい上限は0.70%である。
Siは、高周波焼入れ部の面疲労強度を向上させるのに有効な元素であるとともに、脱酸剤として必要な元素でもある。しかし、その含有量が0.1%未満ではこれらの効果が得られない。一方、Siの含有量が1.0%を超えると、冷間加工性が著しく低下する。従って、Siの含有量を0.1〜1.0%とした。Si含有量の好ましい下限は0.2%であり、好ましい上限は0.8%である。
Mnは、高周波焼入れ部の面疲労強度を向上させるのに有効な元素であるとともに、Sによる熱間脆性の防止に必要な元素である。これらの効果を発揮させるためには、Mnを0.3%以上含有させる必要がある。しかし、その含有量が1.5%を超えると冷間加工性が低下する。従って、Mnの含有量を0.3〜1.5%とした。Mn含有量の好ましい下限は0.6%であり、好ましい上限は1.0%である。
Crは、高周波焼入れ部の面疲労強度を向上させるのに有効な元素である。しかし、その含有量が0.1%未満ではこの効果が得られない。また、Crは炭化物に濃化しやすい元素であり、炭化物を安定化する。このため、その含有量が2.0%を超えると、高周波焼入れ部に炭化物が多量に残存して鋼の硬さが低下し、面疲労寿命が低下する。従って、Cr含有量を0.1〜2.0%とした。Cr含有量の好ましい下限は0.6%であり、好ましい上限は1.5%である。
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、切削加工性を向上させる。しかし、その含有量が0.002%未満では、前記の効果が得難い。一方、その含有量が0.05%を超えると、粗大なMnSを生成し、面疲労強度を低下させたり、冷間加工性(変形能)を著しく低下させる傾向がある。従って、Sの含有量を0.002〜0.05%とした。S含有量の好ましい下限は0.01%であり、好ましい上限は0.04%である。
Alは、脱酸作用を有するとともに、鋼中のNと結合し、高周波焼入れ時の結晶粒の粗大化を防止し、曲げ疲労強度向上させる効果を有する。その効果を発揮させるには、0.01%以上のAl含有量が必要である。しかし、Alの含有量が0.2%を超えると、Alの大きな酸化物系介在物が残存し冷間加工時の割れ発生の原因となる。従って、Alの含有量を0.01〜0.2%とした。Al含有量の好ましい下限は0.02%であり、好ましい上限は0.05%である。
Nは、Alと結合して、窒化物を形成し、また、Cとともに、Nb、Tiと結合して、炭窒化物を形成し、これらの窒化物や炭窒化物のオーステナイト粒界のピンニング効果により、高周波焼入れ時の結晶粒の粗大化防止に有効である。その効果を発揮させるには、0.002%以上のN含有量が必要である。一方、Nがフェライト中に固溶した場合に歪時効を生じ、冷間加工性を低下させる。上記冷間加工性の低下は、Nの含有量が0.01%を超えると顕著になる。従って、Nの含有量を0.002〜0.01%とした。N含有量の好ましい上限は0.007%である。
Pは、粒界偏析して粒界を脆化させやすい元素であり、0.025%を超えて含まれると、面疲労強度を低下させる。従って、Pの含有量を0.025%以下とした。P含有量の好ましい上限は0.020%である。
Oは、Alと結合して硬質な酸化物系介在物を形成しやすく、面疲労強度を低下させてしまう。特に、Oの含有量が0.002%を超えると、面疲労強度の低下が著しくなる。従って、Oの含有量を0.002%以下とした。なお、不純物元素としてのOの含有量は0.001%以下にすることが好ましく、製鋼工程でのコスト上昇をきたさない範囲で、できる限り少なくすることがさらに望ましい。
Cuは、面疲労強度を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Cuの含有量が0.4%を超えると、上記の効果が飽和する。従って、Cuを含有させる場合には、その含有量を0.4%以下とした。Cu含有量の上限は、望ましくは0.3%である。
Niは、面疲労強度を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Niの含有量が0.8%を超えると、上記の効果が飽和する。従って、Niを含有させる場合には、その含有量を0.8%以下とした。Ni含有量の上限は、望ましくは0.6%である。
Moは、面疲労強度を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Moの含有量が0.1%を超えると、熱間圧延材のパーライト分率を90%以上にすることが困難になり、冷間加工性を低下させる。従って、Moを含有させる場合には、その含有量を0.1%以下とした。
Vは、面疲労強度を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Vの含有量が0.2%を超えると、上記の効果が飽和する。従って、Vを含有させる場合には、その含有量を0.2%以下とした。V含有量の上限は、望ましくは0.1%である。
Bは、焼入れ性を高めて、面疲労強度を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Bの含有量が0.003%を超えると、焼入れ性向上の効果が飽和する。従って、Bを含有させる場合には、その含有量を0.003%以下とした。
Tiは、高周波焼入れ時の結晶粒の粗大化を防止し、曲げ疲労強度向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Tiの含有量が0.05%を超えると、変形抵抗を増大させ、また、粗大な未固溶炭窒化物が残存して、冷間加工性の劣化を招くことがある。従って、Tiを含有させる場合には、その含有量を0.05%以下とした。Ti含有量の上限は、望ましくは0.04%である。
Nbは、高周波焼入れ時の結晶粒の粗大化を防止し、曲げ疲労強度向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Nbの含有量が0.05%を超えると、変形抵抗を増大させ、また、粗大な未固溶炭窒化物が残存して、冷間加工性の劣化を招くことがある。従って、Nbを含有させる場合には、その含有量を0.05%以下とした。Nb含有量の上限は、望ましくは0.04%である。
本発明の熱間圧延棒鋼または線材の化学組成は、さらに、
Fn1=3Si+Mn+1.5Cr・・・[1]
で表されるFn1が2.5〜4.5でなければならない。ただし、[1]式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。
C含有量が0.55〜0.75%の熱間圧延材(熱間圧延まま材)の焼鈍は一般に、加熱温度を750〜780℃とし、その後、徐冷する方法で行われ、通常、球状化焼鈍と呼ばれる。この条件で焼鈍を行った後の組織は、焼鈍前の組織が、初析フェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトのいずれかであるかによって、大きく異なる。そのため、焼鈍前の組織制御が重要である。
表1に示す化学組成を有する鋼A〜Vを70トン転炉で成分調整した後、連続鋳造を行って、400mm×300mm角の鋳片(ブルーム)を得て、600℃まで冷却した。なお、連続鋳造の凝固途中の段階で圧下を加えた。
直径50mmの各棒鋼について、長手方向に垂直、かつ、中心部を含む断面(横断面)を切り出した後、鏡面研磨してナイタールで腐食した試験片を、光学顕微鏡を用い倍率400倍で、表層の脱炭層を除いた領域から、ランダムに各15視野観察して組織調査を行った。なお、各視野の大きさは250μm×250μmである。各視野について通常の方法による画像解析によって、組織に占める各相の分率(面積割合)、具体的には、フェライト、パーライト、ベイナイトおよびマルテンサイトの分率を求めた。
図2に示す形状のローラーピッチング試験用小ローラー試験片と図3に示す形状のローラピッチング試験用大ローラーとの組み合わせで、表2に示す条件で、ローラーピッチング試験を行った。なお、潤滑油を上記の小ローラー試験片と大ローラーの接触部に噴出させて実施した。
{(V1−V2)/V1}×100。
実施例1において、目標とする面疲労強度を満たした鋼C〜鋼F、鋼I〜鋼Nおよび鋼P〜鋼Vについて、さらに、別の180mm×180mm角の鋼片を用いて、表4に示す製造条件〈1〉〜〈7〉によって、熱間圧延を行って34種類の直径50mmの棒鋼を得た。
前述の実施例1と同様の方法で組織の調査を行い、組織に占める各相の分率、パーライトラメラの平均間隔およびパーライトラメラ間隔の標準偏差を求めた。
上記の熱間圧延で作製した34種類の直径50mmの棒鋼を、770℃で3時間加熱後、770〜670℃の間の平均冷却速度を10℃/時間とし、670℃に至った時点で放冷して常温まで冷却した。
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.55〜0.75%、
Si:0.1〜1.0%、
Mn:0.3〜1.5%、
Cr:0.1〜2.0%、
S:0.002〜0.05%、
Al:0.01〜0.2%および
N:0.002〜0.01%
を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のPおよびOがそれぞれ、
P:0.025%以下および
O:0.002%以下
で、さらに下記の[1]式で表されるFn1が2.5〜4.5である化学組成を有し、
組織が、
パーライト分率が90%以上、パーライトラメラの平均間隔が150〜300nmで、かつパーライトラメラ間隔の標準偏差が25nm以下である、
ことを特徴とする熱間圧延棒鋼または線材。
Fn1=3Si+Mn+1.5Cr・・・[1]
ただし、[1]式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を意味する。 - Feの一部に代えて、質量%で、
Cu:0.4%以下、Ni:0.8%以下、Mo:0.1%以下、V:0.2%以下およびB:0.003%以下のうちの1種以上を含有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱間圧延棒鋼または線材。 - Feの一部に代えて、質量%で、
Ti:0.05%以下およびNb:0.05%以下のうちの1種以上を含有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の熱間圧延棒鋼または線材。
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