JP2019218586A - 浸炭用鋼及び部品 - Google Patents
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Abstract
Description
(a)Si含有量を少なくすれば、曲げ疲労強度が高まるものの、焼戻し軟化抵抗が低くなり、面疲労強度が不十分になる。一方、Si含有量を少なくし、かつ、Cr含有量及び/又はMo含有量を多くすることによって、曲げ疲労強度が向上する。
F1=Si+Cr+2×Mo
ここで、F1の前記式中の元素記号は、対応する元素の含有量(質量%)が代入され、対応する元素が不純物レベルの場合、F1の前記式の対応する元素記号には0が代入される。
Caは硫化物に固溶して硫化物の球状化を促進する。しかしながら、Sに対してCa含有量が高すぎれば、硫化物に固溶しなかったCaが粗大な酸化物を形成して鋼の耐水素脆化特性を低下する。鋼中のS含有量に対するCa含有量の比を適切な範囲に設定すれば、硫化物の形態を制御して耐水素脆化特性を維持できる。具体的には、熱間鍛造加工部品用鋼の化学組成が式(2)を満たす場合、耐水素脆化特性が維持される。
0.03≦Ca/S≦0.15・・・(2)
ここで、式(2)の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
Mn量の制限に加えて、前述した式(2)を前提に式(3)を満たすことによって、高強度であっても優れた耐水素脆化特性が得られる。
Mn/Cr≦0.20・・・(3)
ここで、式(3)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。F3=Mn/Crと定義する。
HR=Hc/Href・・・(A)
Hcは、後述の実施例において、各試験番号の限界拡散水素量である。限界拡散水素量Hcは、各試験番号において、種々の濃度の水素を導入した試験片に対して定荷重試験を実施した場合の、破断しなかった試験片の最大水素量を意味する。
被削性は、鋼の金属組織に依存する。金属組織中が主としてフェライトであり、かつ、初析フェライトの面積率が高ければ、被削性に優れる。具体的には、浸炭用鋼の金属組織中において、フェライトの面積率が50%以上であり、残部がパーライト及びベイナイトであれば、熱間鍛造加工性が高まる。
(1)質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:0.20〜0.60%、Mn:0.20〜0.40%未満、Cr:1.60〜2.00%、Al:0.005〜0.060%、N:0.0015〜0.0080%、Ca:0.0003〜0.0050%、及びS:0.010〜0.020%を含有し、
P:0.020%以下、O:0.0020%以下に制限され、
残部はFe及び不純物からなり、
下記式(1)〜式(3)を満たす化学組成を有し、
フェライトの面積率が50%以上であることを特徴とする浸炭用鋼。
1.90≦Si+Cr≦2.40・・・ (1)
0.03≦Ca/S≦0.15・・・(2)
Mn/Cr≦0.20・・・(3)
ここで、式(1)〜式(3)の各元素記号には対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
(2)更に、質量%で、
Sb:0.100%以下、Sn:0.100%以下、及びBi:0.100%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の浸炭用鋼。
(3)更に、質量%で、Ti:0.010〜0.050%、B:0.0003〜0.0040%、Cu:0.50%以下、Ni:0.30%以下、Mo:0.05%以下、V:0.050%以下、及びNb:0.050%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を含有し、
下記式(1’)を満たすことを特徴とする(1)又は(2)に記載の浸炭用鋼。
1.90≦Si+Cr+2×Mo≦2.40・・・ (1’)
ここで、式(1’)の各元素記号には対応する元素の含有量(質量%)が代入され、対応する元素が不純物レベルの場合、式(1’)の対応する元素記号には0が代入される。
(4)鋼の金属組織は、フェライトの面積率が65%〜90%であることを特徴とする(1)〜(3)のうちいずれかに記載の浸炭用鋼。
(5)(1)〜(3)のうちいずれかに記載の成分組成を有する芯部と、前記芯部よりも炭素含有量が高い表層部とを有することを特徴とする部品。
本実施形態の浸炭用鋼の化学組成は、次の元素を含有する。
炭素(C)は、鋼の強度を高める。具体的には、Cは、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れを実施した鋼製部品の芯部の強度を高める。しかしながら、Cが過剰に含有されれば、パーライトの面積率が増大してフェライトの面積率が減少して鋼の硬度が増大するため、被削性が悪化する。したがって、C含有量は、0.15〜0.25%である。好ましいC含有量の上限は、0.23%である。好ましいC含有量の下限は、0.13%である。
珪素(Si)は、焼入れ性を高める。Siはさらに、鋼の焼戻し軟化抵抗を高める。したがって、Siは、鋼の面疲労強度を高める。しかしながら、Siが過剰に含有されれば、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れにより、粒界酸化層が過剰に生成され、製造された部品の曲げ疲労強度が低下する。一方、シリコン(Si)は、セメンタイトの析出を抑制して、焼戻し軟化抵抗を高める。Siはさらに、鋼を脱酸する。脱酸生成物のMnO−SiO2はガラス化した軟質の介在物であり、熱間圧延中に延伸及び分断されて微細化される。そのため、耐水素脆化特性が高まる。製造された部品の曲げ疲労強度と耐水素脆化特性との観点から、Si含有量は、0.20%以上0.60%以下とする。Si含有量が0.20%未満であれば、上述の効果が得られない。一方、Si含有量が0.60%を超えれば、強度が高くなり過ぎる。この場合、鋼の被削性が低下する。Si含有量の好ましい下限は0.35%超であり、さらに好ましくは0.40%であり、さらに好ましくは0.45%であり、さらに好ましくは0.50%超である。
マンガン(Mn)は、焼入れ性を高めて鋼の強度を高める。Mn含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、仕上げ圧延後の冷却時にフェライト変態の開始温度が低下してフェライトの面積率が低下し、熱間鍛造後の鋼の被削性が低下する。また、Mnは、Siと結合して介在物(MnO−SiO2)を形成する。この介在物は軟質であり、熱間圧延中に延伸及び分断されて微細化されるため、MnO−SiO2の密度が低減し、耐水素脆化性が高まる。Mn含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、粒界に偏析して粒界破壊を助長して、耐水素脆化性がかえって低くなる。したがって、Mn含有量は、0.20〜0.40%未満である。Mn含有量の好ましい下限は0.22%であり、さらに好ましくは0.25%である。Mn含有量の好ましい上限は0.38%であり、さらに好ましくは0.35%である。
クロム(Cr)は、鋼の焼入れ性及び耐焼戻し軟化性を高め、鋼の曲げ疲労強度及び面疲労強度を高める。しかしながら、Crが過剰に含有されれば、熱間鍛造後又は焼準処理後において、鋼中にベイナイト組織が生成しやくなる。ベイナイト組織が生成すれば、鋼の被削性が低下する。したがって、Cr含有量は、1.60〜2.00%である。好ましいCr含有量の上限は、1.90%である。好ましいCr含有量の下限は、1.80%である。
アルミニウム(Al)は鋼を脱酸する。Al含有量が0.005%未満であれば、この効果が得られない。Alはさらに、Nと結合してAlNを形成し、浸炭加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。オーステナイト粒の粗大化が抑制されれば、鋼の曲げ疲労強度が高まる。一方、Al含有量が0.060%を超えれば、粗大な酸化物系介在物が生成して鋼の曲げ疲労強度が低下する。したがって、Al含有量は0.005〜0.060%である。Al含有量の好ましい下限は0.010%である。Al含有量の好ましい上限は0.055%である。
窒素(N)は、鋼中のTiと結合して窒化物を生成し、熱間圧延時のオーステナイト粒を微細化する。N含有量が0.0015%未満であれば、この効果が得られない。一方、N含有量が0.0080%を超えれば、その効果が飽和する。さらに、NがBと結合して窒化物を生成し、固溶B量を低下する。この場合、鋼の焼入れ性が低下する。したがって、N含有量は0.0015〜0.0080%である。N含有量の好ましい下限は0.0020%である。N含有量の好ましい上限は0.0070%である。
カルシウム(Ca)は、硫化物に固溶して、硫化物を微細かつ球状化する。これにより、Caは鋼の冷間加工性を高める。Ca含有量が低すぎると、この効果が得られない。一方、Ca含有量が高すぎると、粗大な酸化物が形成される。粗大な酸化物は、鋼の冷間鍛造性を低下する。したがって、Ca含有量は0.0003〜0.0050%である。Ca含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.0007%である。Ca含有量の好ましい上限は0.0025%であり、さらに好ましくは0.0030%であり、さらに好ましくは0.0035%である。
硫黄(S)は、不純物であるが、Mnと結合してMnSを形成し、鋼の被削性を高める。しかしながら、Sが過剰に含有されれば、粗大なMnSが生成しやすくなり、鋼の疲労強度(曲げ疲労強度及び面疲労強度)が低下する。硫黄(S)は硫化物を形成して鋼の熱間鍛造性を低下し、さらに、耐水素脆化特性を低下する。したがって、S含有量は0.010%以上0.020%以下である。
燐(P)は不純物である。Pは、結晶粒界に偏析して粒界を脆化し、さらに、耐水素脆化特性を低下する。したがって、P含有量は少ない方が好ましい。P含有量は0.025%以下である。好ましいP含有量は、0.020%以下である。
酸素(O)は、不純物である。Oは、Alと結合して、硬質な酸化物系介在物を形成し、鋼の曲げ疲労強度を低下する。O含有量が0.0020%を超えれば、酸化物が多量に生成するとともに、MnSが粗大化する。したがって、O含有量は0.0020%以下である。O含有量の好ましい上限は0.0018%である。O含有量はなるべく低い方が好ましい。
本実施形態の浸炭用鋼の化学組成は、前述したように、曲げ疲労強度、面疲労強度及び被削性を確保するために、さらに、式(1)を満たす。
1.90≦F1(=Si+Cr)≦2.40・・・(1)
1.90≦F1(=Si+Cr+2×Mo)≦2.40・・・(1’)
本実施形態の浸炭用鋼の化学組成は、前述したように、耐水素脆化特性を維持しつつ、優れた熱間鍛造加工性を得るために、さらに、式(2)を満たす。
0.03≦F2(=Ca/S)≦0.15・・・(2)
上述の浸炭用鋼の化学組成はさらに、式(3)を満たす。
F3(=Mn/Cr)≦0.20・・・(3)
Mn及びCrは、焼入れ性を高める。さらに、上述のとおり、MnのCrに対する比率が適切であれば、優れた耐水素脆化特性が得られる。そして、F3が0.20以下であれば、図1に示すように限界拡散性水素量比HRが1.0よりも高くなり、優れた耐水素脆化特性が得られる。
本実施の形態による浸炭用鋼はさらに、Feの一部に代えて、以下の元素のうち少なくとも一種を任意選択的に含有してもよい。
本発明は上記の必須成分に加えて、アンチモン(Sb)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)のうちの1種または2種以上をそれぞれ0.100%以下の範囲内で添加しても良い。これらの元素は、0.001%以上添加することにより水素侵入を抑制する効果を発揮する。水素侵入を抑制する効果を発揮するための下限はそれぞれ0.001%以上であるが、効果を十分に発揮させるための好ましい下限としてはそれぞれ0.005%以上である。さらに、好ましくはそれぞれ0.010%以上である。また、上限についてはそれぞれ0.100%を超えると、鋼の熱間加工性が劣化し、連続鋳造が困難となる。また、好ましくは、Sb、Sn、Biの濃度の合計が0.030〜0.100%であればよい。
チタン(Ti)は鋼中のNと結合して窒化物(TiN)を形成する。TiNの生成により、BNの生成が抑制され、固溶B量が増える。その結果、鋼材の焼入れ性が高まる。Tiはさらに、Cと結合して炭化物(TiC)を形成して結晶粒を微細化する。これにより、鋼の耐水素脆化特性が高まる。Ti含有量が0.010%未満であれば、これらの効果が得られない。一方、Ti含有量が0.050%を超えれば、粗大なTiNが多量に生成する。この場合、鋼の疲労強度及び耐水素脆化特性が低下する。したがって、Ti含有量は0.010〜0.050%である。Ti含有量の好ましい下限は0.015%である。Ti含有量の好ましい上限は0.045%である。
ボロン(B)は鋼の焼入れ性を高める。Bはさらに、Pの粒界偏析を抑制して、鋼の耐水素脆化特性を高める。B含有量が0.0003%未満であれば、これらの効果が得られない。一方、B含有量が0.0040%を超えれば、焼入れ性向上の効果が飽和する。さらに、粗大なBNが生成して熱間鍛造性が低下する。したがって、B含有量は0.0003〜0.0040%である。B含有量の好ましい下限は0.0005%である。B含有量の好ましい上限は0.0025%である。
銅(Cu)は、鋼の焼入れ性を高め、鋼の曲げ疲労強度を高める。しかしながら、Cuが過剰に含有されると、焼入れ性が高くなりすぎて仕上げ圧延後にベイナイトが生成し、熱間延性及び熱間加工性の低下が顕著になる。したがって、Cu含有量は0〜0.50%である。Cu含有量の好ましい下限は0.015%であり、さらに好ましくは0.020%である。Cu含有量の好ましい上限は0.30%であり、さらに好ましくは0.20%である。
ニッケル(Ni)は鋼の焼入れ性を高め、曲げ疲労強度を高める。しかしながら、Ni含有量が高すぎれば、熱間鍛造後又は焼準処理後において、鋼中にベイナイト組織が生成しやすくなる。さらに、焼入れ性の向上による曲げ疲労強度を高める効果が飽和する。したがって、Ni含有量は0〜0.30%である。Ni含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.03%である。Ni含有量の好ましい上限は0.20%であり、さらに好ましくは0.10%である。
モリブデン(Mo)は、選択元素である。つまり、Moは含有されなくてもよい。Moは、鋼の焼入れ性及び耐焼戻し軟化性を高め、鋼の曲げ疲労強度及び面疲労強度を高める。しかしながら、Moが過剰に含有されれば、熱間鍛造後又は焼準処理後において、鋼中にベイナイト組織が生成しやくなり、鋼の被削性が低下する。したがって、Mo含有量は、0.05%以下である。好ましいMo含有量の下限は、0.005%であり、さらに好ましくは0.008%である。Mo含有量の好ましい上限は0.03%であり、さらに好ましくは0.02%である。
バナジウム(V)は鋼の焼入れ性を高める。Vはさらに、C及びNと結合して、炭化物、窒化物又は炭窒化物を形成して結晶粒を微細化する。しかしながら、V含有量が高すぎれば、炭化物及び炭窒化物が鋼の強度を高め、鋼の被削性が低下する。したがって、V含有量は0〜0.050%である。V含有量の好ましい下限は0.003%であり、さらに好ましくは0.004%である。V含有量の好ましい上限は0.030%であり、さらに好ましくは0.020%である。
ニオブ(Nb)は、C及びNと結合して、炭化物、窒化物又は炭窒化物(炭窒化物等という)を形成する。Nb炭窒化物等は、ピンニング効果により熱間圧延時にオーステナイト粒を微細化し、仕上げ圧延後の冷却過程でのベイナイト生成を抑制し、初析フェライトの面積率を高める。Nb炭窒化物等はさらに、浸炭加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。しかしながら、Nbが過剰に含有されれば、Nb炭化物、Nb窒化物、Nb炭窒化物が粗大化し、オーステナイト粒の粗大化を抑制できなくなる。したがって、Nb含有量は、0.050%以下である。Nbが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。好ましいNb含有量の下限は、0.010%である。上記効果をより有効に得るためのNb含有量の好ましい下限は0.002%である。Nb含有量の好ましい上限は0.040%であり、さらに好ましくは0.030%である。
本実施形態の浸炭用鋼の金属組織は、主としてフェライトからなる。ここで、浸炭用鋼の金属組織では、フェライトの面積率が50%以上であり、残部がパーライト及びベイナイトである。なお、前記「フェライトの面積率が50%以上」のフェライトは初析フェライトであって、パーライトのラメラセメンタイト間のフェライトは含まれない。
本発明の浸炭用鋼の製造方法の一例として、棒鋼又は線材(棒線)の製造方法について説明する。本実施形態の浸炭用鋼の製造方法は、ビレットを製造する工程(分塊圧延工程)と、製造されたビレットを棒線に圧延する工程(仕上圧延工程)とを含む。以下、各工程について詳述する。
初めに、上記化学組成を有する素材を準備する。たとえば、素材は次の方法で製造される。上述の化学組成を有する溶鋼を、転炉または電気炉等を用いて製造し、連続鋳造法または造塊法により鋳片またはインゴットを製造する。
分塊圧延工程により製造されたビレットに対してさらに熱間圧延を実施して、棒線等の浸炭用鋼を製造する。ここでの圧延はたとえば、水平ロールスタンド、垂直ロールスタンドが交互に一列に配列された連続圧延機を用いた、連続圧延である。
仕上げ温度:750〜850℃
仕上げ温度は、仕上げ圧延機列の複数のスタンドのうち、最後にビレットを圧下するスタンド(以下、仕上げスタンドという)の出側でのビレット温度(℃)を意味する。仕上げ温度は、仕上げスタンドの出側に配置された赤外線放射温度計を用いて測定される。
仕上げ圧延後の鋼の冷却速度は、金属組織に影響する。冷却速度が5.0℃/秒以上となれば、鋼中に硬質のベイナイト等が生成しやすくなり、初析フェライトの面積率が50%未満となる。冷却速度が5.0℃/秒未満であれば、冷却後の鋼材の金属組織における初析フェライトの面積率が50%以上となる。
以上の製造工程により製造される棒鋼及び線材は、以下の製造工程により、鋼製部品になる。初めに、準備された圧延棒鋼又は線材を熱間鍛造して中間製品を粗成形する。必要に応じて、中間製品に対して焼準処理を実施する。中間製品に対して切削加工を実施する。切削加工された中間製品に対して、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れを実施し、200℃以下の焼戻しを実施する。以上の製造工程により鋼製部品が製造される。
浸炭用鋼線材を圧延方向と垂直な方向に切断し、10mmのサンプルを採取した。サンプルの切断面が被検面になるように樹脂埋めし、鏡面研磨を行った。その後、上述の方法でミクロ組織観察を実施して、初析フェライトの面積率(%)とを求めた。求めた結果を表2−1及び表2−2の「フェライト面積率」の欄に示す。
各試験番号の棒鋼を、1200℃で30分加熱した。次に、仕上げ温度を950℃以上として熱間鍛造し、直径35mmの丸棒を製造した。直径35mmの丸棒を機械加工して、図2に示すローラピッチング小ローラ試験片と、図3に示す切欠き付き小野式回転曲げ疲労試験片(図2及び図3ともに、図中の寸法の単位はmm)を作製した。
ローラピッチング試験により、面疲労強度を求めた。ローラピッチング試験は、上記の小ローラ試験片と図5に示す形状の大ローラ(図中の寸法の単位はmm)とを組合せ、表3に示す条件で行った。
曲げ疲労強度は、小野式回転曲げ疲労試験により求めた。小野式回転曲げ疲労試験での試験数は試験番号ごとに8個とした。試験時の回転数は3000rpmとし、その他は通常の方法により試験を行った。繰り返し数1.0×107回まで破断しなかったもののうち、最も高い応力をそれぞれ高サイクル回転曲げ疲労強度とした。
切削試験を実施し、被削性を評価した。以下の方法により切削試験片を得た。各試験番号の直径70mmの棒鋼を1200℃の加熱温度で30分加熱した。加熱された棒鋼を950℃以上の仕上げ温度で熱間鍛造し、直径50mmの丸棒を得た。この丸棒に対して焼準処理を実施した。具体的には、丸棒を950℃の加熱温度で1時間加熱し、その後放冷した。焼準処理された丸棒から機械加工によって、直径46mm、長さ400mmの切削試験片を得た。切削試験片を用いて、下記の条件で切削試験を行った。
チップ:母材材質 超硬P20種グレード、コーティング なし
条件:周速200m/分、送り0.30mm/rev、切り込み1.5mm、水溶性切削油を使用
測定項目:切削時間10分後の逃げ面の主切刃摩耗量
各試験番号の線材に対して焼入れ及び焼戻しを実施して、線材の引張強度を約1200MPaに調整した。
HR=Hc/Href (A)
比HRが1.00よりも高ければ、耐水素脆化特性に優れると判断した。
表2−1及び表2−2に試験結果を示す。
Claims (5)
- 質量%で、
C:0.15〜0.25%、
Si:0.20〜0.60%、
Mn:0.20〜0.40%未満、
Cr:1.60〜2.00%、
Al:0.005〜0.060%、
N:0.0015〜0.0080%、
Ca:0.0003〜0.0050%、及び
S:0.010〜0.020%を含有し、
P:0.020%以下、O:0.0020%以下に制限され、
残部はFe及び不純物からなり、
下記式(1)〜式(3)を満たす化学組成を有し、フェライトの面積率が50%以上であることを特徴とする浸炭用鋼。
1.90≦Si+Cr≦2.40・・・ (1)
0.03≦Ca/S≦0.15・・・(2)
Mn/Cr≦0.20・・・(3)
ここで、式(1)〜式(3)の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。 - 更に、質量%で、
Sb:0.100%以下、
Sn:0.100%以下、及び
Bi:0.100%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の浸炭用鋼。 - 更に、質量%で、
Ti:0.010〜0.050%、
B:0.0003〜0.0040%、
Cu:0.50%以下、
Ni:0.30%以下、
Mo:0.05%以下、
V:0.050%以下、及び
Nb:0.050%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を含有し、
下記式(1’)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の浸炭用鋼。
1.90≦Si+Cr+2×Mo≦2.40・・・ (1’)
ここで、式(1’)の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入され、対応する元素が不純物レベルの場合、式(1’)の対応する元素記号には0が代入される。 - 鋼の金属組織は、フェライトの面積率が65%〜90%であることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の浸炭用鋼。
- 請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の成分組成を有する芯部と、前記芯部よりも炭素含有量が高い表層部とを有することを特徴とする部品。
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