JPH10152754A - 肌焼鋼及び肌焼鋼鋼材の製造方法 - Google Patents

肌焼鋼及び肌焼鋼鋼材の製造方法

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JPH10152754A
JPH10152754A JP24924297A JP24924297A JPH10152754A JP H10152754 A JPH10152754 A JP H10152754A JP 24924297 A JP24924297 A JP 24924297A JP 24924297 A JP24924297 A JP 24924297A JP H10152754 A JPH10152754 A JP H10152754A
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雅紀 坂本
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Abstract

(57)【要約】 【課題】冷間成形加工後に浸炭処理しても結晶粒の粗大
化や異常粒成長を生ずることがない耐粗粒化肌焼鋼及び
その肌焼鋼鋼材の製造方法を提供する。 【解決手段】C:0.1〜0.3%、Si:0.1〜1.0%、Mn:
0.3〜2.0%、Al:0.01〜0.06%、N:0.005〜0.03%で A
l(%)/N(%):1.0〜2.0、Nb:0〜0.07%、V:0〜
0.1%で、Nb(%)+V(%)≧ 0.005%、Cu:0〜0.3
%、Ni:0〜0.5%、Cr:0〜2.0%、Mo:0〜0.5%、W:0
〜0.5%、Pb:0〜0.3%、Te:0〜0.08%、Ca:0〜0.01
%、Bi:0〜0.3%、S:0〜0.08%、P≦0.03%、残部Fe
と不純物からなる耐粗粒化肌焼鋼。その肌焼鋼鋼材の
製造方法は、1100℃以上に加熱して熱間加工し、850℃
以上で仕上げて、500℃までを5〜500℃/分の冷却速度
で冷却するか、この後更に、1000℃以上の温度に再加熱
して熱間加工し、この熱間加工を850℃以上で仕上げ
て、500℃までを5〜500℃/分の冷却速度で冷却する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐粗粒化肌焼鋼及
び耐粗粒化肌焼鋼鋼材の製造方法に関し、より詳しくは
自動車や産業機械用の歯車やシャフト類など浸炭処理が
施される部品の母材鋼となる耐粗粒化肌焼鋼及びその肌
焼鋼鋼材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車や産業機械用の歯車やシャフト類
など浸炭処理が施される部品(以下、浸炭部品という)
は、従来、熱間鍛造などの熱間加工によって粗成形さ
れ、次いで、歯切りなどの機械加工による整形加工を受
けた後、浸炭処理を施されて製造されてきた。そして、
前記浸炭部品の母材鋼としては、JIS規格鋼であるS
Cr415やSCr420に代表されるクロム鋼鋼材、
SCM415やSCM420に代表されるクロムモリブ
デン鋼鋼材などの肌焼鋼が用いられてきた。
【0003】しかしながら、最近、歯切りなど機械加工
による整形プロセスを省略してコストダウンを図ること
が指向されている。このため、浸炭部品の製造方法とし
て、熱間での粗成形に代えて成形精度の優れた冷間加工
(冷間鍛造など)による精密な成形加工を行い、次い
で、浸炭処理する方法が多くなりつつある。
【0004】ところが、従来のJIS規格鋼を母材鋼と
し、上記のように冷間鍛造後に浸炭処理した浸炭部品に
おいては、浸炭処理時に、従来型の浸炭部品(熱間加工
で粗成形を受けた浸炭部品)においては認められなかっ
た結晶粒の粗大化や異常粒成長(以下、結晶粒の粗大化
と異常粒成長をまとめて「粗粒化」という)が生じ、焼
入れ時の歪発生や材料特性の低下が生ずるという問題が
起こり易い。
【0005】このため、浸炭部品の母材鋼となる肌焼鋼
として、従来のJIS規格鋼に代わるものが、例えば、
特開昭60−21359号公報に開示されている。しか
しながら、この公報で提案された鋼、なかでもNbを添
加した鋼を母材鋼として用いた場合であっても、Alと
Nの含有量の比であるAl(%)/N(%)の値に対す
る配慮がなされていないため、冷間鍛造後に浸炭処理し
て浸炭部品を製造すると、粗粒化が生じてしまうことが
あった。
【0006】特開昭63−140031号公報には、特
定量のAlとNとを含有する浸炭用鋼の圧延加熱温度と
圧延終了温度を規制して、浸炭処理時の結晶粒の異常成
長を阻止する浸炭用鋼の製造方法が開示されている。し
かし、この公報で提案された範囲のAlとNとを含有す
る鋼を、規定の圧延加熱温度と圧延終了温度で製造した
場合であっても、冷間鍛造後に浸炭処理して浸炭部品を
製造すると、やはり粗粒化が生じてしまうことがあっ
た。
【0007】このため、冷間加工による精密な成形加工
を行い、次いで、通常行われる条件で浸炭処理しても結
晶粒の粗大化や異常粒成長が生ずることを阻止できる耐
粗粒化肌焼鋼及びその肌焼鋼鋼材の製造方法を開発する
ことが熱望されてきた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の現状
に鑑みなされたもので、冷間加工による精密な成形加工
を行い、次いで、浸炭処理しても結晶粒の粗大化や異常
粒成長を生ずることがない耐粗粒化肌焼鋼及びその肌焼
鋼鋼材の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)に示す耐粗粒化肌焼鋼及び(2)〜(3)に示す
耐粗粒化肌焼鋼鋼材の製造方法にある。
【0010】(1)重量%で、C:0.1〜0.3%、
Si:0.1〜1.0%、Mn:0.3〜2.0%、A
l:0.01〜0.06%、N:0.005〜0.03
%でAl(%)/N(%):1.0〜2.0、Nb:0
〜0.07%、V:0〜0.1%で、且つNb(%)+
V(%)≧0.005%、Cu:0〜0.3%、Ni:
0〜0.5%、Cr:0〜2.0%、Mo:0〜0.5
%、W:0〜0.5%、Pb:0〜0.3%、Te:0
〜0.08%、Ca:0〜0.01%、Bi:0〜0.
3%、S:0〜0.08%、P:0.03%以下、残部
はFe及び不可避不純物からなることを特徴とする耐粗
粒化肌焼鋼。
【0011】(2)冷間加工して成形した後に浸炭処理
することによって製造する部品の母材となる肌焼鋼鋼材
の製造方法であって、上記(1)に記載の化学組成を有
する鋼を1100℃以上の温度に加熱して熱間加工を行
い、前記の熱間加工を850℃以上の温度域の温度で仕
上げ、次いで、500℃までの温度域を5〜500℃/
分の冷却速度で冷却することを特徴とする耐粗粒化肌焼
鋼鋼材の製造方法。
【0012】(3)冷間加工して成形した後に浸炭処理
することによって製造する部品の母材となる肌焼鋼鋼材
の製造方法であって、上記(1)に記載の化学組成を有
する鋼を1100℃以上の温度に加熱して熱間加工を行
い、前記の熱間加工を850℃以上の温度域の温度で仕
上げ、次いで、500℃までの温度域を5〜500℃/
分の冷却速度で冷却した後、更に、1000℃以上の温
度に再加熱して熱間加工を行い、この熱間加工を850
℃以上の温度域の温度で仕上げ、次いで、500℃まで
の温度域を5〜500℃/分の冷却速度で冷却すること
を特徴とする耐粗粒化肌焼鋼鋼材の製造方法。
【0013】ここで、「Al」とは、所謂「酸可溶性A
l」を指す。なお、以下において上記(1)、(2)、
(3)に関する発明をそれぞれ(1)の発明、(2)の
発明、(3)の発明という。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明者らは、種々の化学組成を
有する鋼を実験炉溶製し、熱間加工条件及び熱間加工後
の冷却条件を変えて鋼材を作製し、通常の方法で球状化
焼鈍、冷間加工と浸炭焼入れを行って、成分元素、熱間
加工条件及び熱間加工後の冷却条件が浸炭焼入れ後の組
織に及ぼす影響を調査した。
【0015】その結果、下記〜の知見が得られた。
【0016】窒化物や炭窒化物を生成するAl、Nb
及びVを単独添加した場合、ある程度の粗粒化防止効果
が認められる。しかし、前記の各元素を単に2種以上複
合添加しただけでは、粗粒化防止効果は必ずしも増大す
るとは限らず、かえって粗粒化してしまう場合さえあ
る。
【0017】Al、Nb及びVの含有量を制御して、
AlとNbやVとを複合添加するとともに、Nの含有量
をも制御すれば、大きな粗粒化防止効果が得られる。前
記した各元素の含有量の制御が適切でないと、AlとN
bやVとの複合添加の効果が現れず、コストが増加する
ばかりである。
【0018】浸炭処理時の粗粒化防止のためには、前
記したAl、Nb、V及びNの含有量の制御に加えて、
AlとNの含有量の比(Al(%)/N(%))をも制
御する必要がある。
【0019】溶製後の凝固過程で生成したAl、Nb
及びVの窒化物や炭窒化物は凝集粗大化しているため、
そのままの状態では浸炭処理時の粗粒化防止効果は小さ
い。しかし、前記の窒化物や炭窒化物を、熱間での加工
時に一旦高温に加熱して基地であるオーステナイト中に
固溶させれば、熱間加工時及びその後の冷却時に窒化物
や炭窒化物を微細析出させることができるので、浸炭処
理時の粗粒化防止効果は極めて大きくなる。
【0020】上記の熱間加工及びその後の冷却で窒
化物や炭窒化物を微細析出させた鋼材を更に所望の形状
やサイズに熱間加工する必要がある場合には、熱間加工
のための再加熱温度を制御して窒化物や炭窒化物の粗大
化を防ぐことが重要である。
【0021】熱間加工時及びその後の冷却で窒化物や
炭窒化物を微細析出させるためには、熱間加工を適正な
温度域で仕上げることが重要である。仕上げ温度域が不
適切であると、窒化物や炭窒化物が凝集粗大化して、粗
粒化防止の効果は極めて小さくなくなってしまう。
【0022】窒化物や炭窒化物の粗大化を防止するた
めに、熱間加工終了後は適正な冷却条件で冷却する必要
がある。
【0023】成分元素と熱間加工及びその後の冷却条
件を適正化した場合には、冷間加工の前工程としての球
状化焼鈍を行っても窒化物や炭窒化物はあまり粗大化し
ないので、浸炭処理時の粗粒化が防止できる。
【0024】本発明は、上記の知見に基づいて完成され
たものである。
【0025】以下、本発明の各要件について詳しく説明
する。なお、成分含有量の「%」は「重量%」を意味す
る。
【0026】(A)鋼の化学組成 C:0.1〜0.3% Cは鋼の焼入れ性を高めるとともに、静的強度を向上さ
せるのに有効な元素である。しかし、その含有量が0.
1%未満では添加効果に乏しく、一方、0.3%を超え
て添加すると鋼の靭性が低下する。したがって、Cの含
有量を0.1〜0.3%とした。
【0027】Si:0.1〜1.0% Siは脱酸、焼入れ性の向上及び固溶強化による静的強
度の向上に有効な元素である。しかし、その含有量が
0.1%未満では所望の効果が得られない。一方、1.
0%を超えて含有させると、浸炭性の低下を招くため疲
労強度が低下してしまう。更に、冷間加工性の低下をも
招く。したがって、Siの含有量を0.1〜1.0%と
した。
【0028】Mn:0.3〜2.0% MnもSiと同様に脱酸作用を有する。又、焼入れ性を
高め、強度と靱性を向上させる作用もある。しかし、そ
の含有量が0.3%未満では添加効果に乏しい。一方、
2.0を超えて含有させてもその効果は飽和し、経済性
を損なうばかりである。したがって、Mn含有量を0.
3〜2.0%とした。
【0029】Al:0.01〜0.06% Alは鋼中のNと結合してAlNを形成し、粗粒化を防
止する作用を有する。この効果を発揮させるためには、
Alの含有量を0.01%以上とすることが必要であ
る。一方、0.06%を超えて含有させても、前記の効
果は飽和するばかりか、切削性の低下を招くようにな
る。したがって、Alの含有量を0.01〜0.06%
とした。なお、前記したように、ここでいう「Al」
は、「酸可溶性Al」のことをいう。
【0030】N:0.005〜0.03% NはAl、NbやVと結合して窒化物や炭窒化物を形成
し、粗粒化防止に効果を発揮する。しかし、その含有量
が0.005%未満では所望の効果が得られない。一
方、0.03%を超えて含有させると、鋼の変形抵抗が
高くなって、冷間加工性が低下してしまう。したがっ
て、Nの含有量を0.005〜0.03%とした。
【0031】Al(%)/N(%):1.0〜2.0 前記したAlとNの含有量の範囲で、且つ後述するNb
とVの含有量の範囲であっても、AlとNの含有量の比
(Al(%)/N(%))が適正でないと浸炭処理時の
粗粒化防止が果たせない場合がある。すなわち、Al
(%)/N(%)の値が2.0を超えると、粗粒化防止
に対するAlとNbやVとの複合添加効果が得られな
い。更に、冷間加工の前工程としての球状化焼鈍を行う
場合には、後述の熱間加工条件及びその後の冷却条件を
満たしても、窒化物や炭窒化物が極めて粗大化するた
め、浸炭処理時の粗粒化を防止できない。一方、Al
(%)/N(%)が1.0未満では、冷間加工性が劣化
して、冷間での所望形状への成形加工時に割れを生じ易
くなる。この場合、熱間での粗成形に替えて冷間加工に
よる精密な成形加工を行い、機械加工を省略してコスト
ダウンを図ろうとする産業界の要請に応えられないこと
になる。したがって、Al(%)/N(%)を1.0〜
2.0とした。
【0032】Nb:0〜0.07% Nbは添加しなくてもよい。添加すれば、窒化物や炭窒
化物を形成して粗粒化を防止する作用を有する。Nの含
有量を制御した鋼にAl、Vとともに複合添加すれば、
極めて優れた粗粒化防止作用が得られる。但し、次に述
べるVを複合添加しない場合にこの効果を得るために
は、後述するようにNbは0.005%以上の含有量と
する必要がある。一方、0.07%を超えて含有させて
も前記の効果が飽和して経済性を損なうばかりである
し、変形抵抗が上昇して冷間加工性が劣化するようにも
なる。したがって、Nbの含有量を0〜0.07%とし
た。
【0033】V:0〜0.1% Vは添加しなくてもよい。添加すれば、窒化物や炭窒化
物を形成して粗粒化を防止する作用を有する。Nの含有
量を制御した鋼にAl、Nbとともに複合添加すれば、
極めて優れた粗粒化防止作用が得られる。但し、上記し
たNbを複合添加しない場合にこの効果を得るために
は、後述するようにVは0.005%以上の含有量とす
る必要がある。一方、0.1%を超えて含有させても前
記の効果が飽和して経済性を損なうばかりであるし、変
形抵抗が上昇して冷間加工性が劣化するようにもなる。
したがって、Vの含有量を0〜0.1%とした。
【0034】Nb(%)+V(%):0.005%以上 Nの含有量を制御した鋼にAlとともにNb、Vを複合
添加して極めて優れた粗粒化防止作用を得るためには、
NbとVの含有量の和(Nb(%)+V(%))を0.
005%以上とする必要がある。Nb(%)+V(%)
が0.005%未満の場合には、AlとNbやVとの複
合添加効果が得られないばかりか、粗粒化してしまう場
合さえある。したがって、Nb(%)+V(%)≧0.
005%とした。
【0035】Cu:0〜0.3% Cuは添加しなくてもよい。添加すれば鋼の焼入れ性が
向上する。この効果を確実に得るには、Cuは0.1%
以上の含有量とすることが好ましい。しかし、多量に含
有させると熱間延性を低下させて、熱間加工性が低下し
てしまう。特に、その含有量が0.3%を超えると熱間
加工性の劣化が顕著となる。したがって、Cuの含有量
を0〜0.3%とした。
【0036】Ni:0〜0.5% Niは添加しなくてもよい。添加すれば、鋼の焼入れ性
と靭性を高める作用がある。この効果を確実に得るに
は、Niは0.05%以上の含有量とすることが好まし
い。しかし、0.5%を超えて含有量させても前記の効
果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、
Ni含有量を0〜0.5%とした。
【0037】Cr:0〜2.0% Crも添加しなくてよい。添加すれば、鋼の焼入れ性と
強度、靭性を高める作用がある。この効果を確実に得る
には、Crは0.1%以上の含有量とすることが好まし
い。しかし、2.0%を超えて含有させも前記の効果は
飽和し、経済性を損なうばかりである。したがって、C
rの含有量を0〜2.0%とした。
【0038】Mo:0〜0.5% Moは添加しなくてよい。添加すれば、鋼の焼入れ性と
強度、靭性を高める作用がある。この効果を確実に得る
には、Moの含有量を0.05%以上とすることが好ま
しい。しかし、その含有量が0.5%を超えると切削性
の低下をきたす。したがって、Mo含有量を0〜0.5
%とした。
【0039】W:0〜0.5% Wは添加しなくてよい。添加すれば、鋼の焼入れ性と強
度、靭性を高める作用がある。この効果を確実に得るに
は、Wの含有量を0.05%以上とすることが好まし
い。しかし、その含有量が0.5%を超えると切削性の
低下をきたす。したがって、W含有量を0〜0.5%と
した。
【0040】Pb:0〜0.3% Pbは添加しなくてもよい。しかし、添加すれば切削性
を向上させる働きがある。このため、冷間加工で成形し
た部品の内面などを更に精密切削して仕上げたいような
場合には、切削性を高めるために添加しても良い。この
場合、切削性向上効果を確実に得るには、Pbの含有量
は0.005%以上とすることが好ましい。しかし、そ
の含有量が0.3%を超えると疲労特性の低下をきた
す。したがって、Pb含有量を0〜0.3%とした。
【0041】Te:0〜0.08% Teも添加しなくてもよい。添加すればPbと同様に切
削性を高める作用がある。このため、冷間加工で成形し
た部品の内面などを更に精密切削して仕上げたいような
場合には、切削性を高めるために添加しても良い。この
場合、切削性向上効果を確実に得るには、Teは0.0
1%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その
含有量が0.08%を超えると、熱間加工性の低下をも
たらす。したがって、Teの含有量を0〜0.08%と
した。
【0042】Ca:0〜0.01% Caは添加しなくてもよい。添加すれば切削性を高める
作用がある。このため、PbやTeと同じく冷間加工で
成形した部品の内面などを更に精密切削して仕上げたい
ような場合には、切削性を高めるために添加しても良
い。この場合、切削性向上効果を確実に得るには、Ca
は0.001%以上の含有量とすることが好ましい。し
かし、その含有量が0.01%を超えると、熱間加工性
の低下をもたらす。したがって、Caの含有量を0〜
0.01%とした。
【0043】Bi:0〜0.3% Biも添加しなくてもよい。添加すれば切削性を高める
作用を有する。このため、Pb、TeやCaと同様に冷
間加工で成形した部品の内面などを更に精密切削して仕
上げたいような場合には、切削性を高めるために添加し
ても良い。この場合、切削性向上効果を確実に得るに
は、Biの含有量を0.01%以上とすることが好まし
い。しかし、その含有量が0.3%を超えると、熱間加
工性の低下をきたす。したがって、Biの含有量を0〜
0.3%とした。
【0044】S:0〜0.08% Sは添加しなくてもよい。添加すれば切削性を高める作
用を有する。このため、上記のPb、Teなど同様に冷
間加工で成形した部品の内面などを更に精密切削して仕
上げたいような場合には、切削性を高めるために添加し
ても良い。この場合、切削性向上効果を確実に得るに
は、Sの含有量を0.005%以上とすることが好まし
い。しかし、その含有量が0.08%を超えると、靭性
の低下をきたす。したがって、Sの含有量を0〜0.0
8%とした。
【0045】P:0.03%以下 Pは粒界に偏析し、靭性を低下させる。特に、その含有
量が0.03%を超えると、靭性の著しい低下を招く。
したがって、P含有量を0.030%以下とした。
【0046】(B)熱間加工とその後の冷却 (B−1)加熱 溶製後の凝固過程で生成した鋼塊(ここでいう「鋼塊」
には、JIS G 0203にあるように「鋳片」を含む)中のA
l、Nb及びVの窒化物や炭窒化物は凝集粗大化してい
るため、そのままの状態では浸炭処理時の粗粒化防止効
果は小さい。したがって、前記した(2)の発明の熱間
加工及び(3)の発明の先の(1次の)熱間加工に際し
て、前記の窒化物や炭窒化物を一旦高温に加熱して基地
であるオーステナイト中に固溶させ、熱間加工時及びそ
の後の冷却時に窒化物や炭窒化物を微細析出させて、浸
炭処理時の粗粒化防止を達成する必要がある。
【0047】そこで、前記した(A)の化学組成を有す
る(1)の発明の鋼を、(2)の発明における熱間加工
及び(3)の発明における先の(1次の)熱間加工にお
いて1100℃以上の温度に加熱して、上記の窒化物や
炭窒化物をオーステナイト中に固溶させることとした。
なお、上記の加熱温度は1150℃以上とすることが望
ましく、1200℃以上であれば一層好ましい。この加
熱温度の上限には特に制限はない。しかし、脱炭やスケ
ールロスによるコストアップの抑制、更にはエネルギー
コストを抑えるために、1350℃程度を上限とするこ
とが好ましい。
【0048】(B−2)仕上げ温度 オーステナイト中に固溶させたAl、NbやVを熱間加
工時及びその後の冷却で微細な窒化物や炭窒化物として
析出させるために、熱間加工の仕上げ温度は850℃以
上とする必要がある。熱間加工の仕上げ温度が850℃
を下回る場合には、熱間加工時に一部析出したAl、N
bやVの窒化物や炭窒化物が凝集粗大化してしまい、浸
炭処理時に優れた耐粗粒化特性を得ようとする本発明の
目的が達せられない場合がある。したがって、(2)の
発明における熱間加工の仕上げ温度、及び(3)の発明
における先の(1次の)熱間加工の仕上げ温度を850
℃以上とした。なお、前記熱間加工の仕上げ温度の上限
には特に制限はない。しかし、脱炭を抑制するために1
050℃程度を上限とすることが好ましい。
【0049】(B−3)熱間加工後の冷却 熱間加工を終了した後は、500℃までの温度域を5〜
500℃/分の冷却速度で冷却することが必要である。
この冷却の冷却速度が5℃/分を下回る場合には、A
l、NbやVの窒化物や炭窒化物が凝集粗大化してしま
い、浸炭処理時に優れた耐粗粒化特性を得ようとする本
発明の目的が達せられない場合がある。特に、冷間加工
の前工程としての球状化焼鈍を行う場合には、前記した
(A)項の化学組成を有する鋼の場合であっても、窒化
物や炭窒化物が粗大化するため、浸炭処理時の粗粒化を
防止できない。一方、上記冷却の冷却速度が500℃/
分を上回る場合には、ベイナイトやマルテンサイトなど
の所謂「低温変態組織」が生じて所望のサイズに切断し
難くなる場合がある。したがって、(2)の発明の熱間
加工仕上げ後500℃までの温度域における冷却速度、
及び(3)の発明の先の(1次の)熱間加工仕上げ後5
00℃までの温度域における冷却速度を、いずれも5〜
500℃/分と規定した。なお、この冷却速度の上限
は、300℃/分程度とすることが好ましく、100℃
/分程度とすることがより好ましい。
【0050】500℃を下回る温度域の冷却は、生産性
を高めるために急冷しても良い。なお、上記の冷却速度
は鋼材表面の冷却速度をいう。
【0051】上記の(B−1)から(B−3)の工程に
よって(2)の発明が構成される。なお、(2)の発明
は上記の熱間加工と冷却の後、更なる熱間加工(2次の
熱間加工)を受けることがなく、冷間加工で所望形状に
成形されその後に浸炭処理を施される浸炭部品の母材と
なる耐粗粒化肌焼鋼鋼材の製造方法を提供するものであ
る。すなわち、(A)項に述べた化学組成を有し(B−
1)から(B−3)の工程によって製造された(2)の
発明に係る耐粗粒化肌焼鋼鋼材は、(B−3)の工程の
後では更なる熱間での加工を受けることはなく、必要に
応じて球状化焼鈍を施されてから、冷間鍛造を初めとす
る冷間加工によって所望の部品形状に成形され、更に、
必要に応じて内面などを精密切削された後、浸炭焼入れ
される。そして、必要に応じて低温での焼戻しや研削、
研磨をして最終の部品に仕上げられる。
【0052】一方、(B−3)の工程の後、更に所望の
サイズや素形材形状にするなどの目的から、鋼材を再加
熱して熱間加工(2次の熱間加工)し、その後冷却する
のが(3)の発明に係る耐粗粒化肌焼鋼鋼材の製造方法
である。以下、(3)の発明に係る要件について更に説
明する。
【0053】(B−4)冷却後の再加熱 溶製後の凝固過程で生成し凝集粗大化したAl、Nb及
びVの窒化物や炭窒化物をオーステナイト中に固溶さ
せ、熱間加工時及びその後の冷却時に窒化物や炭窒化物
として微細析出させた後、更に所望のサイズや素形材形
状とするための熱間加工(2次の熱間加工)時の再加熱
温度は、1000℃以上とする必要がある。この再加熱
温度が1000℃を下回る場合には、窒化物や炭窒化物
の粗大化を生じたり、鋼材の変形抵抗が大きくなって圧
延機などの加工機に対する負荷が過大となってしまうか
らである。したがって、(3)の発明において、冷却後
の熱間加工(2次の熱間加工)のための再加熱温度を1
000℃以上とした。なお、上記の再加熱温度は110
0℃以上とすることが望ましい。この加熱温度の上限に
は特に制限はない。しかし、脱炭やスケールロスによる
コストアップの抑制、更にはエネルギーコストを抑える
ために、1250℃程度を上限とすることが好ましく、
1200℃を上限とすることがより好ましい。
【0054】(B−5)再加熱後の熱間加工の仕上げ温
度 再加熱後の熱間加工(2次の熱間加工)の仕上げ温度は
850℃以上とする必要がある。この温度が850℃を
下回る場合には、熱間加工時に一部析出したAl、Nb
やVの窒化物や炭窒化物が凝集粗大化してしまい、浸炭
処理時に優れた耐粗粒化特性を得ようとする本発明の目
的が達せられない場合がある。したがって、(3)の発
明において、再加熱後の熱間加工(2次の熱間加工)の
仕上げ温度を850℃以上とした。なお、上記温度の上
限にも特に制限はない。しかし、脱炭を抑制するために
1050℃程度を上限とすることが好ましい。
【0055】(B−6)再加熱後に熱間加工した後の冷
却 再加熱後の熱間加工(2次の熱間加工)を終了した後、
500℃までの温度域における冷却速度が5℃/分を下
回る場合には、Al、NbやVの窒化物や炭窒化物が凝
集粗大化してしまい、浸炭処理時に優れた耐粗粒化特性
を得ようとする本発明の目的が達せられない場合があ
る。特に、冷間加工の前工程としての球状化焼鈍を行う
場合には、前記した(A)項の化学組成を有する鋼の場
合であっても、窒化物や炭窒化物が粗大化するため、浸
炭処理時の粗粒化を防止できない。一方、上記の冷却速
度が500℃/分を上回る場合には、ベイナイトやマル
テンサイトなどの所謂「低温変態組織」が生じて所望の
サイズに切断し難くなる場合がある。したがって、
(3)の発明において、再加熱後の熱間加工(2次の熱
間加工)を仕上げた後、500℃までの温度域における
冷却速度を5〜500℃/分と規定した。なお、この冷
却速度の上限は、300℃/分程度とすることが好まし
く、100℃/分程度とすることがより好ましい。
【0056】なお、500℃を下回る温度域の冷却は、
生産性を高めるために急冷しても良い。ここで、冷却速
度とは既に述べたように鋼材表面の冷却速度をいう。
【0057】上記の(B−1)から(B−6)の工程に
よって(3)の発明が構成される。(A)項に述べた化
学組成を有し(B−1)から(B−6)の工程によって
製造された(3)の発明に係る耐粗粒化肌焼鋼鋼材は、
必要に応じて球状化焼鈍を施されてから、冷間鍛造を初
めとする冷間加工によって所望の部品形状に成形され、
更に、必要に応じて内面などを精密切削された後、浸炭
焼入れされる。そして、必要に応じて低温での焼戻しや
研削、研磨をして最終の部品に仕上げられる。
【0058】
【実施例】
(実施例1)表1、表2に示す化学組成を有する鋼を通
常の方法により3トン試験炉を用いて溶製した。表1、
表2における鋼1〜24は化学組成が本発明で規定する
範囲内の本発明例の鋼である。一方、表2における鋼2
5〜34は成分のいずれかが本発明で規定する含有量の
範囲から外れた比較例の鋼である。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】次いで、これらの鋼を表3〜4に記載の条
件で加熱、分塊圧延、冷却して180mm角の鋼片と
し、更に、表3〜4に記載の条件で再加熱、熱間圧延、
冷却して直径50mmの棒鋼を製造した。ここで、18
0mm角の鋼片と直径50mmの棒鋼の製造において、
500℃を下回る温度域の冷却は放冷とした。
【0062】なお、本発明例の鋼である鋼1、鋼2、鋼
8、鋼9、鋼15、鋼16及び鋼22については3トン
鋼塊を分割してから上記の鋼片及び棒鋼の製造に供し
た。
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】上記のようにして得た鋼1〜34の直径5
0mmの棒鋼及び一部の鋼(鋼3、鋼5、鋼13、鋼1
4、鋼17、鋼18及び鋼20)の180mm角の鋼片
を、通常の方法によって730℃で球状化焼鈍した。こ
の後、180mm角の鋼片については(T/4)の部位
(T=180mm)から、直径50mmの棒鋼について
は(R/2)の部位(R=25mm)から、それぞれ直
径10mm×長さ20mmの円筒状の試験片を切り出
し、500トン高速プレス機を用いて通常の方法で常温
(室温)での据え込み試験を行った。ここで、据え込み
率(圧縮率)は70%、75%、80%及び85%の4
条件とし、各条件について試験数は20で行った。据え
込み試験後、目視で割れ発生の有無を調査して冷間加工
性を評価した。
【0066】表3〜4に、上記の冷間加工性評価結果を
併せて示す。なお、各条件での20の試験片のいずれか
に割れを認めた場合、割れが生じた最も低い据え込み率
を冷間加工性として記載した。表3〜4で冷間加工性が
「>85」とあるのは、据え込み率85%の据え込み試
験で、20の試験片のいずれにも割れが生じなかったこ
とを示す。一方、冷間加工性が「≦70」とあるのは、
据え込み率70%の据え込み試験で、割れが生じたこと
を示す。
【0067】次いで、上記の85%の据え込み率で据え
込んだ試験片を用いて、850〜1050℃まで25℃
刻みに各温度で6時間加熱して浸炭処理時の加熱をシミ
ュレートした。
【0068】加熱処理後は油冷し、光学顕微鏡(倍率は
100倍)でランダムに10視野観察して粗粒化特性を
調査した。なお、粗粒化の判定基準はJIS G 0551に準じ
た。すなわち、視野間において3以上異なった粒度番号
の視野が存在する場合に「混粒」として、異常粒成長が
生じたと見なした。一方、「粗粒」と「細粒」の判定は
JIS基準よりも厳しくして、結晶粒度番号6未満の場
合に「粗粒鋼」として結晶粒が粗大化したと判定した。
【0069】表3〜4に、上記の粗粒化特性の調査結果
を併せて示す。なお、粗粒化発生を認めた場合、粗粒化
が生じた最も低い加熱温度を「粗粒化開始温度」として
記載した。表3〜4で粗粒化開始温度が「>1050」
とあるのは、1050℃×6時間の加熱条件では粗粒化
が生じなかったことを示す。一方、粗粒化開始温度が
「≦850」とあるのは、850℃×6時間の加熱で既
に粗粒化が生じていたことを示す。
【0070】表3〜4によれば、本発明で規定する化学
組成を有する鋼を、本発明で規定する条件で熱間加工及
び冷却した場合には、85%の据え込み率で冷間加工し
ても割れを生じず、これを6時間オーステナイト化処理
した場合の粗粒化開始温度は975℃以上と高く、耐粗
粒化特性に優れていることが明らかである。
【0071】これに対して、成分のいずれかが本発明で
規定する含有量の範囲から外れた比較例の鋼のなかで、
鋼25〜28及び鋼31〜34については、本発明で規
定する条件で熱間加工及び冷却しても粗粒化開始温度が
950℃以下と低く耐粗粒化特性に劣る。上記の鋼のう
ち、鋼26の場合には冷間加工性も低いため、冷間での
所望形状への成形加工時に割れを生じ易くなる。したが
って、熱間での粗成形に替えて冷間加工による精密な成
形加工を行い、機械加工を省略してコストダウンを図ろ
うとする産業界の要請に応えられない場合が生ずる。
【0072】一方、比較例の鋼のなかでも鋼29、鋼3
0については、6時間オーステナイト化処理した場合の
粗粒化開始温度は1050℃を超え、耐粗粒化特性には
優れているが、冷間加工性が低い。このため、前記の鋼
26の場合と同様に冷間での所望形状への成形加工時に
割れを生じ易くなる。したがって、熱間での粗成形に替
えて冷間加工による精密な加工を行い、機械加工を省略
してコストダウンを図ろうとする産業界の要請に応えら
れない場合が生ずる。
【0073】(実施例2)前記の(実施例1)で述べた
鋼1、鋼8及び鋼15の3トン鋼塊から分割した鋼塊を
用いて、1000〜1200℃まで100℃刻みで各温
度に加熱した後、通常の方法で直径100mmの鋼片に
熱間鍛造した。なお、いずれの場合も熱間鍛造の仕上げ
温度は950℃とした。又、鍛造終了後は500℃まで
の温度域を10℃/分の冷却速度で冷却し、500℃を
下回る温度域の冷却は放冷とした。
【0074】次いで、上記の直径100mmの各鋼片を
950〜1100℃まで50℃刻みで各温度に再加熱し
た後、通常の方法で直径50mmの丸棒に熱間鍛造し
た。なお、熱間鍛造の仕上げ温度は815℃及び885
℃の2条件とした。又、鍛造終了後は500℃までの温
度域を25℃/分の冷却速度で冷却し、500℃を下回
る温度域の冷却は放冷とした。
【0075】上記のようにして得た直径50mmの丸棒
を、通常の方法によって730℃で球状化焼鈍した後、
(R/2)の部位(R=25mm)から直径10mm×
長さ20mmの円筒状の試験片を切り出し、500トン
高速プレス機を用いて通常の方法で据え込み率85%の
常温(室温)据え込み加工を行った。
【0076】次いで、前記の据え込み加工した試験片を
850〜1050℃まで25℃刻みに各温度で6時間加
熱して浸炭処理時の加熱をシミュレートした。
【0077】加熱処理後は油冷し、光学顕微鏡(倍率は
100倍)でランダムに10視野観察して粗粒化特性を
調査した。なお、粗粒化の判定基準は前記の(実施例
1)の場合と同じである。すなわち、JIS G 0551に準じ
て、視野間において3以上異なった粒度番号の視野が存
在する場合に「混粒」として、異常粒成長が生じたと見
なした。一方、「粗粒」と「細粒」の判定はJIS基準
よりも厳しくして、結晶粒度番号6未満の場合に「粗粒
鋼」として結晶粒が粗大化したと判定した。
【0078】表5〜7に、上記の粗粒化特性の調査結果
を示す。
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
【表7】
【0082】表5〜7から、本発明で規定する化学組成
を有する鋼の場合であっても、本発明の規定を外れた条
件で熱間加工した場合には、粗粒化開始温度が950℃
以下と低く、耐粗粒化特性に劣ることが明らかである。
【0083】(実施例3)前記の(実施例1)で述べた
鋼2、鋼9、鋼16及び鋼22の3トン鋼塊から分割し
た鋼塊を用いて、1200℃に加熱した後、通常の方法
で直径100mmの鋼片に熱間鍛造した。なお、いずれ
の場合も熱間鍛造の仕上げ温度は950℃とした。又、
鍛造終了後は500℃までの温度域を2℃/分あるいは
15℃/分の冷却速度で冷却し、500℃を下回る温度
域の冷却は放冷とした。
【0084】次いで、上記の直径100mmの各鋼片を
1100℃に再加熱した後、通常の方法で直径50mm
の丸棒に熱間鍛造した。なお、熱間鍛造の仕上げ温度は
900℃とした。又、鍛造終了後は500℃までの温度
域を3℃/分あるいは25℃/分の冷却速度で冷却し、
500℃を下回る温度域の冷却は放冷とした。
【0085】上記のようにして得た直径50mmの丸棒
を、通常の方法によって730℃で球状化焼鈍した後、
(R/2)の部位(R=25mm)から直径10mm×
長さ20mmの円筒状の試験片を切り出し、500トン
高速プレス機を用いて通常の方法で据え込み率85%の
常温(室温)据え込み加工を行った。
【0086】次いで、前記の据え込み加工した試験片を
850〜1050℃まで25℃刻みに各温度で6時間加
熱して浸炭処理時の加熱をシミュレートした。
【0087】加熱処理後は油冷し、光学顕微鏡(倍率は
100倍)でランダムに10視野観察して粗粒化特性を
調査した。なお、粗粒化の判定基準は前記の(実施例
1)及び(実施例2)の場合と同じである。
【0088】表8に、上記の粗粒化特性の調査結果を示
す。
【0089】
【表8】
【0090】表8から、本発明で規定する化学組成を有
する鋼の場合であっても、熱間加工後に本発明の規定を
外れた条件で冷却した場合には、粗粒化開始温度が85
0℃以下と低く、耐粗粒化特性に劣ることが明らかであ
る。
【0091】
【発明の効果】本発明による耐粗粒化肌焼鋼は、冷間加
工による精密な成形加工を行い、次いで浸炭処理しても
結晶粒の粗大化や異常粒成長を生ずることがないので、
自動車や産業機械用の歯車やシャフト類など浸炭処理が
施される部品の母材鋼として利用することができる。本
発明の耐粗粒化肌焼鋼鋼材を用いれば、熱間での粗成形
後に行われていた歯切りなどの機械加工による整形加工
を省略することができるので、自動車や産業機械用の歯
車やシャフト類などを低コストで製造することが可能で
ある。上記の耐粗粒化肌焼鋼鋼材は本発明の方法によっ
て、比較的容易に製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小山 隆治 福岡県北九州市小倉北区許斐町1番地住友 金属工業株式会社小倉製鉄所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.1〜0.3%、Si:
    0.1〜1.0%、Mn:0.3〜2.0%、Al:
    0.01〜0.06%、N:0.005〜0.03%で
    Al(%)/N(%):1.0〜2.0、Nb:0〜
    0.07%、V:0〜0.1%で、且つNb(%)+V
    (%)≧0.005%、Cu:0〜0.3%、Ni:0
    〜0.5%、Cr:0〜2.0%、Mo:0〜0.5
    %、W:0〜0.5%、Pb:0〜0.3%、Te:0
    〜0.08%、Ca:0〜0.01%、Bi:0〜0.
    3%、S:0〜0.08%、P:0.03%以下、残部
    はFe及び不可避不純物からなることを特徴とする耐粗
    粒化肌焼鋼。
  2. 【請求項2】冷間加工して成形した後に浸炭処理するこ
    とによって製造する部品の母材となる肌焼鋼鋼材の製造
    方法であって、請求項1に記載の化学組成を有する鋼を
    1100℃以上の温度に加熱して熱間加工を行い、前記
    の熱間加工を850℃以上の温度域の温度で仕上げ、次
    いで、500℃までの温度域を5〜500℃/分の冷却
    速度で冷却することを特徴とする耐粗粒化肌焼鋼鋼材の
    製造方法。
  3. 【請求項3】冷間加工して成形した後に浸炭処理するこ
    とによって製造する部品の母材となる肌焼鋼鋼材の製造
    方法であって、請求項1に記載の化学組成を有する鋼を
    1100℃以上の温度に加熱して熱間加工を行い、前記
    の熱間加工を850℃以上の温度域の温度で仕上げ、次
    いで、500℃までの温度域を5〜500℃/分の冷却
    速度で冷却した後、更に、1000℃以上の温度に再加
    熱して熱間加工を行い、この熱間加工を850℃以上の
    温度域の温度で仕上げ、次いで、500℃までの温度域
    を5〜500℃/分の冷却速度で冷却することを特徴と
    する耐粗粒化肌焼鋼鋼材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003027135A (ja) * 2001-07-10 2003-01-29 Aichi Steel Works Ltd 高温浸炭用鋼の製造方法及びその方法により製造された高温浸炭用鋼
JP2008127596A (ja) * 2006-11-17 2008-06-05 Kobe Steel Ltd 疲労限度比に優れた高強度冷間鍛造用非調質鋼
JP2014185389A (ja) * 2013-03-25 2014-10-02 Kobe Steel Ltd 面疲労強度と冷間鍛造性に優れた肌焼用鋼材および歯車
EA031975B1 (ru) * 2015-12-07 2019-03-29 Государственное Научное Учреждение "Объединенный Институт Машиностроения Национальной Академии Наук Беларуси" Способ изготовления стальной детали
JP2019218586A (ja) * 2018-06-18 2019-12-26 日本製鉄株式会社 浸炭用鋼及び部品

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