JP5630978B2 - 靭性に優れた機械構造用鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、機械構造用鋼を浸炭処理あるいは浸炭窒化処理して使用される各種機械構造用部品に用いる鋼であって、特に耐衝撃性および靭性に優れた機械構造用部品に関するものである。
従来、耐衝撃性が求められる用途には、例えばJIS規格のSNCM420(質量%でC:0.20%、Ni:1.6%、Mo:0.15%を含有)やSNCM815(質量%で、C:0.15%、Ni:4.0%、Mo:0.15%を含有)など、Ni量を1.6〜4.0%、Moを0.15%程度添加した鋼が用いられてきた。しかし、これらの元素は原料コストが高く、かつ希少であり近年では省資源化が要求されている。ところで、靭性が要求される大形の歯車や転動部品等の機械構造用部品には、Ni量を1.6〜4.0%、Moを0.15〜0.30%程度添加したSNCM系のNi−Mo鋼が用いられてきた。さらなる靭性向上が要求される場合には、その対策としてPやSなどの不純物元素を極力低減すると共にNi、MoやV等の合金元素を添加することによって靭性を高めている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
しかしながら、上記のようにさらに高い靱性必要となる場合には、不純物元素の低減やNiやMoやV等の合金元素を増量することや、P、S、Cuなどの不可避的不純物を低減することが必要となる。NiやMoやV等の合金元素を添加するだけでは、最近の大形部品に要求される、さらなる靭性の向上を達成することができず、また、さらなる合金元素の添加によって靭性の確保を図る場合には、素材コストが高くなる問題も発生する。
一般に、耐衝撃特性が求められる部品には、浸炭処理又は浸炭窒化処理された鋼材が用いられている。ところで、大型歯車などの多くの大形部品は、浸炭処理や浸炭窒化時の焼入れ段階でマルテンサイト組織を得るための充分な冷却速度が得られ難くなり、部分的にベイナイト組織を含む不完全焼入れ相を生成し、その結果芯部の靱性が低下することがある。浸炭焼入れ処理または浸炭窒化焼入れ処理を施すことによって表面強度や硬度を高めている。これら大形部品は質量が大きいため浸炭焼入れ処理または浸炭窒化焼入れ処理後の非硬化層である芯部組織には焼入れ性の不足のためマルテンサイト組織中に不完全焼入れ組織であるベイナイト組織を含む場合がある。この場合には、衝撃的な負荷を受ける環境において芯部にベイナイト組織が存在すると、き裂の進展を容易にしてしまうため充分な靭性を確保できず、大形部品のさらなる靭性向上の要求に対応できない。そのため、焼入性の良好な鋼を大形の構造用材料とし、浸炭処理又は窒化処理を施し、焼鈍処理をした後、焼入れ焼戻しによりHRC60以上の表面硬度と、HRC30〜48の芯部強度を得るものとした発明が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、大形の部品では衝撃的な付加により、表面に生成した欠陥から芯部にき裂が伝ぱして破壊に至る場合があり芯部靱性を高めることが必要となっている。その際には、衝撃的な破壊の抑制や、焼入性を確保する目的でNiやMoを添加しているが、素材コストが高くなる問題がある。また、上記したようにPやCuなどの不可避的不純物を低減する方法では、原料や製鋼操業の制約を受け、同様に素材コストや製造コストが高くなる。また、実際の浸炭処理または浸炭窒化処理では多くの大形部品を焼入れ処理するため、浸炭または浸炭焼入れ時の芯部の冷却速度が変化してしまうので、どの焼入れ処理を行っても芯部の組織や硬さが同じである大形部品を提供することが難しい。例えば、通常の焼入れ処理を行った際に、冷却速度が遅くなってベイナイト組織が多く存在する場合には、芯部靭性が低下してしまい、一定の靭性を有する大形部品を提供することができない問題がある。
特開平1−247561号公報 特開平9−53148号公報 特開2007−308740号公報
本発明が解決しようとする課題は、焼入れ性を高めた鋼成分にすることで浸炭あるいは浸炭窒化処理して使用される部品用の機械構造用鋼の靭性を従来使用されているNiやMoを添加した鋼と同等以上の靭性を有しかつNiやMoを添加することなく素材コストを低減した鋼を提供することにある。
本願の発明者らは、高い焼入れ性を有する鋼成分とすることで、浸炭焼入れ時または浸炭窒化焼入れ時の中周部の冷却速度が2℃/s以下となっても、不完全焼入れ組織であるべイナイト組織を抑制し、鋼材芯部をそのマルテンサイト面積率ならびに硬さを適正にすることで、従来鋼であるSNCM420やSNCM815と同等以上の靭性を確保できることを見出した。しかも、靱性を向上するためにP、Cuなどの不可避的不純物を低減する必要もないために、原料や製造操業の制約を受けることなく、かつ、NiやMoを添加しないため、素材コストの低減が可能となることを見出した。なお、ここでいう中周部とは、鋼材直径をDとしたときに鋼材中心の芯部からD/4の位置のことである。
そこで、課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、浸炭用あるいは浸炭窒化用鋼として、質量%で、C:0.13〜0.33%、Si:0.1〜0.8%、Mn:1.3〜2.0%、P:0.03%以下、S:0.030%以下、Cr:1.8〜3.5%、Al:0.050%以下、O:0.0020%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる合金組成の浸炭用あるいは浸炭窒化用鋼からなり、鋼成分であるC、Si、MnおよびCrの含有量が(0.04+0.35C)×(1.00+0.70Si)×(0.70+3.96Mn)×(1.0+2.16Cr)≧3.0である3.0である鋼で、該鋼からなる鋼材の直径をDとしたとき、該鋼材の中心からD/4の位置における部分を2℃/s以下の冷却速度として該鋼に浸炭焼入れ処理または浸炭窒化焼入れ処理した際に、該鋼材の芯部のマルテンサイト面積率が55%以上、該鋼材の芯部の硬さが33〜50HRC、かつ、該鋼材の芯部の結晶粒度番号が7番以上、靱性値が69〜113MPa・m1/2となる鋼であることを特徴とする浸炭用あるいは浸炭窒化用鋼である。
請求項2の発明では、請求項1に記載の鋼成分に加えて、質量%で、N:0.0250%以下を含有し、C、Si、MnおよびCrの含有量が(0.04+0.35C)×(1.00+0.70Si)×(0.70+3.96Mn)×(1.0+2.16Cr)≧3.0である3.0である鋼で、該鋼からなる鋼材の直径をDとしたとき、該鋼材の中心からD/4の位置における部分を2℃/s以下の冷却速度として該鋼に浸炭焼入れ処理または浸炭窒化焼入れ処理した際に、該鋼材の芯部のマルテンサイト面積率が55%以上、該鋼材の芯部の硬さが33〜50HRC、かつ、該鋼材の芯部の結晶粒度番号が7番以上、靱性値が67〜123MPa・m 1/2 となる鋼であることを特徴とする浸炭用あるいは浸炭窒化用鋼である。
上記の発明の手段における浸炭処理あるいは浸炭窒化処理して用いられる大形部品の機械構造用鋼の成分限定理由について説明する。なお、以下の各成分の%は質量%で示す。
C:0.13〜0.33%
Cが0.13%未満では浸炭処理または浸炭窒化処理に多大な時間を要する。また0.33%を超えると必要以上の内部硬度となり、靭性が低下するほか被削性や冷間加工性が低下する。そこでCは0.13〜0.33%とする。
Si:0.1〜0.80
Siは鋼溶製時の脱酸元素として必要である。そのためSiは0.1%以上とする必要がある。しかし、1%を超えると靭性が低下し、さらに素材硬度が上昇して加工性が劣化し、かつ、浸炭性の阻害や粒界酸化を助長する原因となる。ところで、Siの上限を表1および表2に基づき0.80%とするので、Siは0.1〜0.80%とする。
Mn:1.30〜2.0%
Mnは鋼溶製時の脱酸元素として必要である。さらに、焼入れ性を高めるため1.2%以上添加する必要がある。しかし、2.0%より多く添加すると焼入れ性が過大となるため靭性が低下し、さらに被削性や冷間加工性を劣化する。ところで、Mnの下限を表1および表2に基づき1.30%とするので、Mnは1.30〜2.0%とする。
P:0.030%以下、S:0.030%以下
PおよびSは靭性を低下させる元素であるため、それぞれ0.030%以下とする。
Cr:1.8〜3.5%
Crは焼入れ性の向上および靭性を向上させる元素であるため、1.8%以上添加する必要がある。しかし、3.5%より多く添加すると被削性や加工性を劣化させ、また浸炭性を阻害させる。そこでCrは1.8〜3.5%とする。
Al:0.050%以下
Alは鋼溶製時の脱酸元素として必要である。多く添加しすぎると鋼の清浄度が低下し、疲労強度が低下する。そこでAlは0.050%以下とする。
O:20ppm以下
Oは耐衝撃性に対して有害な酸化系介在物を形成するために、その上限を20ppmとする。
N:250ppm以下
Nは鋼中でAlと結合して窒化物を形成し、結晶粒粗大化の抑制に有効である。しかし、その効果は250ppmで飽和し、それ以上に含有させると窒化物が介在物となり疲労強度に対して悪影響を及ぼすようになるため、その上限を250ppmとし、好ましくは結晶粒の粗大化抑制に効果を有するようになる100ppm以上として100〜250ppmとする。
本発明では、本発明の鋼からなる鋼材の大形部品を浸炭処理または浸炭窒化処理をした後に残存する不完全焼入れ組織を低減し、マルテンサイト面積率を上昇させることで優れた靱性を得ることを狙いとしており、高い焼入性を付与することが重要となる。この焼入れ性を相対的に表す指標として、請求項12では(0.04+0.35C)×(1.00+0.70Si)×(0.70+3.96Mn)×(1.0+2.16Cr)の計算式とし、この計算式をそれぞれ当てることで焼入れ指数とした。この焼入れ指数の値が3.0以上と高いほど鋼材の焼入れ性が高く、芯部のマルテンサイト面積率が上昇する。もし、焼入れ指数の値が3.0未満と低いと鋼材の焼入れ性が低く、芯部のマルテンサイト面積率が減少する。また、これらの各計算式の焼入れ指数の値が3.0以上である場合には、特に優れた靭性が得られることが明らかになったため、これらの各計算式からなる焼入れ指数を本発明の構成要件とした。さらにこれらの手段では、鋼材の中周部の冷却速度を2℃/s以下として浸炭焼入れ処理または浸炭窒化焼入れ処理した場合でも、鋼材の芯部のマルテンサイト面積率が55%以上で、かつ、芯部の硬さが33〜50HRCで、さらに芯部の結晶粒度番号が7番以上と細粒化され、優れた靭性を得ることができ、高い焼入れ性が得られている。
この焼入れ指数の計算式の導出方法は、ASTM(America Society of Test Material)規格255−02に記載の値から各元素のC、Si、Mn、Ni、Crの値を近似して求めている。
請求項1の手段では、鋼組成にNiやMoを添加しなくても、この鋼を浸炭処理又は浸炭窒化処理を施し冷却した後の芯部組織は、ベイナイト組織を抑制したマルテンサイトが主な組織となり、例えば大形部品の芯部を模擬したφ90mmの丸棒を油焼入れした材料の中周部では55%以上のマルテンサイト面積率を有し、高い靭性を確保することができ、
請求項2の手段では、請求項1の手段の鋼成分にN量を250ppm以下と規定して添加することで、浸炭処理又は浸炭窒化処理を施し、優れた靭性を確保することができ、
これらの請求項1および請求項2の鋼成分の鋼からなる大形部品の浸炭処理又は浸炭窒化処理した時の中周部の冷却速度をその芯部の冷却速度に相当する2℃/s以下とした場合でも、この大形部品の芯部の組織はマルテンサイト面積率が55%以上で、芯部の硬さが33〜50HRCで、かつ、芯部の結晶粒度番号が7番以上である部品となり、優れた靭性を確保することができる。
本発明の手段からなる大形部品用の機械構造用鋼である浸炭処理あるいは浸炭窒化処理して使用される鋼は、大形部品の中周部の冷却速度が芯部の冷却速度に相当する2℃/s以下となる場合であっても、焼入れ性を高めることができて芯部のマルテンサイト面積率を55%以上、芯部の硬さを33〜50HRCとすることができる。さらに、鋼成分としてNiやMoを添加しなくても優れた靭性を有し、現用の含Ni−Mo鋼と同等以上の靭性を有する機械構造用鋼を得ることが可能となり、かつ、素材コストの低減された大形部品用の機械構造用鋼が得られる。
実験で採用した浸炭焼入れ・焼戻し条件の処理工程を示す図である。
100kg真空溶解炉で溶製して、表1に示す実施例1、2、4、5、7〜11および比較例1〜5の鋼成分、表2に示す実施例13〜16、19〜24および比較例6〜10の鋼成分を含有し、かつ残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を製造した。なお、表1は、請求項1の実施例および比較例を示し、さらに表2は請求項2の実施例および比較例を示している。これらの表1〜2に共に本発明の実施例と比較例の焼入れ指数の計算値は、(0.04+0.35C)×(1.00+0.70Si)×(0.70+3.96Mn)×(1.0+2.16Cr)の焼入れ指数の値である。この焼入れ指数の値は、表1表2ともに実施例では4.3〜10.4であり、これらはいずれも3.0以上である。しかし、表1の比較例では焼入れ指数の値は0.6〜4.5であり、表2の比較例では、焼入れ指数の値は1.5〜3.9であり、比較例5および比較例10以外はいずれも3.0未満である。なお、表1および表2において網掛けを入れた値は請求項から外れていることを示す。
Figure 0005630978
Figure 0005630978
上記のように、表1は請求項1の実施例および比較例を示し、さらに表2は請求項2の実施例および比較例を示しているが、それらの上記で溶製して得た実施例および比較例の鋼を、熱間鍛伸によりφ90mmの棒鋼とした。さらに、これらを焼ならし処理した後、図1に示す浸炭焼入れ焼戻し処理を行った。この場合、焼入れは油焼入れ処理を行った。この浸炭焼入れ焼戻し処理した棒鋼から、これら棒鋼の中周部のシャルピー衝撃試験、破壊靭性試験、芯部のマルテンサイト面積率、芯部の硬さならびに結晶粒度を評価するために、これらの棒鋼から試験片を切出した。
上述のφ90mmの棒鋼を油焼入れ処理した理由としては、大形の実部品の冷却速度である2℃/sと、φ90mm油焼入れ材の中周部の冷却速度がほぼ等しく、したがって芯部のミクロ組織および芯部の硬さが大形の実部品でもほぼ同等となるためである。これにより大形部品用の浸炭用鋼あるいは浸炭窒化用鋼の芯部靭性を簡易的にラボにて評価することが可能となる。
表3に、請求項1の実施例および比較例として、φ90mmの棒鋼を油焼入れ後に中周部から切出した時のマルテンサイト面積率を示す。各組織の面積率の測定はSEM観察した写真を画像測定することで算出した。請求項1および請求項2の実施例では焼入性を高めた成分としており、いずれも55%以上のマルテンサイト面積率を有している。一方、比較例ではNiやMoを添加しているにもかかわらずSi、MnやCrの添加量が少ないため、焼入れ性が低く、比較例5を除いて実施例に比べてマルテンサイト面積率が55%より低い値となっている。
Figure 0005630978
さらに、表3にシャルピー衝撃試験の結果を示す。試験片は10×10×55mmであり、JIS規格の2mmVノッチを有する試験片である。実施例の衝撃値は、57〜87(J/cm2)であり、硬さの上昇と共に衝撃値は低下している。一方、比較例1および比較例4では実施例と同等以上の結果となった。なお、表3における網掛けは室温での衝撃値および破壊靱性値が実施例の範囲にあることを示す。
さらに、表3に破壊靱性試験の結果を示す。試験片形状は厚さ25.4mmの1インチサイズ試験片である。破壊靱性試験では、最初に予めき裂を導入し試験することで、き裂に対する材料の伝播抵抗が判る。実施例の靱性値は69〜113(MPa・m1/2)であり、シャルピー衝撃試験の結果と同様に硬さの上昇と共に衝撃値は低下している。一方、比較例1および比較例4ではシャルピー衝撃試験結果と同じく実施例と同等以上の結果となった。ただし、この比較例はNiを1.90〜3.28%、Moを0.31〜0.52%と比較的多く添加しており、素材コストが多くかかってしまう。したがって、これらの比較例は靱性が高くても、本願の請求項1の発明とは異なるものである。
次いで、表4に、請求項2の実施例および比較例として、φ90mmの棒鋼を油焼入れ後に中周部から切り出した時のマルテンサイト面積率を示す。各組織の面積率の測定はSEM観察した写真を画像測定することで算出した。請求項2の実施例でも焼入性を高めた成分としており、いずれも55%以上のマルテンサイト面積率を有している。一方、比較例ではNiやMoを添加しているにもかかわらずSi、MnやCrの添加量が少ないため、焼入性が低く、比較例10を除いてマルテンサイト面積率は55%より低い値となっている。
Figure 0005630978
さらに、表4に芯部硬さ測定結果を示す。No.13〜16、19〜24の実施例では、焼入性を高めた適切な鋼成分とすることで、芯部硬さが33〜50HRCの硬さとなっている。一方、比較例6〜9では、焼入れ性が低く、マルテンサイト面積率が57%未満であったため、芯部硬さが30HRC以下となった。一方、比較例10はマルテンサイト面積率が52%であったが、C量が0.40%と高かったため芯部硬さは49HRCとなった。
さらに、表4に結晶粒度の測定結果を示す。No.13〜16、19〜24の実施例では、いずれも結晶粒度番号7.0番以上となっている。一方、No.6とNo.8〜9の比較例では、いずれも結晶粒度番号7.0番未満となっており、結晶粒粗大化の抑制に有効であるAlNを形成するためのAl量とN量の質量比が適性でなかったためと考えられる。ただし、比較例7、10の結晶粒度番号は7.0番以上となった。
さらに、表4にシャルピー衝撃試験の結果を示す。試験片は10×10×55mmであり、JIS規定の2mmVノッチを有する試験片である。No.13〜16、19〜24の実施例の衝撃値は56〜98(J/cm2)であり、硬さの上昇と共に衝撃値は低下している。一方、比較例6および比較例9では実施例と同等以上の結果となった。それ以外の比較例では何れも実施例よりも上回る衝撃値とはならなかった。衝撃値が実施例よりも劣る理由としては、靭性向上に寄与するマルテンサイト面積率が低いこと、ならびに結晶粒度が実施例よりも低いことが挙げられる。
さらに、表4に破壊靭性試験の結果を示す。試験片の形状は厚さ25.4mmの1インチサイズ試験片である。破壊靭性試験では、最初に予め試験片にき裂を導入して試験することで、き裂に対する材料の伝播抵抗が判る。No.13〜16、19〜24の実施例の靭性値は67〜123(MPa・m1/2)である。一方、比較例6および比較例9では実施例と同等以上の結果となった。それ以外の比較例では何れも実施例よりも上回る破壊靭性値とはならなかった。破壊靭性値が実施例よりも劣る理由としては、シャルピー衝撃試験の結果と同じく靭性向上に寄与するマルテンサイト面積率が低いこと、ならびに結晶粒度が実施例よりも低いことが挙げられる。なお、比較例6および比較例9はNiを2.10%、Moを0.50%と多く添加しており、素材コストが多くかかってしまう。したがって、これらの比較例は靱性が高くても、本願の請求項1の発明とは異なるものである。
以上の説明から明らかなように、本発明による浸炭処理用又は浸炭窒化処理用鋼に浸炭処理または浸炭窒化処理を行った機械構造用鋼から製造の機械構造用部品では、焼入れ性を高め、マルテンサイト面積率を高めることで芯部靱性を確保することができる。さらに、本発明の機械構造用部品に用いる鋼は、焼入れ性を高め芯部のマルテンサイト面積率を55%以上とし、芯部の硬さを33〜50HRC結晶粒度番号を7.0以上とすることで、浸炭処理あるいは浸炭窒化処理して使用される大形部品用の機械構造用鋼の芯部靭性を、従来使用されているNiやMoを添加した鋼と同等以上とし、かつ、NiやMo添加を必要とせず素材コストを低減した鋼とすることができる。したがって、素材コストを低減した機械構造用鋼とすることができる。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.13〜0.33%、Si:0.1〜0.8%、Mn:1.3〜2.0%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:1.8〜3.5%、Al:0.050%以下、O:0.0020%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、C、Si、MnおよびCrの含有量が(0.04+0.35C)×(1.00+0.70Si)×(0.70+3.96Mn)×(1.0+2.16Cr)≧3.0である鋼で、該鋼からなる鋼材の直径をDとしたとき、該鋼材の芯部からD/4の位置における部分を2℃/s以下の冷却速度として該鋼に浸炭焼入れ処理または浸炭窒化焼入れ処理した際に、該鋼材の芯部のマルテンサイト面積率が55%以上、該鋼材の芯部の硬さが33〜50HRC、かつ、該鋼材の芯部の結晶粒度番号が7番以上、靱性値が69〜113MPa・m1/2となる鋼であることを特徴とする浸炭用あるいは浸炭窒化用鋼。
  2. 請求項1に記載の鋼成分に加えて、質量%で、N:0.0250%以下を含有し、C、Si、MnおよびCrの含有量が(0.04+0.35C)×(1.00+0.70Si)×(0.70+3.96Mn)×(1.0+2.16Cr)≧3.0である鋼で、該鋼からなる鋼材の直径をDとしたとき、該鋼材の芯部からD/4の位置における部分を2℃/s以下の冷却速度として該鋼に浸炭焼入れ処理または浸炭窒化焼入れ処理した際に、該鋼材の芯部のマルテンサイト面積率が55%以上、該鋼材の芯部の硬さが33〜50HRC、かつ、該鋼材の芯部の結晶粒度番号が7番以上、靱性値が67〜123MPa・m 1/2 となる鋼であることを特徴とする浸炭用あるいは浸炭窒化用鋼。
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