JP6832618B2 - 耐ピッチング特性に優れる機械構造用肌焼鋼及び機械構造用部品素材 - Google Patents

耐ピッチング特性に優れる機械構造用肌焼鋼及び機械構造用部品素材 Download PDF

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Description

本発明は、例えば自動車などの動力伝達に用いられる歯車など、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れを行った後、表面に浸炭肌を残した状態で使用する耐ピッチング特性に優れた機械構造用鋼に関するものである。
自動車用の歯車の破損形態の一つとして、歯面の剥離(以後、「剥離」を「ピッチング」という。)がある。このピッチングは表面からき裂が生成し、伝ぱすることで剥離を起こすことである。ところで、歯車は一般に肌焼鋼をガス浸炭またはガス浸炭窒化して使用されることが多い。そのために、浸炭または浸炭窒化処理した鋼材からなる歯車の表層には、浸炭異常層が存在する状態で使用される。
ところで、鋼材のガス浸炭後の浸炭異常層は、浸炭時の酸化により形成された粒界酸化、合金酸化物、または合金欠乏により生じる不完全焼入組織により形成される。これらはピッチング強度の劣化を引き起こす原因となるため、歯面研削や真空浸炭の利用により、浸炭異常層を除去または低減することで、耐ピッチング特性の向上を目指している。
一方、歯車は、歯面どうしの金属すべりによる摩擦によって高温になり、破面の硬度が下がることで耐ピッチング特性が低下する。そこで、耐ピッチング特性の向上のために、Si、Cr、Moといった元素で焼戻し軟化抵抗を高めることで、金属摩耗を抑え、金属すべりによる摩擦熱で、鋼材が軟化することを抑える技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
さらに、浸炭ままでの歯車の使用を考え、浸炭異常層の形態としての不完全焼入組織の深さを5〜40μmとすることで、初期なじみ性を向上させてピッチング特性を上げる技術が提案されている(例えば、特許文献2)。
ところで、浸炭異常層を除去する工程は高コストであり、製造工程の変更により製造負荷が大きくなる。さらに浸炭異常層を除去した場合であっても、摩耗が極端に少ないと歯当たりにより早期に破損する場合もあり、十分な効果を示さない場合も多い。このような理由から、ガス浸炭のままで歯車が使用されることは少なくない。一方、特許文献1の様に元素添加により焼戻し軟化抵抗を向上する技術は、素材側で可能な取組みであり、工程変更、追加などと比較すると製造負荷は小さい。しかし、この技術は研削仕上げを行った歯車に対しては有用であるが、浸炭異常層が存在する状態で使用する場合には、表層の近傍は合金元素の欠乏により、合金添加量から類推される軟化抵抗性より遥かに劣ることとなる。そのため、ガス浸炭後に浸炭異常層が残存した状態で使用される歯車に対しては、焼戻し軟化抵抗の向上では、耐ピッチング特性の向上対策としては不十分である。また、特許文献2は、ガス浸炭後の浸炭異常層に対する着眼をしているものの、不完全焼入層の摩耗のみへの着眼に留まっており、粒界酸化を起点とした早期破損への対策や過剰摩耗への対策としては不十分である。
そこで、発明者らはガス浸炭後の粒界酸化深さ、不完全焼入層の厚さの両方に着眼し、粒界酸化深さを低減し、さらに不完全焼入層の摩耗により、早期に粒界酸化を消失させることで粒界酸化を起点としたピッチングの抑制が可能であることを見出した。このように、粒界酸化と不完全焼入層の双方の制御が必要であり、そのためには、成分の適正化およびガス浸炭後の粒界酸化深さ、不完全焼入層の深さ、および面積割合を制御することで実現可能であることを見出した。また、粒界酸化と不完全焼入層の双方を制御することで、浸炭焼入れ後にショットピーニングを実施して使用される部品においても本願の技術は有効である。
特開2000−297347 特開平10−259470
本発明が解決しようとする課題は、浸炭肌で使用する際に耐ピッチング特性が優れている肌焼鋼を提供することである。
課題を解決するための本発明の手段は、第1の手段では、質量%で、C:0.10〜0.35%、Si:0.40〜0.80%、Mn:0.15〜0.37%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:1.20〜2.50%、Ni:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.10%を含有し、さらにV:0.01〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%、Ti:0.01〜0.20%から選択した1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、当該鋼をガス浸炭した場合またはガス浸炭窒化した場合における最大粒界酸化深さD1が15μm以下で、合金欠乏層である不完全焼入層の最大深さD2が8〜25μmであり、かつ、当該鋼の最表面から不完全焼入層の最大深さまでの不完全焼入層の面積割合が20〜50%であり、さらにD2−D1が、2≦D2−D1≦15を満たす浸炭異常層が残った状態で使用される鋼であることを特徴とする耐ピッチング特性に優れる機械構造用肌焼鋼である。
第2の手段では、第1の手段の機械構造用肌焼鋼からなる機械構造用部品の素材の浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れされた機械構造用部品素材は、その表面層が、最大粒界酸化深さD1が15μm以下で、合金欠乏層である不完全焼入層の最大深さD2が8〜25μmであり、かつ、この機械構造用部品の素材の最表面から不完全焼入層の最大深さD2までにおける不完全焼入層の面積割合が20〜50%であり、不完全焼入層の最大深さD2から最大粒界酸化深さD1を減じた値のD2−D1が、2≦D2−D1≦15を満足する深さの浸炭異常層が残った状態で使用されることを特徴とする耐ピッチング特性に優れる機械構造用部品素材である。
上記の本願の第1の手段に係る発明の機械構造用肌焼鋼は、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れにより、表面に浸炭肌を残した状態で、そのL50寿命に見られるように、耐ピッチング特性が従来の鋼材のSCM420に比して2倍以上であり、極めて優れた効果を有する。さらに本願の第1の手段の鋼である鋼からなる第2の手段の鋼素材である歯車などの機械構造用部品は、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れにより、表面に浸炭肌を残した状態で、そのL50寿命に見られるように、耐ピッチング特性が従来の鋼材のSCM420からなる素材の部品に比して2倍以上であり、極めて優れた効果を有する。
ローラーピッチング試験片の形状を示す図である。 ローラーピッチング試験の概念図である。 焼入れ焼戻しパターンの図である。
先ず、本願発明鋼の化学成分の含有量の限定理由、並びにガス浸炭後もしくはガス浸炭窒化後における、最大粒界酸化深さD1と、不完全焼入層の最大深さD2と、部品の最表面から不完全焼入層の最大深さD2までの不完全焼入層の面積割合と、D2−D1の各限定理由を説明する。なお、%は質量%で示す。
C:0.10〜0.35%
Cは、芯部の焼入性、鍛造性、機械加工性に影響する元素である。Cが0.10%未満では十分な芯部の硬さが得られず強度が低下するため、Cは0.10%以上の添加が必要である。しかし、Cが0.35%より多いと、部品素材の硬さが増加して被削性および鍛造性などの加工性を阻害し、さらに、部品素材の芯部の硬さが過剰となり、例えば歯車の曲げ強度が劣化する。そこで、Cは0.10〜0.35%とし、望ましくは、0.13〜0.30%とする。
Si:0.40〜0.80%
Siは、脱酸に必要な元素であり、また、焼戻し軟化抵抗性を高めピッチング特性の向上にも有効な元素であり、そのためには、Siは0.40%以上添加することが必要である。しかもSiが、0.40%以上になると粒界酸化深さが低減するため、ピッチング特性が向上する。しかし、Siは0.80%より多く含有されると、素材硬さが増加し、被削性および鍛造性などの加工性が阻害され、また、浸炭阻害が起こり、耐ピッチング強度劣化につながる。そこで、Siは0.40〜0.80%とし、望ましくは、0.45〜0.65%以下とする。
Mn:0.15〜0.80%
Mnは、焼入性の確保に必要な元素であり、浸炭時に粒界酸化や合金酸化物に濃化することで不完全焼入層を形成する。十分な不完全焼入層を形成するためには、Mnは0.15%以上が必要である。しかし、Mnは0.80%を超えて含有されると、素材の硬さが増加して被削性および鍛造性などの加工性を阻害し、さらに、浸炭時に粒界酸化や合金酸化物に濃化しきれなくなって表層の焼入性を増し、不完全焼入組織の生成を抑制する。そこで、Mnは必要な不完全焼入組織を生成するため、0.80%以下とする必要がある。そこで、Mnは0.15〜0.80%とし、望ましくは0.20〜0.50%とする。
P:0.030%以下
Pは、脆化元素であり、疲労強度を下げる。しかしながら、鋼の製造において不可避に含まれる元素である。そこで、Pは0.030%以下とする。
S:0.030%以下
Sは、Mnと結合し、MnSを形成することで被削性を向上させる元素であるが、冷間加工性を阻害し、疲労強度を劣化する元素である。しかしながら、鋼の製造において不可避に含まれる元素である。そこで、Sは0.030%以下とする。
Cr:1.20〜2.50%
Crは、焼入性の確保に必要な元素であり、かつ焼戻し軟化抵抗性を高める元素でもあり、また、浸炭時に粒界酸化や合金酸化物に非常に濃化し易く、不完全焼入層を形成する。そこで十分な不完全焼入層を形成するに、Crは1.20%以上が必要である。しかし、Crは2.50%より多く含有されると浸炭阻害を起こし、素材硬さの低減につながるほか、浸炭時に粗大炭化物を形成し、ピッチング寿命の低下につながる。そのため、Crは2.50%以下にする必要がある。そこで、Crは1.20〜2.50%とし、望ましくは、1.50〜2.10%以下とする。
Ni:0.20%以下
Niは、高価な元素であるので、素材コストが大きく増加する。また、Niはガス浸炭時に酸素との反応性が低いため、素材の最表面近傍において殆ど偏在せずに不完全焼入組織の生成を抑制する。したがって、必要な不完全焼入組織の生成には、Niは0.20%以下とする必要がある。そこで、Niは0.20%以下とし、望ましくは、0.01〜0.18%とする。
Mo:0.10%以下
Moは、高価な元素であるので、素材コストが大きく増加する。また、Moはガス浸炭時に酸素との反応性が低いため、素材の最表面近傍において殆ど偏在せずに不完全焼入組織の生成を抑制する。したがって、必要な不完全焼入組織の生成には、Moは0.10%以下とする必要がある。そこで、Moは0.10%以下とし、望ましくは、0.01〜0.08%とする。
V:0.01〜0.20%
Vは、浸炭または浸炭窒化時に炭化物または炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化させるために有効な元素である。さらにVは結晶粒を微細化することで、粒界酸化深さを浅くするとともに、粒界酸化となるき裂が生成した際にも、き裂長さを小さくする。しかし、Vが0.01%以下では、これらの効果は得られない。一方、Vは0.20%を超えて含有されると、結晶粒微細化の効果が飽和し、コストアップとなる。さらに、Vは多量に炭窒化物を形成することで、加工特性を悪化させる。そこで、Vは0.01〜0.20%とする。
Nb:0.01〜0.20%
Nbは、浸炭または浸炭窒化時に炭化物または炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化させるために有効な元素である。さらに、Nbは結晶粒を微細化することで、粒界酸化深さを浅くするとともに、粒界酸化となるき裂が生成した際にも、き裂長さを小さくする。しかし、Nbが0.01%以下では、これらの効果が得られない。一方、Nbは0.20%を超えて含有されると、結晶粒微細化の効果が飽和し、コストアップとなる。さらに、Nbは多量に炭窒化物を形成することで、加工特性を悪化させる。そこで、Nbは0.01〜0.20%とする。
Ti:0.01〜0.20%
Tiは、浸炭または浸炭窒化時に炭化物または炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化させるために有効な元素である。さらに、Tiは結晶粒を微細化することで、粒界酸化深さを浅くするとともに、粒界酸化となるき裂が生成した際にも、き裂長さを小さくする。しかし、Tiが0.01%以下では、これらの効果が得られない。一方、Tiは0.20%を超えて含有されると。結晶粒微細化の効果は飽和し、コストアップとなる。さらに、Tiは多量に炭窒化物を形成することで、加工特性を悪化させる。そこで、Tiは0.01〜0.20%とする。
ガス浸炭後の最大粒界酸化深さD1:15μm以下
ガス浸炭後の最大粒界酸化深さD1は、粒界酸化深さが深いと摩耗しても粒界酸化が除去されきれずに存在し続けるため、粒界酸化を起点としたき裂が発生しピッチング強化が劣化する。そこで、粒界酸化深さを15μm以下とする。望ましくは、粒界酸化深さを10μm以下とする。
ガス浸炭後の不完全焼入層の最大深さD2:8〜25μm
ガス浸炭後の表層の不完全焼入組織は、マルテンサイト組織に比べ軟質であり、早期に摩耗することで粒界酸化を消失させる。また、荷重により容易に変形することで歯当たりによる耐ピッチング特性劣化を防ぐ。十分な、摩耗特性、変形代を与えるには、ガス浸炭後の不完全焼入層の最大深さD2が8μm以上は必要である。一方、ガス浸炭後の表層の不完全焼入組織に、軟質な層が多すぎると、過多に摩耗し、歯当たりが悪くなり、歯当たりの端部での剥離を発生することで耐ピッチング特性が劣化する。また、不完全焼入組織が過剰に存在すると、荷重を負荷した際に、大きく変形し、寸法制度を損なう。そのため、ガス浸炭後の不完全焼入層の最大深さD2は25μm以下にする必要がある。そこで、ガス浸炭後の不完全焼入層の最大深さD2は8〜25μmとし、望ましくは、10〜20μm以下とする。
最表面からD2までの不完全焼入層の面積割合:20〜50%
最表面からD2までの不完全焼入層の面積割合が小さいと、摩耗が不均一になり、摩耗しても粒界酸化が除去されずに、粒界酸化を起点としたき裂の発生により、ピッチング強度が劣化する。そこで、最表面からガス浸炭後の不完全焼入層の最大深さD2までの不完全焼入層の面積割合を20%以上とする。しかし、最表面からD2までの不完全焼入層の面積割合が50%を超えると、荷重による変形が大きくなる他、異常摩耗を引き起こすことで耐ピッチング特性が劣化する。そのため、最表面からガス浸炭後の不完全焼入層の最大深さD2までの不完全焼入層の面積割合を50%以下にする。そこで、最表面からD2までの不完全焼入層の面積割合は20〜50%とする。
D2−D1:2〜15μm以下
ガス浸炭後の不完全焼入組織の摩耗後も粒界酸化が残存すると、耐ピッチング寿命が劣化する。合金元素欠乏層の場所によるばらつきも考えるとD2−D1は2μm以上は必要である。一方、粒界酸化層を消失させるのに十分な量以上に摩耗することで、歯当たりが悪くなり、歯当たりの端部での剥離を発生することで耐ピッチング特性が劣化する。また、過剰な摩耗は歯車どうしの接触幅が広がるため、動力伝達のロスにつながる。そのため、D2−D1は15μm以下とする。
ここで、不完全焼入層について説明する。不完全焼入層とは、表面近傍において粒界酸化および合金酸化物に合金元素が消費されることで、周囲に合金欠乏層が発生し、焼入性が低下することで、マルテンサイト組織が形成できなくなることで発生する。この組織形態は、ベイナイト組織またはパーライト組織であることを特徴とする。そこで、本願における不完全焼入層深さとは、ガス浸炭またはガス浸炭窒化後の鋼材、およびこれらの鋼材を使用した部品において、最表面からマルテンサイト組織を形成する深さまでのことである。
次いで、発明を実施するための形態について以下に記載する。表1に示す化学組成を含有する本発明例のための実施例としての鋼(以下、「実施例鋼」という。)および比較用の鋼(以下、「比較例鋼」という。)を、それぞれ100kg真空溶解炉で溶製して鋼とした。比較例鋼のNo.17、No.19、No.22はそれぞれ同順にJIS−SCM420、SNCM420、SCr420である。次いで、これらの実施例鋼および比較例鋼を、1250℃で直径32mmに鍛伸した後、900℃で1時間の焼ならしを行った。
Figure 0006832618
その後、図1に示す寸法を有する、ローラーピッチング試験片に粗加工を実施した。この粗加工の際には、試験部の仕上げ加工を実施しており、つかみ部のみを浸炭した後、研削仕上げを行うために、片肉0.2mmの余肉を付与した。次に、図3で示す浸炭焼入焼戻しパターンの条件である、浸炭温度:930℃、狙いCp=0.90%で、ガス浸炭を実施した。また、浸炭方法による比較のため、実施例鋼のNo.2に示す実施例鋼を用いて、同様に図3に示す浸炭焼入焼戻しパターンの条件で、真空浸炭炉を用いて浸炭を行った。こちらも同様に、浸炭後につかみ部の仕上げ加工を行って、試験片を作製した。
上記で作製した試験片を用い、未使用の状態で試験部を長さ方向に垂直な断面であるT面で切断し、EPMA(電子線マイクロアナライザ)により、表面のC濃度を測定した。SEM(走査電子顕微鏡)を用いて、粒界酸化の最大深さD1、不完全焼入層の最大深さD2を測定し、最表面からD2までの不完全焼入層の面積割合の計算を行った。ここで、浸炭時の狙いCp=0.90に対して、EPMAによる表面C濃度測定結果が3割低い値の0.63%以下の場合を、浸炭阻害とみなし、該当鋼種についてはガス浸炭において使用不可と判断した。
また、上記で作製したローラーピッチング試験片を用い耐ピッチング特性評価のため、表2に示す条件で、ローラーピッチング試験(図2のローラーピッチング試験の概念図を参考)を行った。
Figure 0006832618
実施例鋼のNo.1〜15を用いてガス浸炭にて作製した試験片を、保表3の実施例1〜15とし、比較例鋼No16〜22を用いて、ガス浸炭して作製した試験片を表3の比較例16〜22とし、実施例鋼No.2を用い真空浸炭を行い作製した試験片を表3の比較例23とした。さらに、ローラーピッチング試験を100万サイクルで停止し、100万サイクル時点での各試験片の摩耗量を測定した。この場合の摩耗量は、元の表面からの最大摩耗深さとして定義した。以上、表面C濃度の測定結果、最大粒界酸化深さD1、不完全焼入層の最大深さD2、100万サイクル時の摩耗量、ローラーピッチング試験におけるL50寿命の測定結果およびSCM420とのL50寿命比を計算した結果を表3に示す。
Figure 0006832618
表1のNo.1〜15の化学成分を含有する実施例鋼の鋼からなる部品素材をガス浸炭し、その結果の特性を表3に実施例No.1〜15として示した。この表3の実施例のNo.1〜15は、不完全焼入層の最大深さD2が粒界酸化の最大深さD1より大きく、その割合も適切であるため、粒界酸化を消失させるのに十分であり、かつ過多の摩耗によるピッチング寿命の劣化を抑制することができた。これは、100万サイクル時の摩耗量からも明らかである。そのため、JIS−SCM420をガス浸炭して作製した比較例17と比較して、実施例のNo.1〜15は2倍以上であるL50寿命の高い耐ピッチング特性が得られた。
表3に示すように、比較例鋼No.16および20は、浸炭阻害が発生し、ガス浸炭できず、また使用不可である。そのため、表3における、最大粒界酸化深さD1、不完全焼入れ層の最大深さD2、最表面〜D2までの不完全焼入層面積割合、D2−D1、100万サイクル時の摩耗量、ピッチング寿命を示すL50寿命、およびSCM420との寿命比についての評価は行っていない。したがって、表3の比較例のNo.16およびNo.20では、これらの項目に「−」を記載している。
一方、比較例21は粒界酸化の最大深さD1が4μmに対し、不完全焼入層の最大の深さD2が28μmと非常に深く、不完全焼入組織の面積割合も61%と大きいため、100万サイクル時の摩耗量が22μmと非常に大きくなり、最大粒界酸化深さに対して100万サイクル時の摩耗量が過剰となったため、比較例21のL50寿命と比較例のNo.17であるSCM420のL50寿命と比較した値は0.31で、耐ピッチング特性が劣化する結果となった。さらに、比較例23は本願の請求範囲である実施例鋼の表1のNo.2を元に作製しているが、真空浸炭を行って粒界酸化の形成を抑制したが、不完全焼入層が形成されず、100万サイクル時の摩耗量が4μmと摩耗が殆ど進展することなく、そのために、比較例17のSCM420との寿命比が1.44で、これは2未満であり、十分な耐ピッチング特性を示していない。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.10〜0.35%、Si:0.40〜0.80%、Mn:0.15〜0.37%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:1.20〜2.50%、Ni:0.01〜0.20%、Mo:0.01〜0.10%を含有し、さらにV:0.01〜0.20%、Nb:0.01〜0.20%、Ti:0.01〜0.20%から選択した1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼であり、当該鋼をガス浸炭した場合またはガス浸炭窒化した場合における最大粒界酸化深さD1が15μm以下で、合金欠乏層である不完全焼入層の最大深さD2が8〜25μmであり、かつ、当該鋼の最表面から不完全焼入層の最大深さまでの不完全焼入層の面積割合が20〜50%であり、さらにD2−D1が、2≦D2−D1≦15を満たす浸炭異常層が残った状態で使用される鋼であることを特徴とする耐ピッチング特性に優れる機械構造用肌焼鋼。
  2. 請求項1に記載の機械構造用肌焼鋼が浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入された機械構造用部品素材であって、当該機械構造用部品素材は、その表面に、最大粒界酸化深さD1が15μm以下で、合金欠乏層である不完全焼入層の最大深さD2が8〜25μmであり、かつ,この機械構造用部品素材の最表面から不完全焼入層の最大深さD2までにおける不完全焼入層の面積割合が20〜50%であり、不完全焼入層の最大深さD2から最大粒界酸化深さD1を減じた値のD2−D1が、2≦D2−D1≦15を満足する深さの浸炭異常層が形成されており、当該浸炭異常層が残った状態で使用されることを特徴とする耐ピッチング特性に優れる機械構造用部品素材。
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