JP5505263B2 - 低サイクル疲労特性に優れた浸炭焼入れ鋼材及び浸炭焼入れ部品 - Google Patents

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本発明は、表層部に浸炭処理が行われる部品に用いられる低サイクル疲労特性に優れた浸炭焼入れ鋼材、及び浸炭焼入れ部品に関する。
歯車、軸受部品、転動部品、シャフト、及び等速ジョイント部品は、通常、例えばJIS G 4052、JIS G 4104〜4106等に規定されている中炭素の機械構造用合金鋼を、冷間鍛造(転造を含む)又は熱間鍛造−切削により所定の形状に加工した後、浸炭焼入れを行うことにより形成されている。上記した歯車及び部品は、大きな衝撃が繰り返し加わることにより、繰り返し回数が少ないにもかかわらず疲労破壊することがある。このため、このような疲労破壊に対する耐性(以下、低サイクル疲労特性と記載)が求められている。
低サイクル疲労特性を改善する為の技術としては、例えば特許文献1に記載の技術及び特許文献2に記載の技術がある。
特許文献1に記載の技術は、塑性変形抵抗及び粒界強度の和を一定値以上にすることにより、低サイクル疲労特性を改善するものである。塑性変形抵抗は、鋼材の化学的成分を変数とした式によって算出されるものであり、実質的には芯部硬さが高いほど高くなる。また粒界強度が高い場合は靭性が高くなる。なお、切削性を維持するために、塑性変形抵抗及び粒界強度の和には上限が設けられている。
特許文献2に記載の技術は、芯部硬さ及び浸炭層の靭性それぞれを基準値以上にすることにより、低サイクル疲労特性を改善するものである。なお、芯部硬さ及び浸炭層の靭性それぞれは、鋼材の化学的成分を変数とした関数により整理されている。
特開平10−259450号公報(第13及び14段落、図1) 特開2004−238702号公報(第25及び26段落)
上記した従来の技術によれば、硬化層の靭性及び芯部硬さそれぞれが高いほど低サイクル疲労特性が向上する。しかし、本発明者が検討した結果、芯部硬さを高くしても、必ずしも低サイクル疲労特性が十分な値を示すとは限らないことが判明した。
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、低サイクル疲労特性を安定して良くすることができる、低サイクル疲労特性に優れた浸炭焼入れ鋼材及び浸炭焼入れ部品を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下の通りである。
(a)質量%で、
C:0.1〜0.4%、
Si:0.2〜1.3%、
Mn:0.51.2%、
S:0.001〜0.15%、
Al:0.001〜0.05%、
N:0.003〜0.020%、
P:0.025%以下、
O:0.0025%以下、
Cr:0.98〜1.8%
を含有し、さらに、
Mo:0.19%以下、
Ni:3.5%以下、
の1種又は2種を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、
下記(1)式で定義される投影芯部硬さHp-coreがHV390以上であり、表層の浸炭濃度Csが質量%で0.5〜0.8%であり、浸炭層の旧オーステナイト結晶粒度Nγが8〜15番であることを特徴とする低サイクル疲労特性に優れた浸炭焼入れ鋼材。
Hp-core=Hcore/(1−t/r) …(1)
ただし、Hcore;芯部硬さ、t;有効硬化層深さ、r;破損部位の半径または破損部位の肉厚の半分である。
(b)表面の残留応力が−500MPa以下であることを特徴とする上記(a)に記載の低サイクル疲労特性に優れた浸炭焼入れ鋼材。
(c)上記(a)または(b)に記載の浸炭焼入れ鋼材を用いた浸炭焼入れ部品。
(d)前記浸炭焼入れ部品は歯車であることを特徴とする上記(c)に記載の浸炭焼入れ部品。
本発明によれば、浸炭焼入れ鋼材及び浸炭焼入れ部品において低サイクル疲労特性を安定してよくすることができる。
微小亀裂発生時の破壊メカニズムを説明する為の模式図。 破損部位を説明する為の概略図。 指標Bと低サイクル疲労試験における寿命の関係を示すグラフ。 X軸及びY軸それぞれを、3軸応力度指標B及び浸炭層の靭性指標Aとした上で、本発明の実施例及び比較例をプロットしたグラフ。
本発明鋼は、歯車、軸受部品、転動部品、シャフト、及び等速ジョイント部品として使用される浸炭焼入れ鋼材である。
本発明者は、鋭意検討の結果、浸炭焼入れ鋼材の低サイクル疲労破壊は、次の過程により生じると考えた。
(A)浸炭層と芯部の境界付近に歪みが集中し、微小亀裂が発生する。
(B)微小亀裂が浸炭層に伝搬して、粒界割れを伴って浸炭層が脆性破壊を起こす。
(C)その後、芯部が急速に破壊する。
まず、上記(A)の過程を抑制する手段を検討した。浸炭層深さが顕著に浅い場合、又は芯部硬さが極度に低い場合、浸炭層と芯部の境界付近への歪みの集中及び微小亀裂の発生は極めて容易に生じる。このため、浸炭層深さ及び芯部硬さそれぞれを、ある臨界値以上にする必要がある。
図1は、微小亀裂発生時の破壊メカニズムを説明する為の模式図である。芯部硬さを図中aからbに増加させた場合、破壊起点は変化しないが疲労強度は増加する。一方、有効浸炭層深さを深くした場合、破壊起点はtからtに変化するため疲労強度は増加する。そこで、浸炭層深さ及び芯部硬さの両者を同時に記述できる新しい指標として、下式(1)及び図1で定義される投影芯部硬さHp-coreを定義した。
Hp-core=Hcore/(1−t/r) …(1)
ただし、Hcore;芯部硬さ、t;有効硬化層深さ(JIS G 0557で規定)、r;破損部位の半径または破損部位の肉厚の半分である。破損部位とはいわゆる設計上の危険断面のことであり、歯車部品においては、図2に矢印で示した部分が破損部位の肉厚に相当する。シャフトのような軸状部品では、最小直径部や応力集中が最大となる断面の半径がこれに相当する。
本発明者が検討した結果、後述する成分系においては、投影芯部硬さHp-coreがHV390未満であれば、低サイクル疲労時において浸炭層と芯部の境界付近に微小亀裂が容易に発生するが、HV390以上であれば、この微小亀裂の発生が遅延できることが判明した。
次に、上記(B)の過程を抑制する手段を検討した。浸炭層と芯部の境界付近で発生した微小亀裂が浸炭層に伝搬するか否かは、芯部の靭性、浸炭層の靭性、及び微小亀裂先端の3軸応力度により決まると考えた。
芯部の靭性は芯部の組織に依存する。焼き入れ性が低い結果として、芯部にフェライトとベイナイトの組織分率が50%を超えて混入すると、靭性は顕著に劣化する。つまり、優れた芯部靭性を確保するためには、芯部組織のフェライト+ベイナイト分率が50%以下で、残部が略(実質的に)マルテンサイトであることが必要である。上記の要件を満足するためには、本発明においては、鋼材の焼入れ性を、ジョミニ試験における焼き入れ端より13mmの位置での硬さが、C量に応じて、60×(C)1/2−5(HRC)以上とすることが必要であることが判明した。上記の評価は、芯部よりジョミニ一端焼き入れ試験片を採取し、JIS G 0561 の規定により行うことができる。
このようにある規定値以上の焼入れ性を確保して芯部をマルテンサイトとすると、微小亀裂が浸炭層に伝搬するか否かは、浸炭層の靭性、及び微小亀裂先端の3軸応力度により決まる。
浸炭層の靭性は、表層の炭素濃度(質量%)、表面硬さ(HV)、浸炭層の旧オーステナイト結晶粒度及び芯部の化学的成分で決まるため、下記式(2)で定義される指標Aを導入した。指標Aが大きいほど浸炭層の靭性は向上する。
A=Mo+0.227Ni+190B−0.087Si−17.2P−2.74V−7.18Cs−0.00955Hs+0.0344Nγ …(2)
ただし、Cs;表層の浸炭濃度(質量%)、Hs;表面硬さ(HV)、Nγ;浸炭層の旧オーステナイト結晶粒度である。
一方、微小亀裂先端の3軸応力度をあらわす指標として、有効硬化層深さ(t)及び芯部の硬さ(Hcore)の関数である下記式(3)で定義される指標Bを導入した。指標Bが小さいほど微小亀裂先端の3軸応力度は小さくなる。
B=t×(Hcore) … (3)
図3は、指標Bと低サイクル疲労試験における寿命の関係を示す。試験片は、平行部の直径が9mmの円柱形であり、中央に半円弧の切り欠きを有している。切り欠き半径R=1であり、切り欠き底直径は7mmである。試験方法は荷重制御4点曲げ疲労試験であり、最大負荷応力は1060MPa、最大負荷応力と最小負荷応力の応力比は0.1、周波数は5Hzである。
本図から、指標Bが小さいほど浸炭層の脆性破壊が抑制されて低サイクル疲労強度は向上することが分かる。すなわち、指標Bにより、浸炭層の脆性破壊のしやすさを整理することができる。
そして、指標A及び指標Bが、A−0.00000293×B≧−14の関係を有する場合に、浸炭層が脆性破壊することを抑制できる。より高い低サイクル疲労強度レベルを指向する場合は、A−0.00000293×B≧−13の関係を有するのが望ましい。また特に高い低サイクル疲労強度レベルを指向する場合は、A−0.00000293×B≧−12の関係を有するのが望ましい。
次に、本発明鋼の成分を限定した理由について説明する。なお、以下の記載において%とは質量%を示す。
Cは鋼に必要な強度を与えるのに有効な元素である。ただし、0.1%未満では必要な引張り強度を確保することができず、0.4%を超えると硬くなって浸炭後の芯部靭性が低下し、また冷間加工性が低下する。このため、Cを0.1〜0.4%の範囲内にする必要がある。
Siは鋼の脱酸に有効な元素であるとともに、鋼に必要な強度及び焼入性を与え、更に焼戻し軟化抵抗を向上させるのに有効な元素である。ただし、0.02%未満ではその効果は不十分であり、1.3%を超えると硬さの上昇を招いて冷間鍛造性を低下させる。このため、Siを0.02〜1.3%の範囲内にする必要がある。冷間加工を受ける鋼材の好適範囲は0.02〜0.3%であるが、特に冷間鍛造性を重視する場合は0.02〜0.13%の範囲内にするのが好ましい。一方、Siは粒界強度の増加に有効な元素であり、また軸受部品、転動部品においては転動疲労過程での組織変化及び材質変化の抑制による高寿命化に有効な元素である。そのため、高強度化を指向する場合には、0.2〜1.3%の範囲が好適である。特に転動疲労強度を高いレベルで求める場合には、0.4〜1.3%の範囲にするのが好ましい。なお、Si添加による軸受部品及び転動部品の転動疲労過程での組織変化及び材質変化を抑制する効果は、浸炭後の組織中の残留オーステナイト量(残留γ量)が30〜40%のときに特に大きい。残留γ量をこの範囲に制御するには浸炭浸窒処理が有効である。浸炭浸窒処理は、浸炭後の拡散処理において浸窒を行うものである。ここで表面の窒素濃度が0.2〜0.6%の範囲になるように浸窒処理の条件を調節するのが好ましい。尚、本発明では、高強度化を指向するので、上記のとおり、Siの添加範囲を0.2〜1.3%とする。
Mnは鋼の脱酸に有効な元素であるとともに、鋼に必要な強度及び焼入れ性を与えるのに有効な元素である。ただし、0.3%未満ではその効果は不十分であり、1.8%を超えるとその効果は飽和するのみならず、硬さの上昇を招いて冷間鍛造性が低下する。このため、Mnを0.3〜1.8%の範囲内にする必要がある。好適な範囲は0.5〜1.2%である。なお、冷間鍛造性を重視する場合には0.5〜0.75%の範囲にするのが好ましい。尚、本発明では、好適な0.5〜1.2%の範囲とする。
Sは鋼中でMnSを形成し、これにより被削性の向上をもたらす。ただし、0.001%未満ではその効果は不十分であり、0.15%を超えるとその効果は飽和する一方で粒界偏析を起こして粒界脆化を招く。このため、Sを0.001〜0.15%の範囲内にする必要がある。なお、軸受部品及び転動部品においてはMnSが転動疲労寿命を劣化させるため、Sを極力低減する必要があり、0.001〜0.01%の範囲にするのが望ましい。
Alは脱酸材として添加する。ただし、0.001%未満ではその効果は不十分であり、0.05%を超えるとAlNが圧延加熱時に溶体化しないで残存し、TiやNbの析出サイトとなり、これらの析出物の微細分散を阻害して浸炭時の結晶粒の粗大化を助長する。このため、Alを0.001〜0.05%の範囲内にする必要がある。
Nは鋼中でAl、V、Ti、Nb等と結合して窒化物又は炭窒化物を生成し、結晶粒の粗大化を抑制する。ただし、0.003%未満ではその効果は不十分であり、0.020%を超えるとその効果が飽和するとともに冷間加工性が低下する。このため、Nを0.003〜0.020%の範囲にする必要がある。なお、B添加鋼の場合、またはTiC主体で結晶粒の粗大化を防止する場合には、Nを0.003〜0.008%の範囲とするのが好ましい。
Pは冷間鍛造時の変形抵抗を高め、かつ靭性を低下させる元素である。また焼入れ、焼戻し後の結晶粒界を脆化させ、疲労強度を低下させる元素である。このため、Pを0.025%以下、好ましくは0.015%以下にする必要がある。
Oは粒界偏析を起こして粒界脆化を起こしやすくするとともに、鋼中で硬い酸化物系介在物を形成して脆性破壊を起こしやすくする元素である。このため、Oを0.0025%以下にする必要がある。
また、本発明鋼ではCr、Mo及びiの一種又は2種以上を含有する。
Crは鋼に強度及び焼入性を与えるのに有効な元素であり、かつ軸受部品及び転動部品においては浸炭後の残留γを増大させるとともに、転動疲労過程での組織変化及び材質劣化の抑制による高寿命化に有効な元素である。ただし、1.8%を超えて添加すると硬さの上昇を招いて冷間鍛造性が低下する。このため、Crを添加する場合には1.8%以下にする必要がある。なお、Cr添加による軸受部品及び転動部品の転動疲労過程での組織変化及び材質劣化の抑制効果は、浸炭後の組織中の残留γ量が30〜40%の時に特に大きい。残留γ量をこの範囲に制御するためには、浸炭浸窒処理を行い、表面の窒素濃度が0.2〜0.6%の範囲となるようにすることが有効である。尚、実施例における発明鋼のCr含有量により、Crを必須成分とし下限を0.98%とする。
Moも鋼に強度及び焼入性を与えるとともに、浸炭層の靭性向上に有効な元素である。また、軸受部品及び転動部品においては浸炭後の残留γを増大させるとともに、転動疲労過程での組織変化及び材質劣化の抑制による高寿命化に有効な元素である。ただし、1.5%を超えて添加すると硬さの上昇を招いて冷間鍛造性が低下する。このため、Moを添加する場合には1.5%以下にする必要がある。特に0.02〜0.5%の範囲が好適である。なお、Mo添加による軸受部品及び転動部品の転動疲労過程での組織変化及び材質劣化の抑制効果も、浸炭後の組織中の残留γ量が30〜40%の時に特に大きいため、Crの時と同様に浸炭浸窒処理を行い、表面の窒素濃度が0.2〜0.6%の範囲となるようにすることが有効である。尚、実施例における発明鋼のMo含有量により、Mo添加量の上限を0.19%とする。
Niも鋼に強度及び焼入性を与えるとともに、浸炭層の靭性向上に有効な元素であるが、3.5%を超えて添加すると硬さの上昇を招いて冷間鍛造性が低下する。このため、Niを添加する場合には3.5%以下にする必要がある。特に0.1〜3.5%、更には0.4〜2.0%の範囲が好適である。なお、Ni含有量の下限は、0.1%以上にするのが好ましいが、これに限定されるものではない。
Vも鋼に強度、焼入性、及び焼戻し軟化抵抗を与えるのに有効な元素であるが、0.5%を超えて添加すると硬さの上昇を招いて冷間鍛造性が低下する。このため、Vを添加する場合には0.5%以下にする必要がある。特に0.03〜0.5%、更には0.07〜0.2%の範囲が好適である。
Bも鋼に強度及び焼入性を与えるのに有効な元素であり、かつ浸炭材の粒界強度を向上させることにより浸炭部品としての疲労強度及び衝撃強度を向上させる効果も有している。ただし、0.006%を超えるとその効果は飽和し、かつ衝撃強度劣化等の悪影響も生じうる。このため、Bを添加する場合には0.006%以下にする必要がある。特に0.0005〜0.003%の範囲が好適である。
Nbは浸炭加熱の際に鋼中のC、Nと結合してNb(CN)を形成し、結晶粒の粗大化を抑制するのに有効な元素であるが、0.04%を超えて添加すると硬さの上昇を招いて冷間鍛造性が低下する。このため、Nbを添加する場合には0.04%以下にする必要がある。特に0.03%以下が好適である。また、加工性に加えて浸炭性を重視する場合の好適範囲は0.02%以下である。さらに、特別に浸炭性を重視する場合の好適範囲は0.01%以下である。なお、Nbの含有量は0.001%以上であるのが好ましいが、特にこれに限定されるものではない。
Tiは鋼中で微細なTiC、TiCSを生成させ、これにより浸炭時のγ粒の微細化を図ることができる。また、B添加鋼においては、Tiは、鋼中でNと結合してTiNを生成することによるBN析出防止、つまり固溶Bの確保を目的として添加する。ただし、0.2%を超えると、TiCの析出による鋼の硬化が顕著になって冷間加工性が顕著に低下し、かつTiN主体の析出物が多くなって転動疲労特性が低下する。このため、Tiの添加量を0.2%以下にする必要がある。好適範囲は0.1%以下である。なお、本発明鋼を熱間鍛造部材に適用した場合、浸炭加熱に進入してくる炭素及び窒素と固溶Tiが反応して、浸炭層に微小なTi(CN)が多量に析出する。このため、軸受部品及び転動部品においては転動疲労寿命が向上する。特に高いレベルの転動疲労寿命を指向する場合には、浸炭時の炭素ポテンシャルを0.9〜1.3%の範囲で高めに設定すること、又は浸炭浸窒処理を行うことが有効である。
またTiの添加量はNbの添加量に応じて調節するのが好ましい。例えばTi+Nbの好適範囲は0.04%以上0.17%未満である。特に高温浸炭や冷鍛部品において、望ましい範囲は0.091超から0.17%未満である。
次に、本発明鋼の製造方法について説明する。製鋼工程において溶鋼の成分調整を行った後、溶鋼を鋳造する(例えば連続鋳造)ことにより鋳片を製造する。次いで、この鋳片を圧延し、更には必要に応じて鍛造、熱処理と機械加工を行うことにより、所定の浸炭部品の形状に加工する。その後、浸炭焼入れを行う。更に必要に応じて焼戻しを行う。
なお、必要に応じて浸炭焼入れ後又は焼戻し後にピーニング処理を行い、靭性を改善してもよい。この場合、表面の残有応力が−500MPa以下となるようにピーニング処理を行うのが好ましい。また、浸炭層の旧オーステナイト結晶粒度Nγが8〜15番であるのが好ましい。
本発明に規定する各条件を満たすように複数種類の浸炭鋼材を形成し、その低サイクル疲労強度を測定した。また、比較例として、JISに規定されているSCM420を用いて浸炭鋼材を形成し、その低サイクル疲労強度を測定した。試験片は、平行部の直径が9mmの円柱形であり、中央に半円弧の切り欠きを有している。切り欠き半径R=1であり、切り欠き底直径は7mmである。試験方法は荷重制御4点曲げ疲労試験であり、最大負荷応力は1060MPa、最大負荷応力と最小負荷応力の応力比は0.1、周波数は5Hzである。
結果を図4に示す。図4は、X軸及びY軸それぞれを、3軸応力度指標B及び浸炭層の靭性指標Aとしたグラフに、本発明の実施例及び比較例をプロットしたものである。各点の横の数値(低サイクル疲労強度)は、負荷の回数が5000回で破断する場合の曲げ応力(MPa:実験結果から算出)を示している。
比較例は、A−0.00000293×B<−14となっている。この場合、低サイクル疲労強度は910〜970MPaであり、十分な強度を示していない。
一方、A−0.00000293×B≧−14を満たす実施例では、浸炭鋼材の低サイクル疲労強度が1000MPa以上になることが示された。また、A−0.00000293×B≧−13を満たす場合に浸炭鋼材の低サイクル疲労強度が1100MPa以上になること、及びA−0.00000293×B≧−12を満たす場合に浸炭鋼材の低サイクル疲労強度が1200MPa以上になることも示された。
以上から、A−0.00000293×B≧−14を満たすことにより、浸炭鋼材の低サイクル疲労強度が十分に高くなることが示された。
次に、表1の組成を有する鋼材を溶製し、熱間鍛造で40mmφの棒鋼に鍛造した後、焼準処理を行った。上記棒鋼より、平行部の直径が9mmで、中央部に切り欠き半径R=1の半円弧の切り欠き(切り欠き底直径は7mm)を有する試験片を作製し、種々の条件で浸炭焼入れ焼戻し処理を行った後に低サイクル疲労特性を評価した。試験方法は荷重制御4点曲げ疲労試験であり、最大負荷応力と最小負荷応力の応力比は0.1、周波数は5Hzである。
結果を表2に示す。
本発明例では負荷の回数が5000回の低サイクル疲労強度が1000MPa以上と良好な特性を示すことが明らかである。一方、比較例22、23は、C含有量が本願規定の範囲外であるため、5000回の低サイクル疲労強度が1000MPa未満である。比較例24は、P含有量が本願規定の範囲を上回っているため、5000回の低サイクル疲労強度が1000MPa未満である。比較例26,30は投影芯部硬さが本願発明の範囲を下回っているため、5000回の低サイクル疲労強度が1000MPa未満である。比較例27は浸炭層のγ粒度Nγが8〜15番の範囲を下回っているため、5000回の低サイクル疲労強度が1000MPaをやや超えるレベルである。比較例25,27,29は表層の浸炭濃度Csが質量%で0.5〜0.8%の規定の範囲を上回っているため、5000回の低サイクル疲労強度が1000MPa未満および1000MPaをやや超えるレベルである。
次に、一部の試験片については、アークハイト0.5mmAの条件でジョットピーニング処理を行った。結果を表3に示す。ショットピーニング付与により、表面の残留応力を−500MPa以下にすることにより、さらに優れた低サイクル疲労強度が得られることが明らかである。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.1〜0.4%、
    Si:0.2〜1.3%、
    Mn:0.51.2%、
    S:0.001〜0.15%、
    Al:0.001〜0.05%、
    N:0.003〜0.020%、
    P:0.025%以下、
    O:0.0025%以下、
    Cr:0.98〜1.8%
    を含有し、さらに、
    Mo:0.19%以下、
    Ni:3.5%以下
    1種又は2種を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、
    下記(1)式で定義される投影芯部硬さHp-coreがHV390以上であり、表層の浸炭濃度Csが質量%で0.5〜0.8%であり、浸炭層の旧オーステナイト結晶粒度Nγが8〜15番であることを特徴とする低サイクル疲労特性に優れた浸炭焼入れ鋼材。
    Hp-core=Hcore/(1−t/r) …(1)
    ただし、Hcore;芯部硬さ、t;有効硬化層深さ、r;破損部位の半径または破損部位の肉厚の半分である。
  2. 表面の残留応力が−500MPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の低サイクル疲労特性に優れた浸炭焼入れ鋼材。
  3. 請求項1または2に記載の浸炭焼入れ鋼材を用いた浸炭焼入れ部品。
  4. 前記浸炭焼入れ部品は歯車であることを特徴とする請求項3に記載の浸炭焼入れ部品。
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