JP5487778B2 - Mo無添加で強度の優れた浸炭用鋼及びこれを用いた浸炭部品 - Google Patents

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本発明は、Mo無添加で強度の優れた浸炭用鋼及びこれを用いた浸炭部品に関する。
自動車、産業用機械等で使用される歯車は、エンジン等から得られた駆動力を長期間部品交換せずに使用可能な疲労強度、耐摩耗性を確保する必要があることから、従来より、炭素量が0.20%程度のSCr、SCM等の合金鋼を用い、表面硬化処理である浸炭処理を行なうことにより必要な強度を確保して使用されている。
その中でも特に強度面で厳しい要求がされる部品については、Moが添加されたSCM材を用いるのが通常である。なぜなら、Moは浸炭異常層の発生を抑制しつつ焼入性を向上させることができる元素であるため、大物部品を製造する場合には、必要な焼入性を確保しつつ、優れた強度を有する部品を製造するのに有効な元素であるからである。
しかしながら、近年スクラップ、合金鉄等、本発明で対象とする合金鋼等の特殊鋼を製造するのに必要な原料の価格変動が非常に大きくなる場合が頻発し、Mo添加に必要なフェロモリブデンの価格変動も例外ではない。従って、フェロモリブデンの価格が極端に高騰したような場合に備えて、Moの添加に頼らなくても、SCM材と同程度の強度を確保できる浸炭用鋼を開発し、準備しておく必要がある。
Moを添加することなく、同等の性能を確保可能とするためには、Mo添加量減少に伴い生じる焼入性の低下を他の元素で補う必要がある。従来そのための方法として、2通りの対策がよく知られている。
1点目の対策は、B添加による焼入性確保である。Bは非常に少量の添加(0.001〜0.005%程度)で焼入性を向上できることが知られており、Bを含有する鋼の提案も多数行われている。例えば、特許文献1、2に示す鋼が提案されている。
特開平10−152746号公報 特開平11−71654号公報
また、2点目の対策は、Mo以外の浸炭用鋼の主要成分であるC、Mn、Cr量の調整によりMo含有の場合と同等の焼入性を確保しようとするものである。具体的には、これら3元素を増量することにより、Mo添加鋼と同等の焼入性を確保できるように調整しようとするものである。
しかしながら、上記の従来技術では、以下の問題がある。
まず、1点目のB添加肌焼鋼であるが、B添加による焼入性向上効果を有効とするためには、BがNと結合して焼入性向上に寄与しないBNが生成するのを防止しなければならず、通常Nを低減したり、Bと結合するNを低減するために、窒化物形成元素であるAlやTiを添加することが行なわれている。ところが、Nを低減するということは、浸炭処理時に生じやすい結晶粒異常成長を抑制するAlNが減少することを意味しており、異常粒成長発生に伴い強度が低下する可能性がある。
また、B添加により焼入性を高めた肌焼鋼の場合、従来から浸炭層にトルースタイトが生成し、低サイクル疲労強度が低下するという問題が知られており、部品寸法が大きくなるほど、その現象が顕著となる。従って、B添加により焼入性が同等となるように成分調整したとしても、Mo添加鋼と同等の疲労強度を確保できないという問題がある。
次に2点目に記載したC、Mn、Cr量の最適化による焼入性の調整であるが、まずCを増量した場合には、被削性が大きく低下するという問題があり、浸炭前に必ず必要となる機械加工が難しくなるという問題がある。
また、Mn、Cr量の増量は、Mo添加とは異なり浸炭異常層が増加する懸念があるとともに、Mnを増量した場合には、特に浸炭層の焼入生が確保されにくい大物部品において、B添加の場合と同様に浸炭層へのトルースタイトの生成を完全に防止することができず、低サイクル疲労強度が低下するおそれがある。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、フェロモリブデンが高騰したような場合等Mo添加を極力低減する必要が生じた場合等において、Mo添加に頼ることなく、従来のCr−Mo鋼(SCM)と同等の性能を有するMo無添加のCr含有肌焼鋼の提供を可能にすることを目的とするものである。
本発明の請求項1記載の発明は、質量%で、C:0.12〜0.28%、Si:0.15%以下、Mn:0.30〜1.00%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.20〜2.00%、Al:0.020〜0.050%、N:0.0080〜0.0200%、B:0.0002%未満を含有し、さらにCr%−(Si%+Mn%+Cu%+Ni%+Mo%)≧0.30%を満足し、残部がFe及びCu、Ni、Moを含む不可避的不純物よりなることを特徴とするMo無添加で強度の優れた浸炭用鋼である。
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の鋼材を所定形状に加工後、浸炭処理した部品であって、表面から深さ0.5mmまでの平均トルースタイト析出面積率が5%以下であることを特徴とする浸炭部品である。
本発明であるMo無添加で強度の優れた浸炭用鋼は、通常であれば不純物として特に管理することのないBの含有率を厳しく管理し、その上限を0.0002%未満としたことを特徴とするものである。これにより、Moを添加しなくても浸炭層におけるトルースタイトの生成を抑制することが可能となり、焼入性を適切に調整すれば、低サイクル疲労強度の優れた肌焼鋼をMoを添加することなく提供することが可能となる。
従って、Mo添加に必要な合金鉄であるフェロモリブデンが高騰したような場合であっても、Mo添加に頼ることなく同等の性能を有する肌焼鋼を提供可能となり、ユーザーからの強い希望である省Mo化の対応が容易に可能となる。
本発明であるMo無添加で強度の優れた浸炭用鋼は、前述したように、質量%で、C:0.12〜0.28%、Si:0.15%以下、Mn:0.30〜1.00%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.20〜2.00%、Al:0.020〜0.050%、N:0.0080〜0.0200%、B:0.0002%未満を含有し、さらにCr%−(Si%+Mn%+Cu%+Ni%+Mo%)≧0.30%を満足し、残部がFe及びCu、Ni、Moを含む不可避的不純物よりなることを特徴とする。
既に記載した通り、Moを添加することなく、Mo添加鋼の同等の性能を有する鋼を開発するためには、Moを添加しないことによる焼入性の低下を他元素の添加により補う必要があり、従来技術によりこれを達成するためには、Mo以外の焼入性向上元素であるC、Mn、Crを増量するか、焼入性向上元素であるBを添加する必要がある。ところが、これらの元素をMo添加鋼と焼入性が同等となるように単純に増量するのみでは、前記したように浸炭異常層が増加したり、トルースタイトが生成して、Mo添加鋼と同等の性能を確保することは困難である。
そこで、本発明者等は、さらに鋭意検討した結果、主要成分のみの最適化では問題解決が困難であると判断し、不純物として含有する元素の鋼性能への影響について詳しく調査した。
すなわち、SCr、SCM等の肌焼鋼はスクラップを電気炉で溶解し、合金鉄を添加し、成分調整して製造する場合が多く、鉄鉱石を用い高炉や転炉を使って製造する場合とは異なり、不純物の含有率はスクラップ内に含有する不純物の存在により大きく左右される。
本発明者等は、スクラップ内に含有する不純物元素と浸炭後に浸炭層に生成するトルースタイト生成との関係について詳しく調査した。その結果、通常焼入性向上のために添加するBがスクラップ中に少量含有している場合があること、この少量のBの存在が浸炭層内のトルースタイト生成との間に高い相関関係を有すること、使用するスクラップを、B含有率の少ないものに限定して使用し、製造した鋼のB含有率の上限を厳しく管理して製造した場合には、浸炭後のトルースタイト生成を抑制することが可能となり、Mo添加鋼と同等の性能を有する鋼の製造が可能となることを新規に見出し、本発明を完成したものである。
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明であるMo無添加で強度の優れた浸炭用鋼は、前記した通り質量%で、C:0.12〜0.28%、Si:0.15%以下、Mn:0.30〜1.00%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.20〜2.00%、Al:0.020〜0.050%、N:0.0080〜0.0200%、B:0.0002%未満を含有し、さらにCr%−(Si%+Mn%+Cu%+Ni%+Mo%)≧0.30%を満足し、残部がFe及びCu、Ni、Moを含む不可避的不純物よりなることを特徴とする。
本発明は、スクラップ中に含まれる不純物と、浸炭後の浸炭層内に生成されるトルースタイトの析出量との関係を詳しく調査し、Mo添加鋼と同等以上の低サイクル疲労強度を確保するためには、不純物として含有するB含有率を0.0002%未満に抑制する必要があることを見出したものである。
通常、SCr、SCM等の合金鋼を製造する場合においては、不純物であるB含有率について特に製造上考慮されることなく製造されるのが普通である。従って、不純物として含有する可能性のあるBについて、何ら製造上の対応がされることなく製造された場合、製造時にBを意図的に添加する処置を行なわなかったとしても、鋼中にBを0.0002〜0.0004%程度含有する鋼が製造される場合がある。このようにBを少量含有する鋼が製造された場合、浸炭後における浸炭層内のトルースタイトの生成を狙い通りに抑制することが難しくなり、低サイクル疲労強度が低下するおそれが生じることを、多数の実験結果により見出し、本発明を完成させたものである。
ここで、本発明で言うトルースタイトとは、通常ガス浸炭等を行なった場合、歯車表面に観察される不完全焼入層(浸炭ガス雰囲気の酸素が歯車表面から拡散し、素材に含まれるSi、Mn、Cr等の合金元素と酸化物を形成するため、その周辺部のSi、Mn等の固溶合金元素が欠乏し、焼入性が低下して生じる組織であり、浸炭異常層と呼ばれる場合がある。)とは全く異なる組織であり、浸炭処理後の焼入による冷却時に主に浸炭層のオーステナイト粒界に沿って析出する微細パーライトのことを意味する。
次に、本発明である浸炭用鋼の各成分の上下限の限定理由について、以下に説明する。
C:0.12〜0.28%
Cは、浸炭処理後の必要な内部硬さを確保するために不可欠の元素であり、焼入性を高める元素でもあるため、0.12%以上の含有が必要である。しかしながら、含有率を高めすぎると、焼入性が上昇し、内部硬さを高めることは可能であるが、その一方で浸炭処理前の素材硬さが上昇し、浸炭前に行なわれる所定形状への機械加工時の工具寿命が大きく低下する。従って、本発明では、上限を0.28%とした。
Si:0.15%以下
Siは焼もどし軟化抵抗を高める効果があり、歯車として使用の際の硬さ低下を防止する効果があるため、浸炭用鋼でも積極的に添加される場合もある。しかしながら、本発明では、Moを無添加としても同等の性能を確保できることを最大の目的としており、その場合には、Mo添加による浸炭異常層低減効果が期待できないため、浸炭処理時に酸化しやすく浸炭異常層生成を助長する可能性のあるSiを極力低減せざるをえない。
従って、本発明ではその上限を0.15%とした。
Mn:0.30〜1.00%
Mnは必要な焼入性と内部硬さを確保するために不可欠な元素であるため、少なくとも0.30%以上の含有が必要である。しかしながら、Mnは酸化されやすい元素であり浸炭時に酸化され浸炭異常層発生の原因になる。また多量に含有させすぎると被削性が低下し浸炭前の機械加工が難しくなるため、上限を1.00%とした。
P:0.035%以下
Pは、オーステナイト粒界に偏析しやすい元素であり、偏析すると曲げ疲労強度低下の原因となる元素である。Pは製造上、少量の含有が避けられない元素であるが、製鋼工程の改善等により、含有率を低めに抑えて製造することは可能であり、上限を0.035%とした。望ましくは、0.020%以下とするのが良い。
S:0.035%以下
Sは被削性向上に効果のある元素としてよく知られているが、多量に含有すると硫化物系の非金属介在物が増加し、これが疲労破壊の起点となり、疲労強度低下の原因となる。従って、Mo添加鋼と同等の疲労強度を確保することを主な目的とする本発明では、極力低減することが望ましく、上限を0.035%とした。
Cr:1.20〜2.00%
Crは焼入性向上に効果のある元素であり、Moを無添加とすることによる焼入性の低下を補うために不可欠な元素である。また、Crと同様に焼入性向上に効果のあるMnとは異なり、トルースタイト生成を抑制する効果のある元素である。従って、JIS規格のSCr鋼に比較してCr含有率を若干高めとする必要があるため、下限を1.20%とした。しかしながら、多量に含有しすぎると浸炭前の硬さが上昇し、機械加工が難しくなるため、上限を2.00%とした。
なお、Crは浸炭時に雰囲気ガス中の酸素と反応して酸化する可能性があり、その量を増量すると浸炭異常層が増加する懸念があるが、これについては浸炭異常層生成と関係の大きいSi量を極力低減すること、必要とする焼入性が確保できることを条件に、過剰にCrを増量しないこと等で対応することが可能になる。
Al:0.020〜0.050%
Alは、Nと結合してAlNを形成し、ピン止め効果により浸炭後の結晶粒微細化に効果があるだけでなく、その異常粒成長を抑制する元素であり、最低でも0.020%の含有が必要である。しかしながら、含有量が増加すると、その効果が飽和するとともに、アルミナ系の非金属介在物が増加して疲労強度低下の原因となるため、上限を0.050%とした。
N:0.0080〜0.0200%
Nは、Alと結合してAlNを形成し、浸炭後の結晶粒微細化と異常粒成長抑制に効果のある元素である。Nは大気中に多量に存在し、大気溶解の場合には、製造上不純物として含有が避けられない元素であるが、前記理由から製造時に含有率の下限を制御し、必要に応じ意図的な添加も必要となるため、下限を0.0080%とした。しかしながら、多量に含有させても効果が飽和するため、上限を0.0200%とした。
B:0.0002%未満
Bは少量の添加で焼入性向上に効果のある元素であり、Mn、Cr等、他の焼入性向上元素の増量に頼らなくても焼入性を高めることができるため、特にその効果の大きい低炭素鋼において、肌焼鋼に限らず幅広く使用されている元素である。ところが、B添加鋼においては、脱B現象による浸炭層の焼入性低下から、浸炭層におけるトルースタイト析出が発生しやすくなるという問題があり、それにより疲労強度低下のおそれがあるため、本発明のように高い疲労強度の達成を最重要課題としている場合には、前記目的では使用できない。しかし、従来は脱B現象によるトルースタイト析出を、合金元素の調整による最適な焼入性確保により防止するという考え方は知られていたが、不純物として含有するBまで厳しく管理するという考え方までは、考慮されていなかった。
そこで、本発明者等はさらに不純物として含有するBの影響について詳細に調査した結果、わずか2ppmの含有でもトルースタイト析出に大きく影響することを見出したものである。従って、本発明は使用するスクラップ中に含有するB含有率まで厳しく管理し、上限を0.0002%未満とすることにより、トルースタイト析出を効果的に抑制可能となることを新規に見出したものである。望ましくは0.0001%未満とするのが良い。
Cr%−(Si%+Mn%+Cu%+Ni%+Mo%)≧0.30%
上記式は、トルースタイト組織の析出を抑制するために必要な関係式である。浸炭焼入後の組織を正常に保つためには、製造する部品の大きさに応じ必要な焼入性を確保するための成分調整をする必要がある。焼入性はCrだけでなくMnやMoによっても向上させることができるが、Crによって焼入性を確保するのが最もトルースタイト析出抑制に効果的であるため、それを実験により得られたトルースタイト発生状況のデータに基づき、式により表現したものが、上記式である。
上記式を満足するように成分調整して焼入性を確保することにより、Cr鋼(省Mo化)においても、Cr−Mo鋼と同等のトルースタイト析出量とすることが可能になる。なお、上記式中に前記した成分限定理由で説明していない元素であるCu、Ni、Moは全てスクラップ中に不純物として含有する元素であるので、その含有率を考慮する必要があるので、式中に追加したものである。
次に請求項2に記載の発明は、上記した請求項1記載の発明からなる鋼材を所定形状に加工後浸炭処理し得られた部品であって、表面から深さ0.5mmまでの間の平均トルースタイト析出面積率が5%以下であることを特徴とする浸炭部品である。
今日までに一般的に肌焼鋼として使用されてきたCr鋼であるSCr420とCr−Mo鋼であるSCM420では、トルースタイト析出率に大きな差異があり、これが、両者の疲労強度の違いが生じる1つの理由とされてきた。具体的にはφ30程度の試験片の場合、ごく普通のガス浸炭を950℃×2.5hrで処理した場合、SCM420では、深さ0.5mmまでの範囲内でのトルースタイト析出面積率を5%程度に抑えることができるのに対し、SCr420では10%を超える析出量が確認される場合も多いことが知られていた。この傾向は被処理材の寸法が大きくなると、さらに顕著になる。
そして、本発明では、前記した通り、Moを添加することなく従来のCr−Mo鋼と同等以上の疲労強度を得ることを目的としており、そのために、上述のようなCr鋼では十分な浸炭層のトルースタイト析出の抑制ができなかった大物の浸炭部品に対しても、従来のCr−Mo鋼と同様にトルースタイト析出面積率を5%以下とする必要があるため、このように規定したものである。
次に本発明の効果を実施例により説明する。
表1に、実施例として用いた供試材の化学成分を示す。このうち、1〜5鋼は本発明の条件を満足する発明鋼であり、6〜11鋼は一部の条件が本発明で規定した条件を満足しない比較鋼、12、13鋼は従来から広く用いられてきたJISのSCr420とSCM420の市販鋼である。
Figure 0005487778
そして、表1に記載の成分からなる供試材を用い熱間圧延及び機械加工により、直径30mmの試験片を製作し、これを950℃×2.5hrの条件でガス浸炭処理し、処理後に光学顕微鏡で観察することにより、表面から深さ0.5mmの範囲内におけるトルースタイトの平均析出面積率と、平均の浸炭異常層深さを測定し、結果を表2に示した。
また、トルースタイト析出による低サイクル疲労強度への影響を評価するため、前記した供試材より縦横が17.8mmの正方形断面で深さ2mm、切欠底半径1.5mm、切欠角度60度の切欠付試験片を作製し、3点曲げ疲労試験を行なって、寿命100回の場合の曲げ疲労強度を測定した。結果をまとめて表2に示す。
Figure 0005487778
表2に示す通り、本発明鋼である1〜5鋼は、B含有率を1ppm以下とする等、本発明の各成分の条件を満足し、かつ前記した関係式が0.30%以上となるよう成分調整したことにより、トルースタイト面積率が5%以下となり、3点曲げ疲労試験結果も従来鋼であるSCM420と同等以上の強度を確保することができた。特にトルースタイト面積率が1.9%と最も低い供試材である5鋼は従来のCr−Mo鋼である12鋼を上回る3点曲げ疲労強度を示した。
それに対し、比較鋼である6鋼はSi含有率が高いため浸炭異常層深さが30μmを超えるレベルに増加したものであり、7〜11鋼はCr含有率、関係式の値、B含有率のいずれかの条件が本発明の条件を満足していないため、トルースタイト析出面積率が5%を超え、その結果3点曲げ疲労試験結果が従来鋼のSCM420に比べ劣る結果となったものである。
このように、本発明では、従来特に製造上何ら考慮することなく製造されてきたB含有率の調整について、その上限を厳しく管理し、製造することにより、Moを添加することなく従来のCr−Mo鋼(SCM材)と同等以上にトルースタイト析出を抑制することが可能となり、その結果Mo無添加でSCM材と同等の低サイクル疲労強度を達成したものである。
従って、今後フェロモリブデンが高騰したような場合でも、Mo無添加で同等性能の鋼材をゲロモリブデン高騰の影響を受けることなく提供可能とすることができ、産業への貢献は極めて大きいものである。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.12〜0.28%、Si:0.15%以下、Mn:0.30〜1.00%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.20〜2.00%、Al:0.020〜0.050%、N:0.0080〜0.0200%、B:0.0002%未満を含有し、さらにCr%−(Si%+Mn%+Cu%+Ni%+Mo%)≧0.30%を満足し、残部がFe及びCu、Ni、Moを含む不可避的不純物よりなることを特徴とするMo無添加で強度の優れた浸炭用鋼。
  2. 請求項1記載の鋼材を所定形状に加工後、浸炭処理した部品であって、表面から深さ0.5mmまでの平均トルースタイト析出面積率が5%以下であることを特徴とする浸炭部品。
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