JP5182067B2 - 真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材 - Google Patents
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910−203×C0.5+44.7×Si≦860・・・(1)
を満たすようにすればよい。なお、上記の(1)式におけるCおよびSiは、鋼中のその元素の質量%での含有量を表す。
2.0≦(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)≦3.5・・・(2)
を満たすようにすればよい。上記の(2)式におけるC、Si、MnおよびCrは、鋼中のその元素の質量%での含有量を表す。
0.2×(S/Mn)+P≦0.030・・・(3)
を満たすことによって、十分な曲げ疲労強度を得ることができる。なお、上記の(3)式におけるS、MnおよびPは、鋼中のその元素の質量%での含有量を表す。
(πLW/4)0.5・・・(4)。
一般に、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れは、先ず、930〜980℃の温度で浸炭あるいは浸炭窒化を施した後、一旦830〜850℃の温度まで降温させて20〜30分均熱保持し、次いで、焼入れすることによって行なわれる。
910−203×C0.5+44.7×Si≦860・・・(1)
を満たせば、830〜850℃において実質的にオーステナイト単相になるため、Siの含有量が多くても、この温度域から焼入れした場合の熱処理ひずみのバラツキが低減されて、安定して優れた曲げ疲労強度およびピッチング強度を得ることが可能なことが判明した。
本発明者らの従来の調査によると、真空浸炭焼入れした試験片を用いてローラーピッチング試験を行った場合の亀裂の起点が必ずしも最表面ではないのに対して、ガス浸炭焼入れした試験片を用いてローラーピッチング試験を行った場合には、最表面を起点として亀裂が発生していた。そこで、最表面から500μmの深さの位置までの組織を観察した。
〔(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)×(3.00×Mo+1.00)〕
の式で求められる値と一次の相関があることが知られている。
本発明者らの従来の調査によると、ガス浸炭焼入れした試験片の場合に比べて、真空浸炭焼入れした試験片の場合には、回転曲げ疲労試験を行うと、最表面近傍で粒界に沿った亀裂進展が顕著であった。
本発明者らは、表3に示す化学組成を有する鋼A〜Fを50kg真空溶解炉で溶解した後、鋳造してインゴットを作製した。
(πLW/4)0.5・・・(4)。
910−203×C0.5+44.7×Si≦860・・・(1)
2.0≦(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)≦3.5・・・(2)
0.2×(S/Mn)+P≦0.030・・・(3)
(πLW/4)0.5・・・(4)
なお、上記の(1)〜(3)式におけるC、Si、Mn、Cr、SおよびPは、鋼中のその元素の質量%での含有量を表す。
C:0.10〜0.25%
Cは、浸炭焼入れあるいは浸炭窒化焼入れした部品の芯部強度(生地の強度)を確保するために必須の元素である。しかしながら、その含有量が0.10%未満では前記の効果が不十分である。一方、Cの含有量が0.25%を超えると、鋼材あるいは、これを素材にして熱間鍛造などの方法で製造した粗形品の強度が高くなりすぎるために、被削性が大きく低下する。したがって、Cの含有量を0.10〜0.25%とした。なお、C含有量の望ましい下限は0.13%であり、また、望ましい上限は0.23%である。
Siは、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗を高める効果があり、面疲労強度を高めるのに有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.35%未満では前記の効果が不十分である。一方、Siの含有量が1.5%を超えると、面疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、鋼材あるいは、これを素材にして熱間鍛造などの方法で製造した粗形品の強度が高くなりすぎるため、被削性が大きく低下する。したがって、Siの含有量を0.35〜1.5%とした。なお、Siの含有量が0.5%以上になると、面疲労強度の向上が顕著になる。したがって、面疲労強度向上のためにSi含有量の下限は0.35%とすることが望ましい。また、良好な被削性を確保するためには、Si含有量の上限は1.0%とすることが望ましい。
Mnは、焼入れ性、焼戻し軟化抵抗を高める効果があり、面疲労強度を高めるのに有効な元素である。また、MnはSと結合してMnSを形成し、被削性を向上させる作用を有する。こうした効果を得るには、0.4%以上の量のMnを含有する必要がある。しかしながら、Mnの含有量が1.5%を超えると、面疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、鋼材あるいは、これを素材にして熱間鍛造などの方法で製造した粗形品の強度が高くなりすぎ、かつ、粗大なMnSが生成するため、却って被削性が大きく低下し、面疲労強度を低下させる傾向がある。したがって、Mnの含有量を0.4〜1.5%とした。なお、Mn含有量の望ましい下限は0.6%であり、また、望ましい上限は1.3%である。
Pは粒界偏析して、粒界を脆化させやすい元素のため、P量が多くなると、曲げ疲労強度を低下させしまう傾向があり、特に0.025%を超えると、他の要件を満たしていても所望の曲げ疲労強度(後述の実施例における目標の曲げ疲労強度)が得られない。したがって、Pの上限を0.025%とした。なお、P含有量のより好ましい上限は、0.022%である。
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させる作用を有する。しかしながら、その含有量が0.015%未満では、前記の効果が得難い。一方、Sの含有量が多くなると、粗大なMnSを生成しやすくなって面疲労強度を低下させる傾向があり、特に、その含有量が0.05%を超えると、他の要件を満たしていても所望の面疲労強度(後述の実施例における目標のピッチング強度)が得られない。したがって、Sの含有量を0.015〜0.05%とした。なお、S含有量の望ましい上限は0.04%である。
Crは、焼入れ性、焼戻し軟化抵抗を高める効果があり、面疲労強度を高めるのに有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.50%未満では前記の効果が不十分である。一方、Crの含有量が2.0%を超えると、面疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、真空浸炭後または真空浸炭窒化後の被処理材の表面に、浸炭期に生成した炭化物が残留しやすくなる。したがって、Crの含有量を0.50〜2.0%とした。なお、Crの含有量が1.2%以上になると、面疲労強度の向上が顕著になる。したがって、面疲労強度向上のためにCr含有量の下限は1.2%とすることが望ましい。また、真空浸炭後または真空浸炭窒化後の被処理材の表面への浸炭期に生成した炭化物の残留を抑止するために、Cr含有量の上限は1.8%とすることが望ましい。
Alは、脱酸作用を有する元素である。また、Alは、Nと結合してAlNを形成しやすい元素である。そして、AlNは、焼入れ部の結晶粒微細化に有効で、曲げ疲労強度および面疲労強度を高める効果がある。しかしながら、Alの含有量が0.010%未満ではこうした効果は得難い。一方、Alは硬質な酸化物を形成しやすく、Alの含有量が0.050%を超えると、却って曲げ疲労強度の低下が著しくなって、他の要件を満たしていても所望の曲げ疲労強度(後述の実施例における目標の曲げ疲労強度)が得られなくなる。したがって、Alの含有量を0.010〜0.050%とした。なお、Al含有量の望ましい下限は0.012%であり、また、望ましい上限は0.040%である。
Nは、Al、Nb、VおよびTiと結合してAlN、NbN、Nb(C、N)、VN、V(C、N)およびTiNを形成しやすく、このなかで、AlN、NbN、Nb(C、N)、VNおよびV(C、N)は、焼入れ部の結晶粒微細化に有効で、曲げ疲労強度および面疲労強度を高める効果がある。しかしながら、Nの含有量が0.012%未満ではこれらの効果は不十分である。一方、Nの含有量が0.025%を超えると、粗大なTiNが生成しやすくなって、却って曲げ疲労強度の低下が著しくなり、他の要件を満たしていても所望の曲げ疲労強度(後述の実施例における目標の曲げ疲労強度)が得られなくなる。したがって、Nの含有量を0.012〜0.025%とした。なお、N含有量の下限は0.015%とすることが望ましい。また、N含有量の上限は0.023%とすることが望ましい。
Oは、Alと結合して硬質な酸化物を形成しやすく、曲げ疲労強度を低下させてしまう。特に、不純物中のOの含有量が多くなって0.0012%を超えると、他の要件を満たしていても所望の曲げ疲労強度(後述の実施例における目標の曲げ疲労強度)が得られなくなる。したがって、不純物中のOの含有量を0.0012%以下とした。なお、不純物中のOの含有量はできる限り少なくすることが望ましいが、製鋼でのコストを考慮すると、0.0010%程度にまで少なくすることが好ましい。
Tiは、Nと結合して硬質な窒化物を形成しやすく、曲げ疲労強度を低下させてしまう。特に、不純物中のTiの含有量が多くなって0.003%を超えると、他の要件を満たしていても所望の曲げ疲労強度(後述の実施例における目標の曲げ疲労強度)が得られなくなる。したがって、不純物中のTiの含有量を0.003%以下とした。なお、不純物中のTiの含有量はできる限り少なくすることが望ましいが、製鋼でのコストを考慮すると、0.002%以下とすることが好ましい。
Nbは、C、Nと結合してNbC、NbN、Nb(C、N)を形成しやすく、前述したAlNによる焼入れ部の結晶粒微細化を補完するのに有効で、曲げ疲労強度および面疲労強度を高める作用を有するので、こうした効果を得るためにNbを含有してもよい。しかしながら、Nbの含有量が多くなって、0.08%を超えると、粗大なNb(C、N)が生成しやすくなり、却って曲げ疲労強度が低下する。したがって、Nbの含有量を0.08%以下とした。なお、Nbの含有量は0.06%以下とすることが望ましい。
Vは、C、Nと結合してVC,VN、V(C、N)を形成しやすく、このうち、VNおよびV(C、N)は、前述したAlNによる焼入れ部の結晶粒微細化を補完するのに有効で、曲げ疲労強度および面疲労強度を高める作用を有する。また、浸炭窒化時にVNが析出すると、面疲労強度をより高める効果がある。このため、前述した効果を得るためにVを含有してもよい。しかしながら、Vの含有量が多くなって、0.15%を超えると、鋼材あるいは、これを素材にして熱間鍛造した粗形品の強度が高くなりすぎるため、被削性が大きく低下する。したがって、Vの含有量を0.15%以下とした。なお、Vの含有量は0.13%以下とすることが望ましい。
Caは、硫化物を形成しやすく、MnSに較べて微細な硫化物を形成して面疲労強度を低下させるような粗大なMnSの生成を防ぐ作用を有するので、前述した効果を得るためにCaを含有してもよい。しかしながら、Caを0.005%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Caの含有量を0.005%以下とした。なお、Caの含有量は0.003%以下とすることが望ましい。
本発明の真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材は、熱間鍛造などの方法で所定の形状の粗形品に成形された後、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れされるが、この焼入れの際の熱処理ひずみのバラツキを低減して、実操業上、安定して優れた曲げ疲労強度および面疲労強度を有する部品を得ることが重要である。
910−203×C0.5+44.7×Si≦860・・・(1)
を満たすように規定した。
本発明においては、優れた面疲労強度を安定して確保する部品を製造するために、前述したように、
2.0≦(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)≦3.5・・・(2)
を満たすように規定した。
本発明においては、優れた曲げ疲労強度を安定して確保するために、前述したように、
0.2×(S/Mn)+P≦0.030・・・(3)
を満たすように規定した。
前記(A)項に記載した化学組成に加えて、酸化物、酸化物を主体とする複合介在物、窒化物および窒化物を主体とする複合介在物のサイズを制御することによって、すなわち、長手方向に平行な断面において、介在物の長径をL(μm)、短径をW(μm)として極値統計法によって予想される累積分布関数が99%時の前記(4)式で表される酸化物、酸化物を主体とする複合介在物、窒化物および窒化物を主体とする複合介在物の最大等価円直径を35μm以下とすることによって、前述したように、真空浸炭または真空浸炭窒化される部品に、優れた曲げ疲労強度を確保させることができる。
Claims (3)
- 質量%で、C:0.10〜0.25%、Si:0.35〜1.5%、Mn:0.4〜1.5%、P:0.025%以下、S:0.015〜0.05%、Cr:1.22〜2.0%、Al:0.010〜0.050%およびN:0.012〜0.025%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のO(酸素):0.0010%以下およびTi:0.003%以下、かつ、下記の(1)〜(3)式を満たす化学組成を有し、さらに、長手方向に平行な断面において、介在物の長径をL(μm)、短径をW(μm)として極値統計法によって予想される累積分布関数が99%時の下記(4)式で表される酸化物、酸化物を主体とする複合介在物、窒化物および窒化物を主体とする複合介在物の最大等価円直径が35μm以下であることを特徴とする真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材。
910−203×C0.5+44.7×Si≦860・・・(1)
2.0≦(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)≦3.5・・・(2)
0.2×(S/Mn)+P≦0.030・・・(3)
(πLW/4)0.5・・・(4)
なお、上記の(1)〜(3)式におけるC、Si、Mn、Cr、SおよびPは、鋼中のその元素の質量%での含有量を表す。 - 質量%で、さらに、Nb:0.08%以下およびV:0.15%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材。
- 質量%で、さらに、Ca:0.005%以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材。
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