JP5182067B2 - 真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材 - Google Patents

真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材 Download PDF

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本発明は、真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材に関する。より詳しくは、自動車や産業機械の歯車、プーリー、シャフトなど各種の真空浸炭または真空浸炭窒化される部品の素材として好適な鋼線材、鋼線および棒鋼に関する。
従来、自動車や産業機械の歯車、プーリー、シャフトなどの部品は、JISのSCr420、SCM420、SNCM420などの機械構造用合金鋼を素材として、ガス浸炭またはガス浸炭窒化を施して焼入れ(以下、ガス浸炭を施した焼入れを「ガス浸炭焼入れ」といい、また、ガス浸炭窒化を施した焼入れを「ガス浸炭窒化焼入れ」という。)を行った後、200℃以下の温度で焼戻しを行い、さらに、必要に応じてショットピーニング処理を施すことにより、面疲労強度、曲げ疲労強度、耐摩耗性など、それぞれの部品に要求される特性を確保することが行われていた。
しかしながら、近年、自動車の燃費向上やエンジンの高出力化への対応のために部品の軽量・小型化が進み、これに伴って、部品にかかる負荷が高まる傾向にある。このため、産業界からは、部品の面疲労強度および曲げ疲労強度を高めたいとの要望が大きくなっている。
そして、上記産業界からの要望に応えるための技術が、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されている。
具体的には、特許文献1に、質量%で、C:0.15〜0.25%、Si:1.0〜1.5%、Mn:0.3〜2.0%、S:0.005〜0.02%、Cr:1.0〜1.8%、Mo:0.8〜1.2%、V:0.10〜0.25%、Al:0.001〜0.04%、N:0.003〜0.02%を含有し、P:0.02%以下に制限し、必要に応じてさらに、Nb:0.05%以下、Ti:0.05%以下の内の1種または2種を含み、残部が鉄と不可避的不純物であり、〔37Si(%)+18Mn(%)+10Cr(%)+31Mo(%)+201V(%)〕が100〜150の範囲である鋼材を、歯車形状に成型加工した後、加熱温度が900〜1050℃の範囲で真空浸炭処理を施すことを特徴とする「歯面疲労強度に優れた歯車の製造方法」が開示されている。
また、特許文献2に、質量%で、C:0.1〜0.3%、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.3〜3.0%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cu:0.01〜1.00%、Ni:0.01〜3.00%、Cr:0.3〜1.0%、Al:0.20%以下およびN:0.05%以下を含有し、必要に応じてさらに、〈1〉Mo:2.0%以下、〈2〉Nb:0.20%以下およびTi:0.20%以下、〈3〉B:0.01%以下、〈4〉Pb:0.01〜0.20%、Bi:0.01〜0.10%およびCa:0.0003〜0.0100%、の4区分の元素のうちの少なくとも1種の元素を含有し、残部が不可避な不純物およびFeからなり、〔[Si%]+[Ni%]+[Cu%]−[Cr%]>0.5〕の条件を満たす合金組成を有する浸炭用鋼を部品形状に成形し、真空浸炭により浸炭して得た「浸炭部品」が開示されている。
特開2006−183095号公報 特開2007−291486号公報
前述の特許文献1で開示された技術は、粒界酸化が生じることに起因する疲労強度の低下を抑止するために、歯車の浸炭方法として真空浸炭を適用しているものの、その技術的思想は、「焼戻し軟化抵抗を向上させることにより歯面疲労強度に優れた歯車を製造すること」であるため、Moを0.8%以上も含有する鋼材を用いる必要があり、極めてコストが高くなってしまう。
また、特許文献2で開示された技術も、CuやNiを積極的に含有させる必要があり、コストが高くなることを避け難い。また、その技術的思想はSi、Ni、Cu、Cr量の制御によりエッジ部の過剰浸炭を抑制することであるが、実部品では、エッジ部からの破損よりもむしろ、歯元の曲げ疲労や、歯面のピッチングにより破損することが多い。そのため、エッジ部における過剰浸炭を制御しても、安定して優れた曲げ疲労強度およびピッチング強度を得ることはできない。
また、実部品においては、熱処理ひずみのバラツキによる寸法精度の低下が、部品間の疲労強度のバラツキとなり、安定して優れた曲げ疲労強度および面疲労強度を有する部品を提供することができないという問題もある。そのため、実操業においては熱処理ひずみのバラツキを低減することも重要となる。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、MoやNiといった高価な元素を積極的に添加しなくても、自動車や産業機械の歯車、プーリー、シャフトなど各種の真空浸炭または真空浸炭窒化される部品に安定して優れた面疲労強度および曲げ疲労強度を確保させることができる、低コストの鋼材を提供することを目的とする。
「ガス浸炭焼入れ」または「ガス浸炭窒化焼入れ」の場合には、浸炭の際にSi、Mn、CrなどFeよりも酸化されやすい合金元素がオーステナイト粒界で酸化物を形成するので、鋼製部品の表層部には粒界酸化層が生成する。このため、表層近傍は合金元素の欠乏によって焼入れ性が低下し、焼入れ後の鋼製部品の表層部には不完全焼入れ組織が生成することを避けられない。なお、不完全焼入れ組織はマルテンサイトに比べて軟質であるパーライトやベイナイトが主体の組織である。
しかしながら、「真空浸炭」は数kPa以下程度に減圧した炉内に炭化水素系の生ガスを導入する浸炭期に、鋼製部品の表面層に炭化物を生成させ、拡散期に炭化物を炭素の供給源として炭素を内部に拡散させる浸炭方法である。また、「真空浸炭窒化」は上記真空浸炭の拡散処理後にアンモニアガスを導入し、炭素に加えて窒素を鋼製部品の表層部に導入する表面硬化処理である。このため、真空浸炭または真空浸炭窒化を施して焼入れを行った(以下、真空浸炭を施した焼入れを「真空浸炭焼入れ」といい、また、真空浸炭窒化を施した焼入れを「真空浸炭窒化焼入れ」という。)場合には、鋼製部品の表層部には、曲げ疲労強度の低下要因となる粒界酸化層が生成せず、面疲労強度の低下要因となる軟質な不完全焼入れ組織も生成しない。したがって、「真空浸炭焼入れ」または「真空浸炭窒化焼入れ」した場合の曲げ疲労強度と面疲労強度は、「ガス浸炭焼入れ」または「ガス浸炭窒化焼入れ」した場合に比べて優れている。
そこで、本発明者は、MoやNiといった高価な元素を含有せずとも、安定して優れた曲げ疲労強度および面疲労強度を有する真空浸炭部品または真空浸炭窒化部品の素材として好適な鋼材を得ることを目標として、化学組成を始めとして最適な条件について調査・研究を重ねた。その結果、下記(a)〜(d)の知見を得た。
(a)熱処理ひずみのバラツキを低減して、実操業上、安定して優れた曲げ疲労強度およびピッチング強度を有する部品を製造するためには、生地となる鋼の化学組成を、浸炭または浸炭窒化後に降温させて均熱保持する830〜850℃の温度において実質的にオーステナイト単相になるように制御する必要があり、
910−203×C0.5+44.7×Si≦860・・・(1)
を満たすようにすればよい。なお、上記の(1)式におけるCおよびSiは、鋼中のその元素の質量%での含有量を表す。
(b)強度低下要因となる浸炭異常層の生成しない真空浸炭焼入れまたは真空浸炭窒化焼入れを施した場合に十分な面疲労強度を確保するためには、母材鋼、つまり、生地となる鋼の焼戻し軟化抵抗を向上させるために適正量のSiを含有させたうえで、鋼の焼入れ性を特定のレベル以上に高める必要があり、このためには、
2.0≦(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)≦3.5・・・(2)
を満たすようにすればよい。上記の(2)式におけるC、Si、MnおよびCrは、鋼中のその元素の質量%での含有量を表す。
(c)真空浸炭焼入れする場合には、旧オーステナイト粒界に偏析する傾向が大きいPおよびSの含有量を適正な範囲に制御することによって、具体的には、
0.2×(S/Mn)+P≦0.030・・・(3)
を満たすことによって、十分な曲げ疲労強度を得ることができる。なお、上記の(3)式におけるS、MnおよびPは、鋼中のその元素の質量%での含有量を表す。
(d)ガス浸炭焼入れの場合には、粒界酸化層が強度低下の主体的な要因になるのに対し、真空浸炭焼入れまたは真空浸炭窒化焼入れ(以下、単に「真空浸炭焼入れ」ということがある。)した場合には、ガス浸炭焼入れでは強度低下の要因とならないような表層近傍の介在物が疲労き裂の起点となって曲げ疲労強度の低下が生じる。しかしながら、鋼材の長手方向に平行な断面において、介在物の長径をL(μm)、短径をW(μm)として極値統計法によって予想される累積分布関数が99%時の下記(4)式で表される酸化物、酸化物を主体とする複合介在物、窒化物および窒化物を主体とする複合介在物の最大等価円直径が35μm以下を満たすようにすることによって、表層近傍の介在物が疲労き裂の起点となる曲げ疲労強度の低下を抑止することができる。
(πLW/4)0.5・・・(4)。
なお、鋼材の長手方向に平行な断面において、極値統計処理によって予測される累積分布関数が99%時の上記(4)式で表される介在物の最大等価円直径は次のようにして求める。
先ず、鋼材の長手方向に平行な断面を切り出して鏡面研磨した後、光学顕微鏡を用いて酸化物、酸化物を主体とする複合介在物、窒化物および窒化物を主体とする複合介在物について、倍率400倍で50視野観察する。そして、個々の介在物の長径をL(μm)、短径をW(μm)として、各視野における(πLW/4)0.5の値が最大になるものを求める。
次に、上記で求めた50の(πLW/4)0.5の値を小さいものから順に並べ直してそれぞれ(πLW/4)0.5 j(ここで、j=1〜50)とし、それぞれのjについて、累積分布関数Fj=100(j/51)(%)を計算する。
そして、基準化変数yj=−loge(−loge(j/51))を縦軸に、横軸に(πLW/4)0.5 jを取ったグラフを書き、最小自乗法によって近似直線を求め、求めた直線から、累積分布関数Fjが99%となる時、すなわち基準化変数yj≒4.6となる時の値を読み取り、これを最大等価円直径(πLW/4)0.5とする。
以下に、上記の知見(a)〜(d)を得るに至った調査・研究の具体的内容について説明する。
《1》知見(a)について:
一般に、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れは、先ず、930〜980℃の温度で浸炭あるいは浸炭窒化を施した後、一旦830〜850℃の温度まで降温させて20〜30分均熱保持し、次いで、焼入れすることによって行なわれる。
焼入れ前の830〜850℃の温度での均熱保持の際に、オーステナイト単相にならずに、フェライトが混在すると、フェライトの比率に応じて焼入れ時の熱処理ひずみ量が変化するため、熱処理ひずみのバラツキが多くなって、実操業上、安定して優れた曲げ疲労強度およびピッチング強度を有する部品を製造することができない。
実操業において、上記の均熱保持工程は非平衡状態である。このため、本発明者らは、各種の鋼について、830〜850℃において、実質的にオーステナイト単相になる条件について種々の調査を実施した。その結果、鋼の化学組成が前述した、
910−203×C0.5+44.7×Si≦860・・・(1)
を満たせば、830〜850℃において実質的にオーステナイト単相になるため、Siの含有量が多くても、この温度域から焼入れした場合の熱処理ひずみのバラツキが低減されて、安定して優れた曲げ疲労強度およびピッチング強度を得ることが可能なことが判明した。
《2》知見(b)について:
本発明者らの従来の調査によると、真空浸炭焼入れした試験片を用いてローラーピッチング試験を行った場合の亀裂の起点が必ずしも最表面ではないのに対して、ガス浸炭焼入れした試験片を用いてローラーピッチング試験を行った場合には、最表面を起点として亀裂が発生していた。そこで、最表面から500μmの深さの位置までの組織を観察した。
その結果、ガス浸炭焼入れした試験片の場合には常に最表層にマルテンサイトに較べて軟質なパーライトが生成していた。
これに対して、真空浸炭焼入れした試験片の場合には、ローラーピッチング試験での面疲労強度が低かったものにだけ、最表層から500μmまでにマルテンサイトに較べて軟質なパーライトを主体とする不完全焼入れ組織が部分的に生成していた。したがって、真空浸炭焼入れする場合には、鋼の焼入れ性を特定のレベル以上に高めることが重要であることが明らかになった。
鋼の焼入れ性は、理想焼入れをしたときの臨界直径、すなわち、理想臨界直径(DI)で見積ることができること、また、DIは鋼の化学組成などから見積ることができ、そしてDIは、大略、
〔(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)×(3.00×Mo+1.00)〕
の式で求められる値と一次の相関があることが知られている。
そこで、本発明者らは、焼入れ性を変化させた、表1に示す化学組成を有する鋼a〜fおよび鋼1を50kg真空溶解炉で溶解した後、鋳造してインゴットを作製した。ここで、鋼a〜fはMoを含有していない鋼であり、鋼1はMoを含有するJISのSCM420に相当する鋼である。
なお、溶解は、真空度を高くし、かつ、脱酸剤としてのAlの投入までの時間を長くして、鋼中の酸素量を十分に低減するようにした。
表1には、前記〔910−203×C0.5+44.7×Si〕の式で表される値および〔(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)〕の式で表される値を、それぞれ、「f1の値」および「f2の値」として併記した。なお、鋼1についてはMoを含有しているため、「f2の値」は〔(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)×(3.00×Mo+1.00)〕の式で表される値とした。
各インゴットを一旦室温まで冷却した後、2分割し、大型の介在物が少ないインゴットの下部(インゴットの下半分)に相当する方を次工程の熱間鍛造に供した。
すなわち、1250℃で加熱し、仕上げ温度を950℃以上として熱間鍛造して、直径35mmの丸棒を得た。なお、熱間鍛造終了後は、大気中で放冷して室温まで冷却した。
次いで、上記の各丸棒に、925℃で30分保持した後に大気中で放冷して室温まで冷却する焼ならしを施した。
焼ならし後の直径が35mmの各丸棒の中心部から、鍛錬軸に平行に図1に示す形状のローラーピッチング小ローラー試験片を切り出した。なお、図1における寸法の単位は「mm」である。
鋼a〜fのローラーピッチング小ローラー試験片については、温度が930℃で、圧力を数Pa程度に減圧した炉内にアセチレンを導入し、表面のC濃度が共析組成である0.8%となるように図2に示すヒートパターンで「真空浸炭焼入れ−焼戻し」を行った。なお、浸炭期は1kPa以下のアセチレン雰囲気であり、拡散期は5hPa以下の真空である。その後、仕上げ加工を施して、室温でのローラーピッチング試験に供した。
一方、鋼1のローラーピッチング小ローラー試験片については、表面のC濃度が0.8%となるよう図3に示すヒートパターンで「ガス浸炭焼入れ−焼戻し」を行ない、その後、仕上げ加工を施して、室温でのローラーピッチング試験に供した。ここで、図3における「Cp」はカーボンポテンシャルを意味する。
ローラーピッチング試験に用いる大ローラーの素材には、JISのSCM420鋼を用い、一般的な製造工程、すなわち通常の「焼ならし→試験片加工→ガス浸炭炉による共析浸炭→焼入れ→低温焼戻し→研磨」の工程で、図4に示す形状に仕上げた。なお、図4における寸法の単位は「mm」である。
上記のようにして作製したローラーピッチング大ローラーの表面から0.05mmの位置における硬さはビッカース硬さで740〜760であった。また、ビッカース硬さが550を超える、いわゆる「有効硬化層深さ」は、0.8〜1.0mmの範囲にあった。
上記のようにして作製した小ローラーと大ローラーを用い、すべり率40%、回転数1500rpm、油温90℃の条件でローラーピッチング試験を行った。
なお、累積回転数が1.0×107回で破損しなかった際の面圧を「ピッチング強度」とし、このピッチング強度によって面疲労強度を評価した。
ピッチング強度は、図3に示すヒートパターンで「ガス浸炭焼入れ−焼戻し」を行なったJISのSCM420に相当する鋼1のピッチング強度に対して20%以上向上していることを目標とした。
表1に、鋼1のピッチング強度を「1.00」として各鋼について求めた「ピッチング強度」を併記した。
また、図5に、鋼1のピッチング強度を「1.00」とした場合の鋼a〜fのピッチング強度と〔(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)〕の式で表される値との関係を整理して示す。なお、図5においては、上記の式をf2として表記した。
図5から、f2の値、つまり、〔(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)〕の式で表される値が2.0以上であれば、安定して目標の疲労強度を得ることができることが判明した。
一方、f2の値、つまり、〔(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)〕の式で表される値が3.5を超えても、ピッチング強度向上の効果は飽和する傾向が認められた。
《3》知見(c)について:
本発明者らの従来の調査によると、ガス浸炭焼入れした試験片の場合に比べて、真空浸炭焼入れした試験片の場合には、回転曲げ疲労試験を行うと、最表面近傍で粒界に沿った亀裂進展が顕著であった。
そこで、上記の浸炭条件によって、最表面近傍での粒界に沿った亀裂進展状況が異なる原因について検討した結果、真空浸炭焼入れの場合は、粒界に偏析しやすい元素の影響が大きくなると考えるに至り、粒界偏析しやすいPおよびSの含有量を意図的に変化させた鋼を溶解して調査した。
すなわち、本発明者らは、表2に示す化学組成を有する鋼イ〜チを50kg真空溶解炉で溶解した後、鋳造してインゴットを作製した。
なお、溶解は、真空度を高くし、かつ、脱酸剤としてのAlの投入までの時間を長くして、鋼中の酸素量を十分に低減するようにした。
表2には、前記〔910−203×C0.5+44.7×Si〕の式で表される値、〔(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)〕の式で表される値および〔0.2×(S/Mn)+P〕の式で表される値を、それぞれ、「f1の値」、「f2の値」および「f3の値」として併記し、さらに、〔(S/Mn)+P〕の式で表される値および〔S+P〕の式で表される値も併記した。なお、前記のJISのSCM420に相当する鋼1についてはMoを含有しているため、「f2の値」は〔(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)×(3.00×Mo+1.00)〕の式で表される値とした。
各インゴットを一旦室温まで冷却した後、2分割し、大型の介在物が少ないインゴットの下部(インゴットの下半分)に相当する方を次工程の熱間鍛造に供した。
すなわち、1250℃で加熱し、仕上げ温度を950℃以上として熱間鍛造して、直径35mmの丸棒を得た。なお、熱間鍛造終了後は、大気中で放冷して室温まで冷却した。
次いで、上記の各丸棒に、925℃で30分保持した後に大気中で放冷して室温まで冷却する焼ならしを施した。
焼ならし後の直径が35mmの鋼イ〜チの各丸棒の中心部から、鍛錬軸に平行に図6に示す形状の小野式回転曲げ疲労試験片を切り出した。前述した焼ならし後の直径が35mmの鋼1の丸棒の中心部からも、同様に、鍛錬軸に平行に図6に示す形状の小野式回転曲げ疲労試験片を切り出した。なお、図6における寸法の単位は「mm」である。
鋼イ〜チの小野式回転曲げ疲労試験片については、温度が930℃で、圧力を数Pa程度に減圧した炉内にアセチレンを導入し、表面のC濃度が共析組成である0.8%となるように、図2に示すヒートパターンで「真空浸炭焼入れ−焼戻し」を行なった。なお、浸炭期は1kPa以下のアセチレン雰囲気であり、拡散期は5hPa以下の真空である。その後、仕上げ加工を施して、室温での小野式回転曲げ疲労試験に供した。
一方、鋼1の小野式回転曲げ疲労試験片については、表面のC濃度が0.8%となるよう図3に示すヒートパターンで「ガス浸炭焼入れ−焼戻し」を行ない、その後、仕上げ加工を施して、室温での小野式回転曲げ疲労試験に供した。
なお、小野式回転曲げ疲労試験は、3000rpmの回転数、室温、大気中の雰囲気で行い、1.0×107回で破損しなかった際の応力を「疲労限」とし、この疲労限によって曲げ疲労強度を評価した。
なお、疲労限は、図3に示すヒートパターンで「ガス浸炭焼入れ−焼戻し」を行なったJISのSCM420に相当する鋼1の疲労限に対して20%以上向上していることを目標とした。
表2に、鋼1の疲労限を「1.00」として各鋼について求めた「疲労限」を併記した。
表2に記載した化学成分の鋼の場合には、一般に、Pは、化合物を形成し難く、粒界に偏析しやすい。また、Sは、MnSを形成しやすいので、MnSを形成した残部のSが粒界に偏析しやすい。したがって、Mnの含有量が多いと、MnSを形成した残部のSは少なくなる。
そこで、図7および図8に、それぞれ、鋼1の疲労限を「1.00」とした場合の鋼イ〜チの疲労限と、〔(S/Mn)+P〕の式で表される値との関係および〔S+P〕の式で表される値との関係を整理した。
しかしながら、図7および図8から明らかなように、〔(S/Mn)+P〕の式で表される値および〔S+P〕の式で表される値と、疲労限との間には明確な相関は認められなかった。
そこでさらに検討を加えた結果、図9に示すように、鋼1の疲労限を「1.00」とした場合の鋼イ〜チの疲労限は、〔0.2×(S/Mn)+P〕の式で表される値と明確な相関関係を有し、〔0.2×(S/Mn)+P〕の式で表される値が0.030以下の場合に、安定して目標の疲労限が得られることが判明した。
《4》知見(d)について:
本発明者らは、表3に示す化学組成を有する鋼A〜Fを50kg真空溶解炉で溶解した後、鋳造してインゴットを作製した。
なお、溶解は、真空度および脱酸剤としてのAlの投入までの時間を変化させて行った。
表3には、前記〔910−203×C0.5+44.7×Si〕の式で表される値、〔(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)〕の式で表される値および〔0.2×(S/Mn)+P〕の式で表される値を、それぞれ、「f1の値」、「f2の値」および「f3の値」として併記した。なお、前記のJISのSCM420に相当する鋼1についてはMoを含有しているため、「f2の値」は〔(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)×(3.00×Mo+1.00)〕の式で表される値とした。
各インゴットを一旦室温まで冷却した後、大型の介在物が少ないインゴットの下半分と、大型介在物の多いインゴットの上部1/5を区別して、次工程の熱間鍛造に供した。なお、前述のJISのSCM420に相当する鋼1のインゴットも同様にインゴットの下半分と、インゴットの上部1/5を区別して次工程の熱間鍛造に供した。
すなわち、1250℃で加熱し、仕上げ温度を950℃以上として熱間鍛造して、直径35mmの丸棒を得た。なお、熱間鍛造終了後は、大気中で放冷して室温まで冷却した。
次いで、上記の各丸棒に、925℃で30分保持した後に大気中で放冷して室温まで冷却する焼ならしを施した。
焼ならし後の直径が35mmの鋼A〜Fおよび鋼1の各丸棒の中心部から、鍛錬軸に平行に図6に示す形状の小野式回転曲げ疲労試験片を切り出した。
このようにして得た鋼A〜Fの小野式回転曲げ疲労試験片について、温度が930℃で、圧力を数Pa程度に減圧した炉内にアセチレンを導入し、表面のC濃度が共析組成である0.8%となるように、図2に示すヒートパターンで「真空浸炭焼入れ−焼戻し」を行なった。なお、浸炭期は1kPa以下のアセチレン雰囲気であり、拡散期は5hPa以下の真空である。その後、仕上げ加工を施して、室温での小野式回転曲げ疲労試験に供した。また、JISのSCM420に相当する鋼1の小野式回転曲げ疲労試験片は、図3に示すヒートパターンで「ガス浸炭焼入れ−焼戻し」を行なった後、仕上げ加工を施して、室温での小野式回転曲げ疲労試験に供した。
小野式回転曲げ疲労試験は、3000rpmの回転数、室温、大気中の雰囲気で行い、1.0×107回で破損しなかった際の応力を「疲労限」とし、この疲労限によって曲げ疲労強度を評価した。
疲労限は、図3に示すヒートパターンで「ガス浸炭焼入れ−焼戻し」を行なった、JISのSCM420に相当する鋼1のインゴットの下半分を用いた方の疲労限に対して20%以上向上していることを目標とした。
表4に、JISのSCM420に相当する鋼1のインゴットの下半分を用いた方の疲労限を「1.00」として、各鋼のインゴットの使用部位毎に求めた「疲労限」を示す。
表4に示すように、JISのSCM420に相当する鋼1のガス浸炭焼入れの場合には、インゴットの下半分を使用した場合であっても、インゴットの上部1/5を使用した場合であっても、破壊の起点が表層近傍の介在物ではなく、粒界酸化層であり疲労限は同じであった。
一方、粒界酸化層の生成しない真空浸炭焼入れの場合には、インゴットの下半分を使用した鋼A〜D、およびインゴットの上部1/5を使用した鋼Aは、破壊の起点が表面であり、目標の曲げ疲労強度を満足した。しかしながら、インゴットの上部1/5を使用した鋼B〜Fならびにインゴットの下半分を使用した鋼Eおよび鋼Fは、破壊の起点が表層近傍の介在物であり、目標の曲げ疲労強度を満足することができなかった。
そこで、図10に、鋼1の疲労限を「1.00」とした場合の、鋼A〜Fのインゴットの上部1/5および下半分を使用したものについて、疲労限と酸素含有量との関係をまとめて示した。なお、図10においては、「酸素含有量」を「酸素量」と表記した。
図10から、酸素含有量が0.0012%を超えると、目標の曲げ疲労強度が得られないことがわかる。しかしながら一方では、酸素含有量を0.0012%以下に制限しても、必ずしも目標の曲げ疲労強度が得られるわけではないこともわかる。
そこで次に、介在物の大きさを測定するために、長手方向に平行な断面において、下記に示す極値統計法によって予想される累積分布関数が99%時の下記(4)式で表される酸化物、酸化物を主体とする複合介在物、窒化物および窒化物を主体とする複合介在物の最大等価円直径を調査した。
(πLW/4)0.5・・・(4)。
なお疲労破壊の起点には、酸化物、酸化物を主体とする複合介在物、窒化物および窒化物を主体とする複合介在物だけが観察された。このため、上記の介在物についてのみ測定を行った。
すなわち、鋼A〜Fおよび鋼1のインゴットの上部1/5と下半分を使用した場合を区別して、その各々について、焼ならしした直径35mmの丸棒を用いて、丸棒の長手方向に平行な断面を切り出して鏡面研磨した後、光学顕微鏡を用いて酸化物、酸化物を主体とする複合介在物、窒化物および窒化物を主体とする複合介在物について、倍率400倍で50視野観察した。そして、個々の介在物の長径をL(μm)、短径をW(μm)として、各視野における(πLW/4)0.5の値が最大になるものを求めた。
そして、上記で求めた50の(πLW/4)0.5の値を小さいものから順に並べ直してそれぞれ(πLW/4)0.5 j(ここで、j=1〜50)とし、それぞれのjについて、累積分布関数Fj=100(J/51)(%)を計算した。
次いで、基準化変数yj=−loge(−loge(j/51))を縦軸に、横軸に(πLW/4)0.5 jを取ったグラフを書き、最小自乗法によって近似直線を求めた。そして、求めた直線から、累積分布関数Fjが99%となる時(すなわち、基準化変数yj≒4.6となる時)の値を読み取り、これを最大等価円直径(πLW/4)0.5とした。
なお、「酸化物を主体とする複合介在物」とは、光学顕微鏡で観察したときに、その介在物中に酸化物が面積割合で50%以上占めているものを指し、同様に、「窒化物を主体とする複合介在物」とは、光学顕微鏡で観察したときに、その介在物中に窒化物が面積割合で50%以上占めているものを指す。
表4に、上記のようにして予想される累積分布関数が99%時の前記(4)式で表される酸化物、酸化物を主体とする複合介在物、窒化物および窒化物を主体とする複合介在物の最大等価円直径を併記した。
また、図11に、鋼1の疲労限を「1.00」とした場合の、鋼A〜Fのインゴットの上部1/5および下半分を使用したものについて、疲労限と介在物の最大等価円直径との関係を整理して示した。
図11から明らかなように、長手方向に平行な断面において、極値統計法によって予想される累積分布関数が99%時の前記(4)式で表される酸化物、酸化物を主体とする複合介在物、窒化物および窒化物を主体とする複合介在物の最大等価円直径が35μm以下であれば、安定して目標の疲労限が得られることが判明した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(3)に示す真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材にある。
(1)質量%で、C:0.10〜0.25%、Si:0.35〜1.5%、Mn:0.4〜1.5%、P:0.025%以下、S:0.015〜0.05%、Cr:1.22〜2.0%、Al:0.010〜0.050%およびN:0.012〜0.025%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のO(酸素):0.0010%以下およびTi:0.003%以下、かつ、下記の(1)〜(3)式を満たす化学組成を有し、さらに、長手方向に平行な断面において、介在物の長径をL(μm)、短径をW(μm)として極値統計法によって予想される累積分布関数が99%時の下記(4)式で表される酸化物、酸化物を主体とする複合介在物、窒化物および窒化物を主体とする複合介在物の最大等価円直径が35μm以下であることを特徴とする真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材。
910−203×C0.5+44.7×Si≦860・・・(1)
2.0≦(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)≦3.5・・・(2)
0.2×(S/Mn)+P≦0.030・・・(3)
(πLW/4)0.5・・・(4)
なお、上記の(1)〜(3)式におけるC、Si、Mn、Cr、SおよびPは、鋼中のその元素の質量%での含有量を表す。
(2)質量%で、さらに、Nb:0.08%以下およびV:0.15%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする上記(1)に記載の真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材。
(3)質量%で、さらに、Ca:0.005%以下を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材。
なお、残部としての「Feおよび不純物」における「不純物」とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、鉱石あるいはスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入するものを指す。
また、「酸化物を主体とする複合介在物」とは、光学顕微鏡で観察したときに、その介在物中に酸化物が面積割合で50%以上占めているものを指す。同様に、「窒化物を主体とする複合介在物」とは、光学顕微鏡で観察したときに、その介在物中に窒化物が面積割合で50%以上占めているものを指す。
本発明の真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材は、MoやNiといった高価な元素を含有していないため、成分コストが低く、しかも、この鋼材を素材として真空浸炭または真空浸炭窒化を施して焼入れされた部品は、安定して優れた面疲労強度と曲げ疲労強度を具備している。このため、本発明の真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材は、自動車や産業機械の歯車、プーリー、シャフトなど各種の真空浸炭または真空浸炭窒化される部品の素材として用いるのに好適である。
本発明において、化学組成および介在物を上述のように規定した理由について、以下に説明する。なお、各成分元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)化学組成
C:0.10〜0.25%
Cは、浸炭焼入れあるいは浸炭窒化焼入れした部品の芯部強度(生地の強度)を確保するために必須の元素である。しかしながら、その含有量が0.10%未満では前記の効果が不十分である。一方、Cの含有量が0.25%を超えると、鋼材あるいは、これを素材にして熱間鍛造などの方法で製造した粗形品の強度が高くなりすぎるために、被削性が大きく低下する。したがって、Cの含有量を0.10〜0.25%とした。なお、C含有量の望ましい下限は0.13%であり、また、望ましい上限は0.23%である。
Si:0.35〜1.5%
Siは、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗を高める効果があり、面疲労強度を高めるのに有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.35%未満では前記の効果が不十分である。一方、Siの含有量が1.5%を超えると、面疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、鋼材あるいは、これを素材にして熱間鍛造などの方法で製造した粗形品の強度が高くなりすぎるため、被削性が大きく低下する。したがって、Siの含有量を0.35〜1.5%とした。なお、Siの含有量が0.5%以上になると、面疲労強度の向上が顕著になる。したがって、面疲労強度向上のためにSi含有量の下限は0.35%とすることが望ましい。また、良好な被削性を確保するためには、Si含有量の上限は1.0%とすることが望ましい。
Mn:0.4〜1.5%
Mnは、焼入れ性、焼戻し軟化抵抗を高める効果があり、面疲労強度を高めるのに有効な元素である。また、MnはSと結合してMnSを形成し、被削性を向上させる作用を有する。こうした効果を得るには、0.4%以上の量のMnを含有する必要がある。しかしながら、Mnの含有量が1.5%を超えると、面疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、鋼材あるいは、これを素材にして熱間鍛造などの方法で製造した粗形品の強度が高くなりすぎ、かつ、粗大なMnSが生成するため、却って被削性が大きく低下し、面疲労強度を低下させる傾向がある。したがって、Mnの含有量を0.4〜1.5%とした。なお、Mn含有量の望ましい下限は0.6%であり、また、望ましい上限は1.3%である。
P:0.025%以下
Pは粒界偏析して、粒界を脆化させやすい元素のため、P量が多くなると、曲げ疲労強度を低下させしまう傾向があり、特に0.025%を超えると、他の要件を満たしていても所望の曲げ疲労強度(後述の実施例における目標の曲げ疲労強度)が得られない。したがって、Pの上限を0.025%とした。なお、P含有量のより好ましい上限は、0.022%である。
S:0.015〜0.05%
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させる作用を有する。しかしながら、その含有量が0.015%未満では、前記の効果が得難い。一方、Sの含有量が多くなると、粗大なMnSを生成しやすくなって面疲労強度を低下させる傾向があり、特に、その含有量が0.05%を超えると、他の要件を満たしていても所望の面疲労強度(後述の実施例における目標のピッチング強度)が得られない。したがって、Sの含有量を0.015〜0.05%とした。なお、S含有量の望ましい上限は0.04%である。
Cr:0.50〜2.0%
Crは、焼入れ性、焼戻し軟化抵抗を高める効果があり、面疲労強度を高めるのに有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.50%未満では前記の効果が不十分である。一方、Crの含有量が2.0%を超えると、面疲労強度を高める効果が飽和するだけでなく、真空浸炭後または真空浸炭窒化後の被処理材の表面に、浸炭期に生成した炭化物が残留しやすくなる。したがって、Crの含有量を0.50〜2.0%とした。なお、Crの含有量が1.2%以上になると、面疲労強度の向上が顕著になる。したがって、面疲労強度向上のためにCr含有量の下限は1.2%とすることが望ましい。また、真空浸炭後または真空浸炭窒化後の被処理材の表面への浸炭期に生成した炭化物の残留を抑止するために、Cr含有量の上限は1.8%とすることが望ましい。
Al:0.010〜0.050%
Alは、脱酸作用を有する元素である。また、Alは、Nと結合してAlNを形成しやすい元素である。そして、AlNは、焼入れ部の結晶粒微細化に有効で、曲げ疲労強度および面疲労強度を高める効果がある。しかしながら、Alの含有量が0.010%未満ではこうした効果は得難い。一方、Alは硬質な酸化物を形成しやすく、Alの含有量が0.050%を超えると、却って曲げ疲労強度の低下が著しくなって、他の要件を満たしていても所望の曲げ疲労強度(後述の実施例における目標の曲げ疲労強度)が得られなくなる。したがって、Alの含有量を0.010〜0.050%とした。なお、Al含有量の望ましい下限は0.012%であり、また、望ましい上限は0.040%である。
N:0.012〜0.025%
Nは、Al、Nb、VおよびTiと結合してAlN、NbN、Nb(C、N)、VN、V(C、N)およびTiNを形成しやすく、このなかで、AlN、NbN、Nb(C、N)、VNおよびV(C、N)は、焼入れ部の結晶粒微細化に有効で、曲げ疲労強度および面疲労強度を高める効果がある。しかしながら、Nの含有量が0.012%未満ではこれらの効果は不十分である。一方、Nの含有量が0.025%を超えると、粗大なTiNが生成しやすくなって、却って曲げ疲労強度の低下が著しくなり、他の要件を満たしていても所望の曲げ疲労強度(後述の実施例における目標の曲げ疲労強度)が得られなくなる。したがって、Nの含有量を0.012〜0.025%とした。なお、N含有量の下限は0.015%とすることが望ましい。また、N含有量の上限は0.023%とすることが望ましい。
本発明の鋼材の化学組成の一つは、上記の各元素のほか、残部がFeと不純物からなり、不純物中のO(酸素):0.0015%以下およびTi:0.003%以下のものである。
以下、不純物中のOおよびTiについて説明する。
O(酸素):0.0012%以下
Oは、Alと結合して硬質な酸化物を形成しやすく、曲げ疲労強度を低下させてしまう。特に、不純物中のOの含有量が多くなって0.0012%を超えると、他の要件を満たしていても所望の曲げ疲労強度(後述の実施例における目標の曲げ疲労強度)が得られなくなる。したがって、不純物中のOの含有量を0.0012%以下とした。なお、不純物中のOの含有量はできる限り少なくすることが望ましいが、製鋼でのコストを考慮すると、0.0010%程度にまで少なくすることが好ましい。
Ti:0.003%以下
Tiは、Nと結合して硬質な窒化物を形成しやすく、曲げ疲労強度を低下させてしまう。特に、不純物中のTiの含有量が多くなって0.003%を超えると、他の要件を満たしていても所望の曲げ疲労強度(後述の実施例における目標の曲げ疲労強度)が得られなくなる。したがって、不純物中のTiの含有量を0.003%以下とした。なお、不純物中のTiの含有量はできる限り少なくすることが望ましいが、製鋼でのコストを考慮すると、0.002%以下とすることが好ましい。
本発明の鋼材の化学組成の他の一つは、上記の元素に加えてさらに、Nb、VおよびCaのうちから選んだ1種以上の元素を含有するものである。
以下、上記の元素の作用効果と、含有量の限定理由について説明する。
NbおよびVは、いずれも曲げ疲労強度および面疲労強度を高める作用を有する。このため、より高い曲げ疲労強度および面疲労強度を確保したい場合には、以下の範囲で含有してもよい。
Nb:0.08%以下
Nbは、C、Nと結合してNbC、NbN、Nb(C、N)を形成しやすく、前述したAlNによる焼入れ部の結晶粒微細化を補完するのに有効で、曲げ疲労強度および面疲労強度を高める作用を有するので、こうした効果を得るためにNbを含有してもよい。しかしながら、Nbの含有量が多くなって、0.08%を超えると、粗大なNb(C、N)が生成しやすくなり、却って曲げ疲労強度が低下する。したがって、Nbの含有量を0.08%以下とした。なお、Nbの含有量は0.06%以下とすることが望ましい。
一方、前記したNbの曲げ疲労強度および面疲労強度の向上効果を確実に得るためには、Nb含有量の下限を0.01%とすることが望ましく、0.02%とすれば一層望ましい。
V:0.15%以下
Vは、C、Nと結合してVC,VN、V(C、N)を形成しやすく、このうち、VNおよびV(C、N)は、前述したAlNによる焼入れ部の結晶粒微細化を補完するのに有効で、曲げ疲労強度および面疲労強度を高める作用を有する。また、浸炭窒化時にVNが析出すると、面疲労強度をより高める効果がある。このため、前述した効果を得るためにVを含有してもよい。しかしながら、Vの含有量が多くなって、0.15%を超えると、鋼材あるいは、これを素材にして熱間鍛造した粗形品の強度が高くなりすぎるため、被削性が大きく低下する。したがって、Vの含有量を0.15%以下とした。なお、Vの含有量は0.13%以下とすることが望ましい。
一方、前記したVの曲げ疲労強度および面疲労強度の向上効果を確実に得るためには、V含有量の下限を0.01%とすることが望ましく、0.05%とすれば一層望ましい。
なお、上記のNbおよびVは、そのうちのいずれか1種のみ、または2種の複合で含有することができる。
次に、Caは、硫化物を微細化して面疲労強度を低下させるような粗大なMnSの生成を防ぐ作用を有する。このため、より安定して優れた面疲労強度を得たい場合には、以下の範囲で含有してもよい。
Ca:0.005%以下
Caは、硫化物を形成しやすく、MnSに較べて微細な硫化物を形成して面疲労強度を低下させるような粗大なMnSの生成を防ぐ作用を有するので、前述した効果を得るためにCaを含有してもよい。しかしながら、Caを0.005%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Caの含有量を0.005%以下とした。なお、Caの含有量は0.003%以下とすることが望ましい。
一方、前記したCaの硫化物の微細化効果を確実に得るためには、Ca含有量の下限を0.0003%とすることが望ましく、0.0005%とすれば一層望ましい。
〔910−203×C0.5+44.7×Si〕の値:860以下
本発明の真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材は、熱間鍛造などの方法で所定の形状の粗形品に成形された後、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れされるが、この焼入れの際の熱処理ひずみのバラツキを低減して、実操業上、安定して優れた曲げ疲労強度および面疲労強度を有する部品を得ることが重要である。
そこで、本発明においては、焼入れの際の熱処理ひずみのバラツキを低減して、実操業上、安定して優れた曲げ疲労強度および面疲労強度を有する部品を製造するために、
910−203×C0.5+44.7×Si≦860・・・(1)
を満たすように規定した。
上記の〔910−203×C0.5+44.7×Si〕の式で表される値は850以下であることが好ましい。また、安定して優れた面疲労強度を有するためには、焼戻し軟化抵抗を高める効果があるSiをある程度含有させなければならないため、上記の〔910−203×C0.5+44.7×Si〕の式で表される値は825以上であることが好ましい。
〔(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)〕の値:2.0〜3.5
本発明においては、優れた面疲労強度を安定して確保する部品を製造するために、前述したように、
2.0≦(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)≦3.5・・・(2)
を満たすように規定した。
なお、〔(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)〕の式で表される値は2.2〜3.4であることが好ましい。
〔0.2×(S/Mn)+P〕の値:0.030以下
本発明においては、優れた曲げ疲労強度を安定して確保するために、前述したように、
0.2×(S/Mn)+P≦0.030・・・(3)
を満たすように規定した。
〔0.2×(S/Mn)+P〕の式で表される値は0.028以下であることが好ましい。なお、〔0.2×(S/Mn)+P〕の式で表される値の下限は、Mnの含有量が上限値の1.5%およびSの含有量が下限値の0.015%で、Pの含有量を極力少なくした場合の0.002に近い値である。
(B)介在物
前記(A)項に記載した化学組成に加えて、酸化物、酸化物を主体とする複合介在物、窒化物および窒化物を主体とする複合介在物のサイズを制御することによって、すなわち、長手方向に平行な断面において、介在物の長径をL(μm)、短径をW(μm)として極値統計法によって予想される累積分布関数が99%時の前記(4)式で表される酸化物、酸化物を主体とする複合介在物、窒化物および窒化物を主体とする複合介在物の最大等価円直径を35μm以下とすることによって、前述したように、真空浸炭または真空浸炭窒化される部品に、優れた曲げ疲労強度を確保させることができる。
このため、本発明においては、前記真空浸炭または真空浸炭窒化される部品の素材となる鋼材について、その長手方向に平行な断面において、介在物の長径をL(μm)、短径をW(μm)として極値統計法によって予想される累積分布関数が99%時の前記(4)式で表される酸化物、酸化物を主体とする複合介在物、窒化物および窒化物を主体とする複合介在物の最大等価円直径が35μm以下であることと規定した。
なお、例えば、次に示す<a>〜<d>の要件を満足させることによって、前記の規定を満たすことができる。
<a>鋼中のAl、N、不純物中のO(酸素)およびTiの含有量を既に(A)項で述べた量以下、すなわち、Al:0.050%以下、N:0.025%以下、O:0.0012%以下およびTi:0.003%以下に制御する。
<b>二次精錬において、RH真空脱ガス処理を30分以上実施し、また、溶鋼の環流を十分に行う。
<c>取鍋、タンディッシュなどの耐火物の溶損や鋳造時のスラグおよびパウダーの巻き込みを防止する。
<d>例えば、一辺の長さが400mmといった大断面のブルームを製造する場合には、鋳造速度を十分に遅くして、大型介在物の浮上を促進させ、さらに、Tiなどの中心偏析を抑制するために、溶鋼の電磁攪拌を行ったり、凝固末期に軽圧下を施したりする。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
表5に示す化学組成を有する鋼1〜15および17〜21を50kg真空溶解炉で溶解した後、鋳造してインゴットを作製した。
なお、溶解は、真空度および脱酸剤としてのAlの投入までの時間(脱ガス時間)を変化させて行った。
表5には、前記〔910−203×C0.5+44.7×Si〕の式で表される値、〔(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)〕の式で表される値および〔0.2×(S/Mn)+P〕の式で表される値を、それぞれ、「f1の値」、「f2の値」および「f3の値」として併記した。なお、鋼1は、既に述べたJISのSCM420に相当する鋼で、Moを含有するため、「f2の値」は〔(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)×(3.00×Mo+1.00)〕の式で表される値とした。
表5中の鋼2、鋼4〜7、鋼11〜15、鋼18および鋼19は、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。
一方、表5中の鋼1、鋼3、鋼8〜10、鋼17、鋼20および鋼21は、化学組成が本発明で規定する条件から外れた鋼である。
各インゴットを一旦室温まで冷却した後、2分割し、インゴットの下部に相当する方および上部に相当する方を区別して、次工程の熱間鍛造に供した。
すなわち、鋼1については、大型の介在物が少ないインゴットの下部(インゴットの下半分)に相当する方を次工程の熱間鍛造に供した(試験番号1)。
同様に、鋼2〜15および17〜21についても、大型の介在物が少ないインゴットの下半分に相当する方を次工程の熱間鍛造に供した(試験番号2〜1214〜16および18〜22)。なお、鋼13については、大型の介在物が多いインゴットの上部1/5に相当する方も次工程の熱間鍛造に供した(試験番号13)。
すなわち、いずれの試験番号においても、1250℃で加熱し、仕上げ温度を950℃以上として熱間鍛造して、直径35mmの丸棒を得た。なお、熱間鍛造終了後は、大気中で放冷して室温まで冷却した。
次いで、上記の各丸棒に、925℃で30分保持した後に大気中で放冷して室温まで冷却する焼ならしを施した。
既に述べたように、焼ならし後の直径が35mmの鋼1の丸棒の中心部から、鍛錬軸に平行に図1に示す形状のローラーピッチング小ローラー試験片および図6に示す形状の小野式回転曲げ疲労試験片を切り出し、表面のC濃度が0.8%となるよう図3に示すヒートパターンで「ガス浸炭焼入れ−焼戻し」を行なった。その後、仕上げ加工を実施して、室温でのローラーピッチング試験および小野式回転曲げ疲労試験に供した(試験番号1)。
同様に、焼ならし後の直径が35mmの鋼2〜15および17〜21の各丸棒の中心部からも、鍛錬軸に平行に図1に示す形状のローラーピッチング小ローラー試験片および図6に示す形状の小野式回転曲げ疲労試験片を切り出した。
鋼2〜57〜111315、17、18および20のローラーピッチング小ローラー試験片および小野式回転曲げ疲労試験片については、温度が930℃で、圧力を数Pa程度に減圧した炉内にアセチレンを導入し、表面のC濃度が共析組成である0.8%となるように図2に示すヒートパターンで「真空浸炭焼入れ−焼戻し」を行なった。なお、浸炭期は1kPa以下のアセチレン雰囲気であり、拡散期は5hPa以下の真空である。その後、仕上げ加工を実施して、室温でのローラーピッチング試験および小野式回転曲げ疲労試験に供した(試験番号2〜57〜11131416、18、19および21)。
鋼6、鋼12、鋼14、鋼19および鋼21のローラーピッチング小ローラー試験片および小野式回転曲げ疲労試験片については、温度が930℃で、圧力を数Pa程度に減圧した炉内にアセチレンを導入し、表面のC濃度とN濃度がそれぞれ、0.8%と0.3%となるように、図12に示すヒートパターンで「真空浸炭窒化焼入れ−焼戻し」を行なった。なお、なお、浸炭期は1kPa以下のアセチレン雰囲気であり、拡散期は5hPa以下の真空、焼入れ前の窒化の際は500hPa以下のアンモニア雰囲気である。その後、仕上げ加工を施して、室温でのローラーピッチング試験および小野式回転曲げ疲労試験に供した(試験番号6、試験番号12、試験番号15、試験番号20および試験番号22)。
ローラーピッチング試験の大ローラーには、前述したJISのSCM420鋼を一般的な製造工程、すなわち通常の「焼ならし→試験片加工→ガス浸炭炉による共析浸炭→焼入れ→低温焼戻し→研磨」の工程で、図4に示す形状に仕上げたものを用いた。
なお、上記ローラーピッチング大ローラーの表面から0.05mmの位置における硬さはビッカース硬さで740〜760で、また、ビッカース硬さが550を超える、いわゆる「有効硬化層深さ」は、0.8〜1.0mmの範囲にあった。
上記の小ローラーと大ローラーを用いて、すべり率40%、回転数1500rpm、油温90℃の条件でローラーピッチング試験を行った。
なお、ローラーピッチング試験した場合に、累積回転数が1.0×107回で破損しなかった際の面圧を「ピッチング強度」とし、このピッチング強度によって面疲労強度を評価し、鋼1のピッチング強度に対して20%以上向上していることを面疲労強度の目標とした。
また、3000rpmの回転数、室温、大気中の雰囲気で、小野式回転曲げ疲労試験した場合に、1.0×107回で破損しなかった際の応力を「疲労限」とし、この疲労限によって曲げ疲労強度を評価し、鋼1の疲労限に対して20%以上向上していることを曲げ疲労強度の目標とした。
さらに、鋼1〜15および17〜21の焼ならしした直径35mmの丸棒を用いて、丸棒の長手方向に平行な断面を切り出して鏡面研磨した後、光学顕微鏡を用いて酸化物、酸化物を主体とする複合介在物、窒化物および窒化物を主体とする複合介在物について、倍率400倍で50視野観察した。そして、個々の介在物の長径をL(μm)、短径をW(μm)として、各視野における(πLW/4)0.5の値が最大になるものを求めた(試験番号1〜16および18〜22)。
そして、上記で求めた50の(πLW/4)0.5の値を小さいものから順に並べ直してそれぞれ(πLW/4)0.5 j(ここで、j=1〜50)とし、それぞれのjについて、累積分布関数Fj=100(J/51)(%)を計算した。
次いで、基準化変数yj=−loge(−loge(j/51))を縦軸に、横軸に(πLW/4)0.5 jを取ったグラフを書き、最小自乗法によって近似直線を求めた。そして、求めた直線から、累積分布関数Fjが99%となる時(すなわち、基準化変数yj≒4.6となる時)の値を読み取り、これを最大等価円直径(πLW/4)0.5とした。
また、鋼1〜15および17〜21の焼ならしした直径35mmの丸棒から、機械加工で直径が27mmで長さが100mmの丸棒を作製し、各鋼について10本の丸棒試験片について、鋼1は図3に示すヒートパターンでガス浸炭焼入れを行う前後における振れ量を、鋼2〜15および17〜21については図2あるいは、図12に示すヒートパターンで真空浸炭焼入れまたは真空浸炭窒化焼入れを行う前後における振れ量を測定することによって、熱処理ひずみのバラツキを調査した(試験番号1〜16および18〜22)。
具体的には、上記直径が27mmで長さが100mmの丸棒を3回転させた際の、丸棒長手方向中央の変位をレーザー変位センサーにより測定し、変位の「最大値−最小値」を振れ量として、上述の真空浸炭焼入れ前後における振れ量の差を求め、これを「振れ変化量」とした。そして、各鋼について10本の試験片における「最大の振れ変化量」と「最小の振れ変化量」を測定し、両者の差をもって熱処理ひずみのバラツキを評価した。なお、バラツキは0.20mm以下であることを目標とした。
表6に、上記の各調査結果をまとめて示した。
表6から明らかなように、本発明で規定する条件から外れた比較例の試験番号の場合には、少なくとも、ローラーピッチング試験における面疲労強度、小野式回転曲げ疲労試験における曲げ疲労強度、熱処理ひずみのバラツキのいずれかが目標に達していない。
すなわち、試験番号3は、鋼3のSi含有量が本発明で規定する下限値を下回る0.25%であるため、面疲労強度が目標に達していない。
試験番号8は、鋼8のO含有量が本発明で規定する上限値を上回る0.014%で、しかも、前記の最大等価円直径が本発明で規定する上限値を上回る37μmであるため、曲げ疲労強度が目標に達していない。
試験番号9は、鋼9が(2)式を満たさないため、面疲労強度が目標に達していない。
試験番号10は、鋼10が(3)式を満たさないため、曲げ疲労強度が目標に達していない。
試験番号13は、鋼13の化学組成は本発明で規定する範囲内にあるものの、最大等価円直径が本発明で規定する上限値を上回る36μmであるため、曲げ疲労強度が目標に達していない。
試験番号18は、鋼17が(1)式を満たさないため、最大の振れ変化量と最小の振れ変化量の差が著しく増加して、熱処理ひずみのバラツキが極めて大きくなっている。試験片にはひずみの影響を除く目的で、仕上げ加工を施しているため、曲げ疲労強度およびピッチング強度は目標を満足するものの、実操業では、安定して優れた曲げ疲労強度および面疲労強度を有する部品を製造することはできない。
試験番号21および22は、それぞれ、鋼20および鋼21が(3)式を満たさないため、曲げ疲労強度が目標に達していない。
これに対して、本発明の規定を全て満たす本発明例の各試験番号の場合には、ローラーピッチング試験における面疲労強度および小野式回転曲げ疲労試験における曲げ疲労強度の双方が目標を満たしており、優れた面疲労強度および曲げ疲労強度が得られている。しかも、熱処理ひずみのバラツキも小さい。
本発明の真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材は、MoやNiといった高価な元素を含有していないため、成分コストが低く、しかも、この鋼材を素材として真空浸炭または真空浸炭窒化を施して焼入れされた部品は、優れた面疲労強度と曲げ疲労強度を具備している。このため、本発明の真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材は、自動車や産業機械の歯車、プーリー、シャフトなど各種の真空浸炭または真空浸炭窒化される部品の素材として用いるのに好適である。
ローラーピッチング小ローラー試験片の形状を示す図である。なお、寸法の単位は「mm」である。 「真空浸炭焼入れ−焼戻し」のヒートパターンについて説明する図である。 「ガス浸炭焼入れ−焼戻し」のヒートパターンについて説明する図である。 ローラーピッチング大ローラー試験片の形状を示す図である。なお、寸法の単位は「mm」である。 インゴットの下半分を用いた場合において、図3に示すヒートパターンで「ガス浸炭焼入れ−焼戻し」した鋼1のピッチング強度を「1.00」として、図2に示すヒートパターンで「真空浸炭焼入れ−焼戻し」を行なった鋼a〜fのピッチング強度と〔(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)〕の式で表される値との関係を整理して示す図である。なお、図5においては、上記の式を「f2」として表記した。 小野式回転曲げ疲労試験片の形状を示す図である。なお、寸法の単位は「mm」である。 図3に示すヒートパターンで「ガス浸炭焼入れ−焼戻し」した鋼1の疲労限を「1.00」として、図2に示すヒートパターンで「真空浸炭焼入れ−焼戻し」を行なった鋼イ〜チのインゴットの下半分を用いた場合の疲労限と〔(S/Mn)+P〕の式で表される値との関係を整理して示す図である。 図3に示すヒートパターンで「ガス浸炭焼入れ−焼戻し」した鋼1の疲労限を「1.00」として、図2に示すヒートパターンで「真空浸炭焼入れ−焼戻し」を行なった鋼イ〜チのインゴットの下半分を用いた場合の疲労限と〔S+P〕の式で表される値との関係を整理して示す図である。 図3に示すヒートパターンで「ガス浸炭焼入れ−焼戻し」した鋼1の疲労限を「1.00」として、図2に示すヒートパターンで「真空浸炭焼入れ−焼戻し」を行なった鋼イ〜チのインゴットの下半分を用いた場合の疲労限と〔0.2×(S/Mn)+P〕の式で表される値との関係を整理して示す図である。 図3に示すヒートパターンで「ガス浸炭焼入れ−焼戻し」した鋼1の疲労限を「1.00」として、図2に示すヒートパターンで「真空浸炭焼入れ−焼戻し」を行なった鋼A〜Fのインゴットの上部1/5および下半分を用いた場合の疲労限と酸素含有量との関係をまとめて示す図である。なお、図10においては、「酸素含有量」を「酸素量」と表記した。 図3に示すヒートパターンで「ガス浸炭焼入れ−焼戻し」した鋼1の疲労限を「1.00」として、図2に示すヒートパターンで「真空浸炭焼入れ−焼戻し」を行なった鋼A〜Fのインゴットの上部1/5および下半分を用いた場合の疲労限と、長手方向に平行な断面において、極値統計法によって予想される酸化物、酸化物を主体とする複合介在物、窒化物および窒化物を主体とする複合介在物の最大等価円直径との関係をまとめて示す図である。 「真空浸炭窒化焼入れ−焼戻し」のヒートパターンについて説明する図である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.10〜0.25%、Si:0.35〜1.5%、Mn:0.4〜1.5%、P:0.025%以下、S:0.015〜0.05%、Cr:1.22〜2.0%、Al:0.010〜0.050%およびN:0.012〜0.025%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のO(酸素):0.0010%以下およびTi:0.003%以下、かつ、下記の(1)〜(3)式を満たす化学組成を有し、さらに、長手方向に平行な断面において、介在物の長径をL(μm)、短径をW(μm)として極値統計法によって予想される累積分布関数が99%時の下記(4)式で表される酸化物、酸化物を主体とする複合介在物、窒化物および窒化物を主体とする複合介在物の最大等価円直径が35μm以下であることを特徴とする真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材。
    910−203×C0.5+44.7×Si≦860・・・(1)
    2.0≦(0.31×C0.5)×(0.7×Si+1.00)×(3.33×Mn+1.00)×(2.16×Cr+1.00)≦3.5・・・(2)
    0.2×(S/Mn)+P≦0.030・・・(3)
    (πLW/4)0.5・・・(4)
    なお、上記の(1)〜(3)式におけるC、Si、Mn、Cr、SおよびPは、鋼中のその元素の質量%での含有量を表す。
  2. 質量%で、さらに、Nb:0.08%以下およびV:0.15%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材。
  3. 質量%で、さらに、Ca:0.005%以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の真空浸炭または真空浸炭窒化用の鋼材。
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