JP6967337B2 - 浸炭窒化部品および浸炭窒化部品の製造方法 - Google Patents

浸炭窒化部品および浸炭窒化部品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、浸炭処理および窒化処理の施された鋼材からなる浸炭窒化部品およびその製造方法に関する。
従来、歯車、ベルト式無段変速機(CVT)用プーリーなどの機械部品として、浸炭処理の施された鋼材からなる浸炭部品がある。
浸炭処理としては、ガス浸炭処理、真空浸炭処理などがある(例えば、特許文献1〜5参照)。真空浸炭処理では、ガス浸炭処理と比較して、以下に示す効果がある。すなわち、浸炭温度を高くできるので、短時間で所定の炭素濃度の浸炭部品が得られる。また、浸炭処理に伴う粒界酸化を抑制できるため、曲げ疲労強度の高い浸炭部品が得られやすい。さらに、炭素収率が高いため、二酸化炭素の排出量を抑えることができる。
また、機械部品として、鋼材に浸炭窒化処理を施した部品がある(例えば、特許文献6および特許文献7参照)。
特開2014−77198号公報 国際公開第2009/131202号 特開平4−21757号公報 特開2007−291486号公報 特開2007−308772号公報 特開2011−184768号公報 特開2014−185379号公報
しかしながら、真空浸炭処理を用いて浸炭した浸炭部品は、エッジ部の炭素濃度が、平坦部と比較して高くなりやすい。このため、浸炭部品のエッジ部は、必要以上の高濃度で炭素が含有された過剰浸炭になりやすい。過剰浸炭された部分の焼入れ組織には、破壊の起点となる粗大なセメンタイトが残存しやすいため、真空浸炭処理を施した浸炭部品では、曲げ疲労強度が不充分となる場合があった。
特に、歯車、CVT用プーリーなどのエッジ部が多く存在する表面形状を有する浸炭部品では、真空浸炭処理に伴うエッジ部の過剰浸炭に起因する曲げ疲労強度の劣化が問題となっていた。
また、真空浸炭処理の施された鋼材からなる浸炭部品は、焼き戻し軟化抵抗が低いため、十分な面疲労強度が得られない場合があった。
鋼材に対して浸炭窒化処理を行う場合、浸炭処理のみを行う場合と比較して、焼き戻し軟化抵抗を向上させることができる。
しかし、鋼材に浸炭窒化処理を施した浸炭窒化部品であっても、焼き戻し軟化抵抗が不十分となる場合があり、より一層焼き戻し軟化抵抗を向上させることが要求されていた。
また、従来のエッジ部を含む形状を有する浸炭部品および浸炭窒化部品では、より一層曲げ疲労強度を向上させることが要求されていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、エッジ部を含む形状を有し、焼き戻し軟化抵抗および曲げ疲労強度に優れた浸炭窒化部品およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために、浸炭窒化部品の焼き戻し軟化抵抗および曲げ疲労強度について、鋭意検討した。その結果、炭素濃度および窒素濃度が適正で、微細な炭化物および/または窒化物の析出物を十分に含む表層を有することにより、エッジ部を含む形状であっても優れた焼き戻し軟化抵抗および曲げ疲労強度が得られることを見出し、本発明の浸炭窒化部品を想到した。
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 芯部が、質量%で、
C:0.10〜0.25%、
Si:0.03〜0.49%、
Mn:0.30〜1.50%、
P:0.030%以下、
S:0.060%以下、
Cr:0.90〜3.00%、
Al:0.100%以下
およびN:0.030%以下を含有し、
残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
表面が平坦部とエッジ部とを有し、
前記平坦部の粒界酸化層深さが1μm以下であり、前記平坦部の表面から深さ0.05mmの位置までの平坦部表層領域は、炭素濃度が0.70%以上0.89%以下、窒素濃度が0.20%以上0.70%以下、炭化物および/または窒化物の析出物密度が0.5個/μm以上1.3個/μm 以下であり、
前記エッジ部の表面から深さ0.05mmの位置までのエッジ部表層領域は、前記炭化物および/または窒化物の析出物の最大長さが5.0μm以下であることを特徴とする曲げ疲労強度に優れた浸炭窒化部品。
[2] 前記芯部が更に、質量%で、
Nb:0.100%以下、
Ti:0.100%以下
からなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする[1]に記載の浸炭窒化部品。
[3] 前記芯部が更に、質量%で、
Mo:0.50%以下、
Cu:0.5%以下、
Ni:0.50%以下
からなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の浸炭窒化部品。
[4] [1]〜[3]のいずれか一項に記載の浸炭窒化部品の製造方法であり、
[1]〜[3]のいずれか一項に記載の化学組成を有し、頂点部とエッジ部と平坦部とを含む表面を有する鋼材を製造する工程と、
前記鋼材に真空浸炭処理を行った後に窒化処理と焼入れ処理とを行う工程を備え、
前記真空浸炭処理が、980〜1100℃の浸炭温度で前記鋼材を浸炭処理する浸炭工程と、前記浸炭温度を維持した状態で前記鋼材に侵入した炭素を前記鋼材中に拡散させる拡散工程と、前記拡散工程後の表面温度が前記浸炭温度である前記鋼材を3.0〜100℃/secの冷却速度で前記浸炭温度から500℃の間を冷却することにより、500℃以下に冷却する冷却工程とを備え、浸炭時間と拡散時間の比(浸炭時間/拡散時間)が0.20以上0.45以下であることを特徴とする浸炭窒化部品の製造方法。
本発明の浸炭窒化部品は、芯部のCr含有量が0.90%以上であり、Si含有量が0.49%以下であり、平坦部表層領域における炭素濃度が0.70%以上0.89%以下、窒素濃度が0.20%以上0.70%以下、炭化物および/または窒化物の析出物密度が0.5個/μm以上であり、エッジ部表層領域における炭化物および/または窒化物の析出物の最大長さが5.0μm以下である。このため、エッジ部を含む形状であって、優れた焼き戻し軟化抵抗および曲げ疲労強度を有する浸炭窒化部品を提供できる。
本発明の浸炭窒化部品の製造方法では、エッジ部を含む表面を有するCrおよびSiを上記含有量で含む鋼材を、十分に高い炭素濃度となるように真空浸炭処理し、十分に速い冷却速度で浸炭温度〜500℃の間を冷却し、冷却後の鋼材に窒化処理と焼入れ処理とを行う。このため、優れた焼き戻し軟化抵抗および曲げ疲労強度を有する本発明の浸炭窒化部品が得られる。
本発明の浸炭窒化部品の一例を示した斜視図である。 図1に示す浸炭窒化部品の一部を示した断面図であり、図1に示す断面CSを示した模式図である。 実施例で用いた小野式回転試験片の側面図である。
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明者は、上記課題を解決するために、浸炭窒化部品の曲げ疲労強度について、鋭意検討した。その結果、浸炭窒化部品の表層に析出したCr窒化物および/またはMnSi窒化物が、結晶粒界に存在しているものでは、焼入れ性が低下して、浸炭窒化部品の曲げ疲労強度が低下することが分かった。
そこで、本発明者は、真空浸炭処理される鋼材の化学組成と、浸炭窒化部品の表層に析出する析出物とに着目して、検討した。その結果、以下の(1)〜(4)の知見を得た。
(1)鋼材中のCr含有量を0.90%以上とすることで、浸炭処理および窒化処理を行うことによる炭化物および窒化物の結晶粒内における析出が促進されるとともに、焼入れ性を確保することができ、曲げ疲労強度が向上する。
(2)鋼材中のSi含有量を0.49%以下とすることで、Si含有量が多すぎることによる曲げ疲労強度の低下を抑制できる。
(3)エッジ部を含む形状を有するCrおよびSiを上記含有量で含む鋼材を、十分に高い炭素濃度となるように真空浸炭処理し、十分に速い冷却速度で浸炭温度〜500℃の間を冷却することで、微細なセメンタイトを析出させてエッジ部の過剰浸炭による曲げ疲労強度の低下を抑制できるとともに、結晶粒内に十分な数の微細な炭化物を析出させることができる。
(4)冷却後の鋼材を窒化処理することで、焼き戻し軟化抵抗が向上する。また、窒化処理において、冷却後の鋼材中の炭化物を析出サイトとして結晶粒内に微細な窒化物が析出されるため、表層の結晶粒界への窒化物の析出および成長が抑制された浸炭窒化部品が得られる。
以下、上記の知見に基づいて完成した本発明の浸炭窒化部品および浸炭窒化部品の製造方法について詳述する。
本実施形態の浸炭窒化部品は、頂点部と平坦部とエッジ部とを有する鋼材に、真空浸炭処理と、窒化処理と、焼入れ処理とを施したものである。
本実施形態の浸炭窒化部品の表面は、頂点部とエッジ部と平坦部とを含む。浸炭窒化部品の表面のうち、頂点部およびエッジ部には過剰浸炭が発生しやすい。頂点部は、鋼の体積に対する表面積が大きい。このため、浸炭処理によち炭素が多く入りやすく、深さ方向に拡散しにくい。そのため、頂点部は過剰浸炭が起こりやすい。しかし、頂点部は、実際に使用される際に大きな負荷がかからない箇所である。よって、頂点部は、過剰浸炭の度合いを評価する必要がない。そのため、本発明で過剰浸炭を抑制する対象は、エッジ部である。以下、本実施形態における頂点部、エッジ部、平坦部について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の浸炭窒化部品の一例を示した斜視図である。図1に示す浸炭窒化部品100は、表面に頂点部とエッジ部と平坦部とを有する4点曲げ試験片である。ここで、図1に示す浸炭窒化部品100における、頂点部とエッジ部と平坦部について説明する。
図1に示す浸炭窒化部品100は、全体が四角柱状であり、長さ方向略中央に切り欠き部分が形成されている。
まず、図1に示す浸炭窒化部品100の表面のうち、頂点部について説明する。部品表面上における任意の位置に存在する点をPaと定義する。点Paを中心とする半径1.0mmの仮想球を想定し、仮想球と浸炭窒化部品とが重なる部分の体積をV、浸炭窒化部品の表面のうち仮想球に含まれる部分の面積をSとする。そしてV/Sで表わされるパラメーターが0.223以下である部分を頂点と定義する。図1に示すPaにおいて、V/Sは0.222であり頂点部である。
次に、切り欠き部分の辺2の表面部分(縁表面部分)に注目する。縁表面部分において、辺2上における任意の位置に存在する点を、点Pcと定義する。そして、図1に示すように、点Pcにおける辺2と垂直な断面CSを想定する。
図2は、図1に示す浸炭窒化部品の一部を示した断面図であり、図1に示す断面CSを示した模式図である。図2に示すように、断面CSにおいて、浸炭窒化部品の表面の任意の点XPから、表面から垂直方向に1.0mmの深さの仮想点Pを想定する。仮想点Pの集合体を図2の点線矩形にて示す。仮想点Pを中心とする半径1.0mmの仮想球を想定し、当該仮想球が浸炭窒化部品の表面と接する(交わりが1点)場合、仮想点PはP1とし、P1を中心とする仮想球と浸炭窒化部品の表面との接点をXP1とする。点XP1で定義される部分を平坦部とする(図1において符号3で示す部分、図2における「平坦部」)。
以上の通り、点P1ならびに点P1と対になる点XP1を定義し、点XP1により平坦部を定義した。そして、当該平坦部と頂点部以外の部分、すなわち前記点XP1と点Pa以外の浸炭窒化部品の表面の点XP2をエッジ部と定義した(例えば、図1において符号2で示される辺、図2における「エッジ部」)。
また、本実施形態における浸炭窒化部品の「芯部」とは、真空浸炭処理および窒化処理の施される鋼材の化学成分であるCやNの濃度が、鋼材の浸炭窒化処理によって変動(増加)しない、浸炭窒化部品の表層よりも深い部分を指す。具体的には、浸炭窒化部品の表面からの最短深さ(表面から垂直方向の深さ)が2.0mm以上である浸炭窒化部品の内部を芯部と定義する。
「鋼材(芯部)の化学組成」
本実施形態の浸炭窒化部品の芯部は、次の化学組成を有する。芯部の化学組成は上記した真空浸炭処理する前の鋼材の化学組成と同じものである。なお、元素の含有量の「%」は「重量%」を意味する。
(C:0.10〜0.25%)
炭素(C)は、浸炭窒化部品の芯部硬度を高める。C含有量が低すぎると、上記効果が得られない。一方、C含有量が高すぎると、芯部硬度が高くなりすぎ、靭性が低下するため、かえって曲げ疲労強度が低下する。したがって、Cの含有量を0.10〜0.25%とする。
(Si:0.03〜0.49%)
Siは、鋼材の焼入れ性および焼戻し軟化抵抗を高め、曲げ疲労強度および面疲労強度を高める。しかし、Si含有量が高すぎると、MnSi窒化物が析出して、かえって鋼材の焼入れ性が低下し、曲げ疲労強度が低下する。したがって、上記効果を得るために、Siの含有量を0.03〜0.49%とした。Si含有量は、好ましくは0.10〜0.40%である。
(Mn:0.30〜1.50%)
Mnは、焼入れ性を高める効果があり、曲げ疲労強度を高めるのに有効な元素である。しかし、Mn含有量が0.30%未満では、前記の効果が十分に得られない。一方、Mnの含有量が1.50%を超えると、残留オーステナイトが多くなり過ぎ、かえって曲げ疲労強度が低下する。したがって、Mnの含有量を0.30〜1.50%とした。また、Mn含有量は、より好ましくは0.70〜1.30%である。
(P:0.030%以下)
Pは、粒界偏析して粒界を脆化させやすい元素である。このため、P含有量が0.030%を超えると、曲げ疲労強度や面疲労強度を低下させる。したがって、P含有量は0.030%以下とする。なお、Pは鋼材中に不可避的に含有されるもので、P含有量を低くしようとすると、製造コストが高くなる。そのため、P含有量の好ましい下限は0.003%であり、さらに好ましい下限は0.006%である。
(S:0.060%以下)
Sは、不純物として含有される元素である。S含有量が多いと、粗大なMnSが生成しやすくなり、曲げ疲労強度が低下する。Sの含有量が0.060%を超えると、所望の曲げ疲労強度が得られない。したがって、Sの含有量を0.060%以下とする。S含有量の好ましい上限は0.030%である。しかし、S含有量を0.003%未満に低減すると、製造コストが上昇する。そのため、S含有量の好ましい下限は0.003%である。
また、Sは、Mnと結合してMnSを形成し、切削加工性を向上させる。しかし、Sの含有量が0.006%未満であると、切削加工性の向上効果が得られ難い。
(Cr:0.90〜3.00%)
Crは、浸炭処理および窒化処理を行うことによる炭化物および窒化物の析出を促進し、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗を高める効果があるため、曲げ疲労強度および面疲労強度を高めるのに有効な元素である。しかし、Cr含有量が0.90%未満では、これらの効果が得られ難い。また、Crの含有量が3.00%を超えると、過剰浸炭により曲げ疲労強度が低下する。したがって、Crの含有量を0.90〜3.00%とした。Cr含有量は、好ましくは1.00〜2.00%である。
(Al:0.100%以下)
Alは、脱酸作用を有し、焼入れ性と焼戻し軟化抵抗を高める効果を有する。しかし、Al含有量が0.010%未満ではこれらの効果は得られ難い。したがって、Alの含有量を0.010%以上とすることが好ましい。一方、Alは、硬質な酸化物系介在物を形成しやすく、Al含有量が0.100%を越えると、曲げ疲労強度が低下する。したがって、Alの含有量を0.100%以下とした。
(N:0.030%以下)
窒素(N)は、不可避的に鋼材中に含有される。Nは、Alと結合してAlNを形成し、結晶粒を微細化する。しかしながら、N含有量が高すぎると、鋼材の鍛造性が低下する。したがって、N含有量は0.030%以下とする。N含有量の好ましい上限は0.020%であり、より好ましくは0.018%である。N含有量を低くしようとすると、製造コストが高くなる。そのため、N含有量の好ましい下限は0.003%とする。
本実施形態の浸炭窒化部品の芯部の化学組成の残部はFeおよび不純物からなる。ここで、不純物とは、浸炭窒化部品となる浸炭前の鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるものを意味する。
本実施形態における鋼材は、さらに、Feの一部に替えて、Nbおよび/またはTiを含有してもよい。NbおよびTiは任意に含有される元素である。
(Nb:0〜0.100%以下)
Nbは、鋼中のNおよび/またはCと結びついて、微細な炭化物、窒化物、又は炭窒化物を生成し、表面硬化熱処理(真空浸炭処理および窒化処理)での結晶粒成長を抑制する効果がある。Nbが少しでも含まれていれば、上記効果がある程度得られる。一方、0.100%を超えてNbを含有させた場合には、粗粒化抑制効果は飽和する。したがって、Nb含有量の上限を0.100%とする。Nb含有量の上限は、好ましくは0.080%、より好ましくは0.045%とする。
(Ti:0〜0.100%以下)
Tiは、鋼中のNおよび/またはCと結びついて、微細な炭化物、窒化物、又は炭窒化物を生成し、表面硬化熱処理(真空浸炭処理および窒化処理)での結晶粒成長を抑制する効果がある。Tiが少しでも含まれていれば、上記効果がある程度得られる。一方、Ti含有量が過剰になると、粗大な窒化物や酸化物を生成し、鋼材の靭性を低下させる。したがって、Ti含有量は、0.100%以下とし、好ましくは0.050%以下とする。
本実施形態における鋼材は、さらに、Feの一部に替えて、Mo、Cu及びNiからなる群から選択される1種以上を含有してもよい。これらの元素は任意に含有される元素である。これらの元素はいずれも、靱性を高める。
(Mo:0〜0.50%以下)
Moは、鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の曲げ疲労強度を高める。Moが少しでも含まれていれば、上記効果がある程度得られる。一方、0.50%を超えてMoを含有させても、効果が飽和するばかりか、熱間加工後の鋼材の強度が高くなりすぎて、鋼材の被削性が低下する。したがって、Mo含有量は0.50%以下とする。Mo含有量は、0.40%以下であることが好ましい。
(Cu:0〜0.5%以下)
Cuは、鋼材の過剰浸炭を抑制し、さらに、鋼材の靱性を高める。Cuが少しでも含有されていれば、上記効果がある程度得られる。一方、Cu含有量が高すぎると、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Cu含有量を0.5%以下とする。Cu含有量が0.1%以上であると、上記効果が顕著に得られる。Cu含有量は、好ましくは0.3%以下である。
(Ni:0〜0.50%以下)
Niは、鋼材の過剰浸炭を抑制し、さらに鋼材の靱性を高める。Niが少しでも含有されていれば、上記効果がある程度得られる。一方、0.50%を超えてNiを含有させても、効果が飽和するばかりか、鋼材の製造コストが上昇する。したがって、Ni含有量を0.50%以下とする。Ni含有量が0.10%以上であると、上記効果が顕著に得られる。Ni含有量は好ましくは0.20%以下である。
「浸炭窒化部品の表面の炭素濃度および窒素濃度」
本実施形態の浸炭窒化部品では、平坦部の表面から深さ0.05mmの位置までの平坦部表層領域は、炭素濃度が0.70%以上0.89%以下であり、窒素濃度が0.20%以上0.70%以下である。
平坦部表層領域の炭素濃度および窒素濃度は、それぞれ次の方法により測定できる。
平坦部表層領域の断面の炭素濃度および窒素濃度を、EPMA(電子線マイク口アナライザ)により分析し、表面から深さ0.05mmの位置までの炭素濃度および窒素濃度の平均値をそれぞれ算出する。
なお、平坦部表層領域の炭素濃度および窒素濃度を表面から深さ0.05mmの位置までの濃度としたのは、浸炭窒化の度合いの評価に対する表面の汚れの影響を抑制して表層の浸炭窒化の度合いを高精度で評価するためである。
平坦部表層領域の炭素濃度は、浸炭窒化部品の表面硬度を高め、曲げ疲労強度を高くするために0.70%以上必要である。一方、平坦部表層領域の炭素濃度が0.89%を超えると、エッジ部表層領域の炭素濃度が高くなりすぎて、粗大セメンタイトが析出しやすくなり、エッジ部の曲げ疲労強度が低下する。このため、平坦部表層領域の炭素濃度を0.70%以上0.89%以下とする。平坦部表層領域の炭素濃度は、好ましくは0.75%以上である。平坦部表層領域の炭素濃度は、好ましくは0.85%以下である。
平坦部表層領域の窒素濃度は、焼き戻し軟化抵抗を向上させ、浸炭窒化部品の表面硬度を高くするために0.20%以上必要である。一方、平坦部表層領域の窒素濃度が0.70%を超えると、焼入れ処理後に残留する硬度の低い残留オーステナイト量が多くなり、浸炭窒化部品の硬度が低下する。このため、平坦部表層領域の窒素濃度を0.20%以上0.70%以下とする。平坦部表層領域の窒素濃度は、好ましくは0.25%以上である。平坦部表層領域の窒素濃度は、好ましくは0.65%以下である。
平坦部表層領域の炭素濃度および窒素濃度は、真空浸炭処理および真空浸炭処理後に行う窒素処理(および焼入れ処理)における条件を調整することにより制御できる。
「炭化物および/または窒化物の析出物」
本実施形態の浸炭窒化部品では、平坦部表層領域において炭化物および/または窒化物の析出物密度が0.5個/μm以上である。上記の析出物密度が0.5個/μm未満である場合、炭化物および/または窒化物の析出物が不足して、浸炭窒化部品の硬度および/または曲げ疲労強度が不足する。上記の析出物密度は、浸炭窒化部品の硬度および/または曲げ疲労強度を向上させるために、0.7個/μm以上であることが好ましい。
また、本実施形態の浸炭窒化部品では、エッジ部の表面から深さ0.05mmの位置までのエッジ部表層領域における炭化物および/または窒化物の析出物の最大長さを5.0μm以下とする。上記の析出物の最大長さが5.0μmを超えると、炭化物および/または窒化物の析出物が粗大であるため、浸炭窒化部品の曲げ疲労強度が不足する。上記の析出物の最大長さは、浸炭窒化部品の曲げ疲労強度を向上させるために、3.0μm以下であることが好ましい。
(平坦部の粒界酸化層深さ:1μm以下)
本実施形態の浸炭窒化部品は、真空浸炭処理の施されたものであるため、浸炭窒化処理によって形成される粒界酸化層が少ない。粒界酸化層は、不完全焼入れ組織を少なくするために、少ない程望ましい。不完全焼入れ組織は、浸炭窒化部品の疲労強度の低下を招くものであり、不完全焼入れ組織が多くなるにつれて、疲労強度の低下の程度が大きくなる。したがって、浸炭窒化部品の平坦部の粒界酸化層深さの上限を1μmとする。
本実施形態において、浸炭窒化部品の平坦部の粒界酸化層深さとは、平坦部の表面から内部に向かって連続して伸びる黒色の酸化物が到達している表面からの最大深さを意味する。
「製造方法」
次に、本実施形態の浸炭窒化部品の製造方法について例を挙げて説明する。
まず、上述の化学組成を満たし、頂点部と平坦部とエッジ部とを有する鋼材を製造する。
本実施形態では、例えば、上記化学組成の溶鋼を製造し、連続鋳造法により鋳片(スラブまたはブルーム)を製造する。鋳片に代えて、上記化学組成の溶鋼を用いて造塊法によりインゴット(鋼塊)を製造してもよい。
次に、鋳片またはインゴッ卜を熱間加工して、ビレット(鋼片)を製造する。その後、ビレットを熱間加工して、棒鋼または線材とする。熱間加工は、熱間圧延であってもよいし、熱間鍛造であってもよい。
次に、製造した棒鋼または線材に対して、冷間鍛造および/または機械加工を行って、頂点部と平坦部とエッジ部とを有する所定の形状の鋼材とする。
機械加工としては、例えば、切削加工、穿孔加工などが挙げられる。鋼材における頂点部と平坦部とエッジ部とを有する形状は、浸炭窒化部品の用途に応じて決定されるものであり、公知の方法により形成できる。
次に、本実施形態では、頂点部と平坦部とエッジ部とを有する鋼材に対して、真空浸炭処理と、窒化処理と、焼入れ処理とを実施する。本実施形態においては、窒化処理が焼入れ処理を兼ねる場合を例に挙げて説明する。
真空浸炭処理では、はじめに、例えば10Pa以下に減圧した炉内で鋼材を浸炭温度まで加熱する加熱工程を行う。次に、浸炭温度で鋼材を均熱する均熱工程を行う。続いて、炉内に浸炭ガスを導入し、所定の浸炭ガス圧および浸炭温度で鋼材を浸炭処理する浸炭工程を行う。その後、浸炭温度を維持した状態で鋼材に侵入した炭素を鋼材中に拡散させる拡散工程と、鋼材を冷却する冷却工程とをこの順で行う。
均熱工程における均熱時間は、5〜120分間であることが好ましく、30〜60分間であることがより好ましい。均熱工程における炉内の圧力は、100Pa以下であってもよいし、窒素ガスの導入と真空ポンプによる真空排気を同時に行なって、1000Pa以下の窒素雰囲気としてもよい。
浸炭工程において用いられる浸炭ガスの種類は、真空浸炭処理に用いられている公知のものを用いることができ、例えば、アセチレン、プロパン、エチレンなどの炭化水素ガスを用いることができる。
浸炭工程における浸炭ガス圧は、ガスの種類によってスーティングのし易さと浸炭むらの起こり易さとが異なるため、浸炭ガスの種類に応じて所定の範囲とすることが好ましい。例えば、浸炭ガスがアセチレンである場合、浸炭ガス圧は10〜1000Paであることが好ましい。浸炭ガスがプロパンである場合、浸炭ガス圧は200〜3000Paであることが好ましい。
浸炭温度は、980〜1100℃の範囲とする。浸炭温度が980℃以上であると、短時間で所定の炭素濃度の浸炭窒化部品を製造できる。浸炭温度は1020℃以上であることが好ましい。また、浸炭温度が高すぎると、Mnおよび/またはCrなどの焼入れ性を向上させる元素が真空中に抜けるため、1100℃以下とする。浸炭温度は、1080℃以下であることが好ましい。
浸炭工程および拡散工程における処理時間は、浸炭工程における処理時間(浸炭時間)と拡散工程における処理時間(拡散時間)との比(浸炭時間(分)/拡散時間(分))が0.20以上0.45以下となる範囲で、鋼材の化学組成と、目標とする平坦部表層領域の炭素濃度と、芯部硬度、粒界酸化層深さに応じて適宜決定される。
浸炭時間と拡散時間との比が0.20未満であると、平坦部表層領域の炭化物および/または窒化物の析出物密度が不足する。浸炭時間と拡散時間との比を0.20以上とすることで、表層の炭素濃度を十分に高くでき、平坦部表層領域の炭化物および/または窒化物の析出物密度が十分に高い浸炭窒化部品が得られる。浸炭時間と拡散時間との比は、0.25以上とすることが好ましい。
また、浸炭時間と拡散時間との比は0.45以下とする。本実施形態では、後述するように、拡散工程後の鋼材を3.0℃/sec以上の冷却速度で急冷するため、冷却中の鋼材中での炭素の拡散が抑制される。浸炭時間と拡散時間との比が0.45以下であると、拡散時間を十分に確保できるため、拡散工程後に急冷しても鋼材中に十分に炭素を拡散させることができるとともに、浸炭時間が長すぎることによる過剰浸炭を防止できる。浸炭時間と拡散時間との比は0.40以下とすることが好ましく、0.35以下とすることがより好ましい。
拡散工程における炉内の圧力は、浸炭工程における残留ガスを取り除くため、10Pa以下であることが好ましい。窒素ガスの導入と真空ポンプによる真空排気を同時に行なう場合は、1000Pa以下の窒素雰囲気としてもよい。
冷却工程では、拡散工程後の鋼材を3.0〜100℃/secの冷却速度で冷却する。冷却速度が3.0℃/sec以上であると、粗大な炭化物の析出が抑制され、結晶粒内に微細な炭化物を十分に析出させることができる。また、冷却速度が3.0℃/sec以上であると、微細なセメンタイトを析出させることができ、エッジ部の過剰浸炭による曲げ疲労強度の低下を抑制できる。したがって、冷却速度は3.0℃/sec以上とし、好ましくは4℃/sec以上とする。
また、冷却速度は、熱処理歪を低減するため100℃/sec以下とする。
本実施形態において、冷却工程の冷却速度とは、拡散工程後の鋼材の表面温度が、浸炭温度〜500℃の間における冷却速度(℃/秒)の平均値を意昧する。
冷却工程における冷却方法としては、上記の冷却速度で冷却できる公知の方法を用いることができ、例えば、放冷であってもよいし、ガス冷却であってもよいし、その他の方法であってもよい。本実施形態では、容易に3.0℃/sec以上の冷却速度で冷却できるため、ガス冷却を用いることが好ましい。
冷却工程においてガス冷却を用いる場合、冷却ガスとして不活性ガスを用いることが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガスおよび/またはヘリウムガスを用いることが好ましく、特に、安価で入手が容易な窒素ガスを用いることが好ましい。冷却ガスとして不活性ガスを用いることで、鋼材の酸化を防ぐことができる。
次に、真空浸炭処理された鋼材に対して、焼入れ処理を兼ねる窒化処理を行う。
具体的には、例えば、真空浸炭処理された鋼材を炉内に入れ、窒素雰囲気中で焼入れ温度に加熱した後、炉内にアンモニア含有ガスを導入し、アンモニア含有雰囲気中で鋼材を焼入れ温度(窒化温度)で保持することにより窒化し、その後、冷却する窒化処理(焼入れ処理)を実施する。
窒化する際のアンモニア含有雰囲気は、窒素ガスとアンモニアガスとアンモニアが分解して生成するガスを含む混合ガス雰囲気であってもよい。窒化工程における炉内の好ましい窒化ガス圧は、大気圧以下であり、さらに好ましくは400hPa以下である。本実施形態においては、平坦部表層領域の窒素濃度が所定の濃度となるように、アンモニア含有ガスの流量を調整する。例えば、予め定めたアンモニアガス流量で窒化試験を行って、平坦部表層領域の窒素濃度が所望の範囲外となった場合、アンモニアガス流量を変更して、平坦部表層領域の窒素濃度が0.20〜0.70%となるようにアンモニアガス流量を決定する。アンモニアガス流量は、炉の容積と強い相関があり、たとえば、容積が2000リットルの炉の場合のアンモニアガス流量は3リットル/分以上20リットル/分未満である。好ましくは5リットル/分以上であり、15リットル/分以下である。
焼入れ温度は、780〜880℃の範囲であることが好ましく、820〜870℃の範囲であることがより好ましい。
焼入れ処理における保持時間(窒化時間)は、平坦部表層領域の窒素濃度が0.20%以上0.70%以下の浸炭窒化部品を得るために、30〜240分間であることが好ましく、40〜120分間であることがより好ましい。
焼入れ処理での冷却方法としては、油冷、水冷など公知の方法を用いることができる。冷却方法として油冷を用いる場合、焼入れ油の温度は60〜160℃の範囲とすることが好ましい。
本実施形態では、真空浸炭処理および焼入れ処理を兼ねる窒化処理における各条件(均熱時間、浸炭ガスの種類、浸炭ガス圧、浸炭温度、浸炭工程での処理時間、拡散工程での処理時間、冷却工程での冷却速度、焼入れ温度(窒化温度)、アンモニア含有ガスの種類、焼入れ処置における保持時間(窒化時間)など)は、鋼材の化学組成と、目標とする平坦部表層領域の炭素濃度および窒素濃度、平坦部表層領域およびエッジ部表層領域における炭化物および/または窒化物の析出物の密度および大きさに応じて決定される。
具体的には、シミュレーションを用いて真空浸炭処理および/または窒化処理における上記の各条件を決定してもよいし、真空浸炭処理試験および/または窒化処理試験を実施して、平坦部表層領域の炭素濃度および窒素濃度が所定の濃度範囲内となり、平坦部表層領域およびエッジ部表層領域に微細な炭化物および/または窒化物の析出物が十分に含まれるように、上記の各条件を決定してもよい。
本実施形態では、焼入れ処理を兼ねる窒化処理を行う場合を例に挙げて説明したが、窒化処理を行った後に焼入れ処理を行ってもよい。
本実施形態では、焼入れ処理を兼ねる窒化処理を行った後、必要に応じて焼戻し処理を実施してもよい。
焼戻し処理を行う場合、焼戻し温度は、150〜200℃の範囲であることが好ましく、160〜190℃の範囲であることがより好ましい。
焼き戻し温度での保持時間は、10〜180分間であることが好ましい。
以上の工程により、本実施形態による浸炭窒化部品が製造される。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
表1に示す鋼A〜鋼Xの化学組成を有する溶鋼を製造し、製造した溶鋼を用いて、インゴッ卜を製造した。次に、インゴッ卜を熱間鍛造して棒鋼とした。次に、製造した棒鋼に対して、冷間鍛造および機械加工を行って、直径が35mmの丸棒を製造した。
Figure 0006967337
「4点曲げ疲労試験片の作製」
このようにして製造した鋼A〜鋼Xの各化学組成を有する丸棒に機械加工を行って、頂点部と平坦部とエッジ部とを含む表面を有する形状の鋼材として、図1に示す形状の4点曲げ疲労試験片を複数個形成した。4点曲げ疲労試験片は、高さ及び幅が共に13mmである断面視正方形とし、長さを100mmとした。4点曲げ疲労試験片の長さ方向中央には、断面形状が半円である切り欠きを形成した。半円の切り欠きにおける半径は2mmとした。
その後、鋼A〜鋼Xの各化学組成を有する4点曲げ疲労試験片に対して、以下に示す条件で真空浸炭処理と、焼入れ処理を兼ねる窒化処理とを行ない、実施例1〜22、比較例1〜11の浸炭窒化部品(4点曲げ疲労試験片)を得た。
「実施例1〜22、比較例1〜11」
鋼材としての4点曲げ疲労試験片を、10Pa以下に減圧した炉内で表2に示す浸炭温度まで加熱し、浸炭温度で60分間を均熱した。続いて、炉内に浸炭ガスとしてアセチレンガスを導入し、表2に示す浸炭ガス圧および浸炭工程における処理時間で鋼材を浸炭処理する浸炭工程を行った。
次に、浸炭温度を維持した状態で、表2に示す処理時間で鋼材に侵入した炭素を鋼材中に拡散させる拡散工程を行った。その後、鋼材を表2に示す冷却速度で窒素ガスを用いて10分間ガス冷却することにより、鋼材の温度を浸炭温度から500℃以下の温度とし、真空浸炭処理を終了した。
続いて、真空浸炭処理された鋼材を100〜160Paの窒素雰囲気中で焼入れ温度の860℃まで加熱し、10分間保持した。その後、窒素ガスを炉内圧力が300hPaとなるまで導入し、炉内に表2に示す流量でアンモニアガスを供給し、炉内圧力を300Paと一定にしたアンモニア含有雰囲気中で、鋼材を焼入れ温度(窒化温度)で60分間保持することにより窒化した。炉の容積は2000リットルであった。その後、鋼材を、120℃の焼入れ油を用いて油焼入れし、焼入れ処理を兼ねる窒化処理を終了した。
続いて、焼入れ処理を兼ねる窒化処理の施された鋼材を、170℃の焼き戻し温度まで加熱し、2時間保持する焼戻し処理を行い、実施例1〜22、比較例1〜11の浸炭窒化部品を得た。
Figure 0006967337
「平坦部表層領域の炭素濃度および窒素濃度の測定」
実施例1〜22、比較例1〜11の浸炭窒化部品(4点曲げ疲労試験片)の平坦部表層領域における断面の炭素濃度および窒素濃度を、EPMA(電子線マイク口アナライザ)により分析し、表面から深さ0.05mmの位置までの炭素濃度と窒素濃度の平均値をそれぞれ算出した。その結果を表3に示す。
「平坦部表層領域の析出物観察]
実施例1〜22、比較例1〜11の浸炭窒化部品(4点曲げ疲労試験片)を、平坦部の表面に垂直に切断し、切断面が観察面となるように樹脂埋めして、観察面を鏡面研磨し、試験片とした。次いで、観察面をナイタールエッチングし、5000倍に設定した走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、平坦部の表面から深さ0.05mmの位置までの析出物の個数を求め、平坦部表層領域に含まれる炭化物および/または窒化物の析出物密度を算出した。その結果を表3に示す。
「エッジ部表層領域の析出物観察]
実施例1〜22、比較例1〜11の浸炭窒化部品(4点曲げ疲労試験片)を、エッジ部の表面に垂直に切断し、切断面が観察面となるように樹脂埋めして、観察面を鏡面研磨し、試験片とした。次いで、観察面をナイタールエッチングして、2000倍に設定した走査型電子顕微鏡(SEM)で、エッジ部の表面から深さ0.05mmの位置までを観察し、セメンタイトの長さが最大のものを特定した。そして、長さが最大のセメンタイトの界面における任意の2点の間の距離のうち最大の距離を測定し、これをエッジ部表層領域に含まれる炭化物および/または窒化物の析出物の最大長さとした。その結果を表3に示す。表3における「>5」は、エッジ部表層領域の炭化物および/または窒化物の析出物の最大長さが5.0μm超えであることを意味する。
「粒界酸化層深さ」
実施例1〜22、比較例1〜11の浸炭窒化部品(4点曲げ疲労試験片)を、エッジ部の表面に対しほぼ垂直となるように切断し、切断面を鏡面研磨して1000倍に設定した光学顕微鏡で観察した。そして、表面から内部に向かって連続して筋状に伸びる黒色の酸化物を観察し、筋状の黒色の酸化物の到達している表面からの最大深さを粒界酸化層深さとして測定した。
その結果、実施例1〜22、比較例1〜11の浸炭窒化部品のいずれにおいても、筋状の黒色の酸化物が観察されず、粒界酸化層深さは0μmであった。
「4点曲げ疲労試験」
実施例1〜22、比較例1〜11の浸炭窒化部品(4点曲げ疲労試験片)を用いて、4点曲げ疲労試験を実施した。
4点曲げ疲労試験には、サーボ型疲労試験機を用いた。4点曲げ疲労試験片の支点間の距離は45mmとした。また、最大負荷応力は1373MPaであり、最大負荷応力と最小負荷応力との応力比は0.1であった。周波数は10Hzであった。そして、応力負荷繰り返し回数が1×10回での破断強度を、4点曲げ疲労強度(MPa)と評価した。その結果を表3に示す。
「平坦部の表面の硬さ(焼戻し軟化抵抗試験)」
実施例1〜22、比較例1〜11の浸炭窒化部品(4点曲げ疲労試験片)に対し、300℃の焼き戻し温度まで加熱し、2時間保持する追加の焼戻し処理を行った。
その後、追加の焼戻し処理を行った各4点曲げ疲労試験片について、ビッカース硬度計により平坦部の表面から深さ0.05mmの位置の硬さをJIS Z 2244に準拠し測定した。その結果を表3に示す。
「小野式回転曲げ疲労試験片の作製」
4点曲げ疲労試験片の作製に使用した鋼A〜鋼Xの各化学組成を有する丸棒のR/2部から、平坦部とエッジ部とを有する形状の鋼材として、図3に示す形状の小野式回転曲げ疲労試験片を複数個採取した。R/2部とは、丸棒の横断面(円形状)の中心と外周との間を2等分する部分である。回転曲げ疲労試験片の形状は、JIS Z2274(1974)に準拠した。回転曲げ疲労試験片は、横断面が円形状であり、中央部に直径10mmの平行部を形成した。平行部の中央には、半径R1=1mmの環状半円溝を形成した。図3中の各数値は、寸法(単位はmm)を示す。
その後、鋼A〜鋼Xの各化学組成を有する小野式回転曲げ疲労試験片に対して、上記の4点曲げ疲労試験片と同様にして、真空浸炭処理および焼入れ処理を兼ねる窒化処理を行ない、実施例1〜22、比較例1〜11の浸炭窒化部品(小野式回転曲げ疲労試験片)を得た。
「小野式回転曲げ試験」
実施例1〜22、比較例1〜11の浸炭窒化部品(小野式回転曲げ疲労試験片)について、JIS Z2274(1974)に準拠して、小野式回転曲げ疲労試験を室温(25℃)の大気中で回転数3400rpmの条件で実施した。そして、応力付加繰返し回数が1×10回において破断しない最大の応力(MPa)を、小野式回転曲げ疲労強度(MPa)と評価した。その結果を表3に示す。
Figure 0006967337
表3に示すように、実施例1〜22では、平坦部表層領域の炭素濃度が0.70%以上0.89%以下、窒素濃度が0.20%以上0.70%以下、炭化物および/または窒化物の析出物密度が0.5個/μm以上であり、エッジ部表層領域の炭化物および/または窒化物の析出物の最大長さが5.0μm以下であった。そして、表3に示すように、実施例1〜22では、1000MPa以上の高い4点曲げ疲労強度と、500MPa以上の高い小野式回転曲げ疲労強度とを有し、HV660以上の高い平坦部の表面の硬さを有していた。
これに対し、比較例1は、鋼材中のC含有量が少ないため、4点曲げ疲労強度が低くなった。比較例2は、鋼材中のC含有量が多いため、4点曲げ疲労強度が低くなった。
比較例3は、鋼材中のSi含有量が多いため、小野式回転曲げ疲労強度が低くなった。
比較例4は、鋼材中のMn含有量が少ないため、4点曲げ疲労強度および小野式回転曲げ疲労強度が低くなった。
比較例5は、鋼材中のP含有量が多いため、4点曲げ疲労強度が低くなった。
比較例6は、鋼材中のCr含有量が少ないため、平坦部表層領域に含まれる炭化物および/または窒化物の析出物密度が不足して、小野式回転曲げ疲労強度が低くなった。
比較例7は、平坦部表層領域の炭素濃度が高く、エッジ部表層領域の炭化物および/または窒化物の析出物の最大長さが5.0μmを超えているため、4点曲げ疲労強度が低くなった。
比較例8は、平坦部表層領域の炭素濃度が低いため、平坦部表層領域に含まれる炭化物および/または窒化物の析出物密度が不足し、4点曲げ疲労強度、小野式回転曲げ疲労強度、平坦部の表面の硬さが低くなった。
比較例9は、真空浸炭窒化処理での冷却速度が3.0℃/秒未満であった。そのため、エッジ部表層領域の炭化物および/または窒化物の析出物の最大長さが5.0μmを超え、4点曲げ疲労強度が低くなった。
比較例10は、アンモニアガス流量が多く、平坦部表層領域の窒素濃度が高いため、小野式回転曲げ疲労強度が低くなった。
比較例11は、アンモニアガス流量が小さく、平坦部表層領域の窒素濃度が低いため、平坦部表層領域に含まれる炭化物および/または窒化物の析出物密度が不足し、焼き戻し軟化抵抗が低くなり、平坦部の表面の硬さが低くなった。
100 浸炭窒化部品
2 辺
3 平坦部
11、12 面
CS 断面

Claims (4)

  1. 芯部が、質量%で、
    C:0.10〜0.25%、
    Si:0.03〜0.49%、
    Mn:0.30〜1.50%、
    P:0.030%以下、
    S:0.060%以下、
    Cr:0.90〜3.00%、
    Al:0.100%以下
    およびN:0.030%以下を含有し、
    残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
    表面が平坦部とエッジ部とを有し、
    前記平坦部の粒界酸化層深さが1μm以下であり、前記平坦部の表面から深さ0.05mmの位置までの平坦部表層領域は、炭素濃度が0.70%以上0.89%以下、窒素濃度が0.20%以上0.70%以下、炭化物および/または窒化物の析出物密度が0.5個/μm以上1.3個/μm以下であり、
    前記エッジ部の表面から深さ0.05mmの位置までのエッジ部表層領域は、前記炭化物および/または窒化物の析出物の最大長さが5.0μm以下であることを特徴とする曲げ疲労強度に優れた浸炭窒化部品。
  2. 前記芯部が更に、質量%で、
    Nb:0.100%以下、
    Ti:0.100%以下
    からなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の浸炭窒化部品。
  3. 前記芯部が更に、質量%で、
    Mo:0.50%以下、
    Cu:0.5%以下、
    Ni:0.50%以下
    からなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浸炭窒化部品。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の浸炭窒化部品の製造方法であり、
    請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の化学組成を有し、頂点部とエッジ部と平坦部とを含む表面を有する鋼材を製造する工程と、
    前記鋼材に真空浸炭処理を行った後に窒化処理と焼入れ処理とを行う工程を備え、
    前記真空浸炭処理が、980〜1100℃の浸炭温度で前記鋼材を浸炭処理する浸炭工程と、前記浸炭温度を維持した状態で前記鋼材に侵入した炭素を前記鋼材中に拡散させる拡散工程と、前記拡散工程後の表面温度が前記浸炭温度である前記鋼材を3.0〜100℃/secの冷却速度で前記浸炭温度から500℃の間を冷却することにより、500℃以下に冷却する冷却工程とを備え、浸炭時間と拡散時間の比(浸炭時間/拡散時間)が0.20以上0.45以下であることを特徴とする浸炭窒化部品の製造方法。
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