JP6720643B2 - 浸炭部品 - Google Patents

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Description

本発明は、浸炭処理の施された鋼材からなる浸炭部品に関する。
従来、歯車、ベルト式無段変速機(CVT)用プーリーなどの機械部品として、浸炭処理の施された鋼材からなる浸炭部品がある。
浸炭処理としては、従来多く用いられてきたガス浸炭処理に代わって、真空浸炭処理が用いられるようになってきている(例えば、特許文献1〜9参照)。真空浸炭処理では、ガス浸炭処理と比較して、以下に示す効果がある。すなわち、浸炭温度を高くできるので、短時間で所定の炭素濃度の浸炭部品が得られる。また、浸炭処理に伴う粒界酸化を抑制できるため、曲げ疲労強度の高い浸炭部品が得られやすい。さらに、炭素収率が高いため、二酸化炭素の排出量を抑えることができる。
しかしながら、真空浸炭処理を用いて浸炭部品を製造すると、エッジ部の炭素濃度が、平坦部と比較して高くなりやすい。このため、浸炭部品のエッジ部は、必要以上の高濃度で炭素が含有された過剰浸炭になりやすい。過剰浸炭された部分の焼入れ組織には、破壊の起点となる粗大なセメンタイトが残存しやすいため、真空浸炭処理を施した浸炭部品では、曲げ疲労強度が不充分となる場合があった。特に、歯車、CVT用プーリーなどのエッジ部が多く存在する表面形状を有する浸炭部品では、真空浸炭処理に伴うエッジ部の過剰浸炭に起因する曲げ疲労強度の劣化が問題となっていた。
真空浸炭処理を施した浸炭部品におけるエッジ部の過剰浸炭の問題を解決すべく、従来、種々の対策が提案されている。
例えば、浸炭部品の表層における炭素濃度が低くなる条件で、真空浸炭処理を行なう方法がある。具体的には、特許文献1には、減圧浸炭工程を、炭素の拡散速度が速い歯形部の歯面または歯底の表面浸炭濃度が0.65±0.1質量%の範囲内となる条件で行う鋼部材の製造方法が記載されている。
また、真空浸炭処理される鋼材の化学組成において、Si濃度を高くしたり、Cr濃度を低くしたりすることが提案されている。
鋼材に含まれるCr含有量を低くすると、真空浸炭処理によって生じる粗大セメンタイトの析出が抑制されるため、曲げ疲労強度の劣化が抑制される。具体的には、特許文献2および特許文献3には、浸炭処理される鋼部材として、Si:0.35〜3.0%、Mn:0.1〜3.0%、Cr:0.2%未満、Mo:0.1%以下とした化学組成が記載されている。
また、真空浸炭処理を行う前の鋼材に対して、エッジ部の面取り加工を行なうことで、過剰浸炭を抑制する方法がある。具体的には、特許文献9には、平滑な面部における表面炭素濃度が0.6%以上となるように真空浸炭されている歯車であって、真空浸炭に先立って、歯元近傍に位置する応力集中部を含む表面に、有効硬化層深さD±0.25(mm)の面取り加工が施されている歯車が記載されている。
国際公開第2009/131202号 特許第5422045号公報 特許第5301728号公報 特開平4−21757号公報 特許第4254816号公報 国際公開第2014/034150号 特許第4688727号公報 特開2013−185204号公報 特開2006−349055号公報
しかしながら、従来の技術を用いて、真空浸炭処理を施すことによるエッジ部への過剰浸炭を抑制した場合、以下に示す不都合があった。
具体的には、浸炭部品の表層における炭素濃度が低くなる条件で、真空浸炭処理を行なう場合、浸炭部品の表層における炭素濃度が不足する場合があった。このため、浸炭部品の耐久性が不十分となる場合があった。
また、真空浸炭処理される鋼材の化学組成において、Cr濃度を低くした場合、焼入れ性が不十分となり、芯部硬度が不足する場合があった。
また、鋼材に含まれるSi含有量を多くすると、浸炭処理前の鋼材の硬さが高くなりすぎて、加工性が劣化する。このため、エッジ部の過剰浸炭を抑制する効果が十分に得られる濃度となるように、Si含有量を十分に多くすることは困難であった。
また、真空浸炭処理を行う前の鋼材に対して、エッジ部の面取り加工を行う場合、面取り加工を行う必要があるため、生産性が低下する。特に、エッジ部は、非常に面取り加工が困難な部位であるため、生産性が大きく低下する。
このため、浸炭部品の特性を劣化させたり、生産性を低下させたりすることなく、エッジ部の過剰浸炭に伴う浸炭部品の曲げ疲労強度の劣化を抑制することが要求されていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、浸炭処理の施された鋼材からなり、エッジ部を含む形状を有する曲げ疲労強度に優れた浸炭部品を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために、真空浸炭処理される鋼材中のCr含有量と、浸炭部品の表層における炭素濃度および焼入れ性に着目し、鋭意検討した。
その結果、鋼材中のCr含有量を0.29%以下として、真空浸炭処理に伴うエッジ部でのセメンタイトの析出を抑制するとともに、Mn含有量を1.40%以上として、焼入れ性を確保すればよいことが分かった。そして、このような組成を有する鋼材を真空浸炭処理することで、エッジ部の過剰浸炭に起因する曲げ疲労強度の劣化を抑制しつつ浸炭部品の表層における炭素濃度を十分に高くすることができ、しかも芯部硬度を確保できることを確認し、本発明を想到した。
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 芯部が、質量%で、
C:0.10〜0.30%、
Si:0.16〜1.40%、
Mn:1.40〜3.00%、
P:0.030%以下、
S:0.060%以下、
Cr:0.01〜0.29%、
Al:0.010〜0.300%
およびN:0.003〜0.030%を含有し、
残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
表面が平坦部とエッジ部とを有し、
前記平坦部の表面から深さ0.05mmの位置までの平坦部表層領域の炭素濃度が0.76%以上0.89%以下であり、
前記エッジ部の表面から深さ0.05mmの位置までのエッジ部表層領域の炭素濃度が1.20%以下であり、
粒界酸化層深さが1μm以下であり、前記芯部のビッカース硬さが260以上であることを特徴とする浸炭部品。
[2] 前記芯部が、質量%で、
Nb:0.10%以下、
Ti:0.100%以下、
B:0.0030%以下
からなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする[1]に記載の浸炭部品。
[3] 前記芯部が、質量%で、
Mo:0.20%以下、
Cu:0.5%以下、
Ni:0.50%以下
からなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の浸炭部品。
本発明の浸炭部品においては、芯部のCr含有量が0.29%以下であるため、真空浸炭処理に伴うセメンタイトの析出が抑制されたものとなる。したがって、本発明の浸炭部品は、平坦部の表層領域における炭素濃度が十分に高く、しかもエッジ部の過剰浸炭に起因する曲げ疲労強度の劣化が抑制されたものとなる。
さらに、本発明の浸炭部品では、芯部のMn含有量が1.40%以上であるため、Cr含有量が0.29%以下であっても、焼入れ性が確保される。このため、本発明によれば、高い芯部硬度を有し、かつ曲げ疲労強度に優れた浸炭部品を提供できる。
本発明の浸炭部品の一例を示した斜視図である。 図1に示す浸炭部品の一部を示した断面図であり、図1に示す断面CSを示した模式図である。 エッジ部の断面における炭素濃度の測定位置を説明するための説明図である。 4点曲げ疲労試験片におけるエッジ部表層領域の炭素濃度と、4点曲げ疲労強度との関係を示したグラフである。
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明者は、真空浸炭処理を実施して製造された浸炭部品の曲げ疲労強度について、調査および研究を行い、以下の知見を得た。
真空浸炭処理を実施された浸炭部品が、表面に頂点部とエッジ部と平坦部とを含む場合、エッジ部に過剰浸炭が発生しやすい。頂点部は鋼の体積に対する表面積が大きいため、炭素が多く入りやすく、深さ方向に拡散しにくい。そのため、過剰浸炭が起こりやすい。しかし、実際に使用される際に大きな負荷がかからない部分であるため、過剰浸炭の度合いを評価する必要がない。そのため、本発明で過剰浸炭を抑制する対象は頂点部ではなくエッジ部である。本実施形態の浸炭部品の表面における頂点部、エッジ部と平坦部は、以下に図示を併用して説明する。
図1は、本発明の浸炭部品の一例を示した斜視図である。図1に示す浸炭部品100は、表面に頂点部とエッジ部と平坦部とを有する4点曲げ試験片である。
図1に示す浸炭部品100は、全体が四角柱状であり、長さ方向略中央に切り欠き部分が形成されている。
まず、図1に示す浸炭部品100の表面のうち、頂点部について説明する。部品表面上における任意の位置に存在する点をPaと定義する。点Paを中心とする半径1.0mmの仮想球を想定し、仮想球と浸炭部品とが重なる部分の体積をV、浸炭部品の表面のうち仮想球に含まれる部分の面積をSとする。そしてV/Sで表わされるパラメーターが0.223以下である部分を頂点と定義する。図1に示すPaにおいて、V/Sは0.222であり頂点部である。
次に、切り欠き部分の辺2の表面部分(縁表面部分)に注目する。縁表面部分において、辺2上における任意の位置に存在する点を、点Pcと定義する。そして、図1に示すように、点Pcにおける辺2と垂直な断面CSを想定する。
図2は、図1に示す断面CSの模式図である。図2に示すように、断面CSにおいて、浸炭部品の表面の任意の点XPから、表面から垂直方向に1.0mmの深さの仮想点Pを想定する。仮想点Pの集合体を図2の点線矩形にて示す。仮想点Pを中心とする半径1.0mmの仮想球を想定し、当該仮想球が浸炭部品の表面と接する(交わりが1点)場合、仮想点PはP1とし、P1を中心とする仮想球と浸炭部品の表面との接点をXP1とする。点XP1で定義される部分を平坦部とする(図1において符号3で示す部分、図2における「平坦部」)。
以上の通り、点P1ならびに点P1と対になる点XP1を定義し、点XP1により平坦部を定義した。そして、当該平坦部と頂点部以外の部分、すなわち前記点XP1と点Pa以外の浸炭部品の表面の点XP2をエッジ部と定義した(例えば、図1において符号2で示される辺、図2における「エッジ部」)。
また、本実施形態における浸炭部品の「芯部」とは、浸炭処理の施される鋼材の化学成分であるCやNの濃度が、鋼材の浸炭処理によって変動(増加)しない、浸炭部品の表層よりも深い部分を指す。具体的には、浸炭部品の表面からの最短深さ(表面から垂直方向の深さ)が2.0mm以上である浸炭部品の内部を芯部と定義する。
本発明者らは、浸炭部品のエッジ部における過剰浸炭に起因する曲げ疲労強度の劣化を抑制するために検討を重ねた。その結果、鋼材中のCr含有量を0.29%以下とすることで、真空浸炭処理に伴うセメンタイトの析出を抑制できるという知見を得た。
さらに、本発明者らは、鋼材中のMn含有量を1.4%以上とすることで、Cr含有量が0.29%以下であっても、焼入れ性を高めることが出来るという知見を得た。
また、本発明者らは、浸炭部品の曲げ疲労強度を高めるためには、平坦部の表面から深さ0.05mmの位置までの平坦部表層領域の炭素濃度が0.70%以上0.89%以下であり、エッジ部の表面から深さ0.05mmの位置までのエッジ部表層領域の炭素濃度が1.20%未満であればよいという知見を得た。
以下、以上の知見に基づいて完成された本実施形態の浸炭部品について詳述する。
本実施形態の浸炭部品は、頂点部と平坦部とエッジ部とを有する鋼材に、真空浸炭処理を施したものである。
「鋼材(芯部)の化学組成」
本実施形態の浸炭部品の芯部は、次の化学組成を有する。芯部の化学組成は上記した真空浸炭処理する前の鋼材の化学組成と同じものである。なお、元素の含有量の「%」は「重量%」を意味する。
(C:0.10〜0.30%)
炭素(C)は、浸炭部品の芯部硬度を高める。C含有量が低すぎると、上記効果が得られない。一方、C含有量が高すぎると、芯部硬度が高くなりすぎ、靭性が低下するため、曲げ疲労強度が低下する。したがって、Cの含有量を0.10〜0.30%とする。C含有量の好ましい下限は0.13%であり、さらに好ましくは0.16%である。C含有量の好ましい上限は0.23%であり、さらに好ましくは0.22%である。
(Si:0.16〜1.40%)
Siは、鋼材の焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高め、曲げ疲労強度及び面疲労強度を高める。しかし、Si含有量が低すぎると、上記効果が得られない。一方、Si含有量が高すぎると、芯部に軟質なフェライト相が生成し、疲労強度を低下させる。したがって、Siの含有量を0.16〜1.40%とした。また、Si含有量は、より好ましくは0.20〜1.10%であり、さらに好ましくは0.20〜0.50%である。
(Mn:1.40〜3.00%)
Mnは、焼入れ性を高める効果があり、曲げ疲労強度を高めるのに有効な元素である。しかし、Mn含有量が1.40%未満では、前記の効果が十分に得られない。一方、Mnの含有量が3.00%を超えて含有させても、効果が飽和するばかりか、熱間圧延や熱間鍛造後の強度が高くなりすぎて、切削加工性が大きく低下する。したがって、Mnの含有量を1.40〜3.00%とした。また、Mn含有量は、より好ましくは1.70〜2.5%である。
(P:0.030%以下)
Pは、粒界偏析して粒界を脆化させやすい元素である。このため、P含有量が0.030%を超えると、曲げ疲労強度や面疲労強度を低下させる。したがって、P含有量は0.030%以下とする。P含有量の好ましい上限は0.020%である。なお、Pは鋼材中に不可避的に含有されるもので、P含有量を低くしようとすると、製造コストが高くなる。そのため、好ましい下限は0.003%である。さらに好ましい下限は0.006%である。
(S:0.060%以下)
Sは、不純物として含有される元素である。また、Sは、積極的に含有させると、被削性を高める作用を有する。S含有量が多くなりすぎて、0.060%を超えると、曲げ疲労強度が低下する。したがって、Sの含有量を0.060%以下とする。S含有量のさらに好ましい上限は0.030%である。しかし、Sを0.003%未満に低減すると、製造コストが上昇する。そのため、好ましい下限は0.003%である。
(Cr:0.01〜0.29%)
Crは、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗を高める効果があるため、曲げ疲労強度や面疲労強度を高めるのに有効な元素である。しかし、Crの含有量が0.29%を超えると、エッジ部の過剰浸炭により曲げ疲労強度が低下する。したがって、Crの含有量を0.29%以下とした。Cr含有量は、より好ましくは0.15%以下である。なお、Cr含有量を低くしようとすると、製造コストが高くなる。そのため、Cr含有量の下限は0.01%であり、好ましい下限は0.05%である。
(Al:0.010〜0.300%)
Alは、脱酸作用を有し、焼入れ性と焼戻し軟化抵抗を高める効果を有する。しかし、Al含有量が0.010%未満ではこれらの効果は得られ難い。一方、Alは、硬質な酸化物系介在物を形成しやすく、Al含有量が0.300%を越えると、曲げ疲労強度が低下する。したがって、Alの含有量を0.010〜0.300%とした。Al含有量は、より好ましくは0.015〜0.100%、さらにより好ましくは0.015〜0.050である。
(N:0.003〜0.030%)
窒素(N)は、Alと結合してAlNを形成し、結晶粒を微細化し、曲げ疲労強度の低下を抑制する。しかしながら、N含有量を0.030%超えて含有させても、効果が飽和する。したがって、N含有量は0.003%以上、0.030%以下とする。N含有量の好ましい上限は0.020%であり、より好ましくは0.018%である。なお、N含有量を低減する理由は無く、また製鋼プロセスの都合上、0.003%未満に低減するのは困難である。そのため、N含有量の下限は0.003%とする。N含有量の下限は、より好ましくは0.007%、さらにより好ましくは0.011%である。
本実施形態の浸炭部品の芯部の化学組成の残部はFe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、浸炭部品の浸炭前の鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるものを意味する。
本実施形態における鋼材は、さらに、Feの一部に替えて、Nb、Ti、Bからなる群から選ばれる1種以上を含有してもよい。Nb、Ti、Bは任意に含有される元素である。
(Nb:0〜0.10%以下)
Nbは、鋼中のNおよび/またはCと結びついて、微細な炭化物、窒化物、又は炭窒化物を生成し、真空浸炭処理(表面硬化熱処理)での結晶粒成長を抑制する効果がある。Nbが少しでも含まれていれば、上記効果がある程度得られる。一方、0.10%を超えてNbを含有させた場合には、粗粒化抑制効果は飽和する。したがって、Nb含有量の上限を0.10%とする。Nb含有量の上限は、好ましくは0.08%、さらにより好ましくは0.04とする。
(Ti:0〜0.100%以下)
Tiは、鋼中のNおよび/またはCと結びついて、微細な炭化物、窒化物、又は炭窒化物を生成し、真空浸炭処理(表面硬化熱処理)での結晶粒成長を抑制する効果がある。さらに、Tiは、焼入性向上などのためにBを添加した場合に、Bの添加効果を阻害するBNの生成を抑制するのにも有用である。Tiが少しでも含まれていれば、上記効果がある程度得られる。一方、Ti含有量が過剰になると、粗大な窒化物や酸化物を生成し、鋼材の靭性を低下させる。したがって、Ti含有量は、0.100%以下とし、好ましくは0.050%以下とする。
(B:0.0030%以下)
Bは、焼入れ性を与え、粒界強度を強化するのに有効な元素である。しかし、B含有量が0.0006%未満では、その効果は不十分である。したがって、B含有量は0.0006%以上であることが好ましく、0.0010%以上であることがより好ましい。一方、B含有量が0.0030%を超えるとその効果は飽和する。したがって、B含有量は0.0030%以下とし、0.0020%以下であることが好ましい。
本実施形態における鋼材は、さらに、Feの一部に替えて、Mo、Cu及びNiからなる群から選択される1種以上を含有してもよい。これらの元素は任意に含有される元素である。これらの元素はいずれも、靱性を高める。
(Mo:0〜0.20%以下)
Moは、鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の曲げ疲労強度を高める。Moが少しでも含まれていれば、上記効果がある程度得られる。一方、0.20%を超えてMoを含有させても、効果が飽和するばかりかコストが増加する。したがって、Mo含有量は0.20%以下とする。Mo含有量は、0.20%未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.16%以下である。また、Moは、他の元素によって必要な焼き入れ性を確保できるのであれば添加しないことが好ましく、その場合のMo含有量は、積極的に添加しない場合の条件である0.01%以下とするのが好ましい。
(Cu:0〜0.5%)
Cuは、鋼材の過剰浸炭を抑制し、さらに、鋼材の靱性を高め曲げ疲労強度を高める。Cuが少しでも含有されていれば、上記効果がある程度得られる。一方、0.5%を超えてCuを含有させても、効果が飽和する。したがって、Cu含有量は0〜0.5%である。Cu含有量が0.1%以上であると、上記効果が顕著に得られる。Cu含有量は、0.5%未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.3%以下である。
(Ni:0〜0.50%)
Niは、鋼材の過剰浸炭を抑制し、さらに鋼材の靱性を高め、曲げ疲労強度を高める。Niが少しでも含有されていれば、上記効果がある程度得られる。一方、0.50%を超えてNiを含有させても、効果が飽和するばかりか、鋼材の製造コストが上昇する。したがって、Ni含有量は、0〜0.50%とする。Ni含有量が0.10%以上であると、上記効果が顕著に得られる。Ni含有量は0.50%未満であることが好ましく、さらに好ましくは0.20%以下である。
「浸炭部品の表面の炭素濃度」
本実施形態の浸炭部品は、平坦部の表面から深さ0.05mmの位置までの平坦部表層領域の炭素濃度(以下、「CP1」という場合がある。)が0.70%以上0.89%以下である。また、エッジ部の表面から深さ0.05mmの位置までのエッジ部表層領域の炭素濃度(以下、「CP2」という場合がある。)が、CP1を超え1.20%以下である。
なお、平坦部表層領域およびエッジ部表層領域を表面から深さ0.05mmの位置までとしたのは、表層の浸炭の度合いを高精度で評価するためである。より詳細には、浸炭することにより生成される粗大な炭化物は、旧オーステナイト粒界に析出する。したがって、表層の結晶粒内と結晶粒界とでは炭素濃度が異なる。表面から深さ0.05mmの位置までの深さであれば、通常0.01mm程度の粒径であるオーステナイト結晶粒が深さ方向に確実に3つ以上含まれる。このため、結晶粒内と結晶粒界との炭素濃度差が平均され、表層の浸炭の度合いを高精度で評価できる。
平坦部表層領域およびエッジ部表層領域の炭素濃度は、それぞれ次の方法により測定できる。
平坦部表層領域の炭素濃度は、平坦部の断面の炭素濃度をEPMA(電子線マイク口アナライザ)により分析し、表面から深さ0.05mmの位置までの炭素濃度の平均値を算出することにより得られる。
また、エッジ部表層領域の炭素濃度は、エッジ部の断面における以下に示す測定位置の炭素濃度を、EPMA(電子線マイク口アナライザ)により分析し、その炭素濃度の平均値を算出したものとする。
図3は、エッジ部の断面における炭素濃度の測定位置を説明するための説明図である。図3は、図1および図2に示す断面CSのコーナの点Pc周辺のみを拡大して示した拡大図である。本実施形態では、図3に示すように、エッジを形成する2つの面11、12から5μm離れた箇所を起点P2とし、表面の辺(図3では点Pc)とは逆の方向に2つの面11、12から等距離で離間して伸びる長さ50μmの直線上を測定位置とする。
なお、本実施形態において、起点P2を2つの面11、12から5μm離れた箇所としたのは、起点P2よりも2つの面11、12に近い領域の炭素濃度は、表面に析出した黒鉛や、表面の汚れの影響を受けるためである。
平坦部表層領域の炭素濃度CP1は、平坦部の表面硬度を高くするために0.70%以上必要である。浸炭処理の施された浸炭部品では、エッジ部表層領域の炭素濃度CP2は、平坦部表層領域の炭素濃度CP1よりも高くなる。このため、平坦部表層領域の炭素濃度CP1が0.70%以上であると、平坦部表層領域だけでなくエッジ部表層領域も十分に表面硬度が高いものとなる。
一方、平坦部表層領域の炭素濃度CP1が0.89%を超えると、エッジ部表層領域の炭素濃度CP2が1.20%を超える。エッジ部表層領域の炭素濃度CP2が1.20%超であると、粗大セメンタイトが析出し、曲げ疲労強度が低下する。
このため、平坦部表層領域の炭素濃度を0.70%以上0.89%以下とし、エッジ部表層領域の炭素濃度を1.20%以下とする。平坦部表層領域の炭素濃度は、好ましくは0.75%以上である。平坦部表層領域の炭素濃度は、好ましくは0.85%以下である。また、エッジ部表層領域の炭素濃度は、1.10%以下であることが好ましい。
平坦部表層領域およびエッジ部表層領域の炭素濃度は、真空浸炭処理(および真空浸炭処理後に行う焼入れ処理)における条件を調整することにより制御できる。
(粒界酸化層深さ:1μm以下)
本実施形態の浸炭部品は、真空浸炭処理の施されたものであるため、浸炭処理によって形成される粒界酸化層が少ない。粒界酸化層は、不完全焼入れ組織を少なくするために、少ない程望ましい。不完全焼入れ組織は、浸炭部品の疲労強度の低下を招くものであり、不完全焼入れ組織が多くなるにつれて、疲労強度の低下の程度が大きくなる。したがって、浸炭部品の粒界酸化層深さの上限を1μmとする。
本実施形態において、浸炭部品の粒界酸化層深さとは、浸炭部品の表面から内部に向かって連続して伸びる黒色の酸化物が到達している表面からの最大深さを意味する。また、浸炭部品の粒界酸化層深さが1μm以下とは、浸炭部品の表面のどこであっても、粒界酸化層深さが1μm以下であることを意味する。
(芯部硬度:ビッカース硬さ(HV)260以上)
本実施形態の浸炭部品の芯部は、曲げ強度を高くするために、ビッカース硬さ(HV)が260以上である必要がある。芯部硬度が低いと、曲げ荷重が負荷された際に塑性変形し、表面における応力が増大し、部品として曲げ強度が低くなる。したがって、芯部硬度の下限をHV260とし、HV280以上とすることが好ましい。本実施形態において芯部とは、表面から深さ方向に2mm以上離れた部位を意味する。
「製造方法」
次に、本実施形態の浸炭部品の製造方法について例を挙げて説明する。
まず、上述の化学組成を満たす鋼材を製造する。
本実施形態では、例えば、上記化学組成の溶鋼を製造し、連続鋳造法により鋳片(スラブまたはブルーム)を製造する。鋳片に代えて、上記化学組成の溶鋼を用いて造塊法によりインゴット(鋼塊)を製造してもよい。
次に、鋳片またはインゴッ卜を熱間加工して、ビレット(鋼片)を製造する。その後、ビレットを熱間加工して、棒鋼または線材とする。熱間加工は、熱間圧延であってもよいし、熱間鍛造であってもよい。
次に、製造した棒鋼または線材に対して、冷間鍛造および/または機械加工を行って、頂点部と平坦部とエッジ部とを有する所定の形状の鋼材とする。
機械加工としては、例えば、切削加工、穿孔加工などが挙げられる。鋼材における頂点部と平坦部とエッジ部とを有する形状は、浸炭部品の用途に応じて決定されるものであり、公知の方法により形成できる。
次に、本実施形態では、頂点部と平坦部とエッジ部とを有する鋼材に対して、真空浸炭処理および焼入れ処理を実施する。
本実施形態では、真空浸炭処理および焼入れ処理における各条件(均熱時間、浸炭ガスの種類、浸炭ガス圧、浸炭温度、浸炭工程での処理時間、拡散工程での処理時間、冷却工程での冷却速度、焼入れ温度など)は、特に限定されるものではなく、鋼材の化学組成と、目標とする平坦部表層領域およびエッジ部表層領域の浸炭濃度と、芯部硬度に応じて適宜決定される。
具体的には、シミュレーションを用いて真空浸炭処理および/または焼入れ処理における上記の各条件を決定してもよいし、真空浸炭処理試験および/または焼入れ処理試験を実施して、平坦部表層領域およびエッジ部表層領域の浸炭濃度が所定の炭素濃度となり、粒界酸化層深さが1μm以下、芯部のビッカース硬さ(HV)が260以上となるように、上記の各条件を決定してもよい。
以下、本実施形態における真空浸炭処理および焼入れ処理について、例を挙げて具体的に説明する。
真空浸炭処理では、はじめに、例えば10Pa以下に減圧した炉内で鋼材を浸炭温度まで加熱する加熱工程を行う。次に、浸炭温度で鋼材を均熱する均熱工程を行う。続いて、炉内に浸炭ガスを導入し、所定の浸炭ガス圧および浸炭温度で鋼材を浸炭処理する浸炭工程を行う。その後、浸炭温度を維持した状態で鋼材に侵入した炭素を鋼材中に拡散させる拡散工程と、鋼材を冷却する冷却工程とをこの順で行う。
均熱工程における均熱時間は、5〜120分の範囲であることが好ましく、30〜60分の範囲であることがより好ましい。均熱工程における炉内の圧力は、100Pa以下であってもよいし、窒素ガスの導入と真空ポンプによる真空排気を同時に行なって、1000Pa以下の窒素雰囲気としてもよい。
浸炭工程において用いられる浸炭ガスの種類は、真空浸炭処理に用いられている公知のものを用いることができ、例えば、アセチレン、プロパン、エチレンなどの炭化水素ガスを用いることができる。
浸炭工程における浸炭ガス圧は、ガスの種類によってスーティングのし易さと浸炭むらの起こり易さとが異なるため、浸炭ガスの種類に応じて所定の範囲とすることが好ましい。例えば、浸炭ガスがアセチレンである場合、浸炭ガス圧は10〜1000Paであることが好ましい。浸炭ガスがプロパンである場合、浸炭ガス圧は200〜3000Paであることが好ましい。
浸炭温度は、900〜1100℃の範囲であることが好ましく、920〜1050℃の範囲であることがより好ましい。浸炭温度が900℃以上であると、短時間で所定の炭素濃度の浸炭部品が得られる。また、浸炭温度が1100℃以下であると、結晶粒が粗大化しにくいため好ましい。
浸炭工程および拡散工程における処理時間は、鋼材の化学組成と、目標とする平坦部表層領域およびエッジ部表層領域の浸炭濃度と、芯部硬度に応じて適宜決定される。
拡散工程における炉内の圧力は、浸炭工程における残留ガスを取り除くため、100Pa以下であってもよいし、窒素ガスの導入と真空ポンプによる真空排気を同時に行なって、1000Pa以下の窒素雰囲気としてもよい。
冷却工程における冷却方法としては、公知の方法を用いることができ、真空下での放冷であってもよいし、ガス冷却であってもよいし、その他の方法であってもよい。冷却工程において真空下での放冷を用いる場合、100Pa以下の圧力で放冷することが好ましい。冷却工程においてガス冷却を用いる場合、冷却ガスとして不活性ガスを用いることが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素ガスおよび/またはヘリウムガスを用いることが好ましく、特に、安価で入手が容易な窒素ガスを用いることが好ましい。冷却ガスとして不活性ガスを用いることで、鋼材の酸化を防ぐことができる。
次に、真空浸炭処理された鋼材に焼入れ処理を実施する。
本実施形態では、焼入れ処理における加熱および保持として、例えば、真空浸炭処理の冷却工程において焼入れ温度で冷却を停止し、所定の時間均熱する方法を用いてもよいし、真空浸炭処理の冷却工程において焼入れ温度以下(例えば、室温(25℃)程度)の温度まで冷却し、その後、焼入れ温度まで再加熱して所定の時間均熱する方法を用いてもよい。
焼入れ温度は、800〜880℃の範囲であることが好ましく、820〜860℃の範囲であることがより好ましい。
焼入れ処理における保持時間は、10〜80分であることが好ましい。
均熱(保持)する際の雰囲気は、窒素ガス雰囲気であってもよい。ガス圧は、大気圧以下であることが好ましく、400hPa以下であることがさらに好ましい。
焼入れ処理での冷却方法としては、油冷、水冷など公知の方法を用いることができる。冷却方法として油冷を用いる場合、焼入れ油の温度は60〜160℃の範囲とすることが好ましい。
本実施形態では、必要に応じて焼入れ処理後に焼戻し処理を実施してもよい。
焼戻し処理を行う場合、焼戻し温度は、150〜200℃の範囲であることが好ましく、160〜190℃の範囲であることがより好ましい。
以上の工程により、本実施形態による浸炭部品が製造される。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼A〜鋼ABを有する溶鋼を製造し、製造した溶鋼を用いて、インゴッ卜を製造した。次に、インゴッ卜を熱間鍛造して棒鋼とした。次に、製造した棒鋼に対して、冷間鍛造および機械加工を行って、断面が一辺13mmの正方形である角棒を製造した。
Figure 0006720643
「4点曲げ疲労試験片の作製」
このようにして製造した鋼A〜鋼ABの各化学組成を有する角棒から、頂点部と平坦部とエッジ部とを有する形状の鋼材として、図1に示す形状の4点曲げ疲労試験片を複数個採取した。4点曲げ疲労試験片は、高さ及び幅を共に13mmとし、長さを100mmとした。4点曲げ疲労試験片の長さ方向中央には、断面形状が半円である切り欠きを形成した。半円の切り欠きにおける半径は2mmとした。
その後、鋼A〜鋼ABの各化学組成を有する4点曲げ疲労試験片に対して、真空浸炭処理および焼入れ処理を行ない、参考例1、3、14、15、20、実施例2、4〜13、16〜19、比較例1〜16の浸炭部品を得た。
参考例1、3、14、15、20、実施例2、4〜13、16〜19、比較例1〜14については、4点曲げ疲労試験片に対して、10Pa以下に減圧した炉内で鋼材を950℃の浸炭温度まで加熱し、浸炭温度で60分間鋼材を均熱した。続いて、炉内にアセチレンガスを導入し、950℃の浸炭温度、表2に示す処理時間で鋼材を浸炭処理する浸炭工程を行った。浸炭工程における浸炭ガス圧は100Pa以下とした。
次に、浸炭温度を維持した状態で10Pa以下の炉内の圧力、表2に示す処理時間で、鋼材に侵入した炭素を鋼材中に拡散させる拡散工程を行った。
その後、鋼材を冷却し、焼入れ温度である860℃で冷却を停止し、30分間均熱した後、120℃の焼入れ油を用いて油焼入れを行った。その後、焼戻し温度を170℃、焼戻し温度での保持時間を2時間とする焼戻しを実施した。
比較例15については、4点曲げ疲労試験片に対して、参考例1と同様にして860℃で冷却を停止し、30分間均熱するまでの工程を行った。その後、窒素雰囲気でガス冷却し、室温まで冷却した(真空浸炭処理)。その後、真空浸炭処理を施した4点曲げ疲労試験片に対して、焼入れ温度1000℃、保持時間10秒の高周波加熱焼入れを実施し、焼戻し温度を170℃、焼戻し温度での保持時間を2時間とする焼戻しを実施した。
比較例16については、4点曲げ疲労試験片に対して、吸熱型変成ガス(RXガス(Nを40%、COを20%、Hを40%含む混合ガス))中で950℃の浸炭温度に加熱し、カーボンポテンシャル(平衡炭素濃度)1.0%で3時間浸炭処理する浸炭工程を行った。次に、浸炭温度を維持した状態で、カーボンポテンシャル0.9%で2時間拡散させる拡散工程を行った。その後、鋼材を860℃まで炉冷し、10分間均熱した。その後、120℃の焼入れ油を用いて油焼入れを行った。その後、焼戻し温度を170℃、焼戻し温度での保持時間を2時間とする焼戻しを実施した。
Figure 0006720643
「浸炭部品の表面の炭素濃度の測定」
参考例1、3、14、15、20、実施例2、4〜13、16〜19、比較例1〜16の浸炭部品(4点曲げ疲労試験片)の平坦部表層領域およびエッジ部表層領域における炭素濃度を、上述したEPMA(電子線マイク口アナラ
イザ)を用いる方法により算出した。その結果を表2に示す。
「4点曲げ疲労試験」
参考例1、3、14、15、20、実施例2、4〜13、16〜19、比較例1〜16の浸炭部品(4点曲げ疲労試験片)のうち、浸炭部品の表面の炭素濃度の測定に用いられなかった他の4点曲げ疲労試験片を用いて、4点曲げ疲労試験を実施した。試験には、サーボ型疲労試験機を用いた。4点曲げ疲労試験片の支点間の距離は30mmとした。また、最大負荷応力は1373MPaであり、最大負荷応力と最小負荷応力との応力比は0.1であった。周波数は10Hzであった。そして、応力負荷繰り返し回数が1×104回での破断強度を、4点曲げ疲労強度(MPa)と評価した。その結果を表2に示す。このうち、1000MPa以上のものを曲げ疲労強度が良好であると評価した。
参考例1、3、14、15、20、実施例2、4〜13、16〜19、比較例10〜12の4点曲げ疲労試験片におけるエッジ部表層領域の炭素濃度と、4点曲げ疲労強度との関係を図4に示す。図4に示すグラフから、エッジ部表層領域の炭素濃度が1.20%を超えると、4点曲げ疲労強度が低くなることが明らかとなった。
「芯部硬度」
参考例1、3、14、15、20、実施例2、4〜13、16〜19、比較例1〜16の浸炭部品(4点曲げ疲労試験片)を長さ方向に直交する方向に切断し、切断面を測定面とする試験片を採取した。そして、浸炭部品の表面から深さ方向(断面の中心方向)に2mm以上離れた位置における切断面の硬さを、ビッカース硬度計を用いて、測定荷重を300gfとし、JIS Z 2244(2009)に準拠して測定した。その結果を表2に示す。
「粒界酸化層深さ」
参考例1、3、14、15、20、実施例2、4〜13、16〜19、比較例1〜16の浸炭部品(4点曲げ疲労試験片)を、任意の表面に対しほぼ垂直となるように切断し、切断面を鏡面研磨して1000倍に設定した光学顕微鏡で観察した。そして、表面から内部に向かって連続して筋状に伸びる黒色の酸化物を観察し、筋状の黒色の酸化物の到達している表面からの最大深さを粒界酸化層深さとして測定した。
その結果、参考例1、3、14、15、20、実施例2、4〜13、16〜19、比較例1〜15の浸炭部品のいずれにおいても、筋状の黒色の酸化物が観察されず、粒界酸化層深さは0μmであった。比較例16の浸炭部品では、筋状の黒色の酸化物が観察され、粒界酸化深さは11μmであった。
表2に示すように、参考例1、3、14、15、20、実施例2、4〜13、16〜19では、平坦部表層領域の炭素濃度が0.70%以上0.89%以下であり、エッジ部表層領域の炭素濃度が1.20%以下であり、粒界酸化層深さが1μm以下であり、芯部硬度がHV260以上であり、比較例1〜16と比較して、曲げ疲労強度が優れていた。
これに対し、比較例1〜9は、鋼材の成分が規定の範囲から外れているため、曲げ疲労強度が低かった。
具体的には、比較例1は、鋼材中のC含有量が少なすぎたため、曲げ疲労強度が低くなった。また、比較例2は、鋼材中のC含有量が多すぎたため、曲げ疲労強度が低くなった。
比較例3は、鋼材中のSi含有量が多いため、曲げ疲労強度が低くなった。また、比較例4は、鋼材中のSi含有量が少なすぎたため、エッジ部表層領域の炭素濃度が高くなり、曲げ強度が低くなった。
比較例5は、鋼材中のP含有量が多すぎたため、曲げ疲労強度が低くなった。
また、比較例6は、鋼材中のCr含有量が多すぎたため、過剰浸炭が発生してエッジ部表層領域の炭素濃度が高くなり、曲げ疲労強度が低くなった。
また、比較例7は、鋼材中のN含有量が少ないため、結晶粒が粗大化し、曲げ疲労強度が低くなった。
また、比較例8は、鋼材中のMn含有量が少なく、Cr含有量が多過ぎたため、エッジ部表層領域の炭素濃度が高くなり、曲げ疲労強度が低くなった。
また、比較例9は、鋼材中のMn含有量が少ないため、焼き入れ性が不足して芯部硬度が不足し、曲げ疲労強度が低くなった。
比較例10〜13は、エッジ部表層領域の炭素濃度が高すぎたため、曲げ疲労強度が低かった。
また、比較例14は、平坦部表層領域の炭素濃度が低過ぎたため、曲げ疲労強度が低かった。
比較例15は、芯部硬度が低すぎたため、曲げ疲労強度が低かった。
比較例16は、粒界酸化深さが大きすぎたため、曲げ疲労強度が低かった。
100 浸炭部品
2 辺
3 平坦部
11、12 面
CS 断面

Claims (3)

  1. 芯部が、質量%で、
    C:0.10〜0.30%、
    Si:0.16〜1.40%、
    Mn:1.40〜3.00%、
    P:0.030%以下、
    S:0.060%以下、
    Cr:0.01〜0.29%、
    Al:0.010〜0.300%
    およびN:0.003〜0.030%を含有し、
    残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
    表面が平坦部とエッジ部とを有し、
    前記平坦部の表面から深さ0.05mmの位置までの平坦部表層領域の炭素濃度が0.76%以上0.89%以下であり、
    前記エッジ部の表面から深さ0.05mmの位置までのエッジ部表層領域の炭素濃度が1.20%以下であり、
    粒界酸化層深さが1μm以下であり、前記芯部のビッカース硬さが260以上であることを特徴とする浸炭部品。
  2. 前記芯部が、質量%で、
    Nb:0.10%以下、
    Ti:0.100%以下、
    B:0.0030%以下
    からなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の浸炭部品。
  3. 前記芯部が、質量%で、
    Mo:0.20%以下、
    Cu:0.5%以下、
    Ni:0.50%以下
    からなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浸炭部品。
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