JP5683348B2 - 浸炭部材、浸炭部材用鋼および浸炭部材の製造方法 - Google Patents

浸炭部材、浸炭部材用鋼および浸炭部材の製造方法 Download PDF

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本発明は、浸炭部材、浸炭部材用鋼および浸炭部材の製造方法に関する。
鋼材は、使用目的によって、表面だけを硬質で耐摩耗性のある状態にする一方、中心部分を柔軟性と靱性に富む状態にして用いられることがある。このような鋼材の用途としては、例えば、ベルト式無段変速機(以下、「ベルト式CVT」という。)のプーリーを構成するCVTシーブなどがある。この種のCVTシーブは、金属ベルトと常に摺動する摺動面を有しており、その摺動面には高い耐摩耗性が要求される。
従来、鋼材の表面硬化法としては、浸炭焼入れ処理が知られている。浸炭焼入れ処理は、加工性のよい低炭素鋼を機械加工等した後、表層の炭素量を増加させ、表層のみを焼入れ硬化させる処理である。これまで、上記CVTシーブ等の鋼部材に耐摩耗性を付与するため、浸炭焼入れ処理が施されてきた。
また他にも、耐摩耗性を向上させるため、上記浸炭焼入れ処理後、さらにショットピーニング処理を追加して表面硬さや残留応力を向上させる技術や、高濃度浸炭処理によって微細炭化物を分散させるという組織的な改善技術や、研磨方法を工夫して表面粗さを耐摩耗性に好適な状態に改善する技術なども提案されている(特許文献1〜4)。
特開平6−73523号公報 特開2000−176586号公報 特開2000−130527号公報 特開2009−68609号公報
しかしながら、従来技術は、以下の点で問題がある。すなわち、ショットピーニング等の追加処理はコストアップを伴う。そのため、この種の追加処理を施すことなく、浸炭部材の耐摩耗性向上を図りたいという要請がある。とりわけ、自動車用部品の一つであるCVTシーブは、コスト低減要求が厳しい。そのため、浸炭焼入れ処理のほかに特別な表面処理を追加せずに摺動面の耐摩耗性を改善する方法が求められている。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、大幅なコストアップを伴うことなく耐摩耗性を向上させることが可能な浸炭部材を提供しようとするものである。また、上記浸炭部材の半製品である浸炭部材用鋼を提供しようとするものである。また、上記浸炭部材の製造方法を提供しようとするものである。
第1の発明は、摺動面を有する浸炭部材であって、
化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜2.00%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.35〜3.00%、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0250%、および、Mo:0.01〜0.80%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物よりなり、
上記摺動面は、浸炭異常層がなく、表面炭素濃度が0.7〜0.9質量%の範囲内にあり、最表面からの深さ50μmまでにおける組織のトルースタイト面積率が1%以下であることを特徴とする浸炭部材にある。
第2の発明は、摺動面を有し、該摺動面は、浸炭異常層がなく、表面炭素濃度が0.7〜0.9質量%の範囲内にあり、最表面からの深さ50μmまでにおける組織のトルースタイト面積率が1%以下である浸炭部材を製造するために用いられる浸炭部材用鋼であって、
化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜2.00%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.35〜3.00%、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0250%、および、Mo:0.01〜0.80%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物よりなることを特徴とする浸炭部材用鋼にある。
第3の発明は、鋼部材に炭素を侵入させる浸炭期と上記鋼部材に侵入した炭素を拡散させる拡散期とを備えた浸炭処理工程と、該浸炭処理工程を経た鋼部材を焼入れする焼入工程とを有する浸炭部材の製造方法であって、
上記鋼部材は、化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜2.00%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.35〜3.00%、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0250%、および、Mo:0.01〜0.80%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物よりなり、
上記浸炭期におけるカーボンポテンシャルは1.3%以上とされることを特徴とする浸炭部材の製造方法にある。
第1の発明の浸炭部材は、上記特定の化学成分を有し、上記摺動面は、浸炭異常層がなく、表面炭素濃度が0.7〜0.9質量%の範囲内にあり、最表面からの深さ50μmまでにおける組織のトルースタイト面積率が1%以下である。そのため、大幅なコストアップを伴うショットピーニング等の追加処理を施さなくても、摺動面の耐摩耗性に優れる。
第2の発明の浸炭部材用鋼は、上記浸炭部材を製造するために用いられる鋼であって、上記特定の化学成分を有する。また、第3の発明の浸炭部材の製造方法は、上記特定の化学成分を有する鋼から構成される鋼部材に対して浸炭処理を行うにあたり、浸炭処理時の浸炭期におけるカーボンポテンシャルを1.3%以上とする。
Si、Cr含有量を増加させると、浸炭性が阻害されるため、このような鋼材は、浸炭部材用鋼としては不向きであった。しかし、Si含有量が0.50%以上、Cr含有量が1.35%以上と比較的高い含有量の場合であっても、浸炭処理時の浸炭期におけるカーボンポテンシャルを1.3%以上とすれば、浸炭性が確保されることにより浸炭部材の浸炭表層におけるトルースタイトの発生を抑制しつつ、耐摩耗性を向上させることができる。また、Si含有量を0.50〜2.00%と増加させたことによって熱による軟化抵抗が高まり、さらに、Cr含有量を1.35〜3.00%と増加させたことにより浸炭表層のトルースタイトの生成が抑制され、その分、耐摩耗性を向上させることができる。上記特定の化学成分を有する鋼を用いるとともに、浸炭処理時の浸炭期におけるカーボンポテンシャルを1.3%以上として浸炭部材の製造を行えば、大幅なコストアップを伴うことなく摺動面等の耐摩耗性が必要な部位の耐摩耗性を向上させることが可能になることは、本発明の完成によって初めて導き出されたものである。
このように、本発明によれば、大幅なコストアップを伴うことなく耐摩耗性を向上させることが可能な浸炭部材、これの半製品である浸炭部材用鋼、浸炭部材の製造方法を提供することができる。
ベルト式無段変速機(ベルト式CVT)の構成を示す説明図である。 実験例における摩耗試験の方法を示す説明図である。
上記浸炭部材、上記浸炭部材用鋼および上記浸炭部材の製造方法における化学成分は、上記のように、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜2.00%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.35〜3.00%、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0250%、および、Mo:0.01〜0.80%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物よりなる。以下に、各成分の限定理由につき説明する。なお、上記化学成分は、浸炭表層部分を除いた鋼内部における母材の化学成分である。
C:0.10〜0.30%
Cは、強度を確保するための基本元素であり、CVTシーブ等の浸炭部材において十分な内部硬さを確保するために、0.10%以上添加する。添加量が多くなりすぎると被削性、冷間鍛造性が低下するため、C含有量の上限を0.30%とする。
Si:0.50〜2.00%
Siは、熱による軟化抵抗性を高めるのに有効な元素であり、その特性を確保するために0.50%以上添加する。Si含有量が多くなりすぎると靱性や加工性が劣化してくるため、Si含有量の上限を2.00%とする。Si含有量の上限は、好ましくは、1.50%であるとよい。
Mn:0.30〜1.50%
Mnは、強度向上に有効な元素であり、CVTシーブ等の浸炭部材において十分な内部硬さを確保するために、0.30%以上添加する。Mnの添加量が多くなりすぎると被削性の低下や、残留オーステナイトの増加による硬さ低下が懸念されるため、Mn含有量の上限を1.50%とする。
P:0.035%以下
Pは、結晶粒界に偏析して疲労強度を低下させるため、P含有量の上限を0.035%とする。Pは製造上の不純物として不可避に含有される元素であるが、精錬により極力低減することが好ましい。
S:0.035%以下
Sは、被削性向上に有効であるが、特に積極添加する必要がない任意元素である。S含有量が多くなりすぎると疲労破壊起点となって強度低下を招く。そのため、S含有量の上限を0.035%とする。
Cr:1.35〜3.00%
Crは、強度向上に有効な元素であり、CVTシーブ等の浸炭部材において十分な内部硬さを確保するのに役立つ。また、上述の浸炭処理時の浸炭期におけるカーボンポテンシャルを1.3%以上とし、浸炭表層において十分な浸炭濃度を確保することにより、浸炭部材におけるトルースタイトの発生が抑制され、耐摩耗性の向上に有効である。そのため、Crを1.35%以上添加する。Crの添加量が多くなりすぎると硬さが高くなって加工性が低下するため、Cr含有量の上限を3.00%とする。Cr含有量の上限は、好ましくは、2.00%であるとよい。
Al:0.020〜0.060%
Alは、脱酸処理に必要なだけでなく、浸炭処理後の結晶粒の粗大化防止効果を得るために有効な元素であり、この効果を得るために0.020%以上添加する。Alの含有量が多くなりすぎるとその効果が飽和するとともに酸化物系介在物の増加によって疲労強度が低下するため、Al含有量の上限を0.060%とする。
N:0.0080〜0.0250%
Nは、製造上不可避に含有される元素であるが、Alと同様に、結晶粒の粗大化防止に有効であるため、この効果を得るために0.0080%以上含有するように調整して製造する。N含有量が多くなりすぎるとその効果が飽和するとともに窒化物が増加して疲労強度低下の原因となるため、N含有量の上限を0.0250%とする。
Mo:0.01〜0.80%
oは、強度、靱性を向上させるのに有効な元素ではあるが、高価であるため、上限を0.80%に抑える。Mo含有量の下限は、0.01%とする
次に、上記浸炭部材は、他の部材と摺動する摺動面を有している。この種の浸炭部材としては、例えば、CVTシーブ、アウター・インナーレース類、歯車などを例示することができる。上記浸炭部材は、好ましくは、CVTシーブであるとよい。より好ましくは、金属ベルトとの摺動面を有するCVTシーブであるとよい。CVTシーブは、低コスト化の要請が大きい上、摺動面に対して高い耐摩耗性が要求される部材である。そのため、この場合には、大幅なコストアップを伴うことなく摺動面の耐摩耗性を向上させることができ、本発明の効果を十分に発揮することができる。
また、上記浸炭部材は、その摺動面に浸炭異常層がない。浸炭異常層は、浸炭処理後の焼入れ処理時に導入されうる層であり、耐摩耗性を低下させる層である。上記浸炭部材は、最適な浸炭条件が選択されることによって浸炭異常層がなくてもよいし、焼入れ処理時に浸炭異常層が発生した場合であってもその後に仕上げ加工を実施し、これにより浸炭異常層が除去されて浸炭異常層がない状態とされていてもよい。好ましくは、後者である。浸炭異常層が確実に除去され、耐摩耗性向上の効果が大きく、信頼性も高まるからである。
製造工程として焼入工程後に仕上げ加工を含む場合、仕上げ加工としては、例えば、切削、研磨などを例示することができる。これらは1または2以上組み合わせて実施することができる。上記仕上げ加工は、焼入れ処理後の摺動面を50μm〜300μmの範囲で除去する加工であることが好ましい。仕上げ加工量が50μm以上である場合には、浸炭異常層が生じている場合にこれを十分に取り除くことが可能であり、一方、300μm以下である場合には、浸炭処理により得られた硬化層を除去しすぎて表面硬さを低下させるおそれも少なくなるからである。なお、このような仕上げ加工が施される場合、上記摺動面は、切削および/または研磨の仕上げ加工後の表面ということになる。
また、上記浸炭部材は、表面炭素濃度が0.7〜0.9質量%の範囲内にある。表面炭素濃度が0.7質量%未満になると、摺動面におけるトルースタイトの発生を抑制することが難しくなる。一方、表面炭素濃度が0.9質量%を超えると、上記Cr含有量では、粒界に炭化物が析出し、強度の低下を招きやすくなる。なお、上記表面炭素濃度は、EPMAにより測定することができる。
また、上記浸炭部材は、上記摺動面の最表面からの深さ50μmまでにおける組織のトルースタイト面積率が1%以下である。トルースタイトの面積率が1%を超える場合には、十分な耐摩耗性向上の効果が得られない。なお、上記トルースタイトの面積率は、上記摺動面の最表面からの深さ50μmまでの断面を観察し、画像解析することにより算出することができる。
次に、上記浸炭部材の製造方法は、鋼部材に炭素を侵入させる浸炭期と上記鋼部材に侵入した炭素を拡散させる拡散期とを備えた浸炭処理工程と、該浸炭処理工程を経た鋼部材を焼入れする焼入工程とを有している。浸炭処理に供する鋼部材は、例えば、鍛造(熱間鍛造、冷間鍛造)や機械加工等によって、上述した化学成分を有する鋼材を所望形状に整形したものなどを好適に用いることができる。例えば、焼入れ処理後に仕上げ加工を行う場合には、上記鋼部材として上述した化学成分を有する鋼材を予め粗形状に粗加工したものなどを好適に用いることができる。
ここで、上記浸炭部材の製造方法では、浸炭処理時の浸炭期におけるカーボンポテンシャル(以下、「CP」ということがある。)が1.3%以上とされる。浸炭期のCPが1.3%未満になると、摺動面等における浸炭表層にトルースタイトが発生しやすくなり、耐摩耗性が低下しやすくなる。一方、浸炭期のCPの上限は、特に限定されるものではないが、浸炭期のCPが過度に高くなると、拡散期において、所望の表面炭素濃度まで下げることが困難となったり、炭化物の粒界析出を招きやすくなる。よって、浸炭期のCPの上限は、好ましくは、2.0%であるとよい。
また、上記浸炭部材の製造方法では、浸炭処理時の拡散期におけるカーボンポテンシャルが0.8%以上とされることが好ましい。拡散期のCPが0.8%以上であると、浸炭部材の摺動面等における表面炭素濃度を0.7〜0.9質量%の範囲内に収めやすくなる。一方、拡散期のCPの上限は、特に限定されるものではないが、拡散期のCPが過度に高くなると、粒界炭化物の析出により部材強度が損なわれやすくなる。よって、拡散期のCPの上限は、好ましくは、0.90%であるとよい。
なお、上記浸炭処理工程における他の条件としては、例えば、ガス浸炭処理や真空浸炭処理にて浸炭処理温度900℃〜1000℃、浸炭期の時間1h〜4h、拡散期の時間1h〜4hなどを例示することができる。
また、上記浸炭処理工程の後は、必要に応じて、例えば、800℃から900℃に保持した後、油焼入れ、ガス冷却等の各種の焼入れを行うことができる。さらに、上記焼入れ後、必要に応じて、焼もどし処理などを行うこともできる。焼もどし処理の条件としては、例えば、温度130℃から160℃、保持時間1h〜1.5hなどを例示することができる。さらに、上記焼入れまたは焼もどし後、必要に応じて、例えば、切削、研磨等の仕上げ加工を行うことができる。
また、上記浸炭部材の製造方法において、上記鋼部材は摺動面を有しており、最終工程後の上記摺動面は、表面炭素濃度が0.7〜0.9質量%の範囲内にあり、最表面からの深さ50μmまでにおける組織のトルースタイト面積率が1%以下であることが好ましい(請求項8)。
この場合には、耐摩耗性に優れた摺動面を有する浸炭部材が得られる。なお、上記最終工程としては、上記焼入れ工程、上記焼きもどし工程、上記仕上げ工程などを例示することができる。
以下、実施例に係る浸炭部材、浸炭部材用鋼および浸炭部材の製造方法について説明する。
本例では、浸炭部材としてベルト式CVTのシーブを想定した。すなわち、図1に示すように、ベルト式CVT1は、入力プーリー201と出力プーリー202と、入力プーリー201および出力プーリー202に巻き掛けられた金属製のベルト3とを備える。入力プーリー201および出力プーリー202は、それぞれ円錐状の摺動面21を備えたシーブ2を2つ組み合わせて構成されている。シーブ2の摺動面21は、スチールバンド32に係合させた多数のエレメント31によって構成された金属ベルト3と常に摺動する状態で使用される。金属ベルト3に付与される張力は高く、金属製のエレメント31と接触する摺動面21は非常に高い面圧を繰り返し受けながら摩耗しやすい状態で使用される。そのため、シーブ2の摺動面21には高い耐摩耗性が要求される。
(素材鋼の準備)
素材鋼として、表1に示す化学成分を有する各種の鋼を作製した。
Figure 0005683348
次に、各素材鋼から各浸炭前試験片を作製するとともに、各浸炭前試験片に対して浸炭期のCPを異ならせた浸炭処理、焼入れ、仕上げ加工を行い、各浸炭後試験片を作製した。
(浸炭前試験片の作製)
各素材鋼は、30kg溶解炉にて溶解し、その鋼塊を1200℃で鍛伸した。次いで、得られた各鍛伸品に対して900℃で1時間保持した後、炉冷するという条件の焼なまし処理を行った。次いで、得られた各焼きなまし品を切削加工し、外径26.4mmの円柱状の各浸炭前試験片を作製した。
(浸炭処理、焼入れ、焼もどし、仕上げ加工)
各浸炭前試験片に対して浸炭処理、焼入れ、焼もどし、仕上げ加工を行った。具体的には、先ず、各浸炭前試験片を加熱昇温し、950℃の温度で6時間保持するガス浸炭処理を行った。この際、上記浸炭処理は、浸炭期のCPを後述する表2の通りとし、浸炭期の時間は3時間とした。また、拡散期のCPを後述する表2の通りとし、拡散期の時間は3時間とした。
次いで、上記浸炭処理後、850℃まで温度を下げて1時間保持し、130℃で油焼入れを行った。次いで、上記油焼入れ後、160℃の温度に1時間保持する焼もどしを行った。次いで、上記焼もどし後、削り代200μmの切削および研磨仕上げ加工を表面に施し、浸炭異常層を除去した。以上により、外径26.0mmの円柱状の各浸炭後試験片を作製した。
次に、その後、得られた各浸炭後試験片に対して、表面炭素濃度、トルースタイト面積率、摩耗量を測定し、評価を行った。
(表面炭素濃度)
各浸炭後試験片の表面炭素濃度をEPMAにより測定した。
(トルースタイトの面積率)
各浸炭後試験片の表面(仕上げ加工後の表面)から深さ50μmまでの断面を観察し、画像解析ソフトを用いて、トルースタイトの面積率を測定した。
(摩耗試験)
摩耗試験は、図2に示すように、浸炭後試験片5と外径φ130mmの相手方ローラ6とを用い、2ローラ接触試験により行った。この試験は、浸炭後試験片5と相手方ローラ6との周速度を異なる速度とし、滑り接触・負荷を与え、摺動面を摩耗させる試験である。試験条件は、浸炭後試験片5の回転する2000rpm、接触面圧1250MPa、滑り率−5%、潤滑油はCVTフルードという条件とした。本試験の評価は、摺動面の摩耗量によって行い、摩耗量が10μm以下の場合を耐摩耗性に優れると判断した。
以下、表2に浸炭処理条件とともに各種試験結果を示す。
Figure 0005683348
表2より以下のことがわかる。すなわち、比較例は、浸炭に供した素材鋼の化学成分が本発明の規定範囲外であるか、化学成分が本発明の規定範囲内であっても浸炭処理時の浸炭期におけるCPが1.3%未満である。そのため、浸炭後試験片の表面炭素濃度が0.7質量%未満であるか、トルースタイトの面積率が1%を超えており、摩耗量が多く、耐摩耗性に劣ることがわかる。
これに対して、実施例は、浸炭に供した素材鋼の化学成分が本発明の規定範囲内であり、浸炭処理時の浸炭期におけるCPが1.3%以上である。そのため、浸炭後試験片の表面炭素濃度が0.7質量%〜0.9質量%の範囲内であり、トルースタイトの面積率が1%以下であり、摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れていることがわかる。
上記から、本発明によれば、大幅なコストアップを伴うことなく摺動面等の耐摩耗性に優れた浸炭部材、これの半製品である浸炭部材用鋼、浸炭部材の製造方法を提供できることがわかる。
以上、実施例について説明したが、本発明は、上記実施例により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変を行うことが可能である。
1 ベルト式無段変速機(ベルト式CVT)
2 CVTシーブ
21 摺動面
201 入力プーリー
202 出力プーリー
3 ベルト
31 エレメント
32 スチールバンド

Claims (5)

  1. 摺動面を有する浸炭部材であって、
    化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜2.00%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.35〜3.00%、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0250%、および、Mo:0.01〜0.80%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物よりなり、
    上記摺動面は、浸炭異常層がなく、表面炭素濃度が0.7〜0.9質量%の範囲内にあり、最表面からの深さ50μmまでにおける組織のトルースタイト面積率が1%以下であることを特徴とする浸炭部材。
  2. 請求項1に記載の浸炭部材は、CVTシーブであることを特徴とする浸炭部材。
  3. 摺動面を有し、該摺動面は、浸炭異常層がなく、表面炭素濃度が0.7〜0.9質量%の範囲内にあり、最表面からの深さ50μmまでにおける組織のトルースタイト面積率が1%以下である浸炭部材を製造するために用いられる浸炭部材用鋼であって、
    化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜2.00%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.35〜3.00%、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0250%、および、Mo:0.01〜0.80%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物よりなることを特徴とする浸炭部材用鋼。
  4. 鋼部材に炭素を侵入させる浸炭期と上記鋼部材に侵入した炭素を拡散させる拡散期とを備えた浸炭処理工程と、該浸炭処理工程を経た鋼部材を焼入れする焼入工程とを有する浸炭部材の製造方法であって、
    上記鋼部材は、化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜2.00%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:1.35〜3.00%、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0250%、および、Mo:0.01〜0.80%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物よりなり、
    上記浸炭期におけるカーボンポテンシャルは1.3%以上とされることを特徴とする浸炭部材の製造方法。
  5. 請求項に記載の浸炭部材の製造方法において、
    上記鋼部材は摺動面を有しており、最終工程後の上記摺動面は、表面炭素濃度が0.7〜0.9質量%の範囲内にあり、最表面からの深さ50μmまでにおける組織のトルースタイト面積率が1%以下であることを特徴とする浸炭部材の製造方法。
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