JP5609171B2 - Cvtシーブ及びcvtシーブ用鋼材 - Google Patents

Cvtシーブ及びcvtシーブ用鋼材 Download PDF

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Description

本発明は、ベルト式無段変速機(以下、適宜、CVTという)におけるプーリを構成するためのCVTシーブ及びこれの半製品であるCVTシーブ用鋼材に関する。
自動車のベルト式無段変速機は、従来多く使用されてきた3段、又は4段の自動変速機(AT)と比較すると、変速ショックがなく、滑らかな加速が得られることや燃費の点で有利である。そのため、ベルト式CVTを搭載した自動車が増加してきた。
CVT1は、図1に示すように、入力プーリー201と出力プーリー202と、入力プーリー201及び出力プーリー202に巻き掛けられた金属製のベルト3とを備えたものが一般的である。上記入力プーリー201及び出力プーリー202は、それぞれ円錐状の摺動面21を備えたシーブと呼ばれる部品を2つ組み合わせて構成されている。
シーブ2の摺動面21は、スチールバンド32に係合させた多数のエレメント31によって構成された金属ベルト3と常に摺動する状態で使用される。金属ベルト3に付与される張力は高く、金属製のエレメント31と接触する摺動面21は非常に高い面圧を繰り返し受けながら摩耗しやすい状態で使用される。そのため、シーブ2の摺動面21には摩耗を抑制する耐摩耗性処理が不可欠である。
このような問題を鑑みて、浸炭処理、又は浸炭窒化処理(浸炭浸窒処理)により、摺動面も含む母材の表面硬さをHv750以上としたベルト式無段変速機用プーリーが提案されている(特許文献1、特許文献2)。
特許文献1、2の発明は、特許文献1では浸炭処理又は浸炭窒化処理、特許文献2では高濃度浸炭+高周波焼入れ焼きもどしにより表面硬さを所定の硬さとなるようにし、耐摩耗性を向上させることができる。しかし、前述したように、CVTシーブ(プーリー)の摺動面には、高面圧が繰り返し作用するため、単なるアブレッシブ摩耗だけでなく、表面の疲労による亀裂を起因とした摩耗が発生するおそれがある。更に、CVTシーブの摺動面は、摺動発熱により表面の硬さが低下(焼き戻し軟化)し、疲労亀裂による摩耗が助長されるおそれがある。つまり、表面硬さを単に硬質にしたシーブでは、十分に摺動面の摩耗を低減することができない場合がある。
そして、CVTシーブ(プーリー)に関しては、上記特許文献1の発明も含め、硬化処理後の表面層の最適化や、使用される鋼材側の成分最適化による耐摩耗性向上技術等、他にも多数の特許が公開され、従来から活発な研究開発が行われてきた。
例えば、ショットピーニング処理を追加して表面硬さや残留応力を向上させる技術や、高濃度浸炭処理によって微細炭化物を分散させるという組織的な改善技術や、研磨方法を工夫して表面粗さを耐摩耗性に好適な状態に改善する技術などが提案されてきた(特許文献3〜6参照)。
特開2000−8121号公報 特開昭62−288763号公報 特開平6−73523号公報 特開2000−176586号公報 特開2000−130527号公報 特開2009−68609号公報
上記従来の技術においては、いずれもある程度の耐摩耗性改善効果があるものの、ショットピーニング処理の追加などのコストアップを伴うものがほとんどである。自動車用部品の一つであるCVTシーブに対しては、コスト低減要求も強く、特別な表面処理を追加せずに耐摩耗性を改善する方法が求められている。
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、大幅なコストアップを伴うことなく摺動面の耐摩耗性を向上させたCVTシーブ及びこれの半製品であるCVTシーブ用鋼材を提供しようとするものである。
第1の発明は、金属ベルトとの摺動面を有するCVTシーブであって、
化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜2.00%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:0.30〜2.00%、Mo:0.80%以下、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0200%、Nb:0.04〜0.12%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなり、
1150℃以上に加熱後、1000℃以上の温度において熱間鍛造し、その後500℃までを25℃/分以上の冷却速度で冷却し、その後浸炭処理を行い、さらに仕上げ加工を行うことによって作製されており、
上記浸炭処理の直前におけるNb固溶量が0.01%以上であり、
上記摺動面は、浸炭異常層がなく、最表面からの深さ50μmにおける組織のトルースタイト面積率が1%以下であることを特徴とするCVTシーブにある(請求項1)。
第2の発明は、金属ベルトとの摺動面を有するCVTシーブを作製するためのCVTシーブ用鋼材であって、
化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜2.00%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:0.30〜2.00%、Mo:0.80%以下、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0200%、Nb:0.04〜0.12%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなり、
1150℃以上に加熱後、1000℃以上の温度において熱間鍛造し、その後500℃までを25℃/分以上の冷却速度で冷却して作製されており、
Nb固溶量が0.01%以上であることを特徴とするCVTシーブ用鋼材にある(請求項2)。
第3の発明は、金属ベルトとの摺動面を有するCVTシーブを製造する方法であって、
化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜2.00%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:0.30〜2.00%、Mo:0.80%以下、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0200%、Nb:0.04〜0.12%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる素材を準備し、
該素材を、1150℃以上に加熱後、1000℃以上の温度において熱間鍛造し、その後500℃までを25℃/分以上の冷却速度で冷却し、その後浸炭処理を行い、さらに仕上げ加工を行い、
上記浸炭処理の直前におけるNb固溶量を、0.01%以上とし、
上記摺動面は、浸炭異常層がなく、最表面からの深さ50μmにおける組織のトルースタイト面積率が1%以下とすることを特徴とするCVTシーブの製造方法にある(請求項3)。
第4の発明は、金属ベルトとの摺動面を有するCVTシーブを作製するためのCVTシーブ用鋼材を製造する方法であって、
化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜2.00%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:0.30〜2.00%、Mo:0.80%以下、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0200%、Nb:0.04〜0.12%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる素材を準備し、
該素材を、1150℃以上に加熱後、1000℃以上の温度において熱間鍛造し、その後500℃までを25℃/分以上の冷却速度で冷却し、
Nb固溶量を0.01%以上とすることを特徴とするCVTシーブ用鋼材の製造方法にある(請求項4)。
第1の発明及び第3の発明のCVTシーブ及びその製造方法では、上記特定の化学成分を有し、かつ、少なくとも、1150℃以上に加熱後、1000℃以上の温度において熱間鍛造し、その後500℃までを25℃/分以上の冷却速度で冷却することにより、Nb固溶量が0.01%以上となる鋼材を製造し、Nb固溶量が0.01%以上に維持された鋼材に対して浸炭処理を行い、さらに、切削と研磨の少なくとも一方を実施する仕上げ加工を行うそして、浸炭処理前に0.01%以上のNb固溶量を確保したことによって、浸炭処理後のトルースタイトの面積率(最表面からの深さ50μmの位置)を1%以下に抑制できると共に、浸炭処理後のシーブ面の切削又は/及び研磨の仕上げ加工によって、浸炭異常層のない摺動面とすることができる。その結果、摺動面の耐摩耗性を大きく改善することができる。
上記列挙した製造工程は、特に大幅にコストアップするような工程を追加したものではない。また、上記化学成分も、高価な合金元素を多量に添加してコストアップとなるものでもない。発明者は、上記特定の化学成分の鋼を用いて上記特定の工程を実施することによって、浸炭処理前において一定量以上のNb固溶量を確保することができ、Nb固溶量を一定以上確保した鋼に対し浸炭処理を行えば、固溶Nbの効果によりトルースタイトの面積率を大きく低減でき、その結果、耐摩耗性が著しく改善することを、多数の実験を通して導き出したのである。
このような、一定量以上のNb固溶量を確保した鋼を浸炭処理することによって組織中のトルースタイトを大きく低減し、その結果耐摩耗性が大幅に向上したCVTシーブ部品を製造することができることは、本発明の完成によって初めて導き出された。
第2の発明及び第4の発明のCVTシーブ用鋼材及びその製造方法は、浸炭処理前のCVTシーブの半製品及びその製造方法に関する発明であり、上記特定の工程を実施することによって、上記のごとく、一定量以上のNb固溶量を確保したものである。これにより、上記CVTシーブ用鋼材を用い、これに浸炭処理を施した後のCVTシーブにおいては、浸炭処理前に確保してある固溶Nbの効果によってトルースタイト面積率を低減させることができ、その結果、上記のごとくCVTシーブに求められる優れた耐摩耗性向上効果が得られる。
このように、本発明によれば、大幅なコストアップを伴うことなく摺動面の耐摩耗性を向上させたCVTシーブ及びこれの半製品であるCVTシーブ用鋼材を提供することができる。
ベルト式無段変速機(CVT)の構成を示す説明図。 実験例における摩耗試験の方法を示す説明図。
第1の発明及び第2の発明における化学成分は、上記のごとく、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜2.00%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:0.30〜2.00%、Mo:0.80%以下、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0200%、Nb:0.04〜0.12%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる。以下に、各成分の限定理由につき説明する。
C:0.10〜0.30%、
Cは、強度を確保するための基本元素であり、CVTシーブにおいて十分な内部硬さを確保するために、0.10%以上添加する。一方、添加量が多くなりすぎると被削性が低下するため、C含有量の上限を0.30%とする。
Si:0.50〜2.00%、
Siは、軟化抵抗性に有効な元素であり、その特性を確保するために0.50%以上添加する。一方、Si含有量が多くなりすぎると靱性や加工性が劣化してくるため、Si含有量の上限を2.00%とする。
Mn:0.30〜1.50%、
Mnは、強度向上に有効な元素であり、CVTシーブにおいて十分な内部硬さを確保するために、0.30%以上添加する。一方、Mnの添加量が多くなりすぎると被削性の低下や、残留オーステナイトの増加による硬さ低下が懸念されるため、Mn含有量の上限を1.50%とする。
P:0.035%以下、
Pは、結晶粒界に偏析して疲労強度を低下させるため、含有量の上限を0.035%とする。Pは製造上の不純物として不可避に含有される元素であるが、精錬により極力低減することが好ましい。
S:0.035%以下、
Sは、被削性向上に有効であるが、特に積極添加する必要がない任意元素である。Sの含有量が多くなりすぎると疲労破壊起点となって強度低下を招くため、S含有量の上限を0.035%とする。
Cr:0.30〜2.00%、
Crは、強度向上に有効な元素であり、CVTシーブにおいて十分な内部硬さを確保するために、0.30%以上添加する。一方、Crの添加量が多くなりすぎると硬さが高くなって加工性が低下するため、Cr含有量の上限を2.00%とする。
Mo:0.80%以下、
Moは、強度、靱性を向上させるのに有効な元素ではあるが、高価であるため、任意元素として、上限を0.80%に抑える。
Al:0.020〜0.060%、
Alは、脱酸処理に必要なだけでなく、浸炭処理後の結晶粒粗大化防止効果を得るために有効な元素であり、この効果を得るために0.020%以上添加する。一方、Alの添加量が多くなりすぎるとその効果が飽和すると共に酸化物系介在物の増加によって疲労強度が低下するため、Al添加量の上限を0.060%とする
N:0.0080〜0.0200%、
Nは、製造上不可避に含有される元素であるが、Alと同様に、結晶粒粗大化防止に有効であるため、この効果を得るために0.0080%以上含有するように調整して製造する。一方、Nの含有量が多くなりすぎるとその効果が飽和すると共に窒化物が増加して疲労強度低下の原因となるため、N添加量の上限を0.0200%とする。
Nb:0.04〜0.12%、
Nbは、結晶粒微細化に有効であると共に、浸炭処理前におけるNb固溶量が上記のごとく多くなれば浸炭処理後においてトルースタイトの生成を抑制し、耐摩耗性を向上させることができる。このNb固溶量を確保するために、Nbの添加量は0.04%以上とする。一方、Nb含有量を0.12%を超える量としてもNb固溶量を増やすことが困難であり、未固溶のNb炭窒化物が増加し、かつ残留炭窒化物も粗大化して、浸炭時に結晶粒が粗大化しやすくなるため、上限を0.12%とする。
次に、第1の発明及び第2の発明においては、1150℃以上に加熱後、1000℃以上の温度において熱間鍛造し、その後500℃までを25℃/分以上の冷却速度で冷却する工程を経て作製することが必須である。
この工程を必須とすることによってNbの固溶を促進させることにより、たとえその後に焼きならし処理を行って一部の固溶Nbが炭窒化物として析出したとしても、焼きならし処理後にNb固溶量を0.01%以上確保することができる。その効果によって、浸炭処理後においてトルースタイト面積率が1%以下の組織とすることができ、かつ、切削及び/又は研磨仕上げにより浸炭異常層のない摺動面とすることができ、耐摩耗性に優れたCVTシーブを得ることができる。
上記浸炭処理としては、いわゆる、浸炭焼き入れ処理と焼き戻し処理を組み合わせた処理が一般的である。浸炭焼き入れ処理の条件としては、浸炭雰囲気中において900℃〜1000℃に保持した後、油焼き入れする条件とすることができる。また、焼き入れ後の焼き戻し処理は、130℃〜160℃に1〜1.5Hr保持する条件とするすることができる。
なお、Nb固溶量は、上記冷却後にピークとなり、その後の熱履歴によって低下する場合もある。本発明においては、浸炭焼き入れ処理を開始する直前の状態でのNb固溶量が0.01%以上であることを意味している。
なお、浸炭処理を施して使用する部品においては、処理後に結晶粒が粗大化すると各種特性が低下することから、通常、固溶したNbを微細に析出させるための焼きならし処理(900〜1000℃に加熱後徐冷)が行われる。この熱処理は、冷間鍛造、機械加工等の加工性改善のためにも必要である。しかしながら、本発明では、熱間鍛造後において、Nbを十分に固溶させているので、この焼きならし処理後においても0.01%以上の固溶Nb量を確保することができる。結晶粒粗大化防止に対する要求が高くなく、それよりも耐摩耗性を重視する用途に用いる場合には、焼きならし処理を省略した方が好ましい。その場合は、後述の実施例の試料E25に示すとおり0.04%を超える固溶Nb量を確保することが可能であり、従来製品に比較して耐摩耗性を大幅に改善することができる。
次に、第1の発明においては、上記摺動面には浸炭異常層がない。これは、製造工程として上記仕上げ加工を必須としていることによって実現しうる。切削と研磨の少なくとも一方を行う仕上げ加工は浸炭処理後の摺動面を50μm〜300μmの範囲で切削又は研磨あるいは両方を実施するという条件で行うことが好ましい。
仕上げ加工量が50μmの未満の場合には、浸炭異常層を十分に取り除けないおそれがあり、一方、300μmを超える場合には、浸炭処理により得られた硬化層を除去しすぎて表面硬さが低下するおそれがある。
また、上記摺動面(切削及び/又は研磨の仕上げ加工後の表面)は、最表面からの深さ50μmにおける組織のトルースタイト面積率が1%以下である。トルースタイトの面積率が1%を超える場合には、十分な耐摩耗性向上効果が得られない。
本発明の実施例にかかるCVTシーブ及びCVTシーブ用鋼材について説明する。
本例では、表1に示すごとく、本発明の化学成分の範囲を有する鋼(A〜D)と、比較例としての鋼(E、F)と、従来例としての鋼(G)を準備し、CVTシーブを想定した実験用の試料を作製して実験により評価した。
Figure 0005609171
(実験例1)
本実験例では、素材として表1のA〜Dの鋼を用い、本発明の実施例としての試料E11〜E15を作製し、表1のE、Fの鋼を用いて比較例としての試料C11、C12を作製し、表1のJの鋼を用いて従来例としての試料C13を作製した。
これらの試料を作製するに当たっては、全て同じ条件とし、まずは、上記各素材を圧延して直径φ50mmの丸棒を作製した。
次に、丸棒を1200℃の温度に加熱した後、1100℃に冷えた時点で熱間鍛造を行った。得られた鍛造品は、その後500℃以下の温度となるまで冷却速度75℃/分という条件で空冷した。なお、鍛造品の形状は後述する摩耗試験を行うために円柱状とした。
次に、鍛造品に対して、950℃の温度まで再加熱し、1時間保持後500℃の温度となるまで平均冷却速度15℃/分で冷却するという条件で熱処理を行った。
次に、上記熱処理後の鍛造品に対して浸炭処理を施した。
浸炭処理は、上記鍛造品を950℃の温度で7時間保持した後、850℃の温度まで下げて1時間保持し、その後、130℃で油焼き入れし、次いで、160℃の温度に1時間保持する焼き戻しを行うという条件とした。
最後に、浸炭処理後の鍛造品の表面に、削り代200μmの切削及び研磨仕上げ加工を施した。
次に、各種の評価は次のように行った。
<Nb固溶量>
Nb固溶量は、各試料から浸炭前の時点で試験片を採取してNb析出量の化学分析を行い、Nb添加量との差から算出した。
<トルースタイトの面積率>
試料の表面(切削後の表面)から深さ50μmまでの断面を観察し、画像解析ソフトを用いて測定した。
<摩耗試験>
摩耗試験は、図2に示すごとく、外径φ26mmの円柱状の試験片5と外径φ130mmの相手方ローラ6とを用い、2ローラ接触試験により行った。この試験は、試験片5と相手方ローラ6との周速度を異なる速度とし、滑り接触・負荷を与え、摺動面を摩耗させる試験である。試験条件は、試験片5の回転する2000rpm、接触面圧1250MPa、滑り率−5%、潤滑油はCVTフルードという条件とした。本試験の評価は、摺動面の摩耗量によって行い、摩耗量が10μm以下の場合を合格とした。
各種試験結果を表2に示す。
Figure 0005609171
表2より知られるごとく、本発明の実施例である試料E11〜E14は、いずれも、浸炭処理前におけるNb固溶量が0.01%以上であり、かつ、トルースタイトの面積率が1.0%以下である要件を満たしていることから、耐摩耗性に優れた結果となった。
一方、比較例の試料C11は、Nb固溶量及びトルースタイト面積率は適正範囲内であるが、化学成分におけるSi含有量が本発明の下限値を下回っているために、軟化抵抗性が確保できず、耐摩耗性が低下した。
また、比較例の試料C12は、Nb含有量が本発明の下限値を下回っているために、Nb固溶量及びトルースタイト面積率が適正範囲から外れ、耐摩耗性が低下した。
また、従来例の試料C13は、Nbを含有していないためNb固溶量が0であり、固溶Nbによるトルースタイトの抑制効果が全く得られず、トルースタイト面積率が適正範囲から大幅に外れ、さらに、Si含有量が本発明の下限値を下回っているために、軟化抵抗性が著しく劣り、大幅に耐摩耗性が低下した。
(実験例2)
本実験例では、表1におけるA鋼を用いて、熱間鍛造の前の加熱条件、熱間鍛造時の加工温度、熱間鍛造後の冷却速度の条件を変化させてその影響を評価した。
試料E21〜E24は、熱間鍛造後の熱処理条件及び浸炭条件は実験例1と同じ条件とした。
試料E25は、熱間鍛造後の熱処理を行わず、実験例1と同じ条件で浸炭処理を行った。
試料C21〜C23は、熱間鍛造後の熱処理条件及び浸炭条件は実験例1と同じ条件とした。
試料C24は、熱間鍛造後、1050℃の温度に再加熱し、1時間保持後500℃の温度となるまで平均冷却速度5℃/分で冷却するという条件で熱処理を行い、Nb固溶量を低減させた。浸炭条件は実験例1と同じ条件とした。
試料C25は、熱間鍛造後の熱処理条件及び浸炭処理の浸炭焼き入れまでを実験例1と同じ条件とし、浸炭焼き入れ後に、試験片の表面に防炭材を塗布して焼き入れ性が低下する状態にし、再度950℃の温度に1時間保持した後、850℃に温度を下げて1時間保持し、その後、130℃で油焼き入れすることにより、故意に、トルースタイト発生率を高めた。
なお、全ての試料において、最後の切削及び研磨仕上げ加工は実験例1と同じ条件で行った。
試験結果を表3に示す。
Figure 0005609171
表3より知られるごとく、本発明の実施例である試料E21〜E25は、いずれも、浸炭処理直前におけるNb固溶量が0.01%以上であり、固溶Nbの効果によって浸炭処理後のトルースタイトの面積率を1.0%以下に抑制できたため、耐摩耗性に優れた結果となった。
その中でも特に試料E25は、熱間鍛造後の焼きならし処理を行わなかったことから、0.049%という他の実施例に比較しても極端に固溶Nb量の多い状態で浸炭処理を行っているため、固溶Nbの存在による効果が大きく得られた結果、トルースタイトを0.31%という非常に少ない量に抑えることができ、耐摩耗性が大幅に向上した。
一方、比較例の試料C21〜C24は、熱間鍛造条件のいずれかが本発明の範囲を外れていることによって、Nb固溶量及びトルースタイト面積率が適正範囲から外れ、耐摩耗性が低下した。
また、比較例の試料C25は、故意にトルースタイトの面積率を高めたものであり、これにより耐摩耗性が低下した。
1 ベルト式無段変速機(CVT)
2 CVTシーブ
21 摺動面
201 入力プーリー
202 出力プーリー
3 ベルト
31 エレメント
32 スチールバンド

Claims (8)

  1. 金属ベルトとの摺動面を有するCVTシーブであって、
    化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜2.00%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:0.30〜2.00%、Mo:0.80%以下、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0200%、Nb:0.04〜0.12%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなり、
    1150℃以上に加熱後、1000℃以上の温度において熱間鍛造し、その後500℃までを25℃/分以上の冷却速度で冷却し、その後浸炭処理を行い、さらに仕上げ加工を行うことによって作製されており、
    上記浸炭処理の直前におけるNb固溶量が0.01%以上であり、
    上記摺動面は、浸炭異常層がなく、最表面からの深さ50μmにおける組織のトルースタイト面積率が1%以下であることを特徴とするCVTシーブ。
  2. 金属ベルトとの摺動面を有するCVTシーブを作製するためのCVTシーブ用鋼材であって、
    化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜2.00%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:0.30〜2.00%、Mo:0.80%以下、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0200%、Nb:0.04〜0.12%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなり、
    1150℃以上に加熱後、1000℃以上の温度において熱間鍛造し、その後500℃までを25℃/分以上の冷却速度で冷却して作製されており、
    Nb固溶量が0.01%以上であることを特徴とするCVTシーブ用鋼材。
  3. 金属ベルトとの摺動面を有するCVTシーブを製造する方法であって、
    化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜2.00%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:0.30〜2.00%、Mo:0.80%以下、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0200%、Nb:0.04〜0.12%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる素材を準備し、
    該素材を、1150℃以上に加熱後、1000℃以上の温度において熱間鍛造し、その後500℃までを25℃/分以上の冷却速度で冷却し、その後浸炭処理を行い、さらに仕上げ加工を行い、
    上記浸炭処理の直前におけるNb固溶量を、0.01%以上とし、
    上記摺動面は、浸炭異常層がなく、最表面からの深さ50μmにおける組織のトルースタイト面積率が1%以下とすることを特徴とするCVTシーブの製造方法。
  4. 金属ベルトとの摺動面を有するCVTシーブを作製するためのCVTシーブ用鋼材を製造する方法であって、
    化学成分が、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜2.00%、Mn:0.30〜1.50%、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cr:0.30〜2.00%、Mo:0.80%以下、Al:0.020〜0.060%、N:0.0080〜0.0200%、Nb:0.04〜0.12%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物よりなる素材を準備し、
    該素材を、1150℃以上に加熱後、1000℃以上の温度において熱間鍛造し、その後500℃までを25℃/分以上の冷却速度で冷却し、
    Nb固溶量を0.01%以上とすることを特徴とするCVTシーブ用鋼材の製造方法。
  5. 上記CVTシーブは、上記熱間鍛造後、500℃までを25℃/分以上の冷却速度で上記冷却をした後、上記浸炭処理より前に、さらに、900〜1000℃に加熱後徐冷する焼きならし処理を行って作製されていることを特徴とする請求項1に記載のCVTシーブ。
  6. 上記CVTシーブ用鋼材は、上記熱間鍛造後、500℃までを25℃/分以上の冷却速度で上記冷却をした後、さらに、900〜1000℃に加熱後徐冷する焼きならし処理を行って作製されていることを特徴とする請求項2に記載のCVTシーブ用鋼材。
  7. 上記熱間鍛造後、500℃までを25℃/分以上の冷却速度で上記冷却をした後、上記浸炭処理より前に、さらに、900〜1000℃に加熱後徐冷する焼きならし処理を行うことを特徴とする請求項3に記載のCVTシーブの製造方法。
  8. 上記熱間鍛造後、500℃までを25℃/分以上の冷却速度で上記冷却をした後、さらに、900〜1000℃に加熱後徐冷する焼きならし処理を行うことを特徴とする請求項4に記載のCVTシーブ用鋼材の製造方法。
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