JP4687616B2 - 鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品 - Google Patents

鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品 Download PDF

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Description

本発明は、浸炭又は浸炭窒化を施して使用する鋼製の部品、つまり、鋼製の「浸炭部品」又は「浸炭窒化部品」に関する。より詳しくは、優れた面疲労強度を確保するために浸炭又は浸炭窒化を施して使用される歯車、プーリー及びシャフトなど鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品に関する。
従来、自動車や産業機械の歯車、プーリー及びシャフトなどの鋼製の部品(以下、「鋼製の部品」を単に「部品」ともいう。)は、JIS規格のSCr420、SCM420やSNCM420などの機械構造用合金鋼を素材として、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れを施し、その後、200℃以下の焼戻しを行い、更に、必要に応じてショットピーニング処理を施すことにより、接触疲労強度、曲げ疲労強度や耐摩耗性など、それぞれの部品に要求される特性を確保することがなされていた。
しかしながら、近年、自動車の燃費向上やエンジンの高出力化への対応のために部品の軽量・小型化が進み、これに伴って、部品にかかる負荷、なかでも、部品表面に繰り返しかかる応力が飛躍的に増加する傾向にある。このため、産業界からは、部品における前記特性のうちでも特に接触疲労強度を高めたいとの要望が大きくなっている。
上記の「接触疲労」には「面疲労」、「線疲労」及び「点疲労」が含まれるが、実際には「線」接触や「点」接触になることはほとんどない。このため、接触疲労強度として「面疲労強度」を高めたいとの産業界からの要望が大きい。
なお、「ピッチング」は、面疲労の破壊形態の一つであり、歯車の歯面、プーリー及びシャフトにおける損傷形態は主にピッチングである。このため、ピッチング強度を向上させることが、上記の面疲労強度の向上、つまり、接触疲労強度の向上に対応することになるので、以下、「面疲労」としての「ピッチング」について説明し、「ピッチング強度」を「面疲労強度」という。
上記、産業界からの要望に対しては、従来、部品の面疲労強度を向上させるために、浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れを施した部品に対して、
・表面粗さを小さくすること、
・部品表層部の硬さを上昇させること、
・不完全焼入れ層を低減すること、
などの対策が講じられ、例えば、特許文献1〜3に面疲労強度に優れた歯車やその製造方法に関する技術が提案されている。
すなわち、特許文献1には、機械構造用鋼を歯切り加工した後、必要に応じて、シェービング加工を施し、次いで浸炭処理及び/又は窒化処理と焼入・焼戻処理により表面硬化し、更に、必要に応じてショットピーニング処理した後、歯面を粗さ(Rmax)0.3μm以上、2μm以下にバレル研磨加工するか、或いは、機械構造用鋼を歯切り加工した後、必要に応じて、シェービング加工を施し、その後、歯面を粗さ(Rmax)0.3μm以上2μm以下にバレル研磨加工し、次いで浸炭処理及び/又は窒化処理と焼入・焼戻処理により表面硬化する「高接触疲労強度歯車の製造方法」が開示されている。
また、特許文献2には、特定の化学組成からなり、表面の圧縮残留応力が400MPa以上で、不完全焼入れ層が5μm以上15μm以下、表面粗さRmaxが4.5μm以下で、表面粗さ分布の非対称性パラメータであるひずみ度Sk値が「−1.2≦Sk<−0.5」であり、表面での残留オーステナイトの面積率が10%以下である「歯元疲労寿命及び接触疲労寿命強度に優れた歯車」が開示されている。
更に、特許文献3には、表面硬化処理を施された歯車であって、この歯車に組み合わされる歯車との歯元側歯当たり位置より歯元側から、少なくとも歯元側歯当たり位置まで、少なくとも0.2mm深さまでの加工硬化層が設けられており、必要に応じて、加工硬化層表面の粗さRmaxが3μm以下である「高接触疲労寿命歯車」とその「製造方法」が開示されている。
特開平6−246548号公報 特開2002−121644号公報 特開平11−230312号公報
前述の特許文献1〜3で開示された技術は、各実施例に示されているとおり、歯車の面疲労強度を高めることができる技術ではある。しかしながら、これらの技術はいずれも、近年、産業界から要望されている部品の軽量化、小型化、高応力負荷化に対応できる面疲労強度を得ることができないものであった。
そこで、本発明の目的は、部品の軽量化、小型化、高応力負荷化の要求に十分応えることができる鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品を提供することである。なお、本発明における面疲労強度の目標は、後述するローラーピッチング試験の評価で3500MPa以上の面疲労強度を有することとした。
本発明者らは、前記した課題を解決するためには、第一に表層部の制御が重要であるとの着想の下、表面粗さに着目した調査・研究を重ね、更に、それに付帯する条件について種々の検討を行った。その結果、先ず、下記(a)〜(d)の知見を得た。
(a)面疲労強度の向上にはピッチングの発生を抑制する必要があるが、ピッチングの起点となる亀裂は接触の初期に発生し、それが徐々に伝播して部品の破損に至る。したがって、ピッチングの発生を抑止して大きな面疲労強度を確保するためには、接触の初期に部品の表層部を摩耗させて、亀裂を消滅させればよい。
(b)接触初期の摩耗速度を大きくして早い時期に摩耗させるためには、表面粗さを大きくすればよい。
(c)上記(b)の「表面粗さ」としては、例えば、JIS規格の算術平均粗さRaのような平均粗さよりも、最大高さ粗さRzのような粗さの最大値について、その値を大きくするのがよい。但し、単に表面粗さを大きくするだけでは、局所的な応力の上昇が生じることが推測され、実際に、この場合には、ピッチングの起点となる初期亀裂が大きくなり、却って面疲労強度が低下してしまう。しかしながら、表面粗さを大きくし、しかも、初期に接触する部分を多くすれば、局所的な応力上昇を抑制できるので、面疲労強度を大幅に高めることができる。
(d)部品表層部の硬さが低い場合には、上記(a)〜(c)に基づいた手法を用いても、早期に摩耗量を上回る長さの亀裂が発生、伝播して部品の破損に至ってしまう。このため、部品表層部の硬さは上昇させておく必要がある。
次に、本発明者らは、格段に優れた面疲労強度を得るための組織と鋼組成の条件についても調査・研究を重ね、その結果、下記(e)及び(f)の知見を得た。
(e)部品表層部の組織において、マルテンサイトに較べて軟質であるパーライトやベイナイトの混在を抑制することで、更に面疲労強度を高めることができる。一方、残留オーステナイトも軟質であるが、部品表層部では部品接触時にマルテンサイトに変態するため、あまり悪影響を与えない。
(f)部品接触時に温度が上昇するため、表層部の硬さが低下しやすい。このため、生地の鋼の化学組成は、焼戻し軟化抵抗を高める元素であるSiやMoの含有量を高めることが有効である。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(5)に示す鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品にある。
(1)浸炭部品又は浸炭窒化部品であって、粗さ曲線の最大高さ粗さRzが6〜10μm、粗さ曲線の平均線を基準とし、平均線を超えてから「平均線+1μm」を超えた場合を1山として、山の数Pcが5ヶ/mm以上かつ表層部のビッカース硬さが800以上であることを特徴とする鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品。
(2)浸炭部品又は浸炭窒化部品であって、粗さ曲線の最大高さ粗さRzが6〜10μm、粗さ曲線の平均線を基準とし、平均線を超えてから「平均線+1μm」を超えた場合を1山として、山の数Pcが5ヶ/mm以上かつ表層部のビッカース硬さが800以上で、更に、表層部の組織がマルテンサイトと残留オーステナイトの混合組織であることを特徴とする鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品。
(3)生地が、質量%で、C:0.1〜0.3%、Si:0.3〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、S:0.003〜0.05%、Cr:0.5〜3.0%、Al:0.01〜0.05%及びN:0.008〜0.025%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のP:0.025%以下、Ti:0.005%以下及びO(酸素):0.002%以下の化学成分の鋼であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品。
(4)生地の鋼が、Feの一部に代えて、Mo:0.8%以下を含有する上記(3)に記載の鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品。
(5)生地の鋼が、Feの一部に代えて、Nb:0.08%以下及びV:0.15%以下のうちの1種又は2種を含有することを特徴とする上記(3)又は(4)に記載の鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品。
なお、「粗さ曲線の平均線を基準とし、平均線を超えてから「平均線+1μm」を超えた場合を1山とする」とは、図1に示すように、粗さ曲線において新たに平均線を超える場合にリセットを行い、その後「平均線+1μm」を超える場合があれば、これを1山として計数するものである。したがって、リセット後に一旦「平均線+1μm」を超えてしまえば、その後に「平均線+1μm」より低くなる場合があっても、平均線を下回って再度リセットされない限り「1山」としてカウントする。
「表層部のビッカース硬さ」とは、JIS Z 2244(2003)における「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、部品の最表面から0.03mmの位置で試験力を1.961Nとして任意に10点測定した場合の算術平均値を指す。
また、「表層部の組織」とは、部品を切断し、切断面を鏡面研磨してナイタールで腐食し、光学顕微鏡によって、部品の最表面が視野の長辺端部になるようにし、部品内部を含むように、倍率400倍で各視野の大きさを0.22mm×0.15mmとして4視野撮影して観察した「組織」を指す。なお、上記の「組織」には、セメンタイトを始めとする炭化物或いは窒化物などの所謂「析出物」は含まないものとする。
以下、上記(1)〜(5)の鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品に係る発明を、それぞれ、「本発明(1)」〜「本発明(5)」という。また、総称して「本発明」ということがある。
本発明の鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品は、良好な面疲労強度を有するので、自動車や産業機械の歯車、プーリー及びシャフトなどに用いることができる。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)粗さ曲線
本発明者らの検討によって、本発明に係る鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品は、先ず、粗さ曲線の最大高さ粗さRzが6〜10μmで、また、粗さ曲線の平均線を基準とし、平均線を超えてから「平均線+1μm」を超えた場合を1山として(図1参照)、山の数Pcが5ヶ/mm以上でなければならないことが明らかになった。
以下、上記の事項について詳しく説明する。
面疲労は、接触部近傍の局所的な状態に大きく影響されることが知られており、従来、表面粗さの低減が面疲労強度の向上に有効であるといわれてきた。しかしながら、表面粗さ低減による面疲労強度向上では、産業界からの要望である前述した部品の軽量化、小型化、高応力負荷化に対応できる面疲労強度の確保に対して不十分である。
そこで、本発明者らは、表面粗さを低減することなく、面疲労強度を向上させるという、従来とは異なる視点にたって、以下に示す検討を行った。
先ず、表1に示す鋼α及び鋼βを150kg真空溶解炉で溶解した後、インゴットに鋳造した。
Figure 0004687616
各インゴットを1250℃で8時間加熱し、一旦室温まで冷却した後、再度1250℃で30分加熱し、仕上げ温度を950℃以上として熱間鍛造して、直径35mmの丸棒を得た。
次いで、上記の直径が35mmの各丸棒に、920℃で1時間保持して室温まで放冷する処理を行った後、機械加工により図2に示す形状のローラーピッチング試験用小ローラーを作製した。
上記のローラーピッチング試験用小ローラーには、ガス浸炭炉を用いて、図3に示す条件で浸炭焼入れを行い、次いで、170℃で2時間の焼戻しを行った後、熱処理ひずみを除く目的で、つかみ部の仕上げ加工を行った。
更に、上記の浸炭焼入れ・焼戻しを行ったローラーピッチング試験用小ローラーの試験部には、表2の表面仕上げ条件A〜Iの処理を施した。
すなわち、研削量が50μmの研削(表面仕上げ条件A〜F)、1段目のショットピーニング(表面仕上げ条件B〜I)、2段目のショットピーニング(表面仕上げ条件D〜I)、研磨量が5μmの研磨(表面仕上げ条件H)と10μmの研磨(表面仕上げ条件I)の処理を行った。なお、上記のショットピーニングには、直圧式ショットピーニング装置を用いた。
Figure 0004687616
上記のようにして作製したローラーピッチング試験用小ローラーの試験部の表面粗さをJIS B 0601(2001)で規定される方法に準拠し、次に示す条件で測定した。
・測定方向:試験片軸方向、
・評価長さ:4.0mm(Rzを求める場合の基準長さ:0.8mm)、
・測定回数:各5回、
・カットオフ値:0.8mm、
・測定項目:Ra(算術平均粗さ)及びRz(最大高さ粗さ)。
次いで、上記のようにして得たローラーピッチング試験用小ローラー及び表3に示す鋼γを素材とし、図4に示す形状、すなわち、直径が130mmで、接触部のR形状が150mmRの形状のローラーピッチング試験用大ローラーを用いて、表4に示した条件でローラーピッチング試験を行った。
なお、上記ローラーピッチング試験用大ローラーは一般的な製造工程、つまり、「焼きならし、試験片加工、ガス浸炭炉による共析浸炭、低温焼戻し及び研磨」の工程によって作製したもので、Rzは1.2μmである。
Figure 0004687616
Figure 0004687616
各試験番号について、ローラーピッチング試験における試験数は6とし、縦軸に面圧、横軸にピッチング発生までの繰り返し数をとったS−N線図を作成し、繰り返し数2.0×107回での面圧を、面疲労強度とした。なお、小ローラーの試験部の表面が損傷している箇所のうちで、最大のものの面積が1mm2以上になった場合をピッチング発生とした。
表5に、上記の各試験結果をまとめて、表面仕上げ条件とともに示す。
また、面疲労強度と算術平均粗さRaの関係を図5に、面疲労強度と最大高さ粗さRzの関係を図6に示す。
なお、本発明における面疲労強度は、鋼組成がJIS G 4053(2003)に規定されたSCM420の規格を満たす鋼βを用いて表面仕上げ条件Aで処理した場合の面疲労強度(表5の試験番号10の面疲労強度)である2500MPaを40%以上上回ること、すなわち、3500MPa以上であることを目標とし、面疲労強度が目標とする3500MPa以上の場合に、耐面疲労特性に優れるものとした。
Figure 0004687616
表5中に示したローラーピッチング試験結果並びに図5及び図6から、最大高さ粗さRzが6〜10μmの場合に大きな面疲労強度が得られる場合のあることが分かる。
しかしながら、図6にみられるように、最大高さ粗さRzが6〜10μmの範囲であっても面疲労強度が低い場合があるため、粗さ曲線の山の数を測定した。ここで山の数に着目したのは、先に説明したように、ピッチングの発生機構を調査した結果、表面粗さを大きくすると、ピッチングの起点となる初期亀裂が大きくなり、かえって面疲労強度が低下してしまうが、初期に接触する部分を多くすることで、局所的な応力上昇を抑制でき、その結果、面疲労強度が大幅に向上することを見出したためである。
なお、山の数の測定には、上記した表面粗さの測定によって得られた粗さ曲線を用い、粗さ曲線において新たに平均線を超える場合にリセットを行い、その後「平均線+1μm」を超える場合があれば、これを1山として計数し、長さ1mmあたりの平均の山の数を、本発明における山の数Pcとした。なお、既に述べたように、リセットした後に一旦「平均線+1μm」を超えてしまえば、その後に「平均線+1μm」より低くなる場合があっても、平均線を下回って再度リセットされない限り「1山」としてカウントした(図1参照)。
表5には、上記のようにして測定した山の数Pcも併せて示した。
また、図7に、最大高さ粗さRzが6〜10μmの範囲であった試験結果について、山の数と面疲労強度の関係を示した。この図7から、山の数が5ヶ/mm以上であれば、常に高い面疲労強度を得られることが分かる。
なお、上記で規定した表面粗さを得る方法については、いずれの方法でもよく、特に規定しないが、例えば、所謂「ショットピーニング肌」をその表面肌とする部品の場合には、以下に示す〈1〉〜〈3〉の手順によって得ることができる。
〈1〉Mn、Cr及びMoの含有量をそれぞれ、Mn(%)、Cr(%)及びMo(%)としたときに、Mn(%)+Cr(%)+2Mo(%)が2.0以上である鋼材を用い、図3に示した条件で浸炭焼入れし、その後、160〜180℃で1〜2時間の条件で焼戻しする。
〈2〉表層を30〜60μm研削する。
〈3〉ショットピーニングを下記の2段階に分けて行う。
・1段目:投射材の種類:高炭素鋼、
投射材の直径(ショット粒の粒径):0.6〜1.0mm、
投射材の硬さ:ビッカース硬さで700〜800、
投射圧力:0.25〜0.35MPa、
カバレージ:150〜300%、
投射距離:100〜150mm。
・2段目:投射材の種類:高炭素鋼、
投射材の直径:0.1〜0.2mm、
投射材の硬さ:ビッカース硬さで700〜800、
投射圧力:0.4〜0.6MPa、
カバレージ:400〜550%、
投射距離:100〜150mm。
(B)表層部の硬さ
本発明者らは、上記(A)項で規定した表面粗さの効果を最大限に発揮させることを目的に、表層部の硬さについて着目して、調査・研究を重ねた。その結果、本発明に係る鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品は、表層部のビッカース硬さが800以上でなければならないことが明らかになった。
以下、上記の事項について詳しく説明する。
先ず、表6に示す鋼σ及び鋼εを150kg真空溶解炉で溶解した後、インゴットに鋳造した。
Figure 0004687616
各インゴットを1250℃で8時間加熱し、一旦室温まで冷却した後、再度1250℃で30分加熱し、仕上げ温度を950℃以上として熱間鍛造して、直径35mmの丸棒を得た。
次いで、上記の直径が35mmの各丸棒に、920℃で1時間保持して室温まで放冷する処理を行なった後、機械加工により図2に示す形状のローラーピッチング試験用小ローラーを作製した。
上記のローラーピッチング試験用小ローラーには、ガス浸炭炉を用いて、図3、図8及び図9に示す条件で浸炭焼入れを行い、次いで、170℃で2時間の焼戻しを行った後、熱処理ひずみを除く目的で、つかみ部の仕上げ加工を行った。なお、図8及び図9における−80℃で2時間保持する処理は、表層部の残留オーステナイトを減少させ、高硬度化を目的とする所謂「サブゼロ処理」である。
更に、上記の浸炭焼入れ・焼戻しを行ったローラーピッチング試験用小ローラーの試験部には、表7の表面仕上げ条件J〜Lの処理を施した。
すなわち、表面仕上げ条件J〜Lについて、いずれも研削量が50μmの研削を施した後、表面仕上げ条件K及びLについては、直圧式ショットピーニング装置を用いて、1段目のショットピーニング及び2段目のショットピーニングを行った。一方、表面仕上げ条件Jについては、ショットピーニングを施さずに#240と#1200の研磨紙を組み合わせて研磨を行い、前記(A)項で規定した表面粗さ及び山の数Pcが得られるように調整した。なお、上記の表7における表面仕上げ条件K及びLは、前記した表2中の表面仕上げ条件E及びFと同じ処理である。
Figure 0004687616
上記のようにして作製したローラーピッチング試験用小ローラーの試験部の表面粗さをJIS B 0601(2001)で規定される方法に準拠し、前記(A)項に記載と同様の条件で測定するとともに、粗さ曲線を用いて本発明で定義した山の数Pcを測定した。
また、ローラーピッチング試験用小ローラーの試験部の表層部のビッカース硬さを、JIS Z 2244(2003)における「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、次の方法で測定した。
すなわち、前記試験部を小ローラーの軸方向に垂直な面で切断し、その切断面を鏡面研磨して試験部の最表面から0.03mmの位置で、試験力を1.961Nとして10ヶ所測定し、その算術平均値を表層部のビッカース硬さとした。
更に、前記のようにして得たローラーピッチング試験用小ローラー及び表3に示す鋼γを素材として、一般的な製造工程、つまり、「焼きならし、試験片加工、ガス浸炭炉による共析浸炭、低温焼戻し及び研磨」の工程によって作製した図4に示す形状、すなわち、直径が130mmで、接触部のR形状が150mmRの形状で、また、Rzが1.2μmで山の数が0ヶ/mmのローラーピッチング試験用大ローラーを用いて、表4に示した条件で、ローラーピッチング試験を行った。
すなわち、各試験番号について、ローラーピッチング試験における試験数は6とし、縦軸に面圧、横軸にピッチング発生までの繰り返し数をとったS−N線図を作成し、繰り返し数2.0×107回での面圧を、面疲労強度とした。なお、小ローラーの試験部の表面が損傷している箇所のうちで、最大のものの面積が1mm2以上になった場合をピッチング発生とした。
表8に、上記の各試験結果をまとめて、熱処理条件及び表面仕上げ条件とともに示す。
Figure 0004687616
表8中に示したローラーピッチング試験結果から、表層部の硬さがビッカース硬さで800以上の場合に、本発明で目標としている3500MPa以上の面疲労強度が得られることが分かる。
なお、ビッカース硬さで800以上の表層部の硬さは、例えば、以下に示す〈4〉〜〈5〉の手順、或いは、〈6〉〜〈8〉の手順によって得ることができる。
〈4〉Mn、Cr及びMoの含有量をそれぞれ、Mn(%)、Cr(%)及びMo(%)としたときに、Mn(%)+Cr(%)+2Mo(%)が2.0以上である鋼材を用い、図8或いは図9に示した条件で熱処理し、その後、160〜180℃で1〜2時間の条件で焼戻しする。
〈5〉表層を30〜60μm研削する。
〈6〉Mn、Cr及びMoの含有量をそれぞれ、Mn(%)、Cr(%)及びMo(%)としたときに、Mn(%)+Cr(%)+2Mo(%)が2.0以上である鋼材を用い、図3に示した条件で浸炭焼入れし、その後、160〜180℃で1〜2時間の条件で焼戻しする。
〈7〉表層を30〜60μm研削する。
〈8〉ショットピーニングを下記の条件範囲で行う。
投射材の種類:高炭素鋼又は超硬、
投射材の直径(ショット粒の粒径):0.1〜1.0mm、
投射材の硬さ:ビッカース硬さで700〜1500、
投射圧力:0.3〜0.6MPa、
カバレージ:200〜550%、
投射距離:100〜150mm。
以上、(A)項及び(B)項で述べたことから、本発明(1)に係る鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品は、粗さ曲線の最大高さ粗さRzが6〜10μm、粗さ曲線の平均線を基準とし、平均線を超えてから「平均線+1μm」を超えた場合を1山として、山の数Pcが5ヶ/mm以上かつ表層部のビッカース硬さが800以上であることと規定した。
(C)表層部の組織
本発明者らは、面疲労強度をより高めることを目的に、表層部の組織について調査を行った。その結果、本発明に係る鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品は、前記(A)項及び(B)項における規定に加えて、表層部の組織がマルテンサイトと残留オーステナイトの混合組織からなる場合に、更に一層大きな面疲労強度を有することが明らかになった。
以下、上記の事項について詳しく説明する。
表1に示した鋼β及び表6に示した鋼σの、920℃で1時間保持して室温まで放冷する処理を行なった直径が35mmの丸棒から、それぞれ前記(A)項及び(B)項で述べた機械加工によって作製した図2に示す形状のローラーピッチング試験用小ローラーに対して、ガス浸炭炉を用いた浸炭焼入れを行った後、170℃で2時間焼戻しを行った。なお、浸炭条件は図3と同じ条件としたが、焼入れ(油冷)は、油温を80℃、120℃、160℃の3水準で行った。
なお、焼戻しを行った後は、熱処理ひずみを除く目的で、つかみ部の仕上げ加工を行った。
更に、上記の浸炭焼入れ・焼戻しを行ったローラーピッチング試験用小ローラーの試験部には、表2の表面仕上げ条件Eの処理を施した。
すなわち、研削量が50μmの研削を施した後、直圧式ショットピーニング装置を用いて、1段目のショットピーニング及び2段目のショットピーニングを行った。
上記のようにして作製したローラーピッチング試験用小ローラーの試験部の表面粗さをJIS B 0601(2001)で規定される方法に準拠し、前記(A)項に記載と同様の条件で測定するとともに、粗さ曲線を用いて本発明で定義した山の数Pcを測定した。
また、上記ローラーピッチング試験用小ローラーの試験部の表層部のビッカース硬さを、JIS Z 2244(2003)における「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、前記(B)項に記載と同様の方法で測定した。
更に、ビッカース硬さを測定した試験片を、ナイタールで腐食してから、光学顕微鏡によって、試験片の最表面が視野の長辺端部になるようにし、部品内部を含むように、倍率400倍で各視野の大きさを0.22mm×0.15mmとして4視野撮影し、「表層部の組織」を調査した。
なお、上記の「組織」には、セメンタイトを始めとする炭化物或いは窒化物などの所謂「析出物」は含まないことは既に述べたとおりである。
高炭素鋼においては、パーライト及びベイナイトはマルテンサイトに較べて軟質であることから、「表層部の組織」にパーライト及びベイナイトが混在していないかを各視野の写真で調査した。
なお、パーライト及びベイナイトはマルテンサイトや残留オーステナイトに較べてナイタールによって濃く腐食される。このため、パーライト及びベイナイトとマルテンサイト及び残留オーステナイトとの判別は容易に行うことが可能である。
上記の各調査に加えて、前記のようにして得たローラーピッチング試験用小ローラー及び表3に示す鋼γを素材として、一般的な製造工程、つまり、「焼きならし、試験片加工、ガス浸炭炉による共析浸炭、低温焼戻し及び研磨」の工程によって作製した図4に示す形状、すなわち、直径が130mmで、接触部のR形状が150mmRの形状で、また、Rzが1.2μmで山の数が0ヶ/mmのローラーピッチング試験用大ローラーを用いて、表4に示した条件で、ローラーピッチング試験を行った。
すなわち、各試験番号について、ローラーピッチング試験における試験数は6とし、縦軸に面圧、横軸にピッチング発生までの繰り返し数をとったS−N線図を作成し、繰り返し数2.0×107回での面圧を、面疲労強度とした。なお、小ローラーの試験部の表面が損傷している箇所のうちで、最大のものの面積が1mm2以上になった場合をピッチング発生とした。
表9に、上記の各試験結果をまとめて、浸炭焼入れ時の油温、表面仕上げ条件とともに示す。
なお、表9において、「マルテンサイトと残留オーステナイト以外の組織」とは「ベイナイト」及び「パーライト」をいい、前述のとおり上記の「組織」にはセメンタイトを始めとする炭化物或いは窒化物などの所謂「析出物」は含まない。そして、「マルテンサイトと残留オーステナイト以外の組織が「なし」の場合とは、「マルテンサイトと残留オーステナイトの混合組織」であることを指す。
Figure 0004687616
表9中に示したローラーピッチング試験結果から、粗さ曲線の最大高さ粗さRzが6〜10μm、粗さ曲線の平均線を基準とし、平均線を超えてから「平均線+1μm」を超えた場合を1山として、山の数Pcが5ヶ/mm以上かつ表層部のビッカース硬さが800以上であることに加えて、更に、表層部の組織がマルテンサイト及び残留オーステナイトだけからなる場合、つまり、表層部の組織がマルテンサイトと残留オーステナイトの混合組織である場合に、より一層高い面疲労強度が得られることが分かる。
なお、マルテンサイトと残留オーステナイトの混合組織からなる表層部の組織は、例えば、以下に示す〈9〉〜〈10〉の手順によって得ることができる。
〈9〉Mn、Cr及びMoの含有量をそれぞれ、Mn(%)、Cr(%)及びMo(%)としたときに、Mn(%)+Cr(%)+2Mo(%)が2.2以上である鋼材を用い、油温が90℃以下の油中に浸炭焼入れ或いは浸炭窒化焼入れする。
〈10〉表層を30〜60μm研削する。
以上のことから、本発明(2)に係る鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品は、粗さ曲線の最大高さ粗さRzが6〜10μm、粗さ曲線の平均線を基準とし、平均線を超えてから「平均線+1μm」を超えた場合を1山として、山の数Pcが5ヶ/mm以上かつ表層部のビッカース硬さが800以上で、更に、表層部の組織がマルテンサイトと残留オーステナイトの混合組織であることと規定した。
(D)生地の鋼の化学組成
本発明に係る鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品は、その生地の鋼の化学組成について特に規定するものではない。
しかしながら、より優れた特性を得るために、生地の鋼の化学組成は下記のものであることが好ましい。
C:0.1〜0.3%
Cは、浸炭焼入れ或いは浸炭窒化焼入れしたときの部品の生地の強度(芯部強度)を確保する作用を有する元素であり、0.1%以上の含有量とすることが好ましい。一方、Cの含有量が0.3%を超えると、棒鋼、線材や熱間鍛造後の強度が高くなりすぎて、切削加工性が低下する場合がある。したがって、生地の鋼のCの含有量は、0.1〜0.3%とすることが好ましい。
Si:0.3〜1.5%
Siは、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高める効果があって、面疲労強度を高めるのに有効な元素であるため、0.3%以上の含有量とすることが好ましい。その含有量が0.5%以上になると、面疲労強度の向上が顕著になる。一方、Siの含有量が1.5%を超えると、面疲労強度を高める効果が飽和し、また、棒鋼、線材や熱間鍛造後の強度が高くなりすぎて、切削加工性が低下する場合がある。したがって、生地の鋼のSiの含有量は、0.3〜1.5%とすることが好ましい。生地の鋼のSiのより一層好ましい含有量は0.5〜1.5%である。
Mn:0.2〜1.5%
Mnは、焼入れ性を高める効果があって、面疲労強度を高めるのに有効な元素であるため、0.2%以上の含有量とすることが好ましい。その含有量が0.4%以上になると、面疲労強度の向上が顕著になる。一方、Mnの含有量が1.5%を超えると、面疲労強度を高める効果が飽和し、また、棒鋼、線材や熱間鍛造後の強度が高くなりすぎて、切削加工性が低下する場合がある。したがって、生地の鋼のMnの含有量は、0.2〜1.5%とすることが好ましい。生地の鋼のMnのより一層好ましい含有量は0.4〜1.5%である。
S:0.003〜0.05%
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、切削加工性を向上させる作用を有する元素であり、0.003%以上の含有量とすることが好ましい。一方、Sの含有量が多くなると、粗大なMnSを生成しやすくなり、特に、0.05%を超えると、他の要件を満たしていても面疲労強度が低下する場合がある。したがって、生地の鋼のSの含有量は、0.003〜0.05%とすることが好ましい。
Cr:0.5〜3.0%
Crは、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高める効果があって、面疲労強度を高めるのに有効な元素であるため、0.5%以上の含有量とすることが好ましい。その含有量が1.2%以上になると、面疲労強度の向上が顕著になる。一方、Crの含有量が3.0%を超えると、面疲労強度を高める効果が飽和し、また、棒鋼、線材や熱間鍛造後の強度が高くなりすぎて、切削加工性が低下する場合がある。したがって、生地の鋼のCrの含有量は、0.5〜3.0%とすることが好ましい。生地の鋼のCrのより一層好ましい含有量は1.2〜2.5%である。
Al:0.01〜0.05%
Alは、脱酸作用を有すると同時に、Nと結合してAlNを形成しやすく、焼入れ部の結晶粒微細化に有効で、面疲労強度を高める効果を有する元素であり、0.01%以上の含有量とすることが好ましい。一方、Alは、硬質な酸化物系介在物を形成しやすく、その含有量が0.05%を超えると、他の要件を満たしていても面疲労強度が低下する場合がある。したがって、生地の鋼のAlの含有量は、0.01〜0.05%とすることが好ましい。
N:0.008〜0.025%
Nは、Al、Ti、Nb、Vと結合してAlN、TiN、NbN、VNを形成しやすく、このうちAlN、NbN、VNは結晶粒微細化に有効で、面疲労強度を高める効果があるため、0.008%以上の含有量とすることが好ましい。一方、Nの含有量が多くなると、粗大なTiNが形成されやすくなり、特に、0.025%を超えると、他の要件を満たしていても面疲労強度が低下する場合がある。したがって、生地の鋼のNの含有量は、0.008〜0.025%とすることが好ましい。
本発明に係る鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品は、その生地の鋼における不純物元素としてのP、Ti及びO(酸素)の含有量が下記のものであることが好ましい。
P:0.025%以下
Pは、粒界偏析して粒界を脆化させやすい元素で、特に、0.025%を超えると、他の要件を満たしていても面疲労強度が低下する場合がある。したがって、生地の鋼のPの含有量は、0.025%以下とすることが好ましい。
Ti:0.005%以下
Tiは、Nと結合してTiNを形成しやすい元素で、特に、0.005%を超えると、他の要件を満たしていても面疲労強度が低下する場合がある。したがって、生地の鋼のTiの含有量は、0.005%以下とすることが好ましい。なお、不純物元素としてのTi含有量はできる限り少なくすることが望ましいが、製鋼でのコストを考慮すると、0.002%以下にすることが一層好ましい。
O(酸素):0.002%以下
Oは、Alと結合して硬質な酸化物系介在物を形成しやすい元素で、特に、0.002%を超えると、他の要件を満たしていても面疲労強度が低下する場合がある。したがって、生地の鋼のOの含有量は、0.002%以下とすることが好ましい。なお、不純物元素としてのO含有量はできる限り少なくすることが望ましいが、製鋼でのコストを考慮すると、0.001%以下にすることが一層好ましい。
上記の理由から、本発明(3)に係る鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品の生地の鋼の化学組成を、上述した範囲のCからNまでの元素を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のP:0.025%以下、Ti:0.005%以下及びO(酸素):0.002%以下であることと規定した。
なお、本発明に係る鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品の生地の鋼の化学組成は、更により優れた特性を得るために、上記本発明(3)におけるFeの一部に代えて、
第1群:Mo:0.8%以下、
第2群:Nb:0.08%以下及びV:0.15%以下のうちの1種又は2種、
の少なくとも1つの群の元素のうち1種以上を含有させたものとすることができる。すなわち、前記第1群と第2群の少なくとも1つの群の元素のうち1種以上を、本発明(3)の生地の鋼におけるFeの一部に代えて、含有させてもよい。
以下、上記の元素に関して説明する。
第1群:Mo:0.8%以下
Moは、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高める効果があり、面疲労強度を高めるのに有効な元素である。しかしながら、Moの含有量が多くなり、特に0.8%を超えると、面疲労強度を高める効果が飽和し、また、棒鋼、線材や熱間鍛造後の強度が高くなりすぎて、切削加工性が低下する場合がある。したがって、生地の鋼のMoの含有量は、0.8%以下とすることが好ましい。
なお、前記したMoの効果を確実に得るためには、その含有量を0.1%以上とすることが好ましい。このため、生地の鋼のより望ましいMo含有量は0.1〜0.8%である。
第2群:Nb:0.08%以下及びV:0.15%以下のうちの1種又は2種
Nbは、C、Nと結合してNbC、NbN、Nb(C、N)を形成しやすく、前述したAlNによる焼入れ部の結晶粒微細化を補完するのに有効で、面疲労強度を高める効果がある。しかしながら、Nbの含有量が多くなり、特に0.08%を超えると、中心偏析部に粗大なNb(C、N)が生成しやすくなって、面疲労強度が低下する場合がある。したがって、生地の鋼のNbの含有量は、0.08%以下とすることが好ましい。
なお、前記したNbの効果を確実に得るためには、その含有量を0.01%以上とすることが好ましい。このため、生地の鋼のより望ましいNb含有量は0.01〜0.08%である。
Vは、C、Nと結合してVN、VCを形成しやすく、このうち、VNは前述したAlNによる焼入れ部の結晶粒微細化を補完するのに有効で、面疲労強度を高める効果がある。また、浸炭窒化時にVNが析出すると、面疲労強度をより高める効果がある。しかしながら、Vの含有量が多くなり、特に0.15%を超えると、棒鋼、線材や熱間鍛造後の強度が高くなりすぎて、切削加工性が低下する場合がある。したがって、生地の鋼のVの含有量は、0.15%以下とすることが好ましい。
なお、前記したVの効果を確実に得るためには、その含有量を0.02%以上とすることが好ましい。このため、生地の鋼のより望ましいV含有量は0.02〜0.15%である。
上記のNb及びVは、そのうちのいずれか1種のみ、又は2種の複合で含有することができる。
上記の理由から、本発明(4)に係る鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品の生地の鋼の化学組成を、本発明(3)の生地の鋼におけるFeの一部に代えて、Mo:0.8%以下を含有することと規定した。
また、本発明(5)に係る鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品の生地の鋼の化学組成を、本発明(3)又は本発明(4)の生地の鋼におけるFeの一部に代えて、Nb:0.08%以下及びV:0.15%以下のうちの1種又は2種を含有することと規定した。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
表10に示す鋼a〜pを150kg真空溶解炉で溶解した後、インゴットに鋳造した。
Figure 0004687616
各インゴットを1250℃で8時間加熱し、一旦室温まで冷却した後、再度1250℃で30分加熱し、仕上げ温度を950℃以上として熱間鍛造して、直径35mmの丸棒を得た。
次いで、上記の直径が35mmの各丸棒に、920℃で1時間保持して室温まで放冷する処理を行なった後、機械加工により図2に示す形状のローラーピッチング試験用小ローラーを作製した。
鋼a〜oのローラーピッチング試験用小ローラーには、ガス浸炭炉を用いて、図3、図8及び図9のいずれかに示す条件で浸炭焼入れ又は浸炭窒化焼入れを行い、次いで、170℃で2時間の焼戻しを行った。
なお、前述のとおり、図8及び図9における−80℃で2時間保持する処理は、表層部の残留オーステナイトを減少させ、高硬度化を目的とする所謂「サブゼロ処理」である。
鋼pのローラーピッチング試験用小ローラーには、真空浸炭炉を用いて、表面炭素濃度が0.8%で、ビッカース硬さが550になる表面からの距離である有効硬化層深さが1.0mmとなる条件で浸炭焼入れを行った後、170℃で2時間の焼戻しを行った。なお、焼入れ(油冷)は、油温を80℃として行った。鋼pのローラーピッチング試験用小ローラーに施した上記の熱処理は、後述する表13の「熱処理条件」欄においては「d」と表記した。
浸炭焼入れ・焼戻しを行った前記の鋼a〜pのローラーピッチング試験用小ローラーは、熱処理ひずみを除く目的で、つかみ部の仕上げ加工を行った。
更に、上記の浸炭焼入れ・焼戻しを行ったローラーピッチング試験用小ローラーの試験部には、表11の表面仕上げ条件A〜I、N及びOの処理を施した。
すなわち、研削量が50μmの研削(表面仕上げ条件A〜F)、1段目のショットピーニング(表面仕上げ条件B〜I、N及びO)、2段目のショットピーニング(表面仕上げ条件D〜I及びO)、研磨量が5μmの研磨(表面仕上げ条件H)と10μmの研磨(表面仕上げ条件I)の処理を行った。なお、上記のショットピーニングには、直圧式ショットピーニング装置を用いた。
表11には、試験部に上記いずれの処理も施さない場合、つまり、試験部が浸炭焼入れ・焼戻しのままの状態の場合を表面仕上げ条件Mとして記載した。
なお、上記の表11における表面処理条件A〜Iは、既に述べた表2中の表面仕上げ条件A〜Iと同じ処理である。
Figure 0004687616
上記のようにして作製したローラーピッチング試験用小ローラーの試験部の表面粗さをJIS B 0601(2001)で規定される方法に準拠し、次に示す条件で測定した。
・測定方向:試験片軸方向、
・評価長さ:4.0mm(Rzを求める場合の基準長さ:0.8mm)、
・測定回数:各5回、
・カットオフ値:0.8mm、
・測定項目:Ra(算術平均粗さ)、Rz(最大高さ粗さ)。
また、上記した表面粗さの測定によって得られた粗さ曲線を用い、粗さ曲線において新たに平均線を超える場合にリセットを行い、その後「平均線+1μm」を超える場合があれば、これを1山として計数し、長さ1mmあたりの平均の山の数を、本発明における山の数Pcとして、山の数(ヶ/mm)を測定した。なお、既に述べたように、リセットした後に一旦「平均線+1μm」を超えてしまえば、その後に「平均線+1μm」より低くなる場合があっても、平均線を下回って再度リセットされない限り「1山」としてカウントした。
次いで、ローラーピッチング試験用小ローラーの試験部の表層部のビッカース硬さを、JIS Z 2244(2003)における「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、次の方法で測定した。
すなわち、前記試験部を小ローラーの軸方向に垂直な面で切断し、その切断面を鏡面研磨して試験部の最表面から0.03mmの位置で、試験力を1.961Nとして10ヶ所測定し、その算術平均値を表層部のビッカース硬さとした。
また、ビッカース硬さを測定した試験片を、ナイタールで腐食してから、光学顕微鏡によって、試験片の最表面が視野の長辺端部になるようにし、部品内部を含むように、倍率400倍で各視野の大きさを0.22mm×0.15mmとして4視野撮影し、「表層部の組織」にパーライト及びベイナイトが混在していないかを各視野の写真で調査した。
更に、上記のようにして得たローラーピッチング試験用小ローラー及び表3に示す鋼γを素材とし、図4に示す形状、すなわち、直径が130mmで、接触部のR形状が150mmRの形状で、また、Rzが1.2μmで山の数が0ヶ/mmのローラーピッチング試験用大ローラーを用いて、表4に示した条件で、ローラーピッチング試験を行った。
なお、上記ローラーピッチング試験用大ローラーは一般的な製造工程、つまり、「焼きならし、試験片加工、ガス浸炭炉による共析浸炭、低温焼戻し及び研磨」の工程によって作製したものである。
各試験番号について、ローラーピッチング試験における試験数は6とし、縦軸に面圧、横軸にピッチング発生までの繰り返し数をとったS−N線図を作成し、繰り返し数2.0×107回での面圧を、面疲労強度とした。なお、小ローラーの試験部の表面が損傷している箇所のうちで、最大のものの面積が1mm2以上になった場合をピッチング発生とした。
本発明における面疲労強度の目標は、先に述べたように3500MPa以上とした。なお、より望ましい面疲労強度の目標は3700MPa以上とした。
表12及び表13に、上記の各試験結果をまとめて、熱処理条件及び表面仕上げ条件とともに示す。
Figure 0004687616
Figure 0004687616
表12及び表13から、本発明で規定する条件から外れた比較例の試験番号の場合には、ローラーピッチング試験における面疲労強度が目標とする3500MPaに達していないことが明らかである。
上記の比較例に対し、本発明で規定する条件を満たす本発明例の試験番号の場合のローラーピッチング試験における面疲労強度は、目標とする3500MPa以上であり、良好な面疲労強度を有することが明らかである。
更に、本発明例のうちでも、本発明(3)〜(5)の規定を満たす試験番号42、試験番号44、試験番号47、試験番号51、試験番号53、試験番号56、試験番号60、試験番号63及び試験番号72は、3700MPaを上回る大きな面疲労強度を有することが明らかである。
本発明の鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品は、良好な面疲労強度を有するので、自動車や産業機械の歯車、プーリー及びシャフトなどに用いることができる。
本発明における「山」の定義について、粗さ曲線を用いて説明する図である。 ローラーピッチング試験用小ローラーの形状を示す図である。 ガス浸炭炉を用いた浸炭焼入れの1つの条件を示す図である。 ローラーピッチング試験用大ローラーの形状を示す図である。 鋼α及び鋼βを用いて行った試験番号1〜18における面疲労強度と算術平均粗さRaの関係を示す図である。 鋼α及び鋼βを用いて行った試験番号1〜18における面疲労強度と最大高さ粗さRzの関係を示す図である。 上記図6の試験番号のうちで、最大高さ粗さRzが6〜10μmの範囲であったものについて、山の数と面疲労強度の関係を示す図である。 ガス浸炭炉を用いた浸炭焼入れ及び表層部の残留オーステナイトを減少させ、高硬度化を目的とする所謂「サブゼロ処理」の1つの条件を示す図である。 ガス浸炭炉を用いた浸炭窒化焼入れ及び表層部の残留オーステナイトを減少させ、高硬度化を目的とする所謂「サブゼロ処理」の別の1つの条件を示す図である。

Claims (5)

  1. 浸炭部品又は浸炭窒化部品であって、粗さ曲線の最大高さ粗さRzが6〜10μm、粗さ曲線の平均線を基準とし、平均線を超えてから「平均線+1μm」を超えた場合を1山として、山の数Pcが5ヶ/mm以上かつ表層部のビッカース硬さが800以上であることを特徴とする鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品。
  2. 浸炭部品又は浸炭窒化部品であって、粗さ曲線の最大高さ粗さRzが6〜10μm、粗さ曲線の平均線を基準とし、平均線を超えてから「平均線+1μm」を超えた場合を1山として、山の数Pcが5ヶ/mm以上かつ表層部のビッカース硬さが800以上で、更に、表層部の組織がマルテンサイトと残留オーステナイトの混合組織であることを特徴とする鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品。
  3. 生地が、質量%で、C:0.1〜0.3%、Si:0.3〜1.5%、Mn:0.2〜1.5%、S:0.003〜0.05%、Cr:0.5〜3.0%、Al:0.01〜0.05%及びN:0.008〜0.025%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のP:0.025%以下、Ti:0.005%以下及びO(酸素):0.002%以下の化学成分の鋼であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品。
  4. 生地の鋼が、Feの一部に代えて、Mo:0.8%以下を含有する請求項3に記載の鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品。
  5. 生地の鋼が、Feの一部に代えて、Nb:0.08%以下及びV:0.15%以下のうちの1種又は2種を含有することを特徴とする請求項3又は4に記載の鋼製の浸炭部品又は浸炭窒化部品。

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